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特許7689788ポリエステル系合成繊維用処理剤、3剤型のポリエステル系合成繊維用処理剤、4剤型のポリエステル系合成繊維用処理剤、及びポリエステル系合成繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-30
(45)【発行日】2025-06-09
(54)【発明の名称】ポリエステル系合成繊維用処理剤、3剤型のポリエステル系合成繊維用処理剤、4剤型のポリエステル系合成繊維用処理剤、及びポリエステル系合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20250602BHJP
   D06M 13/328 20060101ALI20250602BHJP
   D06M 15/647 20060101ALI20250602BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20250602BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20250602BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20250602BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M13/328
D06M15/647
D06M13/02
D06M13/184
D06M101:32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2025061151
(22)【出願日】2025-04-02
【審査請求日】2025-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 義弘
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特許第4471463(JP,B1)
【文献】特許第4471464(JP,B1)
【文献】国際公開第2025/057764(WO,A1)
【文献】特開2022-102613(JP,A)
【文献】特開平03-167375(JP,A)
【文献】特開2018-119228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の有機リン酸エステル化合物(A)、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)、及び下記の平滑剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物(A1)、並びに分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
前記アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及び前記アミンエーテル型界面活性剤(B2)における有機アミンの炭化水素基の平均炭素数が10以上15以下である請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及び前記アミンエーテル型界面活性剤(B2)におけるアルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドの割合が80モル%以上100モル%以下である請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記有機リン酸エステル化合物(A)、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び前記平滑剤(C)の含有割合の合計を100質量部とした場合、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)を5質量部以上40質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記有機リン酸エステル化合物(A)、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び前記平滑剤(C)の含有割合の合計を100質量部とした場合、前記有機リン酸エステル化合物(A)を50質量部以上90質量部以下、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)を5質量部以上40質量部以下、前記平滑剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項6】
下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤であって、
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)及び下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項7】
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)及び下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤であって、
下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項8】
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)及び下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤と、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤であって、
下記の平滑剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項9】
下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤であって、
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項10】
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤であって、
下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項11】
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤であって、
下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項12】
下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤であって、
下記の平滑剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤。
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とするポリエステル系合成繊維。
【請求項14】
前記ポリエステル系合成繊維が、ポリエステル系短繊維である請求項13に記載のポリエステル系合成繊維。
【請求項15】
前記ポリエステル系合成繊維が、紡績糸製造用のものである請求項13に記載のポリエステル系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系合成繊維用処理剤、3剤型のポリエステル系合成繊維用処理剤、4剤型のポリエステル系合成繊維用処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用処理剤が付着しているポリエステル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば合成繊維の摩擦低減、帯電防止性等の観点から、繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1~3に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、炭素数16~22のアルキル燐酸エステルカリウム塩と、炭素数6~8のアルキル燐酸エステルカリウム塩と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を含有する合成繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、アルキル基の炭素数が4~18であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩の混合物、炭素数16~22の脂肪族1価アルコールと炭素数16~22の脂肪族モノカルボン酸とから得られるエステル化合物等、分子中にポリオキシアルキレン基を有するノニオン界面活性剤を含有する合成繊維の高速紡績用油剤について開示する。特許文献3は、アルキル基の炭素数が4~18であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩の混合物、炭素数16~22の脂肪族1価アルコールと炭素数16~22の脂肪族モノカルボン酸とから得られるエステル化合物等、所定の線状ポリオルガノシロキサン、分子中にポリオキシアルキレン基を有するノニオン界面活性剤を含有する高速紡績用油剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4970187号公報
【文献】特許第4471463号公報
【文献】特許第4471464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の合成繊維用処理剤は、安定性、特に合成繊維用処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性が低下することにより、析出物等が生ずる場合があった。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着が高くなり、製造特性が低下又は品質不良が生ずる場合があった。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維の平滑性及び制電性が劣ることにより、製造特性が低下又は品質不良が生ずる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ポリエステル系合成繊維用処理剤において、所定の有機リン酸エステル化合物(A)、所定のアミンエーテル型界面活性剤(B)、及び所定の平滑剤(C)を含有する構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のポリエステル系合成繊維用処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A)、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)、及び下記の平滑剤(C)を含有する。
【0008】
有機リン酸エステル化合物(A):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物(A1)、並びに分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する有機リン酸エステル化合物。
【0009】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0010】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様2は、態様1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及び前記アミンエーテル型界面活性剤(B2)における有機アミンの炭化水素基の平均炭素数が10以上15以下である。
【0011】
態様3は、態様1又は2に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及び前記アミンエーテル型界面活性剤(B2)におけるアルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドの割合が80モル%以上100モル%以下である。
【0012】
態様4は、態様1~3のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(A)、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び前記平滑剤(C)の含有割合の合計を100質量部とした場合、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)を5質量部以上40質量部以下の割合で含有する。
【0013】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記有機リン酸エステル化合物(A)、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び前記平滑剤(C)の含有割合の合計を100質量部とした場合、前記有機リン酸エステル化合物(A)を50質量部以上90質量部以下、前記アミンエーテル型界面活性剤(B)を5質量部以上40質量部以下、前記平滑剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する。
【0014】
態様6のポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤であって、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)及び下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有することを特徴とする。
【0015】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0016】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0017】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0018】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様7のポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)及び下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤であって、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有することを特徴とする。
【0019】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0020】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0021】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0022】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様8のポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)及び下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤と、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤であって、下記の平滑剤(C)を含有することを特徴とする。
【0023】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0024】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0025】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0026】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様9のポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤であって、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有することを特徴とする。
【0027】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0028】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0029】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0030】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様10のポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤であって、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有することを特徴とする。
【0031】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0032】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0033】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0034】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様11のポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、下記の平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤であって、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有することを特徴とする。
【0035】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0036】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0037】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0038】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様12のポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、下記の有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と併用されるポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤であって、下記の平滑剤(C)を含有することを特徴とする。
【0039】
有機リン酸エステル化合物(A1):分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0040】
有機リン酸エステル化合物(A2):分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物。
【0041】
アミンエーテル型界面活性剤(B):分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤。
【0042】
平滑剤(C):ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つ。
態様13のポリエステル系合成繊維は、態様1~5のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする。
【0043】
態様14は、態様13のポリエステル系合成繊維において、前記ポリエステル系合成繊維が、ポリエステル系短繊維である。
態様15は、態様13又は14のポリエステル系合成繊維において、前記ポリエステル系合成繊維が、紡績糸製造用のものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、合成繊維用処理剤の安定性を向上できる。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、平滑性及び制電性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1実施形態>
以下、本発明のポリエステル系合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(A)、下記のアミンエーテル型界面活性剤(B)、及び下記の平滑剤(C)を含有する。
【0046】
(有機リン酸エステル化合物(A))
本実施形態の処理剤に供される有機リン酸エステル化合物(A)は、分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物(A1)、並びに分子中に炭素数12以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する有機リン酸エステル化合物である。また、有機リン酸エステル化合物(A1)及び有機リン酸エステル化合物(A2)は、それぞれ(ポリ)アルキレンオキサイド鎖を付加した有機リン酸エステル化合物であってもよい。
【0047】
有機リン酸エステル化合物(A1)により、処理剤が付与された繊維の制電性を向上できる。また、有機リン酸エステル化合物(A2)により、処理剤が付与された繊維の粘着性を低減できる。
【0048】
(炭化水素基)
有機リン酸エステル化合物(A1)及び有機リン酸エステル化合物(A2)を構成する炭化水素基としては、それぞれ飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。
【0049】
不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。
【0050】
有機リン酸エステル化合物(A1)を構成する炭化水素基としては、以下のものが例示される。
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等が挙げられる。
【0051】
分岐鎖を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基等が挙げられる。
【0052】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基等が挙げられる。
【0053】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基等が挙げられる。
【0054】
有機リン酸エステル化合物(A2)を構成する炭化水素基としては、以下のものが例示される。
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0055】
分岐鎖を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0056】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0057】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0058】
((ポリ)アルキレンオキサイド鎖)
有機リン酸エステル化合物(A)において(ポリ)アルキレンオキサイド鎖が付加される場合、(ポリ)アルキレンオキサイド鎖を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0059】
(リン酸)
有機リン酸エステル化合物(A1)及び有機リン酸エステル化合物(A2)を構成するリン酸は、それぞれ特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
【0060】
(塩)
有機リン酸エステルの塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステルアンモニウム塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0061】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0062】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0063】
(酸価)
有機リン酸エステル化合物(A1)及び有機リン酸エステル化合物(A2)の酸価は、それぞれ特に限定されないが、0KOH-mg/g以上150KOH-mg/g以下が好ましく、0KOH-mg/g以上100KOH-mg/g以下がより好ましい。この範囲に規定することにより、製品ハンドリング性を向上できる。
【0064】
なお、有機リン酸エステル化合物(A1)及び有機リン酸エステル化合物(A2)の酸価(KOH-mg/g)は、それぞれ以下の式により表される。
有機リン酸エステル化合物(A)をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解させ、電位差測定法により、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の式(1)から算出する。
【0065】
酸価(KOH-mg/g)=(R×f×56.11×0.1)/S・・・(1)
式(1)中において
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:有機リン酸エステル化合物(A)採取量(g)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用料(mL)
(具体例)
有機リン酸エステル化合物(A1)の具体例としては、例えばブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル、ウンデシルリン酸エステル、イソウンデシルリン酸エステル、オクチルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル、それらの塩等が挙げられる。
【0066】
有機リン酸エステル化合物(A1)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
有機リン酸エステル化合物(A2)の具体例としては、例えばラウリルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル、アラキジルリン酸エステル、それらの塩が挙げられる。
【0067】
有機リン酸エステル化合物(A2)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(配合量)
処理剤中において、有機リン酸エステル化合物(A1)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。かかる含有割合が1質量%以上の場合、特に処理剤が付与された合成繊維の制電性をより向上できる。かかる有機リン酸エステル化合物(A1)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。かかる含有割合が30質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0068】
処理剤中において、有機リン酸エステル化合物(A2)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、特に処理剤が付与された合成繊維の粘着性をより低減できる。かかる有機リン酸エステル化合物(A2)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。かかる含有割合が95質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0069】
処理剤中において、有機リン酸エステル化合物(A)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。かかる含有割合が30質量%以上の場合、本発明の効果をより向上できる。かかる有機リン酸エステル化合物(A)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。かかる含有割合が97質量%以下の場合、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0070】
(アミンエーテル型界面活性剤(B))
本実施形態の処理剤に供されるアミンエーテル型界面活性剤(B)は、分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B1)、並びに分子中に炭素数14以上18以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの、及びその塩から選ばれる少なくとも1つであるアミンエーテル型界面活性剤(B2)を含有するアミンエーテル型界面活性剤である。アミンエーテル型界面活性剤(B1)により、処理剤の安定性を向上できる。また、アミンエーテル型界面活性剤(B2)により、処理剤の安定性を向上できる。
【0071】
(炭化水素基)
アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)を構成する炭化水素基としては、それぞれ飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。
【0072】
不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。
【0073】
アミンエーテル型界面活性剤(B1)を構成する炭化水素基としては、炭素数8以上13以下である。アミンエーテル型界面活性剤(B2)を構成する炭化水素基としては、炭素数14以上18以下である。
【0074】
また、アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)における有機アミンの炭化水素基の平均炭素数は、10以上15以下であることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、特に処理剤の安定性を向上できる。有機アミンの炭化水素基の平均炭素数は、まずアミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)の各成分における炭化水素基の炭素数を算出する。炭化水素基の平均炭素数は、アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)の全成分中における各成分が占める質量割合に基づいて、炭化水素基の炭素数の平均値として求める。
【0075】
アミンエーテル型界面活性剤(B1)を構成する炭化水素基としては、以下のものが例示される。
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基等が挙げられる。
【0076】
分岐鎖を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基等が挙げられる。
【0077】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基等が挙げられる。
【0078】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基等が挙げられる。
【0079】
アミンエーテル型界面活性剤(B2)を構成する炭化水素基としては、以下のものが例示される。
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばテトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0080】
分岐鎖を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基等が挙げられる。
【0081】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばテトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0082】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基等が挙げられる。
【0083】
((ポリ)アルキレンオキサイド鎖)
アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)は、それぞれ炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加されることによりポリアルキレンオキサイド鎖が形成されている。アルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、2モル以上100モル以下、好ましくは3モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0084】
アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)におけるアルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドの割合が80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、特に処理剤の安定性を向上できる。かかるエチレンオキサイドの割合は、まずアミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)の各成分中におけるアルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドの割合(モル%)を算出する。エチレンオキサイドの割合は、アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)の全成分中における各成分が占める質量割合に基づいて、エチレンオキサイドの割合(モル%)の平均値として求める。
【0085】
(具体例)
アミンエーテル型界面活性剤(B1)の具体例としては、例えばオクチルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、デシルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、ラウリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、それらの塩等が挙げられる。
【0086】
アミンエーテル型界面活性剤(B1)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
アミンエーテル型界面活性剤(B2)の具体例としては、例えばミリスチルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、セチルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、ステアリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、オレイルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、それらの塩等が挙げられる。
【0087】
アミンエーテル型界面活性剤(B2)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(配合量)
処理剤中において、アミンエーテル型界面活性剤(B1)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。かかる含有割合が0.1質量%以上の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。かかるアミンエーテル型界面活性剤(B1)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。かかる含有割合が50質量%以下の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0088】
処理剤中において、アミンエーテル型界面活性剤(B2)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。かかる含有割合が0.1質量%以上の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。かかるアミンエーテル型界面活性剤(B2)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下である。かかる含有割合が20質量%以下の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0089】
有機リン酸エステル化合物(A)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)の含有割合の合計を100質量部とした場合におけるアミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)の含有割合の合計、すなわちアミンエーテル型界面活性剤(B)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。かかる含有割合が3質量部以上の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。かかるアミンエーテル型界面活性剤(B)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。かかる含有割合が50質量部以下の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0090】
(その他のエーテル型界面活性剤(B3))
本実施形態の処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上述したアミンエーテル型界面活性剤(B)以外のその他のエーテル型界面活性剤(B3)を、さらに配合してもよい。
【0091】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、上記以外のアミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体等のポリオキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。
【0092】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0093】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0094】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0095】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0096】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の原料として用いられる脂肪族アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0097】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド等が挙げられる。
【0098】
ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体は、親水性の低いポリオキシプロピレン鎖及び親水性の高いポリオキシエチレン鎖を有し、界面活性作用を有するものであれば特に限定されない。分子中におけるポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の数は特に限定されず、例えば1つのポリオキシプロピレン鎖と1つのポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体であってもよく、ポリオキシプロピレン鎖とそれを挟む2つのポリオキシエチレン鎖からなるポロキサマー系界面活性剤であってもよい。また、多価アルコールにポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖を付加させたエーテル化合物であってもよい。ポリオキシエチレン鎖を形成するエチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上200モル以下が挙げられる。ポリオキシプロピレン鎖を形成するプロピレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上100モル以下が挙げられる。
【0099】
その他のエーテル型界面活性剤(B3)の具体例としては、例えばラウリルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、C12-C13アルコールに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、C12-C14アルコールに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、イソトリデシルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、ヤシ脂肪酸に対してアルキレンオキサイドを付加したもの、オレイン酸に対してアルキレンオキサイドを付加したもの、オレイルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加したもの、ラウリン酸に対してアルキレンオキサイドを付加したもの、ノニルフェノールに対してアルキレンオキサイドを付加したもの等が挙げられる。
【0100】
これらのその他のエーテル型界面活性剤(B3)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるその他のエーテル型界面活性剤(B3)の含有量の上限は、例えば20質量%、15質量%、10質量%である。
【0101】
(平滑剤(C))
本実施形態の処理剤に供される平滑剤(C)としては、ポリオルガノシロキサン(C1)、炭化水素(C2)、脂肪酸エステル(C3)、及び脂肪酸(C4)から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0102】
ポリオルガノシロキサン(C1)の具体例としては、特に制限はないが、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
【0103】
炭化水素(C2)としては、特に制限はないが、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば鉱物油、スピンドル油、流動パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは、市販品を適宜採用することができる。
【0104】
脂肪酸エステル(C3)としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0105】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、シクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、シクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0106】
エステル油の具体例としては、例えば(1)メチルオレアート、オクチルパルミタート、オクチルステアラート、ステアリルステアラート、ステアリルパルミタート、ベヘニルベヘニラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)ソルビタンモノオレアート、ポリエチレングリコールモノラウラート、1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
【0107】
脂肪酸(C4)としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、脂肪酸(C4)の炭素数は、特に限定されないが、炭素数6以上の1価の高級脂肪酸が好ましい。
【0108】
飽和脂肪酸の具体例としては、例えばヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0109】
不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0110】
これらの平滑剤(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤(C)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、特に処理剤の平滑性をより向上できる。かかる平滑剤(C)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合が25質量%以下の場合、特に処理剤の安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0111】
処理剤中において、有機リン酸エステル化合物(A)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)の含有割合の合計を100質量部とした場合、有機リン酸エステル化合物(A)を50質量部以上90質量部以下、アミンエーテル型界面活性剤(B)を5質量部以上40質量部以下、平滑剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0112】
(保存形態)
処理剤は、上述した成分(A)~(C)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性を向上させる観点から、以下に示されるような3剤型の処理剤又は4剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0113】
3剤型の処理剤は、有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤(以下、「3剤型第1処理剤」という)と、有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤(以下、「3剤型第2処理剤」という)と、平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤(以下、「3剤型第3処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。
【0114】
3剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において3剤型第1処理剤と、3剤型第2処理剤と、3剤型第3処理剤とから構成されている。3剤型処理剤は、使用時に3剤型第1処理剤と3剤型第2処理剤と3剤型第3処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0115】
4剤型の処理剤は、有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤(以下、「4剤型第1処理剤」という)と、有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤(以下、「4剤型第2処理剤」という)と、アミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤(以下、「4剤型第3処理剤」という)と、平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤(以下、「4剤型第4処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。
【0116】
4剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において、それぞれ別剤として構成される4剤型第1処理剤と、4剤型第2処理剤と、4剤型第3処理剤と、4剤型第4処理剤とから構成されている。4剤型処理剤は、使用時に4剤型第1処理剤と、4剤型第2処理剤と、4剤型第3処理剤と、4剤型第4処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0117】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)又はポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液(以下、「希釈液」という)が調製されてもよい。
【0118】
溶媒は、一気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0119】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量%とすると、例えば処理剤は10質量%を超える量で調製される。希釈液中において、処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量%とすると、例えば処理剤は0.1質量%以上10質量%以下で含有する。
【0120】
(本実施形態の効果)
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、上述した有機リン酸エステル化合物(A)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)を含むように構成した。したがって、処理剤の安定性、特に処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。それにより、乳化液からの析出物及び/又は沈殿の発生を低減させる。そして、処理剤を均一に繊維の付着することができるため、付着ムラによる繊維の品質ムラを低減できる。
【0121】
また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。それにより、製造特性及び得られる繊維の品質を向上できる。
また、処理剤が付与された繊維の平滑性及び制電性を向上できる。それにより、製造特性及び得られる繊維の品質を向上できる。
【0122】
<第2実施形態>
次に、本発明の3剤型第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0123】
本実施形態の3剤型第1処理剤では、上述した有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する。3剤型第1処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する3剤型第2処理剤と、上述した平滑剤(C)を含有する3剤型第3処理剤と、併用される。
【0124】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0125】
(溶媒)
本実施形態の3剤型第1処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤含有組成物(以下、「3剤型第1処理剤含有組成物」という)が調製され、3剤型第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0126】
(本実施形態の効果)
第2実施形態の3剤型第1処理剤の効果について説明する。第2実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0127】
(2-1)第2実施形態の3剤型第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する3剤型第2処理剤及び平滑剤(C)を含有する3剤型第3処理剤と併用される。したがって、3剤型第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、3剤型第2,3処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、3剤型第1処理剤のみを3剤型第2,3処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0128】
<第3実施形態>
次に、本発明の3剤型第2処理剤を具体化した第3実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0129】
本実施形態の3剤型第2処理剤では、上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する。3剤型第2処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する3剤型第1処理剤と、上述した平滑剤(C)を含有する3剤型第3処理剤と併用される。
【0130】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0131】
(溶媒)
本実施形態の3剤型第2処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤含有組成物(以下、「3剤型第2処理剤含有組成物」という)が調製され、3剤型第2処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0132】
(本実施形態の効果)
第3実施形態の3剤型第2処理剤の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0133】
(3-1)第3実施形態の3剤型第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(A2)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する3剤型第1処理剤及び平滑剤(C)を含有する3剤型第3処理剤と併用される。したがって、3剤型第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、3剤型第1,3処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、3剤型第2処理剤のみを3剤型第1,3処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0134】
<第4実施形態>
次に、本発明の3剤型第3処理剤を具体化した第4実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0135】
本実施形態の3剤型第3処理剤では、上述した平滑剤(C)を含有する。3剤型第3処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する3剤型第1処理剤と、上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する3剤型第2処理剤と併用される。
【0136】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0137】
(溶媒)
本実施形態の3剤型第3処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤含有組成物(以下、「3剤型第3処理剤含有組成物」という)が調製され、3剤型第3処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0138】
(本実施形態の効果)
第4実施形態の3剤型第3処理剤の効果について説明する。第4実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0139】
(4-1)第4実施形態の3剤型第3処理剤では、平滑剤(C)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する3剤型第1処理剤、及び有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する3剤型第2処理剤と併用される。したがって、3剤型第3処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、3剤型第1,2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、3剤型第3処理剤のみを3剤型第1,2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0140】
<第5実施形態>
次に、本発明の4剤型第1処理剤を具体化した第5実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0141】
本実施形態の4剤型第1処理剤では、上述した有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する。4剤型第1処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する4剤型第2処理剤と、上述したアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する4剤型第3処理剤と、上述した平滑剤(C)を含有する4剤型第4処理剤と、併用される。
【0142】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0143】
(溶媒)
本実施形態の4剤型第1処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤含有組成物(以下、「4剤型第1処理剤含有組成物」という)が調製され、4剤型第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0144】
(本実施形態の効果)
第5実施形態の4剤型第1処理剤の効果について説明する。第5実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0145】
(5-1)第5実施形態の4剤型第1処理剤では、有機リン酸エステル化合物(A1)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する4剤型第2処理剤と、アミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する4剤型第3処理剤と、平滑剤(C)を含有する4剤型第4処理剤と併用される。したがって、4剤型第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、4剤型第2~4処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、4剤型第1処理剤のみを4剤型第2~4処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0146】
<第6実施形態>
次に、本発明の4剤型第2処理剤を具体化した第6実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0147】
本実施形態の4剤型第2処理剤では、上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する。4剤型第2処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する4剤型第1処理剤と、上述したアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する4剤型第3処理剤と、上述した平滑剤(C)を含有する4剤型第4処理剤と併用される。
【0148】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0149】
(溶媒)
本実施形態の4剤型第2処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤含有組成物(以下、「4剤型第2処理剤含有組成物」という)が調製され、4剤型第2処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0150】
(本実施形態の効果)
第6実施形態の4剤型第2処理剤の効果について説明する。第6実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0151】
(6-1)第6実施形態の4剤型第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(A2)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する4剤型第1処理剤と、アミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する4剤型第3処理剤と、平滑剤(C)を含有する4剤型第4処理剤と併用される。したがって、4剤型第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、4剤型第1,3,4処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、4剤型第2処理剤のみを4剤型第1,3,4処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0152】
<第7実施形態>
次に、本発明の4剤型第3処理剤を具体化した第7実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0153】
本実施形態の4剤型第3処理剤では、上述したアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する。4剤型第3処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する4剤型第1処理剤と、上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する4剤型第2処理剤と、上述した平滑剤(C)を含有する4剤型第4処理剤と、併用される。
【0154】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0155】
(溶媒)
本実施形態の4剤型第3処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤含有組成物(以下、「4剤型第3処理剤含有組成物」という)が調製され、4剤型第3処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0156】
(本実施形態の効果)
第7実施形態の4剤型第3処理剤の効果について説明する。第7実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0157】
(7-1)第7実施形態の4剤型第3処理剤では、アミンエーテル型界面活性剤(B)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する4剤型第1処理剤と、有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する4剤型第2処理剤と、平滑剤(C)を含有する4剤型第4処理剤と併用される。したがって、4剤型第3処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、4剤型第1,2,4処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、4剤型第3処理剤のみを4剤型第1,2,4処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0158】
<第8実施形態>
次に、本発明の4剤型第4処理剤を具体化した第8実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0159】
本実施形態の4剤型第4処理剤では、上述した平滑剤(C)を含有する。4剤型第4処理剤は、使用時に上述した有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する4剤型第1処理剤と、上述した有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する4剤型第2処理剤と、上述したアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する4剤型第3処理剤と、併用される。
【0160】
有機リン酸エステル化合物(A1)、有機リン酸エステル化合物(A2)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及び平滑剤(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
【0161】
(溶媒)
本実施形態の4剤型第4処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤含有組成物(以下、「4剤型第4処理剤含有組成物」という)が調製され、4剤型第4処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0162】
(本実施形態の効果)
第8実施形態の4剤型第4処理剤の効果について説明する。第8実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0163】
(8-1)第8実施形態の4剤型第4処理剤では、平滑剤(C)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(A1)を含有する4剤型第1処理剤と、有機リン酸エステル化合物(A2)を含有する4剤型第2処理剤と、アミンエーテル型界面活性剤(B)を含有する4剤型第3処理剤と併用される。したがって、4剤型第4処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、4剤型第1~3処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、4剤型第4処理剤のみを4剤型第1~3処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0164】
<第9実施形態>
次に、本発明のポリエステル系合成繊維(以下、「合成繊維」という)を具体化した第9実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤等が表面に付着している処理済み合成繊維である。処理剤が合成繊維の表面に付着することにより各種機能が付与された合成繊維が得られる。
【0165】
本実施形態の合成繊維は、1剤型の処理剤の場合、溶媒と、第1実施形態の処理剤とを含む希釈液を合成繊維に付与することにより得られる。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。
【0166】
本実施形態の合成繊維の処理方法は、3剤型の処理剤の場合、溶媒と、第2実施形態の3剤型第1処理剤と、第3実施形態の3剤型第2処理剤と、第4実施形態の3剤型第3処理剤と、を含む処理剤の希釈液を合成繊維に付与することを特徴とする。3剤型第1処理剤と、3剤型第2処理剤と、3剤型第3処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として3剤型第1処理剤と3剤型第2処理剤と3剤型第3処理剤=(5~60)/(30~90)/(0.05~25)であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0167】
本実施形態の合成繊維の処理方法は、4剤型の処理剤の場合、溶媒と、第5実施形態の4剤型第1処理剤と、第6実施形態の4剤型第2処理剤と、第7実施形態の4剤型第3処理剤と、第8実施形態の4剤型第4処理剤とを含む処理剤の希釈液を合成繊維に付与することを特徴とする。4剤型第1処理剤と、4剤型第2処理剤と、4剤型第3処理剤と、4剤型第4処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として4剤型第1処理剤と4剤型第2処理剤と4剤型第3処理剤と4剤型第4処理剤=(3~25)/(30~90)/(3~50)/(0.05~25)であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。
【0168】
希釈液の製造に用いられる溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から処理剤の濃度として0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0169】
上記のように得られた希釈液は、例えば合成繊維の紡糸工程、延伸工程、及び仕上工程の少なくとも1つの工程等において合成繊維に付与される。
希釈液が付与される合成繊維としては、ポリエステル系合成繊維が挙げられる。ポリエステル系合成繊維の具体例としては例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等が挙げられる。
【0170】
合成繊維の用途は、特に限定されず、例えば紡績用、紡績糸製造用、不織布、詰め綿用、抄紙用等が挙げられる。繊維の長さも特に限定されず、短繊維、長繊維に適用することができる。なお、短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下、好ましくは30mm以上70mm以下である。これらの中で、本発明の処理剤は、ポリエステル短繊維、紡績糸製造用のポリエステル系合成繊維に適用されることが好ましい。
【0171】
合成繊維に付着させる処理剤の割合に特に制限はないが、希釈液を合成繊維に対し、最終的に不揮発分が好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下の割合となるよう付着させる。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、希釈液を付着させる方法は、特に制限はなく、合成繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。浸漬給油法が用いられる場合、浸漬時間は好ましくは1分以上5分以下である。
【0172】
希釈液が付与された合成繊維は、公知の方法を用いて乾燥又は加熱処理してもよい。乾燥又は加熱処理により水等の溶媒が揮発され、処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0173】
(本実施形態の効果)
第9実施形態の合成繊維の効果について説明する。第9実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0174】
(9-1)第9実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤等が付着している。したがって、合成繊維表面の粘着を低減できるとともに、平滑性及び制電性を向上できる。それにより、製造特性を向上できる。また、得られる繊維の品質を向上できる。
【0175】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0176】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において10質量%以下が好ましい。また、その他の成分を上述した各処理剤とは別剤として保存してもよい。
【実施例
【0177】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0178】
試験区分1(1剤型処理剤の調製)
(実施例1-1)
表1に示されるように、有機リン酸エステル化合物(A)としてオクチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価25KOH-mg/g)(A1-3)5部(%)及びステアリルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価12.5KOH-mg/g)(A2-3)84部(%)、アミンエーテル型界面活性剤(B)としてオクチルアミン1モルに対し、エチレンオキサイド(以下、EOという)10モルを付加したもののリン酸塩(B1-1)0.6部(%)、デシルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-2)0.6部(%)、ラウリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-3)5部(%)、ミリスチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-1)2部(%)、セチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-2)0.9部(%)、ステアリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-3)0.7部(%)、及びオレイルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-5)0.2部(%)、平滑剤(C)として線状ポリジメチルシロキサン(25℃の動粘度1×10-5/s)(C1-1)0.5部(%)、鉱物油(25℃の動粘度5×10-6/s)(C2-1)0.2部(%)、メチルオレアート(C3-1)0.2部(%)、及びオレイン酸(C4-1)0.1部(%)を混合することにより実施例1-1の処理剤を調製した。
【0179】
(実施例1-2~実施例1-31、比較例1~比較例10)
実施例1-2~実施例1-31、比較例1~比較例10の処理剤は、実施例1-1の処理剤と同様にして、有機リン酸エステル化合物(A)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、その他のエーテル型界面活性剤(B3)、及び平滑剤(C)を表1,2に示した割合で含むように調製した。
【0180】
有機リン酸エステル化合物(A)の種類と含有量、アミンエーテル型界面活性剤(B)の種類と含有量、その他のエーテル型界面活性剤(B3)の種類と含有量、及び平滑剤(C)の種類と含有量を、表1,2の「有機リン酸エステル化合物(A)」欄、「アミンエーテル型界面活性剤(B)」欄、「その他のエーテル型界面活性剤(B3)」欄、及び「平滑剤(C)」欄にそれぞれ示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
表1,2に記載する有機リン酸エステル化合物(A)、エーテル型界面活性剤、及び平滑剤(C)の詳細は以下のとおりである。
【0183】
<有機リン酸エステル化合物(A)>
有機リン酸エステル化合物(A)は、以下の有機リン酸エステル化合物(A1)及び有機リン酸エステル化合物(A2)を使用した。なお、各有機リン酸エステル化合物の酸価は、「有機リン酸エステル化合物(A)」欄に記載の方法により測定した。
【0184】
(有機リン酸エステル化合物(A1))
A1-1:ブチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価25KOH-mg/g)
A1-2:ヘキシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価35KOH-mg/g)
A1-3:オクチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価25KOH-mg/g)
A1-4:ウンデシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価50KOH-mg/g)
A1-5:イソウンデシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価50KOH-mg/g)
A1-6:オクチルアルコール1モルに対し、EO2モルを付加したもののリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価10KOH-mg/g)
(有機リン酸エステル化合物(A2))
A2-1:ラウリルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価75KOH-mg/g)
A2-2:セチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価20KOH-mg/g)
A2-3:ステアリルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価12.5KOH-mg/g)
A2-4:ステアリルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価0.5KOH-mg/g)
A2-5:アラキジルリン酸エステルカリウム塩(酸価0KOH-mg/g)
<エーテル型界面活性剤>
(アミンエーテル型界面活性剤(B))
(アミンエーテル型界面活性剤(B1))
B1-1:オクチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B1-2:デシルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B1-3:ラウリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B1-4:ラウリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもの
B1-5:ラウリルアミン1モルに対し、EO14モルとポリプロピレンオキサイド(以下、POという)2モルをランダム付加したもの
B1-6:ラウリルアミン1モルに対し、EO1モルとPO3モルをランダム付加したものに、EO4モルを付加したもの
(アミンエーテル型界面活性剤(B2))
B2-1:ミリスチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B2-2:セチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B2-3:ステアリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B2-4:ステアリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したものに、PO2モルを付加したもの
B2-5:オレイルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩
B2-6:オレイルアミン1モルに対し、PO5モルを付加したもの
なお、アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)における有機アミンの炭化水素基の平均炭素数は、例えば実施例1においては、以下のように算出した。
【0185】
平均炭素数=(8×0.6/10)+(10×0.6/10)+(12×5/10)+(14×2/10)+(16×0.9/10)+(18×0.7/10)+(18×0.2/10)=12.94
アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)における有機アミンの炭化水素基の平均炭素数を、表1,2の「B1,B2の有機アミンの炭化水素基の平均炭素数」欄に示す。
【0186】
また、アミンエーテル型界面活性剤(B1)、及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)におけるアルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドの割合は、例えば実施例1においては、以下のように算出した。
【0187】
エチレンオキサイドの割合=(100×0.6/10)+(100×0.6/10)+(100×5/10)+(100×2/10)+(100×0.9/10)+(100×0.7/10)+(100×0.2/10)=100
アミンエーテル型界面活性剤(B1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B2)におけるアルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドの割合を、表1,2の「B1,B2のAOに占めるEOの割合(モル%)」欄に示す。
【0188】
(その他のエーテル型界面活性剤(B3))
B3-1:ラウリルアルコール1モルに対し、EO7モルを付加したもの
B3-2:ラウリルアルコール1モルに対し、EO9モルを付加したもの
B3-3:C12-C13アルコール1モルに対し、EO6モルとPO2モルをランダム付加したもの
B3-4:C12-C14アルコール1モルに対し、EO3を付加したもの
B3-5:イソトリデシルアルコール1モルに対し、PO3モルを付加したものに、EO7モルを付加したもの
B3-6:ヤシ脂肪酸100部に対し、EO200部を付加したもの
B3-7:オレイン酸1モルに対し、EO3モルを付加したもの
B3-8:ラウリルアルコール1モルに対し、EO10モルを付加したもの
B3-9:ラウリルアルコール1モルに対し、EO25モルを付加したもの
B3-10:オレイルアルコール1モルに対し、EO5モルを付加したもの
B3-11:ラウリン酸1モルに対し、EO25モルを付加したもの
B3-12:ノニルフェノール1モルに対し、EO20モルを付加したもの
<平滑剤(C)>
(ポリオルガノシロキサン(C1))
C1-1:線状ポリジメチルシロキサン(25℃の動粘度1×10-5/s)
C1-2:線状アミノ変性ジメチルポリシロキサン(25℃の動粘度5×10-3/s)
(炭化水素(C2))
C2-1:鉱物油(25℃の動粘度5×10-6/s)
C2-2:パラフィンワックス(融点50℃)
(脂肪酸エステル(C3))
C3-1:メチルオレアート
C3-2:ソルビタンモノオレアート
C3-3:オクチルステアラート
C3-4:ステアリルステアラート
C3-5:ポリエチレングリコール(質量平均分子量1100)モノラウラート
C3-6:ステアリルパルミタート
C3-7:ベヘニルベヘニラート
(脂肪酸(C4))
C4-1:オレイン酸
試験区分2(制電性)
処理剤が付与されていないポリエステル綿(1.2de×38mm)に、付着量がポリエステル綿に対して0.15%となるように、表1,2の実施例及び比較例に記載の処理剤を付着させた。処理剤を付着させたポリエステル綿を80℃の乾燥機内で2時間乾燥させ、25℃×40%RH雰囲気下で一夜調湿させた。前記の処理済みポリエステル綿10kgを用い、25℃×40%RH雰囲気下でフラットカード(豊和工業社製)を通過させてカードスライバーを得た。フラットカードを通過した際のカードウェブを目視で確認した。静電気によるカードウェブの垂れを基に、以下の基準で制電性を評価した。結果を表1,2の「制電性」欄に示す。
【0189】
・制電性の評価基準
2(可):カードウェブの垂れが確認されなかった場合
1(不良):カードウェブの垂れが確認された場合
試験区分3(低粘着性)
各例の処理剤をガラスシャーレ(内径9.5cm)に5g入れた。この際、処理剤がガラスシャーレ内に均一に広がるようにした。30℃、70%RHの条件下で24時間温調させ、温調後の処理剤の外観を目視で、性状を手の感触で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1,2の「低粘着性」欄に示す。
【0190】
・低粘着性の評価基準
2(可):温調後の外観が固状であり手で触ってもべたつきがなかった場合
1(不良):温調後の外観が液状もしくはゲル状であり手で触るとべたついた場合、もしくは、温調後の外観が固状であるが手で触るとべたついた場合
試験区分4(平滑性)
試験区分2で得られたカードスライバーを走査電子顕微鏡(日本電子社製)で確認した。カードスライバーを構成するポリエステル繊維を10本以上確認して、繊維表面の摩擦損傷の数を基に、以下の基準で平滑性を評価した。結果を表1,2の「平滑性」欄に示す。
【0191】
・平滑性の評価基準
2(可):繊維表面の傷が繊維1本あたり平均3個未満
1(不良):繊維表面の傷が繊維1本あたり平均3個以上
試験区分5(乳化安定性)
各例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、1%処理剤の希釈液を調製した。調製した1%処理剤の希釈液100mLを50℃で24時間静置し、静置後の1%処理剤の希釈液の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1,2の「乳化安定性」欄に示す。
【0192】
・乳化安定性の評価基準
6(極めて優れる):析出物及び油滴が発生しなかった場合
5(非常に優れる):油滴が発生しなかったが、析出物が発生した場合であって、析出物は、撹拌羽で300rpmで撹拌させることで、10秒未満に解消された場合
4(優れる):油滴が発生しなかったが、析出物が発生した場合であって、析出物は、撹拌羽で300rpmで撹拌させることで、10秒以上30秒未満に解消された場合
3(良好):油滴が発生しなかったが、析出物が発生した場合であって、析出物は、撹拌羽で300rpmで撹拌させることで、30秒以上60秒未満に解消された場合
2(可):油滴が発生しなかったが、析出物が発生した場合であって、析出物は、撹拌羽で300rpmで撹拌させることで、60秒以上90秒未満に解消された場合
1(不可):油滴が発生した場合、もしくは、析出物が発生し、析出物は、撹拌羽で300rpmで90秒以上撹拌させても解消されなかった場合
各表の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、平滑性及び制電性を向上できる。
【0193】
試験区分6(3剤型第1処理剤の調製)
(3剤型第1処理剤(I-1))
表3に示されるように、有機リン酸エステル化合物(A1)としてオクチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価25KOH-mg/g)(A1-3)33.34部(%)、アミンエーテル型界面活性剤(B)としてオクチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-1)4部(%)、デシルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-2)4部(%)、ラウリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-3)33.33部(%)、ミリスチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-1)13.33部(%)、セチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-2)6部(%)、ステアリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-3)4.67部(%)、及びオレイルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-5)1.33部(%)を混合することにより3剤型第1処理剤(I-1)を調製した。
【0194】
(3剤型第1処理剤(I-2)~(I-26))
3剤型第1処理剤(I-1)と同様にして有機リン酸エステル化合物(A1)、アミンエーテル型界面活性剤(B)、及びその他のエーテル型界面活性剤(B3)を表3,4に示した割合で含むように調製した。
【0195】
有機リン酸エステル化合物(A1)の種類と含有量、アミンエーテル型界面活性剤(B)の種類と含有量、及びその他のエーテル型界面活性剤(B3)の種類と含有量を、表3,4の「有機リン酸エステル化合物(A1)」欄、「アミンエーテル型界面活性剤(B)」、及び「その他のエーテル型界面活性剤(B3)」欄にそれぞれ示す。
【0196】
【表3】
【0197】
【表4】
試験区分7(3剤型第2処理剤の調製)
(3剤型第2処理剤(II-1))
表5に示されるように、有機リン酸エステル化合物(A2)として、ステアリルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価12.5KOH-mg/g)(A2-3)100部(%)を含む3剤型第2処理剤(II-1)を調製した。
【0198】
(3剤型第2処理剤(II-2)~(II-4))
3剤型第2処理剤(II-1)と同様にして、有機リン酸エステル化合物(A2)を表5に示した割合で含むように調製した。有機リン酸エステル化合物(A2)の種類と含有量を、表5の「有機リン酸エステル化合物(A2)」欄に示す。
【0199】
【表5】
試験区分8(3剤型第3処理剤の調製)
(3剤型第3処理剤(III-1))
表6に示されるように、平滑剤(C)として線状ポリジメチルシロキサン(25℃の動粘度1×10-5/s)(C1-1)50部(%)、鉱物油(25℃の動粘度5×10-6/s)(C2-1)20部(%)、メチルオレアート(C3-1)20部(%)、及びオレイン酸(C4-1)10部(%)を含む3剤型第3処理剤(III-1)を調製した。
【0200】
(3剤型第3処理剤(III-2)~(III-14))
3剤型第3処理剤(III-1)と同様にして、平滑剤(C)を表6に示した割合で含むように調製した。平滑剤(C)の種類と含有量を、表6の「平滑剤(C)」欄に示す。
【0201】
【表6】
試験区分9(製剤安定性の評価)
上述した3剤型第1処理剤、3剤型第2処理剤、又は3剤型第3処理剤と、水とを、処理剤:水=40:60の質量比で混合し、3剤型第1処理剤含有組成物~3剤型第3処理剤含有組成物をそれぞれ調製した。各処理剤含有組成物を25℃にて3日間保管した。以下の基準で製品安定性を評価した。結果を表3~6の「製品安定性」欄に示す。
【0202】
・製剤安定性の評価基準
2(良好):ゲル化しなかった場合
1(不可):ゲル化した場合
試験区分10(3剤型第1処理剤~3剤型第3処理剤から処理剤の調製)
(実施例2-1)
表7に示される3剤型第1処理剤(I-1)15%(部)、3剤型第2処理剤(II-1)84%(部)、及び3剤型第3処理剤(III-1)1%(部)を混合して実施例2-1の処理剤を調製した。
【0203】
(実施例2-2~実施例2-31)
実施例2-1と同様にして、表7に示される3剤型第1処理剤、3剤型第2処理剤、及び3剤型第3処理剤を混合して各例の処理剤を調製した。
【0204】
3剤型第1処理剤の種類と質量比、3剤型第2処理剤の種類と質量比、3剤型第3処理剤の種類と質量比を、表7の「第1処理剤(I)」欄、「第2処理剤(II)」欄、「第3処理剤(III)」欄にそれぞれ示す。
【0205】
【表7】
試験区分11(3剤型処理剤の評価)
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1と同様の方法にて制電性、低粘着性、平滑性、及び乳化安定性について評価した。結果を表7の「制電性」欄、「低粘着性」欄、「平滑性」欄、「乳化安定性」欄にそれぞれ示す。
【0206】
表7の各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、3剤型処理剤とした場合であっても、水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、平滑性及び制電性を向上できる。
【0207】
試験区分12(4剤型第1処理剤の調製)
(4剤型第1処理剤(i-1))
表8に示されるように、有機リン酸エステル化合物(A1)としてオクチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価25KOH-mg/g)(A1-3)100部(%)からなる4剤型第1処理剤(i-1)を調製した。
【0208】
(4剤型第1処理剤(i-2)~(i-5))
4剤型第1処理剤(i-1)と同様にして有機リン酸エステル化合物(A1)を表8に示した割合で含むように調製した。有機リン酸エステル化合物(A1)の種類と含有量を、表8の「有機リン酸エステル化合物(A1)」欄に示す。
【0209】
【表8】
試験区分13(4剤型第2処理剤の調製)
(4剤型第2処理剤(ii-1))
表9に示されるように、有機リン酸エステル化合物(A2)としてステアリルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(酸価12.5KOH-mg/g)(A2-3)100部(%)を含む4剤型第2処理剤(ii-1)を調製した。
【0210】
(4剤型第2処理剤(ii-2)~(ii-4))
4剤型第2処理剤(ii-1)と同様にして有機リン酸エステル化合物(A2)を表9に示した割合で含むように調製した。有機リン酸エステル化合物(A2)の種類と含有量を、表9の「有機リン酸エステル化合物(A2)」欄に示す。
【0211】
【表9】
試験区分14(4剤型第3処理剤の調製)
(4剤型第3処理剤(iii-1))
表10に示されるように、アミンエーテル型界面活性剤(B)としてオクチルアミン1モルに対し、エチレンオキサイド10モルを付加したもののリン酸塩(B1-1)6部(%)、デシルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-2)6部(%)、ラウリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B1-3)50部(%)、ミリスチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-1)20部(%)、セチルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-2)9部(%)、ステアリルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-3)7部(%)、及びオレイルアミン1モルに対し、EO10モルを付加したもののリン酸塩(B2-5)2部(%)を含む4剤型第3処理剤(iii-1)を調製した。
【0212】
(4剤型第3処理剤(iii-2)~(iii-16))
4剤型第3処理剤(iii-1)と同様にしてアミンエーテル型界面活性剤(B)及びその他のエーテル型界面活性剤(B3)を表10に示した割合で含むように調製した。アミンエーテル型界面活性剤(B)の種類と含有量及びその他のエーテル型界面活性剤(B3)の種類と含有量を、表10の「アミンエーテル型界面活性剤(B)」欄及び「その他のエーテル型界面活性剤(B3)」欄にそれぞれ示す。
【0213】
【表10】
試験区分15(4剤型第4処理剤の調製)
(4剤型第4処理剤(iv-1))
表11に示されるように、平滑剤(C)として線状ポリジメチルシロキサン(25℃の動粘度1×10-5/s)(C1-1)50部(%)、鉱物油(25℃の動粘度5×10-6/s)(C2-1)20部(%)、メチルオレアート(C3-1)20部(%)、及びオレイン酸(C4-1)10部(%)を含む4剤型第4処理剤(iv-1)を調製した。
【0214】
(4剤型第4処理剤(iv-2)~(iv-14))
4剤型第4処理剤(iv-1)と同様にして、平滑剤(C)を表11に示した割合で含むように調製した。平滑剤(C)の種類と含有量を、表11の「平滑剤(C)」欄に示す。
【0215】
【表11】
試験区分16(製剤安定性の評価)
上述した4剤型第1処理剤、4剤型第2処理剤、4剤型第3処理剤、又は4剤型第4処理剤と、水とを、処理剤:水=40:60の質量比で混合し、4剤型第1処理剤含有組成物~4剤型第4処理剤含有組成物をそれぞれ調製した。各処理剤含有組成物を25℃にて3日間保管した。以下の基準で製品安定性を評価した。結果を表8~11の「製品安定性」欄に示す。
【0216】
・製剤安定性の評価基準
2(良好):ゲル化しなかった場合
1(不可):ゲル化した場合
試験区分17(4剤型第1処理剤~4剤型第4処理剤から処理剤の調製)
(実施例3-1)
表12に示される4剤型第1処理剤(i-1)5%(部)、4剤型第2処理剤(ii-1)84%(部)、4剤型第3処理剤(iii-1)10%(部)、及び4剤型第4処理剤(iv-1)1%(部)を混合して実施例3-1の処理剤を調製した。
【0217】
(実施例3-2~実施例3-31)
実施例3-1と同様にして、表12に示される4剤型第1処理剤、4剤型第2処理剤、4剤型第3処理剤、及び4剤型第4処理剤を混合して各例の処理剤を調製した。
【0218】
4剤型第1処理剤の種類と質量比、4剤型第2処理剤の種類と質量比、4剤型第3処理剤の種類と質量比、及び4剤型第4処理剤の種類と質量比を、表12の「第1処理剤(i)」欄、「第2処理剤(ii)」欄、「第3処理剤(iii)」欄、及び「第4処理剤(iv)」欄にそれぞれ示す。
【0219】
【表12】
試験区分18(4剤型処理剤の評価)
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1と同様の方法にて制電性、低粘着性、平滑性、及び乳化安定性について評価した。結果を表12の「制電性」欄、「低粘着性」欄、「平滑性」欄、「乳化安定性」欄にそれぞれ示す。
【0220】
表12の各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、4剤型処理剤とした場合であっても、水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、平滑性及び制電性を向上できる。
【0221】
(付記)
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記有機リン酸エステル化合物(A1)及びアミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第1処理剤と、前記有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第2処理剤と、前記平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用3剤型第3処理剤と、を含むセットである前記ポリエステル系合成繊維用処理剤。
【0222】
(ロ)前記有機リン酸エステル化合物(A1)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第1処理剤と、前記有機リン酸エステル化合物(A2)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第2処理剤と、アミンエーテル型界面活性剤(B)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第3処理剤と、平滑剤(C)を含有するポリエステル系合成繊維用4剤型第4処理剤と、を含むセットである前記ポリエステル系合成繊維用処理剤。
【0223】
(ハ)前記ポリエステル系合成繊維用処理剤と、水とを含むポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液であって、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤が0.1質量%以上10質量%以下で含有するポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液。
【0224】
(ニ)前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与するポリエステル系合成繊維の処理方法。
【要約】
【課題】合成繊維用処理剤の安定性を向上できるとともに、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減でき、さらには平滑性及び制電性を向上できるポリエステル系合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステル系合成繊維用処理剤は、所定の有機リン酸エステル化合物(A)、所定のアミンエーテル型界面活性剤(B)、及び所定の平滑剤(C)を含有する。有機リン酸エステル化合物(A)は、分子中に炭素数4以上11以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル等である。アミンエーテル型界面活性剤(B)は、分子中に炭素数8以上13以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを2モル以上100モル以下付加させたもの等である。平滑剤(C)は、ポリオルガノシロキサン等である。
【選択図】なし