(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】生体情報取得装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/18 20060101AFI20250528BHJP
【FI】
A61B5/18
(21)【出願番号】P 2020188267
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 吉和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 禎司
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 勝利
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕達
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-261419(JP,A)
【文献】特開2018-117740(JP,A)
【文献】特開2003-118421(JP,A)
【文献】特開2013-123451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143272(US,A1)
【文献】特開2018-094172(JP,A)
【文献】特開平02-172443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
A61B 7/00 - 7/04
A61B 9/00 -10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、
前記乗員の生体現象に伴って発せられる生体信号を含む入力信号を取得する信号取得部と、
前記入力信号に含まれるノイズに関連する情報をノイズ関連情報として取得するノイズ関連情報取得部と、
前記入力信号から指定帯域の信号成分を抽出し、抽出した前記信号成分を表す抽出信号を出力する帯域フィルタと、
前記抽出信号に基づいて前記乗員の生体情報を取得する生体情報検出部と、
前記ノイズ関連情報に基づき、前記帯域フィルタの前記指定帯域を変化させると共に、前記生体情報検出部で検出する前記生体情報の種別を設定する制御部と、を有することを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項2】
前記ノイズ関連情報取得部は、前記車両の振動のレベルを検出する振動センサを含み、前記振動のレベルを前記ノイズ関連情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記ノイズ関連情報取得部は、前記車両の走行速度のレベルを前記ノイズ関連情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
前記ノイズ関連情報取得部は、前記生体信号に含まれるノイズのレベルを前記ノイズ関連情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
前記ノイズ関連情報取得部は、前記車両の振動のレベル、前記車両の走行速度のレベル、又は前記生体信号に含まれるノイズのレベルを前記ノイズ関連情報として取得し、
前記制御部は、
前記ノイズ関連情報として示される前記振動
のレベル、前記走行速度
のレベル、及び前記
生体信号に含まれるノイズの
レベルのうちのいずれか1のレベルが所定閾値より小さいときには、心電図を含む第1種別の生体情報を取得する第1の検出モードに前記生体情報検出部を設定し、
前記1のレベルが前記所定閾値以上であるときには、前記心電図を含まない第2種別の生体情報を取得する第2の検出モードに前記生体情報検出部を設定することを特徴とする請求項
1に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記生体情報検出部を前記第1の検出モードに設定する場合には前記第2の検出モードに設定する場合よりも前記指定帯域の幅を広げることを特徴とする請求項5に記載の生体情報取得装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ノイズ関連情報として示される前記レベルが大きいほど、前記指定帯域の幅を狭めることを特徴とする請求項2~6のいずれか1に記載の生体情報取得装置。
【請求項8】
前記第1種別の生体情報は前記心電図を示し、前記第2種別の生体情報は心拍数、又はRRIを示すことを特徴とする請求項
5に記載の生体情報取得装置。
【請求項9】
前記信号取得部は、前記車両のハンドルに設けられている電極から前記入力信号を取得することを特徴とする請求項1~8のいずれか1に記載の生体情報取得装置。
【請求項10】
前記車両及び前記生体情報検出部各々の種類を示すデバイス情報を記憶するメモリと、
前記生体情報検出部で前記生体情報が検出されたときに、その検出時点での前記車両の現在位置、天気、及び時刻を示す情報を取得し、当該取得した情報、前記デバイス情報及び前記生体情報をインターネットを介して特定のサーバに送信する情報処理部と、を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1に記載の生体情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の生体情報を取得する生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両のハンドルの左右2箇所の把持部に夫々左電極及び右電極を設置しておき、運転者が車両のハンドルを把持するだけで、当該運転者の心電波形を測定できるようにした生体情報測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる生体情報測定装置には、左電極及び右電極間の電位差を検出する電位差検出回路と、当該電位差に基づき、運転者の心電波形を示す心電図及び心拍数を検出するデータ処理部と、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した生体情報測定装置は、車両に搭載されていることから車両特有のノイズを受けることになるが、生体情報測定装置は人体の皮膚に接触した電極からの微小な信号(生体電気信号と称する)を扱っているので、ノイズの影響を受けやすい。
【0005】
そこで、当該生体電気信号を含む入力信号に対してフィルタを用いてノイズの除去を行うことが考えられる。この際、各種の周波数のノイズを確実に除去する為には、マージンを考慮して比較的広い周波数帯域をノイズ除去のターゲットとした、通過帯域の狭いバンドパスフィルタを用いるのが望ましい。
【0006】
しかしながら、このように通過帯域の狭いバンドパスフィルタを用いると、当該バンドパスフィルタから出力された生体電気信号の情報量が減るので、精密な信号波形が要求される心電図や脳波等の生体情報を精度良く検出することが困難となる。一方、通過帯域の広いバンドパスフィルタを採用すると、当該バンドパスフィルタから出力された生体電気信号にはノイズが重畳する場合があり、この際、当該ノイズのレベルが大きいと、精密な信号波形が要求されない心拍数や呼吸数等の生体情報でさえ検出が困難になる。
【0007】
そこで、本発明は、ノイズ環境下においても効率よく各種の生体情報を検出することが可能な生体情報取得装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両の運転者の生体情報を取得する生体情報取得装置であって、前記運転者の生体現象に伴って発せられる生体信号を含む入力信号を取得する信号取得部と、前記入力信号に含まれるノイズに関連する情報をノイズ関連情報として取得するノイズ関連情報取得部と、前記入力信号から指定帯域の信号成分を抽出し、抽出した前記信号成分を表す抽出信号を出力する帯域フィルタと、前記抽出信号に基づいて前記運転者の生体情報を取得する生体情報検出部と、前記ノイズ関連情報に基づき、前記帯域フィルタの前記指定帯域を変化させると共に、前記生体情報検出部で検出する前記生体情報の種別を設定する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】生体情報取得システム100の構成を示すシステム構成図である
【
図2】生体情報検出ユニット30の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】制御部400が実行する生体情報検出設定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】制御部400が実行する他の生体情報検出設定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】制御部400が実行する報知処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0011】
図1は、車両に搭載される生体情報取得システム100の構成を示すシステム構成図である。
【0012】
生体情報取得システム100は、センサ電極20L及び20R、生体情報検出ユニット30、ナビゲーション装置40、表示部41及びスピーカ42を含む。
【0013】
センサ電極20Lは、ハンドル(ステアリングホイールとも称する)10のリング部における運転者の左手で把持される領域に設置されており、センサ電極20Rは、運転者の右手で把持される領域に設置されている。センサ電極20L及び20Rは、夫々配線(図示せず)を介して生体情報検出ユニット30と接続されている。
【0014】
生体情報検出ユニット30は、ハンドル10の例えばスポーク部に設置されている。生体情報検出ユニット30には、一次電池又は二次電池からなるバッテリを保持するバッテリホルダBPが設けられており、当該バッテリから供給される電力に基づき以下の動作を行う。
【0015】
生体情報検出ユニット30は、センサ電極20R及び20L間の電位差、つまり運転者の生体現象に伴って体内から発せられる電気的信号(以降、生体電気信号と称する)から、運転者の心拍数、又は心電図等の生体情報を取得し、取得した生体情報を表す生体情報信号を生成する。生体情報検出ユニット30には、このような生体情報を取得する生体情報検出回路、及び当該生体情報検出回路やセンサ電極20R、20Lに故障が生じている場合には、その旨を示す故障検知信号を生成する故障検知回路が含まれている。
【0016】
また、生体情報検出ユニット30は、Bluetooth(登録商標)等を利用してナビゲーション装置40との無線通信を確立する無線通信機能を有する。
【0017】
生体情報検出ユニット30は、上記のように生成した生体情報信号、故障検知信号、並びに、生体情報検出回路の種類及びこの生体情報検出ユニット30が設置されている車両の種類を夫々示すデバイス情報を、ナビゲーション装置40に無線送信する。また、生体情報検出ユニット30は、走行道路形態情報要求信号、ハンドル把持報知要求信号、又は報知強調要求信号等の各種要求信号をナビゲーション装置40に無線送信する。
【0018】
更に、生体情報検出ユニット30は、ナビゲーション装置40から無線送信された走行道路形態情報を受信した場合には、当該走行道路形態情報に基づく形態で生体情報検出を行うように、自身の動作状態が設定される。
【0019】
ナビゲーション装置40は、道路地図、及び当該道路地図上の道路の形態を表す道路形態情報を記憶する記憶部(図示せず)、及び車両の現在位置を検出する位置検出部を含み、当該位置検出部で検出した車両の現在位置を当該道路地図上に示す画像信号を生成する。
【0020】
ここで、道路形態情報とは、各道路における例えばカーブ区間、直線区間、坂道区間、交差点区間、非舗装区間、又はトンネル区間を表す情報である。カーブ区間とは、例えば曲率半径が所定値より大きいカーブ又は当該カーブが連続する道路区間を表す。尚、運転者が、両手でセンサ電極20L及び20Rを把持した状態での走行を所定期間維持することが出来なくなるような曲率半径を有する道路区間をカーブ区間と定義しても良い。坂道区間とは、勾配が所定範囲を超えた道路であり、交差点区間は、三叉路及びT字路を含む道路区間である。非舗装区間とは、道路の路面が舗装されておらず、または舗装が劣化しており、走行する際に車両が比較的大きく振動する道路区間である。直線区間又はトンネル区間とは、車線変更禁止又は片側一車線であり、且つ曲率半径が所定値未満であると共に、その区間を法定速度で走行した際に生体情報検出に必要となる時間以上の走行時間が掛かる長さの道路区間である。尚、運転者が両手でセンサ電極20L及び20Rを把持した状態で、法定速度での走行を所定期間維持することが出来る道路区間を直線区間と定義しても良い。
【0021】
また、ナビゲーション装置40は、生体情報検出ユニット30から無線送信された故障検知信号を受信した場合には、生体情報検出ユニット30、またはセンサ電極20R、20Lに故障が発生した旨を音声で知らせる音声信号、又は当該故障の発生を文字で表す画像信号を生成する。また、ナビゲーション装置40は、生体情報検出ユニット30から送信されたハンドル把持報知要求信号を受信した場合には、運転者に対して両手で車両のハンドル10を把持させるように促すハンドル把持報知を音声で表す音声信号、又は当該ハンドル把持報知を文字で表す画像信号を生成する。ここで、生体情報検出ユニット30から無線送信された報知強調要求信号を受信したら、ナビゲーション装置40は、ハンドル把持報知を音声で表す音声信号に対して音量の増加処理を施すと共に、ハンドル把持報知を文字で表す画像信号に対して文字の大きさを拡大する又は点滅させる等の処理を施す。
【0022】
そして、ナビゲーション装置40は、上記のように生成した画像信号を表示部41に供給することで、当該画像信号に基づく画像を表示させると共に、上記のように生成した音声信号をスピーカ42に供給することで、当該音声信号に基づく音声を音響出力させる。
【0023】
また、ナビゲーション装置40は、生体情報検出ユニット30から無線送信された生体情報信号を受信したら、車両の現在位置を含む地域の天気を表す天気情報を例えば携帯電話回線及びインターネットNWを介して取得する。そして、ナビゲーション装置40は、受信した生体情報信号と共に、上記した天気情報、デバイス情報及び現在時刻情報を、例えば携帯電話回線及びインターネットNWを介して特定のサーバSVに送信する。サーバSVは、生体情報信号に基づく生体情報(心拍数、心電図、呼吸数、筋電図)を表す画像、または生体情報から眠気、疲労、ストレス等の状態推定値を算出して、その数値あるいはそれを表現する画像を、インターネットNWを介して登録ユーザに提供する。
【0024】
また、ナビゲーション装置40は、生体情報検出ユニット30から無線送信された走行道路形態情報要求信号を受信したら、上記した道路形態情報中から、車両が現在走行中の道路、又はこれから走行が予想される道路における道路形態を抽出する。そして、ナビゲーション装置40は、当該抽出した道路形態、及び現在の車両の走行速度を表す走行道路形態情報を、生体情報検出ユニット30に無線送信する。
【0025】
以下に、生体情報検出ユニット30及びナビゲーション装置40の動作について詳細に説明する。
【0026】
図2は、生体情報検出ユニット30の内部構成を示すブロック図である。
【0027】
生体情報検出ユニット30は、電源回路300、可変帯域フィルタ301、生体情報検出回路302、故障検知回路303、両手接触検知回路304、メモリ305、送受信回路306、ノイズ関連情報取得部307及び制御部400を含む。
【0028】
電源回路300は、バッテリホルダBPに保持されている一次電池又は二次電池からなるバッテリBTの電力を取得する。電源回路300は、取得した電力を、可変帯域フィルタ301、生体情報検出回路302、故障検知回路303、両手接触検知回路304、メモリ305、送受信回路306、ノイズ関連情報取得部307及び制御部400に夫々供給することで、これらの各回路を動作させる。可変帯域フィルタ301は、制御部400から供給された動作モード信号MODが通常モードを表す場合に、センサ電極20L及び20R間の電位差に基づく生体電気信号に対して、以下のようなフィルタリング処理を施す。
【0029】
すなわち、可変帯域フィルタ301は、生体電気信号から、制御部400から供給された帯域指定信号FCにて指定された周波数帯域の信号成分を抽出する。そして、可変帯域フィルタ301は、この抽出した信号成分を表す抽出信号BSを生体情報検出回路302に供給する。可変帯域フィルタ301は、このようなフィルタリング処理により、心拍数、心電図、呼吸数又は筋電図等の生体情報の検出に障害となるノイズ成分を生体電気信号から除去する。
【0030】
尚、かかる動作モード信号MODが節電モードを表す場合には、可変帯域フィルタ301は、自身の動作(フィルタリング処理)を停止した状態、又は自身に流れる電流量を強制的に低下させた低電力消費状態に設定される。
【0031】
生体情報検出回路302は、動作モード信号MODが通常モードを表す場合に、制御部400から供給された生体情報検出種別指定信号STで指定された種別の生体情報を抽出信号BSに基づき取得する生体情報検出動作を行う。
【0032】
生体情報検出種別指定信号STにて指定される生体情報の種別としては、例えば心電図等のように精密な信号波形が要求される第1種別と、例えば心拍数やRRI(RR Interval)等のように信号波形自体に精密性が要求されない第2種別と、がある。
【0033】
生体情報検出回路302は、生体情報検出種別指定信号STが第1種別を示す場合には、生体情報として、心電図を表す情報信号を上記した抽出信号BSから取得する第1の検出モードに設定される。一方、生体情報検出種別指定信号STが第2種別を示す場合には、生体情報検出回路302は、生体情報として、心拍数やRRIを表す情報信号を抽出信号BSから取得する第2の検出モードに設定される。そして、生体情報検出回路302は、上記したように取得した情報信号を生体情報信号BISとして送受信回路306に供給する。
【0034】
尚、動作モード信号MODが節電モードを表す場合には、生体情報検出回路302は、自身の生体情報検出動作を停止した状態、又は自身に流れる電流量を強制的に低下させた低電力消費状態に設定される。
【0035】
故障検知回路303は、生体情報検出回路302、またはセンサ電極20L、20Rに故障が生じているか否かを判定し、故障が生じていると判定した場合に、故障の発生を検知したことを示す故障検知信号FAを送受信回路306に供給する。例えば、故障検知回路303は、所定期間毎に、故障検知用のテスト信号を生体情報検出回路302に供給しその出力結果が期待値と一致していない場合に生体情報検出回路302の故障有りと判定する。または、例えば、生体情報検出回路302に故障が生じていないことが判明したにも関わらず、所定の長期間に亘って生体情報検出回路302が生体情報を検出できない場合にセンサ電極20Lまたは20Rの故障ありと判定する。故障検知回路303は、故障有りと判定すると故障検知信号FAを送受信回路306に供給する。
【0036】
両手接触検知回路304は、センサ電極20L及び20R間に流れる電流に基づき、車両の運転者の両手がセンサ電極20L及び20Rに接触しているか否かを判定する。両手接触検知回路304は、その判定結果、つまり運転者の両手がセンサ電極20L及び20Rに接触しているか否かを示す両手接触検知信号BHを制御部400に供給する。
【0037】
メモリ305は、不揮発性のメモリであり、生体情報検出回路302の種類(例えば登録されている型番、検出方式等)、及び生体情報検出ユニット30が設置されている車両の種類(例えば、車種、形式、車両の名称等)をデバイス情報として記憶する為の記憶領域を有する。メモリ305は、当該記憶領域に記憶されている、生体情報検出回路302及び車両各々の種類を示すデバイス情報DTを送受信回路306に供給する。
【0038】
送受信回路306は、上記した生体情報信号BIS及びデバイス情報DT、又は上記した故障検知信号FAを、ナビゲーション装置40に無線送信する。更に、送受信回路306は、制御部400から走行道路形態情報要求RQ1が供給された場合には、走行道路形態情報要求信号をナビゲーション装置40に無線送信する。また、制御部400からハンドル把持報知要求RQ2が供給された場合には、送受信回路306は、ハンドル把持報知要求信号をナビゲーション装置40に無線送信する。また、制御部400から報知強調要求RQ3が供給された場合には、送受信回路306は、報知強調要求信号をナビゲーション装置40に無線送信する。
【0039】
また、送受信回路306は、ナビゲーション装置40から無線送信された走行道路形態情報を受信した場合には、これを走行道路形態情報RDとして制御部400に供給する。
【0040】
ノイズ関連情報取得部307は、センサ電極20L及び20R間の電位差に基づく生体電気信号に重畳されるノイズのレベルを決定する要因となるノイズ関連情報を取得し、そのノイズ関連情報によって示されるレベルをノイズレベル信号NSとして制御部400に供給する。
【0041】
例えば、ハンドル10に振動が生じていると運転者の手とセンサ電極20L及び20Rとの接触がその振動の周期で遮断され、これがノイズとして生体電気信号に重畳されることになる。そこで、ノイズ関連情報取得部307に振動センサを設け、当該振動センサで検出したハンドル10の振動レベルをノイズ関連情報として取得する。また、例えば車両の走行速度が高くなるほど、車両の駆動系に関与した電気回路から放射されるノイズのレベルが大きくなる。そこで、ノイズ関連情報取得部307は、上記した走行道路形態情報RDにて示される車両の走行速度をノイズ関連情報として取得する。また、センサ電極20L及び20R間の電位差に基づく生体電気信号から、生体情報信号BISを取得するのに必要となる周波数帯域以外の帯域の信号成分を検知ノイズレベルとして抽出し、この検知ノイズレベルをノイズ関連情報として取得するようにしても良い。
【0042】
ノイズ関連情報取得部307は、上記した振動レベル、走行速度、及び検知ノイズレベルのいずれか1つをノイズレベルとして表すノイズレベル信号NSを制御部400に供給する。
【0043】
制御部400は、以下に説明する生体情報検出設定処理を実行することで、可変帯域フィルタ301、生体情報検出回路302、及び故障検知回路303の各種動作モードを設定する。
【0044】
図3は、当該生体情報検出設定処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
図3において、先ず、制御部400は、通常モードを示す動作モード信号MODを、生体情報検出部としての可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302に供給する(ステップS10)。これにより、可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302は、通常モードに設定され、前述したように、センサ電極20L及び20Rに接触した運転者の両手から、当該運転者の生体情報の検出を開始する。
【0046】
次に、制御部400は、生体電気信号に重畳しているノイズレベルを表すノイズレベル信号NSを取り込む(ステップS11)。次に、制御部400は、当該ノイズレベル信号NSが小さいほど広い周波数帯域を指定する帯域指定信号FCを生成し、これを可変帯域フィルタ301に供給する(ステップS12)。次に、制御部400は、ノイズレベル信号NSにて示されるノイズレベルが閾値Th未満であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0047】
ステップS13において、当該ノイズレベルが閾値Th未満であると判定した場合、制御部400は、検出対象とする生体情報の種別として、心電図等の精密な信号波形が要求される第1種別を指定する生体情報検出種別指定信号STを生体情報検出回路302に供給する(ステップS14)。これにより、生体情報検出回路302は、上記した抽出信号BSから、心電図を表す生体情報信号BISを取得する第1の検出モードに設定される。そして、生体情報検出回路302は、当該第1の検出モードで取得した、運転者の心電図を表す生体情報信号BISを、送受信回路306にてナビゲーション装置40に無線送信させる。
【0048】
一方、ステップS13において、当該ノイズレベルが閾値Th以上であると判定した場合、制御部400は、検出対象とする生体情報の種別として、心拍数やRRI等のように信号波形に精密性が要求されない第2種別を指定する生体情報検出種別指定信号STを生体情報検出回路302に供給する(ステップS15)。これにより、生体情報検出回路302は、上記した抽出信号BSから、心拍数やRRIを表す生体情報信号BISを取得する第2の検出モードに設定される。生体情報検出回路302は、当該第2の検出モードで取得した、運転者の心拍数やRRIを表す生体情報信号BISを、送受信回路306にてナビゲーション装置40に無線送信させる。
【0049】
上記したステップS14又はS15の実行後、制御部400は、走行道路形態情報要求RQ1を送受信回路306を介してナビゲーション装置40に無線送信し、その後、当該走行道路形態情報要求信号に応じてナビゲーション装置40から無線送信された走行道路形態情報RDを取り込む(ステップS16)。
【0050】
次に、制御部400は、当該走行道路形態情報RDに基づき、現在走行中の道路が、カーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間に該当するか否かを判定する(ステップS17)。
【0051】
ステップS17において、現在走行中の道路がカーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間のいずれにも該当しないと判定した場合、制御部400は、通常モードを示す動作モード信号MODを生体情報検出部としての可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302に供給する(ステップS18)。これにより、可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302は、通常モードに設定され、前述したように、センサ電極20L及び20Rに接触した運転者の両手から当該運転者の生体情報検出を行う。
【0052】
一方、ステップS17において、現在走行中の道路がカーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間に該当していると判定した場合、制御部400は、上記した通常モードに代えて節電モードを示す動作モード信号MODを生体情報検出部としての可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302に供給する(ステップS19)。これにより、可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302は、節電モードに設定され、上記した生体情報検出動作を停止する。
【0053】
ステップS18又はS19の実行後、制御部400は、ステップS11の実行に移り、前述したステップS11~S19の動作を繰り返し実行する。
【0054】
尚、
図3に示す生体情報検出設定処理では、生体情報検出回路302を通常モードに設定しておき、運転者がハンドル10を両手で把持することが困難となる、カーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間等の道路区間の走行中は節電モードに設定している。すなわち、カーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間等の道路区間の走行中は、運転者の片手がセンサ電極20L又は20Rから離れるので、生体情報検出回路302では、生体情報、特に心電図や脳波を精度良く検出することが困難となる。よって、車両がカーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間等の道路区間の走行中は、精度よく生体情報を取得することができないので、この間、生体情報検出回路302の動作を停止させることで、バッテリBTの消耗を抑えるのである。
【0055】
ところで、
図3に示す生体情報検出設定処理では、車両がカーブ区間、坂道区間、非舗装区間、又は交差点区間等の道路区間の走行中の間だけ生体情報検出回路302を節電モードに設定している。しかしながら、運転者が両手でハンドル10を把持することが可能となる直線区間、又は両手でハンドル10を把持することになるトンネル区間以外を走行している間は、常に節電モードに設定しておくようにしても良い。
【0056】
図4は、かかる点に鑑みて為された生体情報検出設定処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
尚、
図4に示す生体情報検出設定処理では、ステップS10に代えてステップS20を実行し、ステップS16~S19に代えてステップS21~S24を実行する点を除く他のステップS11~S15については
図3に示すものと同一である。
【0058】
そこで、以下に、ステップS20~S24の動作を中心に、
図4に示す生体情報検出設定処理について説明する。
【0059】
図4において、先ず、制御部400は、節電モードを示す動作モード信号MODを、生体情報検出部としての可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302に供給する(ステップS20)。これにより、可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302は、節電モードに設定され、上記した生体情報の検出動作を停止する。
【0060】
ステップS20の実行後、制御部400は、上記したステップS11~S15を実行する。ここで、
図4に示すステップS14又はS15の実行後、制御部400は、走行道路形態情報要求RQ1を送受信回路306を介してナビゲーション装置40に無線送信し、その後、当該走行道路形態情報要求信号に応じてナビゲーション装置40から無線送信された走行道路形態情報RDを取り込む(ステップS21)。
【0061】
次に、制御部400は、当該走行道路形態情報RDに基づき、現在走行中の道路が直線区間又はトンネル区間に該当するか否かを判定する(ステップS22)。
【0062】
ステップS22において、現在走行中の道路が直線区間及びトンネル区間のいずれにも該当しないと判定した場合、制御部400は、節電モードを示す動作モード信号MODを生体情報検出部としての可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302に供給する(ステップS23)。これにより、可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302は、節電モードに設定され、上記した生体情報検出動作を停止する。
【0063】
一方、ステップS22において、現在走行中の道路が直線区間、又はトンネル区間に該当していると判定した場合、制御部400は、上記した節電モードに代えて通常モードを示す動作モード信号MODを生体情報検出部としての可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302に供給する(ステップS24)。これにより、可変帯域フィルタ301及び生体情報検出回路302は、通常モードに設定され、前述したように、センサ電極20L及び20Rに接触した運転者の両手から、当該運転者の生体情報の取得を行う。
【0064】
ステップS23又はS24の実行後、制御部400は、ステップS11の実行に移り、前述したステップS11~S15、及びS21~S24からなる一連の動作を繰り返し実行する。
【0065】
以上、詳述したように、
図2に示す生体情報取得システム100では、信号取得部としてのセンサ電極20L及び20Rにより、車両のハンドル10に運転者が接触することで当該運転者の生体現象に伴って発せられる生体電気信号を入力信号として取得する。この際、生体電気信号には、車両特有のノイズを含む各種ノイズが重畳されている場合がある。すなわち入力信号は、各種ノイズを含み得る。そこで可変帯域フィルタ301が、生体電気信号に重畳されるノイズを除去すべく、この入力信号から、帯域指定信号FCにて指定された指定帯域の信号成分を抽出し、抽出した信号成分を表す抽出信号BSを出力する。そして、生体情報検出回路302が、抽出信号BSに基づき運転者の生体情報(例えば心拍数、心電図等)を取得する。
【0066】
ここで、ノイズ関連情報取得部307にて、上記した入力信号に含まれるノイズに関連する情報をノイズ関連情報(例えば、ハンドルの振動、走行速度、又は入力信号から抽出したノイズ成分)として取得する。
【0067】
そして、制御部400が、当該ノイズ関連情報に基づき、可変帯域フィルタ301の指定帯域の幅を変化させると共に、生体情報検出回路302で検出対象とする生体情報の種別(例えば第1種別:心電図等)を設定する。
【0068】
これにより、制御部400は、例えばノイズ関連情報にて示されるレベル、つまり入力信号に含まれるノイズのレベルが小さい場合には、大きい場合に比べて可変帯域フィルタ301の指定帯域の幅を広くする。これにより、フィルタリング処理に伴う生体電気信号の情報量の減少が抑えられるので、生体情報検出回路302において、心電図等の精密な信号波形が要求される第1種別の生体情報を検出することが可能となる。そこで、この際、制御部400は、可変帯域フィルタ301の指定帯域の幅を広くすると共に、第1種別の生体情報を検出対象とするように生体情報検出回路302を第1の検出モードに設定する。尚、上記した制御部400の動作によれば、ノイズ関連情報にて示されるレベル(NS)が大きい場合には、小さい場合に比べて可変帯域フィルタ301の指定帯域の幅が狭くなる。よって、ノイズ除去能力が高くなるものの、その分だけ生体電気信号の情報減少量が大きくなるので、心電図や脳波等の第1種別の生体情報を検出することが困難となる。そこで、この際、制御部400は、上記したように可変帯域フィルタ301の指定帯域の幅を狭くすると共に、心拍数、呼吸数等のように信号波形自体に精密性が要求されない第2種別の生体情報を検出対象とするように生体情報検出回路302を第2の検出モードに設定する。
【0069】
これにより、ノイズ環境下においても精度良く、心電図又は心拍数等の各種の生体情報を取得することが可能となる。
【0070】
尚、
図3(
図4)に示す生体情報検出設定処理では、ステップS11~S15を実行した後で、ステップS16~S19(S21~S24)を実行しているが、先にステップS16~S19(S21~S24)を実行するようにしても良い。また、ステップS16~S19(S21~S24)を省いても良い。
【0071】
ところで、制御部400は、上記したステップS18又はS24の実行後、ステップS11に移行する前に、運転者に対してハンドル10を両手で把持させるように促す報知をナビゲーション装置40によって行わせるようにしても良い。例えば、直線区間やトンネル区間の走行中は、運転者は、ハンドルを両手で把持した状態を所定の検出推奨期間に亘り維持することが可能となる。そこで、例えば
図4に示すステップS22において、走行道路形態情報RDに基づき現在走行中の道路が直線区間又はトンネル区間であると判定した場合には、制御部40は、ステップS24の実行後、運転者に対してハンドルを両手で把持させるように促す報知処理を実行する。
【0072】
図5は、制御部400が実行する報知処理の手順を示すフローチャートである。
【0073】
図5において、先ず、制御部400は、ハンドル把持報知要求R2を送受信回路306に供給することで、ハンドル把持報知要求信号をナビゲーション装置40に無線送信する(ステップS31)。当該ハンドル把持報知要求信号を受信すると、ナビゲーション装置40は、車両のハンドル10を把持させるように運転者に促す音声をスピーカ42から出力させ、車両のハンドル10を把持させるように運転者に促す文字を表す画像を表示部41に表示させる。
【0074】
次に、制御部400は、ステップS31の実行直後の時点から所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS32)、所定時間が経過したと判定したら、両手接触検知信号BHに基づき運転者の両手がセンサ電極(20L、20R)に接触しているか否かを判定する(ステップS33)。
【0075】
ステップS33において、運転者の両手がセンサ電極に接触していないと判定した場合、制御部400は、強調報知要求R3を送受信回路306に供給することで、強調報知要求信号をナビゲーション装置40に無線送信する(ステップS34)。当該強調報知要求信号を受信すると、ナビゲーション装置40は、スピーカ42から出力させる音声の音量を上げる音声強調処理、及び表示部42で表示される文字画像に対して例えば文字の大きさを拡大する又は点滅させる等の表示強調処理を行う。
【0076】
かかるステップS34の実行後、又はステップS33において運転者の両手がセンサ電極に接触していると判定した場合、制御部40は、
図3又は
図4に示すステップS11の実行に移る。
【0077】
このように、生体情報取得システム100では、現在走行中の道路が直線区間又はトンネル区間である場合には、運転者が両手でハンドルを把持した状態を所定の生体情報検出推奨期間に亘り維持させることが可能であることに鑑みて、この際、運転者に対してハンドルを両手で把持させるように促す報知を行う。これにより、運転者から精度よく生体情報の検出が為されるようになる。
【0078】
尚、ナビゲーション装置40は、所定の生体情報検出推奨期間に亘り、取得した走行道路形態情報に直線区間又はトンネル区間が含まれていない場合には、自車両を直線区間又はトンネル区間が存在する道路に誘導する画像を表示部41に表示させるようにしても良い。これにより、運転者から検出される生体情報が長期間に亘って欠落することを防止することが可能となる。
【0079】
また、上述した実施例においては、ハンドルに配置されたセンサ電極を信号取得部として、運転者の生体電気信号を取得するものについて説明したが、これに限定されない。例えば、車両の座席の背もたれ、座面、アームレスト等に配置されたセンサ電極を信号取得部とし、運転者に限らず車両の乗員の生体電気信号を取得し、当該乗員の生体情報を取得してもよい。
【0080】
本発明の構成は上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 ハンドル
20L、20R センサ電極
30 生体情報検出ユニット
40 ナビゲーション装置
100 生体情報取得システム
300 電源回路
301 可変帯域フィルタ
302 生体情報検出回路
307 ノイズ関連情報取得部
400 制御部