(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】基材をウォッシュコートでコーティングするための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20250528BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20250528BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20250528BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20250528BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20250528BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20250528BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20250528BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20250528BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20250528BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20250528BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B01J35/57 E
B01J35/57 B
B01J27/224 A ZAB
B01J37/02 101B
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 230
B01D53/94 212
B05C11/10
B05B1/18 101
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
B05D3/00 C
B05D3/00 G
B05D3/00 D
B05D7/22 E
(21)【出願番号】P 2021523273
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 GB2019053339
(87)【国際公開番号】W WO2020109778
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-22
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(72)【発明者】
【氏名】バーゲス、ネイル
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ、ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】トムソン、クレッグ
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-039672(JP,A)
【文献】特開2007-268484(JP,A)
【文献】特開2017-199898(JP,A)
【文献】特表2017-516642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0155475(US,A1)
【文献】国際公開第2010/114132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05B 1/00- 3/18
B05D 1/00- 7/26
B01D 53/86-53/90,
53/94
B01J 21/00-38/74
C23C 16/00-16/56
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる複数のチャネルを含み、強化周辺領域を有する基材のコーティング装置であって、
ウォッシュコートの供給源と、
ウォッシュコートシャワーヘッドであって、前記ウォッシュコートを、前記ウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置された前記基材の前記チャネルが延びる方向に垂直な面に向けて放出するための複数のノズル開口を有するシャワーヘッドプレートを含む、ウォッシュコートシャワーヘッドと、
ウォッシュコートを前記ウォッシュコートシャワーヘッドに供給するために前記ウォッシュコートの前記供給源を前記ウォッシュコートシャワーヘッドに流体接続する導管と、
前記ウォッシュコートシャワーヘッドと前記基材の前記面との間に配置された仕切りリングと、
を備え、
前記仕切りリングが、前記基材の前記面よりも小さくなるよう寸法設定されており、前記基材コーティング装置が、使用時には、前記仕切りリングを前記仕切りリングの自重により及び/または前記仕切りリングの整列を維持するための案内機構によって前記基材の前記面と接触させ、これにより、前記仕切りリングの内部内に位置する前記基材の前記面の中心領域、及び前記仕切りリングの外部に位置する前記基材の前記面の周辺領域を規定するように構成されており、
前記ウォッシュコートシャワーヘッドの前記シャワーヘッドプレートが、使用時には、ウォッシュコートを前記基材の前記面の前記中心領域及び前記周辺領域の両方の上に放出するように構成されている、基材コーティング装置。
【請求項2】
前記基材コーティング装置が、使用時には、前記仕切りリングが前記基材の前記面の中心に配置されるよう、前記仕切りリングを前記基材の前記面と接触させるように構成されている、請求項1に記載の基材コーティング装置。
【請求項3】
前記仕切りリングが、前記基材の前記面に垂直な方向に、前記基材の前記面に垂直な方向に沿った前記基材の運動中に前記仕切りリングと前記基材の前記面との間の対面接触が維持され得るよう、可動である、請求項1又は2に記載の基材コーティング装置。
【請求項4】
前記仕切りリングの整列を維持するための案内機構を更に備え、
前記案内機構が、前記基材の前記面に垂直な方向に対して横に延び、前記仕切りリングの円周の周りの離間された場所において前記仕切りリングの外表面と接触するように構成された複数の案内ピンを含む、請求項1~3のいずれ一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項5】
前記仕切りリングの整列を維持するための案内機構を更に備え、
前記案内機構が、前記基材の前記面に垂直な方向に対して横に延び、前記仕切りリング外表面と接触するように構成された案内リングを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項6】
前記仕切りリングが、前記周辺領域の幅が、5~15mmになるよう、前記基材の前記面に対してサイズ設定されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項7】
前記シャワーヘッドプレートが、使用時には、前記基材の前記面の前記中心領域、及び前記周辺領域の少なくとも部分の両方に覆いかぶさる、請求項1~6のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項8】
前記シャワーヘッドプレートの直径が前記基材の直径以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項9】
ウォッシュコートを捕集し、前記周辺領域に向けて導くために前記基材の前記面の周りに配置可能である捕集鍔部を更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項10】
前記シャワーヘッドプレートの前記複数のノズル開口が同心円形アレイ状に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項11】
前記シャワーヘッドプレートが、前記仕切りリングの前記場所の上方の環帯内においてノズル開口を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項12】
前記ウォッシュコートシャワーヘッドが、前記導管からの前記ウォッシュコートを受け入れるための入口、及びバッフルを有するハウジングを更に含み、
前記ハウジング及びシャワーヘッドプレートがシャワーヘッド空洞を規定し、前記バッフルが前記シャワーヘッド空洞内に配置されており、
前記バッフルが、不透過性中心本体、及び前記不透過性中心本体から延びる複数のアームを含み、前記複数のアームが、前記不透過性中心本体の周りに円周方向に配置された複数の流れ開口を規定し、
前記バッフルが、前記不透過性中心本体が前記シャワーヘッドプレートから離間されているよう、前記シャワーヘッド空洞内に装着されており、
前記不透過性中心本体が、前記入口を通って前記シャワーヘッド空洞へ入ったウォッシュコートが、前記シャワーヘッドプレートの前記ノズル開口を通して前記基材の前記面に向けて放出される前に、前記不透過性中心本体の周りを流れ、前記複数の流れ開口を通過するよう進路を変えられるように、前記ハウジングの前記入口の下方において整列させられている、請求項1~11のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項13】
前記バッフルが、前記不透過性中心本体から延びる4つのアームを含み、前記4つのアームが、前記不透過性中心本体の周りに円周方向に配置された4つの流れ開口を規定している、請求項12に記載の基材コーティング装置。
【請求項14】
前記不透過性中心本体が、前記ハウジングへの前記入口の直径よりも大きい直径を有する、請求項12又は13に記載の基材コーティング装置。
【請求項15】
前記不透過性中心本体が、20~55mmになるよう選択された直径を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項16】
前記ハウジングの前記入口が最大25.4mm(1インチ)の内径を有する、請求項12~15のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項17】
前記入口に面する前記不透過性中心本体の上面が突出部を含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項18】
前記シャワーヘッド空洞が、12~40mmを有する、請求項12~17のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項19】
前記不透過性中心本体が5~10mmの間隙によって前記シャワーヘッドプレートから離間されている、請求項12~18のいずれか一項に記載の基材コーティング装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の基材コーティング装置と、ウォールフローフィルタ基材またはフロースルー基材と、を備える基材コーティングシステム。
【請求項21】
前記基材に含まれる前記複数のチャンネルはそれぞれ隣り合ったチャネルから壁によって分離されており、
前記基材が、前記基材の前記面に垂直な方向に沿って延びる周辺ゾーンを含み、前記周辺ゾーンが、前記基材の中心ゾーンに対して増強された強度を
、前記周辺ゾーン内における、前記中心ゾーンと比べて増大させられた前記壁の厚みのおかげで有する、請求項20に記載の基材コーティングシステム。
【請求項22】
基材コーティング装置を用いて、一方向に延びる複数のチャネルを含み、強化周辺領域を有する基材をウォッシュコートでコーティングする方法であって、
前記基材コーティング装置が、
ウォッシュコートの供給源と、
複数のノズル開口を有するシャワーヘッドプレートを含むウォッシュコートシャワーヘッドと、
前記ウォッシュコートの前記供給源を前記ウォッシュコートシャワーヘッドに流体接続する導管と、
前記ウォッシュコートシャワーヘッドと前記基材の前記チャネルが延びる方向に垂直な面との間に配置された仕切りリングと、
を備える種類のものであり、
前記方法が、
- 前記基材を前記ウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置するステップと、
- 前記仕切りリングを、前記仕切りリングの自重により及び/または前記仕切りリングの整列を維持するための案内機構によって前記基材の前記面と接触させ、これにより、前記仕切りリングの内部内に位置する前記基材の前記面の中心領域、及び前記仕切りリングの外部に位置する前記基材の前記面の周辺領域を規定するステップと、
- ウォッシュコートを前記ウォッシュコートの前記供給源から、前記導管に沿って、及び前記ウォッシュコートシャワーヘッドを通して搬送するステップと、
- 前記ウォッシュコートを前記ノズル開口から前記基材の前記面に向けて放出するステップであって、前記ウォッシュコートシャワーヘッドの前記シャワーヘッドプレートがウォッシュコートを前記基材の前記面の前記中心領域及び前記周辺領域の両方の上に放出する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記仕切りリングが前記基材の前記面の中心に配置されるよう、前記仕切りリングを前記基材の前記面と接触させて整列させることを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記仕切りリングを前記基材の前記基材の前記面に垂直な方向に、前記基材を前記基材の前記面に垂直な方向に沿って運動させた際に前記仕切りリングと前記基材の前記面との間の対面接触が維持されるよう、運動させることを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記仕切りリングの前記場所の上方の環帯内において前記シャワーヘッドプレートからウォッシュコートを放出しないことを更に含む、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記基材がウォールフローフィルタ基材及びフロースルー基材から選択される、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ウォッシュコートが、酸化触媒、選択触媒還元(SCR)触媒、NOx吸蔵材組成物、三元触媒組成物、アンモニアスリップ触媒[ASC]、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせを含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ウォッシュコートが、50rpmのBrookfieldで1~3000cPの粘度を有する、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ウォッシュコートが、孔内で可動であるピストンを用いてウォッシュコートの供給から前記ウォッシュコートシャワーヘッドに供給され、前記孔が38mm~170mmの内径を有し、前記ピストンが45~150mm/sで運動させられる、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ウォッシュコートが、9~540cm
3s
-1の速度で前記ウォッシュコートシャワーヘッドに供給される、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、基材をウォッシュコートでコーティングするための装置及び方法に関する。特に、それは、排ガスの浄化のために用いられる基材のコーティングに関する。
【0002】
コーティングされたモノリス基材を備える多数の排出制御デバイスが毎年製造されている。このようなデバイスの主な利用のうちの1つは、発電所によって、又は内燃エンジン、特に、乗り物の内燃エンジンによって生成された排ガスなどの、排ガスの処理のためのものである。モノリス基材は、排ガスを基材内のチャネル壁上のコーティングと接触させる複数のチャネルを包含する。このコーティングは、人間の健康に有害である、又は環境に優しくない排ガスの構成成分を捕捉し、酸化させ、及び/又は還元し得る。モノリス基材はまた、内燃エンジンによって生成された煤などの、煤(即ち、粒子状物質)を除去することができる、フィルタ基材であり得る。
【0003】
排ガスの浄化のための基材は、通例、排ガスの通過流のための通路を設けられたモノリス基材を含み得る。基材は、触媒コーティングであり得る、コーティングを提供され得る。コーティングは、ウォッシュコートが基材の通路を通過させられる際に基材に適用され得る。コーティングを基材に適用するための様々な方法が知られている。1つのこのような方法は、ウォッシュコートを基材の第1の面(例えば、上面)に適用し、基材の反対の第2の面(例えば、下面)を少なくとも部分真空にさらし、通路を通過するウォッシュコートの運動を達成することを含む。コーティング後に、基材は乾燥させられ、か焼されてもよい。
【0004】
基材はフロースルー基材として構成され得、各通路は基材の第1及び第2の面の両方において開放しており、通路は基材の全長を貫いて延びる。その結果、基材の第1の面を通って通路内へ入る排ガスは、排ガスが基材の第2の面から出るまで、同じ通路内の基材を通過する。代替的に、基材は、いくつかの通路が基材の第1の面において栓塞されており、他の通路が基材の第2の面において栓塞されている、フィルタ基材として構成され得る。このような構成では、基材の第1の面を通って第1の通路内へ入った排ガスは、基材に沿って途中までその第1の通路に沿って流れ、その後、基材のフィルタリング壁を通過して第2の通路内へ入る。その後、排ガスは上記第2の通路に沿って進み、基材の第2の面から出ていく。このような機構は当技術分野においてウォールフロー型フィルタとして知られるようになっている。
【0005】
コーティングされたフィルタ基材又は製品は、例えば、酸化触媒(例えば、触媒化煤フィルタ[catalysed soot filter、CSF])、選択触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)触媒(例えば、このとき、製品は選択触媒還元フィルタ[selective catalytic reduction filter、SCRF]触媒と呼ばれ得る)、NOx吸蔵材組成物(例えば、このとき、製品はリーンNOx捕捉フィルタ[lean NOx trap filter、LNTF]と呼ばれ得る)、三元触媒組成物(例えば、このとき、製品はガソリン微粒子フィルタ[gasoline particulate filter、GPF]と呼ばれ得る)、アンモニアスリップ触媒[ammonia slip catalyst、ASC]、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせ(例えば、選択触媒還元(SCR)触媒及びアンモニアスリップ触媒[ASC]を含むフィルタ基材)を含むフィルタ基材であり得る。
【0006】
基材は、基材が単一の向きのままとどまっている単一のステップでウォッシュコートが基材に適用され得る、単回の注入においてコーティングされてもよい。代替的に、基材は2回の注入においてコーティングされてもよい。例えば、1回目の注入では、基材は、第1の面が最上部にある第1の向きになっており、第2の面は最下部にある。コーティングが第1の面に適用され、基材の長さの部分をコーティングする。その後、基材は、第2の面が最上部になるよう、逆さまにされる。次に、1回目の注入によってコーティングされなかった基材の部分をコーティングするために、コーティングが第2の面に適用される。有利に、2回注入プロセスは、異なるコーティングが基材の各端部に適用されることを可能にし得る。
【0007】
基材の最良の性能をもたらすために、コーティングされた基材の表面積が最大化されるよう基材が十分にコーティングされることを確実にすることが有益であり得る。しかし、基材の部分が(例えば、2回注入プロセスにおいて)複数のウォッシュコート層によってコーティングされないことを確実にすることも有益である。なぜなら、これは、基材内における圧力損失の増大をもたらし得るからである。したがって、ウォッシュコートを基材に適用するプロセスにより、基材の確実で制御可能なコーティングプロファイルを達成することが望ましい。
【0008】
国際公開第99/47260号は、モノリス担体をコーティングするための一般的方法を記載している。国際公開第99/47260号には、フロースルーハニカム基材をコーティングする方法が例示されている。本方法は、通例、比較的高い粘度を有するウォッシュコートを適用するために用いられる。
【0009】
国際公開第2011/080525号に、ウォッシュコートをフィルタ基材の壁上に均一に適用するための良好な結果を示す1つの方法が記載されている。国際公開第2011/080525号は、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする方法であって、本方法が、(i)ハニカムモノリス基材を実質的に鉛直に保持するステップと、(ii)基材の下端部におけるチャネルの開放端部を介して所定の体積の液体を基材内に投入するステップと、(iii)投入された液体を基材内に密閉保持するステップと、(iv)保持された液体を包含する基材を逆さまにするステップと、(v)逆さまにされた、基材の下端部における基材のチャネルの開放端部に真空を適用し、液体を基材のチャネルに沿って吸引するステップと、を含む、方法を記載している。
【0010】
国際公開第2015/145122号に、フィルタ基材の壁上へのウォッシュコートの適用のための別の方法が記載されている。本方法は、液体をフィルタ基材の上端面上に均等に堆積させるように配置された複数の開口を含む「シャワーヘッド」を利用する。
【0011】
基材は、その断面全体にわたって、及びその長手方向長さに沿って、均一又はほぼ均一な構造を有し得る。代替的に、基材は不均一な構造を有し得る。例えば、基材は、その断面全体にわたって、即ち、基材の長手方向軸と垂直に取った平面上で、不均一な構造を有し得る。例えば、基材は、強化周辺領域を含み得、周辺領域内の通路の壁厚は基材の中心領域内よりも大きい。壁厚は基材の外皮に向かって勾配を通して増大し得る。この種の基材構造はより良好な基材強度及び耐久性をもたらし得るが、本出願人は、強化周辺領域が、増大した壁厚のゆえに、より大きい吸水を有し得るため、それが、確実で制御可能なコーティングプロファイルを達成することに関連する問題を生じさせ得ることを見出した。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様では、本開示は、基材コーティング装置であって、
ウォッシュコートの供給源と、
ウォッシュコートを、ウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置された基材の面に向けて放出するための複数のノズル開口を有するシャワーヘッドプレートを含むウォッシュコートシャワーヘッドと、
ウォッシュコートをウォッシュコートシャワーヘッドに供給するためにウォッシュコートの供給源をウォッシュコートシャワーヘッドに流体接続する導管と、
ウォッシュコートシャワーヘッドと基材の面との間に配置された仕切りリングと、
を備え、
仕切りリングが、基材の面よりも小さくなるよう寸法設定されており、基材コーティング装置が、使用時には、仕切りリングを基材の面と接触させ、これにより、仕切りリングの内部内に位置する基材の面の中心領域、及び仕切りリングの外部に位置する基材の面の周辺領域を規定するように構成されており、
ウォッシュコートシャワーヘッドのシャワーヘッドプレートが、使用時には、ウォッシュコートを基材の面の中心領域及び周辺領域の両方の上に放出するように構成されている、基材コーティング装置を提供する。
【0013】
有利に、このような仕切りリングを備える本開示の基材コーティング装置は、強化周辺領域を有する基材のより確実で制御可能なコーティングプロファイルを可能にする。特に、仕切りリングは、より大きな体積のウォッシュコートが基材の面の周辺領域上に誘導されることを可能にし得、これにより、より大きな体積のウォッシュコートが基材の周辺領域を通して吸引されることを可能にし、増大させられた壁厚に起因するその領域内におけるより大きい吸水を補償する。
【0014】
基材コーティング装置は、使用時には、仕切りリングが基材の面の中心に配置されるよう、仕切りリングを基材の面と接触させるように構成され得る。仕切りリングは、基材の長手方向軸に沿った方向に、長手方向軸に沿った基材の運動中に仕切りリングと基材の面との間の対面接触が維持され得るよう、可動であり得る。
【0015】
基材コーティング装置は、仕切りリングの整列を維持するための案内機構を更に備え得る。案内機構は、仕切りリングの長手方向軸に対して横に延び、仕切りリングの円周の周りの離間された場所において仕切りリングの外表面と接触するように構成された複数の案内ピンを含み得る。代替的に、案内機構は、仕切りリングの長手方向軸に対して横に延び、仕切りリング外表面と接触するように構成された案内リングを含み得る。
【0016】
仕切りリングは、周辺領域の幅が、5~15mm、好ましくは、8~12mm、より好ましくは、10mmになるよう、基材の面に対してサイズ設定され得る。
【0017】
シャワーヘッドプレートは、使用時には、基材の面の中心領域、及び周辺領域の少なくとも部分の両方に覆いかぶさり得る。シャワーヘッドプレートの直径は、基材の直径以上であり得る。
【0018】
基材コーティング装置は、ウォッシュコートを捕集し、周辺領域に向けて導くために基材の面の周りに配置可能である捕集鍔部を更に備え得る。捕集鍔部は、基材コーティング装置のヘッドセットの部分によって形成され得る。
【0019】
シャワーヘッドプレートの複数のノズル開口は、同心円形アレイ状に配置され得る。シャワーヘッドプレートは、仕切りリングの場所の上方の環帯内においてノズル開口を含まなくてもよい。
【0020】
ウォッシュコートシャワーヘッドは、導管からのウォッシュコートを受け入れるための入口、及びバッフルを有するハウジングを更に含み得、
ハウジング及びシャワーヘッドプレートはシャワーヘッド空洞を規定し、バッフルはシャワーヘッド空洞内に配置されており、
バッフルは、不透過性中心本体、及び不透過性中心本体から延びる複数のアームを含み、複数のアームは、不透過性中心本体の周りに円周方向に配置された複数の流れ開口を規定し、
バッフルは、不透過性中心本体がシャワーヘッドプレートから離間されているよう、シャワーヘッド空洞内に装着されており、
不透過性中心本体は、入口を通ってシャワーヘッド空洞へ入ったウォッシュコートが、シャワーヘッドプレートのノズル開口を通して基材の面に向けて放出される前に、不透過性中心本体の周りを流れ、複数の流れ開口を通過するよう進路を変えられるように、ハウジングの入口の下方において整列させられている。
【0021】
有利に、このようなバッフルを含むウォッシュコートシャワーヘッドは、基材のより均等なコーティングをもたらし得、特に、より確実で制御可能なコーティングプロファイルを生成し得る。バッフルの使用は、比較的低い粘度及び最小のレオロジー特性を有するウォッシュコートを用いることが所望され得る製品のために特に有益になり得る。本出願人は、ウォッシュコートのレオロジーは、ウォッシュコートを基材の上面に均一に適用することが困難になることを意味するため、これもまた、基材の確実で制御可能なコーティングプロファイルを達成することに関連する問題を生じさせ得ることを見出した。低粘度ウォッシュコートを使用した場合には、シャワーヘッドプレートからのウォッシュコートの均一な放出を確実にすることが困難であることが見出された。これは、ウォッシュコートが基材の領域にほとんど適用されさない、コーティング後の基材の未コーティング部分、又は代替的に、過度の量のウォッシュコートが基材の領域に適用された場所で、過剰な基材が基材の下面から吸い出される、「引き抜き(pull-through)」の問題を生じさせ得る。
【0022】
バッフル及び仕切りリングは、組み合わせて有利に用いられ得る。なぜなら、それらは、組み合わせることで、シャワーヘッドプレートからのウォッシュコートのより制御可能な放出、並びに基材の面の中心領域及び周辺領域の両方へのより制御可能な体積のウォッシュコートの適用の両方を確実にし得るためである。
【0023】
バッフルは、不透過性中心本体から延びる4つのアームを含み得、4つのアームは、不透過性中心本体の周りに円周方向に配置された4つの流れ開口を規定し、任意選択的に、4つのアームは、不透過性中心本体の周りに円周方向に等間隔で離間され得る。複数のアームは、不透過性中心本体から半径方向に延び得、任意選択的に、複数のアームの各々の幅は、不透過性中心本体の近位の場所から不透過性中心本体の遠位の場所へと増大し得る。4つのアームが設けられ得る。
【0024】
不透過性中心本体は、平面視において形状が円形であり得る。不透過性中心本体は、ハウジングへの入口の直径よりも大きい直径を有し得、任意選択的に、入口の長手方向中心軸及び不透過性中心本体の中心軸は一致し得る。不透過性中心本体は、20~55mm、好ましくは、25~50mmの、より好ましくは、27、35、又は50mmになるよう選択された直径を有し得る。
【0025】
ハウジングの入口は、最大25.4mm(1インチ)の内径を有し得る。
【0026】
入口に面する不透過性中心本体の上面は突出部を含み得、好ましくは、突出部は円錐又は部分円錐面である。
【0027】
有利に、上面上への突出部の提供は、ウォッシュコートがシャワーヘッドプレートの周辺へ誘導されるため、ウォッシュコートシャワーヘッド内の乱流を最小限に抑えることが見出された。
【0028】
バッフルは、ハウジング及びシャワーヘッドプレートのうちの少なくとも一方に装着され得、好ましくは、バッフルはハウジングのみに装着されている。バッフルは、ハウジングの入口を包囲するが、それに影響を与えない、ハウジングの装着点に装着され得る。バッフルは、複数のアームと、ハウジング及びシャワーヘッドプレートのうちの少なくとも一方との間に延びる固定材によって装着され得る。固定材は、複数のアームの各々の遠位端部から延び得る。固定材は、65~75mm、好ましくは、70mmのピッチ円径上に配置され得、不透過性中心本体の中心軸を中心とし得る。好ましくは、固定材は、不透過性中心本体の直径の外側に配置されている。
【0029】
有利に、固定材を不透過性中心本体の直径の外側に位置付けることは、入来してくるウォッシュコートとの固定材の干渉を最小限に抑え、基材上面上へのウォッシュコートのより均等な分配をもたらし得ることが見出された。
【0030】
シャワーヘッド空洞は、12~40mm、好ましくは、15~30mmの深さを有し得る。
【0031】
不透過性中心本体は、5~10mmの間隙によってシャワーヘッドプレートから離間され得る。
【0032】
有利に、不透過性中心本体をシャワーヘッドプレートから5~10mmの間隔を置いて配置することは、シャワーヘッド空洞内におけるウォッシュコートの流通を改善し、特に、十分なウォッシュコートがシャワーヘッドプレートの上面の中心へ流れ戻ることを可能にし、基材の上面上へのウォッシュコートのより均等な分配を達成し得ることが見出された。
【0033】
上述されたウォッシュコートシャワーヘッドの部分を形成するためのバッフルは、不透過性中心本体、及び不透過性中心本体から延びる複数のアームを含み、複数のアームは、不透過性中心本体の周りに円周方向に配置された複数の流れ開口を規定する。
【0034】
複数のアームは、不透過性中心本体から半径方向に延び得、並びに/又は複数のアームの各々の幅は、不透過性中心本体の近位の場所から不透過性中心本体の遠位の場所へと増大し得、並びに/又は不透過性中心本体は、平面視において形状が円形であり得、並びに/又は不透過性中心本体は、20~55mm、好ましくは、25~50mmの、より好ましくは、27、35、若しくは50mmになるよう選択された直径を有し得、並びに/又は不透過性中心本体の上面は、突出部を含み得、好ましくは、突出部は、円錐若しくは部分円錐面であり、並びに/又は複数のアームは、固定材を接続するための装着点を設けられ得、並びに/又は装着点は、複数のアームの各々の遠位端部に配置され得、並びに/又は装着点は、65~75mm、好ましくは、70mmのピッチ円径上に配置され得、不透過性中心本体の中心軸を中心とし得る。
【0035】
第2の態様では、本開示は、上述されたとおりの基材コーティング装置と、基材とを備える基材コーティングシステムを提供する。フロースルー基材(例えば、モノリスフロースルー基材)及びフィルタ基材(例えば、モノリスフィルタ基材)、ビーズ、並びにセラミック発泡体を含む、様々な基材が知られている。しかし、好ましくは、基材はフロースルー基材又はフィルタ基材(例えば、ウォールフローフィルタ基材)から選択される。
【0036】
フロースルー基材は、概して、通例、それを貫いて延びる複数のチャネルを含み、各チャネルは両端部(即ち、入口における開放端部及び出口における開放端部)において開放している。チャネルは、複数の壁の間に形成される。壁は、概して、無孔材料を含む。フロースルーモノリス基材であって、それを貫いて延びる平行なチャネルのアレイを含む、フロースルーモノリス基材は、本明細書においてハニカムモノリス基材とも称される。
【0037】
対照的に、フィルタ基材は複数のチャネルを含み、各チャネルは開放端部及び閉鎖端部(例えば、閉塞若しくは栓塞端部)を有する。各チャネルは、通例、壁によって、近接した、又は隣り合ったチャネルから分離されている。壁は多孔性材料を含むか、又はそれから実質的に成る。このような多孔性材料は、当技術分野において周知である。
【0038】
概して、フィルタ基材は、複数の入口チャネル及び複数の出口チャネルを含む。各入口チャネルは、基材の第1の面における開放端部、及び基材の反対の第2の面における閉鎖(例えば、閉塞若しくは栓塞)端部(即ち、第2の端部は第1の端部と反対の端部である)を有し、各出口チャネルは、基材の第1の面における閉鎖(例えば、閉塞若しくは栓塞)端部、及び基材の反対の第2の面における開放端部を有する。
【0039】
フィルタ基材内において、基材の第1の面における開放端部及び基材の第2の(即ち、反対の)面における閉鎖端部を有する各チャネルは、通例、基材の第1の面における閉鎖端部及び基材の第2の(即ち、反対の)面における開放端部を有するチャネルに近接している。チャネルの間の流体連通は、基材の壁を介する(例えば、多孔性材料を通したものである)。
【0040】
壁は、通例、0.005~0.050インチ(0.12~1.27mm)、特に、0.010~0.025インチ(0.25~0.64mm)などの、0.002~0.1インチ(0.05~2.54mm)の厚さを有する。
【0041】
通例、フィルタ基材のチャネルは、閉鎖(例えば、閉塞若しくは栓塞)端部及び開放端部を交互に有する。それゆえ、各入口チャネルは、出口チャネルに近接していてもよく、各出口チャネルは、入口チャネルに近接していてもよい。フィルタ基材のどちらかの端部から見たとき、チャネルはチェス盤の外観を有し得る。
【0042】
しかし、フィルタ基材は、別の入口チャネル(即ち、「第2の」入口チャネル)に、並びに任意選択的に、「第1の」出口チャネル及び/若しくは「第2の」出口チャネルなどの、出口チャネルに近接した入口チャネル(即ち、「第1の」入口チャネル)を有し得る。フィルタ基材は、別の出口チャネル(即ち、「第2の」出口チャネル)に、並びに任意選択的に、「第1の」入口チャネル及び/若しくは「第2の」入口チャネルなどの、入口チャネルに近接した出口チャネル(即ち、「第1の」出口チャネル)を有し得る。
【0043】
フィルタ基材は、100~700セル(又は「チャネル」)/平方インチ(cells (or「channels」) per square inch)(「cpsi」)、特に、250~400cpsiを有し得る。
【0044】
基材は、基材の長手方向長さに沿って延びる周辺ゾーンを含み得、周辺ゾーン内における、中心ゾーンと比べて増大させられた壁厚のおかげで、周辺ゾーンは、基材の中心ゾーンに対して増強された強度を有する。周辺ゾーンは、基材の外縁部から基材の中心に向かって約20セル、好ましくは、約10セルの長さにわたって半径方向に延びる。好ましくは、周辺ゾーンは、基材の外縁部から基材の中心に向かって約20セル、より好ましくは、約10セルの長さにわたって半径方向に均一に延びる。
【0045】
第3の態様では、本開示は、基材コーティング装置を用いて基材をウォッシュコートでコーティングする方法であって、
基材コーティング装置が、
ウォッシュコートの供給源と、
複数のノズル開口を有するシャワーヘッドプレートを含むウォッシュコートシャワーヘッドと、
ウォッシュコートの供給源をウォッシュコートシャワーヘッドに流体接続する導管と、
ウォッシュコートシャワーヘッドと基材の面との間に配置された仕切りリングと、
を備える種類のものであり、
本方法が、
- 基材をウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置するステップと、
- 仕切りリングを基材の面と接触させ、これにより、仕切りリングの内部内に位置する基材の面の中心領域、及び仕切りリングの外部に位置する基材の面の周辺領域を規定するステップと、
- ウォッシュコートをウォッシュコートの供給源から、導管に沿って、及びウォッシュコートシャワーヘッドを通して搬送するステップと、
- ウォッシュコートをノズル開口から基材の面に向けて放出するステップであって、ウォッシュコートシャワーヘッドのシャワーヘッドプレートがウォッシュコートを基材の面の中心領域及び周辺領域の両方の上に放出する、ステップと、
を含む、方法を提供する。
【0046】
本方法は、仕切りリングが基材の面の中心に配置されるよう、仕切りリングを基材の面と接触させて整列させることを更に含み得る。
【0047】
本方法は、仕切りリングを基材の長手方向軸に沿った方向に、基材を長手方向軸に沿って運動させた際に仕切りリングと基材の面との間の対面接触が維持されるよう、運動させることを更に含み得る。
【0048】
本方法は、仕切りリングの場所の上方の環帯内においてシャワーヘッドプレートからウォッシュコートを放出しないことを更に含み得る。
【0049】
基材は、上述されたように、フロースルー基材又はフィルタ基材から選択され得る。
【0050】
ウォッシュコートは、液体、及び通例、触媒成分を含む。液体は、溶液又は懸濁液であり得る。懸濁液は、ゾルなどの、コロイド懸濁液、又は非コロイド懸濁液であり得る。液体が溶液又は懸濁液であるとき、このとき、それは水溶液又は水性懸濁液であり得る。通例、液体は懸濁液、特に、水性懸濁液である。
【0051】
通例、液体は触媒成分を含む。表現「触媒成分」は、白金族金属(platinum group metal、PGM)、担体材料(例えば、耐火性酸化物)、又はゼオライトなどの、得られた排出制御デバイスの活動に寄与するウォッシュコート配合物中に含まれ得る任意の成分を包含する。用語「触媒成分」は、用語「触媒」の意味(例えば、反応速度を増大させること)の厳密な本義において、成分自体が触媒作用を有することを必要としないことを理解されたい。例えば、触媒成分は、NOx又は炭化水素を貯蔵又は吸収することができる材料を指すことができる。触媒成分を含む液体(例えば、ウォッシュコート)は、当業者に知られている。液体中に含まれる触媒成分(単数又は複数)は、製造されるべき製品に依存することになる。
【0052】
本発明の方法によって、又は本発明の装置を用いて得られた、コーティングされたフィルタ基材又は製品は、例えば、酸化触媒(例えば、触媒化煤フィルタ[CSF])、選択触媒還元(SCR)触媒(例えば、このとき、製品は選択触媒還元フィルタ[SCRF]触媒と呼ばれ得る)、NOx吸蔵材組成物(例えば、このとき、製品はリーンNOx捕捉フィルタ[LNTF]と呼ばれ得る)、三元触媒組成物(例えば、このとき、製品はガソリン微粒子フィルタ[GPF]と呼ばれ得る)、アンモニアスリップ触媒[ASC]、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせ(例えば、選択触媒還元(SCR)触媒及びアンモニアスリップ触媒[ASC]を含むフィルタ基材)を含むフィルタ基材であり得る。
【0053】
「触媒成分」に加えて、液体は、配合助剤を更に含み得る。用語「配合助剤」は、液体中に、その化学又は物理特性をフィルタ基材上へのコーティングのために変更するために含まれる成分を指す。配合助剤は、例えば、液体中の触媒成分の分散を助けるか、又は液体の粘度を変更し得る。配合助剤は、最終的なコーティングされたフィルタ基材製品中に存在しなくてもよい(例えば、それは、か焼中に分解又は劣化し得る)。配合助剤は、例えば、酸、塩基、増粘剤(例えば、有機化合物増粘剤)、又は結合剤であり得る。
【0054】
ウォッシュコートは、50rpmのBrookfieldで1~3000cP、好ましくは、50rpmのBrookfieldで100~3000cP、より好ましくは、50rpmのBrookfieldで600cP未満の粘度を有し得、一実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのBrookfieldで100~3000cPの粘度を有し、別の実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのBrookfieldで1~350cP、より好ましくは、50rpmのBrookfieldで1~100cPの粘度を有する。本出願では、全ての粘度測定は、Brookfield Engineering Laboratories,Inc.,Middleboro,MA,USAから入手可能な、SC4-18スピンドルを用いたBrookfield DV-II+ Pro(LV)粘度計上で実施された測定を指す。
【0055】
ウォッシュコートは、孔内で可動であるピストンを用いてウォッシュコートの供給からウォッシュコートシャワーヘッドに供給され得、孔は38mm~170mmの内径を有し、ピストンは45~150mm/sで運動させられる。
【0056】
ウォッシュコートは、9~540cm3s-1の速度で、好ましくは、9~270cm3s-1の速度でウォッシュコートシャワーヘッドに供給され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
次に、添付の図面を参照して本開示の実施形態を例としてのみ説明する。
【
図3】仕切りリングを含む本開示に係るコーティング装置の部分の概略図である。
【
図4】仕切りリングを含む本開示に係るコーティング装置の部分の断面図である。
【
図7】仕切りリングと一緒になった
図6の案内機構の斜視図である。
【
図8】ヘッドセットと一緒になった
図7の案内機構及び仕切りリングの斜視図である。
【
図9】本開示に係るシャワーヘッドプレートの平面図である。
【
図10】
図9のシャワーヘッドプレートの斜視図である。
【
図11】本開示に係る別のシャワーヘッドプレートの平面図である。
【
図13】本開示に係るシャワーヘッドの断面斜視図である。
【
図14】本開示に係る別のシャワーヘッドの断面図である。
【
図15】本開示に係るバッフルの第1のバージョンの下からの図である。
【
図16】本開示に係るバッフルの第2のバージョンの側面立面図である。
【
図17】
図16の第2のバージョンのバッフルの下からの図である。
【
図18】
図16の第2のバージョンのバッフルの上からの斜視図である。
【
図19】本開示に係るバッフルの第3のバージョンの側面立面図である。
【
図20】
図19の第3のバージョンのバッフルの下からの図である。
【
図21】
図16の第3のバージョンのバッフルの上からの斜視図である。
【
図22a】望ましい、及び望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
【
図22b】望ましい、及び望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
【
図22c】望ましい、及び望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
【
図22d】望ましい、及び望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
【
図22e】望ましい、及び望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
【
図23】変更を行っていないウォッシュコートシャワーヘッドから堆積させられた周辺強度増強(Enhanced Peripheral Strength)基材のための典型的な注入プロファイルを示す。
【
図24】本開示の仕切りリングを用いて基材上に堆積させられた周辺強度増強のための注入プロファイルのx線画像である。
【
図25】低粘度ウォッシュコートが、変更を行っていないウォッシュコートシャワーヘッドから堆積させられている様子を示す。
【
図26】変更を行っていないウォッシュコートシャワーヘッドから基材上に堆積させられた低粘度ウォッシュコートのx線画像である。
【
図27】本開示の第1のバージョンのバッフルを用いたウォッシュコートシャワーヘッドから基材上に堆積させられたウォッシュコートのx線画像である。
【
図28】本開示の第2のバージョンのバッフルを用いたウォッシュコートシャワーヘッドから基材上に堆積させられたウォッシュコートのx線画像である。
【
図29】本開示の第3のバージョンのバッフルを用いたウォッシュコートシャワーヘッドから基材上に堆積させられたウォッシュコートのx線画像である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
これから、本開示を更に説明する。以下の節において、本開示の異なる態様/実施形態は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。製品に関して開示された特徴は、方法に関連して開示された特徴と組み合わされてもよく、逆もまた同様であることが意図される。
【0059】
図1は、基材10をウォッシュコートでコーティングするために用いられ得る基材コーティング装置1の断面図を示す。
【0060】
基材コーティング装置1は、分配機構を活動化するための装置を包含するハウジング40を有する堆積機2を備え得る。図示のように、分配機構は、流体を出口43から出し、堆積機2の下流に配置された導管35に向けて移動させるよう、孔42内で軸方向に可動であるピストン41を含み得る。
【0061】
コーティング装置1は、ダイヤフラム弁32を介して堆積機2の出口43と接続した出口31を有するホッパリザーバ30を規定するホッパ3を更に備え得る。ホッパ3は、別の場所で配合され、事前混合されたウォッシュコートを充填され得る。ウォッシュコートは、ポンプでホッパリザーバ30内へ送り込まれ得るか、又は重力下で好適な導管を通してホッパリザーバ30内へ供給され得る。
【0062】
堆積機2の出口43は、導管35と流体接続しており、導管35が今度は注入弁4と流体連通するよう延び得る。ウォッシュコートシャワーヘッド5が注入弁4の下面に接続され得、ウォッシュコートシャワーヘッド5は、基材10の上方に位置付けられている。
【0063】
基材10は、ヘッドセット6とパレットインサート(pallet insert)8との間に配置され、位置決めされ得る。真空コーン7を含む真空装置が基材10の下に配置され得る。
【0064】
図2は、
図1の基材コーティング装置1の拡大部分を示し、基材10がウォッシュコートシャワーヘッド5及びヘッドセット6に対してどのように位置付けられ得るのかをより詳細に示す。
【0065】
基材10は、その長手方向長さに沿って均一な断面形状を有し得る基材本体11を有するモノリシックなブロックであり得る。基材本体11は、断面において円形又はほぼ円形の形状を有し得る。基材本体11は、直径dを有し得る。
【0066】
基材本体11は、基材本体11の上面12が最上部にあり、基材本体11の下面13が最下部にあるよう、ヘッドセット6とパレットインサート8との間に延びるように位置付けられ得る。ウォッシュコートシャワーヘッド5は、ヘッドセット6の上方に配置され得、好ましくは、ウォッシュコートシャワーヘッド5の長手方向中心軸xが、
図2に示されるように、ヘッドセット6及び基材10の両方の長手方向中心軸と一致するよう、ヘッドセット6及び基材10と整列させられ得る。
【0067】
ウォッシュコートシャワーヘッド5は、下側において、シャワーヘッドプレート23がボルト28を用いて結合され得る、シャワーヘッドハウジング21を含み得る。アダプタプレート27が、同様にボルトを用いて、シャワーヘッドハウジング21の上側に結合され得る。
【0068】
シャワーヘッドハウジング21は、シャワーヘッドハウジング21とシャワーヘッドプレート23との間に規定されたシャワーヘッド空洞24への入口22を規定する、中心に配置された開口を含み得る。入口22の軸は、長手方向軸xと一致し得る。アダプタプレート27もまた、長手方向軸xと一致し、シャワーヘッドハウジング21の中心部分20を受容するようサイズ設定され得る、中心に配置された開口を含み得る。注入弁4は、シャワーヘッドハウジング21の入口22と流体連通させられ、その状態に保持され得る。
【0069】
シャワーヘッドプレート23は、ノズル開口25のアレイを設けられ得る。
【0070】
使用時には、ダイヤフラム弁32が開放され、ウォッシュコートが、(
図1において見たときの)右へのピストンの運動によってホッパリザーバ30から孔42内へ吸引される。次に、ダイヤフラム弁32は閉じられ、次に、ウォッシュコートの注入分は、(
図1において見たときの)左へ運動する堆積機2のピストン41の作用によって導管35を通して移動させられる。ウォッシュコートは、注入弁4及び入口22を通過し、シャワーヘッド空洞24内へ入る。次に、ウォッシュコートは、ノズル開口25を通過して落下し、基材10の上面12と接触する。次に、ウォッシュコートは、基材10の通路を通して下方へ吸引される。基材10を通したウォッシュコートの吸引は、少なくとも部分的に、真空コーン7によって基材10の下面13に印加される吸引力によって駆動される。
【0071】
図3は、基材コーティング装置1の部分としての仕切りリング60の使用を概略的に示す。仕切りリング60は、ウォッシュコートシャワーヘッド5と基材10の面との間に配置されている。仕切りリング60は、シャワーヘッドプレート23と基材10の上面12との間に配置され得る。
【0072】
仕切りリング60は、基材10の上面12よりも小さくなるよう寸法設定されている。それゆえ、内径pは、基材10の直径dよりも小さい。
【0073】
仕切りリング60は、基材10の上面12と同じ断面形状を有し得る。代替的に、仕切りリング60の形状は、基材10の上面12の形状とは異なってもよい。好ましくは、仕切りリング60は、環状である。仕切りリング60は、平面視において円柱形であり得る。仕切りリング60は、直円柱形であり得る。仕切りリング60は、仕切りリング60の長手方向軸と垂直に取った平面上で円形である断面形状を有し得る。
図5において最も明瞭に見られるように、仕切りリング60は、上部リム77から下部リム76へ延びる側壁78を含み得る。上部リム77は、外方に延びるフランジ63を設けられ得る。下部リム76は、先細状であり得る。側壁78は、壁厚tを有し得る。壁厚tは、約0.5~約5mm、好ましくは、約1~約3mm、特に好ましくは、約2mmである。
【0074】
図3に示されるように、使用時には、仕切りリング60は、基材10の上面12上に配置され、上面12の中心領域14及び上面12の周辺領域15を規定し得る。中心領域14は、仕切りリング60の側壁78内に位置する上面12の区域として規定される。周辺領域15は、仕切りリング60の側壁78の外部に位置する上面12の領域として規定される。
【0075】
仕切りリング60は、周辺領域の幅wが、5~15mm、好ましくは、8~12mm、より好ましくは、10mmになるよう、基材10の上面12に対してサイズ設定され得る。基材10は、最大330mm前後の典型的な直径を有し得る。
【0076】
ウォッシュコートシャワーヘッド5のシャワーヘッド空洞24は、12~40mm、好ましくは、15~30mmの深さを有し得る。シャワーヘッド空洞24は、150~200mm、好ましくは、160~170mmの直径を有し得る。シャワーヘッドプレート23は、シャワーヘッド空洞24の全直径にわたって延び得る。ノズル開口25は、シャワーヘッドプレート23にわたって配列され得る。ノズル開口25は、規則的又は不規則なアレイ状に配列され得る。ノズル開口25は、複数の同心円形アレイ状に配置され得る。
【0077】
シャワーヘッドプレート23は、使用時には、基材10の中心領域14及び周辺領域15の両方に覆いかぶさり得る。シャワーヘッドプレート23は、フィルタ基材10の直径d以上である直径を有し得る。
【0078】
基材コーティング装置1は、ヘッドセット6の部分を形成し得る捕集鍔部75を更に備え得る。捕集鍔部75は、傾斜した内面74を含み得る。捕集鍔部75は、基材10の上面12に近接して、及び/又はそれを囲むように位置付けられ得、傾斜した内面74は、上面12の周辺領域15に向かって下方及び内方へ延びる。好ましくは、捕集鍔部75は、基材10の外皮をつたって落ちる使用時のウォッシュコートの漏れを防止する、又は実質的に防止するための基材10に対する流体密封シールを形成する。
【0079】
基材コーティング装置1は、基材10の上面12との仕切りリング60の正確な整列を得て維持する役割を果たし得る案内機構を更に備え得る。特に、仕切りリング60が基材10の上面12の中心にあるよう、仕切りリング60の長手方向軸が基材10の長手方向軸と一致することを確実にすることが好ましくなり得る。代替的に、又は加えて、仕切りリング60の下部リム76が使用中に基材10の上面12と対面接触して静止し、それとの対面接触を維持することを確実にすることが有益になり得る。
【0080】
案内機構は、仕切りリング60の長手方向軸に対して横に延び、仕切りリング60の円周の周りの離間された場所において、仕切りリング60の側壁78の外表面と接触するように構成された複数の案内ピンを含み得る。案内ピンは、ヘッドセット6上に可動に装着され得、例えば、捕集鍔部75から延びる。
【0081】
図6~
図8は、案内リング62を含む案内機構の代替的な形態を示す。案内リング62は、リング本体66、及びボルト孔開口68を各々含む複数の外方に延びるアーム67を含み得る。リング本体66は、側壁78がリング本体66内でスライド運動することはできるが、リング本体66に対する実質的な横方向運動を制約されるよう、サイズ設定されている。仕切りリング60が、上部リム77において、外方に延びるフランジ63を含む場合には、外方に延びるフランジ63は、リング本体66の内径よりも大きくなるようサイズ設定されている。この特徴の使用は、以下において更に説明されることになる。
【0082】
図7に示されるように、その結果、仕切りリング60は、リング本体66内に受容され得る。
図8に示されるように、アーム67の遠位端部におけるボルト孔開口68は、ボルトなどの固定具を用いて案内リング62をヘッドセット6にしっかりと装着するために用いられ得る。このように、案内リング62は、ヘッドセット6に対して定位置に固定され得、その一方で、仕切りリング60が案内リング62及びヘッドセット6の両方に対して長手方向に運動することを可能にする。
【0083】
シャワーヘッドプレート23は、ノズル開口25を設けられ得る。ノズル開口25は、アレイ状に配置され得る。
図9及び
図10は、ノズル開口25が同心円形アレイ上に配置されている第1のバージョンのシャワーヘッドプレート23を示す。ノズル開口25の円形アレイは、基材10の上面12、及び、存在する場合には、捕集鍔部75の傾斜した内面74に覆いかぶさるシャワーヘッドプレート23の実質的に全区域を覆い得る。
【0084】
図11及び
図12に、代替バージョンのシャワーヘッドプレート23が示されている。このバージョンでは、ノズル開口25のアレイは、使用時において、仕切りリング60の側壁78の鉛直上方に存在するシャワーヘッドプレート23の領域内にノズル開口25が配置されていないという点で異なる。図示の例では、これは、開口の1つの円形アレイを省略することによって達成される。このシャワーヘッドプレート23は、仕切りリング60の上部リム77及び/又は外方に延びるフランジ63上へのウォッシュコートの直接の堆積を低減又は回避するのに有益になり得る。
【0085】
使用時には、基材10は、通例、基材10を長手方向に上方及び下方に運動させることによって、ヘッドセット6と係合及び係合解除するよう可動になる。上述されたように、仕切りリング60は、ヘッドセット6内に設けられ、案内リング62を用いてそれに装着され得る。基材10は、まず、パレットインサート8上に位置付けられ、次に、持ち上げられてヘッドセット6と係合し得る。この動きの最中に、基材10の上面12は、仕切りリング60の下部リム76と接触し得る。基材10の、それをヘッドセット6と密閉係合させるための更なる上方運動は、案内リング62内の仕切りリング60の上方運動を同時にもたらし得、それゆえ、下部リム76が上面12との対面接触を維持することを確実にする。それゆえ、基材10がその最終位置にある状態で、仕切りリング60は、上面12上の中心に、上面12と対面接触して配置され得る。
【0086】
次に、シャワーヘッドプレート23のノズル開口25からウォッシュコートを放出することによって、ウォッシュコート9が上面12上に移動させられ得る。ウォッシュコートは、堆積機2のピストン41を用いてウォッシュコートの供給からウォッシュコートシャワーヘッド5に供給され得る。ピストン41は、孔42内で可動であり、孔42は、38mm~170mmの内径を有し得、ピストン41は、45~150mm/sで運動させられ得る。ウォッシュコートは、導管35に沿って移動させられ、注入弁4を通り、ウォッシュコートシャワーヘッド5内へ入る。ウォッシュコートは、7~640cm3s-1の速度でウォッシュコートシャワーヘッド5に供給され得る。
【0087】
ノズル開口25からのウォッシュコート9の放出によって、ある割合のウォッシュコート9は、上面12の中心領域14内に放出される、即ち、仕切りリング60の内部内に放出されることになり、その一方で、ウォッシュコート9の残りのものは-直接、又は存在する場合には、捕集鍔部75の傾斜した内面74をつたって流れ落ちることを介して-上面12の周辺領域15内に放出されることになる。このように、仕切りリング60が存在しないとした場合よりも大きな割合のウォッシュコート9が、上面12の周辺領域15上に放出され得る。ウォッシュコート9を堆積させた後に、ウォッシュコート9は、真空コーン7によって印加される吸引力によって基材本体11の通路を通して吸引される。
【0088】
比較例
Brookfield DV-II+ Pro(LV)及びSC4-18スピンドルを用いて、35%の固形分、並びに25rpmのスピンドル回転速度で58cPの粘度、及び100rpmのスピンドル回転速度で32cPの粘度を有する、フィルタ基材のための選択触媒還元(SCR)触媒ウォッシュコートを調製した。
【0089】
ウォッシュコートを、163.4mmの直径及び193mmの高さを有する周辺強度増強チタン酸アルミニウムフィルタ(Corningから入手可能)上にコーティングした。
【0090】
コーティングは、仕切りリング60を有しない
図1に示される装置を用いて実施した。
【0091】
図23に、装置によって様々なピストン堆積機速度でコーティングされたこのEPS基材の典型的なプロファイルが示されている。これらは基材のx線画像であり、コーティングは、コーティングのより高い質量密度のゆえに、(部分の下部における)明るい裸の基材に対してより暗く示されている。
【0092】
図23に示されるように、このコーティング注入では基材の縁部における領域は短い。
【0093】
実施例1
図23において見られる効果を改善するために、仕切りリング60を用いた。
【0094】
比較例と同じウォッシュコートを用い、同じ基材-163.4mmの直径及び193mmの高さを有する周辺強度増強チタン酸アルミニウムフィルタ(Corningから入手可能)-に適用した。
【0095】
仕切りリング60は143mmの内径を有し、10mmの周辺領域の幅wをもたらした。
【0096】
図24に、結果として得られたコーティングプロファイルが示されており、これは、より平坦なコーティングプロファイルが得られることを示す。
【0097】
図13は、バッフル50がシャワーヘッド空洞24内に設けられている、本開示に係る基材コーティング装置1のウォッシュコートシャワーヘッド5の変更を示す。
【0098】
バッフル50は、不透過性中心本体51、及び不透過性中心本体51から延び、不透過性中心本体51の周りに円周方向に配置された複数の流れ開口53を規定する複数のアーム52を含む。
【0099】
バッフル50は、ボルト開口55を貫いてアーム52の各々の遠位端部に向かって延び得るボルト29を用いてシャワーヘッドハウジング21に装着され得る。バッフル50の装着点は、シャワーヘッドハウジング21の入口22を包囲し得るが、好ましくは、それには影響を与えない。ボルト29は、4mmボルトであり得る。ボルト開口55の各々は、バッフル50の上面57とシャワーヘッドハウジング21の上部内面との間の間隔を規定するとともに、バッフル50の下面58とシャワーヘッドプレート23の上部内面との間の間隔26を規定する役割を果たし得るスタンドオフリング56によって包囲され得る。各スタンドオフリング56は、4~6mm、好ましくは、4.5mmの高さを有し得る。間隔26は、5~10mm、好ましくは、およそ8mmであり得る。
【0100】
図13~
図15は、本開示に係るバッフル50の第1のバージョンを示す。(本バージョン及び以下において説明される他のバージョンの)バッフル50は、
図13に示されるように平坦であり得るか、又は
図14に示されるように上面57上の中心に配置された円錐若しくは部分円錐突出部54を設けられ得る、上面57を設けられ得る。
【0101】
図15において最も明瞭に見られるように、バッフル50は(円錐又は部分円錐突出部54を設けられているか否かにかかわらず)十字状の形状を有し得、4つのアーム52a~dが設けられている。好ましくは、4つのアーム52a~dは、不透過性中心本体51の円周の周りに等間隔で離間されており、このような、それらはその隣り合ったアームから各々90°離間されている。同様に、バッフル50は、不透過性中心本体51の円周の周りに等間隔で離間された4つの流れ開口53a~dを含み得、このような、それらはその隣り合った流れ開口から各々90°離間されている。
【0102】
アーム52a~dの長さは、不透過性中心本体51の直径と比べて比較的短くてもよい。アーム52a~4は、均一な幅及び深さを有し得る。
図5の図示の例では、ボルト開口55は70mmのピッチ円径上に配置され得、不透過性中心本体51は25mmの半径r
1及び50mmの直径を有し得る。
【0103】
バッフル50はステンレス鋼、例えば、タイプ316で形成され得る。
【0104】
第1のバージョンのバッフル50は、円形断面形状、及びおよそ175mm未満、より具体的には、172.8mm未満の直径を有する基材10をコーティングする際に、特に有利に用いられ得る。第1のバージョンのバッフル50はまた、非円形断面形状を有する基材10をコーティングする際にも、特に有利に用いられ得る。更に、第1のバージョンのバッフル50は、選択触媒還元フィルタ(SCRF)、軽負荷ディーゼル触媒煤フィルタ(light duty diesel catalytic soot filter、LDD CSF)、又はガソリン微粒子フィルタ(GPF)のための基材10をコーティングする際に、特に有利に用いられ得る。
【0105】
図16~
図18は、本開示に係るバッフル50の第2のバージョンを示す。
図17及び
図18において最も明瞭に見られるように、バッフル50は(円錐又は部分円錐突出部54を設けられているか否かにかかわらず)十字状の形状を有し得、4つのアーム52a~dが設けられている。第1のバージョンと同様に、4つのアーム52a~dは、不透過性中心本体51の円周の周りに等間隔で離間され得、これにより、それらはその隣り合ったアームから各々90°離間されている。同様に、バッフル50は、不透過性中心本体51の円周の周りに等間隔で離間された4つの流れ開口53a~dを含み得、このような、それらはその隣り合った流れ開口から各々90°離間されている。
【0106】
アーム52a~dの長さは、第1のバージョンの場合よりも長い。
図17の図示の例では、ボルト開口55は70mmのピッチ円径上に配置され得、不透過性中心本体51は17.5mmの半径r
2及び35mmの直径を有し得る。その結果、不透過性中心本体51の区域は低減され、流れ開口53a~dの開放区域は第1のバージョンのバッフル50と比べて増大させられている。
【0107】
アーム52a~4は、均一な深さを有し得る。アーム52a~dの幅は、先細状であり得る。複数のアーム52a~dの各々の幅は、不透過性中心本体51の近位の場所から不透過性中心本体51の遠位の場所へと増大し得る。
【0108】
バッフル50はステンレス鋼、例えば、タイプ316で形成され得る。
【0109】
第2のバージョンのバッフル50は、およそ250mm超、より具体的には、266.7mm超の直径を有する基材10をコーティングする際に、特に有利に用いられ得る。更に、第2のバージョンのバッフル50は、重負荷ディーゼルフィルタ(heavy-duty diesel filter、HDD)のための基材10をコーティングする際に、特に有利に用いられ得る。
【0110】
図19~
図21は、本開示に係る第3のバージョンのバッフル50を示す。
図20及び
図21において最も明瞭に見られるように、バッフル50は(円錐又は部分円錐突出部54を設けられているか否かにかかわらず)十字状の形状を有し得、4つのアーム52a~dが設けられている。第1及び第2のバージョンと同様に、4つのアーム52a~dは、不透過性中心本体51の円周の周りに等間隔で離間され得、これにより、それらはその隣り合ったアームから各々90°離間されている。同様に、バッフル50は、不透過性中心本体51の円周の周りに等間隔で離間された4つの流れ開口53a~dを含み得、このような、それらはその隣り合った流れ開口から各々90°離間されている。
【0111】
アーム52a~dの長さは、第2のバージョンの場合よりも長い。
図10の図示の例では、ボルト開口55は70mmのピッチ円径上に配置され得、不透過性中心本体51は、13.5mmの半径r
3及び27mmの直径を有し得る。その結果、不透過性中心本体51の区域は低減され、流れ開口53a~dの開放区域は第2のバージョンのバッフル50と比べて増大させられている。
【0112】
アーム52a~4は、均一な深さを有し得る。第2のバージョンと同様に、アーム52a~dの幅は、先細状であり得る。複数のアーム52a~dの各々の幅は、不透過性中心本体51の近位の場所から不透過性中心本体51の遠位の場所へと増大し得る。
【0113】
バッフル50はステンレス鋼、例えば、タイプ316で形成され得る。
【0114】
第3のバージョンのバッフル50は、170mm~275mm、より具体的には、172.8mm~266.7mmの直径を有する基材10をコーティングする際に、特に有利に用いられ得る。更に、第3のバージョンのバッフル50は、触媒煤フィルタ(CSF)のための基材10をコーティングする際に、特に有利に用いられ得る。
【0115】
使用時には、上述されたように、ウォッシュコートは、堆積機2のピストン41を用いてウォッシュコートの供給からウォッシュコートシャワーヘッド5に供給され得る。ピストン41は孔42内で可動であり、孔42は、38mm~170mmの内径を有し得、ピストン41は45~150mm/sで運動させられ得る。ウォッシュコートは、導管35に沿って移動させられ、注入弁4を通り、ウォッシュコートシャワーヘッド5内へ入る。ウォッシュコートは、7~640cm3s-1の速度でウォッシュコートシャワーヘッド5に供給され得る。
【0116】
ウォッシュコートは、入口22を通ってシャワーヘッド空洞24へ入り得る。ウォッシュコートは、シャワーヘッドプレート23に到達する前に(存在する場合には、円錐又は部分円錐突出部を含む)バッフルの不透過性中心本体51と接触する。したがって、ウォッシュコートは、シャワーヘッド空洞24の周辺に向けて横方向に偏向させられ、これにより、ウォッシュコートは、シャワーヘッドプレート23の中心又はその付近に配置されたノズル開口25に直ちに到達しない。ウォッシュコートは、バッフルの複数の流れ開口53a~dを流れ抜け、次に、シャワーヘッド空洞24内を流通してノズル開口25を通過する。アーム52a~d及び流れ開口53a~dのサイズ及び形状の構成のゆえに、ノズル開口25を通したウォッシュコートの均一又はほぼ均一な放出が達成されるよう、十分なウォッシュコートがシャワーヘッドプレート23の中心へ再流通して戻ることが可能にされ得る。
【0117】
ノズル開口25からのウォッシュコート9の放出によって、ある割合のウォッシュコート9は、上面12の中心領域14内に放出される、即ち、仕切りリング60の内部内に放出されることになり、その一方で、ウォッシュコート9の残りのものは-直接、又は存在する場合には、捕集鍔部75の傾斜した内面74をつたって流れ落ちることを介して-上面12の周辺領域15内に放出されることになる。このように、仕切りリング60が存在しないとした場合よりも大きな割合のウォッシュコート9が、上面12の周辺領域15上に放出され得る。ウォッシュコート9を堆積させた後に、ウォッシュコート9は、真空コーン7によって印加される吸引力によって基材本体11の通路を通して吸引される。
【0118】
全てのバージョンの基材コーティング装置1において、ウォッシュコートは、液体、及び通例、触媒成分を含み得る。液体は、溶液又は懸濁液であり得る。懸濁液は、ゾルなどの、コロイド懸濁液、又は非コロイド懸濁液であり得る。液体が溶液又は懸濁液であるとき、このとき、それは水溶液又は水性懸濁液であり得る。通例、液体は懸濁液、特に、水性懸濁液である。
【0119】
通例、液体は触媒成分を含む。表現「触媒成分」は、白金族金属(PGM)、担体材料(例えば、耐火性酸化物)、又はゼオライトなどの、得られた排出制御デバイスの活動に寄与するウォッシュコート配合物中に含まれ得る任意の成分を包含する。用語「触媒成分」は、用語「触媒」の意味(例えば、反応速度を増大させること)の厳密な本義において、成分自体が触媒作用を有することを必要としないことを理解されたい。例えば、触媒成分は、NOx又は炭化水素を貯蔵又は吸収することができる材料を指すことができる。触媒成分を含む液体(例えば、ウォッシュコート)は、当業者に知られている。液体中に含まれる触媒成分(単数又は複数)は、製造されるべき製品に依存することになる。
【0120】
本発明の方法によって、又は本発明の装置を用いて得られた、コーティングされたフィルタ基材又は製品は、例えば、酸化触媒(例えば、触媒化煤フィルタ[CSF])、選択触媒還元(SCR)触媒(例えば、このとき、製品は選択触媒還元フィルタ[SCRF]触媒と呼ばれ得る)、NOx吸蔵材組成物(例えば、このとき、製品はリーンNOx捕捉フィルタ[LNTF]と呼ばれ得る)、三元触媒組成物(例えば、このとき、製品はガソリン微粒子フィルタ[GPF]と呼ばれ得る)、アンモニアスリップ触媒[ASC]、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせ(例えば、選択触媒還元(SCR)触媒及びアンモニアスリップ触媒[ASC]を含むフィルタ基材)を含むフィルタ基材であり得る。
【0121】
「触媒成分」に加えて、液体は配合助剤を更に含み得る。用語「配合助剤」は、液体中に、その化学又は物理特性をフィルタ基材上へのコーティングのために変更するために含まれる成分を指す。配合助剤は、例えば、液体中の触媒成分の分散を助けるか、又は液体の粘度を変更し得る。配合助剤は、最終的なコーティングされたフィルタ基材製品中に存在しなくてもよい(例えば、それは、か焼中に分解又は劣化し得る)。配合助剤は、例えば、酸、塩基、増粘剤(例えば、有機化合物増粘剤)、又は結合剤であり得る。
【0122】
ウォッシュコートは、50rpmのBrookfieldで1~3000cP、好ましくは、50rpmのBrookfieldで100~3000cP、より好ましくは、50rpmのBrookfieldで600cP未満の粘度を有し得、一実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのBrookfieldで100~3000cPの粘度を有し得、別の実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのBrookfieldで1~350cP、より好ましくは、50rpmのBrookfieldで1~100cPの粘度を有し得る。(全ての測定は、SC4-18スピンドルを用いたBrookfield DV-II+ Pro (LV)粘度計上で得られた)。
【0123】
基材体積の利用を最大化し、複数のコートを基材10の部分に適用することを防止し、ウォッシュコートの引き抜きを防止するためには、一貫した予測可能なコーティングプロファイルを達成することが望ましい。例えば、
図22aに概略的に示されるとおりの平坦なコーティングプロファイルが望ましい。図示のように、基材10は、ウォッシュコートによってコーティングされたコーティング部分45、及びウォッシュコートが到達しなかった未コーティング部分46を有する。コーティング部分45と未コーティング部分46との間の界面は平坦であり、これが望ましい結果である。
【0124】
図22bは、コーティング部分45と未コーティング部分46との間の望ましくない「U字形」界面を示す。具体的には、これは、ウォッシュコートが、基材本体11の周辺領域内では中心領域内ほど下方まで基材10に貫入しなかった場合を示す。これは、周辺領域内でより大きい吸水が存在する場合に生じると考えられ、基材の周辺領域内の通路の壁厚が基材の中心領域内よりも大きい、強化周辺領域を含む基材に特有の問題であり得る。
【0125】
図22cは、コーティング部分45と未コーティング部分46との間の望ましくない「V字形」界面を示す。これは、過度の量のウォッシュコートが基材10の上面12の中心部分に適用される場合に生じると考えられ、ウォッシュコートが低い粘度を有する場合の特有の問題であり得る。
【0126】
図22dは、
図22cのものと同様であるコーティングプロファイルを示すが、基材の周辺部分が適切にコーティングされる前にウォッシュコートが基材の下面13の中心部分から引き出される引き抜きがどのように生じ得るのかを示す。
【0127】
最後に、
図22eは、コーティング部分45と未コーティング部分46との間の「M字形」界面を有する別の望ましくないコーティングプロファイルを示す。これは、ウォッシュコートが、それがノズル開口25を通過する前に十分に再流通してシャワーヘッドプレート23の中心内へ戻ることができない場合に生じると考えられる。
【0128】
比較例
Brookfield DV-II+ Pro(LV)及びSC4-18スピンドルを用いて、10%の固形分、及びスピンドル回転速度25~100rpmにわたって5cPのニュートン粘度を有する、基材のための触媒ウォッシュコートを調製した。
【0129】
バッフルが存在しないウォッシュコートシャワーヘッド5を利用した、
図1のコーティング装置1を用いてウォッシュコートを炭化ケイ素フィルタ基材上にコーティングしたときには、
図25に示されるように、より多くのウォッシュコートがウォッシュコートシャワーヘッド5の中心孔から噴出された。
【0130】
これは、
図26に示されるv字形の不均等なコーティングプロファイルをもたらすことが見出された。この図は、基材のx線画像であり、ウォッシュコートのコーティングは、ウォッシュコートのコーティングのより高い質量密度のゆえに、明るい裸の基材に対してより暗く示されている。
【0131】
実施例2
図26において見られる効果を改善するために、
図13~
図15に示されるとおりの、バッフル50の第1のバージョンを、
図13に示されるように、シャワーヘッドハウジング21に付加した。
【0132】
次に、このバッフルプレート50、及び上述の比較例と同じ触媒ウォッシュコートを用いて、143.8mmの直径の炭化ケイ素フィルタ基材10をコーティングした。
図27のx線画像によって示されるように、より均等なコーティングプロファイルが得られた。同図において、ウォッシュコートのコーティングは、ウォッシュコートのコーティングのより高い質量密度のゆえに、明るい裸の基材に対してより暗く示されている。
【0133】
実施例3
図26において見られる効果を改善するために、
図16~
図18に示されるとおりの、バッフル50の第2のバージョンをシャワーヘッドハウジング21に付加した。
【0134】
次に、このバッフルプレート50、及び上述の比較例と同じ触媒ウォッシュコートを用いて、330.3mmの直径の炭化ケイ素フィルタ基材10をコーティングした。
図28のx線画像によって示されるように、より均等なコーティングプロファイルが得られた。同図において、ウォッシュコートのコーティングは、ウォッシュコートのコーティングのより高い質量密度のゆえに、明るい裸の基材に対してより暗く示されている。
【0135】
実施例4
図26において見られる効果を改善するために、
図19~
図21に示されるとおりの、バッフル50の第3のバージョンをシャワーヘッドハウジング21に付加した。
【0136】
次に、このバッフルプレート50、及び上述の比較例と同じ触媒ウォッシュコートを用いて、172.8mmの直径の炭化ケイ素フィルタ基材10をコーティングした。
図29のx線画像によって示されるように、より均等なコーティングプロファイルが得られた。同図において、ウォッシュコートのコーティングは、ウォッシュコートのコーティングのより高い質量密度のゆえに、明るい裸の基材に対してより暗く示されている。
【0137】
上述されたように、本出願人は、本明細書において説明されるとおりの仕切りリング60を、任意選択的に、本明細書において説明されるとおりのバッフル50を含むウォッシュコートシャワーヘッド5と組み合わせて用いることによって、基材の周辺領域内の通路の壁厚が基材の中心領域内よりも大きい、強化周辺領域を含むものを含む広範なサイズの基材にわたって、望ましい平坦又はほぼ平坦なコーティングプロファイルが達成され得ることを見出した。
【0138】
疑義を回避するために、本明細書に確認された全ての文書の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。