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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-28
(45)【発行日】2025-06-05
(54)【発明の名称】密閉式混練機
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20250529BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20250529BHJP
   F16N 29/04 20060101ALI20250529BHJP
   F16J 15/34 20060101ALI20250529BHJP
   F16J 15/28 20060101ALI20250529BHJP
   B29B 7/20 20060101ALI20250529BHJP
   B29B 7/22 20060101ALI20250529BHJP
【FI】
B29B7/28
F16N7/38 B
F16N7/38 F
F16N29/04
F16J15/34 H
F16J15/28
B29B7/20
B29B7/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024040124
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2025-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】財前 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078297(JP,A)
【文献】特許第5356045(JP,B2)
【文献】特許第6526439(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/28
F16N 7/38
F16N 29/04
F16J 15/34
F16J 15/28
B29B 7/20
B29B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被混練物を収容するチャンバを内部に有するケーシングと、
前記チャンバの外部に延びるロータ軸部と前記チャンバの内部に配置される混練翼部とを含み、回転することで前記被混練物を前記チャンバ内で混練する混練ロータと、
前記ケーシングに昇降可能に設けられ、前記チャンバに投入された前記被混練物を押し込むウェイトと、
前記チャンバ内の前記被混練物が前記チャンバの外部に漏出することを防止する漏出防止部と、
前記漏出防止部に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、を備え、
前記漏出防止部は、前記ロータ軸部を囲むように前記ケーシングに取り付けられた固定側シール部材と、前記固定側シール部材に対向するように前記ロータ軸部に取り付けられ、前記固定側シール部材に対して摺動しながら回転可能な回転側シール部材と、を含み、
前記潤滑油供給機構は、前記被混練物を前記チャンバの内部に取り込む材料取込期間において、前記漏出防止部に供給する潤滑油の供給量を増加させる、密閉式混練機。
【請求項2】
前記材料取込期間において、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間に加える圧力を増加させるシール加圧機構を、さらに備える、請求項1に記載の密閉式混練機。
【請求項3】
前記材料取込期間は、前記被混練物を前記チャンバに投入後、前記ウェイトが所定の下限位置に到達するまでの間のうち、前記ウェイトが前記被混練物を押し込む期間の少なくとも一部を含む、請求項1または2に記載の密閉式混練機。
【請求項4】
前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間のシール間隔を測定するシール間隔測定部と、前記シール間隔測定部が測定した前記シール間隔が所定値以上になった際に警告を出す材料漏れ警告部をさらに備える、請求項1または2に記載の密閉式混練機。
【請求項5】
前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間のシール間隔を測定するシール間隔測定部をさらに備え、
前記シール間隔測定部が測定した前記シール間隔が所定値以上になった際に、前記シール加圧機構は、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間に加える圧力をさらに増加する、請求項2に記載の密閉式混練機。
【請求項6】
前記シール加圧機構は、前記固定側シール部材を前記回転側シール部材に向かって押し付ける押付部を有し、
前記潤滑油供給機構は、前記固定側シール部材を貫通し、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間に潤滑油を供給する注油口を有し、
前記注油口は、前記固定側シール部材のうち前記押付部よって押圧される部位付近に形成されている、請求項2に記載の密閉式混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉式混練機の漏出防止部に供給される潤滑油の供給に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム、プラスチックなどの被混練物を各種添加剤とともに混練する密閉式混練機が知られている。特許文献1には、このような密閉式混練機として、チャンバと、一対の混練ロータとを、有するものが開示されている。チャンバは、混練室を形成し、一対の混練ロータは、混練室に並んで配置されて回転する。一対の混練ロータとチャンバとの間で被混練物にせん断力が付与され、前記被混練物が混練される。
【0003】
また、特許文献1に記載された技術では、混練ロータとチャンバとの間の漏出防止部(シール部ともいう)に潤滑油を供給する潤滑油供給機構を備え、被混練物の混練中に漏出防止部の温度を測定し、測定された温度に基づいて潤滑油の供給量を調整している。
【0004】
また、特許文献2に記載された技術では、混練ロータとチャンバとの間の漏出防止部に潤滑油を供給する潤滑油供給装置を備え、漏出防止部に供給される潤滑油の供給量を、混練ロータの回転数に応じて調整している。
【0005】
また、特許文献3に記載された技術では、混練ロータと一体に回転する回転側シール部材と、混練ロータのロータ軸を回転自在に貫挿するリング状の固定側シール部材と、を備え、固定側シール部材と回転側シール部材との間に潤滑油を供給する潤滑油供給機構をさらに備えている。
【0006】
また、特許文献4に記載された技術では、混練ロータとチャンバとの間の漏出防止部に潤滑油を供給する潤滑油供給機構を備え、チャンバから被混練物を取り出した待機モード中は、チャンバ内に被混練物がある場合に比べて、潤滑供給機構から供給される潤滑油の供給量を少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-98316号公報
【文献】特許第6526439号
【文献】特許第5356045号
【文献】特開2016-78297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1~特許文献4に記載の混練機は、何れも混練ロータとチャンバとの間の漏出防止部に潤滑油を供給することで、漏出防止部の摩耗を抑制している。ところで、環境や運用コストの観点から、漏出防止部に供給される潤滑油の供給量を少なくすることが望ましい。これに対して、例えば特許文献1に記載の技術では、漏出防止部に常に一定の押付圧がかかるため、押付圧が必要ない条件のときでも漏出防止部の摩耗を抑制するために所定量以上の潤滑油を供給し続ける必要がある。また、特許文献2に記載の技術では、混練ロータの最大回転数の50%に到達するまでの期間に潤滑油の供給量を低減することは記載されているものの、被混練物を混練する一連の混練工程の中で潤滑油の供給量を低減することについて何ら考慮されていない。また、特許文献4には、チャンバから被混練物を取り出した待機モード中に潤滑油の供給量を低減することが記載されているものの、被混練物を混練する一連の混練工程の中で潤滑油の供給量を低減することについて何ら考慮されていない。なお、特許文献3には、潤滑油の供給量を調整することについて何ら記載されていない。
【0009】
本発明の目的は、漏出防止部の摩耗を低減しつつ当該漏出防止部に供給される潤滑油の供給量を低減できる、密閉式混練機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行い、被混練物をチャンバの内部に取り込む材料取込期間は、被混練物の混練工程における他の期間に比べて漏出防止部から被混練物が漏出しやすい一方で、材料取込期間以外の他の期間は、被混練物が漏出防止部から漏出しにくく潤滑油の供給量が少なくても済むことを発見し、本発明に至った。
【0011】
第1の態様にかかる密閉式混練機は、被混練物を収容するチャンバを内部に有するケーシングと、前記チャンバの外部に延びるロータ軸部と前記チャンバの内部に配置される混練翼部とを含み、回転することで前記被混練物を前記チャンバ内で混練する混練ロータと、前記ケーシングに昇降可能に設けられ、前記チャンバの投入された前記被混練物を押し込むウェイトと、前記チャンバ内の前記被混練物が前記チャンバの外部に漏出することを防止する漏出防止部と、前記漏出防止部に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、を備え、前記漏出防止部は、前記ロータ軸部を囲むようにケーシングに取り付けられた固定側シール部材と、前記固定側シール部材に対向するように前記ロータ軸部に取り付けられ、前記固定側シール部材に対して摺動しながら回転可能な回転側シール部材と、を含み、前記潤滑油供給機構は、前記被混練物を前記チャンバの内部に取り込む材料取込期間において、前記漏出防止部に供給する潤滑油の供給量を増加させる。
【0012】
第1の態様によれば、漏出防止部から被混練物が漏出しやすい材料取込期間において、漏出防止部に供給する潤滑油の供給量を増加させるため、漏出防止部からの被混練物の漏出を抑制しつつ漏出防止部の摩耗を低減することができる。また、材料取込期間以外の期間は、材料取込期間に比べて被混練物が漏出しにくいため、この期間に漏出防止部に供給する潤滑油の供給量を少なくすることで、潤滑油の供給量を低減することができる。
【0013】
第2の態様は、第1の態様にかかる密閉式混練機において、さらに次の特徴を備えることが望ましい。すなわち、第2の態様にかかる密閉式混練機は、前記材料取込期間において前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間に加える圧力を増加させるシール加圧機構を、さらに備える。第2の態様によれば、材料取込期間は、被混練物が漏出防止部から漏出しやすいため、材料取込期間において、シール加圧機構によって固定側シール部材と回転側シール部材との間に加える圧力を増加させることで、被混練物の漏出防止部からの漏出を抑制できる。また、材料取込期間は、他の期間に比べて漏出防止部に供給される潤滑油の供給量が増加するため、固定側シール部材と回転側シール部材との間の圧力が増加しても、漏出防止部の摩耗を低減することができる。
【0014】
第3の態様は、第1または第2の態様にかかる密閉式混練機において、さらに次の特徴を備えること望ましい。すなわち、第3の態様にかかる密閉式混練機では、前記材料取込期間は、前記被混練物を前記チャンバに投入後、前記ウェイトが所定の下限位置に到達するまでの間のうち、前記ウェイトが前記被混練物を押し込む期間の少なくとも一部を含む。第3の態様によれば、被混練物をチャンバに投入後、ウェイトが所定の下限位置に到達するまでの期間のうち、ウェイトが被混練物を押し込む期間において被混練物が漏出防止部から最も漏出しやすいため、材料取込期間は、上記期間の少なくとも一部を含むことで、被混練物の混練工程における漏出防止部への潤滑油の供給量を適切な配分にし、混練工程における潤滑油の供給量を低減することができる。
【0015】
第4の態様は、第1~第3の態様の何れか1にかかる密閉式混練機において、さらに次の特徴を備えることが望ましい。すなわち、第4の態様にかかる密閉式混練機では、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間のシール間隔を測定するシール間隔測定部と、前記シール間隔測定部が測定した前記シール間隔が所定値以上になった際に警告を出す材料漏れ警告部を、さらに備える。固定側シール部材と回転側シール部材との間のシール間隔が大きくなると被混練物が漏出防止部から漏出する虞がある。これに対して、第4の態様によれば、シール間隔が所定値以上になった際に材料漏れ警告部から警告が出されることで、被混練物の漏出の予兆を検知することができる。
【0016】
第5の態様は、第2~第4の態様の何れか1にかかる密閉式混練機において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第5の態様にかかる密閉式混練機では、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間のシール間隔を測定するシール間隔測定部をさらに備え、前記シール間隔測定部が測定した前記シール間隔が所定値以上になった際に、前記シール加圧機構は、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間に加える圧力をさらに増加する。第5の態様によれば、シール間隔に基づいて漏出防止部から被混練物が漏出する虞があることを検知すると、固定側シール部材と回転側シール部材との間の圧力をさらに増加させるため、被混練物の漏出を抑制することができる。
【0017】
第6の態様は、第2または第5の態様にかかる密閉式混練機において、前記シール加圧機構は、前記固定側シール部材を前記回転側シール部材に向かって押し付ける押付部を有し、前記潤滑油供給機構は、前記固定側シール部材を貫通し、前記固定側シール部材と前記回転側シール部材との間に潤滑油を供給する注油口を有し、前記注油口は、前記固定側シール部材のうち前記押付部よって押圧される部位付近に形成されている。第6の態様によれば、固定側シール部材および回転側シール部材のうち摩耗しやすい部位に集中して潤滑油が供給されるため、潤滑油が効率よく供給されることとなり、潤滑油の供給量を一層少なくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、漏出防止部の摩耗を低減しつつ漏出防止部に供給される潤滑油の供給量を低減できる、密閉式混練機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る密閉式混練機の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る密閉式混練機の漏出防止部を示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る密閉式混練機の漏出防止部への給油構造を模式的に示す斜視図である。
図4】被混練物の混練工程におけるウェイトの位置の変化を説明するタイムチャートである。
図5】混練工程における潤滑油の供給量および押付圧の変化を説明するタイムチャートである。
図6】材料取込期間において被混練物の漏出が発生した場合および発生しなかった場合のシール間隔の挙動を説明するタイムチャートである。
図7】被混練物の混練工程における電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[全体構造]
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る混練機1(密閉式混練機)について説明する。図1は、本実施形態に係る混練機1の断面図である。図2は、混練機1の漏出防止部100を示す正面図である。図3は、混練機1の漏出防止部100への給油構造を模式的に示す斜視図である。
【0021】
図1を参照して、混練機1は、一対の混練ロータ2と、ケーシング3と、チャンバ4と、ウェイト5と、ドロップドア6と、を備える。チャンバ4は、ケーシング3内に形成され、高分子材料などからなる被混練物を内部に収容するための空間部である。
【0022】
一対の混練ロータ2は、回転することで被混練物をチャンバ4内で混練する。各混練ロータ2は、ロータ軸部2Aと、混練翼部2Bとを有する。ロータ軸部2Aは、チャンバ4の外部に延びるとともに、ケーシング3に回転可能に支持されている。混練翼部2Bは、チャンバ4の内部に配置され、ロータ軸部2Aから径方向外側に突設された翼部である。混練翼部2Bは、回転によって被混練物にせん断力を付与する。
【0023】
ケーシング3の内面壁は、図1に示す縦断面でまゆ型形状に形成されており、このケーシング3のうち図1の紙面と直交する方向の両側面には、図2に示すようにエンドプレート8がそれぞれ接合されている。この結果、左右一対の混練室4aを含むチャンバ4が、被混練物を内部に収容できるように形成されている。
【0024】
また、ケーシング3の上側中央部には、被混練物をチャンバ4に投入する投入口3aが形成されている。そして、ケーシング3の投入口3aには、チャンバ4に投入された被混練物をチャンバ4の混練室4a内に押し込むウェイト5が昇降可能に設けられている。一方、チャンバ4の下側中央部には、所望の混練状態となった被混練物を外部に排出できるように、排出口3bが形成されているとともに、この排出口3bを開閉するドロップドア6が設けられている。そして、これらウェイト5およびドロップドア6は、混練時にケーシング3に密接することによって、チャンバ4の内壁面の一部を構成するようになっている。
【0025】
ウェイト5は、実線で示す下限位置Plowと二点鎖線で示す上限位置Phiとの間を昇降可能に構成されている。上限位置Phiは、ウェイト5が上昇可能な上限の位置であり、ウェイト5が上限位置Phiに移動すると、投入口3aが開口して投入口3aからチャンバ4内に被混練物を投入可能になる。下限位置Plowは、ウェイト5が降下可能な下限の位置であり、ウェイト5が下限位置Plowまで降下すると、被混練物が混練室4a内に密閉状態で充填される。ウェイト5は、例えばシリンダ機構、ボールねじなどによって昇降可能に構成されてもよく、他の機構によって昇降可能に構成されていてもよい。
【0026】
[漏出防止部の構造]
混練機1は、図2および図3に示す漏出防止部100を更に備える。漏出防止部100は、チャンバ4の混練室4a内に充填された被混練物が、混練ロータ2の端部から混練室4aの外部へ漏出することを防止するためのダストシール(シール部)として機能する。
【0027】
漏出防止部100は、回転側シール部材9と、固定側シール部材10と、複数の冷却水配管16と、複数の潤滑油配管18と、ヨーク20と、一対のヨークピン21と、ヨーク鋲22と、油圧シリンダ23と、を有する。更に、混練機1は、漏出防止部100に潤滑油を供給する潤滑油供給機構50を有する(図3参照)。
【0028】
固定側シール部材10は、リング形状を有し、ロータ軸部2Aを囲むようにケーシング3に取り付けられている。回転側シール部材9は、リング形状を有し、固定側シール部材10に対向するようにロータ軸部2Aに取り付けられている。回転側シール部材9は、固定側シール部材10に対して摺動しながらロータ軸部2Aと一体で回転可能とされている。換言すれば、回転側シール部材9が回転するのに対し、固定側シール部材10は回転しない。そして、回転側シール部材9および固定側シール部材10は、互いに対向するリング状の対向面(摺動面、シール面)を有する。
【0029】
固定側シール部材10は、被混練物や潤滑油を外部に漏出させないように、その混練ロータ2側において不図示のシールリングを介してエンドプレート8に液密状態に嵌合されている。また、図2に示すように、エンドプレート8には、冷却水配管16および潤滑油配管18がそれぞれ接続されており、冷却水配管16に冷却水が流入されることにより固定側シール部材10が冷却される。また、図3の潤滑油供給機構50から各潤滑油配管18に潤滑油が流入されることによって、固定側シール部材10および回転側シール部材9の各々の対向面が互いに摺動する摺動部14に潤滑油が供給される。
【0030】
ここで、回転側シール部材9および固定側シール部材10の各対向面は、例えば、硬質肉盛金属により形成されている。なお、これらの対向面に適用できる材料としては、各種鋼、銅合金の他、セラミックスや焼結カーボンなどの油含浸していない材料、砲金や鋳鉄、焼結金属などの油含浸金属を挙げることができる。
【0031】
ヨーク20は、油圧シリンダ23の作動力を、固定側シール部材10に伝えるための板材であり、一方の端部に油圧シリンダ23が取り付けられ、二股に分かれた他方の端部にはそれぞれヨークピン21が取り付けられている。また、ヨーク20の二股に分かれる部分(ヨーク20のほぼ中心部分)にはヨーク鋲22が貫挿され、このヨーク鋲22を支点としてヨーク20が揺動する。また、ヨーク鋲22は前記エンドプレート8に固設されており、ヨーク鋲22においてヨーク20がエンドプレート8に支持されている。また、2つのヨークピン21の先端部は、固定側シール部材10のうちロータ軸部2A外側の端面に形成された穴にそれぞれ嵌められている。
【0032】
固定側シール部材10は、ヨーク20の二股に分かれた端部にそれぞれ取り付けられたヨークピン21により、その回転が防止される。なお、油圧シリンダ23により、ヨーク20を介してヨークピン21が固定側シール部材10に押し付けられることによって、固定側シール部材10の回転はより確実に防止される。また、固定側シール部材10は、ヨークピン21を介して回転側シール部材9に向かって押し付けられることで、固定側シール部材10と回転側シール部材9との間の摺動部14から被混練物が漏出することが抑制される。なお、ヨークピン21が、本発明の固定側シール部材を回転側シール部材に向かって押し付ける押付部に対応する。
【0033】
油圧シリンダ23は、図略のシリンダ本体およびピストンロッドを有し、その内部に作動油の給排を受けることで、前記ピストンロッドが直線運動するリニアアクチュエータである。上記ヨーク20、一対のヨークピン21、ヨーク鋲22、および油圧シリンダ23を含んで、固定側シール部材10と回転側シール部材9との間に押付圧Psを付与する押付機構48(シール加圧機構)が構成される。
【0034】
油圧シリンダ23のシリンダ内における作動油の油圧は、油圧制御弁24によって調整可能とされている。油圧制御弁24は、油圧発生装置26によって発生させられた油圧を元圧にして、油圧シリンダ23に供給される作動油の油圧を制御する。油圧制御弁24は、電子制御装置28から出力される油圧信号に基づいて作動油の油圧を制御する。
【0035】
電子制御装置28は、図略の中央演算処理装置(CPU)と、図略のROMおよびRAM等の記憶装置と、を含むコンピュータで構成され、例えば油圧シリンダ23に供給される作動油の油圧制御を含む各種処理を実行する。電子制御装置28には、ポジションセンサ30によって検出されるウェイト5の位置であるウェイトポジションPo表す信号、押付圧検出センサ32によって検出される固定側シール部材10と回転側シール部材9との間に加えられる押付圧Ps(シール圧)を表す信号、渦電流センサ34によって測定される固定側シール部材10と回転側シール部材9との間のシール間隔Sを表す信号などの各種信号が入力される。押付圧検出センサ32は、油圧シリンダ23の作動油の油圧を検出し、その油圧に基づいて前記押付圧Psを算出するものであってもよい。なお、渦電流センサ34は、本発明のシール間隔を測定するシール間隔測定部に対応する。
【0036】
図3に示すように、潤滑油供給機構50は、モータ51と、給油機構52と、潤滑油タンク53と、油量調整機構54と、コントローラ60とを有する。
【0037】
給油機構52は、クランクシャフト52Aと、当該クランクシャフトの3つのクランク部にそれぞれ接続された3つの吐出シリンダ52B(プランジャ)と、を有する。モータ51は、コントローラ60からの指令信号を受けて回転し、給油機構52内のクランクシャフト52Aを回転させる。各吐出シリンダ52Bは、プランジャポンプに相当し、潤滑油タンク53から潤滑油を吸引し、前記クランクシャフト52Aの回転に伴って前記潤滑油を漏出防止部100に向かって吐出する。この際、図2の潤滑油配管18を通じて潤滑油が供給され、固定側シール部材10に形成された注油口18Aに前記潤滑油が流入する。また、注油口18Aは固定側シール部材10を貫通して回転側シール部材9との間の摺動部14に連通している。これにより、潤滑油が、注油口18Aを経由して摺動部14に供給される。この結果、摺動部14に潤滑油層W(図3)が形成される。なお、前記クランクシャフト52Aの3つのクランク部は、回転方向に沿って120度間隔に配置されており、互いに等間隔の位相差が設定されている。
【0038】
油量調整機構54は、給油機構52のクランクシャフト52Aが1回転する際の、吐出シリンダ52Bのピストンのストロークを調整するものであり、この結果、各吐出シリンダ52Bからの潤滑油の吐出量が調整される。油量調整機構54は、作業者によって操作されてもよいし、コントローラ60から受ける指令信号に応じて、前記ピストンのストロークを調整するものでもよい。
【0039】
図3に示すように、本実施形態では、固定側シール部材10に形成された3箇所の注油口18Aから固定側シール部材10と回転側シール部材9との間の摺動部14に潤滑油が供給される。この際、潤滑油供給機構50のクランクシャフトの3つのクランク部の位相差によって、各注油口18Aに潤滑油が順に供給される。
【0040】
潤滑油供給機構50は、回転側シール部材9と固定側シール部材10との間の摺動部14に潤滑油を間欠的に供給するように、潤滑油の供給動作と停止動作とを周期的に繰り返す。これにより、摺動部14に潤滑油を連続して供給し続ける場合に比べて、摺動部14に供給される潤滑油の全体の供給量Rを減らしつつ、摺動部14に必要なシール間隔S(油膜厚み)を安定して維持することができる。この結果、潤滑油の供給量Rが減少することによって、廃油による環境への影響が少なくなり、混練機1のランニングコストを低減することも可能になる。さらに、本実施形態では、潤滑油供給機構50によって潤滑油を間欠的に供給するため、パルス的な供給作用によって摺動部14における瞬間的な油の流出を防止することが可能になり、より潤滑効果を高めることができる。
【0041】
また、図3に示すように、前記3箇所の注油口18Aのうちの2箇所の注油口18Aは、固定側シール部材10のうちヨークピン21によって押圧される部位付近に形成されている。これにより、回転側シール部材9および固定側シール部材10の間の摺動部14のうち摩耗しやすい部位に集中して潤滑油が供給されるため、潤滑油の供給量Rを一層少なくすることも可能になる。なお、ヨークピン21によって押圧される部位付近の定義の一例として、周方向における2つのヨークピン21の中点に対して、注油口18Aと前記中点との周方向における距離よりも、注油口18Aとヨークピン21との周方向における距離の方が小さい場合を例示することができる。また、注油口18Aとヨークピン21との周方向における距離が、前記中点とヨークピン21との周方向における距離の30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下となるように、注油口18Aが配置される。
【0042】
上記のように、漏出防止部100は、潤滑油供給機構50を介して回転側シール部材9と固定側シール部材10との間の摺動部14に潤滑油を供給しつつ、押付機構48によって固定側シール部材10を回転側シール部材9に向かって押圧する。これにより、回転側シール部材9と固定側シール部材10との間の押付圧Ps(シール圧)を、被混練物の漏出が抑制される値とすることで、漏出防止部100からの被混練物の漏出を抑制できる。
【0043】
次に、被混練物の混練工程について説明する。図4は、被混練物の混練工程におけるウェイト5の位置であるウェイトポジションPoの位置を説明するタイムチャートである。図4において、横軸は時間t[sec]を示し、縦軸はウェイト5の上下方向の位置であるウェイトポジションPo[mm]を示している。
【0044】
図4に示す期間Aは、チャンバ4内に被混練物を投入する期間である。期間Aにおいて、ウェイト5が上限位置Phiに位置することで、被混練物をチャンバ4内に投入することができる。このとき、フィラーなどの添加剤が適宜添加されてもよい。期間Bは、チャンバ4内に被混練物を投入した後、ウェイト5が降下を開始した時点からウェイト5が下限位置Plowに到達するまでの期間、すなわち被混練物を混練室4a内に取り込む材料取込期間である。期間Cは、材料取込後にウェイト5を一時的に上昇させるウェイト上下期間である。期間Dは、チャンバ4の混練室4a内で被混練物を混練する材料混練期間である。期間Eは、ドロップドア6を外してチャンバ4内の被混練物を取り出す材料排出期間である。
【0045】
期間Aにおいてチャンバ4に被混練物が投入された直後は、ウェイト5が上限位置Phiに位置している。このとき、被混練物の充填量がチャンバ4の混練室4aの容量よりも大きく、被混練物が投入口3a付近まで溢れた状態になる。期間Bでは、ウェイト5が上限位置Phiから降下し、ウェイト5が被混練物を混練室4a内に向かって押し込む。期間Cにおいてウェイト5が一時的に上昇して下限位置Plowまで降下した後、期間Dにおいて被混練物が混練される。期間Bから期間Dの間に被混練物が混練されるに従い、被混練物の容積が徐々に減少し、混練室4aの被混練物の充填率が100%よりも低くなる。期間Eでは、ウェイト5が下限位置Plowに位置した状態で、ドロップドア6を外して排出口3bから被混練物が取り出される。
【0046】
ここで、上述した一連の混練工程のうち、被混練物をチャンバ4の混練室4a内に取り込む材料取込期間(図4において期間Bに相当)において、被混練物が漏出防止部100から漏出しやすいことが確認された。材料取込期間では、被混練物がウェイト5によって混練室4a内に押し込まれる。被混練物をチャンバ4に投入した直後は、被混練物が混練室4aの容積よりも容量が大きくなり、被混練物の混練室4aに対する充填率が100%を超えた状態になる。従って、材料取込期間のウェイト5が降下する過渡期において、ウェイト5が被混練物を押し込む。このとき、被混練物がウェイト5によって押圧されることで、被混練物に外側に向かう力が発生する。この力が固定側シール部材10と回転側シール部材9との間に加わる押付圧Psよりも大きくなることで、被混練物が漏出防止部100から漏出しやすくなると考えられる。
【0047】
材料取込期間における被混練物の漏出を抑制するには、漏出防止部100の回転側シール部材9と固定側シール部材10との間の摺動部14に加える押付圧Psを増加させる必要がある。一方で、前記押付圧Psを増加させると摺動部14が摩耗しやすくなる。これに対して、電子制御装置28は、材料取込期間において、他の期間に比べて摺動部14に加える押付圧Psを増加させる。さらに、電子制御装置28は、潤滑油供給機構50から漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを前記他の期間に比べて増加させる。なお、上記他の期間は、図4における期間A、期間C~期間Eに該当する。
【0048】
電子制御装置28は、漏出防止部100の固定側シール部材10と回転側シール部材9との間の摺動部14に加える押付圧Psを制御する押付圧制御部80、および、潤滑油供給機構50から漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを制御する潤滑油量制御部82を機能的に備えている。
【0049】
押付圧制御部80は、材料取込期間であるか否かを判定する。材料取込期間は、被混練物をチャンバ4に投入した時点から、ウェイト5が下限位置Plowに到達する時点までの期間に設定されている。押付圧制御部80は、例えばポジションセンサ30によって検出されるウェイト5のウェイトポジションPoなどに基づいて、材料取込期間であるか否かを判定する。なお、材料取込期間であるか否かの判定は、潤滑油量制御部82が行ってもよい。
【0050】
上記材料取込期間の開始時点は、例えばウェイト5が降下を始める時点であってもよく、ウェイト5が被混練物と接触する直前の所定位置まで降下した時点であってもよい。上記所定位置は、予め実験等に基づいて求めることができる。または、ウェイト5が実際に被混練物に接触した時点であってもよい。この場合には、例えばウェイト5にかかる負荷を検知するなどして、ウェイト5が被混練物に接触したか否かを判定することができる。
【0051】
また、材料取込期間の終了時点は、材料取込期間の開始時点から予め設定した所定時間が経過した時点であってもよく、ウェイト5が上昇を開始した時点としてもよい。上記所定時間は、ウェイト5が下限位置Plowまで降下するのに必要な時間であり、予め実験等に基づいて求めることができる。このように、材料取込期間は、被混練物をチャンバ4に投入後、ウェイト5が下限位置Plowに到達する時点の間のうち、ウェイト5が被混練物を押し込む期間の少なくとも一部を含んでいればよい。
【0052】
押付圧制御部80は、材料取込期間であった場合、材料取込期間以外の他の期間に比べて漏出防止部100の摺動部14に加える押付圧Psを増加させる。具体的には、押付圧制御部80は、油圧シリンダ23に供給される作動油の油圧を高めることで摺動部14に加える押付圧Psを増加させる。材料取込期間おける押付圧Psは、予め実験的または設計的に求められ、被混練物が漏出防止部100から漏出することを抑制できる値に設定される。その結果、材料取込期間において被混練物が漏出防止部100から漏出することが抑制される。
【0053】
また、漏出防止部100の摺動部14に加える押付圧Psが増加すると、前記摺動部14が摩耗しやすくなる。これに対して、潤滑油量制御部82は、材料取込期間において潤滑油供給機構50から漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを、材料取込期間以外の他の期間に比べて増加させる。潤滑油量制御部82は、材料取込期間において他の期間に比べてモータ51の回転速度を高めたり、油量調整機構54の吐出シリンダ52Bのストロークを増加したりすることで、漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを増加させる。これにより、材料取込期間において摺動部14が摩耗しやすくなるのに対して、漏出防止部100に供給される潤滑油の供給量Rが増加するため、摺動部14の摩耗が低減される。
【0054】
また、材料取込期間以外の他の期間は、材料取込期間に比べて漏出防止部100に加える押付圧Psが小さくなる。押付圧Psが小さくなっても、材料取込期間以外の他の期間は、漏出防止部100から被混練物が漏出しにくいため、材料取込期間と同じく被混練物の漏出が抑制される。さらに、押付圧Psが小さくなると、摺動部14にかかる負荷が小さくなるため摺動部14が摩耗しにくくなる。従って、他の期間において漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを材料取込期間よりも低減することができ、結果的に混練工程における潤滑油の総供給量を低減することができる。
【0055】
図5は、混練工程における潤滑油の供給量R[cc/s]および押付圧Ps[MPa]の変化を説明するタイムチャートである。図5において、横軸は、時間t[sec]を示し、縦軸は、ウェイト5のウェイトポジションPo[mm]、潤滑油の供給量R[cc/s]、押付圧Ps[N]をそれぞれ示している。
【0056】
図5の実線で示すウェイトポジションPoは、前述した図4と同じであるため、その説明を省略する。破線で示す押付圧Psは、材料取込期間(期間B)において他の期間に比べて増加している。具体的には、材料取込期間以外の他の期間における押付圧Psが第2圧Ps2であるのに対して、材料取込期間では、押付圧Psが第2圧Ps2よりも高圧の第1圧Ps1となっている。なお、押付圧Psの第2圧Ps2は、例えば第1圧Ps1の1/3程度であってもよい。同じく、一点鎖線で示す潤滑油の供給量R[cc/s]は、材料取込期間において他の期間に比べて増加している。具体的には、他の期間における供給量Rが第2油量R2であるのに対して、材料取込期間では、第2油量R2よりも多い第1油量R1となっている。なお、供給量Rの第2油量R2は、例えば第1油量R1の1/3程度であってもよい。
【0057】
また、混練工程における押付圧Psおよび潤滑油の供給量Rを、図5に示すように制御した状態で摩耗試験を行ったところ、8時間経過しても摺動部14の摩耗量が1μm以下に抑えられる。このように、材料取込期間以外の他の期間において押付圧Psを低下しつつ潤滑油の供給量Rを減少させても、摺動部14の摩耗が抑えることができる。
【0058】
ところで、摩耗試験において、材料取込期間において被混練物が漏出防止部100から漏出した際には、固定側シール部材10と回転側シール部材9との間のシール間隔Sが大きくなる。図6は、材料取込期間において被混練物の漏出が発生した場合および発生しなかった場合のシール間隔Sの挙動を説明するタイムチャートである。図6において、破線が被混練物の漏出が発生しなかった場合のシール間隔Saを示し、実線が被混練物の漏出が発生した場合のシール間隔Sbを示している。
【0059】
被混練物が漏出しない場合、破線で示すように、材料取込期間(期間B)においてもシール間隔Saは殆ど変化することなく、シール間隔Saが初期の状態を略維持している。一方、被混練物が漏出した場合、実線で示すように、材料取込期間においてシール間隔Sbが変動して一時的に0.4mmを超えている。すなわち、被混練物が漏出した場合、材料取込期間においてシール間隔Sが期間Bの初期値(0.0mm)に比べて0.3mm以上増加している。また、期間Bを過ぎると、シール間隔Sが収束する挙動があることを示している。このことから、シール間隔Sを測定すれば、被混練物の漏出の予兆を検知することができる。
【0060】
そこで、電子制御装置28は、シール間隔Sに基づいて被混練物の漏出の予兆を検知する漏出予兆検知部84を機能的に備えている。漏出予兆検知部84は、材料取込期間において渦電流センサ34によって随時測定されるシール間隔Sが予め設定されている所定値Sth以上になった場合、被混練物が漏出する予兆があると判定する。所定値Sthは、予め実験的または解析的に求められ、被混練物の漏出の虞があると判断できる値に設定されている。漏出予兆検知部84は、被混練物の漏出の予兆を検知した場合、すなわち渦電流センサ34が測定したシール間隔Sが所定値Sth以上になった際に、警報器36から警告音を出力させる。これにより、作業者は、被混練物の漏出の予兆があることを知ることができる。なお、警報器36は、本発明の材料漏れ警告部に対応する。
【0061】
また、押付圧制御部80は、被混練物の漏出の予兆を検知した場合、摺動部14に加える押付圧Psをさらに増加する。このときの押付圧Psは、材料取込期間において設定されている第1圧Ps1よりも高圧の値となる。例えば、押付圧制御部80は、被混練物の漏出の予兆を検出した場合、随時測定されるシール間隔Sと所定値Sthとの差分(=|S-Sth|)を偏差とするフィードバック制御を実行することで、押付圧Psを増加側に補正する。これにより、シール間隔Sに応じて押付圧Psが適切に調整され、被混練物の漏出を確実に抑制することができる。
【0062】
図7は、混練工程における電子制御装置28の制御作動を説明するフローチャートである。図7のフローチャートは、被混練物の混練工程中に摺動部14に加えられる押付圧Psおよび潤滑油の供給量Rを調整する制御を説明している。このフローチャート中は、混練工程中に繰り返し実行される。
【0063】
被混練物の混練が開始されると、電子制御装置28は、材料取込期間であるか否かを判定する(S10)。材料取込期間でない場合(S10においてNo)、電子制御装置28は、押付圧Psを材料取込期間以外の他の期間において設定されている第2圧Ps2に制御する(S60)。さらに、電子制御装置28は、潤滑油の供給量Rを材料取込期間以外の期間において予め設定されている第2油量R2に制御する(S60)。一方、電子制御装置28は、材料取込期間であった場合(S10においてYes)、押付圧Psを他の期間よりも増加させる(S20)。具体的には、電子制御装置28は、押付圧Psを第2圧Ps2よりも高圧の第1圧Ps1に制御する。さらに、電子制御装置28は、潤滑油の供給量Rを他の期間よりも増加させる(S20)。具体的には、電子制御装置28は、供給量Rを第2油量R2よりも多い第1油量R1に制御する。次いで、電子制御装置28は、シール間隔Sが予め設定されている所定値Sth以上になったか否かを判定する(S30)。シール間隔Sが所定値Sth未満であった場合(S30においてNo)、電子制御装置28は、押付圧Psを第1圧Ps1で維持するとともに、供給量Rを第1油量R1で維持する。一方、シール間隔Sが所定値Sth以上であった場合(S30においてYes)、電子制御装置28は、シール間隔Sに応じて押付圧Psをさらに増加する制御を実行する(S40)。これに併せて、潤滑油供給量をさらに増加させてもよい。また、警報器36から警告音を出すこともできる。次いで、電子制御装置28は、材料取込期間以外の他の期間になったかを判定する(S50)。現時点において材料取込期間である場合(S50においてNo)、電子制御装置28は、S30に戻って材料取込期間における制御を継続して実行する。一方、材料取込期間以外の期間になった場合(S50においてYes)、電子制御装置28は、押付圧Psを第2圧Ps2に制御するとともに、潤滑油の供給量Rを第2油量R2に制御する(S60)。
【0064】
[効果]
以上説明したように、混練工程において、他の期間に比べて被混練物が漏出しやすい材料取込期間において、固定側シール部材10と回転側シール部材9との間の摺動部14に加える押付圧Psを増加させることで、被混練物の漏出を抑制する。また、材料取込期間において、潤滑油の供給量Rを併せて増加させることで、材料取込期間に押付圧Psが増加しても漏出防止部100の摩耗を低減する。一方で、材料取込期間以外の他の期間は、材料取込期間に比べて押付圧Psが小さくしても被混練物が漏出しにくいことから、押付圧Psが材料取込期間よりも低圧に制御される。これに応じて潤滑油の供給量Rについても材料取込期間よりも低減することで、混練工程における潤滑油の総供給量を低減することができる。
【0065】
また、固定側シール部材10と回転側シール部材9とのシール間隔Sが所定値Sth以上になった際に、警報器36から警告が出されることで、被混練物の漏出の予兆を検知できる。さらに、シール間隔Sが所定値Sth以上になった際に、押付圧Psをさらに増加するため、被混練物の漏出の予兆を検知した際には、押付圧Psをさらに増加することで被混練物の漏出を抑制することができる。この際に、潤滑油供給量をさらに増加すると、被混練物の漏出を一層抑制することができる。
【0066】
[変形例]
上記実施の形態では、押付機構48は、油圧シリンダ23によってヨーク20を揺動させるものであったが、必ずしも油圧シリンダ23に限定されない。例えば、押付機構48は、油圧シリンダ23に代わって、空気圧シリンダが用いられてもよい。また、ボールねじを介してヨーク20を揺動させたり、バネによってヨーク20を揺動させたりするなど、ヨーク20を揺動させる機構としてシリンダ以外の装置が使用されてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、押付機構48は、ヨーク20を介して固定側シール部材10を回転側シール部材9に向かって押し付けるものであったが、本発明は、必ずしもヨーク20を必要としない。具体的には、押付機構48は、油圧シリンダ(または空気圧シリンダ)、ボールねじ、バネなどによって固定側シール部材10を直接押し付ける構造であってもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、ヨーク20は、ヨークピン21を介して2点で固定側シール部材10を押し付けていたが、固定側シール部材10を押し付ける部位の数は2点に限定さない。例えば、ヨーク20は、3点で固定側シール部材10を押し付けるように構成されてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、固定側シール部材10に3つの注油口18Aが形成されていたが、注油口18Aの数はこれに限定されない。例えば、ヨーク20のヨークピン21近傍に2つの注油口18Aが形成されるものでもよく、4つ以上の注油口18Aが形成されてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、材料取込期間におけるシール間隔Sと所定値Sthとの偏差に基づいて押付圧Psをフィードバック制御していたが、本発明は、必ずしもこれに限定されない。例えばシール間隔Sに対する押付圧Psの関係マップを予め記憶し、材料取込期間中は、その関係マップを参照して押付圧Psを決定するものであってもよい。
【0071】
さらに、上記実施の形態では、期間Cでウェイト5を一時的に上限位置Phiまで上昇させているが、必ずしも上限位置Phiまで上昇させる必要はなく、期間A~期間E以外の工程を付加してもよい。また、上記実施の形態では、図5に示すように期間Dおよび期間Eの押付圧Psと潤滑油供給量Rとを同じ値としているが、各期間に適した値に変更してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:混練機(密閉式混練機)
2:混練ロータ
2A:ロータ軸部
2B:混練翼部
3:ケーシング
4:チャンバ
5:ウェイト
9:回転側シール部材
10:固定側シール部材
18A:注油口
21:ヨークピン(押付部)
34:渦電流センサ(シール間隔測定部)
36:警報器(材料漏れ警告部)
48:押付機構(シール加圧機構)
50:潤滑油供給機構
100:漏出防止部
【要約】
【課題】漏出防止部の摩耗を低減しつつ、当該漏出防止部に供給される潤滑油の供給量を低減できる、密閉式混練機を提供する。
【解決手段】漏出防止部100から被混練物が漏出しやすい材料取込期間において、漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを増加させるため、漏出防止部100からの被混練物の漏出を抑制しつつ漏出防止部の摩耗を低減することができる。また、材料取込期間以外の期間は、材料取込期間に比べて被混練物が漏出しにくいため、この期間において漏出防止部100に供給する潤滑油の供給量Rを少なくすることで、潤滑油の供給量Rを低減することができる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7