(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20250528BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250528BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 643C
(21)【出願番号】P 2022005866
(22)【出願日】2022-01-18
【審査請求日】2024-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】安武 陽介
(72)【発明者】
【氏名】石井 弘晃
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-61403(JP,A)
【文献】特開2016-152278(JP,A)
【文献】特開2008-205059(JP,A)
【文献】特開平11-33439(JP,A)
【文献】特開平8-316118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板を回転させる回転部と、
回転される前記基板の周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出する処理液ノズルと、
前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記処理液供給部は、前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整する液圧調整部を有し、
前記処理液ノズルは、供給される処理液の液圧に応じて前記吐出口の開口幅を規定する弾性部材を有し、
前記制御部は、前記吐出口の開口幅が所定値となる液圧にて処理液が供給されるように前記液圧調整部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
処理液の液圧と前記吐出口の開口幅と前記吐出口から吐出される処理液の流量との相関関係を関連付けたテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記テーブルに基づいて前記液圧調整部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の基板処理装置において、
前記処理液ノズルは、
前記吐出口が設けられた外側部材と、
前記外側部材内をスライド移動可能に設けられ、開口部を有する内側部材と、
を有し、
前記弾性部材および前記処理液の液圧によって規定される前記内側部材の位置に応じて定まる前記吐出口と前記開口部との重複長さが前記開口幅となることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記弾性部材はバネであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板を回転させる回転部と、
回転される前記基板の周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出する処理液ノズルと、
前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液ノズルおよび前記処理液供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記処理液ノズルは、前記吐出口の開口幅を規定する開口幅規定機構を有し、
前記処理液供給部は、前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整する液圧調整部を有し、
前記制御部は、前記吐出口の開口幅が所定値となるように前記開口幅規定機構を制御するとともに、前記吐出口からの処理液の流量が所定値となるように前記液圧調整部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理方法であって、
基板を保持する保持工程と、
保持された前記基板を回転させる回転工程と、
回転される前記基板の周縁部に向けて処理液ノズルの吐出口から処理液を吐出する吐出工程と、
前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給工程と、
を備え、
前記吐出口の開口幅は前記処理液ノズルに供給される処理液の液圧に応じて前記処理液ノズルに設けられた弾性部材によって規定され、
前記処理液供給工程では、前記吐出口の開口幅が所定値となる液圧にて前記処理液ノズルに処理液を供給することを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の基板処理方法において、
処理液の液圧と前記吐出口の開口幅と前記吐出口から吐出される処理液の流量との相関関係を関連付けたテーブルを記憶する記憶工程をさらに備え、
前記処理液供給工程では、前記テーブルに基づいて前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を決定することを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理方法であって、
基板を保持する保持工程と、
保持された前記基板を回転させる回転工程と、
回転される前記基板の周縁部に向けて処理液ノズルの吐出口から処理液を吐出する吐出工程と、
前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給工程と、
を備え、
前記処理液供給工程では、前記吐出口の開口幅を所定値に規定するとともに、前記吐出口からの処理液の流量が所定値となるように前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整することを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などに用いるflat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程では、半導体基板(以下、単に「基板」と称する)に対して種々の処理を行う基板処理装置が用いられている。そのような基板処理装置の1つに、基板を水平姿勢で保持して回転させつつ、当該基板の周縁部に処理液を吐出してエッチング処理(いわゆるベベルエッチング)を行うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。典型的には、吐出される処理液の液柱の径は約0.3mmであり、処理対象となる基板の周縁部の幅は1mm~数mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-142677号公報
【文献】特開2021-141233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理液吐出時のエッチングレートは、処理液の接液点において最も高い。従って、液柱径が0.3mmの処理液によって幅数mmの基板周縁部のエッチング処理を行ったときには、処理液の接液点でのエッチングレートは高いものの、接液点から離れるほどエッチングレートが低くなる傾向が認められる。
【0005】
基板周縁部の全域にて均一に高いエッチングレートを得るためには、吐出口の開口幅を広くした処理液ノズルから処理液を帯状に吐出して基板周縁部の幅の全体に処理液を着液させることが考えられる。このようにすれば、基板周縁部の幅の全体が接液点となるため、その幅方向の全体にわたってエッチングレートを高くすることができる。
【0006】
しかしながら、基板の周縁部の幅には1mm~数mmの範囲があり、処理液ノズルの吐出口の開口幅は想定される最大の基板周縁部の幅に対応できる広いものとしておく必要がある。そうすると、エッチング幅を小さくしたい場合には、広い開口幅の吐出口から吐出された処理液の一部が基板に着液することなく無駄に廃棄されるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、処理液を無駄に消費することなく、基板の周縁部の全域に処理液を着液させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理装置において、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板を回転させる回転部と、回転される前記基板の周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出する処理液ノズルと、前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給部と、前記処理液供給部を制御する制御部と、を備え、前記処理液供給部は、前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整する液圧調整部を有し、前記処理液ノズルは、供給される処理液の液圧に応じて前記吐出口の開口幅を規定する弾性部材を有し、前記制御部は、前記吐出口の開口幅が所定値となる液圧にて処理液が供給されるように前記液圧調整部を制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、処理液の液圧と前記吐出口の開口幅と前記吐出口から吐出される処理液の流量との相関関係を関連付けたテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記テーブルに基づいて前記液圧調整部を制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板処理装置において、前記処理液ノズルは、前記吐出口が設けられた外側部材と、前記外側部材内をスライド移動可能に設けられ、開口部を有する内側部材と、を有し、前記弾性部材および前記処理液の液圧によって規定される前記内側部材の位置に応じて定まる前記吐出口と前記開口部との重複長さが前記開口幅となることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記弾性部材はバネであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理装置において、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板を回転させる回転部と、回転される前記基板の周縁部に向けて吐出口から処理液を吐出する処理液ノズルと、前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給部と、前記処理液ノズルおよび前記処理液供給部を制御する制御部と、を備え、前記処理液ノズルは、前記吐出口の開口幅を規定する開口幅規定機構を有し、前記処理液供給部は、前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整する液圧調整部を有し、前記制御部は、前記吐出口の開口幅が所定値となるように前記開口幅規定機構を制御するとともに、前記吐出口からの処理液の流量が所定値となるように前記液圧調整部を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理方法において、基板を保持する保持工程と、保持された前記基板を回転させる回転工程と、回転される前記基板の周縁部に向けて処理液ノズルの吐出口から処理液を吐出する吐出工程と、前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給工程と、を備え、前記吐出口の開口幅は前記処理液ノズルに供給される処理液の液圧に応じて前記処理液ノズルに設けられた弾性部材によって規定され、前記処理液供給工程では、前記吐出口の開口幅が所定値となる液圧にて前記処理液ノズルに処理液を供給することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る基板処理方法において、処理液の液圧と前記吐出口の開口幅と前記吐出口から吐出される処理液の流量との相関関係を関連付けたテーブルを記憶する記憶工程をさらに備え、前記処理液供給工程では、前記テーブルに基づいて前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を決定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、基板の周縁部に向けて処理液を吐出する基板処理方法において、基板を保持する保持工程と、保持された前記基板を回転させる回転工程と、回転される前記基板の周縁部に向けて処理液ノズルの吐出口から処理液を吐出する吐出工程と、前記処理液ノズルに処理液を供給する処理液供給工程と、を備え、前記処理液供給工程では、前記吐出口の開口幅を所定値に規定するとともに、前記吐出口からの処理液の流量が所定値となるように前記処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項4の発明によれば、処理液ノズルは、供給される処理液の液圧に応じて吐出口の開口幅を規定する弾性部材を有し、吐出口の開口幅が所定値となる液圧にて処理液が供給されるように液圧調整部を制御するため、吐出口の開口幅が基板の周縁部の幅と等しくなる液圧にて処理液を供給すれば、処理液を無駄に消費することなく、基板の周縁部の全域に処理液を着液させることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、吐出口の開口幅が所定値となるように開口幅規定機構を制御するとともに、吐出口からの処理液の流量が所定値となるように液圧調整部を制御するため、吐出口の開口幅を基板の周縁部の幅と等しくして処理液を供給すれば、処理液を無駄に消費することなく、基板の周縁部の全域に処理液を着液させることができる。
【0018】
請求項6および請求項7の発明によれば、吐出口の開口幅は処理液ノズルに供給される処理液の液圧に応じて処理液ノズルに設けられた弾性部材によって規定され、吐出口の開口幅が所定値となる液圧にて処理液ノズルに処理液を供給するため、吐出口の開口幅が基板の周縁部の幅と等しくなる液圧にて処理液を供給すれば、処理液を無駄に消費することなく、基板の周縁部の全域に処理液を着液させることができる。
【0019】
請求項8の発明によれば、吐出口の開口幅を所定値に規定するとともに、吐出口からの処理液の流量が所定値となるように処理液ノズルに供給する処理液の液圧を調整するため、吐出口の開口幅を基板の周縁部の幅と等しくして処理液を供給すれば、処理液を無駄に消費することなく、基板の周縁部の全域に処理液を着液させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
【
図2】処理ユニットの構成の例を示す図解的な断面図である。
【
図3】第1実施形態の処理液ノズルの構成を示す図である。
【
図4】
図3の処理液ノズルを下方から見た図である。
【
図7】第1実施形態の基板処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】処理液供給の開始時点における処理液ノズルの状態を示す図である。
【
図9】バネの復元力と処理液の液圧とが均衡したときの処理液ノズルの状態を示す図である。
【
図10】第2実施形態の処理液ノズルの構成を示す図である。
【
図11】第2実施形態における基板の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態の処理液ノズルの構成を示す図である。
【
図13】第4実施形態の処理液ノズルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置100の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置100は、半導体ウェハーなどの円板形状のシリコン基板である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0023】
基板処理装置100は、基板Wの周縁部に対して薬液およびリンス液を吐出して表面処理を行った後、基板Wの乾燥処理を行う。上記の薬液としては、例えば、エッチング処理を行うための液、または、不要な膜を除去するための液が含まれ、具体的には、バッファードフッ酸(BHF)、または、希フッ酸(DHF)などが用いられる。また、リンス液としては、典型的には純水が用いられる。以下の説明では、薬液、リンス液および有機溶剤などを総称して「処理液」とする。
【0024】
基板処理装置100は、複数の処理ユニット1と、ロードポートLPと、インデクサロボット102と、主搬送ロボット103と、制御部16とを備える。
【0025】
ロードポートLPには、処理ユニット1で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置される。キャリアCの形態としては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した基板Wを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0026】
インデクサロボット102は、キャリアCと主搬送ロボット103との間で基板Wを搬送する。また、主搬送ロボット103は、インデクサロボット102と処理ユニット1との間で基板Wを搬送する。インデクサロボット102がキャリアCから取り出した基板Wを主搬送ロボット103が受け取って処理ユニット1に搬入する。また、主搬送ロボット103が処理ユニット1から搬出した基板Wをインデクサロボット102が受け取ってキャリアCに収納する。
【0027】
処理ユニット1は、1枚の基板Wに対して液処理および乾燥処理を行う。本実施形態の基板処理装置100には、同様の構成である12個の処理ユニット1が配置されている。具体的には、それぞれが3個の処理ユニット1を鉛直方向に積層してなる4つのタワーが(つまり、合計12個の処理ユニット1が)、主搬送ロボット103の周囲を取り囲むようにして配置されている。
図1では、3段に重ねられた処理ユニット1の1つが概略的に示されている。なお、基板処理装置100における処理ユニット1の数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0028】
主搬送ロボット103は、処理ユニット1が積層された4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサロボット102から受け取った処理対象となる基板Wをそれぞれの処理ユニット1内の処理カップ200に搬入する。また、主搬送ロボット103は、それぞれの処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット102に渡す。制御部16は、基板処理装置100のそれぞれの構成要素の動作を制御する。
【0029】
以下、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット1についても、ノズルの配置関係が異なること以外は、同一の構成を有する。
【0030】
図2は、処理ユニット1の構成の例を示す図解的な断面図である。処理ユニット1は、基板Wの周縁部に処理液を吐出して当該周縁部にエッチング処理を施すユニットである。本実施形態では、基板Wの周縁部とは、基板Wの上面の周縁領域、基板Wの下面の周縁領域、および、基板Wの外周端を含む部分である。また、周縁領域とは、基板Wの外周端から、例えば0.1mm以上、かつ、数mm以下の幅を有する円環状の領域である。
【0031】
処理ユニット1は、処理チャンバー4と、処理チャンバー4内で基板Wを水平な姿勢で保持し、かつ、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの周縁部(正確には上面の周縁領域)に処理液を吐出する処理液ノズル300と、処理液ノズル300に処理液を供給する処理液供給ユニット6と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面の中央部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット8と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面の周縁領域に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット9と、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面の周縁領域に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット10と、スピンチャック5に保持されている基板Wの周縁部を加熱するヒーター11と、スピンチャック5を取り囲む処理カップ200と、を備える。
【0032】
処理チャンバー4は、箱状の隔壁113と、隔壁113の上部から隔壁113内(処理チャンバー4内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)14と、隔壁113の下部から処理チャンバー4内の気体を排出する排気装置(ここでは、図示しない)とを備える。
【0033】
FFU14は、隔壁113の上方に配置されており、具体的には隔壁113の天井に取り付けられている。FFU14は、隔壁113の天井から処理チャンバー4内に清浄空気を送る。排気装置は、処理カップ200内に接続された排気ダクト115を介して処理カップ200の底部に接続されており、処理カップ200の底部から処理カップ200の内部を吸引する。FFU14および排気装置によって、処理チャンバー4内に清浄空気のダウンフロー(下降流)が形成される。
【0034】
本実施形態におけるスピンチャック5は、真空吸着式のチャックである。なお、スピンチャックは、挟持式のメカニカルチャックなどの他の形態のチャックであってもよい。スピンチャック5は、基板Wの下面の中央部を吸着支持している。スピンチャック5は、鉛直な方向に延びたスピン軸116と、スピン軸116の上端に取り付けられて、基板Wが水平な姿勢となるように基板Wの下面を吸着して保持するスピンベース117と、スピン軸116と同軸に結合された回転軸を有するスピンモータ118と、を備える。
【0035】
スピンベース117は、基板Wの外径よりも小さな外径を有する水平な円形の上面117aを備える。スピンベース117は、上面117aにて基板Wの下面中央を真空吸着する。基板Wの下面がスピンベース117に吸着保持された状態では、基板Wの周縁部が、スピンベース117の外周端よりも外側にはみ出ている。基板Wがスピンベース117に吸着保持された状態にてスピンモータ118が駆動されることによって、スピン軸116の中心軸線まわりに基板Wが回転される。
【0036】
本実施形態の処理液ノズル300は、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルである。処理液ノズル300は、基板Wの上面における処理液の供給位置を変更することができる。処理液ノズル300は、スピンチャック5の上方でほぼ水平に延びたノズルアーム20の先端部に取り付けられている。ノズルアーム20は、スピンチャック5の側方でほぼ鉛直に延びたアーム支持軸21に支持されている。アーム支持軸21には、アーム揺動モータ22が接続されている。アーム揺動モータ22は、たとえば、サーボモータである。アーム揺動モータ22によって、ノズルアーム20をスピンチャック5の側方に設定された鉛直な揺動軸線A2を中心として水平面内で揺動させることができ、これによって、揺動軸線A2まわりに処理液ノズル300を処理位置と退避位置との間で円弧軌跡を描くように回動させることができる。なお、処理液ノズル300の回動位置を検知するためのエンコーダをアーム揺動モータ22に付設するようにしても良い。
【0037】
処理液ノズル300には、処理液供給ユニット6から処理液が供給される。処理液供給ユニット6は、処理液配管61に処理液バルブ62およびポンプ63を備える。処理液配管61の先端は処理液ノズル300に接続されるとともに、基端は処理液供給源に接続される。処理液配管61の経路途中に処理液バルブ62およびポンプ63が介挿されている。
【0038】
処理液バルブ62が開かれた状態でポンプ63が作動すると、処理液供給源から処理液配管61を経て処理液ノズル300に処理液が送給される。処理液供給ユニット6は、処理液として薬液またはリンス液を処理液ノズル300に供給する。薬液は、例えば、基板Wの上面をエッチングしたり、基板Wの上面を洗浄したりするために用いられる液である。薬液は、フッ酸、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、バッファードフッ酸(BHF)、希フッ酸(DHF)、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、有機溶剤(例えば、IPA(isopropyl alcohol)など)、界面活性剤および腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。リンス液は、例えば、脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(例えば、10ppm以上、かつ、100ppm以下)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0039】
図3は、第1実施形態の処理液ノズル300の構成を示す図である。
図4は、処理液ノズル300を下方から見た図である。処理液ノズル300は、外側部材310、内側部材320およびバネ330を備える。処理液ノズル300のカバーである外側部材310の内部は中空となっており、外側部材310には吐出口311が形設されている。また、処理液ノズル300の本体である内側部材320の内部は処理液の流路となっており、内側部材320には開口部321が形設されている。内側部材320は、外側部材310内を処理液ノズル300の長手方向である矢印AR1にて示す方向にスライド移動可能に設けられている。処理液ノズル300の長手方向はスピンチャック5に保持された基板Wの径方向と一致する。また、内側部材320と外側部材310との間はリップシール等によってシールされている。
【0040】
処理液供給ユニット6は、内側部材320内の流路に処理液を供給する。外側部材310の内壁面と内側部材320の外壁先端との間に弾性部材であるバネ330が設けられている。外側部材310内で内側部材320がスライド移動すると、バネ330が伸縮し、バネ330の復元力が外側部材310および内側部材320に作用する。
【0041】
バネ330が変形していないとき、すなわちバネ330に応力が作用していないときには、
図3,4に示すように、外側部材310の吐出口311と内側部材320の開口部321とが全く重なっておらず、開口部321は閉塞されている。この状態にて、処理液供給ユニット6が処理液ノズル300に処理液を供給すると、開口部321が閉塞されているため、供給された処理液は外部に吐出されず、その処理液によって内側部材320が押圧される。これにより、内側部材320は外側部材310に対して
図3の左側に向けてスライド移動し、
図4の矢印AR2に示すように開口部321が吐出口311に近付くように移動する。内側部材320が外側部材310に対してスライド移動すると、バネ330が縮み、バネ330に復元力が発生する。
【0042】
処理液供給ユニット6が処理液供給を継続して内側部材320がさらにスライド移動すると、バネ330の復元力による応力と処理液の液圧とが均衡するところで内側部材320の移動が停止する。内側部材320の移動が停止したときには、吐出口311と開口部321の一部または全部とが重なって開口が形成され、その開口から基板Wの周縁部に向けて処理液が吐出される。
【0043】
すなわち、バネ330の復元力と処理液供給ユニット6から供給される処理液の液圧とによって外側部材310内における内側部材320の位置が規定される。処理液の液圧は制御部16の制御下にてポンプ63によって調整される。そして、外側部材310内における内側部材320の位置に応じて吐出口311と開口部321とが重なる重複長さが定まり、その重複長さが吐出口311の開口幅となるのである。処理液ノズル300の吐出口311からは、当該開口幅と同じ幅の帯状にて処理液が吐出される。
【0044】
図2に戻り、不活性ガス供給ユニット8は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面の中央部に不活性ガスを供給するための気体吐出ノズル27と、気体吐出ノズル27に不活性ガスを供給する気体配管28と、気体配管28を開閉する気体バルブ29と、気体吐出ノズル27を移動させるためのノズル移動機構30とを備える。気体吐出ノズル27が基板Wの上面の中央部の上方に設定された処理位置に位置しているときに気体バルブ29が開かれると、気体吐出ノズル27から吐出される不活性ガスによって、基板Wの上面における中央部から外周部に向けて流れる放射状気流が形成される。
【0045】
不活性ガス供給ユニット9は、基板Wの上面の周縁領域に対して不活性ガスを吐出するための気体吐出ノズル31と、気体吐出ノズル31に不活性ガスを供給する気体配管32と、気体配管32を開閉する気体バルブ33と、気体吐出ノズル31を移動させるためのノズル移動機構34とを備える。気体吐出ノズル31が基板Wの上面の周縁領域の上方に設定された処理位置に位置しているときに気体バルブ33が開かれると、気体吐出ノズル31は、基板Wの上面の周縁領域の吹き付け位置に対し、基板Wの回転半径方向(以下、径方向RD)の内側から、外側かつ斜め下向きに不活性ガスを吐出する。
【0046】
不活性ガス供給ユニット10は、基板Wの下面の周縁領域に対して不活性ガスを吐出するための気体吐出ノズル36と、気体吐出ノズル36に不活性ガスを供給する気体配管37と、気体配管37を開閉する気体バルブ38とを備える。気体吐出ノズル36が基板Wの下面の周縁領域に下方に設定された処理位置に位置しているときに気体バルブ38が開かれると、気体吐出ノズル36は、基板Wの下面の周縁領域の吹き付け位置に対し、径方向RDの内側から外側斜め上向き(例えば、水平面に対し45°)に不活性ガスを吐出する。
【0047】
不活性ガス供給ユニット8、不活性ガス供給ユニット9および不活性ガス供給ユニット10が吐出する不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウム等を用いることができる(本実施形態では窒素)。
【0048】
ヒーター11は、円環状に形成されており、基板Wの外径と同等の外径を有する。ヒーター11は、スピンチャック5に保持された基板Wの下面の周縁領域に対向する上端面を有する。ヒーター11は、セラミックまたは炭化ケイ素(SiC)によって形成されており、その内部に加熱源(図示しない)が搭載されている。加熱源の加熱によってヒーター11が温められ、ヒーター11が基板Wを加熱する。ヒーター11によって基板Wの周縁部を下面側から加熱することによって、基板Wの上面の周縁領域におけるエッチングレートを向上させることができる。
【0049】
処理カップ200は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(すなわち、回転軸線A1から離れる方向)に配置される。処理カップ200は、スピンベース117を取り囲む。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給される際、上向きに開いた処理カップ200の上端部200aは、スピンベース117よりも上方に配置される。従って、基板Wの周囲に排出された薬液または水などの処理液は、処理カップ200によって受け止められる。そして、処理カップ200に受け止められた処理液は排液処理される。排液処理は、使用済み処理液の廃棄、および、処理液の再生処理を含む。
【0050】
制御部16は、基板処理装置100に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。
図5は、制御部16の構成を示すブロック図である。制御部16のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部16は、各種演算処理を行う回路であるCPU71、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM72、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM73および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部74(例えば、磁気ディスク)を備えている。CPU71、ROM72、RAM73および記憶部74は、バスライン75を介して互いに接続されている。制御部16のCPU71が所定の処理プログラムを実行することによって基板処理装置100における処理が進行する。
【0051】
処理プログラムは、非一過性の記録媒体(例えば、半導体メモリ、光学メディアまたは磁気メディアなど)に記録された状態で、制御部16に提供されてもよい。この場合、当該記録媒体から処理プログラムを読み取る読み取り装置がバスライン75に接続されているとよい。
【0052】
また、処理プログラムは、ネットワークを介してサーバーなどから制御部16に提供されてもよい。この場合、外部装置とネットワーク通信を行う通信部がバスライン75に接続されているとよい。
【0053】
バスライン75には、入力部76および表示部77が接続されている。制御部16は、表示部77に種々の情報を表示する。基板処理装置100のオペレータは、表示部77に表示された情報を確認しつつ、入力部76から種々のコマンドやパラメータを入力することができる。入力部76としては、例えばキーボードやマウスを用いることができる。表示部77としては、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。本実施形態においては、表示部77および入力部76として、基板処理装置100の外壁に設けられた液晶のタッチパネルを採用して双方の機能を併せ持たせるようにしている。
【0054】
制御部16には、各処理ユニット1のスピンモータ118、アーム揺動モータ22、ノズル移動機構30、ノズル移動機構34、処理液バルブ62、ポンプ63、ヒーター11、気体バルブ29、気体バルブ33、および、気体バルブ38などが接続されており(
図5ではポンプ63のみ例示)、制御部16はそれらの動作を制御する。また、制御部16は、インデクサロボット102および主搬送ロボット103の動作も制御する。
【0055】
制御部16の記憶部74には相関テーブル99が格納されている。
図6は、相関テーブル99を説明するための図である。上述の通り、本実施形態においては、バネ330の復元力と処理液供給ユニット6から供給される処理液の液圧とによって吐出口311の開口幅が規定される。吐出口311の開口幅が定まれば、液圧によって吐出口311から吐出される処理液の流量も規定される。すなわち、処理液の液圧と吐出口311の開口幅と吐出口311から吐出される処理液の流量との間には相互に相関関係が存在しており、その相関関係が相関テーブル99に登録されている。このような相関関係は予め実験またはシミュレーションによって求めておけば良い。そして、求めた相関関係を登録した相関テーブル99を記憶部74に保存しておく。
【0056】
次に、基板処理装置100の処理動作について説明する。
図7は、第1実施形態の基板処理装置100における処理手順を示すフローチャートである。まず、処理対象となる未処理の基板Wがいずれかの処理ユニット1の処理チャンバー4に搬入される(ステップS11)。具体的には、インデクサロボット102がキャリアCから未処理の基板Wを取り出して主搬送ロボット103に渡す。主搬送ロボット103は、受け取った未処理の基板Wを処理チャンバー4に搬入する。このときに主搬送ロボット103は、未処理の基板Wを保持するハンドを処理チャンバー4内に進入させ、デバイス形成面を上方に向けた状態で基板Wをスピンチャック5に渡す。続いて、基板Wの下面の中央部がスピンベース117に吸着支持されることにより、スピンチャック5によって基板Wが保持される(ステップS12)。スピンチャック5に基板Wが保持された後、制御部16が所定の回転数でスピンモータ118を回転させると、基板Wの回転が開始される(ステップS13)。
【0057】
次に、処理液ノズル300に供給する処理液の液圧を決定する(ステップS14)。本実施形態においては、回転する基板Wの周縁部に処理液ノズル300から処理液を吐出して当該周縁部のエッチング処理を行う(ベベルエッチング)。エッチングされる領域は円環状となるが、エッチングが必要とされる円環状領域の幅は基板Wによって異なり、1mm~数mmである。以降、エッチングが必要とされている円環状領域の幅を「エッチング幅」と称する。
【0058】
ステップS14では、必要とされるエッチング幅に応じて処理液ノズル300に供給する処理液の液圧を決定する。具体的には、記憶部74に格納されている相関テーブル99に基づいて、制御部16が必要とされるエッチング幅と同じ開口幅に対応する液圧を抽出する。例えば、必要とされるエッチング幅が3mmである場合、制御部16は相関テーブル99で3mmの開口幅に対応する液圧を抽出する。なお、必要とされるエッチング幅は、制御部16がレシピから取得するようにしても良いし、或いは基板処理装置100のオペレータが入力部76から入力するようにしても良い。
【0059】
次に、ステップS14で決定された液圧にて処理液供給ユニット6が処理液ノズル300に処理液を供給する(ステップS15)。処理液供給ユニット6は、処理液ノズル300に供給する処理液の液圧を調整する液圧調整部として機能するポンプ63を備えている。制御部16は、ステップS14で決定された液圧にて処理液を送給するようにポンプ63を制御する。
【0060】
図8は、処理液供給の開始時点における処理液ノズル300の状態を示す図である。処理液供給が行われていないときには、バネ330にいかなる応力も作用しておらず、内側部材320は吐出口311と開口部321とが全く重ならない位置に停止しており、開口部321は閉塞されている。処理液供給ユニット6から内側部材320の流路に処理液供給を開始した時点では、開口部321が閉塞されているため、処理液の出口がなく、供給された処理液によって内側部材320が
図8の矢印AR3に示す向きに押圧される。このときに内側部材320に作用する力はポンプ63によって規定される処理液の液圧に比例する。
【0061】
処理液の液圧によって内側部材320が押圧されると、内側部材320は矢印AR3に示す向きにスライド移動を開始する。内側部材320が移動した距離と同じ長さだけバネ330が縮み、バネ330に復元力が発生する。バネ330に生じる復元力の大きさはバネ330が縮んだ長さに比例する。その復元力が作用する向きは矢印AR3とは反対の向きである。つまり、バネ330には処理液によって押圧される内側部材320を押し戻すような復元力が生じる。また、内側部材320が矢印AR3に示す向きに移動するにしたがって開口部321が吐出口311に近付く。
【0062】
内側部材320がさらに矢印AR3に示す向きに移動すると、移動距離が大きくなるにつれてバネ330の復元力も大きくなり、やがてバネ330の復元力による応力と処理液の液圧とが等しくなる。バネ330の復元力と処理液の液圧とが均衡すると、内側部材320には移動の駆動力が作用しなくなり、内側部材320は移動を停止する。
【0063】
図9は、バネ330の復元力と処理液の液圧とが均衡したときの処理液ノズル300の状態を示す図である。内側部材320が移動を停止したときには、吐出口311と開口部321の一部または全部とが重なって開口が形成される。内側部材320の停止位置はバネ330の復元力と処理液の液圧とが均衡する位置に規定される。内側部材320の停止位置に応じて定まる吐出口311と開口部321とが重なる重複長さが吐出口311に形成された開口の開口幅dとなる。
【0064】
供給される処理液の液圧が大きいほど、バネ330が大きく縮んだ位置でバネ330の復元力と処理液の液圧とが均衡することとなり、開口幅dが大きくなる。すなわち、バネ330は、供給される処理液の液圧に応じて吐出口311の開口幅dを規定することとなる。また、視点を変えれば、供給する処理液の液圧によって吐出口311の開口幅dを調整することができるとも言える。
【0065】
本実施形態においては、相関テーブル99に基づいて、制御部16が必要とされるエッチング幅と同じ開口幅に対応する液圧を決定し、その液圧にて処理液を供給するようにポンプ63を制御している。このため、処理液の液圧によって形成される吐出口311の開口の開口幅dは必要とされるエッチング幅と等しくなる。
【0066】
処理液ノズル300の吐出口311に開口幅dの開口が形成されると、その吐出口311の開口から基板Wの周縁部に向けて処理液が吐出される(ステップS16)。吐出口311の開口からは処理液が帯状の液柱として吐出される。液柱を水平方向で切断した断面の長手方向の幅は開口幅dと等しい。また、当該断面の短手方向の幅は、吐出口311の短手方向の幅(例えば、0.3mm)と等しい。さらに、吐出口311から吐出される処理液の流量は処理液ノズル300に供給される処理液の液圧によって規定される。
【0067】
処理液ノズル300は処理液としてまず薬液を基板Wの周縁部に吐出する。より詳細には、制御部16は、スピンモータ118を制御して基板Wを所定の回転速度(例えば、300rpm以上、かつ、1000rpm以下)で回転させながら、アーム揺動モータ22を制御して処理液ノズル300を適切な処理位置に配置して処理液ノズル300から基板Wの周縁部に薬液を吐出させる。処理液ノズル300の適切な処理位置とは、エッチングが必要とされている円環状領域の幅の直上に吐出口311の開口の幅が完全に重なるように配置される位置である。また、処理液ノズル300の適切な処理位置では、処理液ノズル300の長手方向と基板Wの径方向とが一致している。処理液ノズル300を適切な処理位置に移動させるために、基板Wの端縁部を検出する光学センサーを処理液ノズル300に設けるようにしても良い。
【0068】
処理液ノズル300から吐出された薬液は回転する基板Wの周縁部(正確には基板Wの上面の周縁領域)に着液する。これにより、基板Wの周縁部のエッチング処理が進行する。
【0069】
薬液を吐出してのエッチング処理では、処理位置に位置する気体吐出ノズル27から吐出される不活性ガスによって、基板Wの上面における中央部から外周部に向けて流れる放射状気流が形成される。この放射状気流によって、デバイス形成領域である基板Wの上面の中央部が保護される。
【0070】
また、エッチング処理では、処理位置に位置する気体吐出ノズル31から基板Wの上面の周縁領域に対し不活性ガスが吹き付けられる。この不活性ガスの吹き付けによって、基板Wの上面の周縁領域における薬液の処理幅を制御することができる。
【0071】
さらに、エッチング処理では、処理位置に位置する気体吐出ノズル36から基板Wの下面の周縁領域に対し不活性ガスが吹き付けられる。この不活性ガスの吹き付けによって、基板Wの下面への薬液の回り込みを抑制することができる。
【0072】
本実施形態においては、処理液ノズル300の吐出口311の開口幅dが必要とされるエッチング幅と等しく、その吐出口311の開口から薬液を吐出することにより、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域に薬液が着液することとなる。換言すれば、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域が薬液の接液点となる。その結果、基板Wの周縁部の全域にわたって均一にエッチングレートを高くすることができる。
【0073】
また、薬液を吐出してのエッチング処理を行うときに、ヒーター11によって基板Wの周縁部を加熱するようにしても良い。ヒーター11によって基板Wの周縁部を加熱することにより、当該周縁部におけるエッチングレートをさらに高くすることができる。
【0074】
薬液の吐出を開始してから所定時間が経過した後、処理液ノズル300から吐出される処理液が薬液からリンス液に切り換えられる。より詳細には、制御部16は、スピンモータ118を制御して基板Wを所定の回転速度(例えば、300rpm以上、かつ、1000rpm以下)で回転させながら、アーム揺動モータ22を制御して処理液ノズル300を適切な処理位置に配置して処理液ノズル300から基板Wの周縁部にリンス液を吐出させる。なお、処理液ノズル300からリンス液を吐出するときにも、上記の薬液と同様に、吐出口311の開口幅dと等しい幅の帯状の液柱が形成される。
【0075】
処理液ノズル300から吐出されたリンス液は回転する基板Wの周縁部に着液する。これにより、基板Wの周縁部に付着していた薬液がリンス液によって洗い流されるリンス処理が進行する。薬液が洗い流されることによって、基板Wの周縁部におけるエッチング処理は停止する。
【0076】
リンス処理では、処理位置に位置する気体吐出ノズル27から吐出される不活性ガスによって、基板Wの上面における中央部から外周部に向けて流れる放射状気流が形成される。
【0077】
また、リンス処理では、処理位置に位置する気体吐出ノズル31から基板Wの上面の周縁領域に対し不活性ガスが吹き付けられる。
【0078】
また、リンス処理では、処理位置に位置する気体吐出ノズル36から基板Wの下面の周縁領域に対し不活性ガスが吹き付けられる。
【0079】
また、リンス処理では、ヒーター11によって基板Wの周縁部を加熱するようにしてもよい。
【0080】
リンス液の吐出を開始してから所定時間が経過した後、制御部16は、処理液バルブ62を閉止して処理液ノズル300からのリンス液吐出を停止する。続いて、制御部16は、アーム揺動モータ22を制御して、処理液ノズル300をスピンチャック5の側方の退避位置へと戻す。
【0081】
リンス処理が終了した後、基板Wを乾燥させるスピンドライが行われる(ステップS17)。具体的には、制御部16は、スピンモータ118を制御して、所定の乾燥回転速度(たとえば、数千rpm)で基板Wを回転させる。これによって、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wの周縁部に付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wの周縁部から液体が除去され、基板Wの周縁部が乾燥する。
【0082】
基板Wの高速回転を開始してから所定時間が経過すると、制御部16は、スピンモータ118を制御することによって、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させる。
【0083】
スピンドライが終了した後、処理チャンバー4から基板Wが搬出される(ステップS18)。具体的には、主搬送ロボット103がハンドを処理チャンバー4の内部に進入させる。そして、主搬送ロボット103はハンドによってスピンチャック5上の基板Wを保持する。その後、主搬送ロボット103は、基板Wを保持したハンドを処理チャンバー4から退避させる。これによって、処理後の基板Wが処理チャンバー4から搬出される。
【0084】
主搬送ロボット103は処理チャンバー4から搬出した基板Wをインデクサロボット102に渡す。インデクサロボット102は、主搬送ロボット103から受け取った処理後の基板WをキャリアCに戻す。以上のようにして1枚の基板Wに対する処理が完了する。
【0085】
第1実施形態においては、処理液ノズル300の外側部材310と内側部材320とを弾性部材であるバネ330によって繋ぐとともに、処理液ノズル300に供給する処理液の液圧とバネ330の復元力とのバランスによって吐出口311の開口幅dを規定している。そして、制御部16は、相関テーブル99に基づいて、吐出口311の開口幅dが必要とされるエッチング幅(エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の幅に相当)と等しくなる液圧にて処理液が処理液ノズル300に供給されるようにポンプ63を制御する。
【0086】
このようにすれば、処理液ノズル300の吐出口311の開口から吐出される処理液の液柱の幅と必要とされるエッチング幅とが等しくなり、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域に均等に薬液が着液することとなる。その結果、基板Wの周縁部の全域にわたって均一にエッチングレートを高くすることができる。
【0087】
また、新たな基板Wを処理する際に、必要とされるエッチング幅が変更になった場合であっても、制御部16がポンプ63を制御して処理液ノズル300に供給する処理液の液圧を調整することにより、所望のエッチング幅と等しい吐出口311の開口幅dを得ることができる。従って、必要とされるエッチング幅が小さくなったときにも、吐出口311の開口幅dを狭くすることにより、処理液ノズル300から吐出された処理液を全て基板Wに着液させることができる。その結果、処理液ノズル300から吐出された処理液の一部が基板Wに着液することなく廃棄されることはなく、処理液が無駄に消費されるのを防止することができる。すなわち、第1実施形態にようにすれば、処理液を無駄に消費することなく、基板Wの周縁部の全域に処理液を着液させてエッチングレートを高くすることができるのである。
【0088】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の基板処理装置100の全体レイアウトは
図1に示したものと同じである。また、第2実施形態の基板処理装置100に搭載された各処理ユニット1の構成も
図2に示したものと概ね同様である。さらに、第2実施形態における基板Wに対する処理内容も概ね第1実施形態と同様である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは処理液ノズルの構造である。
【0089】
図10は、第2実施形態の処理液ノズル400の構成を示す図である。
図10において、第1実施形態と同一の要素については同じ符号を付している。第2実施形態の処理液ノズル400は、外側部材310、内側部材320およびアクチュエータ430を備える。外側部材310の内部は中空となっており、外側部材310には吐出口311が形設されている。また、内側部材320の内部は処理液の流路となっており、内側部材320には開口部321が形設されている。内側部材320は、外側部材310内をスライド移動可能に設けられている。処理液供給ユニット6は、内側部材320内の流路に処理液を供給する。
【0090】
第2実施形態では、外側部材310の内壁面と内側部材320の外壁先端との間にアクチュエータ430が設けられている。すなわち、外側部材310と内側部材320とはアクチュエータ430を介して繋がれている。アクチュエータ430は、制御部16の制御により、外側部材310内で内側部材320を矢印AR4に示すように前後にスライド移動させる。アクチュエータ430を除く第2実施形態の残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0091】
図11は、第2実施形態における基板Wの処理手順を示すフローチャートである。
図11のステップS21~ステップS23の処理はそれぞれ
図7のステップS11~ステップS13の処理と同じである。すなわち、主搬送ロボット103によって未処理の基板Wが処理チャンバー4内に搬入され(ステップS21)、その搬入された未処理の基板Wはスピンチャック5に吸着されて保持される(ステップS22)。スピンチャック5に基板Wが保持された後、制御部16が所定の回転数でスピンモータ118を回転させると、基板Wの回転が開始される(ステップS23)。
【0092】
次に、処理液ノズル400の吐出口311の開口幅を設定する(ステップS24)。第2実施形態においては、アクチュエータ430が内側部材320を前後にスライド移動させることによって、吐出口311と開口部321とが重なる重複長さである開口幅dを自在に設定することができる。制御部16は、吐出口311の開口の開口幅dが必要とされるエッチング幅と等しくなるように、アクチュエータ430を制御して内側部材320を移動させる。これにより、吐出口311の開口の開口幅dが必要とされるエッチング幅と同じ値に設定されることとなる。
【0093】
次に、処理液ノズル400に供給する処理液の液圧を決定する(ステップS25)。第2実施形態では、アクチュエータ430によって吐出口311の開口幅dが規定されており、処理液の液圧を変化させても開口幅dは変動しない。但し、開口幅dが固定されていても、処理液ノズル400に供給する処理液の液圧が変化すると吐出口311から吐出される処理液の流量は変動する。制御部16は、吐出口311から吐出される処理液の流量が要求されている所定値となるように処理液ノズル400に供給する処理液の液圧を決定する。なお、供給する処理液の液圧と吐出される処理液の流量との相関を示すテーブルを予め作成して記憶部74に格納しておき、制御部16はそのテーブルに基づいて処理液ノズル400に供給する処理液の液圧を決定するようにしても良い。
【0094】
次に、決定された液圧にて処理液供給ユニット6が処理液ノズル400に処理液を供給する(ステップS26)。具体的には、制御部16がステップS25で決定された液圧にて処理液を送給するようにポンプ63を制御する。
【0095】
第2実施形態では、アクチュエータ430によって吐出口311の開口幅dが規定されている。処理液ノズル400に供給された処理液は開口幅dの吐出口311から吐出される。また、吐出口311から吐出される処理液の流量は処理液ノズル400に供給される処理液の液圧によって規定される。
【0096】
図11のステップS27~ステップS29の処理はそれぞれ
図7のステップS16~ステップS18の処理と同じである。すなわち、処理液ノズル400の吐出口311の開口から基板Wの周縁部に向けて処理液が吐出される(ステップS27)。処理液ノズル400は処理液としてまず薬液を基板Wの周縁部に吐出する。これにより、基板Wの周縁部のエッチング処理が進行する。
【0097】
その後、処理液ノズル400から吐出される処理液が薬液からリンス液に切り換えられる。処理液ノズル400から吐出されたリンス液は回転する基板Wの周縁部に着液する。これにより、基板Wの周縁部に付着していた薬液がリンス液によって洗い流されるリンス処理が進行する。
【0098】
所定時間のリンス処理が終了した後、基板Wを乾燥させるスピンドライが行われる(ステップS28)。これにより、基板Wの周縁部から液体が除去され、基板Wの周縁部が乾燥する。スピンドライが終了した後、処理チャンバー4から基板Wが搬出される(ステップS29)。
【0099】
第2実施形態においては、第1実施形態のバネ330に代えてアクチュエータ430を設け、アクチュエータ430によって内側部材320を移動させて吐出口311の開口の開口幅dを規定している。すなわち、アクチュエータ430は、吐出口311の開口幅dを規定する開口幅規定機構として機能する。そして、制御部16は、吐出口311の開口幅dが必要とされるエッチング幅と同じ値となるようにアクチュエータ430を制御する。また、制御部16は、吐出口311から吐出される処理液の流量が要求されている所定値となるようにポンプ63を制御する。
【0100】
このようにすれば、第1実施形態と同様に、処理液ノズル400の吐出口311の開口から吐出される処理液の液柱の幅と必要とされるエッチング幅(エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の幅に相当)とが等しくなり、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域に均等に薬液が着液することとなる。その結果、基板Wの周縁部の全域にわたって均一にエッチングレートを高くすることができる。
【0101】
また、新たな基板Wを処理する際に、必要とされるエッチング幅が変更になった場合であっても、制御部16がアクチュエータ430を制御して内側部材320の位置を変えることにより、所望のエッチング幅と等しい吐出口311の開口幅dを得ることができる。従って、必要とされるエッチング幅が小さくなったときにも、吐出口311の開口幅dを狭くすることにより、処理液ノズル400から吐出された処理液を全て基板Wに着液させることができる。その結果、処理液ノズル400から吐出された処理液の一部が基板Wに着液することなく廃棄されることはなく、処理液が無駄に消費されるのを防止することができる。すなわち、第2実施形態にようにしても、処理液を無駄に消費することなく、基板Wの周縁部の全域に処理液を着液させてエッチングレートを高くすることができるのである。
【0102】
第1実施形態では、制御部16がポンプ63を制御して処理液ノズル300に供給する処理液の液圧を調整することによって吐出口311の開口幅dを規定するとともに、吐出口311から吐出される処理液の流量も規定している。すなわち、ポンプ63という1つの要素によって、吐出口311の開口幅dおよび吐出される処理液の流量の双方を規定しているのである。これに対して、第2実施形態では、制御部16がアクチュエータ430を制御して内側部材320をスライド移動させて吐出口311の開口幅dを規定する。一方、制御部16はポンプ63を制御して吐出口311から吐出される処理液の流量を規定している。すなわち、第2実施形態では、吐出口311の開口幅dを規定する要素(アクチュエータ430)と吐出される処理液の流量を規定する要素(ポンプ63)とが異なるのである。
【0103】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の基板処理装置100の全体レイアウトは
図1に示したものと同じである。また、第3実施形態の基板処理装置100に搭載された各処理ユニット1の構成も
図2に示したものと概ね同様である。さらに、第3実施形態における基板Wに対する処理内容も概ね第1実施形態と同様である。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは処理液ノズルの構造である。
【0104】
図12は、第3実施形態の処理液ノズル500の構成を示す図である。第3実施形態の処理液ノズル500は、本体部510、弁体520およびバネ530を備える。第3実施形態においては、本体部510の内側空間が処理液の流路となっている。本体部510には、吐出口511が形設されている。本体部510の吐出口511に弁体520およびバネ530が設けられている。なお、図示の便宜上、
図12ではバネ530は露出しているが、バネ530は本体部510内に埋め込まれている。或いは、バネ530は、伸縮自在のベローズによって覆われていても良い。弁体520およびバネ530を除く第3実施形態の残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0105】
弁体520は三角柱形状の部材である。処理液ノズル500の本体部510に処理液が供給されていないときには、本体部510の吐出口511は弁体520によって閉塞されている。処理液供給ユニット6から本体部510に処理液が供給されると、処理液の液圧によって三角柱形状の弁体520が矢印AR5に示す向きに押圧される。このときに弁体520に作用する力はポンプ63によって規定される処理液の液圧に比例する。
【0106】
処理液の液圧によって弁体520が押圧されると、弁体520は矢印AR5に示す向きに移動を開始する。弁体520が移動した距離と同じ長さだけバネ530が縮み、バネ530に復元力が発生する。バネ530に生じる復元力の大きさはバネ530が縮んだ長さに比例する。その復元力が作用する向きは矢印AR5とは反対の向きである。つまり、バネ530には弁体520を押し戻すような復元力が生じる。
【0107】
弁体520がさらに矢印AR5に示す向きに移動すると、移動距離が大きくなるにつれてバネ530の復元力も大きくなり、やがてバネ530の復元力による応力と処理液の液圧とが等しくなる。バネ530の復元力と処理液の液圧とが均衡すると、弁体520には移動の駆動力が作用しなくなり、弁体520は移動を停止する。
【0108】
弁体520が処理液の液圧によって移動し、その移動が停止したときには本体部510の吐出口511に開口幅dの開口が形成される。供給される処理液の液圧が大きいほど、バネ530が大きく縮んだ位置でバネ530の復元力と処理液の液圧とが均衡することとなり、開口幅dが大きくなる。すなわち、第1実施形態と同様に、処理液ノズル500に供給する処理液の液圧とバネ530の復元力とのバランスによって吐出口511の開口幅dを規定している。そして、制御部16は、吐出口511の開口幅dが必要とされるエッチング幅と等しくなる液圧にて処理液が処理液ノズル500に供給されるようにポンプ63を制御する。この際に、供給する処理液の液圧と吐出される処理液の流量と吐出口511の開口幅dとの相関を示すテーブルを予め作成して記憶部74に格納しておき、制御部16はそのテーブルに基づいて処理液ノズル500に供給する処理液の液圧を決定するようにしても良い。
【0109】
第3実施形態の基板処理装置100における処理手順は第1実施形態(
図7)と同様である。
【0110】
このようにすれば、第1実施形態と同様に、処理液ノズル500の吐出口511の開口から吐出される処理液の液柱の幅と必要とされるエッチング幅(エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の幅に相当)とが等しくなり、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域に均等に薬液が着液することとなる。その結果、基板Wの周縁部の全域にわたって均一にエッチングレートを高くすることができる。
【0111】
また、新たな基板Wを処理する際に、必要とされるエッチング幅が変更になった場合であっても、制御部16がポンプ63を制御して処理液ノズル500に供給する処理液の液圧を調整することにより、所望のエッチング幅と等しい吐出口511の開口幅dを得ることができる。従って、必要とされるエッチング幅が小さくなったときにも、吐出口511の開口幅dを狭くすることにより、処理液ノズル500から吐出された処理液を全て基板Wに着液させることができる。その結果、処理液ノズル500から吐出された処理液の一部が基板Wに着液することなく廃棄されることはなく、処理液が無駄に消費されるのを防止することができる。すなわち、第3実施形態にようにしても、処理液を無駄に消費することなく、基板Wの周縁部の全域に処理液を着液させてエッチングレートを高くすることができるのである。
【0112】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、制御部16がポンプ63を制御して処理液ノズル500に供給する処理液の液圧を調整することによって吐出口511の開口幅dを規定するとともに、吐出口511から吐出される処理液の流量も規定している。すなわち、ポンプ63という1つの要素によって、吐出口511の開口幅dおよび吐出される処理液の流量の双方を規定している。
【0113】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の基板処理装置100の全体レイアウトは
図1に示したものと同じである。また、第4実施形態の基板処理装置100に搭載された各処理ユニット1の構成も
図2に示したものと概ね同様である。さらに、第4実施形態における基板Wに対する処理内容も概ね第1実施形態と同様である。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは処理液ノズルの構造である。
【0114】
図13は、第4実施形態の処理液ノズル600の構成を示す図である。
図13において、第1実施形態と同一の要素については同じ符号を付している。第4実施形態の処理液ノズル600は、外側部材310、内側部材320、バネ330および窒素供給機構640を備える。外側部材310の内部は中空となっており、外側部材310には吐出口311が形設されている。また、内側部材320の内部は処理液の流路となっており、内側部材320には開口部321が形設されている。内側部材320は、外側部材310内をスライド移動可能に設けられている。処理液供給ユニット6は、内側部材320内の流路に処理液を供給する。
【0115】
第4実施形態では、外側部材310の内壁面と内側部材320の外壁先端との間にバネ330が設けられている。すなわち、外側部材310と内側部材320とはバネ330を介して繋がれている。そして、第4実施形態においては、バネ330が設けられた空間に窒素供給機構640が窒素を供給する。窒素供給機構640を除く第4実施形態の残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0116】
第4実施形態においては、窒素供給機構640が窒素を供給すると、供給された窒素のガス圧によって内側部材320が
図13の矢印AR6に示す向きに押圧される。窒素のガス圧によって内側部材320が押圧されると、内側部材320は矢印AR6に示す向きにスライド移動を開始する。内側部材320が移動した距離と同じ長さだけバネ330が伸び、バネ330に復元力が発生する。バネ330に生じる復元力の大きさはバネ330が伸びた長さに比例する。その復元力が作用する向きは矢印AR6とは反対の向きである。つまり、バネ330には内側部材320を引き戻すような復元力が生じる。また、内側部材320が矢印AR6に示す向きに移動するにしたがって開口部321が吐出口311に近付く。
【0117】
内側部材320がさらに矢印AR6に示す向きに移動すると、移動距離が大きくなるにつれてバネ330の復元力も大きくなり、やがてバネ330の復元力による応力と窒素のガス圧とが等しくなる。バネ330の復元力と窒素のガス圧とが均衡すると、内側部材320には移動の駆動力が作用しなくなり、内側部材320は移動を停止する。
【0118】
内側部材320が移動を停止したときには、吐出口311と開口部321の一部または全部とが重なって開口が形成される。内側部材320の停止位置はバネ330の復元力と窒素のガス圧とが均衡する位置に規定される。内側部材320に停止位置に応じて定まる吐出口311と開口部321とが重なる重複長さが吐出口311に形成された開口の開口幅dとなる。
【0119】
このように第4実施形態においては、窒素供給機構640が窒素を供給することによって、吐出口311と開口部321とが重なる重複長さである開口幅dを自在に設定することができる。供給される窒素のガス圧が大きいほど、バネ330が大きく伸びた位置でバネ330の復元力と窒素のガス圧とが均衡することとなり、開口幅dが大きくなる。制御部16は、吐出口311の開口の開口幅dが必要とされるエッチング幅と等しくなるように、窒素供給機構640を制御して窒素のガス圧を調整する。これにより、吐出口311の開口の開口幅dが必要とされるエッチング幅と同じ値に設定されることとなる。
【0120】
第4実施形態では、第2実施形態と同様に、処理液ノズル600に供給する処理液の液圧によって吐出口311から吐出される処理液の流量を規定している。制御部16は、吐出口311から吐出される処理液の流量が要求されている所定値となるように処理液ノズル400に供給する処理液の液圧を決定する。また、供給する処理液の液圧と吐出される処理液の流量との相関を示すテーブルを予め作成して記憶部74に格納しておき、制御部16はそのテーブルに基づいて処理液ノズル600に供給する処理液の液圧を決定するようにしても良い。さらに、吐出口311の開口幅dと窒素供給機構640からバネ330が設けられた空間に供給する窒素のガス圧との相関を示すテーブルを予め作成して記憶部74に格納しておき、制御部16は、そのテーブルに基づいて吐出口311の開口幅dが必要されるエッチング幅と同じ値となるように窒素供給機構640を制御するようにしても良い。
【0121】
第4実施形態の基板処理装置100における処理手順は第2実施形態(
図11)と同様である。
【0122】
第4実施形態においては、窒素供給機構640からの窒素供給によって内側部材320を移動させて吐出口311の開口の開口幅dを規定している。すなわち、窒素供給機構640は、吐出口311の開口幅dを規定する開口幅規定機構として機能する。そして、制御部16は、吐出口311の開口幅dが必要とされるエッチング幅と同じ値となるように窒素供給機構640を制御する。また、制御部16は、吐出口311から吐出される処理液の流量が要求されている所定値となるようにポンプ63を制御する。
【0123】
このようにすれば、第1実施形態と同様に、処理液ノズル600の吐出口311の開口から吐出される処理液の液柱の幅と必要とされるエッチング幅(エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の幅に相当)とが等しくなり、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域に均等に薬液が着液することとなる。その結果、基板Wの周縁部の全域にわたって均一にエッチングレートを高くすることができる。
【0124】
また、新たな基板Wを処理する際に、必要とされるエッチング幅が変更になった場合であっても、制御部16が窒素供給機構640を制御して内側部材320の位置を変えることにより、所望のエッチング幅と等しい吐出口311の開口幅dを得ることができる。従って、必要とされるエッチング幅が小さくなったときにも、吐出口311の開口幅dを狭くすることにより、処理液ノズル600から吐出された処理液を全て基板Wに着液させることができる。その結果、処理液ノズル600から吐出された処理液の一部が基板Wに着液することなく廃棄されることはなく、処理液が無駄に消費されるのを防止することができる。すなわち、第4実施形態にようにしても、処理液を無駄に消費することなく、基板Wの周縁部の全域に処理液を着液させてエッチングレートを高くすることができるのである。
【0125】
第4実施形態では、制御部16が窒素供給機構640を制御して内側部材320をスライド移動させて吐出口311の開口幅dを規定する。一方、制御部16はポンプ63を制御して吐出口311から吐出される処理液の流量を規定している。すなわち、第4実施形態では、第2実施形態と同様に、吐出口311の開口幅dを規定する要素(窒素供給機構640)と吐出される処理液の流量を規定する要素(ポンプ63)とが異なる。
【0126】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、処理液ノズルに設ける弾性部材としてバネを用いていたが、これに限定されるものではなく、弾性部材としてゴム等を用いるようにしても良い。
【0127】
また、上記実施形態においては、処理液ノズルがアーム揺動モータ22によって処理位置と退避位置との間で円弧軌跡を描いて回動していたが、処理液ノズルは直線状に移動しても良い。
【0128】
また、上記実施形態においては、エッチング処理時にヒーター11によって基板Wの周縁部を加熱してエッチングレートをさらに高くしていたが、ヒーター11は必須の要素ではない。耐薬液性能を要求されるヒーター11はユニットコストが高価である。また、ヒーター11による加熱によって基板Wが変形するおそれもある。このため、ヒーター11を設置しないようにしても良い。ヒーター11を設けていない場合であっても、エッチングが必要とされる基板Wの周縁部の全域に薬液を着液させるとともに、薬液の流量を増加させることにより、エッチングレートを十分に高くすることができる。
【0129】
また、上記実施形態において、処理液ノズルからは処理液として薬液およびリンス液の双方を吐出していたが、処理液ノズルは専ら薬液を吐出するための薬液ノズル、または、専らリンス液を吐出するためのリンス液ノズルであっても良い。
【0130】
また、基板Wは円板形状に限定されるものではなく、基板Wは外周端の少なくとも一部が円弧状をなしていれば足り、必ずしも真円である必要はない。
【符号の説明】
【0131】
1 処理ユニット
4 処理チャンバー
5 スピンチャック
6 処理液供給ユニット
8,9,10 不活性ガス供給ユニット
11 ヒーター
16 制御部
27,31,36 気体吐出ノズル
61 処理液配管
62 処理液バルブ
63 ポンプ
74 記憶部
99 相関テーブル
100 基板処理装置
102 インデクサロボット
103 主搬送ロボット
117 スピンベース
118 スピンモータ
200 処理カップ
300,400,500,600 処理液ノズル
310 外側部材
311 吐出口
320 内側部材
321 開口部
330,530 バネ
430 アクチュエータ
510 本体部
520 弁体
640 窒素供給機構
C キャリア
W 基板