(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-30
(45)【発行日】2025-06-09
(54)【発明の名称】焼却炉及び焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20250602BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20250602BHJP
【FI】
F23G5/00 119F
F23G5/44 C
F23G5/44 D
F23G5/44 F
(21)【出願番号】P 2021008986
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020008612
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599058899
【氏名又は名称】橋本 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 恭一
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-310405(JP,A)
【文献】登録実用新案第3040901(JP,U)
【文献】実開昭50-031779(JP,U)
【文献】特開平09-021515(JP,A)
【文献】実開平07-032330(JP,U)
【文献】特開2005-009799(JP,A)
【文献】特開2009-030877(JP,A)
【文献】特開2018-179494(JP,A)
【文献】特開2005-180727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
F23G 5/44
F23M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁で囲まれた焼却物収容空間の中央部に、底部から立ち上がり、内外に連通する孔が形成されるとともに焼却物を保持できる筒状の燃焼壁部を設け、この燃焼壁部の近傍において上記焼却物が燃焼させられる焼却炉であって、
上記燃焼壁部の内部空間に連通するとともに上方に向けて延びる煙突と、
上記焼却物収容空間内に空気を供給できる空気供給手段と、
上記焼却物収容空間の上部から上記外壁の外側を経由して上記燃焼壁部の内部空間の下部に連通し、上記焼却物収容空間の上方から上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させる空気流動通路とを備え、
上記空気供給手段は、空気供給ファンを備えて構成されているとともに、 上記焼却物収容空間の上部に上記空気を供給する上部吹き出し口と、 上記焼却物収容空間の下部に上記空気を供給する下部吹き出し口とを備える一方、
上記焼却物収容空間の上部における上記煙突の外面に沿って設けられて上記空気流動通路に連通する空気吸入口を備える、焼却炉。
【請求項2】
上記外壁を囲うように所定の隙間を開けて設けられた断熱壁を備え、上記隙間が、上記焼却物収容空間と上記燃焼壁部の内部空間に連通させられて、上記空気流動通路を構成している、請求項1に記載の焼却炉。
【請求項3】
上記燃焼壁部は、円筒状の下方燃焼壁部と、上記下方燃焼壁部から上方に延出する円錐側面状の上方燃焼壁部とを備え、上記上方燃焼壁部の上方から、上記煙突が延出させられており、
上記上方燃焼壁部の側方周囲に所定の隙間を開けて形成されるとともに、下方が上記焼却物収容空間に開口する円錐側面状のスカート部が設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の焼却炉。
【請求項4】
上記外壁の上部に、焼却物を投入する投入口が設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の焼却炉。
【請求項5】
上記投入口は、
焼却物収容空間に貫通して設けられ、内部に焼却物投入空間を有する筒状に形成されているとともに、
上記焼却物投入空間の下方に設けられて上記焼却物投入空間の内側を閉鎖できる内方蓋部と、上記焼却物投入空間の上方に設けられて上記焼却物投入空間の外側を覆う外方蓋部とを備え、
上記外方蓋部が閉状態にあるとき、上記内方蓋部が上記焼却物収容空間に向けて開状態に保持されているとともに、上記外方蓋部が外部空間に向けて開状態にあるとき、上記内方蓋部が閉状態に保持されるように構成されている、
請求項4に記載の焼却炉。
【請求項6】
上記外方蓋部と上記内方蓋部は、リンク機構によって連結されている、
請求項5に記載の焼却炉。
【請求項7】
上記投入口は、
焼却物収容空間に貫通して設けられており、
上記外壁の外側において、上記投入口を開閉可能に覆う蓋部
を備え、
上記外壁の内側における上記投入口の上縁部に、上記空気供給手段から空気が供給されるとともに、上記投入口を覆うように層状の空気流を吹き出す空気吹き出し手段が設けられている
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の焼却炉。
【請求項8】
上記空気流動通路の所定箇所に、空気の流動量を調節する流動量調節手段が設けられて
いる、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の焼却炉。
【請求項9】
上記空気供給手段から、上記焼却物収容空間を経ることなく、上記空気流動通路を介して上記燃焼壁部の内側へ空気を送ることができる流路切替え弁を備える、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の焼却炉。
【請求項10】
上記空気流動通路の下端部に、上記燃焼壁部の内部空間ヘ流入する空気の流動を規制する上記流動量調節手段を設けた、
請求項8に記載の焼却炉。
【請求項11】
上記流動量調節手段が、上記燃焼壁部の下縁部に所定の隙間を開けて対向する縁部を有し、上記燃焼壁部の内部空間への空気の流動を規制する空気流動規制壁部である、
請求項10に記載の焼却炉。
【請求項12】
少なくとも上記焼却物収容空間内の上記煙突の外周を囲むように、円筒状の冷却水流動路が設けられ、
上記冷却水流動路は、上記焼却物収容空間の上方から上記煙突の下端部に向けて冷却水が流動させられる第1の流動路と、上記第1の流動路に連通するとともに上記煙突の下端部から上方に向けて冷却水が流動させられる第2の流動路とを備えて構成されており、
上記第2の流動路の上端部に冷却水排出口が設けられている、請求項1から
請求項11のいずれか1項に記載の焼却炉。
【請求項13】
外壁で囲まれた焼却物収容空間の中央部に、底部から立ち上がり、内外に連通する孔が形成されるとともに焼却物を保持できる筒状の燃焼壁部を設け、この燃焼壁部の近傍において上記焼却物が燃焼させられる焼却炉における焼却方法であって、
上記焼却炉は、
上記燃焼壁部の内部空間に連通するとともに上方に向けて延びる煙突と、
上記焼却物収容空間内に空気を供給できる空気供給手段と、
上記焼却物収容空間の上部から上記外壁の外側を経由して上記燃焼壁部の内部空間の下部に連通する空気流動通路とを備え
、
上記空気供給手段は、空気供給ファンを備えて構成されているとともに、 上記焼却物収容空間の上部に上記空気を供給する上部吹き出し口と、 上記焼却物収容空間の下部に上記空気を供給する下部吹き出し口とを備える一方、
上記焼却物収容空間の上部における上記煙突の外面に沿って設けられて上記空気流動通路に連通する空気吸入口を備えて構成されており、
上記焼却物収容空間内
の上部と下部に空気を供給するとともに、上記焼却物収容空間の上方
に設けた上記空気吸入口から上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させながら上記焼却物を焼却する、焼却炉における焼却方法。
【請求項14】
上記外壁を囲うように所定の隙間を開けて設けられた断熱壁を備え
上記隙間が上記空気流動通路を構成するとともに、上記焼却物収容空間内の空気を、上記外壁の外面に沿って上記燃焼壁部の内部空間に流動させながら上記焼却物を焼却する、
請求項13に記載の焼却炉における焼却方法。
【請求項15】
少なくとも、焼却炉の運転開始時において、上記空気供給手段から上記焼却物収容空間への空気供給量、及び/又は上記焼却物収容空間内から上記燃焼壁部の内部空間に流動する空気量を制限する、
請求項13又は請求項14のいずれか1項に記載の焼却炉における焼却方法。
【請求項16】
少なくとも、焼却炉の運転開始時において、上記空気供給手段から上記焼却物収容空間への空気の流動を遮断又は制限するとともに、
上記空気供給手段から、上記空気流動通路を介して上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させる、
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の焼却炉における焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、焼却炉に関し、詳しくは、焼却物を高温で効率よく燃焼させることができるとともに、煙突からの排気温度を低下させることができ、さらに、燃焼ガスが焼却物収容空間から漏れ出るのを防止できる焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
農家や学校等で従来から使用されてきた小型焼却炉は、燃焼温度が低く不完全燃焼ガスを排出しやすい。また、ダイオキシン対策も施しにくいことから、使用が制限されることが多くなっている。このため、焼却物を高温で燃焼させることが可能であるとともに、塵芥等の排出をも低減できる小型焼却炉の開発が望まれている。
【0003】
上記問題を解決する目的で、たとえば、実用新案登録第2550572号公報に記載されているような小型焼却炉が提案されている。この焼却炉は、底部ロストル及び垂直ロストルを設けるとともに、上記垂直ロストル上方に再々燃焼室を設け、不完全燃焼ガスを充分に燃焼させて有害ガス等が発生しないように構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼却炉においてダイオキシンを発生させないためには、燃焼温度、燃焼時間、攪拌条件等が重要な要素となる。平成9年1月の「ゴミ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」では、燃焼温度850℃以上(900℃以上が望ましい)、滞留時間2秒以上、かつ炉形状や2次燃焼空気等の供給方法を考慮することにより、効果的な燃焼ガスの攪拌を行い、完全燃焼を達成することが要求されている。
【0005】
しかしながら、上記公報に記載されているような従来の小型焼却炉では、ロストル内の温度を850℃以上に保持することができても、燃焼室全体の温度を850℃以上にすることは困難である。すなわち、焼却物を収容した空間側では低温での燃焼が起こり、不完全燃焼したガスが炉内に充満して焼却物投入口近傍から炉外に漏れ出ることも多い。
【0006】
また、垂直ロストル内で燃焼させられるガス等は、ロストル下方から供給される2次燃焼空気によって燃焼させられるが、2次燃焼空気をロストル下方に設けた外気採り入れ口から直接導入してそのまま垂直ロストルないし底部ロストル内に供給するため、上記ロストル近傍の温度を大幅に低下させる。このため、上記温度に達しない部分も生じるものと推測される。
【0007】
さらに、2次燃焼空気は、垂直ロストル内の燃焼によって生じる上昇気流によって炉内に導入されて、垂直ロストルないし煙突に導かれるため、2次燃焼空気と不完全燃焼に係るガスとが充分に混合されているとは考えにくい。
【0008】
一方、高温の焼却排気ガスを大気に放出する場合、ばいじん中の金属が触媒となり、空気中の有機物からダイオキシンが合成されるデノボ合成が生じるとされている。このデノボ合成は、300℃付近で最も生じやすいとされている。したがって、小型焼却炉ではロストル近傍の燃焼温度を高く維持するとともに、煙突から排出される排気ガスの温度を上記温度より低下させる必要がある。
【0009】
上記公報に記載されている焼却炉においては、煙突の下端部に再々燃焼室を設けて煙突内でも燃焼を促進しているため、その分排気温度が高くなる。したがって、上記デノボ合
成も生じやすい。
【0010】
また、焼却物収容空間内には、不完全燃焼ガスや悪臭ガスが充満することが多い。小型の焼却炉では、上部あるいは側部に焼却物投入口が設けられており、焼却作業中に焼却物を上記焼却物収容空間から所定の間隔で投入することが多い。このとき、不完全燃焼ガスや悪臭ガスが、炉外に漏れ出る恐れがある。
【0011】
本願発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、上記従来の問題を解決し、炉内において燃焼温度を高めることにより焼却物を完全燃焼させてダイオキシンの発生を防止し、一方、煙突からの排気温度を低減させることによりダイオキシンのデノボ合成を抑制でき、さらに、収容された焼却物から生じるガスが焼却物収容空間に充満することがない焼却炉を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、外壁で囲まれた焼却物収容空間の中央部に、底部から立ち上がり、内外に連通する孔が形成されるとともに焼却物を保持できる筒状の燃焼壁部を設け、この燃焼壁部の近傍において上記焼却物が燃焼させられる焼却炉であって、上記燃焼壁部の内部空間に連通するとともに上方に向けて延びる煙突と、上記焼却物収容空間内に空気を供給する空気供給手段と、上記焼却物収容空間の上部から上記外壁の外側を経由して上記燃焼壁部の内部空間の下部に連通し、上記焼却物収容空間の上方から上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させる空気流動通路とを備えて構成される。上記空気供給手段は、空気供給ファンを備えて構成されているとともに、上記焼却物収容空間の上部に上記空気を供給する上部吹き出し口と、 上記焼却物収容空間の下部に上記空気を供給する下部吹き出し口とを備える。また、上記焼却物収容空間の上部における上記煙突の外面に沿って設けられて上記空気流動通路に連通する空気吸入口を備える。
【0013】
本願発明では、外壁で囲まれた焼却物収容空間の中央部に、底部から立ち上がる筒状の燃焼壁部を設け、この燃焼壁部の外面と上記外壁の内面との間に焼却物収容空間が設けられる。上記燃焼壁部は、内外に連通する孔が形成されるとともに焼却物を保持できるように構成される。そして、上記燃焼壁部の近傍において上記焼却物が燃焼させられる。上記燃焼壁部内には、燃焼に必要な空気が供給されるため、上記焼却物は、上記燃焼壁部近傍で燃焼させられ、燃焼残滓は上記燃焼壁部の孔から上記燃焼壁部の内部空間の底部に排出される。このため、燃焼残滓が、上記焼却物収容空間や上記燃焼壁部の近傍から自動的に除去されて焼却物を効率よく燃焼させることができる。上記孔の形態は特に限定されることはない。たとえば、丸棒を所定の隙間(孔)を開けて筒状に並べたり、板状の筒体に所定形状の開口(孔)を所定間隔で設けたり、燃焼壁部の一部又は全部を網状に形成することもできる。
【0014】
また、本願発明では、上記焼却物収容空間内に空気を供給する空気供給手段が設けられる。上記燃焼壁部の内部空間は煙突に繋がっているため、定常的な燃焼状態で、上記燃焼壁部の内側は上記焼却物収容空間に対して負圧となる。上記焼却物収容空間に対する上記空気供給手段を設けることにより、上記燃焼壁部近傍の焼却物には、上記燃焼壁部の内部空間側からのみならず、上記焼却物収容空間側からも燃焼空気が供給される。上記焼却物収容空間側から燃焼空気を供給することにより、上記燃焼壁部近傍の焼却物の燃焼を促進し、焼却物を効率よく燃焼させることができる。特に、始動時には、上記燃焼壁部の内部空間をバーナー等で加熱するが、焼却物収容空間側から燃焼壁部近傍に空気を供給することにより、燃焼壁部近傍の焼却物の燃焼が促進されて、定常運転までの時間を短縮することもできる。
【0015】
上記空気供給手段は、外気を導入する導入口と、空気供給ファンと、上記焼却物収容空間に空気を送り込む吹き出し口とを備えて構成することができる。また、上記吹き出し口として、上記焼却物収容空間の上部に空気を供給する上部吹き出し口と、上記焼却物収容空間の下部に空気を供給する下部吹き出し口とを備えて構成するのが望ましい。上記焼却物収容空間に収容される焼却物の密度が高くなると、上記焼却物中の空気の流動抵抗が大きくなり、上記燃焼壁部近傍まで充分な空気が流動しない恐れがある。上記下部吹き出し口を設けることにより、焼却物の下方内部にまで空気を送り込むことができるため、燃焼壁部近傍まで充分な空気を供給することができる。上記上部吹き出し口及び上記下部吹き出し口の構成は特に限定されることはない。たとえば、上記上部吹き出し口を上記焼却物収容空間の上端部に設ける一方、上記上部吹き出し口に連通するパイプを上記外壁の内側に沿って上記焼却物収容空間の底部近傍まで延出させて上記下部吹き出し口を構成することができる。
【0016】
また、本願発明では、上記焼却物収容空間の上部に設けた空気吸入口から上記外壁の外側を経由して上記燃焼壁部の内部空間の下部に連通し、上記焼却物収容空間の上方から上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させる空気流動通路を設けることができる。
【0017】
上記空気流動通路によって、焼却物収容空間内の空気が上記燃焼壁部の内側へ導かれることになる。すなわち、上記焼却物収容空間の上方から空気が吸い出されて、この空気が燃焼用空気として用いられる。これにより、焼却物収容空間の上方に不完全燃焼ガスや悪臭が充満することがなくなり、外部に漏れ出ることもなくなる。また、燃焼壁部で定常的な燃焼が生じている場合、上記燃焼壁部の内部空間は煙突に向かって燃焼ガスが流動させられるため、上記燃焼壁部の内部空間及び上記空気流動通路が負圧となり、焼却物収容空間内の空気が上記負圧によって自動的に吸引されて、上記燃焼壁部へ導かれる。
【0018】
なお、始動時には、上記燃焼壁部近傍の燃焼が充分ではないため煙が発生しやすく、上記煙が焼却物収容空間内に充満して、外壁の隙間や上記燃焼壁部にいたる空気流動通路の隙間等から上記煙が漏れ出る恐れがある。上記不都合を回避するため、上記空気供給手段から供給される空気量を制限したり、上記空気流動通路の所定箇所に、空気の流動量を調節する流動量調節手段を設けることができる。また、上記空気供給手段から上記焼却物収容空間を経ることなく、上記空気流動通路を介して上記燃焼壁部の内側へ空気を送ることができる流路切替え弁を設けることができる。これにより、上記焼却物収容空間内に充満した煙が漏れ出るのを防止できるとともに燃焼を促進することができる。燃焼壁部の燃焼効率を高めるため、上記空気流動通路内に電動ファン等を設けることもできる。一方、定常状態では、焼却物収容空間に空気を送り込む空気供給ファンを停止させても、上記燃焼壁部の内部空間が負圧となるため空気が上記焼却物収容空間から上記空気流動通路に吸い込まれ、上記焼却物収容空間内に外気を導入することができる。このため、定常燃焼状態においては、電動ファン等の装置を用いることなく、焼却物を燃焼させることも可能となる。
【0019】
しかも、定常燃焼状態では、継続的に焼却物収容空間の上部から空気が吸い出されるため、焼却物を追加投入するために投入口を開口した場合にも、上記投入口から不完全燃焼ガスや悪臭が漏れ出るのを防止できる。なお、空気流動通路にファンを設けることにより、燃焼壁部の内部空間により大量の空気を送り込むように構成して、定常的な焼却となるまでの時間を短縮することもできる。さらに、上記空気流動通路に焼却物の種類や量に応じて、上記燃焼壁部へ送られる空気量を調節するための空気流動量調節手段を設けることもできる。たとえば、吸い込み口の開口度合いを調節できる調節手段を設けることができる。
【0020】
また、上記空気流動通路を、上記外壁に沿って設けることにより、上記空気流動通路を流れる空気の温度が高められる。このため、上記燃焼壁部の内部空間に供給される燃焼空気の温度が高まり、燃焼効率を高めることができる。
【0021】
上記外壁を囲うように所定の隙間を開けて設けられた断熱壁を設け、上記隙間が、上記焼却物収容空間と上記燃焼壁部の内部空間に連通させられて、上記空気流動通路となるよ
うに構成できる。上記構成を採用すると、流動する空気がより加熱されて上記燃焼壁部の内部空間に導かれるため、上記燃焼壁部近傍の燃焼を促進し、燃焼効率をより高めることができる。上記断熱壁は、上記外壁の一部に設けることもできるし、上記外壁の全体を覆うように構成することもできる。また、上記空気流動通路を構成する上記隙間の大きさは特に限定されることはない。
【0022】
さらに、上記断熱壁と上記外壁との間に空気が流動する隙間が形成されるため、断熱壁の外側の温度が高くなることもない。このため、断熱壁に接触しても火傷等をする恐れもなくなる。
【0023】
上記燃焼壁部を、円筒状の下方燃焼壁部と、上記下方燃焼壁部から上方に延出する円錐側面状の上方燃焼壁部とを備えて構成し、上記上方燃焼壁部の上方から、上記煙突を延出させることができる。この構成によって、上記燃焼壁部の面積を大きく設定することが可能となり、焼却効率を高めることができる。なお、上記下方燃焼壁部には、上記内部空間に連通する孔を形成する必要があるが、上記上方壁部については、上記孔を形成してもよいし、形成しなくともよい。
【0024】
さらに、上記上方燃焼壁部の側方に所定の隙間を開けて形成されるとともに、下方が上記焼却物収容空間に開口する円錐側面状のスカート部を形成するのが望ましい。上記スカート部を設けることにより、上記焼却物が上記上方壁部の周囲に密集して、上記上方壁部に設けた孔を塞ぐのを防止できる。また、上記スカート部の下縁を、上記下方燃焼壁部の外周部より外側へ延出するように設けることにより、上記下方燃焼壁部の周囲の焼却物に、上方の焼却物からの圧力が作用するのを防止することができる。このため、上記燃焼壁部近傍の焼却物の密度が高まるのを防止することもできる。上記構成によって、上記空気供給手段からの空気を、上記燃焼壁部近傍まで確実に流動させることが可能となる。これにより、上記燃焼壁部近傍の燃焼を促進し、焼却効率を高めることができる。上記スカート部と上記上方燃焼壁部の間に設けられる隙間の大きさは特に限定されることはないが、少なくとも上記下方燃焼壁部に設けた孔の直径より大きく設定するのが好ましい。
【0025】
上記外壁の上部に、焼却物を投入する投入口が設けられる。本願発明では、上記空気流動通路に、上記焼却物収容空間内の空気が吸い出されるため、上記焼却物収容空間内を負圧に保持することができる。これにより、上記投入口を開けた状態でも、上記焼却物収容空間から、煙や悪臭が漏れ出るのを防止することができる。
【0026】
さらに、上記断熱壁を設けた場合、上記投入口を、上記外壁及び上記断熱壁を貫通して設け、内部に焼却物投入空間を有する筒状に形成するとともに、上記焼却物投入空間の下方に設けられた内方蓋部と、上記焼却物投入空間の上方に設けられた外方蓋部とを備えて構成することができる。そして、上記外方蓋部が閉状態にあるとき、上記内方蓋部が上記内部空間に向けて開状態に保持されているとともに、上記外方蓋部が外部空間に向けて開状態にあるとき、上記内方蓋部が閉状態に保持されるように構成することができる。この構成を採用することにより、焼却物を投入する際に、焼却物収容空間が大気に開放されることがなくなり、投入口からの煙や悪臭が漏れ出るのを阻止することが可能となる。
【0027】
上記外方蓋部と上記内方蓋部の構成は特に限定されることはない。例えば、これら蓋部をリンク機構によって連結して構成することができる。
【0028】
また、上記投入口を、上記外壁及び上記断熱壁を貫通して設け、上記外壁の外側において、上記投入口を開閉可能に覆う蓋部を設けるとともに、外壁内面の上記投入口の上縁部に、上記空気供給手段から空気が供給されるとともに、上記投入口を覆うように層状の空気流を吹き出す空気吹き出し手段を設けることができる。
【0029】
上記構成を採用することにより、上記空気吹き出し手段から吹き出された空気が、上記投入口を設けた外壁の内面に沿って下方に流動し一種のエアカーテンが形成される。上記エアカーテンを構成する空気流は、焼却物の上方及び煙突の外面に沿って流動させられ、上記焼却物収容空間の上部に設けた吸入口から空気流動通路へと導かれる。これにより、焼却物から発生する悪臭や煙が、上記投入口から漏れ出るのを防止できる。
【0030】
上記空気吹き出し手段の構成は特に限定されることはなく、上記投入口の内側を覆う層状の気流を発生させる種々の手段を採用できる。
【0031】
上記煙突部分の温度を低下させるため、少なくとも上記焼却物収容空間内の上記煙突の外側に、円筒状の冷却水流動路を設けることができる。上記冷却水流動路は、上記焼却物収容空間の上方から上記煙突の下端部に向けて上記冷却水が流動させられる第1の流動路と、上記第1の流動路に連通するとともに上記煙突の下端部から上方に向けて上記冷却水を流動させる第2の流動路とを備えて構成し、上記第2の流動路の上端部に冷却水排出口を設けることができる。この構成によって、上記煙突の温度及び煙突を流動する排気ガスの温度を低下させて、ダイオキシン等の生成を阻止することが可能となる。また、煙突の温度を低下させることができるため、煙突の熱による損傷を防止できる効果もある。
【0032】
さらに、上記第2の流動路の上端に、上記煙突内に開口する環状開口部を設けるとともに、上記環状開口部の上方に、煙突内に冷却水を噴射する噴射口を設けることができる。煙突内に冷却水を噴射することにより、排気ガスの温度をより低減させることができる。また、上記燃焼壁部から燃焼ガスとともに流動する一部の焼却灰を、上記冷却水とともに煙突の内面に付着させ、煙突内面を流動させて、上記開口部を介して上記排出口に排出することができる。これにより、排気中の微粒子を、上記冷却水を用いて回収し、大気中に放出されるのを防止することができる。
【0033】
本願発明では、上記空気流動通路を介して、焼却物収容空間内の空気が流動させられ、上記焼却物収容空間の上部から燃焼壁部の内部空間に導くように構成されている。一方、燃焼に必要な空気量は、運転開始時と定常運転時には異なり、また、焼却物の種類によっても異なる。また、焼却物収容空間内に発生する煙等の量も焼却物の種類や燃焼温度によって異なる。このため、上記空気流動通路の所定箇所に、空気の流動量を調節する流動量調節手段を設けるのが好ましい。上記流動量調節手段によって、上記空気供給手段から上記焼却物収容空間への空気の流動を遮断又は制限する一方、上記空気供給手段から、直接上記空気流動通路を介して上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させることが可能となる。
【0034】
上記流動量調節手段の構成は特に限定されることはない。たとえば、焼却物収容空間の吸い込み口に、バタフライ弁や可動式の邪魔板等を設けて、流動量を調節するように構成することができる。また、流動量を調節できる電動ファンを上記空気流動通路内に設けることもできる。
【0035】
また、運転開始時等において、上記焼却壁部の内部空間に向けて、バーナー等からの火炎が投入されるが、上記空気流動通路と上記焼却壁部との接続部の開口が大きい場合、上記開口近傍の圧力が負圧にならず、上記空気流動通路を流動する空気が、上記バーナーを設置した開口部分から漏れ出る恐れがある。特に、運転開始時には、上記空気流動通路を流れる空気に、上記焼却物収容空間の上方に滞留した煙や悪臭が含まれることもあり、不都合である。
【0036】
上記不都合を回避するため、上記空気流動通路の下端部に、上記燃焼壁部の内部空間ヘ
流入する空気の流動を規制する上記流動量調節手段を設けることができる。
【0037】
たとえば、上記流動量調節手段として、上記燃焼壁部の下縁部に所定の隙間を開けて対向する縁部を有し、上記燃焼壁部の内部空間への空気の流動を規制する空気流動規制壁部を設けることができる。
【0038】
上記空気流動規制壁部を設けることにより、上記空気流動通路の出口から上記燃焼壁部の内部空間に到る部分の流動面積が絞られ、空気の流動量を制限できるとともに上記燃焼壁部の内部空間内の負圧が、上記空気流動通路の出口に直接作用する。このため、上記空気流動通路出口から流れ出る空気を上記燃焼壁部の内部空間内に円滑に流動させることができる。この結果、上記バーナーへの燃焼空気供給口等から上記空気流動通路から流れでる空気が漏れ出るのを防止でき、上記不都合を回避できる。上記空気流動規制壁部は、上記バーナーへの空気供給部分を除いて上記バーナーを囲むように設けることができる。
【0039】
本願発明に係る焼却方法においては、上記焼却物収容空間の上方から上記燃焼壁部の内部空間に空気を流動させながら、上記焼却物が焼却される。この手法を採用することにより、上記焼却物収容空間内が大気に比べて負圧に保持されて、煙や悪臭が漏れ出るのを防止できる。しかも、燃焼壁部に供給される燃焼空気が、上記外壁の熱によって加熱されるため、燃焼壁部近傍の焼却効率を高めることができる。
【0040】
また、断熱壁を採用した構造によると、上記断熱壁の温度が高温になることもなく、安全性も高まる。
【0041】
さらに、上記空気供給手段は空気供給ファンを備えて構成することができるが、少なくとも焼却開始時において、上記空気供給ファンを用いて上記焼却物収容空間内の空気を上記燃焼壁部の内部空間に流動させる一方、定常焼却時において、上記空気供給ファンを作動させることなく焼却物を焼却することも可能となる。
【発明の効果】
【0042】
炉内において燃焼温度を高めることにより焼却物を完全燃焼させてダイオキシンの発生を防止し、一方、煙突からの排気温度を低減させることによりダイオキシンのデノボ合成を抑制でき、さらに、焼却物収容空間から煙や悪臭が漏れ出るのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施形態に係る焼却炉の概略を示す縦断面図である。
【
図2】投入口の構造及び作動を示す拡大断面図である。
【
図3】投入口の構造及び作動を示す拡大断面図である。
【
図6】煙突上部に設けられる水噴射口の構造を示す断面図である。
【
図7】
図6におけるVIIーVII線に沿う断面図である。
【
図8】他の実施形態に係る焼却炉の概略を示す縦断面図である。
【
図9】空気流動通路の下端部の構造を示す断面図である。
【
図10】投入口の他の実施形態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本願発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各部の形態は、本実施形態に限定されることはなく、同様の機能を有する種々の形態を採用できる。
【0045】
図1に示すように、焼却炉1は、内部に焼却物収容空間2を有する中空状の外壁3と、上記焼却物収容空間2の中央部において上記外壁3の底部から立ち上がるように形成された多孔筒状の燃焼壁部4と、上記燃焼壁部4の内部空間4cに連通するとともに上方に向けて延びる煙突5とを備えて構成される。
【0046】
上記外壁3は、上下方向中間部が断面正方形状の筒状壁3aと、この筒状壁3aの上下に略四角錐状の上方壁3b及び下方壁3cを接続した中空形態に形成されており、上記上方壁3bに焼却物を投入する投入口6が設けられている。上記外壁3の下方壁3cは、上記燃焼壁部4に向かって傾斜するテーパ状に形成されており、上記燃焼壁部4の近傍の焼却物が焼失するにしたがって、周囲の焼却物が上記燃焼壁近傍に順次移動できるように構成している。
【0047】
上記外壁3には、上記焼却物収容空間2に空気を送り込む空気供給手段7が設けられている。本実施形態では、上記空気供給手段7は、上記外壁の外側に設けられる空気供給ファン7aと、上記空気供給ファン7aに接続されるとともに、上記焼却物収容空間2の上部に上記空気を供給する上部吹き出し口7bと、この上部吹き出し口近傍から上記外壁3の内面に沿って配設され、上記下方壁3c内面に到るパイプの先端から上記焼却物収容空間2の下部に上記空気を供給する下部吹き出し口7cとを備えて構成される。
【0048】
上記焼却物収容空間2に空気を送り込むことにより、焼却物の隙間を通って燃焼壁部4の近傍に燃焼空気が供給されるため、燃焼壁部近傍の燃焼を促進することができる。焼却物収容空間2内に投入された焼却物の密度が高い場合、上記上部吹き出し口7bから空気を供給しても燃焼壁部4の近傍まで充分な空気を供給できない場合がある。上記下部吹き出し口7cを設けることにより、積層される焼却物の内部や下方から上記燃焼壁部4に向かって空気を供給し、燃焼壁部近傍の燃焼効率を高めることができる。特に、始動時における燃焼を促進して、定常状態に至る時間を短縮する効果も期待できる。
【0049】
一方、焼却物収容空間2内に空気を送り込むだけでは、焼却物収容空間2内の気圧が高まり、悪臭をともなった空気が、投入口6等から漏れ出る恐れがある。上記不都合を回避するため、上記焼却物収容空間2の上方から上記燃焼壁部4の内部空間4cに空気を流動させる空気流動通路9を設けている。本実施形態では、上記焼却物収容空間2の最上部の上記煙突5の周囲から、上記外壁3の外側を経由して上記燃焼壁部4の内部空間4cの下部開口8に連通する空気流動通路9を設けている。
【0050】
本実施形態に係る上記空気流動通路9は、上記外壁3を囲うように所定の隙間を開けて設けられた断熱壁10を設け、上記隙間が、上記焼却物収容空間2と上記燃焼壁部4の内部空間4cに連通させられて、上記空気流動通路9を構成している。
【0051】
上記焼却物収容空間2の上部から空気を吸い出す空気流動通路9を設けているため、上記空気供給手段7から空気を送り込んでも、煙やガスとともに上記空気流動通路9に吸引されるため、上記投入口6等から漏れ出る恐れもない。しかも、上記空気流動通路9は、燃焼壁部4の内部空間4cに連通しているため、焼却物収容空間2において発生した悪臭やガスは燃焼壁部4の内部空間4cで熱により分解されて無害な排気ガスとして排出される。
【0052】
さらに、
図1に示すように、上記断熱壁10によって、上記燃焼壁部4に接続された上記外壁3の外面が外部に露出することはない。このため、上記断熱壁10が高温になることはなく、誤って接触した場合にも火傷を負う恐れもない。また、焼却物収容空間2内の空気が上記外壁3の外面に沿って流動させられるため、上記空気の温度が高められ、この空気が燃焼用に用いられるため、上記燃焼壁部4における燃焼を促進することもできる。
【0053】
なお、焼却状態が安定した後(定常状態)は、燃焼壁部4の内部空間4cの温度が上昇して排気ガスの流動速度も高まる。このため、燃焼壁部4の内部空間4cが負圧となり、ファン等を用いることなく焼却物収容空間2内の空気を吸引することができる。したがって、定常状態となった後は、上記空気供給ファンを停止することもできる。さらに、焼却物や燃焼状態に応じて、上記燃焼壁部4の内部空間に供給する空気量を調節できる手段、たとえば、上記電動ファンの出力を調節できる電動ファン出力調整装置や吹き出し口に種々の流量調節手段を設けることができる。また、上記空気流動通路内を流動する空気量を調節できる流量調節弁77を設けることができる。さらに、運転開始時には、燃焼壁部近傍から多量の煙が発生する場合がある。このような場合、焼却物収容空間内に空気を供給すると、外壁3の隙間や断熱壁10の隙間から煙が漏れでる恐れがある。上記不都合を回避するため、上記空気供給ファン7aから、上記焼却物収容空間2を経ることなく、上記空気流動通路9を介して上記燃焼壁部4の内側へ空気を送ることができる流路切替え弁88を設けることができる。
【0054】
図5に示すように、上記燃焼壁部4は、下方に上記空気流動通路9に連通する下部開口8が設けられた円筒状の下方燃焼壁部4aと、上記下方燃焼壁部4aから上方に延出する円錐側面状の上方燃焼壁部4bとを備え、上記上方燃焼壁部4bの上部から、上記煙突5が延出させられている。上記下方燃焼壁部4aと上記上方燃焼壁部4bには、多数の孔11a,11bが形成されている。上記孔11a及び11bは、焼却物が上記燃焼壁部4の内部空間4c内に進入できない大きさに設定される。
【0055】
上記上方燃焼壁部4bの側方周囲には、所定の隙間12aを開けて形成されるとともに、下方が上記焼却物収容空間2に開口する円錐側面状のスカート部12が形成されている。上記スカート部12には、孔は形成されていない。このスカート部12が、上記上方燃焼壁部4bの側面全周を覆うため、投入口6から投入された焼却物が、上記上方燃焼壁部4bの周囲に接触することはない。また、上記スカート部12が、上記下方燃焼壁部4aの側面上方に傘のように張り出して覆うため、上記下方燃焼壁部4aの周囲にある焼却物に、上方に積層された焼却物からの圧力が加わることがない。このため、上記燃焼壁部4の周囲に焼却物が密集するのを緩和することができる。
【0056】
上記スカート部12を設けることにより、上記燃焼壁部4の周囲の通気性を確保することが可能となり、上記空気供給手段7からの空気を、上記燃焼壁部4の近傍まで容易に流動させることが可能となる。また、多量の焼却物を一度に投入した場合も、燃焼壁部4近傍の焼却物の密度が調整されて、焼却物を燃焼壁部の近傍へ円滑に移動させて焼却することができる。
【0057】
図2及び
図3に示すように、上記投入口6は、上記外壁3及び上記断熱壁10を貫通して設けられた筒状の焼却物投入空間6aと、上記焼却物投入空間6aの上方に設けられて上記焼却物投入空間6aの外側を覆う外方蓋部6bと、上記焼却物投入空間6aの下方に設けられて上記焼却物投入空間6aの内側を閉鎖できる内方蓋部6cと、上記外方蓋部6bの外面(上面)に設けられた開閉用の把手6dとを備えて構成される。
【0058】
図2に示すように、上記外方蓋部6bが外部空間に向けて開状態にあるとき、上記内方蓋部6cが上記焼却物投入空間6aの焼却物収容空間側を閉状態に保持する一方、
図3に示すように、上記外方蓋部6bが閉状態にあるとき、上記内部蓋部6cが上記焼却物投入空間6aに向けて開状態に保持されるように構成されている。上記外方蓋部6bと上記内方蓋部6cは、リンク機構13によって連結されている。上記リンク機構13は、リンク棒14を介して上記外方蓋部6bと上記内方蓋部6cとを連結して、上記のように連動するように構成されている。
【0059】
上記構成を採用することにより、上記外方蓋部6bを開状態として、上記焼却物投入空間6aに焼却物を投入する際、内方蓋部6cが焼却物投入空間6aの焼却物収容空間側を閉じるため、悪臭や煙が投入口6から漏れ出ることはない。一方、上記外方蓋部6bを閉じることにより、上記内方蓋部6cが開けられて、上記焼却物収容空間2に焼却物が投入される。したがって、焼却物を追加投入する際に、悪臭や煙が投入口6から漏れ出ることはない。なお、上記リンク棒14は、内部のメンテナンス等のため、着脱可能に設けるのが好ましい。
【0060】
図1及び
図4に示すように、上記焼却物収容空間2内の上記煙突5の外周を囲むように、円筒状の冷却水流動路16b,16cが設けられている。上記冷却水流動路は、ポンプ16aから延びる配管に接続され、上記焼却物収容空間2の上方から上記煙突5の下端部に向けて冷却水が流動させられる第1の流動路16bと、煙突5の下端部において上記第1の流動路に連通するとともに上方に向けて冷却水が流動させられる第2の流動路16cとを備えて構成されている。上記第2の流動路16cの上端部に冷却水排出口16dが設けられ、排水管16eを介して排水処理手段17に接続されている。
【0061】
焼却物収容空間2内を貫通する上記煙突5の周囲に冷却水を流動させることにより、煙突内を流動する排気ガスの温度を低下させることができる。また、上記焼却物収容空間2内に収容される焼却物に煙突5内を流れる排気ガスからの熱が作用するのを緩和することができるため、悪臭の発生を防止できる。しかも、本形態では、上記燃焼壁部4に至る煙突5の全周囲の外面を冷却することができるため、上記燃焼壁部4から立ち上がる排気ガスの熱による煙突の損傷を防止することもできる。
【0062】
上記第2の流動路16cは、上記冷却水排出口16dより上方に延びており、上端には、上記煙突5内に開口する環状開口部20が設けられている。また、上記環状開口部20の上方に、煙突5内に冷却水を噴射する噴射口15bが設けれている。上記噴射口15bは、ポンプ15aから供給される水を煙突内に噴射することができるように構成されており、上記煙突5内を上方に向けて流動する排気ガスが上記水によって冷却される。これにより、煙突から排出される排気ガスの温度を大幅に低下させることができる。また、上記排気ガスに含まれる塵芥が上記噴射水に吸着されるとともに、煙突5の内面に付着させられ、煙突内面を介して上記環状開口部20に導かれ、上記冷却水排出口16dから排出される。排出された冷却水は、排水処理手段17によって浄化処理される。この構成によって、排気ガス中の塵芥を除去することもできる。
【0063】
従来の焼却炉においては、焼却に要する空気は、外部から直接焼却炉の中心部分に導入される。このため、焼却物を燃焼している部位の温度が低下しやすい。本実施形態に係る焼却炉1における焼却方法においては、定常状態においては、上記焼却物収容空間2内に空気を供給するとともに、上記焼却物収容空間2の上方から上記燃焼壁部4の内部空間に空気を流動させながら焼却物が焼却される。すなわち、焼却に要する空気は、一旦、焼却物収容空間2に導入され、その後、外壁3に沿って流動させられた後に、燃焼壁部4の内部空間に導かれる。このため、焼却に要する空気の温度が高められるとともに、燃焼壁部4の内部空間における焼却温度も高まる。したがって、焼却効率が高まり、不完全燃焼ガス、塵芥及びダイオキシン等の発生を低下させることができる。
【0064】
しかも、本実施形態では、上記外壁3を囲うように所定の隙間を開けて設けられた断熱壁10を設け、上記隙間が上記空気流動通路9を構成するように構成しているため、上記断熱壁10は外壁3に対して空気層を介して配置されることになる。したがって、断熱壁の外面の温度が高くなることもなく、作業者が接触しても火傷等を負う恐れもなくなるため、安全性が大幅に高まる。
【0065】
【0066】
本実施形態は、焼却壁部4の下方における空気流動通路9の構造と、焼却物投入口201の構造に特徴がある。なお、共通の部材には、同一の符号を付してある。
【0067】
上記下方焼却壁部4aの下縁部は、上記焼却物収容空間2を構成する下方壁3cの下縁部と接合されている。
【0068】
本実施形態では、空気流動通路9の下部に、上縁部が上記下方焼却壁部4aと上記下方壁3cとの接合部222に所定の隙間221を開けて対向するように、底部223から断面台形状に立ち上がる空気流動規制壁部220が設けられている。
【0069】
上記空気流動規制壁部220を設けることにより、上記空気流動通路9から上記隙間221を介して上記燃焼壁部4の内部空間4cに流入する空気の流動量が絞られる。これにより、上記バーナー18を設置した空間に、上記空気流動通路9からの空気が入り込むことがなくなり、運転開始時等において上記バーナー18に燃焼空気を供給する開口等から悪臭や煙が漏れ出るのを防止することができる。
【0070】
図8及び
図10に示すように、投入口201が、上記外壁3及び上記断熱壁10を貫通して設けられている。本実施形態では、上記断熱壁10の外側において、上記投入口201を開閉可能に覆う蓋部206が設けられている。上記蓋部206は、上部が上記投入口201の上縁部に回動可能に連結されており、把手208を引っ張ることにより、上記蓋部206が開動させられる。
【0071】
一方、上記投入口201の外壁3の内側の上部に、上記投入口201の内側を覆う層状の空気流209を吹き出す空気吹き出し手段212が設けられている。上記空気吹き出し手段212は、上記投入口201の幅方向寸法より長いパイプに、所定間隔で空気吹き出し孔を設けて構成されている。上記空気吹き出し手段212に、連結パイプ210を介して上記空気供給手段7から空気が供給されており、上記投入口を覆うように層状の空気流が吹き出される。
【0072】
図8に示すように、上記空気流209は、焼却物収容空間2に収容された焼却物の上方を中央に向けて流動するとともに、煙突5の外面に沿って上方に向かい、上記焼却物収容空間2の上方に設けられた空気吸入口7dから空気流動通路9に流入させられる。
【0073】
上記構成を採用することにより、上記蓋部206を開動させて焼却物を投入する際に、上記焼却物収容空間2が外側と連通させられても、上記焼却物収容空間2から悪臭や煙が漏れ出るのを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明によって、焼却物を高温で効率よく燃焼させることができるとともに、煙突からの排気温度を低下させることができ、さらに、燃焼ガスが焼却物収容空間から漏れ出るのを防止できる焼却炉を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 焼却炉
3 外壁
2 焼却物収容空間
4 燃焼壁部
5 煙突
7 空気供給手段
9 空気流動通路