IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図1
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図2
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図3
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図4
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図5
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図6
  • 特許-モーターコアの製造方法及び製造装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-28
(45)【発行日】2025-06-05
(54)【発明の名称】モーターコアの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/027 20250101AFI20250529BHJP
   H02K 15/0273 20250101ALI20250529BHJP
【FI】
H02K15/027
H02K15/0273
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021192404
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023079016
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】上田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】浜浦 隆行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0082022(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0132107(US,A1)
【文献】特開2011-205836(JP,A)
【文献】特開2012-170187(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012103828(DE,A1)
【文献】特開2021-195194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/027
H02K 15/0273
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア付き単板を形成するプレス工程及び積層鉄心を形成する積層工程を備え、
前記プレス工程では、帯状の磁性鋼板を金型装置に順次引き込みプレスにより前記キャリア付き単板を加工して排出し、
前記積層工程では、前記排出されたキャリア付き単板を積層装置に順次引き込み交換可能に予めセットされた整列治具の上で環状鉄心片が位置決め積層された前記積層鉄心を形成し、
前記金型装置と前記積層装置との間で前記プレス工程の速度と前記積層工程の速度との相違により前記キャリア付き単板のたるみ量に応じ該キャリア付き単板の上下方向位置が設定範囲で上下することを許容し、
前記積層工程の完了手前で前記プレス工程の速度を相対的に遅くして前記上下方向位置を前記設定範囲内で上昇させた後、前記プレス工程を継続しながら前記上下方向位置が下降して前記設定範囲の下限に至るまでに前記積層鉄心が積層された整列治具を取り出し次の整列治具をセットする、
モーターコアの製造方法。
【請求項2】
請求項1のモーターコアの製造方法であって、
前記積層工程の完了手前で前記プレス工程の速度を設定されたプレス低速値とし、
前記キャリア付き単板のたるみ量が設定値まで減少したとき前記積層工程の速度を前記プレス低速値に応じて設定された積層低速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項3】
請求項2のモーターコアの製造方法であって、
前記キャリア付き単板のたるみ量が前記設定値に減少するまで前記プレス低速値を維持しつつ前記積層工程の速度を前記積層低速値よりも速い範囲で設定された積層中速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項4】
請求項3のモーターコアの製造方法であって、
前記キャリア付き単板のたるみ量が前記積層中速値により減少する範囲を積層中速範囲として設定し、
前記キャリア付き単板のたるみ量が前記積層中速範囲に至るまで前記プレス低速値を維持しつつ前記積層工程の速度を前記積層中速値よりも早い範囲で設定された積層高速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項5】
請求項1のモーターコアの製造方法であって、
前記積層工程の完了手前で前記積層工程の速度を設定された積層高速値とし、
前記キャリア付き単板のたるみ量が設定値まで減少したとき前記プレス工程の速度を設定されたプレス高速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項6】
請求項5のモーターコアの製造方法であって、
前記キャリア付き単板のたるみ量が前記設定値に減少するまで前記積層高速値を維持しつつ前記プレス工程の速度を前記プレス高速値よりも遅い範囲で設定されたプレス中速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項7】
請求項6のモーターコアの製造方法であって、
前記キャリア付き単板のたるみ量が前記プレス中速値により減少する範囲をプレス中速範囲として設定し、
前記キャリア付き単板のたるみ量が前記プレス中速範囲に至るまで前記積層高速値を維持しつつ前記プレス工程の速度を前記プレス中速値よりも遅い範囲で設定されたプレス低速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項8】
請求項1のモーターコアの製造方法であって、
前記積層工程の完了手前で前記プレス工程の速度を設定されたプレス高速値とすると共に前記積層工程の速度を設定された積層最高速値とし、
前記キャリア付き単板のたるみ量が設定値まで減少したとき前記プレス高速値を維持しつつ前記積層工程の速度を前記プレス高速値に応じて設定された積層高速値とする、
モーターコアの製造方法。
【請求項9】
帯状の磁性鋼板を順次引き込みプレスによりキャリア付き単板を加工して排出する金型装置と、
前記排出されたキャリア付き単板を順次引き込み交換可能に予めセットされた整列治具の上で環状鉄心片が位置決め積層された積層鉄心を形成する積層装置と、
前記金型装置と前記積層装置との間で前記金型装置の動作の速度と前記積層装置の動作の速度との相違により前記キャリア付き単板のたるみ量に応じ該キャリア付き単板の上下方向位置が設定範囲で上下することを検出する検出装置と、
前記積層鉄心の形成完了手前で前記金型装置の動作の速度を相対的に遅くして前記上下方向位置を前記設定範囲内で上昇させた後、前記金型装置の動作を継続しながら前記上下方向位置が前記設定範囲の下限に至るまでの間に前記積層装置を停止させて前記積層鉄心が積層された整列治具を取り出し次の整列治具をセット可能とする制御装置と、
を備えたモーターコアの製造装置。
【請求項10】
請求項9のモーターコアの製造装置であって、
前記検出装置は、前記キャリア付き単板の上下方向位置が上昇して前記たるみ量が設定値に減少したことを検出する上位のセンサーと、前記キャリア付き単板の上下方向位置が下降して前記たるみ量が前記設定値よりも増加したことを検出する下位のセンサーとを備えた、
モーターコアの製造装置。
【請求項11】
請求項10のモーターコアの製造装置であって、
前記検出装置は、前記キャリア付き単板の上下方向位置が前記設定範囲の上限外になったことを検出する上限外センサーと、前記キャリア付き単板の上下方向位置が前記設定範囲の下限外になったことを検出する下限外センサーとを備え、
前記上位のセンサーと前記下位のセンサーは前記上限外センサーと前記下限外センサーの間に位置する、
モーターコアの製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モーターのモーターコアの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモーターコアの製造方法としては、例えば特許文献1に記載された車両駆動用モーターの積層鉄心の製造方法がある。
【0003】
この製造方法では、プレス工程と積層工程とを備え、これらがそれぞれ独立した金型装置と積層組立装置(積層装置)とで実現されている。
【0004】
プレス工程では、帯状の磁性鋼板を金型装置においてプレス加工することにより、複数の円弧状鉄心片を連結部で連結したキャリア付き単板を製造する。このキャリア付き単板は、リールに巻かれて次工程の積層工程に送られる。
【0005】
積層工程では、リールに巻かれたキャリア付き単板を積層組立装置内に引き込み、キャリア付き単板から円弧状鉄心片が順次切り離される。切り離された円弧状鉄心片は、積層組立装置内にセットされた整列治具上にパンチで押し込まれる。
【0006】
円弧状鉄心片の押し込みでは、円弧状鉄心片の位置決め孔が整列治具の位置決めピンに嵌合して位置決められる。この位置決めを伴って円弧状鉄心は環状に並べられ、環状鉄心片が形成される。この環状鉄心片は、順次位相をずらして積層され、積層鉄心となる。 積層鉄心は、内周部又は外周部が積層方向に沿って溶接される。
【0007】
かかる従来の製造方法では、安価な設備により製造コストを低減できる。
【0008】
しかし、金型装置から排出されたキャリア付き単板をリールに巻いてから次工程の積層工程に移送することになり、生産性の向上に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許6469355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、モーターコアの生産性の向上に限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、キャリア付き単板を形成するプレス工程及び積層鉄心を形成する積層工程を備え、前記プレス工程では、帯状の磁性鋼板を金型装置に順次引き込みプレスにより前記キャリア付き単板を加工して排出し、前記積層工程では、前記排出されたキャリア付き単板を積層装置に順次引き込み交換可能に予めセットされた整列治具の上で環状鉄心片が位置決め積層された前記積層鉄心を形成し、前記金型装置と前記積層装置との間で前記プレス工程の速度と前記積層工程の速度との相違により前記キャリア付き単板のたるみ量に応じ該キャリア付き単板の上下方向位置が設定範囲で上下することを許容し、前記積層工程の完了手前で前記プレス工程の速度を相対的に遅くして前記上下方向位置を前記設定範囲内で上昇させた後、前記プレス工程を継続しながら前記上下方向位置が前記設定範囲の下限に至るまでに前記積層鉄心が積層された整列治具を取り出し次の整列治具をセットするモーターコアの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、帯状の磁性鋼板を順次引き込みプレスによりキャリア付き単板を加工して排出する金型装置と、前記排出されたキャリア付き単板を順次引き込み交換可能に予めセットされた整列治具の上で環状鉄心片が位置決め積層された積層鉄心を形成する積層装置と、前記金型装置と前記積層装置との間で前記金型装置の動作の速度と前記積層装置の動作の速度との相違により前記キャリア付き単板のたるみ量に応じ該キャリア付き単板の上下方向位置が設定範囲で上下することを検出する検出装置と、前記積層鉄心の形成完了手前で前記金型装置の動作の速度を相対的に遅くして前記上下方向位置を前記設定範囲内で上昇させた後、前記金型装置の動作を継続しながら前記上下方向位置が前記設定範囲の下限に至るまでの間に前記積層装置を停止させて前記積層鉄心が積層された整列治具を取り出し次の整列治具をセット可能とする制御装置とを備えたモーターコアの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金型装置で排出されたキャリア付き単板をそのまま積層装置に引き込んで積層を行うことができ、モーターコアの生産性を向上できる。しかも、金型装置と積層装置との間でキャリア付き単板のたるみを利用して、金型装置を止めずに積層鉄心が積層された整列治具を取り出し次の整列治具をセットでき、金型装置の駆動と停止の繰り返しを抑制して保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、本発明の実施例に係るモーターコアの製造装置の概要を示す概略ブロック図である。図1(B)は、比較例に係るモーターコアの製造装置の概要を示す概略ブロック図である。
図2図2は、図1(A)のモーターコアの製造装置の要部を示す概略図である。
図3図3は、実施例に係り、整列治具上に延弧状鉄心片を配列する積層工程の要部斜視図である。
図4図4は、実施例に係り、整列治具上に積層された積層鉄心の斜視図である。
図5図5は、実施例に係り、制御例を示す図表である。
図6図6は、変形例に係る制御例を示す図表である。
図7図7は、他の変形例に係る制御例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、モーターコアの生産性の向上を可能にするという目的を、金型装置の保護を図りつつ実現した。
【0016】
本発明のモーターコアの製造方法は、キャリア付き単板19のプレス工程S1及び積層鉄心29を形成する積層工程S2を備える。プレス工程S1では、帯状の磁性鋼板17を金型装置3に順次引き込み、プレスによりキャリア付き単板19を加工して排出する。積層工程S2では、排出されたキャリア付き単板19を積層装置5に順次引き込み、交換可能に予めセットされた整列治具25の上で環状鉄心片27が位置決め積層された積層鉄心29を形成する。
【0017】
かかる製造方法は、金型装置3と積層装置5との間でプレス工程S1の速度と積層工程S2の速度との相違によりキャリア付き単板19のたるみ量に応じキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲で上下することを許容する。そして、積層工程S2の完了手前でプレス工程S1の速度を相対的に遅くしてキャリア付き単板19の上下方向位置を設定範囲内で上昇させた後、プレス工程S1を継続しながらキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲の下限に至るまでの間に積層鉄心29が積層された整列治具25を取り出し次の整列治具25をセットする。
【0018】
積層工程S2の完了手前でプレス工程S1の速度を設定されたプレス低速値とし、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値まで減少したとき積層工程S2の速度をプレス低速値に応じて設定された積層低速値としてもよい。
【0019】
この場合、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値に減少するまでプレス低速値を維持しつつ積層工程S2の速度を積層低速値よりも速い範囲で設定された積層中速値とすることもできる。
【0020】
さらに、この場合、キャリア付き単板19のたるみ量が積層中速値により減少する範囲を積層中速範囲として設定し、キャリア付き単板19のたるみ量が積層中速範囲に至るまでプレス低速値を維持しつつ積層工程S2の速度を積層中速値よりも早い範囲で設定された積層高速値とすることもできる。
【0021】
他の実施形態としては、積層工程S2の完了手前で積層工程S2の速度を設定された積層高速値とし、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値まで減少したときプレス工程S1の速度を設定されたプレス高速値としてもよい。
【0022】
この場合、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値に減少するまで積層高速値を維持しつつプレス工程S1の速度をプレス高速値よりも遅い範囲で設定されたプレス中速値とすることもできる。
【0023】
さらにこの場合、キャリア付き単板19のたるみ量がプレス中速値により減少する範囲をプレス中速範囲として設定し、キャリア付き単板19のたるみ量がプレス中速範囲に至るまで積層高速値を維持しつつプレス工程S1の速度をプレス中速値よりも遅い範囲で設定されたプレス低速値とすることもできる。
【0024】
さらに他の実施形態としては、積層工程S2の完了手前でプレス工程S1の速度を設定されたプレス高速値とすると共に積層工程S2の速度を設定された積層最高速値とし、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値まで減少したときプレス高速値を維持しつつ積層工程S2の速度をプレス高速値に応じて設定された積層高速値としてもよい。
【0025】
本発明のモーターコアの製造装置1は、金型装置3と、積層装置5と、検出装置39と、制御装置7とを備える。金型装置3は、帯状の磁性鋼板17を順次引き込みプレスによりキャリア付き単板19を加工して排出する。積層装置5は、排出されたキャリア付き単板19を順次引き込み交換可能に予めセットされた整列治具の上で環状鉄心片27が位置決め積層された積層鉄心29を形成する。検出装置39は、金型装置3と積層装置5との間で金型装置3の動作の速度と積層装置5の動作の速度との相違によりキャリア付き単板19のたるみ量に応じ該キャリア付き単板の上下方向位置が設定範囲で上下することを検出する。制御装置7は、積層鉄心29の形成完了手前で、金型装置3の動作の速度を相対的に遅くして上下方向位置を設定範囲内で上昇させた後、金型装置3の動作を維持しながら上下方向位置が設定範囲の下限に至るまでに積層装置5を停止させて積層鉄心29が積層された整列治具25を取り出し次の整列治具25をセット可能とする。
【0026】
検出装置39は、キャリア付き単板19の上下方向位置が上昇し、たるみ量が設定値に減少したことを検出する上位のセンサー45bと、キャリア付き単板19の上下方向位置が下降し、たるみ量が設定値よりも増加したことを検出する下位のセンサー45c~45fとを備えてもよい。
【0027】
また、検出装置39は、キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲の上限外になったことを検出する上限外センサー45aと、キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲の下限外になったことを検出する下限外センサー45gとを備えてもよい。この場合、上位のセンサー45bと下位のセンサー45c~45fは上限外センサー45aと下限外センサー45gの間に位置する。
【実施例
【0028】
[モーターコアの製造装置]
図1(A)は、本発明の実施例に係るモーターコアの製造装置の概要を示す概略ブロック図である。図1(B)は、比較例に係るモーターコアの製造装置の概要を示す概略ブロック図である。図2は、図1(A)のモーターコアの製造装置の要部を示す概略図である。図3は、実施例に係り、整列治具上に延弧状鉄心片を配列する積層工程の要部斜視図である。図4は、実施例に係り、整列治具上に積層された積層鉄心の斜視図である。図5は、実施例に係り、制御例を示す図表である。
【0029】
図1(A)、図2のように、本実施例のモーターコアの製造装置1は、アンコイラー 9、金型装置3、積層装置5、ループコントローラ―7、溶接装置11を備えている。なお、製造されるモーターコアには、ステーターコア及びローターコアの双方が含まれる。
【0030】
アンコイラー9は、ロール状に保持されている帯状の磁性鋼板17を金型装置3に順次引き込ませる。アンコイラー9は、周知のもので実現できる。
【0031】
金型装置3は、プレス工程S1を実行し、帯状の磁性鋼板17を順次引き込み、プレスによりキャリア付き単板19を加工して排出する。プレス工程S1については後述する。金型装置3の排出口には、下方へ湾曲したガイド21が備えられている。金型装置3は、周知のもので実現できる。
【0032】
本実施例の金型装置3は、円弧状鉄心片33を連結部31で連結したキャリア付き単板19をプレスにより形成する。なお、金型装置3は、環状鉄心片27を連結部31で連結したキャリア付き単板19を形成してもよい。
【0033】
積層装置5は、積層工程S2を実行し、金型装置3から排出されたキャリア付き単板19を順次引き込み、交換可能に予めセットされた整列治具25の上で環状鉄心片27が位置決め積層された積層鉄心29を形成する。積層装置5は、周知のもので実現できる。
【0034】
本実施例の積層装置5は、キャリア付き単板19から円弧状鉄心片33を切り離し、整列治具25上に環状に並べて環状鉄心片27として積層し、積層鉄心29を形成する。ただし、環状鉄心片27を連結部31で連結したキャリア付き単板19の場合、積層装置5は、キャリア付き単板19から環状状鉄心片27を切り離し、整列治具25上に積層して積層鉄心29を形成する。
【0035】
この積層装置5は、引き込み側にガイドローラー23を備えている。金型装置3から排出されたキャリア付き単板19は、ガイドローラー23に巻きかけ、引き込みを行わせる。
【0036】
ループコントローラ―7は、検出装置及び制御装置を構成し、キャリア付き単板19のたるみ量に応じてキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲で上下することを図2のように検出し、プレス工程S1(金型装置3の動作)の速度と積層工程S2(積層装置5の動作)の速度とを制御する。
【0037】
この制御を通じ、ループコントローラ―7は、積層工程S2の完了手前(積層鉄心29の形成完了手前)で、プレス工程S1の速度を相対的に遅くしてキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲内で上昇してたるみ量を減少させる。
【0038】
その後、プレス工程S1を継続しながらキャリア付き単板19のたるみ量が増加してキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲の下限に至るまでの間に、積層工程S2を停止させて積層鉄心29が積層された整列治具25を取り出し次の整列治具25をセット可能とする。ループコントローラ―7については、さらに後述する。
【0039】
なお、積層鉄心29が積層された整列治具25の取り出しと次の整列治具のセットは、ロボットアーム(図示せず)により自動で行われる。ただし、作業者が搬送治具などを利用し、手動で取り出し及びセットを行うことも可能である。
【0040】
金型装置3の動作とは、帯状の磁性鋼板17を順次引き込みプレスによりキャリア付き単板19を加工して排出する動作をいう。積層装置5の動作とは、金型装置3から排出されたキャリア付き単板19を順次引き込み、交換可能に予めセットされた整列治具25の上で環状鉄心片27が位置決め積層された積層鉄心29を形成する動作をいう。
【0041】
積層鉄心29が積層された整列治具25の取り出しと次の整列治具のセットは、環状鉄心片27の積層鉄心29に対する積層率が100%になると行われる。積層率については後述する。
【0042】
溶接装置11は、積層鉄心29を受け入れて溶接する構成である。なお、溶接装置11を複数設けてもよい。この場合、積層装置5から積層鉄心29を複数の溶接装置11に振り分けて搬送し、複数の積層鉄心29に対する溶接を並行して行わせることができる。溶接装置11は、周知のもので実現できる。
【0043】
かかるモーターコアの製造装置1は、キャリア付き単板19をリールに巻くことなく、金型装置3から排出したキャリア付き単板19を直接的に引き込んだ積層装置5が積層鉄心29の形成を実行する。
【0044】
図2のように、ループコントローラ―7は、金型装置3と積層装置5との間に設置されている。ループコントローラ―7は、検出装置の検出部39と制御装置の制御部41を備えている。
【0045】
検出部39は、金型装置3と積層装置5との間で、プレス工程S1の速度と積層工程S2の速度との相違により、キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲で上下してキャリア付き単板19のたるみ量が減少及び増加することを検出する。
【0046】
キャリア付き単板19のたるみは、金型装置3と積層装置5との間でキャリア付き単板19が自重により下方に凸となるように湾曲することをいう。たるみ量は、この湾曲による凸の大きさによって設定される。キャリア付き単板19の上下方向位置は、検出部39に対向したキャリア付き単板19のたるみが生じる部位での上下方向位置をいい、上昇するとたるみ量が減少し、下降するとたるみ量が増加する関係にある。本実施例において、キャリア付き単板19の上下方向位置は、たるみ部分の最も下方に位置する部位の上下方向位置をいうが、たるみ部分の何れかの部位の上下方向位置であればよい。キャリア付き単板19の上下方向位置の設定範囲は、たるみ量との関係で、整列治具25の交換、生産効率等を考慮したものとする。
【0047】
本実施例の検出部39は、検出塔43に上下複数のセンサーとして第1~第7までのセンサー45a、45b、45c、45d、45e、45f、45gを備えている。第1~第7センサー45a、45b、45c、45d、45e、45f、45gは、例えば光センサーで構成されている。
【0048】
第1、第2センサー45a、45b間の上下間隔はa、第2、第3センサー45b、45c間の上下間隔はb、第3、第4センサー45c、45d間の上下間隔はc、第4、第5センサー45d、45e間の上下間隔はd、第5、第6センサー45e、45f間の上下間隔はe、第6、第7センサー45f、45g間の上下間隔はfとする。各間隔の大小の設定は、一例としてa<b<c=d>e>fとなっている。ただし、a=b=c=d=e=fの等間隔配置にすることもできる。
【0049】
第2センサー45bは、キャリア付き単板19の上下方向位置が上昇してたるみ量が設定値に減少したことを検出する上位のセンサーである。第3~第6センサー45c~45fは、キャリア付き単板19の上下方向位置が下降してたるみ量が設定値よりも増加したことを検出する下位のセンサーである。
【0050】
本実施例において、上位のセンサーは、第2センサー45bのみであるが、上下に複数備え、複数のセンサーを選択的に用いることで、次の整列治具25をセットするためのたるみ量の設定値を変更する構成としてもよい。
【0051】
なお、下位のセンサーは、複数のセンサーである第3~第6センサー45c~45fであるが、単一のセンサーによって構成してもよく、少なくとも一つあればよい。
【0052】
第1センサー45aは、キャリア付き単板19の上下方向位置が許容上限外、つまりたるみ量が許容下限外に至ったことを検出し、第7センサー45gは、キャリア付き単板19の上下方向位置が許容下限外、つまりたるみ量が許容上限外に至ったことを検出する。第1センサー45aと第7センサー45gとの間に、第2~第6センサー45b~45fが位置する。
【0053】
制御部41は、第1~第7センサー45a、45b、45c、45d、45e、45f、45gの入力を受ける。制御部41は、第2~第6センサー45b、45c、45d、45e、45fからの入力によりキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲で上下してたるみ量が減少及び増加することを許容する制御を実行する。
【0054】
キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲で上下してたるみ量が減少及び増加することを許容するとは、金型装置3のプレスの速度と積層装置5の積層の速度との調整により、キャリア付き単板19の張りを調整して上下方向位置を設定範囲で上下させる制御で実現できる。
【0055】
かかる制御において、制御部41は、検出に基づいて、積層工程S2の完了手前で、キャリア付き単板19の上下方向位置が上昇してたるみ量が設定値にまで減少する制御を実行する。この制御では、相対的にプレスの速度を遅くすればよい。
【0056】
積層工程S2の完了手前とは、本実施例において環状鉄心片27の積層で積層鉄心29を形成するときに最後から数枚目乃至十数枚目を設定している。この設定は金型装置3のプレス工程の速度、積層装置5の積層工程の速度、第2~第6センサー45b、45c、45d、45e、45fが検出するキャリア付き単板19の上下方向位置(たるみ量の増減)との関係において適宜設定される。
【0057】
積層枚数は、キャリア付き単板19からの切り離し枚数を直接的又は間接的に検出し、或は時間カウントで間接的に検出し、キャリア付き単板19の引き込み長さ及びたるみ量で間接的に検出することで実現できる。
【0058】
このように、ループコントローラ―7は、キャリア付き単板19の上下方向位置と環状鉄心片27の積層枚数とに応じてプレス工程の速度及び積層工程の速度を変更する。
【0059】
[モーターコアの製造方法]
本実施例のモーターコアの製造方法では、プレス工程S1と、積層工程S2とが行われる。
【0060】
図2のように、プレス工程S1では、図1で示すアンコイラー9から供給される帯状の磁性鋼板17を金型装置3に引き込ませ、パンチのショットにより磁性鋼板17にプレス加工する。
【0061】
このプレス加工によりキャリア付き単板19が加工され、連続的に排出される。排出されたキャリア付き単板19は、ガイド21に沿って垂れ下がり、且つループコントローラ―7を経てガイドローラー23によるガイドを介して積層装置5に引き込まれる。
【0062】
積層工程S2では、図3図4で示す整列治具25が交換可能に予めセットされた積層装置5により、整列治具25の上で環状鉄心片27が位置決め積層された積層鉄心29が形成される。
【0063】
この積層工程S2では、積層装置5に順次引き込まれたキャリア付き単板19に対し、パンチによるカットプレスが実行される。このカットプレスにより連結部31から円弧状鉄心片33が切り離される。切り離された円弧状鉄心片33は、整列治具25上にパンチによって押し込まれる。
【0064】
整列治具25は、周方向一定間隔でガイドピン35を備えている。円弧状鉄心片33は、その位置決め孔がガイドピン35に嵌合して位置決められる。一つの円弧状鉄心片33の押し込みが完了すると整列治具25が回転駆動され、次の円弧状鉄心片33がパンチにより押し込まれる。
【0065】
この工程の繰り返しにより円弧状鉄心片33が整列治具25上に環状に並べられる。これにより環状鉄心片27が形成され、整列治具25上に位置決められる。こうして位置決められた環状鉄心片27の上に円弧状鉄心片33が再び環状に並べられ、環状鉄心片27が順次積層される。環状鉄心片27の積層枚数が設定数に達することで積層鉄心29が形成される。
【0066】
こうして積層鉄心29の形成が完了すると、積層装置5が停止され、積層鉄心29が積層された整列治具25が取り出され次の整列治具25がセットされる。この取り出し及びセットは、積層装置5が備えるロボットアーム(図示せず)で環状鉄心片27の積層枚数のカウントにより自動で行われる。
【0067】
この積層鉄心29が積層された整列治具25の取り出しと次の整列治具のセットの間、金型装置3は、稼働を継続し、積層装置5は、停止される。
【0068】
つまり、積層装置5のみを停止させてプレスを維持し、キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲の下限に至るまでの間を利用して、積層鉄心29が積層された整列治具25を取り出し次の整列治具25をセットが行われる。
【0069】
従って、プレス工程S1の金型装置3で排出されたキャリア付き単板19をそのまま積層装置5に引き込んで積層工程を行うことができ、モーターコアの生産性を向上できる。
【0070】
このため、プレス工程S1でのリール交換、積層工程S2でのリール交換の段取りが不要となり、金型装置3のプレス加工のパンチの1ショットに要する時間と積層工程S2のカットプレスのパンチの1ショットに要する時間とを同一又は近似させることもでき、製造能力を高めることができる。
【0071】
このために、図2のようにループコントローラ―7は、キャリア付き単板19のたるみ量を検出し、金型装置3及び積層装置5を制御する。
【0072】
図5は、制御例を示す図表である。
【0073】
図5の「第1センサ~第7センサー」の表示は、図2の第1センサ~第7センサー45a、45b、45c、45d、45e、45f、45gに対応する。
【0074】
図5の「積層率」の表示は、積層鉄心29が積層された整列治具25の取り出しと次の整列治具のセットを行わせるときなどに用いる。この積層率は、環状鉄心片27の整列治具25上への積層済枚数と積層鉄心29の設定積層枚数との関係で次のとおりとなる。
【0075】
積層率=積層済枚数÷設定積層枚数×100(%)
【0076】
図5の「積層率0~90%」は、金型装置3及び積層装置5の通常稼働に対応する。「積層率90~100%」は、積層鉄心29の完了手前から完成した積層鉄心29を有する整列治具25の取り出しと次の整列治具25のセットまでの金型装置3及び積層装置5の稼働、積層装置5の停止に対応する。
【0077】
なお、積層率の区分は、2区分であるが、区分を増加し、各区分の範囲を均等或いは不均等に設定することもできる。
【0078】
図5の「プレス」の表示は、プレス工程S1を意味し、「積層」は、積層工程S2を意味する。
【0079】
図5の「停止」の表示は、プレス工程S1又は積層工程S2の停止を意味する。
【0080】
図5の「プレス」欄の「高」、「中」、「低」の表示は、プレス高速値、プレス中速値、プレス低速値を意味する。これらの速度値は、金型装置3の能力に応じて設定される。
【0081】
図5の「積層」欄の「高」、「中」、「低」の表示は、積層高速値、積層中速値、積層低速値を意味する。これらの速度値は、積層装置5の能力に応じて設定される。
【0082】
なお、プレス低速値は、プレス高速値及びプレス中速値に対して金型装置3のパンチのショット速度が相対的に遅い値である。積層低速値は、積層高速値及び積層中速値に対して、積層装置5のパンチのショット速度が相対的に遅い値である。積層低速値は、プレス低速値に応じて設定される。プレス低速値に応じた設定では、積層低速値がプレス低速値と同一又は近似した値とする。
【0083】
プレス高速値は、プレス低速値及びプレス中速値に対して金型装置3のパンチのショット速度が相対的に速い値である。積層高速値は、積層低速値及び積層中速値に対して、積層装置5のパンチのショット速度が相対的に速い値である。積層高速値は、積層低速値と同様、プレス高速値に応じて設定される。
【0084】
プレス中速値は、金型装置3のパンチのショット速度がプレス高速値とプレス低速値との間の中間の値である。中間の値は、プレス低速値とプレス高速値との間の均等な中央値、或はプレス低速値寄り又はプレス高速値寄りの値とすることができる。
【0085】
積層中速値は、積層装置5のパンチのショット速度が積層高速値と積層低速値との間の中間の値である。中間の値は、積層低速値と積層高速値との間の均等な中央値、或は積層低速値寄り又は積層高速値寄りの値とすることができる。積層中速値は、積層低速値と同様、プレス中速値に応じて設定される。
【0086】
本実施例において、金型装置3によるプレス工程S1の速度と積層装置5による積層工程S2の速度は、最高速度としてプレス高速値及び積層高速値を同一に設定している。プレス工程S1の速度は、プレス加工のパンチの1ショットに要する時間であり、本実施例においてプレス加工のパンチの毎分のショット数である。積層工程S2の速度は、キャリア付き単板19から円弧状鉄心片33を切り離すカットプレスのパンチの1ショットに要する時間であり、本実施例において積層カットプレスのパンチの毎分のショット数単位は(spm)である。
【0087】
なお、プレス工程S1の速度は、金型装置3からのキャリア付き単板19の排出速度としてもよい。積層工程S2の速度も、キャリア付き単板19の引き込み速度としてもよい。
【0088】
本実施例において、プレス工程S1の速度と積層工程S2の速度は、最低速度としてプレス低速値及び積層低速値を設定し、最高速度及び最低速度の中間の速度としてプレス中速値及び積層中速値を設定している。
【0089】
図5のように、積層率0~90%の稼働時に、キャリア付き単板19の上下方向位置が第4センサー45dで検出されている場合に、プレス工程S1の速度及び積層工程S2の速度はプレス高速値及び積層高速値となるように制御される。この制御が基準運転となる。
【0090】
積層鉄心29を積層した整列治具25の取り出しと次の整列治具25のセットと完了までの時間は、積層率に換算すると20%前後である。これに応じ、整列治具25セット完了後の積層工程S2の開始は、キャリア付き単板19の上下方向位置を第5センサー45e又は第6センサー45fが検出する状態からとなる。
【0091】
何らかの原因によりキャリア付き単板19の上下方向位置が上限又は下限を越えると第1センサー45a又は第7センサー45gがこれを検出し、プレス工程S1及び積層工程S2は停止される。
【0092】
ここで、プレス工程S1又は積層工程S2が稼働すると、積層率0~90%の範囲で第2センサー45b~第6センサー45fがキャリア付き単板19の上下方向位置を検出し、プレス工程S1及び積層工程S2を図5のように高、中、低に制御する。
【0093】
この場合、積層率0~90%の稼働時は、キャリア付き単板19の上下方向位置が第4センサー45dで検出されるようにしてプレス高速値、積層高速値が維持される。
【0094】
プレス工程S1及び積層工程S2間の速度の誤差などによりたるみ量が増加し、第5センサー45eがキャリア付き単板19の上下方向位置を検出する場合は、プレス工程S1がプレス中速値に変更される。これにより積層工程S2の速度がプレス工程S1の速度に対して相対的に速くなり、キャリア付き単板19のたるみ量が減少する。
【0095】
たるみ量がさらに増加して、第6センサー45fがキャリア付き単板19の上下方向位置を検出する場合は、プレス工程S1がプレス低速値にさらに変更される。これにより積層工程S2の速度がプレス工程S1の速度に対して相対的にさらに速くなり、キャリア付き単板19のたるみ量がより急速に減少する。
【0096】
逆にたるみ量が減少して、第3センサー45cがキャリア付き単板19の上下方向位置を検出する場合は、積層工程S2が積層中速値に変更される。この変更により、積層工程S2の速度がプレス工程S1の速度に対して相対的に遅くなり、キャリア付き単板19のたるみ量が増加する。
【0097】
たるみ量がさらに減少して、第2センサー45bがキャリア付き単板19の上下方向位置を検出する場合は、積層工程S2が積層低速値にさらに変更される。この変更により積層工程S2の速度がプレス工程S1の速度に対して相対的にさらに遅くなり、キャリア付き単板19のたるみ量がより急速に増加する。
【0098】
こうして、積層率0~90%の稼働時に、キャリア付き単板19の上下方向位置が第4センサー45dで検出されるようにしてプレス高速値、積層高速値が維持される。
【0099】
従って、積層鉄心29の製造能率を向上させることができる。
【0100】
一方、積層工程S2が積層鉄心29の形成完了手前、例えば積層率90%になるとプレス工程S1がプレス低速値に変更される。このプレス低速値への変更は、キャリア付き単板19の上下方向位置が第2~第5センサー45b~45eで検出されている場合となる。キャリア付き単板19の上下方向位置が第6センサー45fで検出されている場合は、プレス低速値がそのまま維持される。
【0101】
この制御により、積層工程S2の速度がプレス工程S1の速度に対して相対的に速くなり、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値となるように減少する。この設定値への減少を本実施例では第2センサー45bが検出する。
【0102】
キャリア付き単板19のたるみ量が設定値まで減少したとき、積層工程S2の速度をプレス低速値に応じて設定された積層低速値とする。
【0103】
この制御が行われるタイミングで、キャリア付き単板19の上下方向位置が既に第2センサー45bで検出されているときは、プレス工程S1がプレス低速値に変更され稼働制御されるだけであり、積層工程S2の積層低速値はそのまま維持される。
【0104】
この状態で整列治具25の取り出し及びセットのためにプレス工程S1の稼働を継続したまま積層工程S2を停止すると、キャリア付き単板19の上下方向位置が許容される設定範囲内の下限に近い状態(たるみ量が許容される上限に近い状態)となる。
【0105】
このため、キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲内の下限まで下降する時間を利用して、整列治具25の取り出し及びセットをプレス工程S1の稼働を継続したまま円滑に行わせることができる。
【0106】
図5のように、積層鉄心29の形成完了手前で上下方向位置が第3センサー45cで検出されているときは、積層工程S2の速度が積層中速値で制御される。ただし、積層工程S2の速度は、積層高速値としてもよい。そして、たるみ量が設定値に減少するまでプレス低速値は維持される。
【0107】
また、積層鉄心29の形成完了手前で、上下方向位置が第4~第6センサー45d~45fで検出されているときは、積層工程S2の速度が積層高速値で制御される。
【0108】
この場合、キャリア付き単板19のたるみ量が積層中速値により減少する範囲を積層中速範囲として設定する。たるみ量が積層中速範囲に至るまでプレス低速値は維持される。
【0109】
従って、たるみ量の設定値までの減少を迅速且つ円滑に行わせることができる。キャリア付き単板19のたるみ量が設定値に減少するまでは、積層中速値、積層高速値により積層工程S2を実行させることで製造能率を向上させることができる。
【0110】
こうして、金型装置3と積層装置5との間でプレス工程S1の速度と積層工程S2の速度との相違により、キャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲で上下することによるたるみ量の減少及び増加を許容する。
【0111】
積層工程S2の完了手前でプレス工程S1の速度を相対的に遅くしてキャリア付き単板19の上下方向位置を設定範囲内で上昇させた後、プレス工程S1を維持しながらキャリア付き単板19の上下方向位置が設定範囲の下限に至るまでに整列治具25の取出し及びセットを円滑に行わせることができる。
【0112】
従って、金型装置3と積層装置5との間でキャリア付き単板19のたるみを利用して、プレス工程S1を止めずに積層鉄心29が積層された整列治具25を取り出し次の整列治具25をセットでき、金型装置3の駆動と停止の繰り返しを抑制して保護を図ることができる。しかも、金型装置3は、高、中、低を設定して速度変化を徐々に行わせるから、より耐久性を向上させることができる。
【0113】
また、図2のように、キャリア付き単板19の上下方向位置と環状鉄心片27の積層枚数とに応じて、金型装置3によるプレス工程S1の速度及び積層装置5による積層工程S2の速度を変更することができる。このため、金型装置3と積層装置5との間の距離を短くしてキャリア付き単板19の上下方向位置及びたるみ量をコントロールすることができる。
【0114】
これに対し、図1(B)のように、比較例の巻取式のモーターコアの製造装置1Aは、金型装置3Aから排出されたキャリア付き単板19をリール37に巻き取る必要がある。巻取が終了したリール37を積層装置5Aにセットして積層工程を実行させ、積層装置5Aから溶接装置11Aに積層鉄心受け入れて溶接を行わせる。
【0115】
このため、プレス工程でのリール交換、積層工程でのリール交換の段取りが必要となり、生産性の低下は避けられない。
【0116】
比較例の他に金型装置3と積層装置5とを連結した例も存在する。この例では実施例で採用したループコントローラ―7が存在せず、キャリア付き単板19のたるみ量の制御ができない。
【0117】
このため、積層鉄心29を積層した整列治具25の取り出しと次の整列治具のセットとを行わせる際には、金型装置3及び積層装置5共に停止させる必要がある。従って、金型装置3は、駆動と停止とを繰り返す必要があり、寿命が減少する。
【0118】
[変形例1]
図6は、変形例に係る制御例を示す図表である。
【0119】
変形例1においても、積層率0~90%の稼働時における制御は、上記同様である。
【0120】
一方、変形例1では、図6のように、積層工程S2の完了手前で積層工程S2の速度が設定された積層高速値に変更されて稼働制御される。
【0121】
この変更は、キャリア付き単板19の上下方向位置が第2、第3センサー45b、45cで検出されている場合となる。キャリア付き単板19の上下方向位置が第4~第6センサー45d~45fで検出されている場合は、積層高速値がそのまま維持される。
【0122】
かかる制御により、積層工程S2の速度がプレス工程S1の速度に対して相対的に速くなり、キャリア付き単板19のたるみ量が設定値となるように減少する。このたるみ量の設定値への減少を第2センサー45bが検出する。
【0123】
キャリア付き単板19のたるみ量が設定値まで減少したとき、プレス工程S1の速度を設定されたプレス高速値とする。
【0124】
この制御が行われるタイミングで、キャリア付き単板19の上下方向位置が既に第2センサー45bで検出されているときは、積層工程S2が積層高速値に変更されるだけであり、プレス工程S1のプレス高速値がそのまま維持される。
【0125】
従って、取り出し及びセットのためにプレス工程S1の稼働を継続したまま積層工程S2を停止したとき、キャリア付き単板19の上下方向位置が許容される設定範囲内の上限に近い状態となる。
【0126】
このため、取り出し及びセットをプレス工程S1の稼働を継続したまま円滑に行わせることができる。
【0127】
図6のように、変更が行われるタイミングで、たるみ量が第3センサー45cで検出されているときは、プレス工程S1の速度がプレス中速値で制御される。ただし、プレス工程S1の速度は、プレス高速値としてもよい。そして、たるみ量が設定値に減少するまで積層高速値は維持される。
【0128】
また、変更制御が行われるタイミングで、キャリア付き単板19の上下方向位置が第4~第6センサー45d~45fで検出されているときは、プレス工程S1の速度がプレス低速値で制御される。この場合、キャリア付き単板19のたるみ量がプレス中速値により減少する範囲をプレス中速範囲として設定する。たるみ量がプレス中速範囲に至るまでプレス低速値は維持される。プレス工程S1の速度のプレス低速値は、プレス中速値よりも遅い範囲で設定されている。
【0129】
従って、たるみ量の設定値までの減少を迅速に行わせることができる。設定値まで減少したたるみ量の急激な増加を抑制しながら、プレス高速値及び積層高速値により製造能率を高めることができる。
【0130】
[変形例2]
図7は、実施例に係り、変形例2の制御の例を示す図表である。
【0131】
本変形例2においても、積層率0~90%の稼働時における制御は、上記同様である。
【0132】
一方、本変形例2では、積層装置5の能力に余裕があり、積層高速値より速い積層最高速値を設定した。
【0133】
図7のように、積層工程S2が積層鉄心29の形成完了手前でプレス工程S1の速度を設定されたプレス高速値とすると共に積層工程S2の速度を設定された積層最高速値とする。
【0134】
プレス工程S1の速度の変更は、キャリア付き単板19の上下方向位置が第5、第6センサー45e、45fで検出されている場合となる。キャリア付き単板19の上下方向位置が第2~第4センサー45b~45dで検出されている場合は、プレス高速値がそのまま維持される。
【0135】
積層工程S2の変更制御が行われるタイミングで、キャリア付き単板19の上下方向位置が第3~第6センサー45c~45fで検出されている場合に積層最高速値への設定となる。キャリア付き単板19の上下方向位置が既に第2センサー45bで検出されている場合は、積層高速値に変更される。
【0136】
キャリア付き単板19のたるみ量が設定値まで減少したとき、プレス高速値を維持しつつ積層工程S2の速度を積層最高速値からプレス高速値に応じて設定された積層高速値とする。
【0137】
ただし、キャリア付き単板19の上下方向位置が既に第2センサー45bで検出されている場合は、積層高速値がそのまま維持される。
【0138】
従って、たるみ量の設定値までの減少を迅速に行わせることができる。設定値まで減少したたるみ量の急激な増加を抑制しながら、プレス高速値及び積層最高速値により製造能率を高めることができる。
【符号の説明】
【0139】
1 製造装置
3 金型装置
5 積層装置
7 ループコントローラ―
17 帯状の磁性鋼板
S1 プレス工程
19 キャリア付き単板
S2 積層工程
25 整列治具
27 環状鉄心片
29 積層鉄心
33 円弧状鉄心片
39 検出部(検出装置)
41 制御部(制御装置)
45a~45g 第1~第7センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7