(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-28
(45)【発行日】2025-06-05
(54)【発明の名称】放射線によるイメージングおよび放射線によるイメージングを使用する方法のための拡張照射野型イメージング用コリメータ
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20250529BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20250529BHJP
【FI】
G01T7/00 B
G01T1/161 C
(21)【出願番号】P 2023513548
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2021045770
(87)【国際公開番号】W WO2022046427
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-04-25
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521362335
【氏名又は名称】アルゴスペクト テクノロジーズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミュー、ジーピン
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0261034(US,A1)
【文献】特表2008-537137(JP,A)
【文献】特開2002-328171(JP,A)
【文献】特表2011-517336(JP,A)
【文献】特表2000-503393(JP,A)
【文献】国際公開第2020/172172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線によるイメージングシステムであって、
標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成されたコリメータであって、
前記コリメータ上に不均一に分布した複数の開口部を含み、
前記複数の開口部の最大受光角は15°以下であり、
前記複数の開口部は、基本パターンを含む所定の開口パターンを形成し、前記基本パターンは、前記開口パターン内で4回よりも多い回数反復されるものである、
前記コリメータと、
前記コリメータを通過した放射線を検出する検出器と
を有し、
前記コリメータは、前記コリメータに対面する前記検出器の上面上の1点が2若しくはそれ以上の前記複数の開口部によって同時に照射されるように、前記検出器から離間して配置されるものであり、
検出中、前記コリメータは前記検出器に対して静止状態を維持するものである、
放射線によるイメージングシステム。
【請求項2】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記検出器の上面上の1点は、前記複数の開口部のうち所定の割合の開口部によって照射されるものであり、前記割合は、25%未満である、放射線によるイメージングシステム。
【請求項3】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記複数の開口部の数は、1千を超えるものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項4】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記複数の開口部は、開口サイズ、開口形状、受光角、開口長、および開口ピッチのうちの少なくとも1つが異なるものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項5】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記コリメータと前記検出器との間の距離は、前記コリメータの厚さの1.5倍~10倍である、放射線によるイメージングシステム。
【請求項6】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記基本パターンは、符号化開口パターンである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項7】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記複数の開口部のうちの1つの照射面積は、前記基本パターンの面積に対して+/-10%の範囲内にある、放射線によるイメージングシステム。
【請求項8】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記コリメータは、第1の部分と、第2の部分とを含み、前記第1の部分は、前記第1の部分上に均一に分布した貫通孔を含み、前記第2の部分は、前記第2の部分上に不均一に分布し、かつ前記複数の開口部に対応する貫通孔を含むものであり、それにより、前記第1の部分の貫通孔が前記第2の部分によって遮断されるものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項9】
請求項8記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記第1の部分の厚さは、前記第2の部分の2倍~10倍である、放射線によるイメージングシステム。
【請求項10】
請求項1記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記コリメータは第1のコリメータであり、前記検出器は第1の検出器であり、当該システムは、さらに、
第2のコリメータと、
前記第2のコリメータに連結された第2の検出器と
を有し、
前記第2のコリメータは、前記第2の検出器に取り付けられているものである、
放射線によるイメージングシステム。
【請求項11】
放射線によるイメージングシステムであって、
標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成された第1のコリメータであって、第1の開口パターンを形成する第1の複数の開口部を含むものである、前記第1のコリメータと、
前記第1のコリメータに関連付けられ、前記第1のコリメータを通過した放射線を検出する第1の検出器と、
前記標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成された第2のコリメータであって、
第2の開口パターンを形成する第2の複数の開口部を含み、
前記第2の複数の開口部は、前記第2のコリメータ上に不均一に分布し、
前記第2の複数の開口部の最大受光角は15°以下であり、
前記第2の開口パターンは基本パターンを含み、当該基本パターンは、サイズが3x3以上であり、かつ前記第2の開口パターン内で周期的に4回よりも多い回数反復されるものである、
前記第2のコリメータと、
前記第2のコリメータに関連付けられ、前記第2のコリメータを通過した放射線を検出する第2の検出器と
を有し、
前記標的対象は、前記第1のコリメータと前記第2のコリメータとの間に配置されているものであり、前記第1の開口パターンは、前記第2の開口パターンと異なるものであり、
検出中、前記第2のコリメータは前記第2の検出器に対して静止状態を維持するものである、
放射線によるイメージングシステム。
【請求項12】
請求項11記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記第1のコリメータは、前記第1の検出器に接触しているものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項13】
請求項12記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記第2のコリメータと前記第2の検出器との距離は、前記第2コリメータの厚さの1.5倍~7倍である、放射線によるイメージングシステム。
【請求項14】
請求項11記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記第1の複数の開口部は前記第1のコリメータ上に均一に分布しているものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項15】
請求項11記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記基本パターンは符号化パターンを含むものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項16】
請求項15記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記符号化パターンは、均一冗長配列(URA)パターン、修正均一冗長配列(MURA)パターン、および完全二元配列(PBA)パターンのうちの1である、放射線によるイメージングシステム。
【請求項17】
請求項15記載の放射線によるイメージングシステムにおいて、前記第1の検出器の上面に対する法線方向と前記第2の検出器の上面に対する法線方向とは、非ゼロの角度を成すものである、放射線によるイメージングシステム。
【請求項18】
医用画像のための装置であって、
プレートであって、上面と、底面と、当該上面から底面に亘って延びる複数の孔部とを有し、前記複数の孔部は基本パターンの反復パターンとして配置され、前記基本パターンは符号化パターンである、前記プレートと、
前記プレート内に設けられた前記複数の孔部を通過する光子から生成される画像を取得するように構成された検出器であって、
前記プレートは所定の厚さを有し、前記プレートと前記検出器との間の間隔は、前記プレートの前記厚さの少なくとも1.5倍であり、
検出中、前記プレートは前記検出器に対して静止状態を維持するものである、
前記検出器と
を有
し、
前記複数の孔部のうちの1つの照射面積は、前記基本パターンの面積に対して+/-10%の範囲内にある、
装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、前記基本パターンは、奇数の行および奇数の列からなるグリッドを有するものである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年3月31日付で出願した米国特許仮出願第63/168,778号および2020年8月28日付で出願した米国特許仮出願第63/071,540号に対して優先権および利益を主張する、2021年8月11日付で出願した米国特許出願第17/399,768号に対して優先権を主張するものであり、その内容全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
分子医学イメージング(核医学イメージングとしても知られる)などの放射線によるイメージングでは、放射性医薬品の分布を表す画像が医療診断のために生成される。イメージングに先立って、患者などの対象に放射性医薬品が注入される。放射性医薬品は放射性光子(radioactive photons)を放出し、この光子は体内を透過して光子検出器によって検出される。次に、受光した光子からの情報に基づいて、光子検出器により、患者体内の放射性医薬品の分布を決定することができる。この分布は、患者の生理機能を表すため、分布画像によって、心臓病学、腫瘍学、神経学などにおける様々な疾患や状態を診断するための貴重な臨床情報が提供される。
【0003】
コリメータと光子検出器が連動して動作することにより、画像が生成される。コリメータとは、光子経路を誘導する装置(光子が一定の経路を通るように誘導する装置)である。X線やCTのように周知の光源位置から光子が放出されるのとは異なり、放射線によるイメージングでは、被検者の体内の未知の位置から光子が放出される。コリメータを使用しない場合、あらゆる方向からの光子が光子検出器に記録され、画像再構築が困難となる可能性がある。そのため、コリメータは、写真のカメラにおけるレンズと同様に、光子を可能な経路に誘導して画像を再構築する役割を果たすために使用される。既存の放射線によるイメージングシステムは、意図された目的には概ね適しているが、すべての面で完全に満足できるものではない。例えば、既存のコリメータおよび検出器は、撮像解像度および信号感度の両方に優れているわけではなく、いずれかをトレードオフすることで配備しなければならないことが多い。したがって、放射線によるイメージングシステムの改良が望まれている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2020/0146641号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2020/0261034号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2015/0216488号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2007/0064876号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態によれば、本開示は、放射線によるイメージングシステムを提供する。前記放射線によるイメージングシステムは、標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成されたコリメータであって、前記コリメータ上に不均一に分布した複数の開口部を含み、前記複数の開口部の最大受光角は15°以下である、前記コリメータと、前記コリメータを通過した放射線を検出する検出器とを含み、前記コリメータは、前記コリメータに対面する前記検出器の上面上の1点が2若しくはそれ以上の前記複数の開口部によって同時に照射されるように、前記検出器から離間して配置される。いくつかの実施形態において、前記検出器の上面上の1点は、前記複数の開口部のうち所定の割合の開口部によって照射されるものであり、前記割合は、約25%未満である。いくつかの実施形態において、前記複数の開口部の数は、1千を超える。いくつかの実施形態において、前記複数の開口部は、開口サイズ、開口形状、受光角、開口長、および開口ピッチのうちの少なくとも1つが異なる。いくつかの実施形態において、前記コリメータと前記検出器との間の距離は、前記コリメータの厚さの約0.5倍~約10倍(約1.5倍~約10倍など)である。いくつかの実施形態において、前記複数の開口部は、反復基本パターンを含む所定の開口パターンを形成する。いくつかの実施形態において、前記反復基本パターンは、符号化開口パターンである。いくつかの実施形態において、前記複数の開口部のうちの1つの開口部の照射面積は、実質的に前記基本パターンの面積と等しい。いくつかの実施形態において、前記コリメータは、第1の部分と、第2の部分とを含み、前記第1の部分は、前記第1の部分上に均一に分布した貫通孔を含み、前記第2の部分は、前記第2の部分上に不均一に分布し、かつ前記複数の開口部に対応する貫通孔を含むものであり、それにより、前記第1の部分の貫通孔が前記第2の部分によって遮断される。いくつかの実施形態において、前記第1の部分の厚さは、前記第2の部分の約2倍~約10倍である。いくつかの実施形態において、前記コリメータは第1のコリメータであり、前記検出器は第1の検出器であり、当該システムは、さらに、第2のコリメータと、前記第2のコリメータに連結された第2の検出器とを含み、前記第2のコリメータは、前記第2の検出器に取り付けられている。
【0005】
様々な実施形態によれば、本開示は、放射線によるイメージングシステムを提供する。前記放射線によるイメージングシステムは、標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成された第1のコリメータであって、第1の開口パターンを形成する第1の複数の開口部を含むものである、前記第1のコリメータと、前記第1のコリメータに関連付けられ、前記第1のコリメータを通過した放射線を検出する第1の検出器と、前記標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成された第2のコリメータであって、第2の開口パターンを形成する第2の複数の開口部を含むものである、前記第2のコリメータと、前記第2のコリメータに関連付けられ、前記第2のコリメータを通過した放射線を検出する第2の検出器とを含み、前記標的対象は、前記第1のコリメータと前記第2のコリメータとの間に配置されているものであり、前記第1の開口パターンは、前記第2の開口パターンと異なる。いくつかの実施形態において、前記第1のコリメータは、前記第1の検出器に接触し、前記第2のコリメータは、前記第2の検出器から離間して配置される。いくつかの実施形態において、前記第2のコリメータと前記第2の検出器との距離は、前記第2コリメータの厚さの約0.5倍~約7倍(約1.5倍~約7倍など)である。いくつかの実施形態において、前記第1の複数の開口部は前記第1のコリメータ上に均一に分布しており、前記第2の複数の開口部は、前記第2のコリメータ上に不均一に分布している。いくつかの実施形態において、前記第2の開口パターンは、反復符号化パターンを含む。いくつかの実施形態において、前記反復符号化パターンは、均一冗長配列(URA)パターン、修正均一冗長配列(MURA)パターン、および完全二元配列(PBA)パターンのうちの1である。いくつかの実施形態において、前記第1および第2の検出器の対向方向は、オフセット角を有する。
【0006】
様々な実施形態によれば、本開示は、標的対象から放出される放射線をフィルタリングするように構成されたコリメータを提供する。前記コリメータは、均一に分布した第1の複数の貫通孔を含む第1の部分と、不均一に分布した第2の複数の貫通孔を含む第2の部分とを含み、前記第1および第2の部分は、離間して配置され、前記対象によって放出された光子が一部の前記第1の複数の貫通孔を通過した際に前記第2の部分によって遮断されるように位置合わせされている。いくつかの実施形態において、第2の複数の貫通孔は、符号化パターンを形成する。いくつかの実施形態において、前記第2の部分は、前記第2の部分に対面する前記第1の部分の表面に対してスライドするように動作可能であり、それにより、位置合わせされる前記第1および第2の複数の貫通孔を変更することができる。
【0007】
様々な実施形態によれば、本開示は、イメージングシステムにおける位置ずれを補正する方法を提供する。前記方法は、コリメータと、デジタル化された画素グリッドを有する検出器とを提供する工程と、フラッド光源で前記コリメータを照射する工程と、前記デジタル化された画素グリッドの各画素における信号強度を記録する工程であって、前記信号強度は、前記コリメータを照射する工程によって発生するものである、前記記録する工程と、前記記録された信号強度から記述子を導く工程と、前記デジタル化された画素グリッドに導入された一連のオフセットを生成する工程と、前記一連のオフセットから、前記記述子を最適化する選択オフセットを求める工程と、前記選択オフセットから導かれた実際の最適オフセットに基づいて、前記デジタル化された画素グリッドを再生する工程とを含む。いくつかの実施形態において、前記選択オフセットは、それぞれ直交する2方向における一対のオフセット値を含む。いくつかの実施形態において、前記記述子は、前記記録された信号強度のコントラスト値、ピーク値、および谷値のうちの1つである。いくつかの実施形態において、前記コントラスト値は、前記デジタル化された画素グリッドで記録された信号強度に対応する信号強度線のピーク値および谷値の比によって決定される。いくつかの実施形態において、前記選択オフセットを求める工程は、前記一連のオフセットを掃引し、前記記述子を最大化または最小化する選択オフセットを選択する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記デジタル化された画素グリッドを再生する工程は、固定オフセットにより前記選択オフセットを調整して前記実際の最適オフセットを生成し、前記実際の最適オフセットによって、前記デジタル化された画素グリッドを再生する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、添付の図面とともに解釈した場合、以下の詳細な説明から最もよく理解される。当業分野の一般的な慣行に従い、種々の構成要素は原寸に比例したものではなく、例示する目的のみに使用されることに注意されたい。むしろ、種々の構成要素の寸法は、説明を明確にするために、任意に拡張または縮小されている。
【
図1A】
図1A、1B、1Cは、本開示の様々な態様に従った、例示的な放射線によるイメージングシステムの概略図である。
【
図1B-1C】
図1A、1B、1Cは、本開示の様々な態様に従った、例示的な放射線によるイメージングシステムの概略図である。
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、放射線によるイメージングシステムの部分断面図である。
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの別の実施形態による、放射線によるイメージングシステムの部分断面図である。
【
図5A-5B】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の様々な態様に従った、不均一に分布した開口部を有するコリメータの部分平面図である。
【
図6A-6C】
図6A、
図6B、および
図6Cは、本開示のいくつかの実施形態による、反復基本パターンを有するコリメータの平面図である。
【
図7】
図7は、本開示の様々な態様に従った、高速画像再構築アルゴリズムで原画像をサブ画像に分解する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の開示は、本開示の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態、または例を提供する。本開示を簡略化するために、構成要素および配置の具体例を以下に説明する。これらは、当然ながら、単なる例であり、限定することを意図していない。本開示の関連技術分野における当業者であれば通常考えるように、説明する装置、システム、方法に対する任意の変更およびさらなる修正、ならびに本開示の原理の任意のさらなる適用が当然考られる。例えば、1実施形態に関連して説明する特徴、構成要素、および/または工程は、組み合わせが明示的に示されていない場合でも、本開示の別の実施形態に関連して説明する特徴、構成要素、および/または工程と組み合わせることができ、それにより、本開示に従った、装置、システム、または方法のさらに別の実施形態を形成することができる。また、本開示では、様々な例において、参照番号および/または文字を繰り返すことがあるが、このような繰り返しは、簡略化および明確化を目的とするものであり、それ自体によって、説明する様々な実施形態間および/または構成間の関係が規定されるものではない。
【0010】
さらに、以下の本開示における別の要素上の要素、別の要素に接続された要素、および/または別の要素と連結された要素は、当該要素が別の要素に直接接触する実施形態を含む場合と、追加の要素が当該要素と別の要素との間に介在しており、当該要素が別の要素に直接接触しない実施形態も含む場合がある。さらに、空間的相対語、例えば、「より下方」、「より上方」、「水平」、「垂直」、「上」、「にわたる」、「下方」、「真下」、「上方に」、「下方に」、「上部」、「底部」等、およびその派生語(例えば、「水平に」、「下方に向かって」、「上方に向かって」等)は、別の要素に対する1の要素の関係を本開示において容易にするために使用されている。このような空間的相対語は、上記要素を含む装置の異なる向きを包含することを意図している。さらに、数値または数値範囲が「約」、「おおよそ」などとともに記載される場合、当該用語は、例えば、記載された数値の±10%以内の数値、または当業者によって理解される他の数値などの、記載された数値を含む合理的な範囲内にある数値を包含することを意図している。例えば、「約5cm」という用語は、4.5cm~5.5cmまでの寸法範囲を包含する。
【0011】
本開示は、放射線によるイメージングにおいて使用されるコリメータに関し、より具体的には、核医学(分子)イメージングシステムにおいて使用される、不均一に分布した開口部を有するコリメータに関する。「不均一に分布した開口部」という用語は、開口サイズ、(断面形状および長手方向の形状を含む)開口形状、開口長、開口ピッチ、および開口方向を含む(但し、これに限定されない)開口部のプロファイルの少なくとも1つが異なるコリメータの開口部(貫通孔)を指す。
【0012】
核医学(分子)イメージングシステムなどの放射線によるイメージングでは、コリメータと検出器は連動して動作し、被検者の体内における放射性医薬品の分布を表す画像を生成する。多くの核医学イメージングシステム、例えば、単一光子放射断層撮影(SPECT)、および陽電子放出断層撮影(PET)イメージングシステムは、ガンマ線または光子イメージングデータなどのイメージングデータを取得するために、1若しくはそれ以上の検出器が使用される。画像を取得する前に、通常、患者などの対象に放射性医薬品が経口投与されるか、若しくは注射される。放射性医薬品に原子核崩壊が生じ、直接的または間接的な対消滅によって、特定の速度および特徴的なエネルギーを有するガンマ光子が放出される。1若しくはそれ以上の検出器ユニットが対象の周囲に配置され、その放出が記録または監視される。多くの場合、製造やデータ処理の都合上、検出器は平面形状に構成されているため、データは2Dマトリクス形式で取得されるが、この構成は投影と呼ばれることが多い。検出されたイベントの位置、エネルギー、および検出回数を含む記録情報に基づいて、放射性医薬品の分布を表す画像を再構築し、対象の特定の部分(例えば、患者の身体部位)の機能を観察することができる。
【0013】
しかしながら、既存のコリメータおよび検出器の設計には、様々な問題がある。例えば、平行孔を有するコリメータは、検出器内の検知画素間のクロストークを低減するために、通常検出器と密接に連結され(または取り付けられ)ているため、任意の検知画素対する可能な光子経路が1つのみとなる。通常、コリメータの開口部が長いと、イメージングシステムの撮像解像度は向上するが、信号感度が劣化する。そのため、コリメータの開口部の長さは、撮像解像度と信号感度のトレードオフを考慮して決定する必要がある。
【0014】
本開示は、不均一に分布した開口部を有するコリメータが、検出器から離れた距離に配置され、検出器の特定の領域が、複数の開口部を通過する光子によって同時に照射される、コリメータ設計の実施形態を示す。換言すれば、コリメータの少なくともいくつかの開口部は、検出器上において互いに重なり合う照射面積を有する。コリメータを検出器から離間して、より大きな開口サイズ(またはより広い受光角)を利用することにより、コリメータの開口部の有効長が増加し、信号感度を犠牲にすることなく撮像解像度が改善される。また、本開示のいくつかの実施形態では、コリメータの開口部は、反復パターンを有する。さらなる実施形態において、このパターンは、均一冗長配列(URA)パターン、修正均一冗長配列(MURA)パターン、完全二元配列(PBA)パターン、ランダムパターン、疑似ランダムパターン、およびその他の適切なパターンのうちの1つであってよい。この反復パターンにより、放射線によるイメージングシステムに簡略化された画像再構築アルゴリズムを採用することが可能となり、計算の複雑さが低減され、システム性能が向上する。様々な実施形態において、閉鎖型孔部が完全に充填されない開口部を画定する薄板を備えることで、コリメータに軽量設計を採用することもできる。したがって、この新規のコリメータ設計によって、様々な側面において放射線によるイメージングシステムの性能が向上する。
【0015】
図1A~
図1Cは、いくつかの実施形態による本開示の特徴を組み込んだ例示的な放射線によるイメージングシステム100(特に、核医学イメージングシステム)を示す。
図1Aは、X-Z平面におけるシステム100の一部の側断面図である。
図1Bおよび
図1Cは、2つの実施形態におけるY-Z平面でのシステム100の軸方向図である。イメージングシステム100は、患者などの標的対象を医学的に検査または治療するために使用することができる。イメージングシステム100は、1若しくはそれ以上の検出器108(対向位置にある2つの検出器108を示す)を軸方向軸(例えば、図示のようにX方向)を中心として支持し、回転させるように構成された回転機構(例えば、ガントリー中央ボアを中心として方向付けられたロータ)をさらに含む一体化ガントリー102を含む。
図1Bに例示する1実施形態では、2つの検出器108は、対向位置において円152に沿って回転するように動作可能であり、ここで、2つの検出器108のそれぞれの上面に対する法線方向154Aおよび154Bはともに円152の中心かつ反対方向を指す。
図1Cに示す代替実施形態では、2つの検出器108は同様に、2つの検出器108のそれぞれの上面に対する法線方向154Aおよび154Bが円152の中心を指す状態で、対向位置において円152に沿って回転するように動作可能である。両者の違いは、
図1Cの法線方向154Aおよび154Bは、完全に反対方向にあるのではなく、小角度Υを成す点にある。角度Υは、いくつかの実施形態によると、システム性能の必要性に応じて、約0.5°から約20°の範囲であってもよい。
図1Bおよび
図1Cにおける設定の詳細については後述する。各検出器108は、コリメータ110と連動して動作する。コリメータ110は、光子経路を誘導する装置である。X線やCTのように周知の光源位置から光子が放出されるのとは異なり、分子イメージングでは、被検者の体内の未知の位置から光子が放出される。コリメータ110を使用しない場合、あらゆる方向からの光子が検出器108によって記録され、画像再構築が困難となる可能性がある。そのため、コリメータ110は、光子経路に誘導して画像を再構築するために使用される。テーブル支持システム114に連結された患者テーブル112をさらに含み、このテーブル支持システムは、床に直接連結されてもよいし、基部を介してガントリー102に連結されてもよい。患者テーブル112は、テーブル支持システム114に対してスライド自在に構成されており、これにより、軸方向軸と実質的に一直線上にある検査位置への患者150の出入りが容易になる。制御コンソール120は、当該技術分野で公知の任意の方法など、イメージングシステム100の操作および制御を提供する。制御コンソール120は、当該技術分野で知られている任意の態様で、イメージングシステム100の操作および制御を提供する。例えば、制御コンソール120は、オペレータまたは技術者が、ロータ104の回転、検出器108およびコリメータ110の移動、回転、または傾斜、および患者テーブル112のスライドなどの機械的な動きを制御するために使用することができる。イメージングシステム100は、データを取得し核医学画像を再構築するための、データ記憶装置、画像プロセッサ、画像記憶装置、およびディスプレイなどのコンピュータ構成要素(図示せず)をさらに含む。いくつかの実施形態では、1若しくはそれ以上のコンピュータ構成要素は、(例えば、クラウドコンピューティングを使用して)部分的または全体的にリモートに配置することができる。いくつかの実施形態では、これらの構成要素の1若しくはそれ以上は、ローカルまたはリモートに配置される。
【0016】
いくつかの実施形態では、検出器108は、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、または高純度ゲルマニウム(HPGe)などからなる半導体検出器である。いくつかの実施形態では、検出器108は、(ヨウ化ナトリウム(NaI)またはヨウ化セシウム(CsI)などからなる)シンチレータ検出器である。いくつかの他の実施形態では、検出器108はまた、小型光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SiPMT)、またはアバランシェフォトダイオードと結合したシンチレータであってもよい。患者150に経口投与されるか、若しくは注射された1若しくはそれ以上の放射性医薬品に原子核崩壊が生じ、直接的または間接的な対消滅によって、特定の速度および特徴的なエネルギーを有する放射線(例えば、ガンマ光子)が放出される。検出器108は、放射線の放出を記録または監視するために患者150の近傍に配置される。検出されたイベントの位置、エネルギー、および検出回数を含む記録情報に基づいて、放射性医薬品の分布を表す画像を再構築し、患者150の身体部位の状態または機能を観察することができる。
【0017】
コリメータ110は、1若しくはそれ以上の開口部(貫通孔ともいう)を画定する複数の壁(隔壁(septa)としても知られる)を含む。様々な実施形態において、隔壁は、鉛またはタングステンなどの重金属でできている。隔壁の厚さは、光子のエネルギーに応じて、光子が主にプレート上の小さな開口部を通過するように、放射線の大部分を遮断するのに十分な大きさである。より高エネルギーのガンマ線をイメージングするためには、厚さをより大きくする必要がある。コリメータ110は、検出器108と患者150などのイメージング対象との間に配置される。放射線が通過して検出器上の特定の位置に到達することができる方向および角度範囲(受光角:acceptance angle)は、コリメータの開口部によって決定される。コリメータ110は、開口部の数および幾何学的配置に応じて、単孔型コリメータ、多孔型コリメータ、符号化開口コリメータ、またはその他の適切なタイプのコリメータであってよい。
【0018】
イメージングシステム100は、(例えば、検出器108およびコリメータ110を互いに連結するなど)部品を互いに連結するためのコネクタ、部品を移動させるモータ、光子遮蔽部品、その他の部品を収容するハウジング部品など、イメージングガントリーに必要なその他の部品を含むことができる。例えば、連結および遮蔽用構成要素116は、検出器108およびコリメータ110を、双方が一緒に移動し(例えば、回転する)、放射線(光子)がコリメータ110以外の経路を通って検出器108に到達するのを阻止するように連結することができる。別の実施形態では、検出器108およびコリメータ110は、互いに対して独立して移動することができる。
【0019】
図2Aは、例示的な多孔型(または多開口型)コリメータ202の斜視図を示し、
図2Bは、(
図2Aの切断線B-Bに沿った)コリメータ202の断面図を示す。コリメータ202は多数の孔部208を有し、各孔部は、所定の高さHと、直径(または幅)Wとを有する。高さHは、コリメータ202の厚さでもある。孔部208はまた、開口部または貫通孔ともいう。開口部208の受光角Θは、開口部208の上部開口上の端点から下部開口上の対向する端点に向かう2本の光線R0とR1との間の角度によって画定される。受光角Θ内を伝搬する入射光子(または放射線)のみが、開口部208を通過することができる(但し、隔壁212を透過する可能性があるごく僅かの光線については考慮していない)。上述したように、隔壁212は、鉛またはタングステンなどの放射線吸収性重金属(複数可)または合金でできている。隔壁212は、対象方向から放出されない(または対象方向に向かって伝搬しない)放射線の大部分を吸収する。高エネルギー放射線用のコリメータは、低エネルギー放射線用のコリメータよりもはるかに厚い隔壁を有する。隔壁は通常、不要な光子による隔壁の透過率が5%を超えないように、また場合によっては1%を超えないように設計されている。コリメータによって遮断または吸収される放射線または光子は、ごく僅かな割合の光子(例えば、5%以下)が依然として放射線吸収材料の厚さを透過する可能性があるため、100%の遮断率を必要としないことに留意されたい。換言すれば、遮断(または他の同様の用語)とは、光子の大部分(例えば、95%以上、または99%以上)が放射線吸収材料に吸収されることを意味する。
【0020】
コリメータ202は、入射光子の受光角Θを制限することにより、検出された光子の位置情報を提供する。通常、受光角Θが小さいほど、コリメータ202によって提供される撮像解像度は高くなる。コリメータ202は、並んで互いに平行に配置された多数の実質的に同一の細長い開口部208を有することができる。細長い開口部は小さな受光角Θを伴うため、それに応じて高撮像解像度をもたらす。コリメータ202は、例えば20mm~70mmなど、15mmより大きい厚さH、および約1mm~5mmの開口直径(または幅)Wを有し、それによって大きなアスペクト比(H/W)および小さな受光角Θが提供される。平行孔型コリメータ202の受光角Θは、15°未満などの小さな角度に制限される。受光角Θが(例えば15°より大きいなど)大きすぎる場合、特定の平行孔型コリメータによって提供される撮像解像度は低くなり、好ましくないと考えられる。特に明記しない限り、本開示の例示的なコリメータの受光角は、15°未満である。「x-z」断面が長方形である
図2Bの孔部に加えて、上記受光角の概念は、その他の形態の孔部、例えば、収束型または末広型コリメータの孔部に拡張することができ、この場合、孔部は、台形形状であってもよく、また、当該孔部を通過することができる光線の最大の角度差を表す傾斜を有してもよい。
【0021】
図2Aに示すコリメータ202は、均一に分布した開口部を有する平行孔型コリメータである。図示された実施形態では、開口部208は実質的に同一であり、各開口部は、製作精度の制限によって生じる変動を除いて、同じ高さHおよび同じ直径または幅Wを有する。したがって、各開口部は、小さい(例えば、特定の例では約5°など、15°未満である)同じ受光角Θを有する。開口ピッチPもまた、コリメータ202上で実質的に同じである。すなわち、コリメータ202上では、開口間隔S(隔壁の厚さ)は均一である。本明細書では、均一の開口形状、開口サイズ、開口長、および開口ピッチを有する開口部を「均一に分布した開口部」という。
【0022】
図2Cおよび
図2Dは、(コリメータ202など)の均一に分布した開口部を有する平行孔型コリメータの2つの配列の平面図を示すが、その他の配列も可能であり、そのような配列は、本開示の要旨および範囲から逸脱するものではない。
図2Cにおいて、開口部208は、直交する行および列に配置されており、直交する2次元グリッド配列を形成する。各開口部208は、(
図2Cにおいて破線で表される)グリッドネットワーク内の正方形の単位グリッド240と整列しているとみなすことができる。2つの隣接する開口部208は、同一ピッチPを有し、ここで、P=W+S、Wは開口部208の幅(または直径)、Sは2つの隣接する開口部208間の最小間隔(または隔壁の厚さ)である。
図2Dにおいて、開口部208は、互いに隣接する行が連続して千鳥状に配列され、2つの隣接する行は、所定の距離(またはオフセット)だけ互いにオフセットされている。このオフセットは、1実施形態においてWであってもよく、また、代替実施形態ではその他の適切な値であってもよい。各開口部208は、(
図2Dにおいて破線で表される)グリッドネットワーク内の六角形の単位グリッド240と整列しているとみなすことができる。2つの隣接する開口部208は、同一ピッチPを有し、ここで、P=W+S、Wは開口部208の幅(または直径)、Sは2つの隣接する開口部208間の最小間隔(または隔壁の厚さ)である。いくつかの代替実施形態(図示せず)では、開口部208は、グリッドネットワーク内のハニカム形状の単位グリッド240と整列可能である。
図2Eおよび2Fはそれぞれ、
図2Cおよび2Dの変形実施形態を示す。単位グリッド240のうちの1若しくはそれ以上は、当該グリットを貫通する開口部(複数可)を備えないように設計され、これは、(
図2Eおよび
図2Fにおいて破線の円で表される)隔壁材料によって充填された(または閉鎖された)開口部を有することに相当する。このような開口部の配列は、可変の開口ピッチを有する、若しくは閉鎖型孔部を有すると考えられるため、均一に分布した開口部を有する平行孔型コリメータの範疇に入らない。すなわち、
図2Eおよび
図2Fの開口部は、不均一に分布している。
【0023】
図3は、
図2Bに示されるコリメータ202と、(例えば、患者などの)標的対象206内の放射性医薬品の分布を表す画像を生成するために連動して動作する検出器204の概略的な断面図である。コリメータ202は、標的対象206と検出器204との間に配置され、特定の光子を遮断し、その他の光子を通過させることによって放射線をフィルタリングするように構成されている。図示する実施形態では、コリメータ202と検出器204とを連結し遮蔽する構成要素は、簡略化のために省略されている。本実施形態では、コリメータ202は、その内部の開口部または孔部が長方形の断面を有し、互いに平行に配置された平行孔型コリメータである。代替実施形態では、コリメータ202内の開口部または孔部は、末広断面(diverging cross-section)、収束断面、またはその他の断面形状を有してもよい。
【0024】
検出器204は、画素214の長方形配列、正方形配列、またはその他の適切な配列などの、検知画素214の配列を含む。動作時において、各検知画素214は、当該検知画素に入射する放射線量を独立して記録または監視し、(例えば、電圧または電流などの)放射線量に関連付けられた信号を生成する。検知画素214は、実質的に同じサイズおよび同じ形状(例えば、円形、長方形、または正方形)であってもよい。様々な実施形態において、検知画素214のサイズは、約1x1mm2~約5x5mm2の範囲であってよい。検知画素配列のピッチP'は、様々な実施形態において、1mm未満~約6mmまでの範囲であってよい。一例において、CZTまたはシリコン光電子増倍管(SiPM)ベースの検出器204は、4cm x 4cmのサイズに作製することができ、この場合、ベースの検出器204は、2.5mm x 2.5mmの単位画素サイズを有する16x16の検知画素配列からなる。いくつかの実施形態では、検出器204は、検知画素214から生成された信号を収集および処理するための適切な電子回路(例えば、ASIC)を含む。いくつかの別の実施形態では、検知画素214は、大半のPMTベースの検出器システムの場合のように、互いに物理的に区別されず、連続した検出器表面のデジタル化の単なる生成物である。例えば、検出器表面は、当該表面における各単位グリッドがコリメータ202の1つの開口部に対応する、コリメータ202のグリッドネットワークと同一のグリッドネットワークとしてデジタル化することができる。
【0025】
図3では、簡略化のため、検知画素のピッチP'が開口ピッチPに実質的に等しいと仮定しており、各検知画素214は対応する開口部208の真下にある。さらに、コリメータ202は、光子が開口部208のみに沿って伝搬し、その直下にある対応する検知画素214に到達することができるように、検知器204との間に最小限の間隔を置いた状態で検出器204と密接に連結され(または取り付けられ)ている。但し、(例えば、光子が隔壁を通過する、若しくは光子が1つの開口部を通過した際に別の異なる開口部の直下にある検知画素に入射するなどの)最小限またはごく僅かなクロストークの可能性はある。本開示においては、「密接に連結」および「取り付けられた」という用語はいずれも、コリメータと検出器との間の間隔がコリメータの厚さの半分未満であることを指し、これは、コリメータ202および検出器204が物理的に接触している場合も含む。
【0026】
平行孔型コリメータでは、撮像源がコリメータから遠ざかると、撮像解像度が急速に低下する。開口サイズWおよび長さ(又は有効長)Heを有するコリメータにおいて、コリメータの上面210の上方の垂直距離Zに位置する標的対象206に対して、コリメータの撮像解像度Rcは、以下の式(1)で与えられる。
【0027】
【0028】
有効開口長Heは、He=H - 2/μで与えられ、Hは開口長、μはコリメータ材料の線減弱係数である。鉛の場合、150keVでは、μ=22.43cm-1、
【0029】
【数2】
となる。開口長Hは通常20mmより大きいため、
【0030】
【数3】
となる。本明細書では、簡略化のため、意味のある違いがない限り、HとH
eは互換的に使用される。式(1)の簡単な見方として、撮像解像度R
cは、
図3に示すように、開口部の底面から開口部を通して見ることができる、距離Zにおける面積に等しい。
【0031】
式(1)から分かるように、撮像解像度Rcは距離Zに対して線形的に増加し、同じ距離Zにおいて、Heがより大きい場合、Rcはより小さくなる(すなわち、撮像解像度がより良好となる)。すなわち、開口部がより長い(すなわち、Hがより大きい)ほど撮像解像度は向上する。しかしながら、開口部が長くなると、逆2乗の関係で信号感度に悪影響を及ぼす。線源から放出される放射線量に対する、コリメータを通過する放射線量(例えばガンマ線)の割合で定義されるコリメータ効率をGとすると、GはHe
-2に正比例する
【0032】
【数4】
。したがって、開口長Hは、撮像解像度と信号感度のバランスを考慮して選択する必要がある。
【0033】
図4は、「拡張照射野型イメージング(SFI:spread field imaging)用コリメータ」と呼ばれる代替コリメータ設計を示し、当該コリメータでは、開口長が均等に大きくなるため、信号感度を犠牲にすることなく、撮像解像度がより高くなる。
図3に示す平行孔型コリメータ202と比べると、
図4に示すSFIコリメータ203は、少なくとも2つの顕著な特徴を有する。第1に、
図3の構成と比べると、SFIコリメータ203と検出器204との間の間隔Dが大幅に大きい。第2に、SFIコリメータ203の開口部208は全て同一ではなく、少なくとも1つの点で異なっている。これらについては、以下さらに説明する。
【0034】
SFIコリメータ203と検出器204との間の間隔Dが増加されることで、1つの開口部208を通過する光子は、検出器204上において、開口部208を越えた拡張領域に入射可能となる。すなわち、標的対象206からの放射線は、1つの開口部208を通過して、当該開口部208のサイズよりも実質的に大きい、検出器204上の領域まで拡張されて照射され、他の隣接する開口部の真下にある領域にまで及ぶ。これとは対照的に、
図3に示すように、コリメータ202が検出器204に密接に連結されている場合、1つの開口部208を通って伝搬する、標的対象206からの放射線は、開口部208のサイズと実質的に等しい検出器204上の領域のみを照射する。
図4に示すように、受光角Θを画定する線A1とA2との間に入射する入射光子は、開口部208を通過して検出器204に到達し、検出器204を「照射する」。開口部208の受光角を画定する線によって囲まれた検出器204の表面積を、各開口部208の照射面積(illuminating area)とする。例えば、中央開口部208の照射面積は、検出器204と交差する線A1とA2線との間の検出器204における表面積によって画定される。照射面積のサイズおよび形状は、対応する開口部のプロファイルおよびコリメータ202と検出器204との間の間隔Dに依存する。いくつかの実施形態では、検出器204上の開口部208の照射面積は、対応する開口部208および対応する開口部208を包囲する隔壁の半分を含む、対応する単位グリッドのサイズの少なくとも2倍である(単位グリッドの境界は、当該単位グリッドと隣接する単位グリッドとの間の隔壁の中央部にあることに注意されたい)。さらに、1つの開口部208の照射面積は、隣接する開口部の照射面積と重なり合ってもよい。例えば、様々な実施形態において、照射面積の10%、20%、または50%よりも大きい面積が、他の照射面積と重なり合ってもよい(この場合、開口部208を通過する放射線のみを考慮し、開口部208を包囲する隔壁を透過する放射線を除く)。
図4では、開口部208の下方の線A1および線A2によって定義される照射面積と、隣接する開口部の下方で線A1'およびA2'によって画定される別の照射面積との間の重複面積を示す。すなわち、検出器204の重複面積内の点(または検知画素214)は、1若しくはそれ以上の開口部208からの放射線を受光ことができる。さらに、いくつかの実施形態では、検出器204内の任意の1つの検知画素214は、開口部208の全数のうちの所定の割合以下の開口部208によって同時に照射され、この割合は25%未満である。いくつかの実施形態では、この割合は、10%未満、5%未満、または2%未満である場合もある。いくつか別の実施形態では、任意の開口部の照射面積は、連結された検出器204における、(すべての孔部を介した)全照射面積のうちの所定の割合以下であり、この割合は、10%未満、5%未満、または2%未満である場合もある。これに対し、符号化開口コリメータまたはマルチピンホールコリメータにおける孔部は通常、本開示の実施形態よりも、全照射面積に対してより大きな割合の領域を照射する。例えば、これらのコリメータの1つの孔部の照射面積は、各コリメータの全孔部の全照射面積の25%よりも大きい、若しくは40%よりも大きい可能性があり、それにより、イメージングシステムに膨大な量のクロストークが導入される。任意の1つの孔部の照射面積を、(システム性能の必要性に応じて)連結された検出器204における、(すべての孔部を介した)全照射面積の10%、5%、または場合によっては2%以下に制限することにより、異なる開口部からのクロストークが効果的に低減され、撮像解像度および信号感度において良好な性能を達成することができる。
【0035】
(通常は重金属材料である)遮蔽体244は、コリメータ203と検出器204との間の空間を覆う(または密閉する)ために周辺領域に沿って設けられ、放射線がその空間を通して検出器204に到達するのを阻止する。
図4では、遮蔽体244とSFIコリメータ203との間、および遮蔽体244と検出器204との間に隙間が示されているが、これは例示目的のみである。様々な実施形態において、遮蔽体244は、コリメータ203を通過する放射線のみが検出器204に到達可能な閉鎖領域(または密閉領域)を提供するために配備される。
【0036】
本実施形態において、SFIコリメータ203の開口部208は、すべて同一ではない。開口部208は、開口形状、開口サイズ、または開口長においても異なる場合がある。開口サイズが異なる場合、受光角Θが異なる可能性があるが、本実施形態では、最大受光角Θは、15°未満である。上述したように、受光角Θが15°未満の場合、望ましい撮像解像度が提供される。また、所与のコリメータの厚さHにおいて、受光角Θがより小さい場合、開口サイズ、ひいてはコリメータ寸法がより小さくなる。受光角Θが15°未満の場合、小型コリメータの設計と、(例えば、機械公差などの)製造上の困難性との間に良好な妥協点を見出すことができる。さらに、受光角Θが15°より大きい場合、隣接する開口部からのクロストークが増加し、その結果解像度が劣化して、イメージング処理後の処理がより複雑になる。いくつかの用途では、システム性能の必要性に応じて、より高い撮像解像度を達成し、かつクロストークを低減させるために、受光角Θを約10°未満、または場合によっては約5°未満にすることができる。いくつかの実施形態では、SFIコリメータ203の開口部208の一部は閉鎖されており、実質的に遮断されて光子の通過を許容しない。したがって、開口ピッチもまた、コリメータ203にわたって変化する。例えば、
図5Bでは、208'の周りのピッチおよび隔壁は、他の隔壁と比較的異なっている。開口部のプロファイルの少なくとも1つのパラメータ(例えば、開口形状、開口サイズ、開口長、および開口ピッチなど)において不均一性を有する開口部は、「不均一に分布した開口部」という。
図5Aは、異なる開口形状(例えば、円形および正方形)、開口サイズ、および(破線の円によって表される遮断された開口部によって生じる)異なる開口ピッチを有するSFIコリメータ203の1実施形態を示す。
図5Aでは、各開口部208は、それぞれの単位グリッド240と位置合わせされている(例えば、中心間の位置合わせ)。
図5Bは、SFIコリメータ203のさらに別の実施形態を示し、この実施形態では、単位グリッド240からオフセットされた少なくとも1つのアパーチャ208'が存在する。このような開口部の配列を有するSFIコリメータ203は、不均一に分布した開口部を有する平行孔型コリメータと考えられる。
図5Aおよび
図5Bは、単にSFIコリメータ203の一部分を示しているに過ぎないことに留意されたい。1実施形態では、コリメータ203上の開口部208の総数は、約2千(2000)、5千(5000)、1万(10000)、3万(30000)、場合によっては10万(100000)など、1千(1000)を超える。各開口部は検出器204の表面積のごく一部のみを照射し、また、開口部208間に著しいクロストークまたは多重化が存在するため、多数の開口部は、より高い感度、良好な範囲の視野(FOV)、および検出器204表面積の有効利用のために有益である。
【0037】
いくつかの実施形態では、コリメータ203の開口部208の一部または全部は、サイズ3x3、4x4、3x5、5x5などのパターンの反復などの反復パターンで配列することができる。反復パターンは、基本パターンと呼ばれる。いくつかの実施形態では、基本パターンは、当該パターン内に1つの中央孔部が存在するように、奇数の行および/列を有し、このようなパターンはデータ処理において有利である場合がある。
図6Aは、SFIコリメータ203の1実施形態の平面図(または平面図の一部)を示す。SFIコリメータ203の少なくとも一部は、5x5単位格子の基本パターンの反復を含み、
図6Bに例示される1つの基本パターンでは、白色の画素は開放型開口部を表し、灰色の画素は閉鎖型開口部を表す。開放型開口部は隔壁で囲まれている。
図6Aの点線は、基本パターン間の境界を表している。図示する実施形態では、開口部は正方形の単位グリッドと整列し、単位グリッド全体のサイズまで拡大することができる。基本パターンは、URA、MURA、PBA、ランダムまたは擬似ランダムパターンなどの符号化開口パターンとすることができる。いくつかの実施形態では、反復パターンの数は、例えば、3x3、3x5、5x5など、2x2よりも大きい数である。
図6Aにおいて図示する基本パターンはMURA 5パターンであり、X方向に3回、Y方向に3回反復して、15x15のサイズのコリメータ(またはコリメータの一部)が形成される。様々な実施形態において、基本パターンは、システム要件の必要性に応じて、X方向およびY方向にそれぞれ任意の回数だけ反復させることが可能である。
図6Cは、SFIコリメータ203(またはその一部)の別の実施形態の平面図を示し、本実施形態では、MURA 5の基本パターンをX方向に25回およびY方向に25回反復して、125x125のサイズのコリメータ(またはコリメータの一部)が形成される。図示する実施形態では、開口部の形状およびサイズは同一である。いくつかの実施形態では、開口部は、形状またはサイズ、若しくはその両方が異なることがある。
【0038】
図4に戻ると、コリメータ203と検出器204との間の間隔Dは、検出器204上の各開口部208の照射面積が、反復基本パターンと同じ、若しくはそれ以下であるとともに、開口部の間隔(ピッチ)の少なくとも2倍よりも大きくなるように選択することができる。検出器204上の開口部208の照射面積のサイズは、
図4の点線B1およびB2によって例示されるように、コリメータ203の基本パターンのサイズに実質的に等しい。以下でさらに詳細に説明するように、照射面積のサイズを基本パターンと実質的に等しく(または基本パターンの整数倍と)することにより、システム効率および精度を大幅に向上させる高速画像再構築アルゴリズムが提供される。その結果、コリメータ203と検出器204との間の間隔Dは、開口長(コリメータ厚さ)Hの半分よりも大きい場合に最適化される。様々な実施形態において、DはHの10倍未満、例えばHの1.5倍と10倍の間、Hの1倍と7倍の間、Hの1.5倍と7倍、または他の適切な範囲にすることができる。DがHの1.5倍未満など小さすぎる場合、解像度の向上に対する有意な効果は見られない。一方、DがHの10倍より大きい場合、隣接する開口部からのクロストークが高くなり、画像再構築時に複雑さが増し、解像度の劣化が生じる。いくつかの例では、DはHの約1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、または3.5倍である。
【0039】
さらに、
図4を参照すると、検出器204の検知画素214について、その真上にある開口部を通して見ることができる領域は、撮像解像度R
nとも呼ばれ、以下の式(2)で与えられる。
【0040】
【数5】
式(1)と式(2)の違いは、式(1)のH
eが式(2)では(H+D)に置換されていることであり、これにより、実質的にDだけ開口長が延長され、撮像解像度を大幅に向上させることができる。また、信号感度を向上させるために開口サイズWを大きくした場合でも、R
nをR
cよりも小さくすることができる。
【0041】
光子が1つの開口部を通過して、別の開口部の真下にある検出領域に入射する場合、クロストークまたは多重化が存在することを意味する。これに対して、平行孔型コリメータ(例えば、
図3に示すコリメータ202)が装備されている検出器の表面上の任意の検知画素では、光子が通過して到達できる開口部は1つのみである(但し、平行孔型コリメータ設計において抑制すべきイベントである隔壁の透過は除く)。検出器の所定の位置で検出された光子が通過可能な経路は複数あり、また、所定の地点にある光源について、放射線が検出器に到達するために通過可能な開口部は複数あるため、上記クロストークの影響によって通常解像度が低下する。これは、平行孔型コリメータのようにすべての開口部が本質的に同一である場合にも当てはまる。
【0042】
一方、
図4に示すようなSFIコリメータ203に関しては、開口部はすべて同一ではない。具体的には、検出器表面上の検知画素の可視領域内にある開口部はすべて同一ではない(ここでの可視領域とは、光子が検出器表面上の検知画素に到達するために通過可能なすべての開口部の集合体を意味する)。このように、下方にある開口部のパターンが異なるため、互いに近接した光源は検出器上に異なる陰影を投影する。このような異なる陰影は、再構築アルゴリズムが元の光源分布、すなわち物体像をR
nに近い高解像度で復元するのに役立つ。検出器の表面は、通常、グリッドのネットワークとしてデジタル化され、各グリッドは、検知画素の境界を表す。いくつかの実施形態では、隣接する検知画素によって観察される開口パターンは異なっている。
【0043】
単一光子放射断層撮影(SPECT)イメージングと同様に、連結された1対のコリメータ(コリメータ203など)および検出器(検出器204など)を標的対象の周りで回転させることにより、複数の角度から画像(投影とも呼ばれる)を取得することができる。この取得態様では、連結されたコリメータおよび検出器は、相互に相対運動することなく、共に移動する。特定の角度αでの順投影pは、以下のように表すことができる。
【0044】
【数6】
式中、iおよびjは、検出画素および物体像のボクセルのインデックスであり、f(j)は、ボクセルオブジェクトjの値、Kα(i,j)は、カメラが角度αのときにボクセルjから放出された光子が画素iで検出される確率である。元の物体像fを再構築する方法として、MLEMアルゴリズムが使用され、fは次式で反復的に求めることができる。
【0045】
【0046】
【数8】
式中、f
(k)(j)はk回目の反復における物体像であり、p(i,α)は、検出器画素iおよび角度αにおける測定投影である。このアルゴリズムは、順投影、比率計算、および逆投影の3工程を有する。このアルゴリズムの変形態様はOSEMと呼ばれ、OSEMでは、投影はN個のサブセットに分割され、計算は、このサブセットのうちの1つを使って反復を数回実行することで開始され、すべてのサブセットが計算されるまで次のサブセットに移行する。この工程は、異なるサブセットに分割し、各サブセットについて異なる反復回数を用いることにより繰り返すことができる。
【0047】
式(5)のアルゴリズムは、多数のボクセルおよび画素に角度数を乗算することを考えると、多大な時間を必要とし、また、K行列の記憶領域も膨大なものになる。1つの角度での投影は64x64から最大512x512画素までデジタル化が可能であり、通常、60または120の角度数での取得が必要となる。また、物体像は128x128x128、または256x256x256のボクセルを有することが多いため、行列Kα(i,j)は膨大な数になる。
【0048】
開口部が基本パターンの反復によって構成され、(基本パターンにおいて孔部が異なっていたとしても)すべての反復パターンにおける対応する貫通孔が同じ形状および寸法を有する場合、行列Kおよびアルゴリズムを簡略化することができる。通常、サイズXxY(XとYは異なっていてもよい)を有する反復基本パターンでは、点光源が検出器上に投影する可能性のあるXxYの積の倍数に等しいパターンの数しか存在しない。
図6Aまたは
図6Bは、反復パターンが5x5(X=Y=5)MURA 5パターンである一例である。基本パターンの孔部のインデックス(開放型および閉鎖型孔部を含むグリッド単位)をmとすると、m=1,...25である。この例では、コリメータ203(
図4参照)から距離Zに位置する平面を想定しており、この平面上の任意の点にある点光源は、検出器204上に所定パターンを投影する。ここで、投影パターンのサイズは、検出器のサイズよりもはるかに小さく、点光源が検出器に投影することができるパターンは、XxY=25のみであり、この点光源の真下にある開口部のインデックスに応じて(但し、境界領域を除く)、psf
m,Z(x,y)として示される(ここで、x=-M,...Mおよびy=-N,...Nである。)。ここで、検出器の画素のサイズは、コリメータのピッチ(孔部の間隔)と同じ、若しくはその何分の一かになる。したがって、25のパターンは、開口部によってインデックスすることにより、基本的な5x5のパターンとすることができる。一方、画素(ボクセルともいう)サイズがコリメータのピッチ(孔部の間隔)と同じであり、画素がコリメータのピッチと整合した、f
Zとして表される距離Zにある物体像は、
図7に示すように、f
Zと同じサイズの25のサブ画像に分割することができる。ここで、各サブ画像において、開口部と同じインデックスを有する、開口部上の画素は同様に維持され、残りの画素は0に設定される。パターンインデックスをmとすると、距離Zにおける物体像のスライスf
Zは、次式のサブ画像f
Z(j,m)で表すことができる。
【0049】
【数9】
これにより、式(5)のZにおける物体像の順投影工程は、次のように書き換えることができる。
【0050】
【0051】
【数11】
は、現在の物体像f
Z
(k)の推定値に基づいて計算された順投影であり、*は畳み込みを表す。同様の方法により逆投影工程を計算することができる。畳み込みは、FFTアルゴリズムによる行列の乗算よりも計算効率が良いことが知られている。この考え方は、コリメータピッチの数分の1のボクセルサイズに拡張することができ、psfパターンおよび対応するサブ画像の所定の畳み込みのXxY倍の畳み込みを使用することができる。例えば、ボクセルサイズがコリメータのピッチの半分の場合、psfパターンおよび対応するサブ画像の25の畳み込みの4倍(2x2)(すなわち、合計100の畳み込み)を使用することができる。この方法では、計算の複雑さは増すものの、より高精度になる。
【0052】
式(7)はまた、物体像が距離Zで示されるコリメータ面に平行なスライスで構成されている場合、投影パターンpsfm,zは異なる角度αに対して同じであることを示す。これにより、アルゴリズムがさらに簡略化される。
【0053】
各角度に対して式(5)を独立的に実行する1つの方法は、αを総和から除外し、距離Zに沿って推定値fZ(j)の総和を求めて、角度p'αでの二次投影を得る方法である。物体像fからp'αを導くための投影形状は平行孔型コリメーションと同様であるため、フィルタ補正逆投影法(FBP)、代数的再構成法(ART)、OSEM法などの平行孔型コリメーションの画像再構築アルゴリズムを使用してp'αからfを再構築することができる。
【0054】
1つの代替法は、補間によりfzをfα,zに変換する方法であり、ここでfα,zは、上記角度でコリメータ面に平行な(Zによって示される)スライスから構成される。次に、補間を適用する前に、順投影、逆投影の工程を実行し、
【0055】
【数12】
によって与えられる逆投影された比率、q
a,zをfの元のグリッドに変換した後、fzの更新比率を計算する。
【0056】
図4に戻ると、コリメータ203に関して、開口部の高さH(すなわち、コリメータ203の厚さ)は、その開口幅または直径Wよりもはるかに大きい場合がある。例えば、開口幅Wは2mm未満であり、開口の高さHは20mmより大きくてもよい。しかしながら、閉鎖型開口部については、開口部が完全に充填されている必要はなく、むしろ、放射線が開口部を通過するのを遮断するのに十分な厚さで充填されていればよい。例えば、放射性同位体Tc-99mを隔壁材料に使用する場合、3mmの厚さの鉛によって、140keVのガンマ線の入射放射線を99%以上遮断することができる。したがって、コリメータを軽量に製造することが可能である。
図8Aおよび
図8Bを参照すると、コリメータ203は、開放型孔部と閉鎖型孔部とを有するコリメータであり、2つのセクションを含む。一方のセクションは、均一に分布した貫通孔を有する平行孔型コリメータと同様のセクションである(平行孔型セクション262とも呼ばれる)。他方のセクションは、平行孔型セクション262における貫通孔よりも少ない貫通孔(例えば、約半分の貫通孔)を有する、不均一に分布した貫通孔を有する実質的により薄肉のプレート264(ただし、放射線を実質的に遮断するのに十分な厚さを有する)である。
図8Aおよび
図8Bに示すコリメータ203は、マルチセクションコリメータともいう。薄肉プレート264の貫通孔は、平行孔型セクション262の貫通孔と整列してコリメータ203の開口パターンをともに画定するが、一方平行孔型セクション262の他の貫通孔は、薄肉プレート264の不透明材料によって遮断されている。したがって、薄肉プレート264の貫通孔によって、コリメータ203の最終的な開口部の位置が画定される。薄肉プレート264は、パターン化された開口セクション264ともいう。いくつかの実施形態において、平行孔型セクション262のすべての貫通孔は実質的に同一であるが、一方パターン化された開口セクション264の貫通孔は異なっており、閉鎖型孔部を含む場合もある。さらに、パターン化された開口セクション264は、平行孔型セクション262の表面に対して水平方向にスライドするように動作可能であるなど、いくつかの実施形態において移動自在であってもよい。したがって、平行孔型セクション262に対してパターン化された開口セクション264を移動させることにより、1つの角度で複数の投影を取得することができる。
【0057】
パターン化された開口セクション264は、標的放射線を遮断するのに十分な厚さH1を有する。様々な実施形態において、平行孔型セクション262の厚さH2は、符号化開口セクション264の厚さH1の約2倍から約10倍であってよい。例えば、25mmの開口長は、20mmの厚さを有する平行孔型セクション262と5mmの厚さを有するパターン化された開口セクション264とで構成することができる。このように、完全に充填された閉鎖型開口部と比べると、コリメータ全体の重量を大幅に低減することができる。パターン化された開口セクション264は、検出器に面する平行孔型セクションの側部(
図8A)または標的対象に面する側部(
図8B)、または2つのサブ平行孔型セクションの中間部にあってもよい。(例えば、
図8Cのサブ平行孔型セクション262-aおよび262-b、ここでH2-a+H2-b=H2)。実際、閉鎖型開口部は、放射線を遮断するのに薄層の重金属材料のみを必要とする。この薄層は、必要に応じて複数のセグメントに分割することもできる。したがって、この新規の設計では、規則的な平行貫通孔を製造することから開始され、次に、薄層を開放型開口部内の任意の位置に配置して閉鎖型開口部を作製することができる。
【0058】
図8A~8Cに示す開口部は同じ断面および開口幅を有するが、異なる開口部のプロファイルを可能とする多くの異なる設計が存在する。例えば、軽量設計は、同じピッチの開口部を有するが、異なる開口サイズと隔壁とを有するコリメータにも適用することができる。そのような例のいくつかが、
図9A~9Cに示されている。
図9Aでは、コリメータ203は、直径(または幅)Wを有するいくつかの開口部と、より小さい直径(または幅)W'を有するいくつかの開口部とを有する。より幅狭の開口部の側壁を作製するために、コリメータ203の厚さ全体にわたって一定幅の隔壁を使用する代わりに、隔壁は、側方端部のみにより肉厚部分を有してもよい。側方端部における厚さH1-aおよびH1-bは、標的放射線を遮断し、より幅狭の開口部の設計と同様に、より小さい受光角Θを維持するのに十分である。
図8A~8Cを参照して説明した上記のマルチセクションの設計の要旨は、
図9Aの例示的なコリメータにも適用することができる。
図9Bは、1つの平行孔型セクション262と、開口サイズを画定する2つのパターン化された開口セクション264-a/264-bとを有するコリメータ203を示す。場合によっては、264-a/264-bのうちの1つのみが、受光角Θを調整するために必要となる。また、開口部は、断面および垂直断面の双方において、異なる形状を有していてもよい。いくつかの実施形態において、開口部は、異なる向きを有してもよい。パターン化された開口セクション264-a/264-bでは、
図9Cに示すような、開放型および閉鎖型開口部のパターンによって開口部サイズが画定されてもよい。
図8A~
図9Cを集合的に参照すると、1つの平行孔型セクション262が、異なるパターン化された開口セクション264aおよび/または264bと対になることで、異なるコリメータ構成が作製される。したがって、本開示によるマルチセクションコリメータは、軽量設計を実現するとともに、低コストの解決策も提供する。特に、
図8A~8Cおよび
図9A~9Cは、マルチセクションコリメータの隣接するセクションが互いに物理的に接触している実施形態を示すことに留意されたい。代替的実施形態では、隣接するセクションは、コリメータの性能が保証される限り、物理的に接触することなく(光子が1つの孔部から入射して別の孔部から射出するのを防ぐために)互いに密接に連結されている。
【0059】
ここで、
図10Aを参照する。平行孔型セクション262およびパターン化された開口セクション264とが互いに取り付けられた、
図8A~
図9Cに示す例示的なコリメータとは異なり、
図10Aに示す例示的なコリメータでは、平行孔型セクション262がパターン化された開口セクション264から離間して配置されている。さらに、パターン化された開口セクション264は、検出器204に密接に連結されてもよい。図示された実施形態では、検出器204の検知画素214は、上方にある平行孔型セクション262内の平行孔部からの照射を受けるために、パターン化された開口セクション264内に対応する開口部を有する。パターン化された開口セクション264の開口部は意図的に大きさが異なり、その結果、画素214を照射可能な平行孔型セクション262内の平行孔部の数が異なることになる。例えば、検知画素214aは、隣接する検知画素214bよりも大きな対応する開口部をパターン化された開口セクション264に有する。その結果、検知画素214aは、平行孔型セクション262の底面と交差する線C1およびC2の間に境界を有する平行孔型セクション262の複数の平行孔部によって照射可能である。これに対し、画素214bは、パターン化された開口セクション264の対応する開口部がより小さいため、平行孔型セクション262の底面と交差する線D1およびD2の間に境界を有する、平行孔型セクション262内で真上にある単一の平行孔部によってのみ照射される。同一の検知画素214を照射可能な平行孔型セクション262内の平行孔部の数は、パターン化された開口セクション264の対応する開口部の受光角に依存する。同一の検知画素214を照射可能な平行孔型セクション262内の平行孔部の数はまた、平行孔型セクション262とパターン化された開口セクション264との間の距離H3にも依存する。原則的に、距離H3は、検出器204の画素214の一部が少なくとも2若しくはそれ以上の上記平行孔部208によって照射可能とするものである。
図10Bに示す代替実施形態では、検出器204に密接に連結されるのは平行孔型セクション262であり、一方、パターン化された開口セクション264は262から離間して配置されていることに留意されたい。
【0060】
本発明で提示した設計は、先に提示した2つの特徴によって修正された、収束型または末広型孔部を有するコリメータなど、細長い孔部を多数有するその他の変形実施形態に適応することができる。
【0061】
図1A~1Cに戻ると、放射線によるイメージングシステム100は、連結されたコリメータおよび検出器の少なくとも2つの異なるセットを使用することができる。そのような実施形態のうちの1つでは、一方のセットは、連結された検出器から離間して配置された(例えば、
図4、
図6A~6C、
図8A~8C、
図9A~9C、または
図10A~10Bに示す)SFI(拡張照射野型イメージング用)コリメータ203を有し、もう一方のセットは、(例えば、
図3に示す)連結された検出器に取着された平行孔型コリメータ202を有する。通常、この構成では、平行孔型コリメータ202の開口(および/または受光角)は、SFIコリメータ203のものよりも小さい。式(1)に示すように、平行孔型コリメータは、開口が小さいため近距離(Zが小さい)では解像度が良いが、標的対象がコリメータから遠ざかるにつれて、撮像解像度は急速に低下する。これに対して、SFIコリメータ203は、標的対象がコリメータから遠ざかった場合に、優れた撮像解像度を提供する。多角度の画像取得の際に、2セットの連結されたコリメータおよび検出器モジュールは、標的対象の周りを回転して画像(投影)を取得する。当然ながら、標的対象の特定の部位は、所定の角度において一方のコリメータに接近し、反対の角度では、回転中心(COR)に近接した部分を除いて標的対象から遠ざかることになる。これらの2つのコリメータを組み合わせることにより、平行孔型コリメータ202により近い位置については、平行孔型コリメータ202の投影から推定される更新係数により大きな重みを割り当て、また、平行孔型コリメータ202からより遠い位置については、SFIコリメータ203の投影から推定される更新係数により大きな重みを割り当てることができる。換言すると、2セットの連結されたコリメータおよび検出器モジュールの推定値間の重み付は、距離に依存する。この構成の別の利点は、平行孔型コリメータのみを用いた再構築によって物体像の迅速な推定値を取得することができ、この推定値を、双方のコリメータからの投影を用いた反復再構築のための初期推定値として使用できることにある。多角度の平行孔部からの投影を再構築する方法としては、フィルタ補正逆投影法(FBP)、代数的再構成法(ART)、順序付きサブセット期待値最大化法(OSEM)などを選択することができる。そして、2つのカメラの双方が平行孔型コリメータを備える従来の走査と比べると、本発明の平行孔型コリメータの取得角度が半分のみであることによる低走査回数を緩和するために、(ローパスフィルタ処理(LPF)を適用し、および/またはより大きな画素を再構築することにより)より低解像度で画像再構築を行う工程が実行される場合もある。別の実施形態では、連結されたコリメータおよび検出器モジュールの少なくとも2つのセットがシステムに使用され、当該モジュールの双方は、連結された検出器から離間して配置された(例えば、
図4、
図6A~6C、
図8A~8C、
図9A~9C、または
図10A~10Bに示す)SFIコリメータ203を含む。しかしながら、2つのコリメータの細長い貫通孔は異なる受光角を有する。例えば、一方のSFIコリメータ203の最大受光角は、他方のSFIコリメータ203の少なくとも2倍である(一方は10°で、他方は5°など)。別の実施形態では、連結されたコリメータおよび検出器モジュールの少なくとも2つのセットがシステムに使用され、少なくとも1つの検出器は、細長い孔部(小さい受光角)を有し、連結された検出器から離間して配置された(例えば、
図4、
図6A~6C、
図8A~8C、
図9A~9C、または
図10A~10Bに示す)SFIコリメータ203と連結されており、別の検出器は、符号化開口コリメータを含むマルチピンホールコリメータに連結されており、当該コリメータでは、最大受光角が、20°よりも大きいなど、SFIコリメータ203よりも大幅に大きい。
【0062】
図1Bを参照すると、放射線によるイメージングシステム100において、対向する位置にある、連結されたコリメータおよび検出器の2つの同一のセットが使用される場合、等しい掃引ステップ(sweeping steps)において、連結されたコリメータおよび検出器の各セットを半回転させるだけでよい。第1および第2の半円からのデータを結合することにより、1周分の画像が取得される。例えば、3°の掃引ステップにおいて、第1のセットは、0°、3°、6°、...177°の角度で画像を順次取得し、第2のセットは、180°、183°、186°、...357°の角度で画像を順次取得する。放射線によるイメージングシステム100において、連結されたコリメータおよび検出器の2つの異なるのセットが使用される場合、各セットは、異なる態様で「観察」を行うため、それぞれ1周回転させる必要がある。同じ動作時間を維持するために、各セットは、2倍の掃引ステップによって1周分の掃引を行う。例えば、6°の掃引ステップにおいて、第1のセットは、0°、6°、12°、...180°、186°...354°の角度で画像を順次取得し、第2のセットは、180°、186°、192°、...354°、0°、...174の角度で画像を順次取得する。システムによって掃引される所与の角度の各々について、2つの画像が取得され、1つの画像は第1のセットから取得され、別の画像は第2のセットから取得される。換言すると、2つのセットは、異なる態様で「観察」を行うが、各セットは、もう一方のセットが画像を取得したのと同じ角度から画像を取得すること繰り返す。これに対し、
図1Cを参照すると、連結されたコリメータおよび検出器の2つの異なるのセットは、完全に対向する位置になく、掃引ステップの角度の半分の角度だけオフセットされている。例えば、6°の掃引ステップの場合、2つのセットが向く方向154Aおよび154Bは、約3°の角度Υを成す。2つのセットが向く方向をオフセットすることにより、システム100は、各画像を異なる角度から取得することができる。例えば、6°の掃引ステップおよび3°のオフセットでは、第1のセットは、0°、6°、12°、...180°、186°、...354°の角度で画像を順次取得し、第2のセットは、183°、189°、195°、...357°、3°、...177°の角度で画像を順次取得する。
【0063】
次に、
図11Aおよび
図11Bを参照する。放射線によるイメージングシステムにおいては、コリメータの開口部が検出器の検知画素と位置合わせされている場合、性能が最適化される。
図11Aは、検出器204上に重ね合わせられた例示的なSFIコリメータ203の一部分(
図6Bに示す基本パターン)のX-Y平面における平面図を示す。
図11Bは、
図11Aの切断線A-Aに沿ったコリメータ203および検出器204の一部分のX-Z平面における概略断面図を示す。
図10Aおよび
図10Bに示す検出器204は、個別の検知画素214の配列を含む。この個別の検知画素214は、CZTまたはSiPM構造に基づいていてもよい。通常、検知画素214は、図示する実施形態における行i=1,2,3,...および列j=1,2,3,...などの行列で形成されたグリッドネットワーク(画素グリッドともいう)内に配置される。X-Y平面の位置(x,y)に位置する任意の検知画素214は、グリッドネットワーク内のインデックス(i,j)(iおよびjは整数)で表すことができ、コリメータ203のグリッドネットワーク(開口部グリッドともいう)内に対応する開口部(または、符号化パターン若しくは隔壁内の閉鎖型開口部)を有する。
図11Aおよび
図11Bにおける検知画素214は、個別に互いに物理的に区別されるため、検出器とコリメータとの間の位置合わせは容易に達成できる。すなわち、画素グリッドと開口部グリッドが重なるように、検知画素214をコリメータ203の対応する開口部の真下に配置することで達成できる。
【0064】
次に、
図12Aおよび
図12Bを参照する。
図3および4に関連して説明したように、いくつかの実施形態では、検出器の検知画素は、大半のPMTベースの検出器システムの場合のように、互いに物理的に区別されず、連続した検出器表面のデジタル化の単なる生成物である。
図12Aは、そのような検出器204上に重ね合わせられた例示的なSFIコリメータ203の一部分(
図6Bに示す基本パターン)のX-Y平面における平面図を示す。
図12Bは、
図12Aの切断線A-Aに沿ったコリメータ203および検出器204の一部分のX-Z平面における概略断面図を示す。検出器表面は、コリメータ203の対応する開口部グリッドと同じ、すなわち、グリッド点間の間隔が同じである画素グリッドとしてデジタル化される。すなわち、検出器表面上の各画素の単位グリッドは、コリメータ203において最も近接した対応する開口部(または、符号化パターン若しくは隔壁内の閉鎖型開口部)を有する。検出器表面上の各画素の単位グリッドはまた、検出器の画素ともいう。検出器の画素は、行i=1,2,3,...および列j=1,2,3,...などの行列で形成されたグリッドネットワーク内に配置され、画素(i,j)(iおよびjは整数)としてラベル付けすることができる。理想的には、完全に位置合わせされた状態では、検出器の画素グリッドとコリメータの開口部グリッドは重なるべきである。しかしながら、
図12Aおよび
図12Bに示すように、装置の組み立て時などの画素グリッドと開口部グリッドとの間に位置ずれが生じ、その結果、(Δxで示す)X方向のずれおよび/または(Δyで示す)Y方向のずれが生じる場合がかなりある。このような位置ずれはシステムの低下をもたらす。例えば、
図12Bに示すように、完全に位置合わせされた状態では、コリメータ203の開口部を通過する入射光子において、画素(3,1)で発生したイベント(例えば、カウント)として記録すべき入射光子は、その代わりに画素(3,2)で発生したイベントとして記録され、これにより、記録信号における開口部パターのコントラストが減少する。
【0065】
光電子倍増管(PMT)ベースの検出システムを例にとると(その他の構造を用いた検出システムも同様である)、PMTは、光電面で入射光子を光電子に変換することによって機能する。これらの電子は、一連の帯電した陰極から多数の二次電子を生成し、陽極で測定可能な電流パルスを生成する。隣接するPMTで測定可能な電流パルスに基づいて、連続的なX-Y平面上の位置(x,y)を、光子の入射イベントが発生した位置として決定することができる。連続的なX-Y平面とインデックス(i,j)との間のマッピングに基づき、位置(x,y)で発生したイベントは、次に、画素(i,j)で発生したイベントとしてデジタル化される。しかしながら、上述したように、連続的なX-Y平面とインデックス(i,j)との間の初期マッピングの位置ずれにより、性能が低下する可能性がある。画像コントラストは、オフセットによる位置ずれを調整する方法を提供する。ヒトの眼および知力で画像を認識するためには、取得された画像配列にコントラストが存在する必要がある。被写体の任意の部分によって、異なる画素において記録される信号強度が変化する必要がある。最も簡単なものとしては、コリメータの開口部および閉鎖型開口部(または隔壁)など、部分的または全体的に不透明な構造によって生じる透過コントラストがある。画像に存在するコントラストの量によって、位置ずれを調整するのに重要な精度が決定される。
図13は、コリメータを物理的に移動せずにアルゴリズムによって位置ずれを相殺する設定を示す。
図13では、Co-57 or Tc-99m矩形フラッド光源(flood source)などのフラッド光源242がコリメータ203の上方に均一的な照射野を提供する。フラッド光源242は、コリメータ203の厚さの半分未満など、コリメータ203に密接に連結して配置することができ、この配置は、コリメータ203およびフラッド光源242が物理的に接触している場合も含む。フラッド光源242により照射されている状態では、検出器204によって取得される画像は、コリメータ203による陰影を含むフラッド光源242の画像である。照射野が均一的であるため、取得画像におけるコントラストは、コリメータ203の透明および不透明な特徴に基づいている。すなわち、閉鎖型開口部(または隔壁)、若しくは小さな開口部の下方にある画素は、開放型開口部または大きな開口部の下にある画素と比べると、画像信号強度が低くなる。
【0066】
コントラストは、画像の単一強度のピークと谷との間の変動の測定基準(例えば、比率または絶対差)として定義することができる。一例として、
図13の信号強度線244は、ピークと谷に対応するV
pおよびV
vを示す。コントラストを最大化する方法の1つとしては、V
p/V
vの比率、または
【0067】
【数13】
の差を最大化する方法がある。コントラストが最大化したときに、コリメータと検出器との間の位置合わせが達成されたと考えられる。
【0068】
検出器表面は画素グリッドにデジタル化されているため、コリメータを物理的に移動せずに、アルゴリズムによって位置ずれを相殺、すなわち、コントラストの最大化を達成することができる。1つの例示的な方法では、検出器表面から出現する各信号(例えば、PMTベースの検出システムの場合、PMTからの電流パルス)は、座標(x,y)を有するイベントとして記録される。したがって、データリスト(リストモードともいう)における各エントリは、単一の検出光子に関する情報を含む属性ベクトルである。例えば、一連のイベントは、(xn,yn)(n=1,2,3,...)としてラベル付けすることができ、ここで、各対は、n番目に検出されたイベントのX-およびY-座標を表す。連続的なX-Y平面と個別のインデックス(i,j)との間のマッピングに基づいて、C(i,j)として表される、画素(i,j)の記録総数は、
【0069】
【数14】
として表現することができる。式中、Dは、(x,y)で発生したイベントを対応する画素(i,j)にマッピングするためのデジタル化関数であり、δ関数は、D(x
n,y
n)が(i,j)に等しい場合に1、それ以外の場合に0を与える。さらに、エネルギーウィンドウを任意選択的に適用して、そのエネルギーウィンドウ内でイベントが発生した場合のみ計数されるようにイベントをフィルタリングすることができる。定義によれば、C(i,j)は、画素(i,j)での画像信号強度であり、画素(i,j)が占める領域で記録されたイベント数を表し、これはデジタル化関数Dによって定義される。C(i,j)(i=1,2,3,...;j=1,2,3,...)の集合からピークと谷における信号強度を特定し、初期コントラスト
【0070】
【0071】
次に、画素グリッドを「オフセット」するために、デジタル化関数にオフセット対(δx,δy)を導入し、C(i,j)を再計算する。したがって、C(i,j)は、
【0072】
【数16】
として表現することができる。式中、(δx,δy)の導入は、X方向にδx、Y方向にδyの距離だけ画素グリッドを移動させることに相当する。その結果、画素(i,j)として記録されるはずの位置(x,y)で発生したイベントは、位置(x+δx,y+δy)で発生したイベントと同等とみなされ、それに応じて隣接画素(i',j')として記録される。したがって、C(i,j)曲線は異なるものとなり、更新されたコントラスト
【0073】
【数17】
が計算される。勾配降下法、共役勾配法などの最適化方法によって、ピーク/谷のコントラストを最大化するための最適な(δx,δy)を求めることができる。代替的な方法として、一連のオフセット対(δx,δy)を段階的に作成することができる。一連のオフセット対(δx,δy)を掃引することにより、コントラストが最大となる1つのオフセット対(δx,δy)を、画素グリッドを再生するなどの、位置ずれを相殺するための正しいオフセット量として選択することができる。このオフセット対(δx,δy)は、選択オフセット対、または選択オフセットという。代替的に、選択オフセット対(δx,δy)は、(画素グリッドを再生するための特例として)X-Y平面の原点(x
0,y
0)をオフセットして画素グリッド全体をシフトするために適用することができる。理想的には、選択された(δx,δy)の対は、実質的に位置ずれ(Δx,Δy)と等しくなるが、これは、一連のオフセット対(δx,δy)を生成する際に使用する掃引ステップにも依存する。様々な実施形態において、一連のオフセット対(δx,δy)は、画素ピッチP
x(X方向のピッチ)および画素ピッチP
y(Y方向のピッチ)をそれぞれ等分することにより生成することができる。例えば、画素ピッチがX方向およびY方向ともに2.0mmである場合、オフセット対(δx,δy)の集合は、δx<P
x、δy<P
yで、0から開始されれる0.2umのステップの掃引、すなわち、{(0,0),(0.2mm,0),(0.4mm,0)...(2.0mm,1.8mm),(2.0mm,2.0mm)}の集合とすることができる。また、バブルソートアルゴリズム、バケットソートアルゴリズム、挿入ソートアルゴリズム、またはその他の適切なアルゴリズムによる他の方法で、オフセット対(δx,δy)を生成することが可能である。
【0074】
代替的に、本方法では、δxとδyを一緒に掃引する代わりに、(δyを固定することにより)X方向にのみ掃引を実行して、最初にX方向における最適化されたオフセットδxを取得し、次に、(最適化されたδxを用いて)Y方向にのみ掃引を実行して、Y方向における最適化されたオフセットδyを取得してもよい。あるいは同様に、本方法では、最初にY方向に掃引を実行した後、X方向に掃引を実行することができる。さらに、コントラストを計算するために画素グリッド全体からV
pおよびV
vを2次元的に選択する代わりに、本方法では、(
図13の信号強度線244などのC(i,j)の集合におけるiを固定することにより)1つの行を選択し、(δx,δy)を掃引して、行における最大のコントラストを取得し、選択オフセット対(δx,δy)を画素グリッド全体に適用してもよい。また、同様に、本方法では、(C(i,j)の集合におけるjを固定することにより)1つの列を選択し、(δx,δy)を掃引して、列における最大のコントラストを取得し、選択オフセット対(δx,δy)を画素グリッド全体に適用してもよい。
【0075】
孔部のパターンが異なる場合、異なる最適化法が必要とされる場合があることに留意されたい。いくつかのパターンでは、記録された信号強度の記述子の最大値または最低値(例えば、コントラスト、ピーク時における信号強度、谷における信号強度など)が、最大コントラスト、最大ピーク値、または最小谷値などの最大化/最小化のために使用される。反復孔部パターンが使用される場合、(基本パターンにおいて同一の孔部に対応する)対応する画素を一緒に加算して画素値におけるランダム性(すなわち、量子ノイズ)を減少させることができる。また、いくつかの実施形態では、特定の孔部パターンが使用される場合、最適化ルーチンから選択オフセット対(δx,δy)は、実際の最適オフセットから離れた固定オフセットの位置にあり、この固定オフセットは、孔部パターンによって決定される場合がある。例えば、いくつかの孔部パターンでは、フラッド光源画像における最大画素値は、隣接する2x2の開放型開口部の中央に位置する。その場合、固定オフセットは孔部のピッチの半分であり、画素を孔部に位置合わせするために使用される実際の最適オフセットは、当該固定オフセットによって補正されることになる。すなわち、選択オフセット対(δx,δy)を求めた後、選択オフセット対(δx,δy)に固定オフセットを加算、または選択オフセット対(δx,δy)から固定オフセットを減算して、位置ずれ調整のために使用する実際の最適オフセットを得るさらなる工程が、選択的に実行される場合がある。
【0076】
限定することを意図するものではないが、本開示の1若しくはそれ以上の実施形態は、患者などの標的対象における放射線によるイメージングに多くの利点を提供する。例えば、関連する検出器から離間して配置された反復符号化パターンを有するコリメータの設計は、信号感度を犠牲にすることなく優れた撮像解像度を提供するものであり、したがって、システム性能が改善される。
【0077】
上記の説明では、当業者が本開示の観点をより良く理解できるように、いくつかの実施形態の特徴について概説した。当業者であれば、本明細書で紹介した実施形態と同じ目的を遂行し、および/または同じ利点を達成するためのその他の工程および構造を設計または修正するための基礎として、本開示を容易に使用できることを理解するものと考えられる。また、当業者は、そのような均等構造は、本開示の要旨および範囲から逸脱するものではないこと、および本開示の要旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換、および改変を行うことができることを認識すべきである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示と一致する形で広く解釈されることが適切である。