(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】制御装置、制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20250528BHJP
【FI】
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2023523815
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2021020024
(87)【国際公開番号】W WO2022249344
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 真人
【審査官】杉浦 孝光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139478(WO,A1)
【文献】特開2017-207811(JP,A)
【文献】特開2006-338396(JP,A)
【文献】特開2016-126427(JP,A)
【文献】特開2005-131045(JP,A)
【文献】特開2011-096235(JP,A)
【文献】特開2015-102997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御装置であって、
ハードウェアを有する1以上のプロセッサを備え、
該1以上のプロセッサが、
現在進行中の前記医療イベントの進捗を認識し、
前記進捗に基づいて前記スケジュールの修正の要否を判定し、
前記スケジュールは、各前記医療イベントにおいて行われる各工程の所要時間の情報を含み、
前記1以上のプロセッサが、
前記現在進行中の医療イベントの内視鏡映像に基づいて前記現在進行中の医療イベントにおける現在の工程を認識し、
前記現在の工程および前記スケジュールに基づいて前記進捗を認識する制御装置。
【請求項2】
前記1以上のプロセッサは、
前記スケジュールの修正が必要であると判定した場合、前記スケジュールの修正案を受信し、
前記修正案が妥当であるか否かを判定し、
前記修正案が妥当であると判定した場合、前記修正案に基づいて前記スケジュールを変更する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記1以上のプロセッサが、認識された前記進捗に基づいて前記現在進行中の医療イベントの予想終了時刻を算出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記1以上のプロセッサが、前記予想終了時刻と前記スケジュールにおける前記現在進行中の医療イベントの終了時刻とに基づいて、前記スケジュールの修正の要否を判定する、請求項
3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記スケジュールは、各前記医療イベントにアサインされるスタッフの情報を含み、
前記1以上のプロセッサは、前記修正案において修正が加えられている前記医療イベントの前記スタッフのスキルに基づいて、前記修正案が妥当であるか否かを判定する、請求項
2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記スケジュールは、各前記医療イベントにアサインされるスタッフの情報を含み、
前記1以上のプロセッサは、
前記修正案において修正が加えられている前記医療イベントの前記スタッフが、前記現在進行中の医療イベントに新たに参加するスタッフであるか、または、前記現在進行中の医療イベントに現在参加しているスタッフであるかを判定し、
前記現在参加しているスタッフであると判定した場合、当該スタッフの勤務条件に基づいて前記修正案が妥当であるか否かを判定する、請求項
2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記1以上のプロセッサは、
前記修正案において修正が加えられている前記医療イベントと他の医療イベントとの間で、スタッフおよび機材が時間的に重複しないか否かを判定し、
重複しないと判定した場合、前記修正案が妥当であると判定する、請求項
2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記1以上のプロセッサは、前記スケジュールを変更した場合、前記スケジュールの変更を、変更が加えられた前記医療イベントの関係者に通知する請求項
2に記載の制御装置。
【請求項9】
前記1以上のプロセッサは、
前記関係者の各々について前記スケジュールの変更の通知の要否を判定し、前記制御装置の近くにいる前記関係者および現在進行中の医療イベントに参加している前記関係者の少なくとも一方への前記通知は不要であると判定し、
前記通知が不要であると判定された前記関係者には前記スケジュールの変更を通知しない、請求項
8に記載の制御装置。
【請求項10】
1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御システムであって、
前記スケジュールを記憶するサーバと、
通信ネットワークを経由して前記サーバと接続される制御装置とを備え、
該制御装置が、ハードウェアを有する1以上のプロセッサを備え、
該1以上のプロセッサが、
現在進行中の前記医療イベントの進捗を認識し、
前記進捗に基づいて前記スケジュールの修正の要否を判定し、
前記スケジュールは、各前記医療イベントにおいて行われる各工程の所要時間の情報を含み、
前記1以上のプロセッサが、
前記現在進行中の医療イベントの内視鏡映像に基づいて前記現在進行中の医療イベントにおける現在の工程を認識し、
前記現在の工程および前記スケジュールに基づいて前記進捗を認識する、制御システム。
【請求項11】
前記医療イベントが行われる1以上の医用室の各々に配置された撮像装置をさらに備え、
前記1以上のプロセッサが、前記撮像装置によって取得される前記医療イベントの映像に基づいて前記進捗を認識する、請求項
10に記載の制御システム。
【請求項12】
1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、コンピュータが行う制御方法であって、
現在進行中の前記医療イベントの進捗を認識すること、および、
前記進捗に基づいて前記スケジュールの修正の要否を判定することを含み、
前記スケジュールは、各前記医療イベントにおいて行われる各工程の所要時間の情報を含み、
前記現在進行中の医療イベントの内視鏡映像に基づいて前記現在進行中の医療イベントにおける現在の工程を認識し、
前記現在の工程および前記スケジュールに基づいて前記進捗を認識する、コンピュータが行う制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院内の医療イベントのスケジュールを制御する制御装置、制御システムおよび制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院内では、患者、術式、手術室、機材ならびに医師、看護師および技師等の医療スタッフに基づいて、一日に行われる複数の手術のスケジュールが事前に作成される。手術開始後、スケジュール通りに手術が進まず遅れることがある。手術が遅れた場合、当該手術への医療スタッフまたは機材の追加が必要になったり、他の手術の計画の修正が必要になったりすることがある。手術の遅れを速やかに認識するため、手術室外のスタッフは、手術室に電話をしたり手術室を覗いたりすることによって、手術の進捗を定期的に確認する。このような手術の進捗の確認作業は、スタッフにとって負担である。そこで、手術の進捗を自動的に認識する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、手術で使用される複数の機械のオンオフに基づいて手術の進捗を検出し、進捗をリアルタイムで手術室外に告知することが開示されている。特許文献1によれば、手術が予定よりも遅れている場合、手術の遅れがディスプレイに表示されることによって手術室外のスタッフにリアルタイムに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手術がスケジュール通りに進まない場合、現在進行中の手術およびその後に予定されている他の手術のリスケジュールが必要になることがある。特許文献1によれば、手術の進捗を人手を要することなくリアルタイムに認識することできるので、スタッフの負担の一部を軽減することはできる。しかし、特許文献1では、進捗を認識した後にスタッフが行うリスケジュールに必要な作業について考慮されていない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、リスケジュールに必要な作業を人手をかけずに行うことができる制御装置、制御システムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御装置であって、ハードウェアを有する1以上のプロセッサを備え、該1以上のプロセッサが、現在進行中の前記医療イベントの進捗を認識し、前記進捗に基づいて前記スケジュールの修正の要否を判定する、制御装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御装置であって、ハードウェアを有する1以上のプロセッサを備え、該1以上のプロセッサが、前記スケジュールの修正案を受信し、前記修正案が妥当であるか否かを判定し、前記修正案が妥当であると判定した場合、前記修正案に基づいて前記スケジュールを変更する、制御装置である。
【0009】
本発明の他の態様は、1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御システムであって、前記スケジュールを記憶するサーバと、通信ネットワークを経由して前記サーバと接続される制御装置とを備え、該制御装置が、ハードウェアを有する1以上のプロセッサを備え、該1以上のプロセッサが、現在進行中の前記医療イベントの進捗を認識し、前記進捗に基づいて前記スケジュールの修正の要否を判定する、制御システムである。
【0010】
本発明の他の態様は、1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御システムであって、前記スケジュールを記憶するサーバと、通信ネットワークを経由して前記サーバと接続される制御装置とを備え、該制御装置が、ハードウェアを有する1以上のプロセッサを備え、該1以上のプロセッサが、前記スケジュールの修正案を受信し、前記修正案が妥当であるか否かを判定し、前記修正案が妥当であると判定した場合、前記修正案に基づいて前記スケジュールを変更する、制御システムである。
【0011】
本発明の他の態様は、1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御方法であって、現在進行中の前記医療イベントの進捗を認識すること、および、前記進捗に基づいて前記スケジュールの修正の要否を判定することを含む、制御方法である。
【0012】
本発明の他の態様は、本発明の他の態様は、1以上の医療イベントのスケジュールを制御し、前記1以上の医療イベントが手術、検査および診察の少なくとも1つを含む、制御方法であって、前記スケジュールの修正案を受信すること、前記修正案が妥当であるか否かを判定すること、および、前記修正案が妥当であると判定した場合、前記修正案に基づいて前記スケジュールを変更することを含む、制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リスケジュールに必要な作業を人手をかけずに行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置および制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るスケジュールの制御方法のフローチャートである。
【
図4】
図3のフローチャートの手術の進捗認識ルーチンのフローチャートである。
【
図5】
図3のフローチャートの修正案の妥当性確認ルーチンのフローチャートである。
【
図6】スケジュールの修正案の入力方法の例を説明する図である。
【
図7】スケジュール変更を通知する関係者の選択方法の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御装置、制御システムおよび制御方法について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る制御装置10および制御システム100は、病院内で行われる1以上の医療イベントのスケジュールを制御するためのものである。医療イベントは、手術、検査および診察の少なくとも1つを含む。本実施形態において、手術のスケジュールについて説明する。
【0016】
図1に示されるように、制御システム100は、病院内の情報およびデータを保存する複数のサーバ21,22,23,24と、複数の手術室端末31,32,…と、手術の内視鏡映像を取得する内視鏡(撮像装置)41,42,…と、手術室外に配置されるスタッフ端末5と、制御装置10と、通信ネットワーク6とを備える。
【0017】
第1サーバ21は、スケジュール管理システムを構成するものであり、
図2に示されるように、スタッフによって予め作成された、病院内で行われる1以上の手術B1,B2,B3,…のスケジュールAを記憶する。スケジュールAは、開始時刻、終了時刻、手術室、使用される機材およびアサインされた医療スタッフ等、予め設定された各手術B1,B2,B3,…の事前計画を含む。
図2において、矢印Cは現在時刻を表し、手術B1,B2が現在進行中である。
各手術B1,B2,B3,…は、例えば切開、臓器切除、臓器摘出および縫合等の1以上の工程を含む。スケジュールAには、手術開始からの各工程の所要時間等を含む各手術B1,B2,B3,…の個別のスケジュールも設定されている。
【0018】
第2サーバ22は、患者データ管理システムを構成するものであり、患者の個人情報および診断結果等を記憶する。
第3サーバ23は、医療スタッフ管理システムを構成するものであり、医療スタッフの個人情報および勤務シフト情報等を記憶する。医療スタッフは、医師、看護師、看護補助者および技師等である。
第4サーバ24は、メールシステムを構成するものであり、医療スタッフおよび事務スタッフ等の各個人にメールアドレスを割り当てたり、電子メールを送受信したりする。
【0019】
手術室端末31,32,…は、例えばパーソナルコンピュータであり、中央演算処理装置(CPU)のようなハードウェアを有するプロセッサ31a,32a,…をそれぞれ備える。手術室端末31,32,…および内視鏡41,42,…は、手術が行われる複数の手術室(医用室)1,2,…内に配置される。
スタッフ端末5は、手術室1,2,…の外にいるスタッフによって使用されるものであり、例えば、複数の手術室1,2,…の外に設置されたスタッフステーションに配置される。
【0020】
制御装置10は、例えばパーソナルコンピュータ等の任意のコンピュータであり、一例において、スタッフステーションに配置される。制御装置10は、CPUのようなハードウェアを有するプロセッサ1aと、入力装置1bと、表示装置1cとを有する。入力装置1bは、マウス、キーボードおよびタッチパネル等の任意の入力デバイスを有する。表示装置1cは、液晶ディスプレイ等の任意のディスプレイを有する。
【0021】
制御装置10は、スタッフステーション以外の病院内の任意の場所に配置されてもよく、例えば、手術室1,2,…のいずれかに配置されてもよい。また、病院内に配置されプロセッサを有する任意の装置を制御装置10として使用することができ、例えば、手術室端末31,32,…のいずれか、または、サーバ21,22,23,24のいずれかを制御装置10として使用してもよい。
【0022】
通信ネットワーク6は、例えば、病院内に設置されたローカルエリアネットワーク(LAN)である。通信ネットワーク6は、LAN以外の種類の通信ネットワークであってもよい。制御装置10、サーバ21,22,23,24、端末31,32,…,5および内視鏡41,42,…は、通信ネットワーク6にそれぞれ接続され、通信ネットワーク6を経由して相互に通信可能である。
【0023】
制御装置10は、スケジュールAの制御に必要な情報およびデータを、サーバ21,22,23,24、端末31,32,…,5および内視鏡41,42,…から通信ネットワーク6を経由して取得する。そして、制御装置10は、手術室1,2,…内で現在行われている手術の進捗をリアルタイムで認識し、進捗に基づいてスケジュールAを制御する。
【0024】
次に、制御装置10および制御システム100において実行されるスケジュールの制御方法について
図3から
図5を参照して説明する。
制御装置10のプロセッサ1aは、
図3から
図5に示される制御方法を実行する。制御方法は、現在進行中の各手術の進捗を認識するステップS1と、進捗に基づいてスケジュールAの修正の要否を判定するステップS2と、スケジュールAの修正案を受信するステップS3と、修正案の妥当性を確認するステップS4と、確認結果に基づいて修正案が妥当であるか否かを判定するステップS5と、修正案をスケジュールAに反映するステップS6と、関係者へのスケジュールAの変更の通知の要否を判定するステップS7と、スケジュールAの変更を関係者へ通知するステップS8とを含む。
【0025】
ステップS1において、プロセッサ1aは、現在進行中の手術B1,B2の進捗に関する進捗関連情報を手術室1,2内の装置31,32,41,42からリアルタイムに取得し、進捗関連情報に基づいて各手術B1,B2の進捗を認識し、進捗に基づいて各手術B1,B2の予想終了時刻を算出する。具体的には、
図4に示されるように、ステップS1は、ステップS11~S14を含む。
【0026】
ステップS11において、プロセッサ1aは、進捗関連情報である手術B1の内視鏡映像を内視鏡41から受信し、内視鏡映像を解析することによって、手術B1の現在の工程を認識する。例えば、各工程における内視鏡映像の特徴が制御装置10の記憶装置(図示略)に予め記憶され、受信した内視鏡映像の特徴を記憶されている特徴と比較することによって現在の工程が認識される。同様に、プロセッサ1aは、各工程の切り替わりと判断することが可能な内視鏡映像上の特徴(例えば、特定の臓器が映し出される、または、特定の器具を使用し始めるなど)を認識することによって、現在の工程を認識してもよい。同様に、プロセッサ1aは、手術B2の内視鏡映像を内視鏡42から受信し、手術B2の現在の工程を認識する。
手術室1,2内の医療スタッフが手術B1,B2の経過を手術室端末31,32に入力することによって、手術室端末31,32には手術ログが記録される。プロセッサ1aは、進捗関連情報である手術ログを手術室端末31,32から取得し、手術ログに基づいて手術B1,B2の現在の工程を認識してもよい。
【0027】
次に、ステップS12において、プロセッサ1aは、スケジュールAに設定された開始時刻と現在時刻とに基づいて、各手術B1,B2の手術時間を認識する。手術時間は、手術開始時刻から現在時刻までの経過時間である。現在時刻の認識は、例えば、プロセッサ1aに内蔵される時計を参照することによって行われる。
次に、ステップS13において、プロセッサ1aは、手術B1の現在の工程と手術時間とに基づいて手術B1の進捗を判断し、手術B2の現在の工程と手術時間とに基づいて手術B2の進捗を判断する。具体的には、プロセッサ1aは、手術時間と、スケジュールAにおける現在の工程の所要時間とを比較することによって、現在の工程が予定通り進んでいるか、予定よりも早いか、または予定よりも遅いかを判断する。
【0028】
次に、ステップS14において、プロセッサ1aは、ステップS13において判断された進捗に基づき、各手術B1,B2の予想終了時刻を算出する。例えば、手術が早まっている場合、手術時間と所要時間との差だけスケジュールAに設定された終了時刻よりも早い予想終了時刻が算出される。手術が遅れている場合、手術時間と所要時間との差だけスケジュールAに設定された終了時刻よりも遅い予想終了時刻が算出される。
【0029】
ステップS1において、手術中の所定のシーンをゲートとして扱い、ゲートから所定の所要時間後を予想終了時刻として算出してもよい。
例えば、内視鏡映像に基づいて臓器摘出のシーンを認識し、シーン認識から30分後を予想終了時刻として算出してもよい。または、手術B1,B2の手術ログに基づいて手術中のシーンを細かく認識し、認識されたシーンに基づいて予想終了時刻を算出してもよい。
【0030】
手術が早まっているまたは遅れている場合、プロセッサ1aは、スケジュールAに予想終了時刻を追加することによって、手術の早まりまたは遅れをスケジュールAに反映させてもよい。例えば、
図2に示されるように、手術B1が遅れている場合、手術B1の延長および予想終了時刻が点線で表示されてもよい。これにより、手術室1,2の外のスタッフは、手術の早まりまたは遅れと、予想終了時刻とを容易に認識することができる。
【0031】
次に、ステップS2において、プロセッサ1aは、ステップS14において算出された予想終了時刻をスケジュールAに設定されている終了時刻と比較する。予想終了時刻が設定された終了時刻と同一であるか、または設定されている終了時刻よりも早い場合、プロセッサ1aは、スケジュールAの変更は不要であると判定する。
一方、予想終了時刻が設定されている終了時刻よりも遅い場合、プロセッサ1aは、スケジュールAの修正が必要であると判定する。この場合、プロセッサ1aは、例えばスケジュールAの修正を促す通知を表示装置1cに表示させることによって、リスケジュールの必要性を手術室1,2,…の外のスタッフに通知する。プロセッサ1aは、修正が必要であると判定した理由、例えば、予想終了時刻が設定されている終了時刻よりも遅い手術B1をさらに通知してもよい。
【0032】
スタッフは、通知に応答し、少なくとも1つの手術の事前計画の修正を入力装置1bを使用して制御装置10に入力する。例えば、
図6に示されるように、スタッフは、スケジュールAが表示されたタッチスクリーンのタッチ操作によって、遅れている手術B1の終了時刻を遅らせる修正を入力する。入力後、完了ボタンのクリックによって、入力された修正を含むスケジュールAの修正案が、入力装置1bからプロセッサ1aへ送信される。
【0033】
ステップS3において、プロセッサ1aは、スケジュールAの修正案を入力装置1bから受信する。
図7の例において、手術B1の終了時刻の修正と、手術B3の開始時刻および終了時刻の修正とが入力されている。修正案は、開始時刻および終了時刻の修正の他に、手術室の変更、機材の追加およびスタッフの追加等、スケジュールAに設定されている手術B1,B2,B3,…の事前計画の任意の修正を含み得る。
【0034】
次に、ステップS4において、プロセッサ1aは、修正案における各手術B1,B2の修正の妥当性を少なくとも1つの項目において確認する。具体的には、
図5に示されるように、ステップS4は、ステップS41~S44を含む。
ステップS41において、プロセッサ1aは、修正が加えられている手術B1にアサインされている医療スタッフのスキルに基づいて、手術B1の修正が妥当であるか否かを確認する。
【0035】
具体的には、第1サーバ21に、各手術の難易度が記憶され、第3サーバ23に、各医療スタッフのスキルに関するスキル情報、例えばそれまでに経験した症例等が記憶されている。プロセッサ1aは、第1サーバ21から手術B1の難易度を取得し、第3サーバ23から手術B1にアサインされている医療スタッフのスキル情報を取得し、手術の難易度およびスキル情報に基づいて、アサインされている医療スタッフが手術B1に必要なスキルを有するか否かを確認する。
【0036】
医療スタッフが必要なスキルを有する場合、プロセッサ1aは、手術B1の修正は妥当であると判定し、ステップS42に進む。一方、医療スタッフが必要なスキルを有しない場合、プロセッサ1aは、手術B1の修正は妥当ではないと判定し、手術B1の修正の妥当性の確認を終了する。
手術に必要なスキルは、手術の状況に応じて手術中に変化することがある。したがって、プロセッサ1aは、手術の現在の難易度を判定してもよい。例えば、患者の体内へのガーゼの出し入れの回数または処置具の交換の回数が、標準的な回数と比較して手術中に増えている場合、手術の難易度が手術開始時よりも上がっていると判定し、手術に必要なスキルをより高いレベルに変更してもよい。
【0037】
ステップS42,S43は、現在進行中の手術B1について行われる。
ステップS42において、プロセッサ1aは、アサインされた医療スタッフが、手術B1に新たに参加する新しいスタッフであるか、または、手術B1に現在参加している現在の医療スタッフであるかを判定する。この判定は、例えば、スケジュールAに設定されている医療スタッフと、修正案に設定されている医療スタッフとを比較することによって行われる。プロセッサ1aは、現在の医療スタッフであると判定された場合にステップS43に進み、新しい医療スタッフであると判定された場合にステップS44に進む。
【0038】
ステップS43において、プロセッサ1aは、現在の医療スタッフの勤務条件に基づいて手術B1の修正が妥当であるか否かを確認する。具体的には、第3サーバ23に、各医療スタッフの勤務条件が記憶されている。勤務条件は、始業時刻、終業時刻および超過勤務の基準を含み、超過勤務の基準は、許容される残業時間を含む。プロセッサ1aは、現在の医療スタッフの勤務条件を第3サーバ23から取得し、修正案における医療スタッフの勤務時間が勤務条件を満たすか否かを確認する。例えば、1日当たり1時間までの残業時間が認められている場合、残業時間が1時間を超える前に手術B1が終了するときに、勤務条件を満たすと判定され、そうでない場合、勤務条件を満たさないと判定される。
【0039】
勤務条件を満たす場合、プロセッサ1aは、手術B1の修正は妥当であると判定し、ステップS44に進む。一方、勤務条件を満たさない場合、プロセッサ1aは、手術B1の修正は妥当ではないと判定し、手術B1の修正の妥当性の確認を終了する。
【0040】
ステップS44において、プロセッサ1aは、手術B1と他の手術B2,B3,…との間で、医療スタッフおよび機材が時間的に重複しないか否かを確認する。医療スタッフの重複の確認は、スケジュールAに設定された各手術B1,B2,B3の医療スタッフの勤務シフト情報を第3サーバ23から取得し、勤務シフト情報を参照することによって行われる。機材の重複の確認は、スケジュールAに設定された機材の情報を参照することによって行われる。
【0041】
プロセッサ1aは、医療スタッフおよび機材の両方が重複しない場合、手術B1の修正は妥当であると判定し、医療スタッフおよび機材の少なくとも一方が重複する場合、手術B1の修正は妥当ではないと判定する。ステップS44において、医療スタッフが、出勤中であるか、または休憩中であるかも考慮してもよい。
プロセッサ1aは、手術B3の修正の妥当性についてもステップS41~S44に従って確認する。
【0042】
なお、ステップS4において、ステップS41~S44の全てが必ずしも実行される必要はなく、ステップS41,S43,S44の少なくとも1つが実行されればよい。例えば、ステップS41のみが実行されてもよい。ステップS41,S43,S44のうち2以上が実行される場合、実行の順番は任意である。
また、ステップS4において、ステップS41,43における判定結果に関わらずステップS41~S44の全てを実行し、医療スタッフのスキル、医療スタッフの勤務条件、医療スタッフおよび機材の重複の全てについて妥当性を確認してもよい。
【0043】
次に、ステップS5において、プロセッサ1aは、ステップS41,S43,S44の全てにおいて手術B1,B3の修正が妥当であることが確認された場合、スケジュールAの修正案は妥当であると判定し、ステップS6に進む。
ステップS6において、プロセッサ1aは、第1サーバ21に記憶されているスケジュールAに修正案に含まれる各修正を反映することによって、スケジュールAを書き替える。
【0044】
次に、ステップS7において、プロセッサ1aは、変更が加えられた手術B1,B3の関係者の各々についてスケジュールAの変更の通知の要否を判定する。関係者は、例えば、手術B1,B3にアサインされた医療スタッフである。
例えば、制御装置10の近くにいるスタッフステーション内の関係者、および、現在進行中の手術B1,B2に参加している手術室1,2内の関係者は、通常、スケジュールの変更を現場で把握している。プロセッサ1aは、各関係者のその日の勤務スケジュールに基づいて各関係者の現在の居場所を特定し、スタッフステーション内または手術室1,2内にいる関係者への通知は不要であると判定する。一方、プロセッサ1aは、制御装置10の近くおよび手術室1,2内のいずれにもいない関係者への通知は必要であると判定する。
【0045】
ステップS7において、プロセッサ1aは、スタッフが入力装置1bに入力した情報に基づいて通知の要否を判定してもよい。例えば、
図7に示されるように、スタッフは、通知する関係者を入力装置1bを使用して選択し、プロセッサ1aは、選択された関係者が通知が必要であると判定してもよい。
図7において、手術B3を担当するチームが選択され、チームに属する全ての関係者に通知が送信される。
【0046】
次に、ステップS8において、プロセッサ1aは、通知が不要であると判定された関係者にはスケジュールAの変更を通知せず、通知が必要であると判定された関係者にのみスケジュールAの変更を通知する。例えば、プロセッサ1aは、関係者が携帯するスタッフ端末に、第4サーバ24を経由してスケジュールAの変更を知らせる電子メールを送信する。
【0047】
一方、ステップS5において、プロセッサ1aは、ステップS41,S43,S44の少なくとも1つにおいて修正案が妥当ではないことが確認された場合、スケジュールAの修正案は妥当ではないと判定する。この場合、プロセッサ1aは、例えばスケジュールAの他の修正案を促す通知を表示装置1cに表示させることによって、修正案が妥当ではないことをスタッフに通知し、次の修正案の受信を待つ(ステップS3)。プロセッサ1aは、修正案が妥当ではないと判定した理由も表示装置1cに送信し表示させてもよい。
スタッフは、表示装置1cに表示される通知に応答し、他の修正案を入力装置1bに入力しプロセッサ1aへの送信を実行させる。
【0048】
手術に遅延が生じた場合、追加の機材が必要となったり、緊急事態に対応することができる追加の看護師の手術室への派遣が必要になったりする。したがって、手術室外のスタッフは、手術の遅延および手術の計画の変更の必要性を迅速に認識し、計画の変更に伴う必要な対応を迅速にとることが求められる。従来、スタッフステーション内のスタッフが、複数の手術室1,2,…内の映像を監視したり、手術室1,2,…に電話をかけたり、手術室1,2,…内を覗いたりすることによって、現在進行中の全ての手術の進捗をリアルタイムに把握し、その後、スケジュールAの修正の必要性の判断、修正案の作成および修正案の妥当性の確認を行っていた。これらの作業はスタッフにとって負担であり、進捗の把握、スケジュールの修正の必要性の判断、および、修正案の妥当性の確認に遅れが生じた場合には、手術の事前計画の変更にも遅れが生じ、手術の遅延に効率的に対応することができないことがある。
【0049】
本実施形態によれば、プロセッサ1aが、各手術室1,2から取得した進捗関連情報に基づいて現在進行中の各手術の進捗をリアルタイムに認識し、進捗に基づいてスケジュールAの修正の必要性をリアルタイムに判定し、スタッフが作成したスケジュールAの修正案の妥当性を判定する。このように、リスケジュールに必要な作業を人手をかけずに自動で行うことができ、スタッフの負担を軽減することができる。
【0050】
また、現在のスケジュールAに修正の必要性が生じたとき、リスケジュールが必要であることが手術室外のスタッフに通知される。したがって、手術室外のスタッフは、リスケジュールの必要性が生じたことを、通知に基づいて迅速に認識し、スケジュールAの修正案の入力等、必要な対応を迅速にとることができる。
また、スケジュールAが変更されたとき、そのことが関係者に自動的に通知される。これにより、スケジュールAを管理するスタッフの負担をさらに軽減することができる。
【0051】
上記実施形態において、プロセッサ1aは、ステップS1~S8の全てを実行することとしたが、これに代えて、プロセッサ1aが、ステップS1~S8の一部のみを実行してもよい。
一変形例において、プロセッサ1aは、上述の制御方法をステップS4から開始してもよい。この場合、ステップS1,S2の作業はスタッフによって実行される。プロセッサ1aは、ステップS3においてスケジュールAの修正案を受信した後、ステップS4~S8を実行する。前述したように、修正案の妥当性の判定には、医療スタッフのスキルおよび勤務条件等の様々な事項を考慮する必要がある。これらの作業は、スタッフにとって負担である。ステップS4以降の処理がプロセッサ1aによって自動で実行されることで、スタッフの負担を効果的に軽減することができる。
【0052】
他の変形例において、プロセッサ1aは、ステップS1,S2のみを実行してもよい。この場合、ステップS4~8の作業はスタッフによって実行される。スケジュールAの修正の必要性に迅速に対応するためには、そのことを迅速に認識して修正の必要性を迅速に判断する必要がある。これらの作業はスタッフにとって負担である。ステップS1,S2の処理がプロセッサ1aによって自動で実行されることで、スタッフの負担を効果的に軽減することができる。
さらに他の変形例において、プロセッサ1aは、ステップS7,S8を実行しなくてもよい。この場合、ステップS7,S8の作業は、スタッフによって実行される。
【0053】
本実施形態において、制御システム100が、手術室1,2内の内視鏡41,42を備えることとしたが、内視鏡41,42以外の撮像装置を備えていてもよい。
撮像装置は、手術の映像を撮る任意の装置である。例えば、撮像装置は、手術室内に設置され手術室のライブ映像を撮像するカメラであってもよい。このように、内視鏡41,42以外の任意の種類の撮像装置の映像からも手術の進捗情報を得ることができる。
【0054】
上記実施形態において、手術のスケジュールを制御する場合について説明したが、手術以外の医療イベントを含むスケジュールを制御してもよい。具体的には、スケジュールは、手術、検査および診察の少なくとも1つを含んでいればよい。スケジュールに検査が含まれる場合、制御システム100は、検査室(医用室)内の端末および撮像装置と通信ネットワーク6を経由して接続され、スケジュールに診察が含まれる場合、制御システム100は、診察室(医用室)内の端末および撮像装置と通信ネットワーク6を経由して接続される。
【符号の説明】
【0055】
10 制御装置
1a プロセッサ
21,22,23,24 サーバ
31,32 手術室端末
41,42 内視鏡(撮像装置)
5 スタッフ端末
6 通信ネットワーク
100 制御システム
A スケジュール
B1,B2,B3 手術(医療イベント)