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特許7689530血液検査評価用のクロマトグラム自動解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-29
(45)【発行日】2025-06-06
(54)【発明の名称】血液検査評価用のクロマトグラム自動解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20250530BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250530BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20250530BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20250530BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20250530BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20250530BHJP
【FI】
G01N30/86 F
G01N33/50 U
G01N33/48 Z
G01N30/88 Q
G01N30/86 D
G16H50/00
G01N33/72 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022537336
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020064479
(87)【国際公開番号】W WO2021126688
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】16/721,093
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507190880
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】スコラーリ キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ ジャイム
(72)【発明者】
【氏名】ガンボア フェ セネカ
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/099948(WO,A1)
【文献】特表2021-503599(JP,A)
【文献】Smart Templates for peak pattern matching with comprehensive two-dimensional liquid chromatography,JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY A,2009年,Vol. 1216, No. 16,pages 3458 - 3466,doi:10.1016/J.CHROMA.2008.09.058
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
G16H 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検査データからレポートを生成するための方法であって、以下の段階を含む、方法:
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、各ピークが、1つまたは複数のタイプのヘモグロビンに対応しており、かつ該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有している、段階;
該クロマトグラフィーデータ複数の領域に分割する段階であって、各領域が、該クロマトグラフィーデータ内の異なる保持時間範囲からのクロマトグラフィーデータを含んでいる、段階;
各領域について、
該領域に対応する複数の領域テンプレートを検索する段階;および
各領域テンプレート該領域内に含まれる該クロマトグラフィーデータとどの程度近くマッチしているかを示すマッチング尺度に基づいて、ベストフィットマッチ領域テンプレートを同定する段階;
ならびに
各領域についての該ベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいて、1つまたは複数の医学的コンディションを示すレポートを生成する段階。
【請求項2】
レポートが、該レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
レポートの解釈に関する助言が、前記1つもしくは複数の医学的コンディションと関連付けられた一般的なピットフォール、追加的検査についての推奨、または該医学的コンディションについての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
端末での表示用にレポートを提供する段階
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記複数の領域の各領域が、対応する既定の範囲を有し、各範囲が、クロマトグラム内の開始特徴および終了特徴によって定義される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記対応する既定の範囲のうち少なくとも2つは長さが異なっている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
クロマトグラフィーデータの品質の指標を決定する段階;および
該品質の指標が既定の閾値を下回るならば通知を生成する段階
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
各領域についてベストフィットマッチ領域テンプレートを同定する段階が、
各領域テンプレートについて、
該領域のクロマトグラフィーデータと該領域テンプレートとの間の最大相関係数R値を決定すること;
および
該最大相関係数R値に基づいて該ベストフィットマッチ領域テンプレートを決定すること
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
所与の領域テンプレートについて最大相関係数R値を決定することが、
該所与の領域テンプレートを前記クロマトグラフィーデータの前記領域にわたってスライドさせること;
該クロマトグラフィーデータの該領域内における、該所与の領域テンプレートの異なるポジションについて、R値を計算すること;および
該R値のうち最大のものを、該所与の領域テンプレートについての最大R値として選択すること
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
各テンプレートが、1つまたは複数のピークを含む、前記領域内のクロマトグラムの原型的形状(archetypical shape)を表す、請求項1記載の方法。
【請求項11】
以下:
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取ることであって、該データが、複数のピークを含み、各ピークが、1つまたは複数のタイプのヘモグロビンに対応しており、該血液サンプル中に存在する該対応する1つまたは複数のタイプのヘモグロビンの量を示している、受け取ること;
該クロマトグラフィーデータ複数の領域に分割することであって、各領域が、該クロマトグラフィーデータ内の異なる保持時間範囲からのクロマトグラフィーデータを含んでいる、分割すること;
各領域について、
該領域に対応する複数の領域テンプレートを検索すること;および
各領域テンプレート該領域内に含まれる該クロマトグラフィーデータとどの程度近くマッチしているかを示すマッチング尺度に基づいて、ベストフィットマッチ領域テンプレートを同定すること;
ならびに
各領域についての該ベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいて、1つまたは複数の医学的コンディションを示すレポートを生成すること
を含むオペレーションを行うためにプロセッサーによって実行可能なコンピュータープログラム命令を保存している、非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項12】
レポートが、該レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む、請求項11記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項13】
レポートの解釈に関する助言が、前記1つもしくは複数の医学的コンディションと関連付けられた一般的なピットフォール、追加的検査についての推奨、または該医学的コンディションについての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、請求項12記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項14】
端末での表示用にレポートを提供すること
をさらに含む命令を保存している、請求項11記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項15】
前記複数の領域の各領域が、対応する既定の範囲を有し、各範囲が、クロマトグラム内の開始特徴および終了特徴によって定義される、請求項11記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項16】
前記対応する既定の範囲のうち少なくとも2つは長さが異なっている、請求項15記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項17】
決定するためにクロマトグラフィーデータの品質の指標を決定すること;および
該品質の指標が既定の閾値を下回るならば通知を生成すること
をさらに含む、請求項11記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項18】
各領域についてベストフィットマッチ領域テンプレートを同定することが、
各領域テンプレートについて、
該領域のクロマトグラフィーデータと該領域テンプレートとの間のR値を決定すること;および
最も高いR値に基づいてベストフィットマッチ領域を決定すること
をさらに含む、請求項11記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項19】
各テンプレートが、1つまたは複数のピークを含む、前記領域内のクロマトグラムの原型的形状のヘモグロビン組成を表す、請求項11記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項20】
患者から抽出された血液サンプルを注入するためのポートと;
1つまたは複数のプロセッサーと;
実行された時に、
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取ることであって、該データが、複数のピークを含み、各ピークが、1つまたは複数のタイプのヘモグロビンに対応しており、かつ該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有している、受け取ること;
該クロマトグラフィーデータ複数の領域に分割することであって、各領域が、該クロマトグラフィーデータ内の異なる保持時間範囲からのクロマトグラフィーデータを含んでいる、分割すること;
各領域について、
該領域に対応する複数の領域テンプレートを検索すること;および
各領域テンプレート該領域内に含まれる該クロマトグラフィーデータとどの程度近くマッチしているかを示すマッチング尺度に基づいて、ベストフィットマッチ領域テンプレートを同定すること;
ならびに
各領域についての該ベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいてレポートを生成すること
を含むオペレーションを該1つまたは複数のプロセッサーに行わせるコンピュータープログラムコードを保存している、コンピューター可読媒体と
を具備する、血液検査データからレポートを生成するためのクロマトグラフィーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 技術分野
本説明の内容は概して診断的検査データの解析に関し、具体的にはコンピューター支援による血液検査評価に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 背景情報
異常ヘモグロビン症は、個人の血液中のヘモグロビン分子が異例的な構造となる遺伝的障害である。例えば、鎌状赤血球症は、特定の状況下で赤血球が硬直的な鎌形となることがある異常ヘモグロビン症によって引き起こされる。形状異常をきたしたこれらの赤血球は毛細血管をふさいで血流を制限することがあり、さまざまな健康上の問題につながる。対照的に、サラセミアは、ヘモグロビン産生の低下を生じさせる遺伝的コンディションである。一部の異常ヘモグロビン症はヘモグロビン産生にも影響を及ぼし、ゆえにそれらはサラセミアでもある。
【0003】
さまざまな医学的コンディションが、血液中における特定のヘモグロビン変異体の存在と、異なる変異体の比率とによって、特性付けられる。血液検査は血液サンプル中の異なるヘモグロビン変異体の比率について情報を提供する。しかし、この情報の解釈は困難となりうる。異なるコンディションが、特定の変異体の存在に対して同様の影響を有する可能性がある。他の環境要因および健康上の要因が、存在する変異体の比率に影響を及ぼす可能性もあるので、解析はさらに複雑になる。例えば、ヘモグロビンFが異例的に大量であることは、遺伝性障害を示す可能性があり、または、サンプル採取時に個人が妊娠中もしくは乳児であったことを示す可能性がある。さらに、ある変異体が比較的少量であること(または存在する変異体の量の変化)は、臨床的に重要である可能性があるが、それよりはるかに大量に存在する変異体によってマスクされる可能性がある。
【0004】
コンピューター技術は、血液検査データを解析するため、および、変異体を含有するサンプルによってもたらされる異なる反応パターン間の区別をより高い信頼性で行うための、新規の機会を提供する。このことは人間の解析者に対する依存を低減させうる:人間の解析者はエラーをする可能性があり、かつ、診断に至るには技術を用いて実現されうるよりも多くの時間とトレーニングとを必要とする可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】1つの態様に基づく、診断データが生成および解析されるネットワーク型コンピューティング環境を図示した高水準ブロック図である。
図2】1つの態様に基づく、図1のネットワーク型コンピューティング環境における使用に好適な検査室端末を図示した高水準ブロック図である。
図3】1つの態様に基づく、検査室端末のクロマトグラム解析ツールを図示した高水準ブロック図である。
図4】1つの態様に基づく、検査室端末としての使用に好適なコンピューターの例を図示した高水準ブロック図である。
図5】1つの態様に基づく例示的なクロマトグラムを図示する。
図6】1つの態様に基づく、クロマトグラムを領域に分割した例を示した表である。
図7A】ベストフィットマッチテンプレートとオーバーレイされた、クロマトグラムデータの領域の例示的な視覚的表象を示す。
図7B】1つの態様に基づく、本クロマトグラム解析ツールによって生成される可能性があるクロマトグラムデータおよびレポートの例を示す。
図8】1つの態様に基づく、本クロマトグラム解析ツールによって生成された複数の結果のレポートの例を示す。
図9】1つの態様に基づく、血液クロマトグラフィーデータについてのレポートを生成するための方法を示したフローチャートである。
【発明の概要】
【0006】
詳細な説明
図面(図)および以下の説明は特定の態様を実例として説明するにすぎない。当業者には、本説明の構造および方法の代替的態様が本説明の原理から逸脱することなく利用されうることが、以下の記述から容易に認識されるであろう。以下にいくつかの態様について言及するが、それらの例が添付の図面に図示されている。留意される点として、実際的である限り、同様または類似の機能性を示すために同様または類似の符番が図面内で用いられている。
【0007】
概要および恩典
クロマトグラム解析ツールは、検査室の血液検査システムの一部として、サンプル中のさまざまなタイプのヘモグロビンの相対比率に基づいて遺伝的コンディションを同定するために用いられる。血液検査システムはサンプルからクロマトグラフィーデータを生成する。クロマトグラム解析ツールはクロマトグラフィーデータの領域を同定し、そして各領域について、その領域内のクロマトグラフィーデータと、可能性のあるテンプレートのセットのうち1つとの間のマッチを決定する。領域は既定のサイズを有してもよい。テンプレートは、対応する領域内のヘモグロビンデータの原型的形状(archetypical shape)をしており、構築された例示的クロマトグラムであってもよく;個々のもしくは蓄積された現実の例示的クロマトグラムの一部分であってもよく;または、現実のおよび/もしくは構築された例示的クロマトグラムの組み合わせであってもよい。
【0008】
クロマトグラム解析ツールはベストフィットマッチに基づいてレポートを生成する。レポートは、可能性のある1つまたは複数の医学的コンディションを示してもよい。レポートはまた、行われるべき追加的検査の提案、一般的な診断ピットフォール、対応するコンディションについての追加的情報(例えば、診断と相関する人口統計学的要因)、および、可能性のある生殖リスクなど、追加的なコメントおよび注記も含んでもよい。
【0009】
テンプレートを用いたクロマトグラムの領域の解析にはいくつかの利点がある。第一に、結果の解釈を助ける可能性があり、追加的なトレーニングの必要性を伴わずにより標準化された結果を検査室が送達することを可能にする。むしろ、効率的に作業するために検査技師にとって必要なトレーニングの量を低減させる可能性もある。第二に、オンラインで利用できる参照症例の大規模データベースと実質的にリアルタイムで結果を比較できるようになる可能性があり、その結果として潜在的コンディションをより正確に予備的同定できる可能性がある。第三に、テンプレートを領域に適用することによって、スケーリングの変動が、各領域に対応するテンプレートに本来的に組み込まれる。ゆえに、領域のマッチングは、テンプレートをクロマトグラム全体にマッチさせるアプローチよりも高い正確性を提供できる。第四に、本方法は、統合されそして固有のウィンドウに割り当てられるべき正常サンプルに見いだされないピークには依存しない。第五に、レポートは診断に至るうえでの次の段階について提案を生じさせる可能性があり、それは、検査結果と、可能性のある原因との間を、人手によって接続することへの依存を低減させる可能性がある。一部のケースにおいて、(例えば、次の段階に必要なデータがすでにデータベース内で利用可能ならば)次の段階が自動的または半自動的にトリガーされてもよく、それは検査プロセスを完了させるまでの時間を短縮させる。
[本発明1001]
血液検査データからレポートを生成するための方法であって、以下の段階を含む、方法:
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、各ピークが、1つまたは複数のタイプのヘモグロビンに対応しており、かつ該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有している、段階;
該クロマトグラフィーデータの複数の領域を同定する段階であって、各領域が、異なる保持時間範囲からのクロマトグラフィーデータを含んでいる、段階;
各領域について、
該領域に対応する複数の領域テンプレートを検索する段階;および
各領域テンプレートを該領域内に含まれる該クロマトグラフィーデータと比較することによって、ベストフィットマッチ領域テンプレートを同定する段階;
ならびに
各領域についての該ベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいて、1つまたは複数の医学的コンディションを示すレポートを生成する段階。
[本発明1002]
レポートが、該レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
レポートの解釈に関する助言が、前記1つもしくは複数の医学的コンディションと関連付けられた一般的なピットフォール、追加的検査についての推奨、または該医学的コンディションについての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
端末での表示用にレポートを提供する段階
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記複数の領域の各領域が、対応する既定の範囲を有し、各範囲が、クロマトグラム内の開始特徴および終了特徴によって定義される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記既定の範囲のうち少なくとも2つは長さが異なっている、本発明1001の方法。
[本発明1007]
クロマトグラフィーデータの品質の指標を決定する段階;および
該品質の指標が既定の閾値を下回るならば通知を生成する段階
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
各領域についてベストフィットマッチ領域テンプレートを同定する段階が、
各領域テンプレートについて、
該領域のクロマトグラフィーデータと該領域テンプレートとの間の最大相関係数R値を決定すること;
および
該最大相関係数R値に基づいて該ベストフィットマッチ領域テンプレートを決定すること
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
所与の領域テンプレートについて最大相関係数R値を決定することが、
該所与の領域テンプレートを前記クロマトグラフィーデータの前記領域にわたってスライドさせること;
該クロマトグラフィーデータの該領域内における、該所与の領域テンプレートの異なるポジションについて、R値を計算すること;および
該R値のうち最大のものを、該所与の領域テンプレートについての最大R値として選択すること
を含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
各テンプレートが、1つまたは複数のピークを含む、前記領域内のクロマトグラムの原型的形状(archetypical shape)を表す、本発明1001の方法。
[本発明1011]
以下:
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取ることであって、該データが、複数のピークを含み、各ピークが、1つまたは複数のタイプのヘモグロビンに対応しており、該血液サンプル中に存在する該対応する1つまたは複数のタイプのヘモグロビンの量を示している、受け取ること;
該クロマトグラフィーデータの複数の領域を同定することであって、各領域が、異なる保持時間範囲からのクロマトグラフィーデータを含んでいる、同定すること;
各領域について、
該領域に対応する複数の領域テンプレートを検索すること;および
各領域テンプレートを該領域内に含まれる該クロマトグラフィーデータと比較することによって、ベストフィットマッチ領域テンプレートを同定すること;
ならびに
各領域についての該ベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいて、1つまたは複数の医学的コンディションを示すレポートを生成すること
を含むオペレーションを行うためにプロセッサーによって実行可能なコンピュータープログラム命令を保存している、非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1012]
レポートが、該レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1013]
レポートの解釈に関する助言が、前記1つもしくは複数の医学的コンディションと関連付けられた一般的なピットフォール、追加的検査についての推奨、または該医学的コンディションについての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、本発明1012の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1014]
端末での表示用にレポートを提供すること
をさらに含む命令を保存している、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1015]
前記複数の領域の各領域が、対応する既定の範囲を有し、各範囲が、クロマトグラム内の開始特徴および終了特徴によって定義される、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1016]
前記既定の範囲のうち少なくとも2つは長さが異なっている、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1017]
決定するためにクロマトグラフィーデータの品質の指標を決定すること;および
該品質の指標が既定の閾値を下回るならば通知を生成すること
をさらに含む、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1018]
各領域についてベストフィットマッチ領域テンプレートを同定することが、
各領域テンプレートについて、
該領域のクロマトグラフィーデータと該領域テンプレートとの間のR値を決定すること;および
最も高いR値に基づいてベストフィットマッチ領域を決定すること
をさらに含む、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1019]
各テンプレートが、1つまたは複数のピークを含む、前記領域内のクロマトグラムの原型的形状のヘモグロビン組成を表す、本発明1011の非一時的コンピューター可読媒体。
[本発明1020]
患者から抽出された血液サンプルを注入するためのポートと;
1つまたは複数のプロセッサーと;
実行された時に、
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取ることであって、該データが、複数のピークを含み、各ピークが、1つまたは複数のタイプのヘモグロビンに対応しており、かつ該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有している、受け取ること;
該クロマトグラフィーデータの複数の領域を同定することであって、各領域が、異なる保持時間範囲からのクロマトグラフィーデータを含んでいる、同定すること;
各領域について、
該領域に対応する複数の領域テンプレートを検索すること;および
各領域テンプレートを該領域内に含まれる該クロマトグラフィーデータと比較することによって、ベストフィットマッチ領域テンプレートを同定すること;
ならびに
各領域についての該ベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいてレポートを生成すること
を含むオペレーションを該1つまたは複数のプロセッサーに行わせるコンピュータープログラムコードを保存している、コンピューター可読媒体と
を具備する、血液検査データからレポートを生成するためのクロマトグラフィーデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的システム
図1に、診断データが生成および解析されるネットワーク型コンピューティング環境100の1つの態様を示す。図1に示す態様において、ネットワーク型コンピューティング環境は、すべてネットワーク170を介して接続された、検査室情報システム(LIS)110と、検査室設備120と、検査室端末130とを含む。検査室設備120の2つのアイテムと2つの検査室端末130とが図示されているが、所与の配備が、任意の量の設備と(単一の端末のみを含めて)任意の数の端末とを含んでもよい。他の態様において、ネットワーク型コンピューティング環境100は、異なるまたは追加的な要素を含有する。加えて、諸機能が、本説明と異なる様式で要素間に分配されていてもよい。例えば、検査室設備120の各アイテムが、検査室端末130の機能性を提供するコンピューターシステムを含んでもよい。
【0011】
LIS 110は検査室のオペレーションをサポートするコンピューター式システムである。さまざまな態様において、LIS 110は、技師および他のユーザーが検査室内で効率的に機能することを助けるツールを提供する。例えば、LIS 110は、データトラッキング、自動バックアップ、データ交換、ワークフロー管理、サンプル管理、データ解析、データマイニング、器械管理、レポート生成、およびデータ監査などを提供してもよい。図1に示す態様において、LIS 110は医療データ112を保存する。医療データ112は、ハードドライブなど、1つまたは複数のコンピューター可読媒体上に保存される。医療データ112は、患者記録、検査結果、および医学文献などを含んでもよい。当業者には、LIS 110が提供しうる他の機能性、および、医療データ112の一部として保存されうる他のタイプのデータが認識されるであろう。
【0012】
検査室設備120は、医学検査を行う1つまたは複数のデバイスである。1つの態様において、検査室設備120は、サンプル中に存在するヘモグロビンの異なる変異体の相対比率を示すクロマトグラムをもたらすクロマトグラフィーシステムを含む。そうしたシステムの1例はBio-Rad(商標)によって生産されているD-100(商標)である。検査室設備120はまた、DNA検査および尿検査など、他の検査を行うデバイスも含んでもよい。クロマトグラム解析ツールが、可能性のある医学的コンディションを同定することによって、例えば鎌状化試験、安定性試験(イソプロパノール試験)、電気泳動試験、MS/MS、および分子検査など、サンプルの鑑別診断を補助するための一連の検査をトリガーしてもよい。
【0013】
検査室端末130は、ユーザーがLIS 110および検査室設備120とインタラクトするコンピューティングデバイスである。さまざまな態様において、技師が、クロマトグラム解析ツールを含む端末130を用いて、サンプルに対する検査を開始する。端末130は、結果解析および提案を含む、クロマトグラム解析ツールによって生成されたレポートを提示する。1つの態様において、技師がレポートを承認し、そしてレポートは保存のためLIS 110に送られる。別の態様において、検査室の監督者もまた(例えば第二の端末130を用いて)レポートを承認しなければならない。端末130はまた、クロマトグラム解析ツールによって生成された推奨に基づいて、追加的な検査を開始するため、または以前に行われた検査の結果を提供するための命令を、(例えばLIS 110に)送ってもよい。端末130の諸態様、そして特にクロマトグラム解析ツールのオペレーションについて、図2および3を参照しながら以下により詳しく説明する。
【0014】
ネットワーク170は、ネットワーク型コンピューティング環境100の他の要素がそれを介して通信する通信チャネルを提供する。ネットワーク170は、有線または無線の通信システムの両方を用いた、ローカルエリアネットワークまたはワイドエリアネットワークの任意の組み合わせを含んでもよい。1つの態様において、ネットワーク170は標準的な通信技術またはプロトコルを用いる。例えば、ネットワーク170は、Ethernet、802.11、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)、3G、4G、符号分割多重アクセス(CDMA)、デジタル加入者線(DSL)などの技術を用いた通信リンクを含んでもよい。ネットワーク170を介した通信に用いられるネットワーキングプロトコルの例には、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)、ハイパーテキストトランスポートプロトコル(HTTP)、シンプルメールトランスファープロトコル(SMTP)、およびファイルトランスファープロトコル(FTP)などがある。ネットワーク170上で交換されるデータは、ハイパーテキストマークアップランゲージ(HTML)またはエクステンシブルマークアップランゲージ(XML)など、任意の好適なフォーマットを用いて表象されてもよい。1つの態様において、コンポーネントの一部または全部が、RS-232シリアル接続を用いて接続される。いくつかの態様において、ネットワーク170の通信リンクの全部または一部が任意の好適な技法を用いて暗号化されてもよい。
【0015】
図2に、図1のネットワーク型コンピューティング環境100における使用に好適な検査室端末130の1つの態様を示す。図2に示す態様において、検査室端末130は、結果プロバイダー210と、ディスプレイサブシステム220と、ユーザー入力サブシステム230と、クロマトグラム解析ツール240と、ローカルストレージ260とを含む。他の態様において、検査室端末130は、異なるまたは追加的な要素を含有する。加えて、諸機能が、本説明と異なる様式で要素間に分配されていてもよい。
【0016】
結果プロバイダーモジュール210は、医療データを取得するために検査室設備120とインターフェースする。1つの態様において、医療データは、結果プロバイダーモジュール210がクロマトグラムを作成するために用いる、血液のクロマトグラフィーデータである。代替的に、クロマトグラムは、検査室設備120(またはネットワーク型コンピューティング環境100中の他の場所)によって生成されてもよく、そして結果プロバイダーモジュール210に対する入力として提供されてもよい。図5に、1つの態様に基づくクロマトグラム500の例を示す。クロマトグラム500は、データの視覚的表象510とデータ表520とを含む。視覚的表象510は、複数のピーク512(明瞭さのため、そのうち2つのみにラベルを付している)を含む、経時的な検出器反応のプロットを含む。データ表520は、ヘモグロビンの異なる変異体(例えばA1a、A1b、Fなど)に対応すると予測されるさまざまなウィンドウにおける保持時間(すなわち、ピーク512について最も強い検出器反応が観察された時間)を同定する。データ表520はまた、各ピーク512の面積(これはサンプル中に存在する所与の変異体の総量に対応する)、および、各ピークについてレポートされた結果も含む。
【0017】
図2に戻ると、ディスプレイサブシステム220は、情報およびコントロールをユーザー(例えば検査室の科学者)に提示する。1つの態様において、ディスプレイサブシステム220は、検査室設備120による検査を技師が開始するためのコントロールを提供する。ディスプレイサブシステム220は次に、オペレーターが(例えばクロマトグラム解析ツール240を用いて)検査の結果を閲覧および解析することを可能にする、コントロールを提供する。ディスプレイサブシステム220はまた、患者記録を閲覧する、検査室設備120を構成する、および、状態/メンテナンスデータを閲覧するなど、他の機能性も提供してもよい。
【0018】
ユーザー入力サブシステム230は、ユーザー(例えば検査室の科学者または監督者)からの入力を受け取り、そしてそれを端末130の他の要素に提供する。1つの態様において、ユーザー入力サブシステム230はタッチスクリーンを含む。タッチスクリーン上にコントロールが提示されて、ユーザーが検査室設備120を制御することまたはクロマトグラム解析ツール240とインタラクトすることを可能にする。ユーザー入力サブシステム230によって提供されるユーザーインターフェースの諸態様について、図7および8を参照しながらさらに詳しく後述する。
【0019】
クロマトグラム解析ツール240は、レポートを生成するため、結果プロバイダーモジュール210によって提供されたデータを解析する。さまざまな態様において、クロマトグラム解析ツール240は、クロマトグラムを領域に細分し、そして、ベストフィットマッチを見つけるために、可能性のある領域形態に対応するテンプレートのセットに各領域をマッチさせる。クロマトグラム解析ツール240は次に、各領域についてのベストフィットマッチに基づきかつ結果の解釈に関するコメントを含む、レポートを生成する。レポートは、各ベストフィットマッチが正しいという見込み、または、確定診断を可能にするさらなる検査についての推奨を、追加的に含んでもよい。例えば、被験者が遺伝性血液疾患の保因者でありうることを結果が示唆する場合、被験者が子を持つことを検討しているならば、検証のためのDNA検査をクロマトグラム解析ツール240が推奨する可能性もある。1つの態様において、クロマトグラム解析ツール240は、必要なデータまたは設備が利用可能ならばさらなる解析を自動的にトリガーしてもよく、そしてそれに従ってレポートを更新してもよい。クロマトグラム解析ツール240のさまざまな態様の詳細は、図3を参照しながらさらに詳しく後述する。
【0020】
図3に、図2に示した検査室端末120のクロマトグラム解析ツール240の1つの態様を示す。図3に示す態様において、クロマトグラム解析ツール240は、前処理モジュール310と、領域同定モジュール320と、テンプレートストア(template store)325と、テンプレートマッチングモジュール330と、結果評価モジュール340とを含む。他の態様において、クロマトグラム解析ツール240は、異なるまたは追加的な要素を含有する。加えて、諸機能が、本説明と異なる様式で要素間に分配されていてもよい。
【0021】
前処理モジュール310は、データのさらなる解析の前にさまざまなベースライン演算および品質チェックを行う。いくつかの態様において、前処理モジュール310は、それ以降の解析の前にクロマトグラムに対するベースライン減算を行う。いくつかの態様において、前処理モジュール310がクロマトグラムの初期解析を行ってもよい。例えば、前処理モジュール310が高さおよび面積を計算してもよく、そしてキャリブレーション済みおよび未キャリブレーションの結果を生成してもよい。前処理モジュール310はまた、効率的な解析を補助するため、1つまたは複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和を、これらのキャリブレーション済みおよび未キャリブレーションの結果から計算してもよい。
【0022】
いくつかの態様において、前処理モジュール310はデータの品質を解析する。そうした1つの態様において、品質解析は、不正確な結果である見込みが高いことを示す可能性がある、データ中の特徴についてチェックする。例えば、品質解析モジュール310は、クロマトグラムについての総面積を最小面積閾値と比較し、そして総面積が閾値未満ならばその検査データを低品質としてフラグ付けしてもよい。この例において、前処理モジュール310が、上述のように計算された特殊な和を用いてもよい。検査データが低品質データとしてフラグ付けされたならば、前処理モジュール310は解析を終了してもよく、そして新たな検査が行われるべきであることを示してもよい。このことは、信頼できないデータのさらなる解析に時間およびリソースが無駄に使われることを防ぐことができる。そうしたケースにおいて、前処理モジュール310はサンプルの再検査を自動的にトリガーしてもよい。別の実施例において、前処理モジュール310は、公知のピーク(例えばA1cまたはA2ピーク)の幅、指数関数的に修正されたGaussianフィット(exponentially modified Gaussian fit)のシグマ値およびタウ値、または指数関数的に修正されたGaussianフィットのシグマ値およびタウ値から導出される指標を見て、閾値を上回るならば警告コメントを追加してもよい。他の例として、品質解析モジュール310が、指数関数的に修正されたGaussianのタウ/シグマ比または別の指標を用いて、不均一なベースラインおよび非対称性の強いピーク(例えばピークのテーリング)についてチェックするなどであってもよい。
【0023】
領域同定モジュール320はクロマトグラムを領域に分割する。領域同定モジュール320は、クロマトグラムの特徴および/または絶対時間もしくは正規化時間を用いて各領域の開始時間および終了時間を決定する。1つの態様において、領域同定モジュール320は、予測される範囲内の予測される特徴を探索することによって領域の境界を決定する。例えば領域決定モジュール320は、予測される範囲内の、以下のうち1つまたは複数を探索することによって、領域の開始境界または終了境界を決定してもよい:最初のピーク開始点もしくは谷、最後のピーク開始点もしくは谷、強度が最も低いピーク開始点もしくは谷、最初の谷もしくはピーク終了点、最後の谷もしくはピーク終了点、強度が最も低い谷もしくはピーク終了点、最初のピーク開始点もしくは谷もしくはピーク終了点、最後のピーク開始点もしくは谷もしくはピーク終了点、強度が最も低いピーク開始点もしくは谷もしくはピーク終了点、または最後のピーク終了点。例えば領域同定モジュール320は、領域1(例えば領域1 610)と領域2(例えば領域2 620)との間の境界である保持時間を、ピークFおよびピークLA1cが溶離される(elute)ところに対応する保持時間範囲内の局所極小として決定する;その決定は、ピークFおよびピークLA1cが両方とも存在するならば、ピークFの全部が領域1内で構成され、かつピークLA1cの全部が領域2内で構成されるように行われる。予測されるピーク特徴が予測される範囲内に見いだされたならば、対応する領域境界としてそれが用いられる。そうでないならば、デフォルト値(例えば絶対時間または正規化時間)が境界に用いられてもよい。このことは、予測されるピークは出現しないが異例的なピークが出現しているという異例的なケースにも対応できる可能性がある。領域同定モジュール320は選択された特徴に基づいて領域を決定するので、領域はそれぞれサイズ(すなわち保持時間の長さ)が異なる可能性がある。
【0024】
図6は、1つの態様に基づく、クロマトグラムを領域に分割した例を示した表600である。表600はクロマトグラムを5つの領域に分割しており、そして各領域について開始特徴と終了特徴とを列挙している。図6に示す例において、領域1 610はクロマトグラムの開始時(すなわち保持時間0.0)に始まり、そしてピークFが存在するならばFの終了に対応する保持時間に終わる。すなわち、領域1 610は、ピークA1a、A1b、およびFが存在するならばそれらが溶離される保持時間範囲を構成する。領域2 620は、ピークLA1c、HbA1c、およびP3が存在するならばそれらが溶離される保持時間範囲で構成されるように、ピークLA1cが存在するならばその開始に対応する保持時間で始まり、そしてピークP3が存在するならばその終了に対応する保持時間で終わる。領域3 630、領域4 640、および領域5 650も同様に、対応する開始および停止の特徴または時間によって定義される。表600は、クロマトグラムにおいてよく見られるウィンドウ化コンポーネント(windowed component)という点から領域610、620、630、640、650の境界を説明している。しかし、いくつかの態様において、境界はこれらウィンドウ化コンポーネントの同定には依存しない。
【0025】
図3に戻ると、テンプレートストア325は、テンプレートの1つもしくは複数のセット、または必要に応じてテンプレートを生成するために必要なパラメーターを保存している。各テンプレートはクロマトグラムの領域の原型的形状に対応し、ここで各原型的形状はそのクロマトグラム領域の特定の原型を表したものである。原型的形状は、構築されたもの、現実のもの、または現実のものと構築されたものとの組み合わせであってもよく、ここで各原型的形状は、クロマトグラムのその特定領域内に見いだされるピークおよびトラフのうち1つまたは複数を模倣する。現実の原型的形状は、個々のクロマトグラムまたは組み合わされたクロマトグラムのいずれかのクロマトグラフィーデータの現実のデータセットに由来する。構築される原型的形状は、例えば予測される曲線を構築する専門家などによって、原型を表すために人工的に作成される。各領域は、各テンプレートが異なる原型的形状を有する、テンプレートのセットと関連付けられる。例えば、領域1に対するテンプレートが、正常なA1a、A1b、およびFピークの原型的形状を具備してもよく、ここで各テンプレートはそれらピークのうち1つまたは複数の高さ、幅、対称性が異なっており、かついくつかのテンプレートにおいてピークのいくつかが完全に欠落していてもよい。他の例において、異常反応についての予測される原型的形状が含まれていてもよい。領域と関連付けられた、テンプレートストア325内の各テンプレートセットは、索引付けされてさまざまなファクターによって探索可能になってもよく、そうしたファクターとしては、特定のピークの高さ、特定のピークの欠如、または、ある一定の医学的コンディションと関連付けられたクロマトグラムデータを表すことが公知であるテンプレートのサブセットなどがある。
【0026】
テンプレートマッチングモジュール330は、各領域についてベストフィットマッチであるテンプレートを決定するため、テンプレートのセットをクロマトグラムの個々の領域と比較する。テンプレートマッチングモジュールは、クロマトグラムの領域を、テンプレートストア325内に保存されたその領域と関連付けられたテンプレートセット内のテンプレートと比較する。1つの態様において、テンプレートマッチングモジュール330は、テンプレートストア325からの第一のテンプレートを、その領域のデータにわたってスライドさせる。テンプレートマッチングモジュール330は、第一テンプレートと領域のデータとの間でベストフィットを有する、領域上での第一テンプレートのポジションを決定する。テンプレートマッチングモジュール330は、第一テンプレートとデータとの、異なるアライメントにおいて、第一テンプレートとデータとの相関係数R値を決定することによって、領域のデータ上でベストフィットとなる第一テンプレートのポジションを決定してもよい。アライメントは1つまたは2つの次元で生じてもよい。例えば、アライメントが、1つの次元におけるオフセットを含んでもよい。
【0027】
いくつかの態様において、アライメントはジッター範囲によってパラメーター化される;ジッター範囲は、予測される保持時間に基づき、異なる特徴についてキャリブレーションされてもよい。相関係数R値が最も高くなる、第一テンプレートとデータとのアライメントが、第一テンプレートのベストフィットポジションであり、そして、そのR値がそのデータについて第一テンプレートと関連付けられる。テンプレートマッチングモジュールは、テンプレートストア325内の他のテンプレートについても、ベストフィットの相関係数R値を決定する方法を繰り返す。テンプレートセットのうち全体的に最も高いR値を有すると決定されたテンプレートが、テンプレートマッチングモジュール330によって、その領域についてのベストフィットマッチであると決定される。テンプレートマッチングモジュール330は、クロマトグラムの領域の各々に対してベストフィットマッチを見つける。他の態様において、フィットの近さを示す他の尺度が用いられてもよい。
【0028】
いくつかの態様において、テンプレートマッチングモジュール330は、特定の領域に関連付けられた、テンプレートストア325内に保存されたセット内のひとつひとつのテンプレートをマッチさせる。他の態様において、テンプレートマッチングモジュール330は、ベストフィットマッチの決定を迅速に行うために、決定されたフィットの近さの尺度を用いてもよい。例えば、テンプレートマッチングモジュール330が第一テンプレートについて閾値を上回る相関係数R値を決定すると、そのことは、第一テンプレートに類似するテンプレートのサブセットとの追加的な比較をトリガーする。同様に、テンプレートマッチングモジュール330が、第二のテンプレートについて閾値を下回る相関係数R値を決定すると、そのことは、第二テンプレートに類似するテンプレートのサブセットとの比較をスキップするようにテンプレートマッチングモジュール330をトリガーする。
【0029】
テンプレートマッチングモジュール330はまた、1つまたは複数のコメントを追加してもよい。例えば、コメントは、予備的パターンに関連する潜在的な診断ピットフォールを同定してもよく;診断に至ることを助けるさらなる検査を提案してもよく;または、考慮されるべき他の要因(例えば被験者の民族性)を同定してもよい。
【0030】
結果評価モジュール340は、各領域についてテンプレートマッチングモジュール330からの出力を受け取り、レポートを作成する。結果評価モジュール340は、各領域についてのベストフィットマッチを全体の解析に組み込む。可能性のある医学的コンディションの決定を行うために、キャリブレーションされた面積パーセントまたは他の前処理結果が領域マッチ情報と組み合わされてもよい。いくつかの態様において、結果評価モジュール340は、各ベストマッチテンプレートをエンドツーエンドで組み合わせて全体的なベストフィットテンプレートを生成してもよい。別の態様において、正規化された領域がベストマッチのテンプレートと個別にオーバーレイされ、そして図7のように横に並べて表示される。結果評価モジュール340によって生成されるレポートは、可能性のある1つもしくは複数の医学的コンディションを同定するか、さもなくば正常性の決定を同定する;または、割り当てなし――変異体の可能性あり(No assignment - possible variant)という結果を返す。例えば、領域は、可能性が高い医学的コンディションの指標および追加的検査の推奨と関連付けられた、ベストフィットマッチテンプレートを有してもよい。いくつかの態様において、1つのテンプレートが、可能性のある複数の医学的コンディションを示してもよい。別の実施例において、2つまたはそれ以上の領域について決定されたベストフィットマッチテンプレートと、前処理の結果との組み合わせが、医学的コンディションを示してもよく、または、そのコンディションについて、いずれかのテンプレートマッチ単独の場合よりも高い見込みを示してもよい。
【0031】
結果評価モジュール340によって生成されるレポートはまた、個々のテンプレートまたはテンプレートの組み合わせと関連付けられたデータに基づく、レポートの解釈に関するコメントまたは助言も含んでもよい。例えばコメントは、1つもしくは複数の医学的コンディションの各々をその個人が有する見込みについての指標;さらなる検査についての推奨;その1つもしくは複数の医学的コンディションと関連付けられた一般的なピットフォール;または、各医学的コンディションについての追加的情報を含んでもよい。例えば、ベータサラセミアについて検査する時、生成されるレポートは、HbA1cおよび/またはA2/Eの結果と並んで、ヘモグロビンパターンについての情報を、関連するコメントおよび注記とともに含んでもよい。追加されるコメントは、検査室の科学者に警告を発しかつ結果の解釈において臨床医を助けてもよい。別の実施例において、結果評価モジュール340によって追加されるコメントは、特定のヘモグロビン変異体の存在など、検査結果の特徴に関するコメントを含んでもよく、または、(例えば、結果が信頼できないことを解析結果が示唆するなどであれば)検査結果が抑制または反復されるべきであることを示すフラグを設定してもよい。
【0032】
図7Aに、ベストフィットマッチテンプレートとオーバーレイされた、クロマトグラムデータの領域の視覚的表象の例を示す。図7Aは、領域1の視覚的表象710、領域2の視覚的表象720、領域3の視覚的表象730、領域4の視覚的表象740、および領域5の視覚的表象750を含む。領域同定モジュール320は、クロマトグラムデータ760(図7Bを参照)を、視覚的表象710、720、730、740、750によって表される領域に分割する。各領域の各視覚的表象710、720、730、740、750は、それぞれ、その領域のクロマトグラムデータのプロット712、722、732、742、752と、テンプレートマッチングモジュール330によって決定されたベストフィットテンプレート714、724、734、744、754とを含む。各視覚的表象710、720、730、740、750はまた、クロマトグラムデータのプロット712、722、732、742、752と、テンプレートマッチングモジュール330によって決定される、それぞれの領域についてのベストフィットテンプレート714、724、734、744、754との間のマッチについての、オフセット値およびR値を提供する、結果のサマリー716、726、736、746、756も含む。
【0033】
例えば、領域1の視覚的表象710は、クロマトグラムデータ712に対するベストフィットテンプレート714とオーバーレイされた、領域1のクロマトグラムデータのプロット712を含む。クロマトグラムデータのプロット712は、ベストフィットテンプレート714とまったく同じではないものの形状が類似する。例えば、ピークが、類似した形状をしているが、高さがやや異なる。テンプレートマッチングモジュール330は、クロマトグラムデータのプロット712について、ベストフィットテンプレート714が、テンプレートストア325内の領域1に対する全テンプレートのうち相関係数R値が最も高い原型的形状であると決定した。ベストフィットテンプレート714とクロマトグラムデータのプロット712とについての相関係数R値は、結果716によって示されているように0.9324である。テンプレートストア325内の、領域1に対する他のテンプレートは、クロマトグラムデータのプロット712に対して0.9324より低い相関係数R値を有する。ベストフィットテンプレート714が1つまたは複数の医学的コンディションと関連付けられていてもよい。
【0034】
図7Bに、1つの態様に基づく、クロマトグラム解析ツール240によって生成されてもよいクロマトグラムデータ760およびレポート770の例を示す。クロマトグラムデータ760はクロマトグラムデータのプロット712、722、732、742、752の領域に分割されてもよい。クロマトグラムデータ760は、クロマトグラムデータのプロット712、722、732、742、752と関連付けられた各領域番号を示すオーバーレイとともに表示される。クロマトグラム解析ツール240は、例示的なクロマトグラム解析データ760からレポート770をもたらす。図7Aのクロマトグラムデータのプロット712、722、732、742、752に対するベストフィットテンプレート714, 724, 734, 744, 754は、クロマトグラムデータ760の各領域についてクロマトグラム解析ツールによって決定されたベストフィットマッチテンプレートを視覚化したものである。レポート770は各領域についてのベストフィットマッチ714、724、734、744、754に基づいて生成される。
【0035】
レポート770はクロマトグラムデータ760についての情報を提供する。図7Bに示す態様において、レポート770は、患者情報771、ベストフィットマッチテンプレート名、関連するベストフィットマッチテンプレート名773および関連する相関係数R値774をそれぞれ伴う領域のリスト772、コメント775、ならびに任意的な注記776を含む、さまざまな情報を含む。他の態様において、レポート770が、クロマトグラムデータ760についての追加的または代替的な情報を含んでもよい。
【0036】
患者情報771は、患者ID、ならびに、検査されてクロマトグラムデータ760をもたらしたサンプルの位置を示すラックおよびポジションなど、患者についての関連情報を含む。他の態様において、患者情報771は、氏名、血液型、担当医師、人口統計学的データ、検査日時、および患者と関連付けられた他の健康情報を、追加的または代替的に含んでもよい。患者情報は、クロマトグラム解析ツール240によってもたらされるのではなくローカルストレージ260内に保存されてもよい。
【0037】
領域のリスト772はクロマトグラムデータ760の領域を列挙する。領域のリスト772内の各領域は、列挙されたベストフィットマッチテンプレート名773、およびベストフィットマッチテンプレートについての関連する相関係数R値774と関連付けられる。レポート770内で列挙されるベストフィットマッチテンプレート名773は、図7Aに示した各領域についてのベストフィットマッチ714、724、734、744、754と関連付けられた固有の名前である。例えば、ベストフィットマッチ714は「BARTSおよびH1(BARTS and H1)」と呼ばれる。レポート770内で列挙される相関係数R値774は、図7Aの結果のサマリー716、726、736、746、756内で列挙されるR値と同じである。例えば、領域1についての相関係数R値は、図7Aおよび7Bの両方に示されているように0.934である。
【0038】
コメント775は、可能性のある1つもしくは複数の医学的コンディション、または他の医学情報を示す。図7Bにおけるコメント76は、患者が「コンスタントスプリングを伴うBARTS(BARTS with Constant Spring)」を有する可能性が高いことを示している。他の態様において、コメント775は、図8に関して後述する例など、可能性のある他の医学的コンディション、または正常性の指標を示してもよい。1つの態様において、クロマトグラム解析ツール240によって生成されるコメント775は、(例えば端末130において)検査室の監督者に提示され、そして検査室の監督者がそれらを承認した場合にのみレポート770上に含まれる。
【0039】
注記776は、%A2の結果を、その医学的障害について予測される%A2範囲とともに示している。注記776はクロマトグラム解析ツール240の前処理モジュール310によってもたらされてもよい。代替的な態様において、注記776が追加的または代替的な情報を含んでもよい。
【0040】
図8に、1つの態様に基づく、クロマトグラム解析ツール240によって生成された複数の結果のレポート800の例を示す。レポート800は複数の解析サンプルから得られた複数の結果を含む。サマリー800は端末130上に表示されてもよい。いくつかの態様において、サマリーレポート情報は、スプレッドシートアプリケーションによって使用できる形式でエクスポートされてもよく、または印刷されてもよい。レポート800は、各サンプルについて、サンプル名、各領域についてのテキスト名および相関係数、コメント、および任意的な注記を含む。
【0041】
各サンプル中の各領域についてのテキスト名は、クロマトグラム解析ツール240によって決定された、その特定サンプルについての特定領域と関連付けられたベストフィットマッチテンプレートに対する名前を示す。各領域のテキスト名についての列タイトルは、レポート800において領域1について「領域1テキスト(Region 1 Text)」として略されており、他の領域についても同様である。例えば、サンプル5は「A0優位(A0 Predominate)」という領域3テキスト名を有する。
【0042】
各サンプル中の各領域についての相関係数は、領域内のクロマトグラムデータとベストフィットマッチテンプレートとの間の近さを示す値(例えばR値)である。相関係数についての列タイトルは、レポート800において「領域1 CC(Region 1 CC)」として略されており、他の領域についても同様である。各相関係数は、それぞれの相関係数のすぐ左側のテキスト名と関連付けられたベストフィットマッチテンプレートと関連付けられている。例えば、サンプル5は、A0優位と呼ばれるベストフィットマッチテンプレートに対して0.9246という領域3の相関係数を有する。
【0043】
各サンプルについてのコメントは、可能性のある1つまたは複数の医学的コンディションの指標を提供する。コメントはクロマトグラム解析ツール240によって提供される。コメントについての列タイトルはレポート800における「コメント(Comments)」である。図8に列挙されているように、コメントによって示される、可能性のある医学的コンディションには、HbH、BARTS、コンスタントスプリング、F高値、ベータサラセミアメジャー、ベータ0/E、SC、O-Arab、CC、SS、EE、ベータサラセミア形質が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0044】
各サンプルについての注記は、そのサンプルについての追加的な情報を提供する。コメントはクロマトグラム解析ツール240または別のモジュールによって提供されてもよい。注記についての列タイトルはレポート800における「注記(Notes)」である。例えば図8において、最初の行は、A2ピーク/Eピークのパーセンテージが0.70であるという注記を含む。レポート800内においてサンプルと関連付けられたテキスト名、相関係数、コメント、および注記は、一度に多数のサンプルを読み取ることを容易にする。レポート800は図7Bのレポート770に対する追加または代替として提供されてもよい。
【0045】
変異体反応を伴う97件のクロマトグラムのセットについて本発明の1つの態様をランし、そして本発明による結果を、手動で検討した割り当てと比較した。22件のクロマトグラムはテンプレートライブラリ内に含有されていない変異体サンプルであった。その22件のクロマトグラムのうち20件は「割り当てなし――変異体の可能性あり」という結果を返し、2件のクロマトグラムはBARTSという結果を返した。いずれの結果も検査の増大およびサンプルの精査をトリガーする。さらに2件のクロマトグラムは輸血後のサンプルに由来したものであり、それらもまた「割り当てなし――変異体の可能性あり」という結果を返した。残る73件のクロマトグラムのうち67件は手動のクロマトグラム割り当てとアライメントしているものとして割り当てられた。6件の差異のうち4件は、%A2の結果の解釈が異なることに起因しうると考えられたので、この方法と手動の精査との間で、正常について異なる%A2カットオフを用いた。これら4件のクロマトグラムは正常として同定されたが、手動でベータサラセミア形質が割り当てられた。残る2件の不一致は A2+A2' という結果を返したが、手動の割り当てはやはりベータサラセミアであった。この結果はさらなる調査をトリガーする。
【0046】
コンピューティングシステムアーキテクチャー
図4に、1つの態様に基づく、検査室端末120またはLIS 110としての使用に好適である例示的なコンピューター400を図示する。例示的なコンピューター400は、チップセット404に連結された少なくとも1つのプロセッサー402を含む。チップセット404はメモリコントローラーハブ420および入力/出力(I/O)コントローラーハブ422を含む。メモリ406およびグラフィックアダプター412がメモリコントローラーハブ420に連結され、かつディスプレイ418がグラフィックアダプター412に連結される。ストレージデバイス408、キーボード410、ポインティングデバイス414、およびネットワークアダプター416がI/Oコントローラーハブ422に連結される。コンピューター400の他の態様は異なるアーキテクチャーを有する。
【0047】
図4に示す態様において、ストレージデバイス408は、ハードドライブ、コンパクトディスク読出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD、または固体メモリデバイスなど、非一時的コンピューター可読媒体である。メモリ406はプロセッサー402によって用いられる命令およびデータを保持する。ポインティングデバイス414は、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、または他のタイプのポインティングデバイスであり、そして、コンピューターシステム400にデータを入力するためキーボード410(オンスクリーンキーボードであってもよい)と組み合わせて用いられる。グラフィックアダプター412は画像および他の情報をディスプレイ418上に表示する。ネットワークアダプター416はコンピューターシステム400を1つまたは複数のコンピューターネットワークに連結する。
【0048】
図1~3のエンティティによって用いられるコンピューターのタイプは、態様と、そのエンティティが要求する処理パワーとに応じて、さまざまであってもよい。例えば、LIS 110が、本説明の機能性を提供するため、一緒に作動する複数のブレードサーバーを具備する分散データベースシステムを含んでもよい。さらに、コンピューターは、キーボード410、グラフィックアダプター412、およびディスプレイ418など、上述のコンポーネントのいくつかを欠いていてもよい。
【0049】
例示的方法
図9は、1つの態様に基づく、血液クロマトグラフィーデータについてのレポートを生成するための方法を図示したフローチャートである。図9の諸段階は本方法を行っているクロマトグラム解析ツール240の視点から図示されている。しかし、段階のいくつかまたは全部が他のエンティティまたはコンポーネントによって行われてもよい。加えて、いくつかの態様において、諸段階が並列で行われるか、諸段階が異なる順序で行われるか、または異なる段階が行われてもよい。
【0050】
図9に示す態様において、本方法は、クロマトグラム解析ツール240が患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィーデータを受け取る段階910で始まる。いくつかの態様において、クロマトグラム解析ツール240は血液検査クロマトグラフィーデータを検査室設備120から受け取る。他の態様において、クロマトグラフィー解析ツール240は血液検査クロマトグラフィーデータをLIS 110から受け取る。受け取られる血液検査クロマトグラフィーデータは複数のピークを含む。各ピークはヘモグロビンのタイプに対応し、かつ、血液サンプル中に存在する対応タイプのヘモグロビンの量を示す値を有する。血液検査クロマトグラフィーデータを受け取る段階910の後、前処理モジュール310が、血液検査クロマトグラフィーデータの品質を解析するか、サンプル解析を行うか、特殊な和を計算するか、またはベースライン減算を行ってもよい。
【0051】
クロマトグラム解析ツール240はクロマトグラフィーデータの複数の領域を同定920する。同定する段階920は、図3に関して説明した領域同定モジュール320によって行われる。各領域は、異なるクロマトグラフィーピーク範囲からのクロマトグラフィーデータを含む。各領域の開始点および終了点は、クロマトグラフィーデータの特徴に基づいて、または絶対時間によって、同定920されてもよい。
【0052】
クロマトグラフィー解析ツール240は、各領域について、その領域に対応する複数の領域テンプレートを検索930し、そして、領域テンプレートをその領域内に含まれるクロマトグラフィーデータと比較することによってベストフィットマッチ領域テンプレートを同定940する。前記複数の領域テンプレートはテンプレートマッチングモジュール330によってテンプレートストア325から検索930される。ベストフィットマッチ領域を同定する段階940はテンプレートマッチングモジュール330によって行われる。
【0053】
クロマトグラフィー解析ツール240は、各領域についてのベストフィットマッチ領域テンプレートに基づいてレポートを生成950する。1つの態様において、クロマトグラフ解析ツール240は、%A2/Eなど、前処理モジュール310からの情報にも追加的に基づいてレポートを生成950する。生成する段階950は結果評価モジュール340によって行われる。生成950されたレポートは、1つまたは複数の医学的コンディションと;クロマトグラムデータに関するコメントと;一般的なピットフォール、追加的検査についての推奨、または追加的情報などを含む、前記1つまたは複数の医学的コンディションに関するコメントとを含んでいてもよい。レポートは、例えばディスプレイサブシステムまたは他の任意のディスプレイ端末による表示用に生成950されてもよい。
【0054】
追加的な考慮事項
以上の説明のいくつかの部分は、オペレーションのアルゴリズム的処理という点において諸態様を説明している。これらのアルゴリズム的な説明および表象は、データ処理技術の当業者によって、その仕事の実質を他の当業者に効果的に伝えるために広く用いられている。これらのオペレーションは、機能的、計算的、または論理的に説明されているが、プロセッサーによって実行されるための命令を具備するコンピュータープログラム、または同等の電気回路もしくはマイクロコードなどによって実施されるものと理解される。さらに、機能的オペレーションのこれらアレンジメントをモジュールと呼ぶことは、一般性を失うことなく、時に便利であることが証明されている。
【0055】
本明細書において用いられる「1つの態様(one embodiment)」または「1つの態様(an embodiment)」への参照は、その態様との関連において説明される具体的な要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。本明細書のさまざまな箇所における「1つの態様において(in one embodiment)」という句の出現は、必ずしもすべて同じ態様を参照するわけではない。
【0056】
いくつかの態様が、「連結され(coupled)」および「接続され(connected)」という表現、ならびにそれらの派生形を用いて説明される可能性がある。理解されるべき点として、これらの用語は、互いの同義語であるとは意図されていない。例えば、いくつかの態様が、2つまたはそれ以上の要素が互いに物理的または電気的に直接接触していることを示すために「接続され」という用語を用いて説明される可能性がある。別の例において、いくつかの態様が、2つまたはそれ以上の要素が物理的または電気的に直接接触していることを示すために「連結され」という用語を用いて説明される可能性がある。しかし、「連結され」という用語はまた、2つまたはそれ以上の要素が、互いに直接接触していないが、それでも互いに協動または相互作用する、ということも意味しうる。その態様はこの文脈において限定されるわけではない。
【0057】
本明細書において用いられる、「具備する/含む(comprises)」、「具備している/含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、またはそれらの他の任意のバリエーションは、非排他的包含をカバーすることが意図されている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、それら要素のみに必ずしも限定されるわけではなく、明示的に列挙されない、またはそうしたプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有でない、他の要素を含んでもよい。さらに、別段の明示的言明がない限り、「または/もしくは(or)」は、排他的な「または/もしくは」ではなく包含的な「または/もしくは」を指す。例えば、条件AまたはBは、Aが真(もしくは存在)かつBが偽(もしくは非存在)、Aが偽(もしくは非存在)かつBが真(もしくは存在)、ならびに、AおよびBの両方が真(もしくは存在)、のうちいずれか1つによって満たされる。
【0058】
加えて、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、諸態様の要素およびコンポーネントを説明するために利用される。このことは、利便性のため、および、本開示の一般的意味を与えるためになされるにすぎない。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものとして読まれるべきであり、かつ、別段を意味することが明らかでない限り単数形は複数もまた含む。
【0059】
本開示を読んだ当業者には、異常ヘモグロビン症の評価を補助するクロマトグラム解析ツールを提供するためのシステムおよびプロセスについて、さらに追加の代替的な構造的および機能的設計が認識されるであろう。ゆえに、特定の態様と用途とを以上に例証および説明したが、本説明の内容は本明細書に開示したとおりの構築およびコンポーネントに限定されるわけではないこと、ならびに、当業者に認識されるであろうさまざまな修正、変更、およびバリエーションが、本開示の方法および装置のアレンジメント、オペレーション、および細部に対して行われうることが、理解されるべきである。保護の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【0060】
特許請求可能な対象事項は、添付の特許請求の範囲を含むが、それに限定されるわけではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9