(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-30
(45)【発行日】2025-06-09
(54)【発明の名称】遊離脂肪酸濃度測定方法および遊離脂肪酸濃度測定用試薬チップ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20250602BHJP
C12Q 1/26 20060101ALI20250602BHJP
C12Q 1/42 20060101ALI20250602BHJP
C12Q 1/32 20060101ALI20250602BHJP
C12Q 1/533 20060101ALI20250602BHJP
C12Q 1/25 20060101ALI20250602BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20250602BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20250602BHJP
【FI】
C12M1/34 E
C12Q1/26
C12Q1/42
C12Q1/32
C12Q1/533
C12Q1/25
C12Q1/48
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2022510460
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011602
(87)【国際公開番号】W WO2021193489
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020053626
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518320948
【氏名又は名称】株式会社アイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】板橋 達郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 尊之
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/028457(WO,A1)
【文献】特開2013-215188(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105420405(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0102348(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107475424(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/00
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素供給が制限される微少閉鎖空間内にて、以下のステップにより、血液内の遊離脂肪酸の濃度を測定する方法。
前記血液に含まれる遊離脂肪酸からピロリン酸を生成する第1ステップ、
前記ピロリン酸を複数の酵素と反応させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたは還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する第2ステップ、
前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたは前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドに基づいて、遊離脂肪酸の濃度を算出する第3ステップ。
【請求項2】
請求項1の遊離脂肪酸濃度測定方法であって。
前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、
前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第2の酵素と反応させて2分子のリン酸を生成するリン酸生成ステップ、前記リン酸を第3の酵素と反応させてグルコース-1-リン酸を生成するグルコース-1-リン酸生成ステップ、前記グルコース-1-リン酸を第4の酵素と反応させてグルコース-6-リン酸を生成するグルコース-6-リン酸生成ステップ、前記グルコース-6-リン酸を第5の酵素と反応させて還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成されており、前記第3ステップは、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドについて、ホルマザンの呈色を計測することにより、遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップであること、を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項3】
請求項1の遊離脂肪酸濃度測定方法であって。
前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、
前記第2ステップは、前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップ、前記ピロリン酸を第6の酵素と反応させてヒポキサンチンを生成するヒポキサンチン生成ステップ、前記ヒポキサンチンを第7の酵素と反応させて2分子の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成され、
前記第3ステップは前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドについて、ホルマザンの呈色を計測することにより、遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップであること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項4】
請求項1の遊離脂肪酸濃度測定方法であって。
前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、
前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第2の酵素と反応させて2分子のリン酸を生成するリン酸生成ステップ、前記リン酸を第3の酵素と反応させてグルコース-1-リン酸を生成するグルコース-1-リン酸生成ステップ、前記グルコース-1-リン酸を第4の酵素と反応させてグルコース-6-リン酸を生成するグルコース-6-リン酸生成ステップ、前記グルコース-6-リン酸を第8の酵素と反応させて還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成され、
前記第3ステップは、前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの吸光度から遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップであること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。。
【請求項5】
請求項1の遊離脂肪酸濃度測定方法であって。
前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、
前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第6の酵素と反応させてヒポキサンチンを生成するヒポキサンチン生成ステップ、前記ヒポキサンチンを第9の酵素と反応させて2分子の還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成され、
前記第3ステップは、前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの吸光度から遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップであること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。。
【請求項6】
請求項2~5のいずれかの遊離脂肪酸濃度測定方法において、
前記血液は無希釈であること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項7】
請求項2の遊離脂肪酸濃度測定方法において、
前記ピロリン酸生成ステップでは、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼにより、アシルコエンザイムAとピロリン酸とアデノシン1リン酸を生成し、
前記リン酸生成ステップでは、前記ピロリン酸をピロフォスファターゼにより2分子のリン酸に分解し、
前記グルコース-1-リン酸生成ステップでは、前記リン酸を、マルトースフォスフォリラーゼにより、マルトースと反応させてグルコース及びグルコース-1-リン酸を生じさせ、
前記グルコース-6-リン酸生成ステップでは、前記グルコース-1-リン酸をベータフォスフォグルコムターゼによってグルコース-6-リン酸に変換させ、
前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップでは、前記グルコース-6-リン酸および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼによって還元し、グルコノラクトン-6-リン酸および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせ、
前記濃度算出ステップでは、テトラゾリウム塩を、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびジアホラーゼにより還元することにより生成されたホルマザンの呈色を計測することで、前記遊離脂肪酸の濃度を算出すること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項8】
請求項3の遊離脂肪酸濃度測定方法において、
前記ピロリン酸生成ステップでは、前記遊離脂肪酸を、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸を生成させ、
前記ヒポキサンチン生成ステップでは、前記ピロリン酸を、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼによりイノシンと反応させて、ヒポキサンチンおよびD-リボース-1-リン酸を生成し、
前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップでは、前記ヒポキサンチンおよび2分子の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドをキサンチンデヒドロゲナーゼによって還元し、尿酸と2分子の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせ、
前記濃度算出ステップでは、テトラゾリウム塩を、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびジアホラーゼにより還元することにより生成されたホルマザンの呈色を計測することで、前記遊離脂肪酸の濃度を算出すること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項9】
請求項4の遊離脂肪酸濃度測定方法において、
前記ピロリン酸生成ステップでは、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼにより、アシルコエンザイムAとピロリン酸とアデノシン1リン酸を生成し、
前記リン酸生成ステップでは、前記ピロリン酸をピロフォスファターゼにより2分子のリン酸に分解し、
前記グルコース-1-リン酸生成ステップでは、前記リン酸を、マルトースフォスフォリラーゼにより、マルトースと反応させてグルコース及びグルコース-1-リン酸を生じさせ、
前記グルコース-6-リン酸生成ステップでは、前記グルコース-1-リン酸をベータフォスフォグルコムターゼによってグルコース-6-リン酸に変換させ、
前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
生成ステップでは、前記
グルコース-6-リン酸および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼによって還元させ、グルコノラクトン-6-リン酸および還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項10】
請求項5の遊離脂肪酸濃度測定方法において、
前記ピロリン酸生成ステップでは、前記遊離脂肪酸を、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸を生成させ、
前記ヒポキサンチン生成ステップでは、前記ピロリン酸を、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼによりイノシンと反応させて、ヒポキサンチンおよびD-リボース-1-リン酸を生成し、
前記ヒポキサンチンと、2分子の酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドをキサンチンデヒドロゲナーゼによって還元し、尿酸と2分子の還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせること、
を特徴とする遊離脂肪酸濃度測定方法。
【請求項11】
複数の試薬が設置された反応室、
検査対象である血液を滴下するための滴下口、
前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、
を有しており、
前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、
前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、
前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼであること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項12】
複数の試薬が設置された反応室、
検査対象である血液を滴下するための滴下口、
前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、
を有しており、
前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、
前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、
前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、テトラゾリウム塩およびジアホラーゼであること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項13】
複数の試薬が設置された反応室、
検査対象である血液を滴下するための滴下口、
前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、
を有しており、
前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、
前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、
前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドであること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項14】
複数の試薬が設置された反応室、
検査対象である血液を滴下するための滴下口、
前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、
を有しており、
前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、
前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、
前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドであること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項15】
請求項11~14のいずれかの試薬チップにおいて、
前記血液は無希釈であること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項16】
請求項11の試薬チップにおいて、
前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、
前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されており、
前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されていること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項17】
請求項12の試薬チップにおいて、
前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、
前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されており、
前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されていること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項18】
請求項13の試薬チップにおいて、
前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、
前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されており、
前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されていること、
を特徴とする試薬チップ。
【請求項19】
請求項14の試薬チップにおいて、
前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、
前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されており、
前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されていること、
を特徴とする試薬チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は 遊離脂肪酸の計測方法に関し、特に、簡易な計測手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳牛、とくに分娩後の乳牛について、肝臓への遊離脂肪酸の過剰動員が問題視されている。そのため、酪農業界では、血中の遊離脂肪酸を簡易に計測できる手法が望まれている。
【0003】
そこで、発明者らは、特許5931709号に記載された試薬チップを用いて牛の遊離脂肪酸を計測できないかと考えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記試薬チップを用いた牛の遊離脂肪酸の計測には、以下の問題があった。
【0005】
一般に、遊離脂肪酸の計測手法として、アシルコエンザイムAシンセターゼ(Acyl CoA Synthetase,ACS)および、アシルコエンザイムAオキシダーゼ(Acyl CoA Oxidase,ACOD)の酵素反応を利用した遊離脂肪酸(NEFA)の測定方法が知られている。
【0006】
該測定方法について説明する。遊離脂肪酸(NEFA)は、コエンザイムAおよびアデノシン3リン酸(ATP)の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムAシンセターゼ(酵素)の働きにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸(AMP)を生成する。このアシルコエンザイムAは、アシルコエンザイムAオキシダーゼ(酵素)によって酸素と反応し、これにより、トランス-2,3-デヒドロアシルコエンザイムAおよび過酸化水素(H2O2)が生成される。過酸化水素は、ペルオキシダーゼ(酵素)の作用により、ロイコ色素(発色剤)を酸化する。これにより、ロイコ色素は、メチレンブルーに変換される。かかるメチレンブルーの色濃度は、試料中の遊離脂肪酸濃度に依存する。したがって、メチレンブルーの色を光学的に測定(600~670nmの波長)することにより、試料中の遊離脂肪酸濃度を算出することができる。
【0007】
上記反応においては、遊離脂肪酸濃度は過酸化水素(H2O2)の量と関連する。かかる過酸化水素が生成されるためには、アシルコエンザイムAが、必要な量の酸素と反応する必要がある。したがって、前記のような密閉構造となる微小空間内で試薬と反応させる試薬チップを用いる場合、反応に必要な酸素供給が制限されることで正確な遊離脂肪酸濃度を算出することができないという問題があった。
【0008】
上記課題は、乳牛だけでなく、他の動物についても同様に問題となる。
【0009】
なお、検体を適当倍数(数倍~数十倍)に希釈することにより、上記課題を解決することも考えられるが、そのためには、正確な倍率に希釈する必要があり、その分、煩雑となる。
【0010】
この発明は、上記問題を解決し、酸素供給が制限された微少空間内で、簡易に遊離脂肪酸の濃度を計測することのできる試薬チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法は、酸素供給が制限される微少閉鎖空間内にて、以下のステップにより、血液内の遊離脂肪酸の濃度を測定する方法。1)前記血液に含まれる遊離脂肪酸からピロリン酸を生成する第1ステップ、2)前記ピロリン酸を複数の酵素と反応させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたは還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する第2ステップ、3)前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたは還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドに基づいて、遊離脂肪酸の濃度を算出する第3ステップ。
【0012】
上記反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、酸素供給が制限された微少閉鎖空間においても遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0013】
2)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第2の酵素と反応させて2分子のリン酸を生成するリン酸生成ステップ、前記リン酸を第3の酵素と反応させてグルコース-1-リン酸を生成するグルコース-1-リン酸生成ステップ、前記グルコース-1-リン酸を第4の酵素と反応させてグルコース-6-リン酸を生成するグルコース-6-リン酸生成ステップ、前記グルコース-6-リン酸を第5の酵素と反応させて還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成され、前記第3ステップは前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドについて、生成したホルマザンの呈色を計測することにより、遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップである。
【0014】
上記反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、酸素供給が制限された微少閉鎖空間においても遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0015】
3)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第6の酵素と反応させてヒポキサンチンを生成するヒポキサンチン生成ステップ、前記ヒポキサンチンを第7の酵素と反応させて2分子の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップでこうせいされており、前記第3ステップは、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドについて、生成したホルマザンの呈色を計測することにより、遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップである。
【0016】
上記反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、酸素供給が制限された微少閉鎖空間においても遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0017】
4)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第2の酵素と反応させて2分子のリン酸を生成するリン酸生成ステップ、前記リン酸を第3の酵素と反応させてグルコース-1-リン酸を生成するグルコース-1-リン酸生成ステップ、前記グルコース-1-リン酸を第4の酵素と反応させてグルコース-6-リン酸を生成するグルコース-6-リン酸生成ステップ、前記グルコース-6-リン酸を第8の酵素と反応させて還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成されており、前記第3ステップは、前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの吸光度から遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップである。
【0018】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応であるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0019】
5)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記第1ステップは前記血液に含まれる遊離脂肪酸を第1の酵素と反応させてピロリン酸を生成するピロリン酸生成ステップであり、前記第2ステップは、前記ピロリン酸を第6の酵素と反応させてヒポキサンチンを生成するヒポキサンチン生成ステップ、前記ヒポキサンチンを第9の酵素と反応させて2分子の還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップで構成されており、前記第3ステップは、前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの吸光度から遊離脂肪酸の濃度を算出する濃度算出ステップである。
【0020】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応であるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0021】
6)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記血液は無希釈である。したがって、無希釈の血液にて、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0022】
7)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記ピロリン酸生成ステップでは、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムAシンセターゼにより、アシルコエンザイムAとピロリン酸とアデノシン1リン酸を生成し、前記リン酸生成ステップでは、前記ピロリン酸をピロフォスファターゼにより2分子のリン酸に分解し、前記グルコース-1-リン酸生成ステップでは、前記リン酸を、マルトースフォスフォリラーゼにより、マルトースと反応させてグルコース及びグルコース-1-リン酸を生じさせ、前記グルコース-6-リン酸生成ステップでは、前記グルコース-1-リン酸をベータフォスフォグルコムターゼによってグルコース-6-リン酸に変換させ、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップでは、前記グルコース-6-リン酸および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼによって還元し、グルコノラクトン-6-リン酸および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせ、前記濃度算出ステップでは、テトラゾリウム塩を、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびジアホラーゼにより還元することにより生成されたホルマザンの呈色を計測することで、前記遊離脂肪酸の濃度を算出する。
【0023】
上記反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、酸素供給が制限された微少閉鎖空間においても遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0024】
8)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記ピロリン酸生成ステップでは、前記遊離脂肪酸を、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムAシンセターゼにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸を生成させ、前記ヒポキサンチン生成ステップでは、前記ピロリン酸を、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼによりイノシンと反応させて、ヒポキサンチンおよびD-リボース-1-リン酸を生成し、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップでは、前記ヒポキサンチンおよび2分子の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドをキサンチンデヒドロゲナーゼによって還元し、尿酸と2分子の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせ、前記濃度算出ステップでは、テトラゾリウム塩を、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびジアホラーゼにより還元することにより生成されたホルマザンの呈色を計測することで、前記遊離脂肪酸の濃度を算出する。
【0025】
上記反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、酸素供給が制限された微少閉鎖空間においても遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0026】
9)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法においては、前記ピロリン酸生成ステップでは、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼにより、アシルコエンザイムAとピロリン酸とアデノシン1リン酸を生成し、前記リン酸生成ステップでは、前記ピロリン酸をピロフォスファターゼにより2分子のリン酸に分解し、前記グルコース-1-リン酸生成ステップでは、前記リン酸を、マルトースフォスフォリラーゼにより、マルトースと反応させてグルコース及びグルコース-1-リン酸を生じさせ、前記グルコース-6-リン酸生成ステップでは、前記グルコース-1-リン酸をベータフォスフォグルコムターゼによってグルコース-6-リン酸に変換させ、前記還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生成ステップでは、前記グルコース-6-リン酸および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼによって還元させ、グルコノラクトン-6-リン酸および還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせる。
【0027】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応であるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0028】
10)本発明にかかる遊離脂肪酸濃度測定方法は、前記ピロリン酸生成ステップでは、前記遊離脂肪酸を、コエンザイムAとアデノシン3リン酸の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸を生成させ、前記ヒポキサンチン生成ステップでは、前記ピロリン酸を、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼによりイノシンと反応させて、ヒポキサンチンおよびD-リボース-1-リン酸を生成し、前記ヒポキサンチンと、2分子の酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドをキサンチンデヒドロゲナーゼによって還元し、尿酸と2分子の還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生じさせる。
【0029】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応であるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0030】
11)本発明にかかる試薬チップは、複数の試薬が設置された反応室、検査対象である血液を滴下するための滴下口、前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、を有しており、前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼである。
【0031】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0032】
12)本発明にかかる試薬チップは、複数の試薬が設置された反応室、検査対象である血液を滴下するための滴下口、前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、を有しており、前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼである。
【0033】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応によって呈色反応が起きるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0034】
13)本発明にかかる試薬チップは、複数の試薬が設置された反応室、検査対象である血液を滴下するための滴下口、前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、を有しており、前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドである。
【0035】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応であるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0036】
14)本発明にかかる試薬チップは、複数の試薬が設置された反応室、検査対象である血液を滴下するための滴下口、前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、を有しており、前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間であり、
前記複数の試薬は、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドである。
【0037】
上記試薬を用いた反応は、還元系の反応であるので、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0038】
15)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記血液は無希釈である。したがって、無希釈の血液にて、微少閉鎖空間においても酸素供給が制限されることの影響を受けることなく遊離脂肪酸の濃度測定ができる。
【0039】
16)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されており、前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されている。前記第2の反応室では、血液中に含まれているリン酸濃度に応じた呈色が検出できる。したがって、第1の反応室における呈色との差分を求めることにより、遊離脂肪酸の濃度を正確に測定することができる。
【0040】
17)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されており、前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、テトラゾリウム塩、およびジアホラーゼが設置されている。前記第2の反応室では、血液中に含まれているリン酸濃度に応じた呈色が検出できる。したがって、第1の反応室における呈色との差分を求めることにより、遊離脂肪酸の濃度を正確に測定することができる。
【0041】
18)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムAシンセターゼ、ピロフォスファターゼ、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されており、前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、マルトース、マルトースフォスフォリラーゼ、ベータフォスフォグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されている。
【0042】
前記第2の反応室では、血液中に含まれているリン酸濃度に応じた還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが検出できる。したがって、第1の反応室における還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドとの差分を求めることにより、遊離脂肪酸の濃度を正確に測定することができる。
【0043】
19)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記反応室は、第1の反応室と第2の反応室を有しており、前記第1の反応室には、前記複数の試薬として、コエンザイムA、アデノシン3リン酸、マグネシウムイオン、アシルコエンザイムシンセターゼ、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されており、前記第2の反応室には、前記複数の試薬として、イノシン、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンデヒドロゲナーデ、および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが設置されている。
【0044】
前記第2の反応室では、血液中に含まれているリン酸濃度に応じた還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが検出できる。したがって、第1の反応室における還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドとの差分を求めることにより、遊離脂肪酸の濃度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図3】本件発明で採用した試薬による反応式である。
【
図4】従来の方法と本件発明の方法による反応タイムコースを示す図である。
【
図5】NEFA濃度と呈色の関係を示すグラフである。
【
図6】本件発明で採用した試薬による反応式である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・・試薬チップ
2・・・・・第2プレート
3・・・・・第3プレート
4・・・・・第4プレート
7・・・・・測定室(反応室)
8・・・・・流路(搬送路)
11・・・・検体供給口(滴下口)
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
1.第1実施形態
1.1 試薬チップ1について
以下、本発明にかかる測定方法にて使用する試薬チップ1を図面に基づいて説明する 。
【0048】
試薬チップ1は、複数の試薬が設置された反応室、検査対象である血液を滴下するための滴下口、前記反応室に前記血液を搬送する搬送路、を有しており、前記反応室における呈色反応を検出することにより、前記血液中の遊離脂肪酸濃度を測定する試薬チップであって、前記反応室は前記血液が供給されると、その血液で満たされる程度の微少閉鎖空間である。以下詳述する。
【0049】
図1は血液検査器具の縦断面図であり、
図2はその分解斜視図である。これら各図に示す検査器具100は、基板1と積層板20とが接着されて構成されている。基板1には円形の検体供給口11が形成され、その上部周囲には堰12が設けられている。そして堰12には、上面からさらに突出する環状突起12aが設けられている。また、堰12に内側には、円弧状に突出した突起部13が設けられている。この堰12は、ブチルゴムなどの弾性材料からなる栓体5が密着して、内部空間を密封するよう構成されている。具体的には、この堰12に対して栓体5が当接すると、堰12の環状突起12aが、栓体5の縁部5aに食い込むため、内部空間が確実に密閉される。その状態で栓体5を押圧すると検体供給口11に供給された検体(血液)に加圧力を付与される。栓体5は、図示していない押圧機構により押圧される。
【0050】
また、基板1の下面側には、検体供給口11との対向部位に円形状の凹入部14が設けられており、ここに血球を分離除去する非対称孔径膜からなる血球分離膜6が装入されている。この血球分離膜6は、基板1に接着剤(図示省略)により固定されている。
【0051】
基板1の材料は、加工が容易な樹脂材料が使用され、例えばAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)が好適に用いられる。
【0052】
また、基板1の上面には、突起16,17が設けられている。この突起16,17は、光学測定または電気測定の際に、検査器具100を位置決めするために用いられる。
【0053】
積層板20は、接着剤(図示省略)を介して上下方向に積層一体化された3つの第1プレート2、第2プレート3および第3プレート4を備える。積層板20において検体供給口11の側方内部には、検体の成分を測定する測定室7が形成され、この測定室7と検体供給口11の間に検体の移送用の流路8(搬送路)が形成されている。
【0054】
【0055】
第1プレート2における検体供給口11と同心位置に、上下方向に延びる貫通孔81を形成するとともに、第1プレート2の下方に配置される第2プレート3に、貫通孔81と対向状に円形の貫通孔82を設け、これから側方に向かって直線状の貫通溝83をくり抜いて、これら貫通孔81と貫通孔82および貫通溝83a~83cにより流路8を形成している。
【0056】
測定室7について、説明する。第2プレート3には、測定室7を形成する円形の8つの貫通孔71が形成されている。また、第1プレート2に設けた貫通孔81と対向する貫通孔82が設けられており、この貫通孔82から延びる一本の貫通溝83aが、分岐部83bで8本の貫通溝83cに分岐し、これら貫通溝83cの先端側に貫通孔71が形成されている。
【0057】
このようにして、8つの測定室7は、側面を構成する貫通孔71と、上下の平面を構成する第1プレート2および第3プレート4とにより形成される。流路8についても同様である。
【0058】
第1プレート2および第3プレート4は、不通水性で不通気性のプレートであり、その材料としては、加工が容易な樹脂材料が使用され、例えばAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)が好適に用いられる。
【0059】
一方、第2プレート3としては、不通水性で通気性のある多孔質材である例えばPTFE(四フッ化エチレン樹脂)メンブレンが好適に用いられる。このようにすれば、栓体5を押圧操作して検体を流路8から測定室7に移送させるとき、これら流路8や測定室7の空間に溜まっている空気が第2プレート3を介して外部に逃げ、検体が空間を満たすように順次移送されて、検体の所定量が測定室7に速やかに移送される。
【0060】
測定室7には試薬充填部9が設けられている。この試薬充填部9には、後述する複数の試薬が充填される。
【0061】
測定室7で検体を測定するにあたっては、透過光や反射光を用いた光学測定が採用される。測定室7で試薬と検体により呈色反応を行わせて、第3プレート4の下方から光を照射し、第1プレート2の上部で透過光を受光することにより、測定室7での吸光度を測定する。
【0062】
第2プレート3は、低濃度域の分解能および高濃度域の光学的飽和度を考慮して、想定される吸光度範囲(Abs. 0.001~2.000)に収まるように厚さは0.5mm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.1mm~0.2mmとしている。流路8の幅は0.25mmである。本実施形態においては、測定室7の形状は、1.8mm×2.0mmの長円形状とし、計測のための光束は直径0.7mmとした。したがって、測定室7は、血液の滴下後は、酸素が制限された微小閉鎖空間となる。
【0063】
また、本実施形態においては、流路8は、厚み0.1mm~0.2mmであり、幅は0.25mmである。
【0064】
1.2 試薬について
測定室7には、試薬として「コエンザイムA」「アデノシン3リン酸」「マグネシウムイオン」「アシルコエンザイムAシンセターゼ」「ピロフォスファターゼ」「マルトース」「マルトースフォスフォリラーゼ」「ベータフォスフォグルコムターゼ」「酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」「グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ」「テトラゾリウム塩」「ジアホラーゼ」が適切な濃度で仕込まれている。
【0065】
本実施形態においては、以下のようにして試薬を載置させた。
【0066】
測定室7の一方に、富士フイルム和光純薬株式会社のマルトースを50~200mM、オリエンタル酵母工業株式会社社のアデノシン3リン酸(ATP)を5~20mM、キッコーマン株式会社のベータフォスフォグルコムターゼ(β-Phosphoglucomutase)を100~500U/mL、キッコーマン株式会社のマルトースフォスフォリラーゼ(Maltose phosphorylase)を50~300U/mL、旭化成株式会社のアシルコエンザイムAシンセターゼ(ACS)を10~50U/mL、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 のピロフォスファターゼを50~200U/mL、ニプロ株式会社のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を50~100U/mL、ニプロ株式会社のジアホラーゼ(Di-1)を100~500U/mL、および富士フイルム和光純薬株式会社のMgCl2・6H2Oを5~30mMを試薬とし、株式会社同仁化学研究所のHEPES buffer pH7.5を100~400mM、富士フイルム和光純薬株式会社のTriton X-100を0.005~0.05%と混在させて、滴下乾燥(0.5μL)し、これを、20~30℃で、20~50%RH 環境下で自然乾燥させた。
【0067】
また、測定室7の他方には、オリエンタル酵母工業株式会社の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を5~30mM、株式会社同仁化学研究所のテトラゾリウム塩(WST-8)を20~100mM、およびオリエンタル酵母工業株式会社のコエンザイムAを2~15mMを試薬として、富士フイルム和光純薬株式会社のD-Sorbitolを0.5~3.0%、富士フイルム和光純薬株式会社のMalate buffer pH4.0を10~50mM、および富士フイルム和光純薬株式会社のtriton X-100を0.005~0.05%と混在させて、滴下乾燥(0.5μL)し、これを、20~30℃で、20~50%RH 環境下で自然乾燥させた。
【0068】
なお、試薬を2つに分散させたのは、混在させると好ましくない試薬を分けるためである。
【0069】
また、保管条件として、乾燥後は20~30℃、10%RH以下の環境下で保管することが好ましい。
【0070】
1.3 試薬による反応について
上記試薬による反応を
図3Aに示す。血液中の遊離脂肪酸(NEFA)は、コエンザイムAおよびアデノシン3リン酸(ATP)の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムAシンセターゼ(酵素)の働きにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸(AMP)を生成する。生成したピロリン酸はピロフォスファターゼ(酵素)の作用で2分子のリン酸に分解される。リン酸はマルトースフォスフォリラーゼ(酵素)の作用により、マルトースと反応してグルコースおよびグルコース-1-リン酸を生じる。グルコース-1-リン酸は、ベータフォスフォグルコムターゼ(酵素)によってグルコース-6-リン酸に変換される。グルコース-6-リン酸および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(酵素)によって還元され、グルコノラクトン-6-リン酸および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が生じる。
【0071】
発生した還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは、ジアホラーゼ(酵素)の作用により、テトラゾリウム塩(発色剤)を還元し、ホルマザンとなって呈色する。
【0072】
このホルマザンの呈色は試料(血液)中の遊離脂肪酸濃度に依存しているため、ホルマザンが吸収する波長の光を照射し、その透過光量を測定することにより、試料中の遊離脂肪酸濃度を算出することができる。
【0073】
1.4 計測について
測定室7での検体の測定方法については、従来から知られている透過光を用いた光学測定が採用できる。例えば、測定室7における呈色反応を、第4プレート4の下方から第2プレート2に向かって、たとえば、波長450nmの光Bを照射し、前記測定室7を通過した光量により発色量を測定すればよい。
【0074】
なお、本実施形態においては、栓体5を加圧することにより、流路8および測定室7に存在する空気を外部に排出させて、検体を測定室7にスムーズに導くようにしたが、流路8および測定室7に存在する空気を外部に排出できれば、どのようなものであってもよく、たとえば、検査器具を密封空間に入れ、当該密封空間の圧を負圧状態とするようにしてもよい。
【0075】
また、測定室,流路の形状については、本実施形態の形状に限定されず、どのようなものであってもよい。
【0076】
1.5 計測結果について
本実施形態における計測結果について、
図4、
図5を用いて説明する。
【0077】
図4Aに示すように、酸化反応を用いる従来の方法では、5分測定法においてNEFA:0.79mEq/Lまでの測定が可能であるが、反応タイムコースの形状を見るとNEFA:0.57mEq/L検体でも、5分の終点測定が微妙な状態であることがわかる。
【0078】
これは、以下の理由による。従来の反応においては、必要な酸素の供給源が検体中の溶存酸素だけになる。一般的に、無希釈の血液の液体中溶存酸素濃度は0.5mmol/L程度である。これに対して、遊離脂肪酸の血中濃度は正常範囲:0.1~0.8 mEq/L(必要測定範囲:0.05~2.5 mEq/L)である。したがって、前記微小閉鎖空間では、正常範囲の約半分しか反応が進まない。
【0079】
これに対して、
図4Bに示すように、第1実施形態の反応では5分測定法で、NEFA:2.02mEq/Lまで十分な直線性が確保されており、反応 タイムコースの形状でも終点測定が可能であることがわかる。
【0080】
このように、酸素を必要としない反応系への変更により、微小閉鎖空間においても十分な反応速度と測定範囲の確保が可能である。
【0081】
このように、本件測定方法は、反応に酸素を必要としないため、無希釈の献体について、酸素供給制限下の微小閉鎖空間においても、高濃度のNEFAまで、精度よく測定することができる。
【0082】
1.6 その他
上記反応では、NEFAをリン酸に変換して、そのリン酸の濃度に基づく呈色反応でNEFA濃度を検出している。しかし、前記血液にはあらかじめリン酸が含まれている。したがって、かかるリン酸の量を削除する必要がある。そのために、以下のように、第1の測定室と第2の測定室に異なる試薬を仕込んでおき、両者の差分をとればよい。
【0083】
第1測定室には、試薬として「コエンザイムA」「アデノシン3リン酸」「マグネシウムイオン」「アシルコエンザイムAシンセターゼ」「ピロフォスファターゼ」「マルトース」「マルトースフォスフォリラーゼ」「ベータフォスフォグルコムターゼ」「酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」「グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ」「テトラゾリウム塩」「ジアホラーゼ」を適切な濃度で仕込んでおく。
【0084】
そして、第2の測定室には、試薬として「マルトース」「マルトースフォスフォリラーゼ」「ベータフォスフォグルコムターゼ」「酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」「グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ」「テトラゾリウム塩」「ジアホラーゼ」を適切な濃度で仕込んでおく。
【0085】
このように、第1の測定室で、血液中の遊離脂肪酸から生成したリン酸および血液中に元々含まれているリン酸に基づく呈色を検出し、第2の測定室で、血液中のリン酸のみに基づく、呈色を検出し、さらに、両者の差分を求めることにより、簡易に遊離脂肪酸の濃度を測定することができる。
【0086】
この場合、上下の試薬の分け方については、上記の実施形態と同様にすればよい。
【0087】
2.第2実施形態
2.1 試薬について
還元系の反応として、測定室7に、試薬として「コエンザイムA」「アデノシン3リン酸」「マグネシウムイオン」「アシルコエンザイムAシンセターゼ」「イノシン」「プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ」「キサンチンデヒドロゲナーデ」「酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」「テトラゾリウム塩」「ジアホラーゼ」を適切な濃度で仕込むようにしてもよい。
【0088】
この場合、以下のようにして試薬を載置させればよい。
【0089】
測定室7の一方に、富士フイルム和光純薬株式会社のイノシンを20-80mM、オリエンタル酵母工業株式会社社のアデノシン3リン酸(ATP)を5~20mM、旭化成株式会社のアシルコエンザイムAシンセターゼ(ACS)を10~50U/mL、旭化成株式会社のプリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ(PNPL II)を20~150U/mL、キサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH II)を20~150U/mL、ニプロ株式会社のジアホラーゼ(Di-3)を100~400U/mL、および富士フイルム和光純薬株式会社のMgCl2・6H2Oを5~30mMを試薬とし、株式会社同仁化学研究所のpH衝撃剤(TAPSO pH8.0)を100~400mM、富士フイルム和光純薬株式会社のD-Sorbitolを0.5~3.0%、富士フイルム和光純薬株式会社のTriton X-100を0.005~0.05%、と混在させて、滴下乾燥(0.5μL)し、これを、20~30℃で、20~50%RH 環境下で自然乾燥させた。
【0090】
また、測定室7の他方には、オリエンタル酵母工業株式会社の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を5~30mM、株式会社同仁化学研究所のテトラゾリウム塩(WST-8)を20~100mM、およびオリエンタル酵母工業株式会社のコエンザイムAを2~15mMを試薬として、富士フイルム和光純薬株式会社のD-Sorbitolを0.5~3.0%、富士フイルム和光純薬株式会社のMalate buffer pH4.0を10~50mM、および富士フイルム和光純薬株式会社のtriton X-100を0.005~0.05%と混在させて、滴下乾燥(0.5μL)し、これを、20~30℃で、20~50%RH 環境下で自然乾燥させた。
【0091】
2.2 反応について
上記試薬による反応を
図3Bに示す。遊離脂肪酸(NEFA)は、コエンザイムAおよびアデノシン3リン酸(ATP)の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼ(酵素)の働きによって、アシルコエンザイムA、ピロリン酸とアデノシン1リン酸(AMP)を生成する。
【0092】
ピロリン酸はプリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ(酵素)によりイノシンと反応し、ヒポキサンチンとD-リボース-1-リン酸を生じる。
【0093】
ヒポキサンチンと2分子の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)はキサンチンデヒドロゲナーゼ(酵素)によって還元され、尿酸と2分子の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を生じる。
【0094】
これ以降の反応は、第1実施形態と同様である。
【0095】
2.3 血液中のリン酸について
第1実施形態と同様に、第2実施形態でも、血液中のリン酸が合わせて測定される。この場合も、遊離脂肪酸からリン酸を求めるための試薬を除去した試薬を別の測定室に仕込んでおき、両者の差分を求めるようにすればよい。
【0096】
第2実施形態では、血液中のリン酸のみを測定するために必要な試薬は、上記試薬のうち、「イノシン」「プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ」「キサンチンデヒドロゲナーゼ」「酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」「テトラゾリウム塩」「ジアホラーゼ」となる。
【0097】
2.4 計測結果について
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、
図4B、
図5Bに示すように、従来と比べて、5分測定法で、NEFA:2.02mEq/Lまで十分な直線性が確保されており、反応タイムコースの形状でも終点測定が可能であった。
【0098】
3.第3実施形態
前記第1実施形態においては、
図3Aに示すように、グルコノラクトン-6-リン酸から還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を発生させ、これによる呈色反応で、遊離脂肪酸濃度を算出するようにした。
【0099】
しかし、これに限定されず、グルコノラクトン-6-リン酸から還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)を生じさせて、この還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)を計測することで、遊離脂肪酸濃度を算出するようにしてもよい。
【0100】
この場合、試薬としては、NADに代えて酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)を用いればよい。またジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩およびは不要である。
【0101】
本実施形態においては、測定室7の一方から、ジアホラーゼを除き第1実施形態と同じ複数の試薬を設けて、測定室7の他方には、オリエンタル酵母工業株式会社の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、株式会社同仁化学研究所のテトラゾリウム塩(WST-8)に変えて、オリエンタル酵母工業株式会社の酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)を10~60mM採用し、他の複数の試薬は同様としたた。
【0102】
【0103】
血液中の遊離脂肪酸(NEFA)は、コエンザイムAおよびアデノシン3リン酸(ATP)の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムAシンセターゼ(酵素)の働きにより、アシルコエンザイムA、ピロリン酸およびアデノシン1リン酸(AMP)を生成する。生成したピロリン酸はピロフォスファターゼ(酵素)の作用で2分子のリン酸に分解される。リン酸はマルトースフォスフォリラーゼ(酵素)の作用により、マルトースと反応してグルコースおよびグルコース-1-リン酸を生じる。グルコース-1-リン酸は、ベータフォスフォグルコムターゼ(酵素)によってグルコース-6-リン酸に変換される。
【0104】
グルコノラクトン-6-リン酸および酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(酵素)によって還元され、グルコノラクトン-6-リン酸および還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)が生じる。
【0105】
この還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)は波長405nmの光の吸光度によって計測することができる。
【0106】
4.第4実施形態
第2実施形態についても、生成したヒポキサンチンと、2分子の酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)から、2分子の還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)を生じさせて、遊離脂肪酸濃度を算出するようにしてもよい。
【0107】
この場合、試薬としては、NADに代えて酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)を用いればよい。またジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩は不要である。
【0108】
本実施形態においては、測定室7の一方から、ジアホラーゼを除き第1実施形態と同じ複数の試薬を設けるとともに、測定室7の他方には、オリエンタル酵母工業株式会社の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を5~30mM、株式会社同仁化学研究所のテトラゾリウム塩(WST-8)を20~100mMに変えて、オリエンタル酵母工業株式会社の酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)を10~60mM採用し、他の複数の試薬は同様とした。
【0109】
【0110】
遊離脂肪酸(NEFA)は、コエンザイムAおよびアデノシン3リン酸(ATP)の存在下で、マグネシウムイオンで活性化されたアシルコエンザイムシンセターゼ(酵素)の働きによって、アシルコエンザイムA、ピロリン酸とアデノシン1リン酸(AMP)を生成する。
【0111】
ピロリン酸はプリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ(酵素)によりイノシンと反応し、ヒポキサンチンとD-リボース-1-リン酸を生じる。
【0112】
ヒポキサンチンと、2分子の酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NAD)はキサンチンデヒドロゲナーゼ(酵素)によって還元され、尿酸と2分子の還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)を生じる。
【0113】
還元型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(thio-NADH)の計測については、第3実施形態と同様である。
【0114】
5.他の実施形態
本実施形態においては、牛の遊離脂肪酸を測定するようにしたが、他の動物、人間などについても同様に適用できる。
【0115】
本件の遊離脂肪酸の測定方法は、特に、無希釈の献体でも検出範囲が十分となるので、効果があるが、これに限定されず、検体を希釈する場合に、適用することも可能である。
【0116】
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。