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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-30
(45)【発行日】2025-06-09
(54)【発明の名称】改良されたロータブレード翼形部
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/14 20060101AFI20250602BHJP
   F04D 29/38 20060101ALI20250602BHJP
【FI】
F01D5/14
F04D29/38 A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021031871
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2021148122
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】16/824,959
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ステイン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・スティーブン・ホンコンプ
(72)【発明者】
【氏名】マメット・スレイマン・シレイ
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0182633(US,A1)
【文献】特開2015-081605(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012102(WO,A1)
【文献】特開2010-112379(JP,A)
【文献】特開平05-340201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械用のロータブレード(50)であって、当該ロータブレード(50)が、
プラットフォーム(66)と、
前記プラットフォーム(66)に近接する根元(64)から先端(68)に半径方向に延びる翼形部(52)と
を備えており、前記翼形部(52)
前縁(58)と、
後縁(60)と、
前記前縁(58)と前記後縁(60)との間に延びる正圧側面(54)と、
前記正圧側面(54)の反対側に配置され、前記前縁(58)と前記後縁(60)との間に延びる負圧側面(56)と
を備えており
前記前縁(58)、前記後縁(60)、前記正圧側面(54)及び前記負圧側面(56)、前記先端(68)における第1のプロファイル(102)及び前記先端(68)から半径方向内側にある第2のプロファイル(104)を集合的に画定し、
前記第1のプロファイル(102)、前記第2のプロファイル(104)に対して負圧側オーバーハング(106)、正圧側オーバーハング(108)及び正圧側アンダーハング(110)を含む、ロータブレード(50)。
【請求項2】
前記翼形部(52)、前記根元(64)と前記先端(68)との間に半径方向スパン長さを画定し、前記第2のプロファイル(104)、前記半径方向スパン長さの約90%~約99%の間に画定される、請求項1に記載のロータブレード(50)。
【請求項3】
前記正圧側アンダーハング(110)、前記前縁(58)と前記正圧側オーバーハング(108)との間に画定される、請求項1又は請求項記載のロータブレード(50)。
【請求項4】
前記正圧側オーバーハング(108)、前記正圧側アンダーハング(110)と前記後縁(60)との間に画定される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のロータブレード(50)。
【請求項5】
前記第1のプロファイル(102)、正圧側弧長(114)と、負圧側弧長(116)とを含み、前記正圧側弧長(114)、前記正圧側面(54)に沿った前記前縁(58)から前記後縁(60)まで測定され、前記負圧側弧長(116)、前記負圧側面(56)に沿った前記前縁(58)から前記後縁(60)まで測定される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のロータブレード(50)。
【請求項6】
前記負圧側オーバーハング(106)、前記負圧側弧長(116)の全長に沿って画定される、請求項5に記載のロータブレード(50)。
【請求項7】
前記正圧側アンダーハング(110)、前記前縁(58)から前記後縁(60)まで測定された前記正圧側弧長(114)の約15%~約35%の間に位置する遷移点(112)で前記正圧側オーバーハング(108)に遷移する、請求項5乃至請求項6のいずれか1項に記載のロータブレード(50)。
【請求項8】
前記第1のプロファイル(102)、前記第2のプロファイル(104)に対して、前記負圧側弧長(116)の約30%~約60%の間の最大負圧側オーバーハング(120)を含む、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のロータブレード(50)。
【請求項9】
前記第1のプロファイル(102)、前記第2のプロファイル(104)に対して、前記正圧側弧長(114)の約40%~約70%の間の最大正圧側オーバーハング(118)を含む、請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載のロータブレード(50)。
【請求項10】
ターボ機械であって、当該ターボ機械が、
圧縮機セクション(14)と、
前記圧縮機セクション(14)の下流の燃焼器セクション(16)と、
前記燃焼器セクション(16)の下流のタービンセクション(18)と、
前記タービンセクション(18)に設けられた請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の複数のロータブレード(50)と
を備えターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ターボ機械に関する。具体的には、本開示は、改良されたロータブレード翼形部に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械は、エネルギー伝達の目的で様々な産業および用途で利用されている。例えば、ガスタービンエンジンは、一般に、圧縮機セクションと、燃焼セクションと、タービンセクションと、排気セクションとを含む。圧縮機セクションは、ガスタービンエンジンに入る作動流体の圧力を徐々に上昇させ、この圧縮された作動流体を燃焼セクションに供給する。圧縮された作動流体および燃料(例えば、天然ガス)は、燃焼セクション内で混合され、燃焼チャンバ内で燃焼して高圧および高温の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、燃焼セクションからタービンセクションに流れ、そこで膨張して仕事を発生する。例えば、タービンセクションにおける燃焼ガスの膨張は、例えば、発電機に接続されたロータシャフトを回転させ、電気を発生することができる。次いで、燃焼ガスは、排気セクションを介してガスタービンから排出される。
【0003】
多くのターボ機械は、圧縮機セクションとタービンセクションの両方においてロータブレードの1つまたは複数の段を含み、これは動作中に流体の流れに曝される。各ロータブレードは、流体の流れと空気力学的に相互作用し、かつ/または流体の流れから仕事を抽出するように構成されたそれぞれの翼形部を支持する基部を含み得る。この相互作用および変換の結果として、これらの翼形部の空気力学的特性により、システムとターボ機械の動作、性能、推力、効率、および各段での動力に影響を及ぼす損失が発生する可能性がある。
【0004】
特にガスタービンにおけるロータブレードについての空気力学的損失および非効率性の原因は、先端漏れ(over-tip leakage)である。動作中、流体の流れの一部が翼形部の先端から漏れ、翼形部の負圧側に渦を形成する場合がある。この漏れとそれに続く負圧側での渦の形成により、圧力勾配が先端全体および/またはブレードのクリアランスギャップを通して形成され、それによってシステムおよび翼形部の流体の流れおよび効率に影響を及ぼし、デバイスの性能を妨げる可能性がある。したがって、改良されたロータブレードが必要である。特に、先端漏れを最小限に抑える翼形部を有するロータブレードが有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示によるロータブレードおよびターボ機械の態様および利点は、以下の説明に部分的に記載されており、または説明から明らかとなり、または本技術の実践を通して学ぶことができる。
【0006】
一実施形態によれば、ターボ機械用のロータブレードが提供される。ロータブレードは、プラットフォームと、プラットフォームに近接する根元から先端に半径方向に延びる翼形部とを含む。翼形部は、前縁と、後縁とを含む。翼形部は、前縁と後縁との間に延びる正圧側面をさらに含む。翼形部はまた、正圧側面の反対側に配置され、前縁と後縁との間に延びる負圧側面を含む。前縁、後縁、正圧側面、および負圧側面は、先端における第1のプロファイル、および先端から半径方向内側にある第2のプロファイルを集合的に画定する。第1のプロファイルは、第2のプロファイルに対して負圧側オーバーハング、正圧側オーバーハング、および正圧側アンダーハングを含む。
【0007】
別の実施形態によれば、ターボ機械が提供される。ターボ機械は、圧縮機セクションと、燃焼器セクションと、タービンセクションとを含む。複数のロータブレードがタービンセクションに設けられ、複数のロータブレードの各々は、プラットフォームと、プラットフォームに近接する根元から先端に半径方向に延びる翼形部とを含む。翼形部は、前縁と、後縁とを含む。翼形部は、前縁と後縁との間に延びる正圧側面をさらに含む。翼形部はまた、正圧側面の反対側に配置され、前縁と後縁との間に延びる負圧側面を含む。前縁、後縁、正圧側面、および負圧側面は、先端における第1のプロファイル、および先端から半径方向内側にある第2のプロファイルを集合的に画定する。第1のプロファイルは、第2のプロファイルに対して負圧側オーバーハング、正圧側オーバーハング、および正圧側アンダーハングを含む。
【0008】
本ロータブレードおよびターボ機械のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照して、よりよく理解されよう。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものであるが、本技術の実施形態を例示し、明細書における説明と併せて本技術の原理を説明するのに役立つ。
【0009】
当業者へと向けられた本システムおよび方法の作製および使用の最良の態様を含む、本ロータブレードおよびターボ機械の完全かつ実施可能な開示が、添付の図を参照する本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態による、ターボ機械の概略図である。
図2】本開示の実施形態による、ターボ機械のタービンセクションを示す図である。
図3】本開示の実施形態による、ロータブレードを示す図である。
図4】本開示の実施形態による、ロータブレード翼形部の2つの半径方向断面プロファイルを示す図である。
図5】本開示の実施形態による、図4の線A-Aに沿ったロータブレード翼形部の断面図である。
図6】本開示の実施形態による、図4の線B-Bに沿ったロータブレード翼形部の断面図である。
図7】本開示の実施形態による、図4の線C-Cに沿ったロータブレード翼形部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本ロータブレードおよびターボ機械の実施形態を詳細に参照するが、その1つまたは複数の例が図面に示されている。各例は、本技術の説明のために提供するものであって、本技術を限定するものではない。実際、特許請求される技術の範囲または趣旨を逸脱せずに、修正および変更が本技術において可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示または記載された特徴は、またさらなる実施形態をもたらすために、別の実施形態において使用することができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にあるそのような修正および変更を包含することを意図している。
【0012】
詳細な説明は、図面の特徴を参照するために、数字および文字の符号を使用する。図面および説明における類似または同様の符号は、本発明の類似または同様の部分を指して使用されている。本明細書で使用する場合、「第1の」、「第2の」、および「第3の」という用語は、ある構成要素を別の構成要素から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成要素の位置または重要性を示すことを意図するものではない。
【0013】
本明細書で使用する場合、「上流」(または「前方」)、および「下流」(または「後方」)という用語は、流体経路における流体の流れに関する相対的な方向を指す。例えば、「上流」は、流体が流れてくる方向を指し、「下流」は、流体が流れていく方向を指す。
【0014】
中心軸に関して異なる半径方向位置に配置された部品または特徴を記述する必要がある場合がある。「半径方向に」という用語は、特定の構成要素の軸方向の中心線に実質的に垂直な相対的な方向(すなわち、移動または位置)を指し、「軸方向に」という用語は、特定の構成要素の軸方向の中心線に実質的に平行および/または同軸に整列する相対的な方向(すなわち、移動または位置)を指し、「円周方向に」という用語は、特定の構成要素の軸方向の中心線の周囲に延びる相対的な方向(すなわち、移動または位置)を指す。
【0015】
特に明記されない限り、「概して」、または「約」などの近似の用語は、記載された値のプラスマイナス10パーセントの範囲内の値を含む。角度または方向の文脈で使用されるとき、そのような用語は、記載された角度または方向のプラスマイナス10度の範囲を含む。例えば、「概して垂直」は、任意の方向、例えば、時計回りまたは反時計回りの垂直から10度の範囲内の方向を含む。
【0016】
ここで図面を参照すると、図1は、ターボ機械の一実施形態の概略図を示しており、これは、図示の実施形態ではガスタービン10である。産業用または陸上用のガスタービンが本明細書に示されて説明されているが、本開示は、特許請求の範囲に特に明記されない限り、陸上用および/または産業用ガスタービンに限定されない。例えば、本明細書に記載のロータブレードは、限定はしないが、蒸気タービン、航空機用ガスタービン、または船舶用ガスタービンを含む任意のタイプのターボ機械に使用することが可能である。
【0017】
示すように、ガスタービン10は、一般に、入口セクション12と、入口セクション12の下流に配置された圧縮機セクション14と、圧縮機セクション14の下流に配置された燃焼器セクション16内の1つまたは複数の燃焼器(図示せず)と、燃焼器セクション16の下流に配置されたタービンセクション18と、タービンセクション18の下流に配置された排気セクション20とを含む。加えて、ガスタービン10は、圧縮機セクション14とタービンセクション18との間に結合された1つまたは複数のシャフト22を含むことができる。
【0018】
圧縮機セクション14は、一般に、複数のロータディスク24(そのうちの1つが示されている)と、各ロータディスク24から半径方向外側に延び、各ロータディスク24に接続されている複数のロータブレード26とを含むことができる。次に、各ロータディスク24は、圧縮機セクション14を通って延びるシャフト22の一部に結合されるか、またはその一部を形成してもよい。
【0019】
タービンセクション18は、一般に、複数のロータディスク28(そのうちの1つが示されている)と、各ロータディスク28から半径方向外側に延び、各ロータディスク28に接続されている複数のロータブレード30とを含むことができる。次に、各ロータディスク28は、タービンセクション18を通って延びるシャフト22の一部に結合されるか、またはその一部を形成してもよい。タービンセクション18は、シャフト22の一部およびロータブレード30を円周方向に囲む外側ケーシング31をさらに含み、それによってタービンセクション18を通る高温ガス経路32を少なくとも部分的に画定する。
【0020】
動作中、空気などの作動流体が入口セクション12を通って圧縮機セクション14に流入し、ここで空気が徐々に圧縮され、それにより加圧空気を燃焼器セクション16の燃焼器に提供する。加圧空気は燃料と混合され、1つまたは複数の燃焼器内で燃焼されて燃焼ガス34を発生する。燃焼ガス34は、高温ガス経路32を通って燃焼器セクション16からタービンセクション18に流入し、ここでエネルギー(運動エネルギーおよび/または熱エネルギー)が燃焼ガス34からロータブレード30に伝達されることにより、シャフト22が回転する。次いで、機械的回転エネルギーを圧縮機セクション14への動力供給および/または発電に使用することができる。タービンセクション18から排出された燃焼ガス34は次に、排気セクション20を介してガスタービン10から排気され得る。
【0021】
図2は、直列流れ順序で配置された複数のタービン段を含むガスタービン10の例示的なタービンセクション18を示している。タービンの各段は、タービンロータブレード(例えば、ブレード50)の対応する回転列に軸方向に隣接して配置された静止タービンノズルまたはベーン(例えば、ノズル100)の列を含む。4つのタービン段が、図1に示されている。タービンセクション18の正確な段数は、図2に示される4段よりも多い場合も少ない場合もある。4つの段は、1つのタービン設計の単なる例示であり、現在主張されているタービンロータブレードを決して限定することを意図するものではない。
【0022】
第1段は、複数のタービンノズルまたはベーン100と、複数のタービンロータブレード150とを備える。タービンノズル100は、外側ケーシング31に装着され、タービンシャフト22の軸の周りに環状に配置される。タービンロータブレード150は、タービンロータ36の周りに環状に配置され、タービンロータ36に結合される。タービンセクション18の第2段は、タービンロータ36の軸の周りに環状に配置された複数のタービンノズル200と、タービンロータ36の周りに環状に配置され、タービンロータ36に結合された複数のタービンロータブレード250とを含む。タービンノズル200は、タービンセクション18の外側ケーシング31に結合することができる。
【0023】
図2に示すように、タービンセクション18の第3段は、タービンロータ36の軸の周りに環状に配置された複数のタービンノズル300と、タービンロータ36の周りに環状に配置され、タービンロータ36に結合された複数のタービンロータブレード350とを含む。タービンノズル300は、タービンセクション18の外側ケーシング31に結合することができる。特定の実施形態では、タービンセクション18は、タービンロータ36の軸の周りに環状に配置された複数のタービンノズル400と、タービンロータ36の周りに環状に配置され、タービンロータ36に結合された複数のタービンロータブレード450とを含む第4段を含む。第4段タービンノズル400は、タービンセクション18の外側ケーシング31に結合することができる。
【0024】
タービンノズル100、200、300、および400ならびにタービンロータブレード150、250、350、および450は、タービンセクション18の高温ガス経路32内に配置されるか、または少なくとも部分的に配置されることが理解されよう。タービン10の様々な段は、矢印20によって示されるように、燃焼ガスがガスタービン10の動作中に通って流れる高温ガス経路32を少なくとも部分的に画定する。
【0025】
図3は、タービンセクション18の任意の段に組み込むことができる例示的なタービンロータブレード50の斜視図を示している。図3に示すように、タービンロータブレード50は、正圧側面54と、対向する負圧側面56とを有する翼形部52を含む。正圧側面54と負圧側面56は、翼形部52の前縁58および後縁60で合流するか、または交差する。前縁58と後縁60は、互いに離間して配置され、軸方向Aで翼形部52の末端を画定することができる。直線の翼弦線(図示せず)が、前縁58と後縁60との間に延び、したがって正圧側面および負圧側面54、56は、前縁58と後縁60との間で翼弦内または翼弦方向に延びる。
【0026】
正圧側面54は、一般に、翼形部52の空気力学的な凹状の外面を備える。同様に、負圧側面56は、一般に、翼形部52の空気力学的な凸状の外面を画定することができる。翼形部52の前縁58は、高温ガス経路32に沿って燃焼ガスに関与する、すなわち、曝される翼形部52の第1の部分であり得る。燃焼ガスは、後縁60で排気される前に、翼形部52の空気力学的輪郭に沿って、すなわち、負圧側面56および正圧側面54に沿って導かれ得る。
【0027】
図3に示すように、翼形部52は、タービンロータブレード50のプラットフォーム66と交差し、プラットフォーム66から半径方向外側に延びる根元または第1の端部64を含む。翼形部52は、翼形部52の第2の端部または先端68で半径方向に終端する。翼形部52の根元64は、翼形部52とプラットフォーム66との間の交差部で画定され得る。先端68は、根元64の半径方向反対側に配置される。したがって、先端68は、一般に、タービンロータブレード50の半径方向最外部分を画定することができ、したがって、タービンセクション18の静止シュラウドまたはシール(図示せず)に隣接して位置決めされるように構成することができる。
【0028】
正圧側面および負圧側面54、56は、スパン内に延び、翼形部52の根元64および/またはプラットフォーム66と先端68との間の翼形部52のスパン長さ70を画定する。換言すれば、各タービンロータブレード50は、対向する前縁58と後縁60との間に翼弦内または翼弦方向に延び、翼形部52の根元64と先端68との間にスパン内またはスパン方向70に延びる対向する正圧側面および負圧側面54、56を有する翼形部52を含む。
【0029】
特定の構成では、翼形部52は、根元64に近接するプラットフォーム66と翼形部52との間に形成されたフィレット72を含み得る。フィレット72は、従来のMIG溶接、TIG溶接、ろう付けなどを介して形成され得る溶接またはろう付けフィレットを含むことができ、フィレット72の存在の結果として流体力学的損失を低減し得るプロファイルを含むことができる。特定の実施形態では、プラットフォーム66、翼形部52、およびフィレット72は、鋳造および/もしくは機械加工および/もしくは3D印刷、ならびに/または現在知られているか後に開発および/もしくは発見される任意の他の適切な技法などによって、単一の構成要素として形成することができる。特定の構成では、タービンロータブレード50は、タービンロータブレード50をシャフト22に接続および/または固定するように形成された装着部分74(蟻継ぎなど)を含む。
【0030】
プラットフォーム66または根元64と先端68との間で取られる任意の断面において、タービンロータブレード50の翼形部52は、前縁58、後縁60、正圧側面54、および負圧側面56によって集合的に画定されたプロファイルを有する。プロファイル(すなわち、断面形状)は、例えば、図4の断面に示すように、翼形部52のスパンにわたって変化し得る。
【0031】
スパン長さ70は、翼形部52の根元64から先端68まで測定することができる。スパン長さ70のパーセンテージを使用して、スパン長さ70に沿った所与のプロファイルの位置を示すことができる。例えば、「0%スパン」に位置するプロファイルは、根元64で取られた翼形部52のプロファイルを指し得る。同様に、「100%スパン」に位置するプロファイルを使用して、先端68で取られたプロファイルを指すことができる。
【0032】
例えば、図4に示すように、翼形部52は、先端68における第1のプロファイル102、すなわち、翼形部52のスパン長さ70の100%で取られる第1のプロファイル102と、ガスタービン10の半径方向Rに関して先端68および第1のプロファイル102の半径方向内側にある第2のプロファイル104とを含み得る。図4では、第1のプロファイル102は実線で示され、第2のプロファイル104は点線で示される。
【0033】
図4に示すように、第1のプロファイル102に関連する正圧側面54、負圧側面56、前縁58、および後縁60の部分は、素数、例えば、正圧側面54’、負圧側面56’、前縁58’、および後縁60’として示される。同様に、第2のプロファイル104に関連する正圧側面54、負圧側面56、前縁58、および後縁60の部分は、二重素数、例えば、正圧側面54’’、負圧側面56’’、前縁58’’、および後縁60’’として示される。しかし、正圧側面54’、54’’および負圧側面56’、56’’は、それぞれ、スパン長さ70に沿った異なる場所に位置決めされた、同じ連続的な正圧側面54および負圧側面56の部分であることが理解される。
【0034】
様々な実施形態において、第2のプロファイル104は、翼形部52のスパン長さ70の約90%~約99%の間で取られ得る。他の実施形態では、第2のプロファイル104は、翼形部52のスパン長さ70の約92%~約97%の間で取ることができる。特定の実施形態では、第2のプロファイル104は、翼形部52のスパン長さ70の約95%で取られてもよい。
【0035】
多くの実施形態では、第1のプロファイル102は、第1のプロファイル102の正圧側面54’と負圧側面56’との間の中間に画定されたキャンバ軸113を含み得る。図4に示すように、キャンバ軸113は、概して弓形であり、第1のプロファイル102の正圧側面54’および/または負圧側面56’と実質的に同様の輪郭を含むことができる。同様に、第2のプロファイル104は、第2のプロファイル104の正圧側面54’’と負圧側面56’’との間の中間に画定されたキャンバ軸130を含み得る。図4に示すように、キャンバ軸130は、概して弓形であり、第2のプロファイル104の正圧側面54’’および/または負圧側面56’’と実質的に同様の輪郭を含むことができる。一部の領域(後縁60’、60’’付近など)では、キャンバ軸113、130が一致している場合がある。
【0036】
半径方向R’が、キャンバ軸113に関して直交して画定され得る。本明細書で使用する場合、「半径方向に」という用語は、キャンバ軸113に実質的に垂直である半径方向R’を指すことができる。より具体的には、図4に示す半径方向R’は、第1のプロファイル102のキャンバ軸113に沿った各場所でキャンバ軸113に接する線から外側に、そして線に垂直に延びる。
【0037】
図4に示すように、翼形部52の第1のプロファイル102は、第2のプロファイル104に対して負圧側オーバーハング106、正圧側オーバーハング108、および正圧側アンダーハング110を含む。本明細書で使用する場合、「オーバーハング」は、2つのプロファイルに沿った同じ場所で取られた2つの異なるプロファイル間の変位、オフセット、および/または距離を指すために使用され、第1のプロファイルは、半径方向R’に関して指定された場所で第2のプロファイルから半径方向外側に位置決めされる。逆に、「アンダーハング」という用語は、2つのプロファイルに沿った同じ場所で取られた2つの異なるプロファイル間の変位、オフセット、および/または距離を指すために使用され、第1のプロファイルは、半径方向R’に関して指定された場所で第2のプロファイルから半径方向内側に位置決めされる。
【0038】
例えば、図4に示すように、負圧側オーバーハング106は、半径方向R’に関して第2のプロファイル104の負圧側面56’’から半径方向外側に位置決めされた、第1のプロファイル102の負圧側面56’の一部である。同様に、正圧側オーバーハング108は、半径方向R’に関して第2のプロファイル104の正圧側面54’’から半径方向外側に位置決めされた、第1のプロファイル102の正圧側面54’の一部である。正圧側アンダーハング110は、半径方向R’に関して第2のプロファイル104の正圧側面54’’から半径方向内側に位置決めされた、第1のプロファイル102の正圧側面54’の一部である。
【0039】
多くの実施形態では、第1のプロファイル102は、正圧側弧長114と、負圧側弧長116とを含み得る。正圧側弧長114は、正圧側面54’に沿った前縁58’から後縁60’まで測定することができる。同様に、負圧側弧長116は、負圧側面56’に沿った前縁58’から後縁60’まで測定することができる。正圧側弧長114または負圧側弧長116のパーセンテージを使用して、弧長114、116に沿った所与の特徴の位置を示すことができる。例えば、「25%弧長」に位置する特徴は、前縁58’から後縁60’まで測定して、それぞれの弧長114または116の長さの4分の1に位置する特徴を指し得る。同様に、「75%弧長」に位置するプロファイルは、同じく前縁58’から後縁60’まで測定して、それぞれの弧長114または116の長さの4分の3に位置する特徴を指すことができる。
【0040】
示すように、負圧側オーバーハング106は、負圧側弧長116全体に沿って画定され得る。さらに、図示の実施形態では、正圧側アンダーハング110および正圧側オーバーハング108は各々、正圧側弧長114の別個の部分に沿って画定される。第1のプロファイル102の正圧側面54’は、前縁58’の下流の遷移点112において、正圧側アンダーハング110から正圧側オーバーハング108に遷移する。様々な実施形態において、遷移点112は、正圧側弧長114の約15%~約35%の間に位置し得る。他の実施形態では、遷移点112は、正圧側弧長114の約20%~約32%の間に位置することができる。特定の実施形態では、遷移点112は、正圧側弧長114の約28%に位置してもよい。
【0041】
翼形部52の第1のプロファイル102は、第2のプロファイル104に対して最大正圧側オーバーハング118をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のプロファイル102の最大正圧側オーバーハング118は、正圧側弧長114の約40%~約70%の間に位置し得る。他の実施形態では、第1のプロファイル102の最大正圧側オーバーハング118は、正圧側弧長114の約45%~約65%の間に位置することができる。様々な実施形態において、第1のプロファイル102の最大正圧側オーバーハング118は、正圧側弧長114の約50%~約60%の間に位置し得る。特定の実施形態では、第1のプロファイル102の最大正圧側オーバーハング118は、正圧側弧長114の約55%に位置してもよい。
【0042】
同様に、いくつかの実施形態では、翼形部の第1のプロファイル102は、最大負圧側オーバーハング120を含むことができる。第1のプロファイル102の最大負圧側オーバーハング120は、負圧側弧長116の約30%~約60%の間に位置し得る。他の実施形態では、第1のプロファイル102の最大負圧側オーバーハング120は、負圧側弧長116の約35%~約55%の間に位置することができる。様々な実施形態において、第1のプロファイル102の最大負圧側オーバーハング120は、負圧側弧長116の約40%~約50%の間に位置し得る。特定の実施形態では、第1のプロファイル102の最大負圧側オーバーハング120は、負圧側弧長116の約45%に位置してもよい。
【0043】
図5図6、および図7は、キャンバ軸113に沿った異なる場所、例えば、それぞれ図4の断面A-A、B-B、およびC-Cで取られた翼形部52の異なる断面図を示している。図5図7に示すように、翼形部52は、第1のスパン長さ122と、第2のスパン長さ124とをさらに含むことができる。本明細書に記載のように、第1のスパン長さ122は、第1のプロファイル102が画定される長さであり得る。同様に、第2のスパン長さ124は、第2のプロファイル104が画定される長さであり得る。さらに、示すように、翼形部は、正圧側フィレット126と、負圧側フィレット128とを含むことができる。
【0044】
正圧側フィレット126は、第2のスパン長さ124と第1のスパン長さ122との間、すなわち、第2のプロファイル104と第1のプロファイル102との間に半径方向にある正圧側面54の一部を画定し得る。図5図7に示すように、正圧側フィレット126は、正圧側アンダーハング110、遷移点112、および正圧側オーバーハング108を少なくとも部分的に画定する1つの連続面とすることができる。同様に、負圧側フィレット128は、第2のスパン長さ124と第1のスパン長さ122との間、すなわち、第2のプロファイル104と第1のプロファイル102との間に半径方向にある負圧側面56の一部を画定し得る。図5図7に示すように、負圧側フィレット128は、負圧側オーバーハング106を少なくとも部分的に画定する1つの連続面とすることができる。
【0045】
正圧側フィレット126および負圧側フィレット128は、翼形部52の先端68を横切る燃焼ガスの全体的な漏れを低減するように機能する。具体的には、正圧側アンダーハング110、正圧側オーバーハング108、および負圧側オーバーハング106は共に機能し、翼形部52の全体的な空気力学的効率を高める。例えば、本明細書に記載の先端で結合されたオーバーハングおよびアンダーハングは、先端の渦の形成および先端の漏れを低減し、それによって翼形部の先端を横切る圧力勾配の形成を抑制し、空気力学的性能の改良を支援することができる。
【0046】
したがって、本明細書に記載の翼形部52は、全体的なガスタービン効率を改良する。具体的には、翼形部52は、所望のタービン効率減率(turbine efficiency lapse rate)(ISO、高温、低温、部分負荷など)を提供する。翼形部52はまた、すべての空力および応力の要件を満たしている。本明細書に記載のタービンロータブレード50は、上流バケットの半径方向背圧(すなわち、作業分割)および下流タービンロータ150、250、350、および450についての半径方向の速度三角形など、非常に特定の空気力学的設計要件を有する。これらの設計目標を達成するには、部門を超えた多大な設計努力が必要であった。したがって、タービンロータブレード50の翼形部52は、効率的かつ費用効果の高い方式で空気力学的、機械的、および熱伝達の要件を満たすための特定の形状のものである。
【0047】
本明細書は、最良の態様を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意のデバイスまたはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実施を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含む場合、あるいは特許請求の範囲の文言との実質的な相違がない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。
【符号の説明】
【0048】
10 ガスタービン
12 入口セクション
14 圧縮機セクション
16 燃焼器セクション
18 タービンセクション
20 排気セクション
22 タービンシャフト
24 ロータディスク
26 ロータブレード
28 ロータディスク
30 ロータブレード
31 外側ケーシング
32 高温ガス経路
34 燃焼ガス
36 タービンロータ
50 タービンロータブレード
52 翼形部
54 正圧側面
54’ 正圧側面
54’’ 正圧側面
56 負圧側面
56’ 負圧側面
56’’ 負圧側面
58 前縁
58’ 前縁
58’’ 前縁
60 後縁
60’ 後縁
60’’ 後縁
64 根元/第1の端部
66 プラットフォーム
68 先端
70 スパン長さ/スパン方向
72 フィレット
74 装着部分
100 タービンノズル/ベーン
102 第1のプロファイル
104 第2のプロファイル
106 負圧側オーバーハング
108 正圧側オーバーハング
110 正圧側アンダーハング
112 遷移点
113 キャンバ軸
114 正圧側弧長
116 負圧側弧長
118 最大正圧側オーバーハング
120 最大負圧側オーバーハング
122 第1のスパン長さ
124 第2のスパン長さ
126 正圧側フィレット
128 負圧側フィレット
130 キャンバ軸
150 タービンロータブレード/下流タービンロータ
200 タービンノズル
250 タービンロータブレード/下流タービンロータ
300 タービンノズル
350 タービンロータブレード/下流タービンロータ
400 タービンノズル
450 タービンロータブレード
A 軸方向
R 半径方向
R’ 半径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7