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特許7689512運転支援装置、運転支援システム、および運転支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-29
(45)【発行日】2025-06-06
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援システム、および運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20250530BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20250530BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20250530BHJP
【FI】
G05B23/02 301L
C02F1/00 D
C02F1/00 V
G05B23/02 G
G05B23/02 301P
G06Q50/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022186171
(22)【出願日】2022-11-22
(65)【公開番号】P2024075041
(43)【公開日】2024-06-03
【審査請求日】2023-01-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】入来院 浩司
(72)【発明者】
【氏名】今井 健
(72)【発明者】
【氏名】上野 洋平
【合議体】
【審判長】本庄 亮太郎
【審判官】田々井 正吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-222002号公報(JP,A)
【文献】特開2017-207945号公報(JP,A)
【文献】特開2001-249705号公報(JP,A)
【文献】特開2004-133588号公報(JP,A)
【文献】特開2012-226731号公報(JP,A)
【文献】特開2021-179869号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 - 23/02
G06Q 50/06
C02F 1/00 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プラントを監視する監視制御装置が前記水処理プラントから収集した複数の監視制御データのそれぞれを時系列データとして取得する時系列データ取得部と、
前記時系列データに対応する制約情報を取得する制約情報取得部と、
前記複数の時系列データの少なくとも1つを編集して編集済み時系列データを作成する時系列データ編集部と、
前記時系列データ編集部が作成した前記編集済み時系列データおよび前記時系列データに基づいて前記水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、前記編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、複数の前記時系列データに相当するシミュレーション結果である複数の第2シミュレーション時系列データとを算出するシミュレーション実行部と、
前記第1シミュレーション時系列データと、複数の前記第2シミュレーション時系列データと、前記制約情報とを表示する制御を行う表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、複数の前記第2シミュレーション時系列データと、各前記第2シミュレーション時系列データに対応する前記制約情報とを重畳表示する制御を行う、運転支援装置。
【請求項2】
前記時系列データ取得部は、オペレータから入力された検索条件に基づいて前記時系列データを取得する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記時系列データは、リアルタイムの前記監視制御データを含む、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記第1シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントからの送水流量に関するデータであり、
前記第2シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントの受電電力に関するデータである、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記第2シミュレーション時系列データである前記受電電力に関するデータと、前記受電電力に対応する前記制約情報とを重畳表示する制御を行う、請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記第1シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントにおける総ろ過流量に関するデータであり、
前記第2シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントにおける浄水池の水位に関するデータである、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記シミュレーション実行部が、前記第2シミュレーション時系列データが前記制約情報を満たしていないと判断した場合、
前記表示制御部は、前記第2シミュレーション時系列データが前記制約情報を満たしていないことを警告表示する制御を行う、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記時系列データ取得部が取得した前記時系列データを表示する制御を行い、
前記時系列データ編集部は、前記表示制御部の制御によって表示された前記時系列データの少なくとも一部を編集して前記編集済み時系列データを作成する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記時系列データ編集部は、前記制約情報を満たすように前記時系列データの少なくとも一部を編集して前記編集済み時系列データを作成する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項10】
サーバと、オペレータがいる場所に設けられた端末装置とを備える運転支援システムであって、
前記サーバは、
水処理プラントを監視する監視制御装置が前記水処理プラントから収集した複数の監視制御データのそれぞれを時系列データとして取得する時系列データ取得部と、
前記時系列データに対応する制約情報を取得する制約情報取得部と、
前記複数の時系列データの少なくとも1つを編集して編集済み時系列データを作成する時系列データ編集部と、
前記時系列データ編集部が作成した前記編集済み時系列データおよび前記時系列データに基づいて前記水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、前記編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、複数の前記時系列データに相当するシミュレーション結果である複数の第2シミュレーション時系列データとを算出するシミュレーション実行部と、
を有し、
前記端末装置は、
前記第1シミュレーション時系列データと、複数の前記第2シミュレーション時系列データと、前記制約情報とを表示する制御を行う表示制御部を有し、
前記表示制御部は、複数の前記第2シミュレーション時系列データと、各前記第2シミュレーション時系列データに対応する前記制約情報とを重畳表示する制御を行う、運転支援システム。
【請求項11】
水処理プラントを監視する監視制御装置が前記水処理プラントから収集した複数の監視制御データのそれぞれを時系列データとして取得し、
前記時系列データに対応する制約情報を取得し、
前記複数の時系列データの少なくとも1つを編集して編集済み時系列データを作成し、
前記編集済み時系列データおよび前記時系列データに基づいて前記水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、前記編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、複数の前記時系列データに相当するシミュレーション結果である複数の第2シミュレーション時系列データとを算出し、
前記第1シミュレーション時系列データと、複数の前記第2シミュレーション時系列データと、前記制約情報とを表示する制御を行い、
複数の前記第2シミュレーション時系列データと、各前記第2シミュレーション時系列データに対応する前記制約情報とを重畳表示する制御を行う、運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水処理プラントの運転を支援する運転支援装置、運転支援システム、および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道プラントを含む水処理プラントの運用において、水処理プラントの運転を評価して最適化する技術の開発が推進されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-137497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、コストに着目した運転シミュレーションを行うことは可能であるが、シミュレーション結果と各種制約情報とを同時に把握することができない。従って、従来では、水処理プラントの運用において適切な運転支援を行っているとはいえなかった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、適切な運転支援を行うことが可能な運転支援装置、運転支援システム、および運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示による運転支援装置は、水処理プラントを監視する監視制御装置が水処理プラントから収集した複数の監視制御データのそれぞれを時系列データとして取得する時系列データ取得部と、時系列データに対応する制約情報を取得する制約情報取得部と、複数の時系列データの少なくとも1つを編集して編集済み時系列データを作成する時系列データ編集部と、時系列データ編集部が作成した編集済み時系列データおよび時系列データに基づいて水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、複数の時系列データに相当するシミュレーション結果である複数の第2シミュレーション時系列データとを算出するシミュレーション実行部と、第1シミュレーション時系列データと、複数の第2シミュレーション時系列データと、制約情報とを表示する制御を行う表示制御部とを備え、表示制御部は、複数の第2シミュレーション時系列データと、各第2シミュレーション時系列データに対応する制約情報とを重畳表示する制御を行う。

【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、適切な運転支援を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る運転支援装置の運転支援の対象となる水処理プラントの一例を示す図である。
図2】実施の形態に係る運転支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る特徴量付与済み時系列データ記録部に記録される時系列データを説明するためのブロック図である。
図4】実施の形態に係る運転支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係る運転支援装置の実施例を説明するための図である。
図6】実施の形態に係る運転支援装置の実施例を説明するための図である。
図7】実施の形態に係る運転支援装置の実施例を説明するための図である。
図8】実施の形態に係る運転支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図9】実施の形態に係る運転支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図10】実施の形態に係る運転支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態>
<構成>
図1は、実施の形態に係る運転支援装置の運転支援の対象となる水処理プラントの一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、ろ過した水は浄水池に貯蔵され、浄水池に貯蔵された水は送水ポンプによって調整池などに送水される。I系統では4台の送水ポンプが設けられており、例えば最大2台の送水ポンプが同時に動作することによって浄水池の水を調整池に送水する。また、II系統では3台の送水ポンプが設けられており、例えば1台の送水ポンプが動作することによって浄水池の水を市内に送水する。
【0011】
図2は、実施の形態に係る運転支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0012】
図2に示すように、運転支援装置は、時系列データ取得部1と、制約情報取得部2と、時系列データ編集部3と、シミュレーション実行部4と、表示制御部5と、入出力装置6と、特徴量付与済み時系列データ記録部7とを備えている。
【0013】
時系列データ取得部1は、特徴量付与済み時系列データ記録部7または時系列データ記録部9から時系列データを取得する。時系列データは、水処理プラントを監視する監視制御装置が水処理プラントから収集した監視制御データであり、特徴量付与済み時系列データ記録部7または時系列データ記録部9に記録されている。時系列データとしては、例えば、I系統における送水流量、II系統における送水流量、総ろ過流量、調整池への配水流量、水処理プラントの受電電力、浄水池の水位、調整池の水位、水処理プラントにおける送水ポンプ以外のベース電力などが挙げられる。なお、I系統における送水流量、II系統における送水流量、総ろ過流量、および調整池への配水流量のそれぞれは、季節、曜日、天候、気温、およびイベントのうちの少なくとも1つを考慮した流量であってもよい。特徴量付与済み時系列データ記録部7の詳細については後述する。
【0014】
制約情報取得部2は、特徴量付与済み時系列データ記録部7または入出力装置6から時系列データに対応する制約情報を取得する。制約情報としては、例えば、受電電力の上限(受電電力のピーク設定値)、浄水池の水位の上下限、および調整池の水位の上下限などが挙げられる。各制約情報の値は、オペレータが入出力装置6から入力して修正してもよく、制約情報データベースがある場合は、制約情報データベースから取得してもよい。
【0015】
時系列データ編集部3は、時系列データ取得部1が取得した時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成する。
【0016】
シミュレーション実行部4は、時系列データ編集部3が作成した編集済み時系列データと、時系列データとに基づいて、水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出する。
【0017】
表示制御部5は、第1シミュレーション時系列データと、第2シミュレーション時系列データと、制約情報とを表示するように入出力装置6を制御する。
【0018】
入出力装置6は、表示装置を含み、例えば、表示制御部5による制御に従って第1シミュレーション時系列データ、第2シミュレーション時系列データ、および制約情報を表示する。また、入出力装置6は、入力装置を含み、例えば、時系列データ編集部3による編集に係るオペレータの入力を受け付ける。
【0019】
図3は、特徴量付与済み時系列データ記録部7に記録される時系列データを説明するためのブロック図である。
【0020】
図3では、特徴量付与済み時系列データ記録部7に時系列データを記録するための構成として、監視制御装置8、時系列データ記録部9、特徴量演算部10、特徴量演算ロジック記録部11、入出力装置12、および付加情報付与部13が図示されている。
【0021】
なお、時系列データ記録部9、特徴量演算部10、特徴量演算ロジック記録部11、入出力装置12、および付加情報付与部13は、監視制御装置8とは別個の装置に設けられてもよい。また、時系列データ記録部9、特徴量演算部10、特徴量演算ロジック記録部11、入出力装置12、および付加情報付与部13は、図1に示す運転支援装置に設けられてもよい。この場合、図3に示す入出力装置12と、図2に示す入出力装置6とは同一であってもよい。
【0022】
監視制御装置8は、水処理プラントに設置された計測機器が出力する計測情報と、オペレータが入力した制御入力情報とを含む監視制御データを収集し、収集した監視制御データを時系列データとして時系列データ記録部9に記録する。また、監視制御装置8は、オペレータが入力した制御入力情報を、プラントを構成する個々の設備に伝送する。
【0023】
特徴量演算ロジック記録部11は、時系列データ記録部9に記録された時系列データから特徴量を演算するための特徴量演算ロジックを記録する。
【0024】
特徴量演算部10は、特徴量演算ロジック記録部11に記録された特徴量演算ロジックに基づいて、時系列データ記録部9に記録された時系列データから特徴量を演算する。例えば、特徴量演算部10は、時系列データとして時系列データ記録部9に記録された水処理プラントにおける計測値に対して、予め定められた時間の差分または積分の処理を行うことによって特徴量を演算する。このとき、どの計測値に対してどのような処理を行うのかについては、特徴量演算ロジック記録部11に記録された特徴量演算ロジックで規定されている。
【0025】
特徴量付与済み時系列データ記録部7は、時系列データ記録部9に記録された時系列データと、特徴量演算部10で演算された特徴量と、付加情報付与部13から付与された特徴量とを対応付けて記録する。
【0026】
付加情報付与部13は、オペレータが入出力装置12を介して入力した付加情報を特徴量付与済み時系列データ記録部7または時系列データ記録部9に記録する。具体的には、オペレータは、監視制御装置8が水処理プラントから収集していない情報を付加情報として入力する。監視制御装置8が水処理プラントから収集していない情報としては、例えば、季節、曜日、天候、気温、および水処理プラントの運用に影響するイベントなどが挙げられる。
【0027】
入出力装置12は、表示装置を含み、例えば、特徴量付与済み時系列データ記録部7または時系列データ記録部9に記録されている時系列データを表示する。また、入出力装置12は、入力装置を含み、例えば、時系列データに付与する特徴量または付加情報に係るオペレータの入力を受け付ける。
【0028】
なお、図2において、時系列データ取得部1は、図3に示す時系列データ記録部9から、特徴量が付与されていない時系列データを取得するようにしてもよく、時系列データ取得部1は、図3に示す時系列データ記録部9から、付加情報付与部13によって付加情報が付与された時系列データを取得するようにしてもよい。
【0029】
<動作>
図4は、運転支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS11において、時系列データ取得部1は、特徴量付与済み時系列データ記録部7または時系列データ記録部9から時系列データを取得する。
【0031】
ステップS12において、制約情報取得部2は、特徴量付与済み時系列データ記録部7から時系列データに対応する制約情報を取得する。より具体的には、制約情報取得部2は、第2シミュレーション時系列データに対応する制約情報を取得する。ここで、時系列データ記録部9から時系列データを取得した場合は、入出力装置6から時系列データに対応する制約情報を取得する。
【0032】
ステップS13において、時系列データ編集部3は、時系列データ取得部1が取得した時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成する。より具体的には、時系列データ編集部3は、入出力装置6を介してオペレータが入力した時系列データの編集に係る操作に従って、時系列データ取得部1が取得した時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成する。
【0033】
ステップS14において、シミュレーション実行部4は、時系列データ編集部3が作成した編集済み時系列データと、時系列データとに基づいて、水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出する。
【0034】
ステップS15において、表示制御部5は、第1シミュレーション時系列データと、第2シミュレーション時系列データと、制約情報とを表示するように入出力装置6を制御する。入出力装置6には、第1シミュレーション時系列データと、第2シミュレーション時系列データと、制約情報とが表示される。
【0035】
<実施例>
図5,6は、時系列データ編集部3が編集時系列データを編集する際に、入出力装置6に表示される画面の一例を示す図である。オペレータが入出力装置6を介して任意の検索条件(日時など)を入力すると、図5に示す画面が入出力装置6に表示される。
【0036】
図5,6の左画面には、「I系送水流量」、「II系送水流量」、「総ろ過流量」、「調整池配水流量」、および「その他電力」の各時系列データが表示されている。
【0037】
図5,6の右画面には、「I系送水流量累積値」、「受電電力」、「浄水池水位」、「調整池水位」、および「ポンプ合計起動台数」の各時系列データが表示されている。各時系列データには、制約情報(図中のハッチングが施された範囲)が表示されている。なお、「I系送水流量累積値」の制約情報は、浄水池水位の制約条件である上下限値と、調整池水位の制約条件である上下限値とに基づいて設定される。
【0038】
また、「浄水池水位」および「調整池水位」の左端の丸印は、それぞれの初期水位を示している。この初期水位は、ユーザが任意に設定してもよく、特徴量付与済み時系列データ記録部7または時系列データ記録部9に記録されている現在の水位(リアルタイムの水位)を初期水位として設定してもよい。
【0039】
図5,6の左右画面のそれぞれにおいて上下方向に表示されている破線の直線は、オペレータが選択した時刻を示している。図5,6に示す「日時」は、破線の直線が示す日時を表示している。これら2本の直線は連動するため、オペレータは左右の画面のいずれか一方の直線を左右方向に動かすことによって任意の時刻を選択することができる。オペレータが選択した時刻における各時系列データの値は、各時系列データの右端において四角で囲まれた値として表示される。
【0040】
図6に示す「受電電力」の時系列データにおいて、破線の丸印で示された時間の受電電力は制約情報(受電電力の上限)を超えている。これは、破線の丸印が示す時間において、I系統およびII系統の送水のタイミングが同じであり、このとき動作する送水ポンプの合計台数が3台であることが要因となっている。
【0041】
図6に示す「受電電力」の時系列データにおいて破線の丸印が示す時間の受電電力が制約情報を満たす(上限を超えない)ようにするために、オペレータは、図6の「I系送水流量」の時系列データにおいて破線の丸印が示す時間の送水流量を下げる操作(編集)を行う。このとき、オペレータが操作した「I系送水流量」の時系列データは、時系列データ編集部3が作成した編集済み時系列データに相当する。
【0042】
図7は、シミュレーション実行部4がシミュレーションを実行した後に、入出力装置6に表示される画面の一例を示す図である。
【0043】
図7に示すように、オペレータが「I系送水流量」の時系列データにおける破線の丸印が示す時間の送水流量を下げる操作を行うと、「受電電力」の時系列データにおいて破線の丸印が示す時間の受電電力は上限を下回って制約情報を満たすようになる。このとき、オペレータが操作した「I系送水流量」の時系列データ(編集済み時系列データ)は、第1シミュレーション時系列データとして表示される。また、オペレーションが「I系送水流量」の時系列データを操作することによって影響を受けた時系列データは、第2シミュレーション時系列データとして表示される。
【0044】
このように、シミュレーション結果を示す画面には、第1シミュレーション時系列データと、第2シミュレーション時系列データと、制約情報とが表示される。また、第2シミュレーション時系列データと制約情報とは重畳表示される。
【0045】
なお、どの時系列データを編集すれば、どの時系列データがどのように変化するのかに関する情報は、シミュレーション実行部4が保持していてもよく、図示しない記憶部に記憶しておいてもよい。
【0046】
第2シミュレーション時系列データが制約情報を満たしていないとシミュレーション実行部4が判断した場合、表示制御部5は、第2シミュレーション時系列データが制約情報を満たしていないことを警告表示(例えば、ポップアップ画面を表示)するように入出力装置6を制御してもよい。
【0047】
シミュレーション実行部4がシミュレーションを実行した結果、他の時系列データが制約情報を満たさない可能性がある。この場合、オペレータはさらに任意の時系列データを変化させる操作を行い、時系列データ編集部3はオペレータの操作に基づいて編集済み時系列データを作成する。そして、シミュレーション実行部4は、編集済み時系列データおよび時系列データに基づいてシミュレーションを実行する。このような動作を繰り返すことによって、より効率的に全ての制約情報を満たす時系列データを得ることができる。
【0048】
<効果>
本実施の形態に係る運転支援装置は、時系列データ編集部3が作成した編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、編集済み時系列データの影響を受ける時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データと、制約情報とを表示する。特に、第2シミュレーション時系列データと制約情報とは重畳表示される。これにより、オペレータは、全ての制約情報を満たす時系列データを得ることができる。また、運転支援装置は、オペレータに対して適切な運転支援を行うことができる。
【0049】
<変形例>
上記では、時系列データ編集部3がオペレータの操作に基づいて編集済み時系列データを作成する場合について説明したが、これに限るものではない。
【0050】
例えば、時系列データ編集部3は、AI(Artificial Intelligence)の機能を有してもよい。この場合、時系列データ編集部3は、制約情報を満たすように時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成する。その後の動作は、上記と同様である。これにより、全ての制約情報を満たす時系列データを自動的に算出することができる。
【0051】
<ハードウェア構成>
実施の形態で説明した運転支援装置(図2参照)における時系列データ取得部1、制約情報取得部2、時系列データ編集部3、シミュレーション実行部4、および表示制御部5の各機能は、処理回路によって実現される。すなわち、運転支援装置は、水処理プラントを監視する監視制御装置が水処理プラントから収集した監視制御データを時系列データとして取得し、時系列データに対応する制約情報を取得し、時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成し、編集済み時系列データおよび時系列データに基づいて水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出し、第1シミュレーション時系列データと、第2シミュレーション時系列データと、制約情報とを表示する制御を行うための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよく、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサ(CPU、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)であってもよい。
【0052】
処理回路が専用のハードウェアである場合、図8に示すように、処理回路20は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。時系列データ取得部1、制約情報取得部2、時系列データ編集部3、シミュレーション実行部4、および表示制御部5の各機能をそれぞれ処理回路20で実現してもよく、各機能をまとめて1つの処理回路20で実現してもよい。
【0053】
処理回路20が図9に示すプロセッサ21である場合、時系列データ取得部1、制約情報取得部2、時系列データ編集部3、シミュレーション実行部4、および表示制御部5の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ22に格納される。プロセッサ21は、メモリ22に記録されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、運転支援装置は、水処理プラントを監視する監視制御装置が水処理プラントから収集した監視制御データを時系列データとして取得するステップ、時系列データに対応する制約情報を取得するステップ、時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成するステップ、編集済み時系列データおよび時系列データに基づいて水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出するステップ、第1シミュレーション時系列データと、第2シミュレーション時系列データと、制約情報とを表示する制御を行うステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ22を備える。また、これらのプログラムは、時系列データ取得部1、制約情報取得部2、時系列データ編集部3、シミュレーション実行部4、および表示制御部5の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリとは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等、または、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
【0054】
なお、時系列データ取得部1、制約情報取得部2、時系列データ編集部3、シミュレーション実行部4、および表示制御部5の各機能について、一部の機能を専用のハードウェアで実現し、他の機能をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0055】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0056】
<運転支援システム>
図10は、運転支援システムの構成を示すブロック図である。運転支援システムは、サーバ30および端末装置31で構成される。サーバ30は、クラウド上に設置されたサーバである。端末装置31は、オペレータがいる場所に設けられた装置である。サーバ30と端末装置31とは、通信可能に接続されている。
【0057】
サーバ30は、時系列データ取得部1と、制約情報取得部2と、時系列データ編集部3と、シミュレーション実行部4と、特徴量付与済み時系列データ記録部7とを備えている。また、端末装置31は、入出力装置6を備えている。サーバ30および端末装置31のそれぞれが備える各構成要素は、実施の形態に係る運転支援装置(図2参照)の各構成要素と同じである。なお、図10では、時系列データ取得部1が特徴量付与済み時系列データ記録部7から時系列データを取得する構成の例を記載しているが、図2と同様の構成であってもよい。
【0058】
なお、図10では、実施の形態に係る運転支援装置の各構成要素をサーバ30および端末装置31のそれぞれに分散して配置する構成を示しているが、運転支援システムの構成は、これに限るものではない。例えば、端末装置31は、時系列データ編集部3またはシミュレーション実行部4のいずれか一方、あるいは両方を備える構成であってもよい。
【0059】
なお、本開示の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0060】
<付記>
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0061】
(付記1)
水処理プラントを監視する監視制御装置が前記水処理プラントから収集した監視制御データを時系列データとして取得する時系列データ取得部と、
前記時系列データに対応する制約情報を取得する制約情報取得部と、
前記時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成する時系列データ編集部と、
前記時系列データ編集部が作成した前記編集済み時系列データおよび前記時系列データに基づいて前記水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、前記編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、前記時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出するシミュレーション実行部と、
前記第1シミュレーション時系列データと、前記第2シミュレーション時系列データと、前記制約情報とを表示する制御を行う表示制御部と、
を備える、運転支援装置。
【0062】
(付記2)
前記時系列データ取得部は、オペレータから入力された検索条件に基づいて前記時系列データを取得する、付記1に記載の運転支援装置。
【0063】
(付記3)
前記時系列データは、リアルタイムの前記監視制御データを含む、付記1または2に記載の運転支援装置。
【0064】
(付記4)
前記第1シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントからの送水流量に関するデータであり、
前記第2シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントの受電電力に関するデータである、付記1から3のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【0065】
(付記5)
前記表示制御部は、前記第2シミュレーション時系列データである前記受電電力に関するデータと、前記受電電力に対応する前記制約情報とを重畳表示する制御を行う、付記4に記載の運転支援装置。
【0066】
(付記6)
前記第1シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントにおける総ろ過流量に関するデータであり、
前記第2シミュレーション時系列データは、前記水処理プラントにおける浄水池の水位に関するデータである、付記1から3のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【0067】
(付記7)
前記表示制御部は、前記第2シミュレーション時系列データと前記制約情報とを重畳表示する制御を行う、付記1から3のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【0068】
(付記8)
前記シミュレーション実行部が、前記第2シミュレーション時系列データが前記制約情報を満たしていないと判断した場合、
前記表示制御部は、前記第2シミュレーション時系列データが前記制約情報を満たしていないことを警告表示する制御を行う、付記7に記載の運転支援装置。
【0069】
(付記9)
前記表示制御部は、前記時系列データ取得部が取得した前記時系列データを表示する制御を行い、
前記時系列データ編集部は、前記表示制御部の制御によって表示された前記時系列データの少なくとも一部を編集して前記編集済み時系列データを作成する、付記1から8のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【0070】
(付記10)
前記時系列データ編集部は、前記制約情報を満たすように前記時系列データの少なくとも一部を編集して前記編集済み時系列データを作成する、付記1から9のいずれか1つに記載の運転支援装置。
【0071】
(付記11)
サーバと、前記オペレータがいる場所に設けられた端末装置とを備える運転支援システムであって、
前記サーバは、
水処理プラントを監視する監視制御装置が前記水処理プラントから収集した監視制御データを時系列データとして取得する時系列データ取得部と、
前記時系列データに対応する制約情報を取得する制約情報取得部と、
前記時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成する時系列データ編集部と、
前記時系列データ編集部が作成した前記編集済み時系列データおよび前記時系列データに基づいて前記水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、前記編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、前記時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出するシミュレーション実行部と、
を有し、
前記端末装置は、
前記第1シミュレーション時系列データと、前記第2シミュレーション時系列データと、前記制約情報とを表示する制御を行う表示制御部を有する、運転支援システム。
【0072】
(付記12)
水処理プラントを監視する監視制御装置が前記水処理プラントから収集した監視制御データを時系列データとして取得し、
前記時系列データに対応する制約情報を取得し、
前記時系列データの少なくとも一部を編集して編集済み時系列データを作成し、
前記編集済み時系列データおよび前記時系列データに基づいて前記水処理プラントの挙動のシミュレーションを実行し、前記編集済み時系列データに相当するシミュレーション結果である第1シミュレーション時系列データと、前記時系列データに相当するシミュレーション結果である第2シミュレーション時系列データとを算出し、
前記第1シミュレーション時系列データと、前記第2シミュレーション時系列データと、前記制約情報とを表示する制御を行う、運転支援方法。
【符号の説明】
【0073】
1 時系列データ取得部、2 制約情報取得部、3 時系列データ編集部、4 シミュレーション実行部、5 表示制御部、6 入出力装置、7 特徴量付与済み時系列データ記録部、8 監視制御装置、9 時系列データ記録部、10 特徴量演算部、11 特徴量演算ロジック記録部、12 入出力装置、13 付加情報付与部、20 処理回路、21 プロセッサ、22 メモリ、30 サーバ、31 端末装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10