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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】磁気エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20250528BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20250528BHJP
【FI】
G01D5/244 K
G01D5/245 110M
G01D5/245 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021086692
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022179890
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】中村 薫一
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138694(JP,A)
【文献】特開平8-271283(JP,A)
【文献】特開2017-102089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/244-5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果を有するセンサ領域と、警告信号を発生させる警告部と、を含む磁気センサと、
複数の第1領域および複数の第2領域が形成される着磁パターン領域を含むスケールと、を備え、
前記第1領域は、N極およびS極がいずれか一方の磁性方向に着磁され、
前記第2領域は、前記第1領域よりも磁束密度が低い領域として形成され、
前記センサ領域と前記着磁パターン領域が対向した状態で、前記磁気センサは前記スケールに設置され、
前記センサ領域は、それぞれ対向する前記第1領域または前記第2領域の磁性方向に応じて検出電流を発生させ、
前記警告部は、順方向に第1閾値以上の検出電流が発生していないとき、前記警告信号を発生させる、磁気エンコーダ。
【請求項2】
磁気抵抗効果を有するセンサ領域と、設置方向を判定する方向判定部と、を含む磁気センサと、
複数の第1領域および複数の第2領域が形成される着磁パターン領域を含むスケールと、を備え、
前記第1領域は、N極およびS極がいずれか一方の磁性方向に着磁され、
前記第2領域は、前記第1領域よりも磁束密度が低い領域として形成され、
前記センサ領域と前記着磁パターン領域が対向した状態で、前記磁気センサは前記スケールに設置され、
前記センサ領域は、それぞれ対向する前記第1領域または前記第2領域の磁性方向に応じて検出電流を発生させ、
前記方向判定部は、前記第1領域の磁性方向に応じて発生する検出電流の方向に基づいて、前記スケールに対する前記磁気センサの設置方向を判定する、磁気エンコーダ。
【請求項3】
前記方向判定部は、前記第1領域の検出電流が正の第1閾値よりも大きいときには前記磁気センサの設置方向を第1方向と判定し、前記第1領域の検出電流が負の第2閾値よりも小さいときには前記磁気センサの設置方向を前記第1方向の逆の第2方向と判定する、請求項2に記載の磁気エンコーダ。
【請求項4】
前記磁気センサは、前記センサ領域により検出される検出電流パターンに応じて前記磁気センサの前記スケールにおける位置を特定する、請求項1から3のいずれかに記載の磁気エンコーダ。
【請求項5】
前記磁気センサは、前記スケール上における移動方向と直交する2つの側面のいずれか一方に信号ケーブルを有する、請求項1から4のいずれかに記載の磁気エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気エンコーダ、特に、磁気エンコーダにおける磁気センサの取り付け、に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気エンコーダは、磁気センサとスケールを対向させ、磁気センサのスケールに対する相対位置を計測する装置である。スケールには、磁性材料により微細な着磁パターンが記録される。磁気センサには、着磁パターンの磁界を読み取るための検出ヘッドが搭載される。検出ヘッドは、MR素子(Magneto Resistive Sensor)など磁界の方向および強さを検出可能なセンサにより構成される。検出ヘッドが着磁パターンを検出し、その検出値を電気信号に変換することでマイクロメートル単位の微細な位置計測が可能となる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-145520号公報
【文献】特開2015-114138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気センサとスケールの取り付け方向には順逆がある。磁気センサをスケールに対して逆向きに取り付けてしまうと、検出ヘッドは、N極をS極、S極をN極として逆向きに読み取ってしまう。磁気センサが逆向きに取り付けられているときには正しい計測が行われないのみならず、逆向きの取り付けになっていることに作業者が気づきにくいという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における磁気エンコーダは、磁気抵抗効果を有するセンサ領域と、警告信号を発生させる警告部を含む磁気センサと、複数の第1領域および複数の第2領域が形成される着磁パターン領域を含むスケールを備える。
第1領域は、N極およびS極がいずれか一方の磁性方向に着磁される。第2領域は、第1領域よりも磁束密度が低い領域として形成される。センサ領域と着磁パターン領域が対向した状態で、磁気センサはスケールに設置される。センサ領域は、それぞれ対向する第1領域または第2領域の磁性方向に応じて検出電流を発生させる。警告部は、順方向に第1閾値以上の検出電流が発生していないとき、警告信号を発生させる。
【0006】
本発明の別の態様における磁気エンコーダは、磁気抵抗効果を有するセンサ領域と、磁気センサの設置方向を判定する方向判定部を含む磁気センサと、複数の第1領域および複数の第2領域が形成される着磁パターン領域を含むスケールを備える。
第1領域は、N極およびS極がいずれか一方の磁性方向に着磁される。第2領域は、第1領域よりも磁束密度が低い領域として形成される。センサ領域と着磁パターン領域が対向した状態で、磁気センサはスケールに設置される。センサ領域は、それぞれ対向する第1領域または第2領域の磁束密度に応じて検出電流を発生させる。方向判定部は、第1領域の磁性方向に応じて発生する検出電流の方向に基づいて、スケールに対する磁気センサの設置方向を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁気センサとスケールの取り付け方向の間違いにともなう不正計測を防止しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】磁気エンコーダ(Aタイプ)の外観斜視図である。
図2】スケールの外観斜視図である。
図3】磁気エンコーダ(Bタイプ)の外観斜視図である。
図4】アブソリュートパターンの構成図である。
図5】アブソリュートパターンおよびインクリメンタルパターンにおける検出電流値を示す模式図である。
図6】磁気センサの機能ブロック図である。
図7】第1実施形態の順設置時における検出電流を示す。
図8】第1実施形態の逆設置時における検出電流を示す。
図9】比較例として第2領域をS極としたときの検出電流を示す。
図10】第2実施形態における検出電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、磁気エンコーダ100(Aタイプ)の外観斜視図である。
以下、水平方向にX軸とY軸、垂直方向にZ軸を設定するものとする。磁気エンコーダ100は、磁気センサ102とスケール104を含む。磁気センサ102は、スケール104に対して着脱可能に構成される。作業者は磁気センサ102をスケール104のレールに取り付けて使用する。磁気センサ102は、スケール104に取り付けられたあと、X方向(スケール104の延伸方向)に移動可能となる。
【0010】
磁気センサ102はセンサ領域を含む。センサ領域には複数の検出ヘッドがX方向に配列される。一方、スケール104には着磁パターン領域が形成される。詳細は後述するが、センサ領域と着磁パターン領域を対向させ、磁気センサ102のセンサ領域により着磁パターンを読み取ることで磁気センサ102の位置、あるいは、磁気センサ102の移動量を検出する。磁気センサ102は、検出した位置情報を外部装置にケーブル106を介して送信する。図1は、磁気センサ102の第1面110(X軸負側)にケーブル106が接続されるAタイプの磁気エンコーダ100を示す。
【0011】
磁気エンコーダ100は、物体の位置および移動量を測定する場面において広く応用可能である。たとえば、工作機械の固定部分にスケール104を取り付け、工具を保持して移動可能な主軸頭に磁気センサ102を取り付けてもよい。主軸頭の移動が指示されたとき、磁気センサ102はスケール104に対して相対移動するため、磁気センサ102は主軸頭の実際の位置および移動量を精密に計測できる。
【0012】
図2は、スケール104の外観斜視図である。
スケール104は、中央にアブソリュートパターン120、アブソリュートパターン120の両側にインクリメンタルパターン122a,122bが形成される。以下、インクリメンタルパターン122aおよびインクリメンタルパターン122bをまとめていうときや特に区別をしないときには「インクリメンタルパターン122」とよぶ。また、アブソリュートパターン120およびインクリメンタルパターン122をまとめて「着磁パターン領域124」とよぶ。
【0013】
磁気センサ102は、アブソリュートパターン120の検出値により磁気センサ102の絶対位置座標(以下、「基本位置」とよぶ)を検出する。磁気センサ102は、インクリメンタルパターン122の検出値により磁気センサ102の基本位置からの変位量(以下、「差分位置」とよぶ)を検出する。詳細は後述するが、磁気センサ102は基本位置および差分位置に基づいて、磁気センサ102のスケール104上における位置を特定する。
【0014】
図3は、磁気エンコーダ100(Bタイプ)の外観斜視図である。
図3は、第2面114(X軸正側)にケーブル106が接続されるBタイプの磁気エンコーダ100を示す。磁気エンコーダ100を利用する場所によっては、AタイプよりもBタイプの方が、ケーブル106が邪魔になりにくい場合もある。このため、本実施形態における磁気エンコーダ100として、AタイプとBタイプの2種類が用意されている。作業者は、自分の都合に合わせてAタイプとBタイプのどちらかを選ぶ。
【0015】
Aタイプの磁気エンコーダ100の場合、図1に示したように磁気センサ102を取り付けるのが正しい(以下、「順設置」とよぶ)。一方、Aタイプの磁気エンコーダ100において、図3に示すように、すなわち、ケーブル106がX軸正側に向くように磁気センサ102を取り付けるのは正しくない(以下、「逆設置」とよぶ)。同様にして、Bタイプの磁気エンコーダ100の場合、図3に示した取り付け方が順設置となる。一方、Bタイプの磁気エンコーダ100を図1に示すように取り付けると逆設置となる。
【0016】
本実施形態における磁気エンコーダ100は、アブソリュートパターン120の検出値により逆設置を認識できる。逆設置の判定方法を説明する前に、まず、磁気センサ102およびスケール104の構成と磁気エンコーダ100の計測原理について説明する。
【0017】
図4は、アブソリュートパターン120の構成図である。
アブソリュートパターン120には、複数の単位領域がX方向に配列される。本実施形態における単位領域は磁性体のN/S極がX軸正方向に着磁される第1領域と、非磁性体の第2領域を含む。図4に示すアブソリュートパターン120においては単位領域P1,P2,P4,P14等は第1領域(磁性体)であり、単位領域P3,P5,P15等は第2領域(非磁性体)である。
以下においては、順方向に設置される検出ヘッド130によりX軸正方向の磁性が検出される第1領域であることを意味するときには第1領域(N極)のように表記する。
【0018】
磁気センサ102は14個の検出ヘッドを有し、14個の単位領域の情報をまとめて読み取る。磁気センサ102が位置R1にあるとき、磁気センサ102は単位領域P1~P14に対向する。第1領域の検出値が「1」、第2領域の検出値が「0」であるとすれば、位置R1における検出値は「11010・・・1」となる。磁気センサ102が位置R1から1単位領域分だけX軸正方向に移動して位置R2にあるとき、磁気センサ102は単位領域P2~P15に対向する。位置R2における磁気センサ102の検出値は「1010・・10」となる。このように、アブソリュートパターン120においては、位置R1、位置R2それぞれに固有の14ビット・パターンが定義されている。
【0019】
磁気センサ102による14ビットの検出値により、磁気センサ102は基準位置を特定する。なお、第2領域は非磁性体に限らず、微弱なN極あるいは微弱なS極であってもよいが第1領域(N極)と同等の磁力を有するS極ではないことが望ましい。その理由については図9に関連して後述する。
【0020】
図5はアブソリュートパターン120およびインクリメンタルパターン122における検出電流値を示す模式図である。
検出ヘッド130は、アブソリュートパターン120の単位領域の磁界(磁束密度および磁性方向)を検出し、磁界の強さおよび方向を示す検出電流を出力する。順設置のとき、第1領域(N極)の磁界からは正方向、すなわち、N極に対応する順方向の検出電流が出力され、第2領域(非磁性体)における検出電流はゼロとなる。なお、逆設置の場合、第1領域(N極)の磁界からは負方向、すなわち、N極とは逆方向の検出電流が出力される。いいかえれば、逆設置のときには磁気センサ102は第1領域をS極と誤認してしまう。
【0021】
インクリメンタルパターン122による差分位置の特定方法は既知である。インクリメンタルパターン122においては、1つの単位領域あたりN極およびS極が1周期となるように着磁されている。磁気センサ102の検出ヘッド130は、インクリメンタルパターン122の磁界も検出し、磁界の強さおよび方向を示す検出電流を出力する。インクリメンタルパターン122からの検出電流の大きさにより、磁気センサ102は基本位置からの変位量である差分位置dも検出する。磁気センサ102は、基本位置により磁気センサ102の位置を単位領域の精度にて粗く特定し、差分位置に基づいて磁気センサ102の位置をより精緻に特定する。
【0022】
なお、図2に示したように、インクリメンタルパターン122はアブソリュートパターン120の両側に2本形成されている。インクリメンタルパターン122aとインクリメンタルパターン122bの構成は同一である。本実施形態においては、スケール104に対して磁気センサ102がY方向にずれた場合でもより確実に差分位置を特定できるようにインクリメンタルパターン122を二重構成としている。
【0023】
図6は、磁気センサ102の機能ブロック図である。
磁気センサ102の各構成要素は、電子回路おおびメモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線により実現される。また、磁気センサ102の一部の機能は、記憶装置に格納され、演算器において実行されるソフトウェアとして実現されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0024】
磁気センサ102は、センサ領域140および外部インタフェース部142を含む。センサ領域140は、着磁パターン領域124(アブソリュートパターン120およびインクリメンタルパターン122)と対向し、磁気センサ102の位置を検出する。外部インタフェース部142は、ケーブル106を介して外部装置とデータの送受を実行する。
【0025】
センサ領域140は、複数の検出ヘッド130を含む。本実施形態における検出ヘッド130はMR素子を含む検出器である。複数の検出ヘッド130により、アブソリュートパターン120およびインクリメンタルパターン122の磁界を検出し、これを検出電流に変換することでセンサ領域140は磁気センサ102の位置を特定する。
【0026】
外部インタフェース部142は、警告部144、方向判定部146および位置特定部148を含む。
位置特定部148は、センサ領域140の検出値に基づいて基本位置と差分位置を計算し、基本位置および差分位置に基づいて磁気センサ102の位置を特定し、磁気センサ102の位置情報を外部装置に送信する。警告部144は、センサ領域140の検出値に基づいて後述の方法にて逆設置を検出したとき、警告信号を外部装置に送信する。外部装置は警告信号を受信することにより、作業者に対して磁気センサ102を逆設置されていることを報知する。なお、磁気センサ102はランプなどの表示装置あるいはブザーなどの音声装置を備えてもよい。警告部144は、逆設置を検出したときには、磁気センサ102のランプを点灯させてもよいし、ブザーを鳴らしてもよい。警告部144による逆設置対応方法については「第1実施形態」として後述する。
【0027】
方向判定部146も、センサ領域140の検出値に基づいて逆設置を検出する。方向判定部146は、逆設置を検出したときには、センサ領域140による検出値の解釈方法を変更することで、逆設置に対応する。方向判定部146による逆設置対応方法については「第2実施形態」として後述する。なお、第1実施形態および第2実施形態を特に区別しないときやまとめていうときには「本実施形態」と称する。
【0028】
[第1実施形態]
第1実施形態においては、逆設置がなされたとき、警告部144は警告信号を送信する。作業者はこの警告信号に基づいて磁気センサ102の取り付けの間違いを直ちに認識できる。
【0029】
図7は、第1実施形態の順設置時における検出電流を示す。
以下においては、単位領域P1~P4を対象として説明する(図4図5参照)。単位領域P1,P2,P4は第1領域(N極)であり、単位領域P3は第2領域(非磁性体)である。第1領域における検出電流は最大値が「+TM(順方向電流)」となり、第2領域における検出電流は「0」となる。
【0030】
警告部144は、あらかじめ正の閾値T1を設定しておく。閾値T1は0以上かつTM以下の値に設定される。閾値T1は、より好ましくは、0.1×TM以上、0.5×TM以下の範囲で設定される。本実施形態においては、T1=0.2×TMであるとする。センサ領域140は、検出ヘッド130による検出電流値が閾値T1よりも大きければ「1」、閾値T1以下であれば「0」と判定する。P1~P4を検出対象とするとき、単位領域P1,P2,P4の検出値は「1」となり単位領域P3の検出値は「0」となるので、このときの単位領域P1~P4における検出値は「1101」となる。
【0031】
図8は、第1実施形態の逆設置時における検出電流を示す。
逆設置の場合、検出ヘッド130による磁界の検出方向が逆になるので(より厳密にいえば、検出ヘッド130が内蔵する磁石の磁性方向と第1領域の磁性方向が逆になるので)、第1領域(N極)における検出電流の最小値は「-TM(逆方向電流)」となる。上述したように、センサ領域140は閾値T1に基づいて単位領域の情報を判定する。逆設置の場合、単位領域P1~P4の検出電流はいずれも閾値T1以下となるため、単位領域P1~P4における検出値は「0000」となる。
【0032】
アブソリュートパターン120は、第2領域(非磁性体)が14個連続で並ばないように設計されている。したがって、順設置においては14ビットの検出値がすべて「0」になることはあり得ない。一方、逆設置の場合には14ビットの検出値がすべて「0」となる。警告部144は、検出ヘッド130の14ビットの検出値がすべてゼロとなっているとき、逆設置であると認識し、警告信号を送信する。
【0033】
図9は、比較例として第2領域をS極としたときの検出電流を示す。
ここでは、第1領域をN極(すなわち、磁性方向がX軸正方向)、第2領域をS極(すなわち、磁性方向がX軸負方向)としたときの検出電流を比較例として示し、その場合の問題点について説明する。順電流パターン150は順設置時の検出電流を示す。順設置の場合、第1領域P1,P2,P4(N極)の検出電流は「+TM(>T1)」となり、第2領域P3(S極)の検出電流は「-TM(≦T1)」となる。このため、位置特定部148はセンサ領域140の検出値を「1101」と解釈する。順設置であれば、第2領域をS極(X軸負方向)とした場合でも位置特定部148は正しく基本位置を特定できる。
【0034】
逆電流パターン152は逆設置時の検出電流を示す。逆設置の場合、第1領域P1,P2,P4(N極)の検出電流は「-TM(≦T1)」となり、第2領域P3(S極)の検出電流は「+TM(>T1)」となる。位置特定部148はセンサ領域140の検出値を「0010」と解釈する。この場合、警告部144は逆設置がなされたことを認識できなくなる。したがって、第1領域においては検出電流の絶対値が閾値T1よりも大きく、かつ、第2領域においては検出電流の絶対値が閾値T1以下となるようにアブソリュートパターン120を構成する必要がある。
【0035】
[第2実施形態]
第2実施形態においては、逆設置がなされたとき、方向判定部146は閾値を切り替えることにより逆設置用の検出方法に変更する。
【0036】
図10は、第2実施形態における検出電流を示す。
順電流パターン150は順設置時の検出電流、逆電流パターン152は逆設置時の検出電流を示す。第2実施形態においては正の閾値T1に加えて、負の閾値T2を設定する。閾値T2は0以下かつ-TM以上の値に設定される。閾値T2は、より好ましくは、-0.1×TM以上、-0.5×TM以下の範囲で設定される。本実施形態においては、T2=-0.2×TM=-T1であるとする。
【0037】
順設置の場合、第1領域P1,P2,P4(N極)の検出電流値は「+TM」となり、第2領域P3(非磁性体)の検出電流値は「0」となる。方向判定部146は閾値T1よりも大きな順方向の検出電流が流れているときには、磁気センサ102は順設置されていると判定する。方向判定部146は、順設置のときには位置特定部148に閾値T1(正値)を使用するように指定する。位置特定部148は検出電流値が閾値T1よりも大きいときには「1」、閾値T1以下のときには「0」と解釈する。したがって、図10に示す順電流パターン150を位置特定部148は「1101」と正しく解釈する。
【0038】
逆設置の場合、第1領域P1,P2,P4(N極)の検出電流値は「-TM」となり、第2領域P3(非磁性体)の検出電流値は「0」となる。方向判定部146は閾値T1よりも大きな検出電流が流れていないときには、磁気センサ102は逆設置されていると判定する。方向判定部146は逆設置のときには位置特定部148に閾値T2(負値)を使用するように指定する。位置特定部148は検出電流値が閾値T2より小さいときには「1」、閾値T2以上のときには「0」と解釈する。したがって、図10に示す逆電流パターン152を、位置特定部148は順設置時と同じく「1101」と解釈する。
【0039】
[総括]
以上、第1実施形態および第2実施形態に基づいて磁気エンコーダ100を説明した。
第1実施形態によれば、磁気センサ102を逆設置したとき、作業者は警告信号により直ちに逆設置を認識できる。このため、逆設置に気づかないまま不正計測を続けるリスクを回避できる。
【0040】
第2実施形態によれば、方向判定部146は検出電流値に基づいて順設置または逆設置のいずれであるかを判定する。方向判定部146は順設置時と逆設置時において閾値T1,閾値T2を使い分けることにより、逆設置がなされた場合であっても位置特定部148は基本位置を正しく認識できる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0042】
[変形例]
本実施形態においては、14ビットの情報により基本位置を特定するとして説明したが、言うまでもなく、14ビットはあくまでも例示であって、複数ビットであればよい。
【0043】
第1領域はN極に着磁されるとして説明したが、第1領域はS極であってもよい。この場合にも、第2領域は非磁性体あるいは十分に弱いN極またはS極であればよい。
【0044】
本実施形態においては、スケール104を固定し、磁気センサ102を移動させるとして説明した。変形例として磁気センサ102を固定し、スケール104を移動させるとしてもよい。あるいは、磁気センサ102およびスケール104の双方を移動可能に構成してもよい。少なくとも、磁気センサ102とスケール104の相対位置を変化させるように構成されればよい。
【0045】
着磁パターン領域124は、アブソリュートパターン120のみを含み、インクリメンタルパターン122を含まないとしてもよい。少なくともアブソリュートパターン120が形成されていれば、磁気エンコーダ100は磁気センサ102の基本位置を特定できる。
【符号の説明】
【0046】
100 磁気エンコーダ、102 磁気センサ、104 スケール、106 ケーブル、110 第1面、114 第2面、120 アブソリュートパターン、122 インクリメンタルパターン、122a インクリメンタルパターン、122b インクリメンタルパターン、124 着磁パターン領域、130 検出ヘッド、140 センサ領域、142 外部インタフェース部、144 警告部、146 方向判定部、148 位置特定部、150 順電流パターン、152 逆電流パターン、T1 閾値、T2 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10