(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-27
(45)【発行日】2025-06-04
(54)【発明の名称】制御・監視信号伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20250528BHJP
【FI】
H04Q9/00 311R
(21)【出願番号】P 2023565665
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044635
(87)【国際公開番号】W WO2023105554
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501194514
【氏名又は名称】株式会社 エニイワイヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】濱中 淳一
(72)【発明者】
【氏名】田中 保則
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 務
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-034851(JP,A)
【文献】特開2003-189682(JP,A)
【文献】特開2005-012680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03J9/00-9/06
H04Q9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部とデータの授受を行う親局と、共通の伝送線を介して伝送同期方式により前記親局とデータの授受を行う子局の複数と、前記共通の伝送線に接続されたターミネータを備え、
前記親局と前記子局との間のデータの授受は、前記親局から繰り返し送信されるフレームにデータを重畳することによって行われ、
前記ターミネータは、前記子局から送信された監視データの全部を抽出し、予め決められた規則によってチェックデータに変換し、前記フレームの最後に設けられたチェックデータ出力領域に前記チェックデータを重畳し、
前記親局は、前記子局から送信された監視データの全部に基づき、前記ターミネータと同じ規則によって照合用データに変換し、前記チェックデータと前記照合用データの照合結果が、前記チェックデータと前記照合用データの不一致である場合に、伝送データにエラーが有ると判定することを特徴とする制御・監視信号伝送システム。
【請求項2】
前記監視データが重畳されたフレームの次のフレームが確認用フレームとされ、前記監視データは前記確認用フレームにおいて同じ内容とされ、前記親局は、前記チェックデータと前記照合用データが一致している場合は、前記確認用フレームを通常のフレームとして制御データの送信に使用し、前記チェックデータと前記照合用データが不一致である場合は、前記確認用フレームに重畳された前記監視データと前のフレームに重畳された前記監視データが不一致である場合に、伝送データにエラーが有ると判定する請求項1に記載の制御・監視信号伝送システム。
【請求項3】
前記ターミネータは、前記共通の伝送線の電圧が低下していることを示すデータを前記親局に送信する請求項1または2に記載の制御・監視信号伝送システム。
【請求項4】
前記監視データは、所定の閾値より高い第一の電位と、前記閾値より低い第二の電位により示され、前記ターミネータは、前記第一の電位の電圧レベルを前記閾値より高い状態に維持する請求項1、2又は3に記載の制御・監視信号伝送システム。
【請求項5】
前記監視データは、所定の閾値より高い第一の電位と、前記閾値より低い第二の電位により示され、前記ターミネータは、前記第二の電位の電圧レベルを前記閾値より低い状態に維持する請求項1、2又は3に記載の制御・監視信号伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御側に設けられた親局と被制御側に設けられた複数の子局との間の信号線を省配線化し、共通の伝送線で接続し、伝送クロックで同期させるなどの伝送同期方式によりデータの伝送を行う制御・監視信号伝送システムに関する。
【0002】
施設内に配置された多数の装置を集中制御するシステムにおいて、配線の数を減らす、所謂省配線化が広く実施されている。そして、その省配線化の一般的な手法として、被制御側に設けられた複数の機器の各々を制御側に設けられた制御部に直接繋ぐパラレル接続に代えて、パラレル信号とシリアル信号の変換機能を備えた親局と複数の子局を、制御部と複数の装置にそれぞれ接続し、親局と複数の子局との間で共通の伝送線を介してシリアル信号によりデータ授受を行う方式が広く採用されている。更に、共通の伝送線を介してシリアル信号によりデータ授受を行う方式として、伝送クロックで同期させるなどの伝送同期方式が多く採用されている。
【0003】
ところが、省配線化が実現された場合、多数の子局が接続されている状態において、子局における伝送データのエラーを制御部側で特定することができない場合、制御部から遠く離れている子局を各々チェックする必要があり、子局における伝送データのエラーの検出に多くの工数を要することになる。
【0004】
そこで、本出願人は、伝送同期方式において、伝送データのエラーの有無を、伝送データの伝送速度を低下させることなく親局で確認できるシステムとして、特許5738498号公報に開示されている制御・監視信号伝送システムを提案している。
【0005】
上記システムでは、伝送手順の中に、複数の子局に対する伝送制御データと複数の子局から重畳される伝送監視データとで構成される制御・監視データ領域と異なる管理データ領域が設けられ、管理データ領域を介し、親局が任意の子局を指定し、指定された子局が、伝送制御データの全部を抽出し予め決められた規則によって変換した制御伝送チェックデータと、伝送監視データの全部を抽出し予め決められた規則によって変換した監視伝送チェックデータのどちらか一方又は双方を親局に送信する。そして、親局が、伝送制御データの全部に基づいて子局と同じ規則で変換した制御伝送チェックデータと、伝送監視データの全部に基づいて子局と同じ規則で変換した監視伝送チェックデータとの比較照合により、伝送データのエラーの有無を確認するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、伝送同期方式が採用されているシステムに用いられる一般的な子局は、自局で取得した情報を送信する機能のみ、或いは、自局に対し送信された情報のみを取得して出力部に対する指示信号を出力する機能のみを備え、他局から送信された情報、或いは、他局に対し送信された情報を全て抽出する機能は備えていない。そのため、制御伝送チェックデータや監視伝送チェックデータを使用して伝送データのエラーの有無の確認を行う従来の方式を実施するためには、全子局を交換する大掛かりなシステム変更が必要となった。
【0008】
また、制御伝送チェックデータや監視伝送チェックデータを使用して伝送データのエラーの有無の確認を行う従来の方式では、チェックデータ自体を送信するためのデータ領域の他、チェックデータを送信する子局を指定するためのデータ領域が必要となるため、伝送手順が増加し、必要な伝送速度を得られない場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、伝送同期方式が採用され、伝送信号に出力された情報を抽出する機能を備えていない子局が使用されているシステムにおいても、全子局を交換する大掛かりなシステム変更を行うことなく、伝送手順の大幅な増加を伴うこともなく、親局による伝送データのエラーの有無の確認を可能とする制御・監視信号伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る制御・監視信号伝送システムでは、制御部とデータの授受を行う親局と、共通の伝送線を介して伝送同期方式により前記親局とデータの授受を行う子局の複数と、前記共通の伝送線に接続されたターミネータを備え、前記親局と前記子局との間のデータの授受は、前記親局から繰り返し送信されるフレームにデータを重畳することによって行われる。そして、前記ターミネータは、前記子局から送信された監視データの全部を抽出し、予め決められた規則によってチェックデータに変換し、前記フレームの最後に設けられたチェックデータ出力領域に前記チェックデータを重畳する。前記親局は、前記子局から送信された監視データの全部に基づき、前記ターミネータと同じ規則によって照合用データに変換し、前記チェックデータと前記照合用データの照合結果が、前記チェックデータと前記照合用データの不一致である場合に、伝送データにエラーが有ると判定する。
【0011】
前記監視データが重畳されたフレームの次のフレームが確認用フレームとされ、前記監視データは前記確認用フレームにおいて同じ内容とされ、前記親局は、前記チェックデータと前記照合用データが一致している場合は、前記確認用フレームを通常のフレームとして制御データの送信に使用し、前記チェックデータと前記照合用データが不一致である場合は、前記確認用フレームに重畳された前記監視データと前のフレームに重畳された前記監視データが不一致である場合に、伝送データにエラーが有ると判定するものであってもよい。
【0012】
前記ターミネータは、前記共通の伝送線の電圧が低下していることを示すデータを前記親局に送信するものであってもよい。
【0013】
前記監視データは、所定の閾値より高い第一の電位と、前記閾値より低い第二の電位により示され、前記ターミネータは、前記第一の電位の電圧レベルを前記閾値より高い状態に維持するものであってもよい。
【0014】
前記監視データは、所定の閾値より高い第一の電位と、前記閾値より低い第二の電位により示され、前記ターミネータは、前記第二の電位の電圧レベルを前記閾値より低い状態に維持するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、子局から送信された監視データの全部を抽出し、それに基づき、予め決められた規則によってチェックデータに変換し、親局から繰り返し送信されるフレームの最後に設けられたチェックデータ出力領域にチェックデータを重畳する機能を、伝送同期方式が採用されたシステムが通常備えているターミネータに持たせることにより、伝送同期方式が採用され、他局から送信された情報、或いは、他局に対し送信された情報を抽出する機能は備えていない子局が使用されているシステムにおいても、全子局を交換する大掛かりなシステム変更を行うことなく、チェックデータを使用して伝送データのエラーの有無の確認を行うことができる。
【0016】
しかも、ターミネータがチェックデータの単一の送信元として特定されているため、チェックデータを送信する子局を指定するためのデータ領域が不要となり、チェックデータ自体を送信するためのデータ領域も必要最低限の範囲に抑えることができる。すなわち、伝送データのエラーの有無を、伝送手順の大幅な増加を伴うことなく確認できる。
【0017】
なお、制御伝送チェックデータや監視伝送チェックデータを使用して伝送データのエラーの有無の確認を行う従来の方式では、複数の子局に関する確認が行われるものとなっている。これに対し、本発明では、監視データが重畳されたフレームの次のフレームを確認用フレームとし、監視データは確認用フレームにおいて同じ内容とされ、チェックデータと照合用データが不一致である場合は、確認用フレームに重畳された監視データと前のフレームに重畳された監視データを照合することにより、複数の子局についての確認が行われないことに対する判定の精度の維持を担保することができる。
【0018】
また、ターミネータは、親局に対しいずれの子局よりも離れた位置に配置されるため、伝送線の電圧低下は、いずれの子局よりも大きくなる可能性が高い。そのため、ターミネータが、共通の伝送線の電圧が低下していることを示すデータを親局に送信することにより、伝送線の電圧低下に起因する伝送データのエラーの有無を確認することが可能となる。
【0019】
更に、監視データは、所定の閾値より高い第一の電位と閾値より低い第二の電位により示される場合、ターミネータが第一の電位の電圧レベルを閾値より高い状態に維持し、或いは、第二の電位の電圧レベルを閾値より低い状態に維持するものであれば、電圧レベルの変動に起因する伝送データのエラーを未然に防止するとともに、伝送データにエラーが有った場合には、電圧レベルの変動とは異なる事象、例えば、波形の鈍りやノイズがエラー発生の原因となっている可能性があると判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る制御・監視信号伝送システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る制御・監視信号伝送システムの実施形態を説明する。
この制御・監視信号伝送システムは、工場などの施設内に配置された多数の装置機器を制御部において集中制御するためのものである。
図1に示すように、制御部1および共通データ信号線DP、DN(以下、伝送線とする)に接続された親局2、被制御側となる施設内に配置され伝送線に接続された入力子局4、出力子局5および入出力子局6の複数、および、伝送線に接続されたターミネータ3で構成される。なお、
図1においては、図示の便宜上、各々の子局が一つずつ示されているが、伝送線に接続される子局の種類や数に制限は無い。
【0022】
入力子局4が接続される入力部7、出力子局5が接続される出力部8および入出力子局6が接続される入出力部9は、被制御側となる施設内に配置された装置である。
【0023】
入力部7に相当するものとして、例えば、リードスイッチ、マイクロスイッチ、押釦スイッチ、光電スイッチ、その他各種センサを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
出力部8に相当するものとして、例えば、アクチュエータ、(ステッピング)モータ、ソレノイド、電磁弁、リレー、サイリスタ、ランプを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
入出力部9は、入力部7と出力部8の双方の機能を備える装置機器である。例えば、温調、タイマ、カウンタ等の装置機器で、親局2に対し情報を送信する機能と、親局2から送信されたデータに基づき出力動作を行う機能の双方を備えるものを挙げることができる。
【0026】
なお、入力部7は、入力子局4と一体化された入力部一体型子局70であってもよい。また、出力部8は、出力子局5と一体化された出力部一体型子局80であってもよい。
【0027】
制御部1は、演算処理機能を持つ管理判断手段11と入出力ユニット12を備える。管理判断手段11は、入出力ユニット12を介して親局2からデータを受け取り、内部に記憶されたプログラムに基づいて必要な演算処理を行う。
【0028】
<親局の構成>
親局2は、伝送線に接続され、
図2に示すように、出力データ部21、管理データ部22、タイミング発生部23、親局出力部24、親局入力部25、入力データ部26、データエラー判定部27を備える。そして、所定の周期とデューティー比を有する電圧クロック信号に制御データを重畳して送信するとともに、入力子局4、出力子局5および入出力子局6から送信された監視データを抽出し、制御部1の入出力ユニット12へ出力する。更に、ターミネータ3から出力されたチェックデータを使用し伝送データのエラーの有無を判定し、判定結果を制御部1の入出力ユニット12へ出力する。
【0029】
出力データ部21は、制御部1から受けたデータをシリアルデータとして親局出力部24へ引き渡す。
【0030】
管理データ部22は、制御部1から受けたデータに基づき、後述の管理制御データ領域において子局への指示に必要となるデータをシリアルデータとして親局出力部24へ引き渡す。
【0031】
タイミング発生部23は、発振回路(OSC)31とタイミング発生手段32からなり、発振回路(OSC)31を基にタイミング発生手段32が、このシステムのタイミングクロックを生成し親局出力部24、親局入力部25に引き渡す。
【0032】
親局出力部24は、制御データ発生手段33とラインドライバ34からなる。制御データ発生手段33が、出力データ部21から受けたデータと、タイミング発生部23から受けたタイミングクロックに基づき、ラインドライバ34を介して伝送線に、制御データが重畳された電圧クロック信号を送信する。
【0033】
電圧クロック信号は、
図3に示すように、閾値Estより高い電圧レベルEpが所定の時間維持されるクロック電圧領域の複数が定周期で連なり構成される。そして、この実施形態では電圧レベルEpが+24Vとされている。
【0034】
クロック電圧領域は同期クロックとして機能するものであれば制限はなく、使用環境や使用状態に応じて適宜決めることができる。例えば、グランドレベルより低い負電圧が所定の時間維持されるものであってもよい。
【0035】
クロック電圧領域の間の領域(以下、「データIO領域」という)では、電圧レベルEpより低い電圧レベルによりデータ値が示されるものとなっている。
【0036】
この実施形態では、閾値Ectより低い電位VL(第二の電位)が論理データ値“1”を示す電圧レベルと、閾値Ectより高い電位VM(第一の電位)が論理データ値“0”を示す電圧レベルとなっている。ただし、データ値を示す電圧レベルは、クロック電圧と区別し得るものであれば使用環境や使用状態に応じて適宜決めることができる。クロック電圧領域の電圧レベルEpより高い電圧レベルとしてもよい。クロック電圧期間の電圧レベルEpがグランドレベルより低い負電圧となる場合も同様である。
【0037】
また、この実施形態において閾値Ectは10Vとグランドレベルの間(約6V)に設定されているが、その大きさに制限はなく、使用状況や使用環境に応じて設定すればよい。更に、データ値を示す電圧レベルと論理データ値の対応関係に制限はなく、使用環境や使用状態に応じて適宜決めることができる。
【0038】
データIO領域では、また、データIO領域が継続する時間によってもデータ値が示されるものとなっている。この実施形態では、クロック電圧領域の立上りから次に到来するクロック電圧領域の立上りまでを電圧クロック信号の1周期t0としたとき、データIO領域の時間(3/4)t0が論理データ“0”を示し、時間(1/4)t0が論理データ“1”を示すものとなっている。これらの時間は、制御部1から入力される制御データの値に応じたものであれば、その長さに制限はなく適宜に決めればよい。ただし、クロック機能の安定性の観点から、デューティー比は高くすることが好ましい。
【0039】
電圧クロック信号は、クロック電圧領域が所定数となる一連の長さを1フレームとして、親局2から繰り返し送信されている。そして、
図4に示すように、1フレームの中に管理データ領域、制御・監視データ領域、およびチェックデータ出力領域(
図4では「CRC領域」とされている)が設けられている。
【0040】
また、フレームの頭には、クロック電圧領域の電圧レベルEpがクロック電圧領域より長い時間維持されるスタート信号STが送信され、各フレームが区切られるものとなっている。なお、スタート信号STの長さは、クロック電圧領域と区別し得るものであれば制限はなく、使用条件等を考慮し適宜決めることができる。
【0041】
制御・監視データ領域は、その中の所定の領域が、入力子局4、出力子局5、および、入出力子局6(以下、これらをまとめて「子局4、5、6」と表現する場合がある)の各々に対し割り当てられている。そして、親局2からの出力子局5および入出力子局6に対する制御データが、対象となる子局に割り当てられた領域に重畳され、或いは、入力子局4および入出力子局6からの親局2に対する監視データが、その監視データを送信する子局に割り当てられた領域に重畳されることにより、制御・監視データ領域は、親局2と子局4、5、6との間での定常データの授受に用いられている。
【0042】
なお、入力子局4および入出力子局6からの監視データは、当該監視データが重畳されたフレームの次のフレーム、すなわち、確認用フレームにも同じ内容のものが重畳される。
【0043】
管理データ領域は、制御・監視データ領域を使用して授受できない非定常データの授受に用いられている。
【0044】
チェックデータ出力領域には、ターミネータ3からの親局2に対するチェックデータが重畳される。この実施形態では、チェックデータとしてCRCが採用されているため、以下の説明において、チェックデータ出力領域を「CRC領域」とする。なお、チェックデータはCRCに限定されるものではなく、使用状況等に応じて、公知の他のフレームチェックシーケンスを使用してもよい。
【0045】
親局入力部25はラインレシーバ35と監視データ抽出手段36で構成される。ラインレシーバ35は、伝送線から電圧クロック信号を受け、波形整形して監視データ抽出手段36に引き渡す。
【0046】
監視データ抽出手段36は、タイミング発生部23から引き渡されたタイミングクロックを利用してデータ値を抽出するタイミングを得て、ラインレシーバ35から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づき、データを抽出する。そして、制御・監視データ領域に重畳された定常データDIOを、入力データ部26およびデータエラー判定部27に引き渡す。また、管理データ領域に重畳された管理データDEXを入力データ部26に引き渡す。更に、CRC期間のチェックデータDCHをデータエラー判定部27に引き渡す。
【0047】
入力データ部26は、監視データ抽出手段36から受け取った直列の入力データを並列(パラレル)データに変換し、監視データおよび管理監視データとして制御部1の入出力ユニット12へ出力する。
【0048】
データエラー判定部27は、監視データ抽出手段36から受け取った定常データDIOに基づき得た照合用データと、同じく監視データ抽出手段36から受け取ったチェックデータDCHの照合を行う。そして、これらが一致した場合には伝送データが正常であることを、不一致の場合には伝送データにエラーがあることを、判定結果として制御部1の入出力ユニット12へ出力する。
【0049】
なお、伝送データにエラーがあるとする判定結果は、チェックデータDCHと照合用データが不一致となった後に、不一致となったフレームに重畳された監視データと次のフレームである確認用フレームに重畳された監視データの照合の結果も不一致となった場合に確定する。
【0050】
一方、伝送データが正常であるとする判定結果が得られた場合、確認用フレームを使用した照合は不要となるため、チェックデータDCHと照合用データが不一致であった場合に確認用フレームとなるはずだったフレームを、親局2から出力子局5および入出力子局6に対する制御データの出力に使用することができる。そのため伝送データが正常である限り、各フレームでのデータ伝送が可能となっている。
【0051】
<入力子局の構成>
入力子局4は、
図5に示すように、主要な演算処理を実行する子局入力部40、および、子局入力部40と伝送線の間に配置された子局ラインレシーバ48と子局ラインドライバ49を備え、子局ラインレシーバ48を介して伝送線から電圧クロック信号を受け、子局ラインドライバ49を介して監視データを送信するものとなっている。
【0052】
子局入力部40は、伝送受信手段41、管理制御データ抽出手段42、アドレス抽出手段43、アドレス設定手段44、管理監視データ送信手段45、入力手段46および監視データ送信手段47を有する。
【0053】
なお、この実施形態の入力子局4は、内部回路としてマイクロコンピュータ・コントロール・ユニットであるMCUを備えており、このMCUが子局入力部40として機能するものとなっている。
【0054】
子局ラインレシーバ48は、伝送線から電圧クロック信号を受け、波形整形して伝送受信手段41に引き渡す。
【0055】
伝送受信手段41は、電圧レベルの閾値Estと閾値Ectに対する判別を行い、子局ラインレシーバ48から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値を、管理制御データ抽出手段42、アドレス抽出手段43および管理監視データ送信手段45に引き渡す。
【0056】
管理制御データ抽出手段42は、電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づきスタート信号STを判別する。そして、スタート信号STが終了するタイミング(この実施形態では立下り)を起点とし、管理データ領域の中のデータIO領域の電圧レベルのデジタル値に基づき、管理データを抽出する。抽出された管理データは、そのデータに基づいた処理を実行するための図示しない処理手段に引き渡される。
【0057】
アドレス抽出手段43は、電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づきスタート信号STを判別し、スタート信号STが終了するタイミング(この実施形態では立下り)を起点とするクロック電圧領域のカウントを行う。そして、このカウント値がアドレス設定手段44で設定された自局アドレスデータと一致するタイミングを得る。なお、このタイミングは、制御・監視データ領域の中で自局に割り当てられた領域(以下、「自局領域」とする)が開始するタイミング(以下、「自局領域開始タイミング」とする)となる。
【0058】
そして、自局領域開始タイミングを得たアドレス抽出手段43は、監視データ送信手段47を有効にする。また、自局領域に複数のデータIO領域が含まれる場合は、自局領域が終了するまで、データIO領域が出現する都度、そのデータIO領域において監視データ送信手段47を有効にする。
【0059】
管理監視データ送信手段45は、電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づきスタート信号STを判別する。そして、スタート信号STが終了するタイミングを起点とし、管理データ領域における必要に応じた監視データの出力を行う。
【0060】
なお、管理監視データ送信手段45から送信される監視データは、親局2に送信すべきデータが、図示しない処理手段から引き渡されている場合にのみ送信されるものとなっている。
【0061】
入力手段46は、入力部7からの入力に基づくデータを監視データ送信手段47に引き渡す。
【0062】
監視データ送信手段47は、アドレス抽出手段43により有効とされた場合に、入力手段46から引き渡されたデータを、子局ラインドライバ49を介して監視データとして送信する。
【0063】
<出力子局の構成>
出力子局5は、
図6に示すように、主要な演算処理を実行する子局出力部50、および、子局出力部50と伝送線の間に配置された子局ラインレシーバ48と子局ラインドライバ49を備え、子局ラインレシーバ48を介して伝送線から電圧クロック信号を受け、制御データに基づいた情報を出力部8に出力し、出力部8を動作させ、或いは停止させるものとなっている。また、管理データ領域を使用したデータの授受が必要な場合には、子局ラインドライバ49を介して監視データを送信するものとなっている。なお、
図6において、入力子局4と実質的に同じ部分には同符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0064】
子局出力部50は、伝送受信手段41、管理制御データ抽出手段42、アドレス抽出手段43、アドレス設定手段44、管理監視データ送信手段45、制御データ抽出手段51および出力手段52を有する。
【0065】
この実施形態の出力子局5も入力子局4と同様に、内部回路としてマイクロコンピュータ・コントロール・ユニットであるMCUを備えており、このMCUが子局出力部50として機能するものとなっている。
【0066】
出力子局5の伝送受信手段41は、子局ラインレシーバ48から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値を、管理制御データ抽出手段42、アドレス抽出手段43、管理監視データ送信手段45、および、制御データ抽出手段51に引き渡す。
【0067】
出力子局5のアドレス抽出手段43は、スタート信号STが終了するタイミングを起点とするクロック電圧期間のカウントにより自局領域開始タイミングを得る。
【0068】
そして、自局領域開始タイミングを得たアドレス抽出手段43は、制御データ抽出手段51を有効にする。また、自局領域に複数のデータIO領域が含まれる場合は、自局領域が終了するまで、データIO領域が出現する都度、そのデータIO領域において制御データ抽出手段51を有効にする。
【0069】
制御データ抽出手段51は、アドレス抽出手段43により有効とされた場合に、伝送受信手段41から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づき制御データを抽出し、出力手段52に引き渡す。
【0070】
出力手段52は、制御データ抽出手段51から引き渡された制御データに基づいた情報を出力部8に出力し、出力部8を動作させ、或いは停止させる。
【0071】
<入出力子局の構成>
入出力子局6は入力子局4と出力子局5の双方の機能を備え、子局入力部40および子局出力部50の双方の構成を併せ持つ子局入出力部を有するものであるが、その構成は子局入力部40および子局出力部50と実質的に同じものであるため、図示およびその説明は省略する。
【0072】
<ターミネータの構成>
ターミネータ3は、
図7に示すように、子局ラインレシーバ48、子局ラインドライバ49、データ出力部60、中間電圧補強部61、伝送電圧低下検知部62、外部端末通信部63、反射抑制部64、入力補助部65を備えている。なお、
図7において、入力子局4と実質的に同じ部分には同符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0073】
中間電圧補強部61は、データIO領域において所定の論理データ値(この実施形態では“0”)を示す、閾値Ectより高い電位VMの電圧レベルを補強する。これにより、伝送線の電圧レベル低下に起因するエラーの発生を抑制するものとなっている。
【0074】
伝送電圧低下検知部62は、伝送線の電圧レベルが所定の状態(この実施形態では16V)まで低下したことを検知し、その低下を示すデータをデータ出力部60に引き渡す。
【0075】
データ出力部60は、
図7に示すように、伝送受信手段41、アドレス抽出手段43、アドレス設定手段44、データ記憶手段66、チェックデータ算出手段67、および、データ送信手段68を有し、入力子局4および入出力子局6から送信された監視データの全部を抽出し、予め決められた規則によってチェックデータに変換するための演算処理を実行する。
【0076】
データ出力部60は、また、電圧調整タイミング取得手段69を有し、データ伝送のエラーを未然に防止するための、データIO領域における電圧調整を実行する。なお、この実施形態のターミネータ3も子局4、5、6と同様に、マイクロコンピュータ・コントロール・ユニットであるMCUを備えており、このMCUがデータ出力部60として機能するものとなっている。
【0077】
データ出力部60の伝送受信手段41は、電圧レベルの閾値Estと閾値Ectに対する判別を行い、子局ラインレシーバ48から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値を、アドレス抽出手段43、データ記憶手段66、および、電圧調整タイミング取得手段69に引き渡す。
【0078】
データ出力部60のアドレス抽出手段43は、電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づきスタート信号STを判別し、スタート信号STが終了するタイミング(この実施形態では立下り)を起点とするクロック電圧領域のカウントを行い、このカウント値がアドレス設定手段44で設定されたCRC領域のアドレスデータと一致するタイミングを得る。そして、CRC領域の開始タイミングを得たアドレス抽出手段43は、データ送信手段68を有効にする。
【0079】
データ記憶手段66は、伝送受信手段41から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づき、入力子局4および入出力子局6から送信された監視データを抽出し、それら全部を記憶する。そして、全監視データに相当するサイズに達したときに、それら全データをチェックデータ算出手段67に引き渡す。
【0080】
チェックデータ算出手段67は、データ記憶手段66から引き渡されたデータを、予め決められた規則によってチェックデータに変換し、データ送信手段68に引き渡す。
【0081】
データ送信手段68は、アドレス抽出手段43により有効とされた場合に、チェックデータ算出手段67から引き渡されたデータを、子局ラインドライバ49を介してチェックデータとして送信する。また、伝送電圧低下検知部62から電圧低下を示すデータが引き渡された場合は、そのデータも子局ラインドライバ49を介して送信する。
【0082】
電圧調整タイミング取得手段69は、伝送受信手段41から引き渡された電圧クロック信号の電圧レベルのデジタル値に基づき、データIO領域のタイミングを得て反射抑制部64を有効とし、また、閾値Ectより低い電位VLとなるタイミングを得て入力補助部65を有効とする。
【0083】
外部端末通信部63は、ターミネータ3とは別体の図示しない外部端末装置と通信しデータの授受を行う。そして、CRC領域のアドレスを設定する際には、外部端末装置から送信されたアドレスデータをアドレス設定手段44に引き渡し、外部端末装置からデータ提供の要求があったときは、アドレス設定手段44のデータを外部端末装置に送信する。
【0084】
反射抑制部64は、電圧調整タイミング取得手段69により有効とされた場合に、閾値Ectより高い電位VMの電圧レベルを閾値Ectより高い状態に維持し、電位VMの変動を抑える。
【0085】
入力補助部65は、電圧調整タイミング取得手段69により有効とされた場合に、子局4、5、6の台数が増えたときに生じる電圧レベルの上昇を抑制し、閾値Ectより低い電位VLの電圧レベルを閾値Ectより低い状態に維持する。
【符号の説明】
【0086】
1 制御部
2 親局
3 ターミネータ
4 入力子局
5 出力子局
6 入出力子局
7 入力部
8 出力部
9 入出力部
11 管理判断手段
12 入出力ユニット
21 出力データ部
22 管理データ部
23 タイミング発生部
24 親局出力部
25 親局入力部
26 入力データ部
31 発振回路(OSC)
32 タイミング発生手段
33 制御データ発生手段
34 ラインドライバ
35 監視信号検出手段
36 監視データ抽出手段
40 子局入力部
41 伝送受信手段
42 管理制御データ抽出手段
43 アドレス抽出手段
44 アドレス設定手段
45 管理監視データ送信手段
46 入力手段
47 監視データ送信手段
48 子局ラインレシーバ
49 子局ラインドライバ
50 子局出力部
51 制御データ抽出手段
52 出力手段
60 データ出力部
61 中間電圧補強部
62 伝送電圧低下検知部
63 外部端末通信部
64 反射抑制部
65 入力補助部
66 データ記憶手段
67 チェックデータ算出手段
68 データ送信手段
69 電圧調整タイミング取得手段
70 入力部一体型子局
80 出力部一体型子局