(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】開口部装置
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20250528BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20250528BHJP
E06B 3/58 20060101ALI20250528BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20250528BHJP
【FI】
E06B1/56 B
E06B1/12 Z
E06B3/58 B
E06B5/16
(21)【出願番号】P 2022070436
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2024-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】柿澤 雅志
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-123737(JP,U)
【文献】特開2000-345776(JP,A)
【文献】実開昭55-35178(JP,U)
【文献】特開平9-189172(JP,A)
【文献】特開平9-13834(JP,A)
【文献】特開2019-173390(JP,A)
【文献】実開平3-78885(JP,U)
【文献】実開昭59-131413(JP,U)
【文献】実開昭56-100682(JP,U)
【文献】実開昭63-177586(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0238911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の内周に固定される取付補助材と、取付補助材の内周に配置される枠材と、枠材に取付けられる防火ガラスを備え、
取付補助材は、開口部の内周に固定される見込壁と、見込壁の室内側から内周に延びる室内側の見付壁と、見込壁の室外側から内周に延びる室外側の見付壁を有し、
枠材は、枠本体と、押縁を有し、
枠本体は、取付補助材の室内外の見付壁に対して内外周方向に摺動自在に嵌り合い、取付補助材に対して内外周方向の適宜位置において、内周側から取付補助材とともに開口部に共締め固定されている
開口部装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の開口部に配置される開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部に枠体を固定してなる建具等の開口部装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物等の開口部に配置される開口部装置において、防火性、施工性を向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、建物等の開口部に配置される開口部装置に対して、防火性、施工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の開口部装置は、開口部の内周に固定される取付補助材と、取付補助材の内周に配置される枠材と、枠材に取付けられる防火ガラスを備え、取付補助材は、開口部の内周に固定される見込壁と、見込壁の室内側から内周に延びる室内側の見付壁と、見込壁の室外側から内周に延びる室外側の見付壁を有し、枠材は、枠本体と、押縁を有し、枠本体は、取付補助材の室内外の見付壁に対して内外周方向に摺動自在に嵌り合い、取付補助材に対して内外周方向の適宜位置において、内周側から取付補助材とともに開口部に共締め固定されている開口部装置である。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、建物等の開口部に配置される開口部装置に対して、防火性、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施形態の開口部装置の下枠部分の拡大縦断面図であり、(a)は施工後の図であり、(b)は分解図である。
【
図4】実施形態の開口部装置の縦枠部分の拡大縦断面図であり、(a)は施工後の図であり、(b)は分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の開口部装置として、建物外周に配置されたカーテンウォールPの室内側の開口部に設置されるFIX窓の例を用いて、図面を参考にして説明する。
【0010】
(カーテンウォールの構成)
建物の外周面に配置されたカーテンウォールPは、建物の外周に配置された複数の方立A間に無目Bが配設されて構成されるカーテンウォール枠にガラス等のパネル体Cを装着して構成されている。
【0011】
複数の方立Aは、左右方向に間隔をあけて配置されており、建物の躯体に連結されている。方立Aは、
図2に示すように、室内側に上下方向に延びる中空部を有する方立本体部A1を有しており、方立本体部A1の室外側の左右両側にパネル体Cを装着する凹部A2,A2を有している。
【0012】
方立Aは、凹部A2の室内側に補助縦枠A3が挿入され、方立Aの室外壁A4と補助縦枠A3とによってパネル間口溝が形成されており、バックアップ材b及びシール材s等を介して二重ガラス等のパネル体Cが保持されている。
【0013】
方立Aは、所定高さ毎に凹部A2内に図示しない無目取付部材がボルト等により取付けられており、隣接する方立A、Aの無目取付部材よって無目Bが支持されて固定されている。
【0014】
無目Bは、
図1に示すように、上下にパネル体Cを保持するパネル間口溝が形成されており、バックアップ材b及びシール材s等を介して二重ガラス等のパネル体Cが保持されている。
【0015】
無目Bは、室内側面に室内側に延びる見込壁D1を有する鋼材Dが連結されており、見込壁D1の内周面に不燃材Eが配置されてカーテンウォールPの室内側の開口部の上下内周面を形成している。
【0016】
(FIX窓の全体構成)
本実施形態のFIX窓は、
図1,2に示すように、開口部の内周に固定される取付補助材2と、取付補助材2の内周に取付けられる枠材1と、枠材1に取付けられる防火ガラス等の防火性を有するパネル体15を備えている。
【0017】
取付補助材2は、アルミ合金等の金属材料からなる断面略U字状の長尺部材であり、開口部の上内周面および下内周面に固定される取付補助材2同士、および、開口部の左右の縦内周面に固定される取付補助材2同士は同一の断面形状を有している。
【0018】
取付補助材2は、開口部の内周の見付け寸法と同程度の長さ寸法を有することが望ましく、取付補助材2を開口部の四周に配置した際に取付補助材2の外周と開口部の内周面との間に隙間が生じないように配置されることが好ましい。
なお、取付補助材2は、長手方向に分割された複数の長尺部材から構成されていてもよい。
【0019】
開口部の上内周面および下内周面に固定される取付補助材21,22は、鋼材Dの見込壁D1に不燃材Eを挟んで配置され、長さ方向適宜位置においてビス等によって固定されている。
開口部の左、右内周面に固定される取付補助材23,23は、方立Aの見込面に配置され、長さ方向適宜位置においてビス等によって固定されている。
【0020】
枠材1(上枠材11、下枠材12および縦枠材13)は、アルミ合金等の金属材料からなり、枠本体(上枠本体111、下枠本体121および縦枠本体131)と押縁112,122,132を有し、開口部の内周各辺において同一の断面形状を有する長尺部材である。
【0021】
取付補助材2の内周に取り付けられて開口部の四周に配置された上枠材11、下枠材12および左、右の縦枠材13,13は、内周にガラス保持溝を有しており、下枠材12のガラス保持溝にセッティングブロック125が配置され、左右の縦枠材13,13のガラス保持溝にスペーサブロック135が配置されて防火ガラス等のパネル体15が嵌め込まれて、カーテンウォールPの室内側にFIX窓が設けられている。
【0022】
以下、上枠材11および下枠材12について、下枠部分の取付補助材22および下枠材12を例に用いて
図3を参考にしながら、さらに説明する。また、左、右の縦枠材13,13について、左縦枠部分の取付補助材23および縦枠材13を例に用いて
図4を参考にしながら、さらに説明する。なお、左縦枠部分については、下枠部分と同様の構成に関して図面に対応する符号を付して、その具体的な説明を一部省略する。
【0023】
(下枠部分および上枠部分の構成)
下枠部分の取付補助材22は、
図3に示すように、開口部の内周面に固定される見込壁22aと、見込壁22aの室内側端から内周に延びる室内側の見付壁22bと、見込壁22aの室外側端から内周に延びる室外側の見付壁22bを有している。
【0024】
取付補助材22は、不燃材Eの内周面に配置され、長さ方向適宜位置において見込壁22aがビス等の固定手段b1によって開口部の内周面(鋼材D)に固定されている。なお、取付補助材22の外周面と不燃材Eとの間には、必要に応じて、加熱発泡材f等が設けられている。
【0025】
下枠材12は、取付補助材22の内周に配置されて固定される下枠本体121と、下枠本体121に取付けられる押縁122を有している。
【0026】
下枠本体121は、パネル体15を保持するガラス保持溝12aの底壁部121aと、底壁部121aの室内側に連設された室内側見付壁121bと、室内側見付壁121bの上端室外側に形成された第1押縁係合部121cと、底壁部121aから内周方向に突出する第2押縁係合部121dと、底壁部121aの室外側に連接された室外側のガラス保持壁121eを有しており、ガラス保持壁121eの上端には、気密材取付溝121fが設けられている。
【0027】
下枠本体121は、室内側見付壁121bの室内側面からガラス保持壁121eの室外側面までの寸法が、取付補助材22の室内外の見付壁22b,22bの内壁間の寸法より小さく、取付補助材22の内側に上方から内外周方向に摺動自在に嵌め込むことができる。
【0028】
取付補助材22に下枠本体121を嵌め込むに際して、取付補助材22の内周に適宜厚さ寸法のスペーサ124を配置することで、下枠本体121の高さ位置(見付け方向位置)を調節して高さ方向で所望の位置に配置することができる。
【0029】
押縁122は、ガラス保持溝12aの室内側壁を構成するガラス保持壁122aと、ガラス保持壁122aの上端より室外側に延びる内周壁122bと、ガラス保持壁122aの室外側面で高さ方向中央付近より室外側に延びる係合壁122cと、係合壁122cの室外側端に形成された第1係合部122dと、第1係合部122dの外周側に連続して形成された第2係合部122eを有しており、内周壁122bの室外側端にビート抑え部122fが設けられている。
【0030】
押縁122は、第1係合部122dおよび第2係合部122eをそれぞれ下枠本体121の第1押縁係合部121cおよび第2押縁係合部121dに係合して、下枠本体121に取り付けられる。
下枠本体121に取り付けられた押縁122は、ガラス保持壁122aの下端が開口部の下内周面から離間した状態で、取付補助材22の室内側の見付壁22bの内周部分を覆っている。
【0031】
下枠部分については、開口部の下内周面に固定された下枠材12のガラス保持溝12aにセッティングブロック125等が配置され、パネル体15が保持される。
【0032】
(縦枠部分の構成)
縦枠部分の取付補助材23は、
図4に示すように、開口部の内周面に固定される見込壁23aと、見込壁23aの室内側端から内周に延びる室内側の見付壁23bと、見込壁23aの室外側端から内周に延びる室外側の見付壁23bを有している。
【0033】
縦枠部分の取付補助材23は、下枠部分の取付補助材22に比べて見込み寸法が大きく形成されており、室内外の見付壁23b,23bの見込壁23a寄りには段部23c,23cが形成され、内周端にガラス保持溝の内側方向に向かって延びる突出部23d,23dが形成されている。
【0034】
縦枠材13は、取付補助材23の内周に配置されて固定される縦枠本体131と、縦枠本体131に取付けられる押縁132を有している。
【0035】
縦枠本体131は、室内側見付壁131bの室内側面からガラス保持壁131dの室外側面までの寸法が、取付補助材23の室内外の突出部23d,23dの間および段部23c,23cの内側間の寸法よりも小さく、取付補助材23の内側に内周側から内外周方向に摺動自在に嵌め込むことができる。
【0036】
縦枠部分の取付補助材23は、室内外の見付壁23b,23bの内周間の寸法が上枠部分の取付補助材21および下枠部分の取付補助材22の室内外の見付壁21b,22bの外周間の寸法よりも大きく、見付壁23b,23bの室内外の突出部23d,23dを切り欠くことで、上枠部分の取付補助材21および下枠部分の取付補助材22を縦勝ちで見付壁23b,23bの間に納めることができる。
【0037】
(FIX窓の施工手順)
FIX窓の施工は、以下の手順例によって行うことができる。
手順1:縦枠材の取付補助材の取付
手順2:上枠材、下枠材の取付補助材の取付
手順3:上、下枠材の上枠本体,下枠本体の取付
手順4:縦枠材の枠材本体の取付
手順5:ガラスのセットおよび上下枠材の押縁の取付
手順6:左右の縦枠材の押縁の取付
以下、各手順について、説明する
【0038】
手順1:縦枠材13の取付補助材23の取付
開口部の左右内周面(方立A)に縦枠材13,13の取付補助材23,23を仮固定して、皿ビス等の固定手段b1によって固定する。
この時、必要に応じて、取付補助材23,23の外周面と方立Aとの間に加熱発泡材fを配置してもよい。
【0039】
手順2:上枠材11、下枠材12の取付補助材21,22の取付
左右の取付補助材23,23間に上枠材11、下枠材12の取付補助材21,22を差し込んで仮止めし、開口部の上下内周面(鋼材D)に皿ビス等の固定手段b1によって固定する。
左右の取付補助材23,23は、上方部位および下方部位において、突出部23d,23dが切り欠かれており、上下の取付補助材21,22の左右端部を左右の取付補助材23,23の見付壁23b,23b間へ差し込むことを可能にしている。
なお、必要に応じて、取付補助材21,22の外周面と不燃材Eとの間に加熱発泡材fを配置してもよい。
【0040】
手順3:上、下枠材の上枠本体111,下枠本体121の取付
上下の取付補助材21,22内の間口寸法を確認し、取付補助材21,22の内周に適宜厚さ寸法のスペーサ114,124の抜き差しを行った後、上枠本体111および下枠本体121を取付補助材21,22の内周に配置する。
取付補助材21,22と上枠本体111および下枠本体121を、ビス等の固定手段b2によって、開口部の上下内周面(鋼材D)に共締め固定する。
【0041】
手順4:縦枠材13の縦枠本体131の取付
左右の取付補助材23,23内の間口寸法を確認し、取付補助材23,23の内周に適宜厚さのスペーサ134の抜き差しを行った後、縦枠本体131,131を取付補助材23,23の内周に配置する。
取付補助材23,23と縦枠本体131,131を、ビス等の固定手段b2によって、開口部の上下内周面(方立A)に共締め固定する。
なお、上、下枠本体111,121および縦枠本体131の気密材取付溝111e(図示はない),121e、131eには、予めビート材等の気密材を取り付けておくことが好ましい。
【0042】
手順5:ガラスのセットおよび上、下枠材の押縁112,122の取付
下枠本体121にセッティングブロック125を配置したのち、上枠本体111、下枠本体121および左右の縦枠本体131,131の内周に耐火ガラス等のパネル体15をセットしてセッティングブロック125に載置し、上枠本体111および下枠本体121に対して押縁112,122を取り付ける。
【0043】
手順6:左右の縦枠材の押縁の取付
左右の縦枠本体131,131に押縁132,132を取り付けて、パネル体15と押縁112,122,132との間に後付けビートを嵌め込んで施工を完了する。
以上、FIX窓の施工手順について説明した。
【0044】
(本実施形態の開口部装置の効果)
以上のように、本実施形態の開口部装置は、開口部の内周に取付補助材を配置し、該取付補助材の内周にスペーサを介して枠本体を配置することによって、開口部の寸法誤差等にあわせて枠材の位置調節を行うことができ、また、取付補助材と枠本体を内周側からのネジ止めによって固定することができるので、施工性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態の開口部装置は、取付補助材を見込壁と、室内側および室外側の見付壁によって形成し、見付壁間に枠本体を嵌め込んで取り付けているので、ガラス体を保持する枠本体の室内側および室外側を取付補助材によって保護することができ、防火性能を向上させることができる。
【0046】
そして、本実施形態の開口部装置は、取付補助材に呑み込ませるように枠材を配置することで枠材に位置調節機能および保護機能を持たせているので、該機能を付与することによる見付け寸法の増加を抑えることができ、フレーム部分の見付け寸法を小さくすることができる。
【0047】
本実施形態の開口部装置は、枠本体に取付けられる押縁を取付補助材の室内側の見付壁よりも室内側に配置し、かつ、押縁の室内側のガラス保持壁の外周端が開口部の内周面に対して隙間を有した状態で取り付けられることで、押縁によって、取付補助材の室内側の見付壁の内周端を覆うことができるとともに、枠材に奥行き感を持たせることができ、意匠性を向上させることができる。
【0048】
本実施形態の開口部装置は、枠材において、押縁が枠本体に対して、見付け方向および見込み方向に位置の異なる2か所の係合部によって係合されているので、見付け方向および見込み方向の両方に対して強固に取り付けることができる。
【0049】
-他の実施形態-
開口部装置が取付けられる開口部は、カーテンウォールの室内側に形成される開口部に限定されるものではなく、開口部装置は、例えば室外側に配置された既設のFIX窓の室内側の開口部に施工される内窓であってもよい。
また、開口部装置の各枠材とパネル体15との間をシールするシール材は、ビート材等乾式の気密材に限定されるものではなく、バックアップ材を配置した後にシール材を充填することによる湿式のシールであってもよい。
【0050】
さらに、開口部装置の上枠材、下枠材および縦枠材の材料は、ステンレスやアルミ製の金属材料、その他の難燃性の材料など、上枠材、下枠材および縦枠材の材質については、特に限定されるものではない。
【0051】
以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 :枠材
12 :下枠材
121 :下枠本体
122 :押縁
22 :取付補助材
22a :見込壁
22b :見付壁
15 :パネル体(耐火ガラス)
b2 :固定手段