(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-30
(45)【発行日】2025-06-09
(54)【発明の名称】試料干渉を検出し枯渇させるための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20250602BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20250602BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N33/543 541A
(21)【出願番号】P 2022541772
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2020039503
(87)【国際公開番号】W WO2020264083
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-21
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522093591
【氏名又は名称】ベラバス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケイン ソルド, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス バーグマン, スコット
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン, エリック
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0292394(US,A1)
【文献】国際公開第2018/197406(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/071813(WO,A1)
【文献】特開平08-114590(JP,A)
【文献】特表平09-510289(JP,A)
【文献】Huijin Dong et al.,Development of a Generic Anti-PEG Antibody Assay Using BioScale's Acoustic Membrane MicroParticle Tcehnology,The AAPS Journal,2015年11月,vol.17, No.6,pp.1511-1516,DOI:10.1208/s12248-015-9799-4
【文献】Christina Trambas et al.,Depletion of biotin using streptavidin-coated microparticles: a validated solution to the problem of biotin interference in streptavidin-biotin immunoassays,Annals of Clinical Biochemistry,2018年,vol.55, no.2,pp.216-226,DOI:10.1177/0004563217707783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体生体試料からの干渉を軽減するための方法であって、
a)前記試料をストレプトアビジンを含む粒子と組み合わせて、混合物を提供することと、
b)前記ストレプトアビジンへの前記干渉の結合を促進するために、前記混合物を混合することであって、前記ストレプトアビジンが、追加の非ビオチン捕捉部分と抱合しており、その結果、前記捕捉部分に結合する物質による干渉も除去または低減され、前記ストレプトアビジン上のビオチン結合部位がビオチンで飽和しており、その結果、抗ストレプトアビジンによる干渉が除去または低減される、混合することと、
c)前記試料から前記粒子を分離することと、を含み、
それによって、前記干渉の量を除去または低減する、方法。
【請求項2】
前記ストレプトアビジンがビオチン化されており、その結果、抗ストレプトアビジン、抗ビオチン、またはその両方による干渉が除去または低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子が磁性を帯びている、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子を前記試料から分離することが、前記混合物を磁石に曝露し、前記液体試料を回収することを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記ビオチン化または抱合が共有結合性である、請求項1または
2に記載の方法。
【請求項6】
前記ビオチン化が、エステル誘導体化ビオチンの使用を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記エステル誘導体化ビオチンが、NHS-ビオチン、NHS-LC-ビオチン、NHS-LC-LC-ビオチン、TFP-LC-ビオチン、NHS-クロマリンク-ビオチン、NHS-PEO4-biotin、TFP-(PEO)n-ビオチン、およびNHS-(PEO)n-ビオチンからなる群から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ビオチン化または抱合が、前記ストレプトアビジン上のビオチン結合部位に非共有結合したビオチンリンカーによって媒介される、請求項1または
2に記載の方法。
【請求項9】
前記
ストレプトアビジン上のビオチン結合部位がビオチンで飽和したときに形成されるビオチン飽和ストレプトアビジン(QSAv
)が、主に単量体である、請求項
3または4に記載の方法。
【請求項10】
前記
ストレプトアビジン上のビオチン結合部位がビオチンで飽和したときに形成されるビオチン飽和ストレプトアビジン(QSAv
)またはストレプトアビジンを含む粒子がブロックされている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記
ストレプトアビジン上のビオチン結合部位がビオチンで飽和したときに形成されるビオチン飽和ストレプトアビジン(QSAv
)またはストレプトアビジンを含む粒子が、PEG化によってブロックされている、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記追加の捕捉部分が、追加のヘテロ親和性干渉をブロック、除去、または低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記追加の捕捉部分が異種抗体であり、前記ヘテロ親和性干渉がヒト抗動物抗体干渉である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記追加の捕捉部分が、交差反応性干渉をブロック、除去、または低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記追加の捕捉部分が、ウイルス抗原またはその抗原部分である、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
ウイルス抗原またはその抗原部分が、SARS-CoV-2以外のコロナウイルスからのコロナウイルスエピトープを含む、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年4月7日に出願された米国仮特許出願第63/006,630号、および2019年6月25日に出願された第62/866,318号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容全体は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
毎9分に1人が、誰かが誤診または診断の遅延により死亡している[1]。医師は治療を進めるために診断検査に頼っているが、検査のうち2%以上が、血液または尿における複数の干渉(例えば、血液検査におけるビオチン)により、不正確である可能性がある[2]。
【0003】
ビタミンB7、ビタミンHおよびコエンザイムRとしても知られるビオチンは、市販(OTC)の栄養補助食品、複合ビタミン剤、および妊婦用ビタミン剤において、しばしば高用量で見られる水溶性ビタミンである。ビオチンは、毛髪、皮膚、爪の成長のほか、体重減少も含めた健康・美容用に市販されている。また、多発性硬化症などの特定の病状を治療するために、患者に高薬用量で投与される。ところが、ビオチンは特定の臨床検査に著しく干渉して、不正確な検査結果をもたらすことがあり、これが検出されずにいる場合や、誤診または治療遅延につながる場合がある[3-13]。
【0004】
2017年、FDAは、多数の有害事象が不正確な検査結果とビオチンの補充に関連したことから、安全性に関する警告を出した[14]。2019年6月13日、FDAは「Testing for Biotin Interference in In Vitro Diagnostic Devices」(インビトロ診断装置におけるビオチン干渉についての試験)に関する指針書案の通知を発表した[15]。
【0005】
インビトロ診断(IVD)会社は、ビオチン干渉を軽減するため、またはビオチン干渉閾値を増加させるために、検査に干渉するには、ずっと高いビオチン濃度を要するように、検査の再設計または再構築に積極的に取り組んでいる。しかしながら、これらのビオチンベースの試験は、ビオチンまたは患者によるビオチン使用に関連する二次的な干渉メカニズム、すなわち抗ビオチン干渉[16-17]、ならびに抗体、タンパク質または抗原に共役されたビオチンを捕捉するための検査設計におけるストレプトアビジンの使用に関連する干渉メカニズム、すなわち抗ストレプトアビジン干渉[18-26]には、依然として影響されやすい。
【0006】
抗ビオチンおよび抗ストレプトアビジンの抗体およびタンパク質は、特定の臨床検査に著しく干渉し、不正確な検査結果を引き起こす可能性がある。アッセイの設計およびフォーマットに応じて、試験信号の減少および偽の低い患者結果もしくは偽の高い患者結果を引き起こすビオチン干渉と同様に、抗ビオチン干渉および抗ストレプトアビジン干渉もまた、試験信号の減少をもたらすが、異なる機序を介するものであるため、それらはビオチン干渉と間違われることがある[16-26]。
【0007】
FDAは最近、臨床・検査標準協会(CLSI)規格の勧告に従い、また現在のビオチン消費の傾向を反映して、IVD会社は最大1200ng/mLの濃度でビオチン干渉について検査すべきであるとの指針を提示したものの、FDAはいまだに、ヒト抗ビオチン干渉またはヒト抗ストレプトアビジン干渉による不正確な検査結果に関連する有害事象についての安全警告は出していない[15]。ヒト抗ストレプトアビジン干渉およびヒト抗ビオチン干渉は文献で報告されてきたが、これらの特定の干渉メカニズムを検出・確認すること、またはビオチン干渉と区別することは困難である。
【0008】
部分または干渉特異的な標的を捕捉するために固定または共有結合された結合表面(すなわち、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、ナノ粒子、マイクロタイタープレート/ウェル、キュベット、スライド、センサー、チップ、ロッド、フィルター、膜、チューブ、または試料を処理するために使用される任意の他の固相)を用いた試料の前処理を、検査前に試料干渉またはバイオマーカーを枯渇、濃縮、および/または特徴付けて、検査結果の精度を改善するために使用することができる[27]。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
IVDアッセイの大部分は、ストレプトアビジン-ビオチン結合を利用している。これらのアッセイは、遊離ビオチンからの、および、アッセイ試薬と、抗ストレプトアビジン抗体および抗ビオチン抗体を含むストレプトアビジンまたはビオチンとの間の結合に対して競合するか、または別なふうに干渉する薬剤からの、ヘテロ親和性干渉を受ける。アッセイ試薬とストレプトアビジンまたはビオチンとの間の結合に干渉する物質は、物質が抗体であるか否かにかかわらず、本明細書では抗ビオチンまたは抗ストレプトアビジンと呼ぶ。本明細書では、より正確なアッセイ結果が得られるように、1)これらの異なるタイプの干渉を検出または定量化するために、また2)アッセイ試薬、試料、または反応混合物中に存在しうる干渉物質を除去または枯渇するために、使用できる試薬(ビーズ)が開示される。これらの試薬を作製および使用するための方法も提供される。
【0010】
本明細書に開示されている試薬の一部には、ストレプトアビジンビーズを形成するために、ストレプトアビジンで被覆されたナノ粒子を含むものがある。一部の実施形態では、ストレプトアビジンの一部またはすべては、ナノ粒子に共有結合している。一部の実施形態では、ナノ粒子は、保存溶液および処理済み試料、アッセイ試薬などからのビーズの分離を容易にするために、磁性である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、磁性であっても磁性でなくてもよく、保存溶液や処理済の試料からのビーズの分離は、沈殿(遠心分離など)または濾過によって達成される。他の実施形態は、遊離(または可溶性)ストレプトアビジンを含む。遊離したビーズまたは被覆されたビーズのいずれのタイプの実施形態でも、ストレプトアビジンがビオチン化アッセイ試薬分子間で架橋して、ヘテロ親和性干渉源になることができないように、ストレプトアビジンは、最小限の過剰なビオチンで飽和(またはクエンチ)される。飽和とは、ストレプトアビジン上のすべてのアクセス可能なビオチン結合部位が、ビオチンによって占有されることを意味する。遊離ビオチン飽和ストレプトアビジンは、例えば、アッセイ反応混合物に添加する(存在する)ことができる抗ストレプトアビジンヘテロ親和性干渉遮断試薬としての使用に適している。ビオチン飽和ストレプトアビジン被覆ビーズは、例えば、アッセイされる生体体液または抽出物(試料)に添加され、その後、アッセイ反応混合物に添加される前に除去されうる、抗ストレプトアビジンヘテロ親和性干渉洗浄試薬としての使用に適している。一部の用途では、洗浄試薬は、アッセイ試薬または部分アッセイ反応混合物に加えて、アッセイ反応混合物を完成させてアッセイ反応を開始する前に除去することができる。
【0011】
ストレプトアビジンを利用する実施形態は、本開示全体を通して記載されている。しかしながら、アビジン、脱グリコシル化アビジン(ニュートラアビジン)、CaptAvidin、単量体アビジンなどの代替物を含むさらなる実施形態も企図される。ストレプトアビジンの天然型および組換え型、ならびにその代替物も企図される。これらの試薬は、ビオチンを結合するための手段、または抗ストレプトアビジン干渉を結合するための手段と呼ばれうる。
【0012】
ストレプトアビジン活性ビオチン結合部位をクエンチまたは飽和させるためにビオチンを利用する実施形態を、本開示全体を通して説明する。しかしながら、ビオチン化剤、例えばビオチン-PEGn-COOHやビオチン-PEGn-CH3やビオチン-PEGn-OH、またはRが炭素鎖または環構造である他のビオチン-R-(非反応性末端化学)を使用するさらなる実施形態も企図される。ビオチンおよびこれらの修飾形態のビオチンは、これらの試薬は、ビオチンに結合するための手段、または抗ビオチン干渉を結合するための手段と呼ばれうる。
【0013】
さらなる実施形態では、ストレプトアビジン被覆ビーズ、ビオチン飽和ストレプトアビジン被覆ビーズ、ストレプトアビジン、またはクエンチドストレプトアビジンは、(抗ストレプトアビジン干渉に加えて)他のヘテロ親和性または交差反応性の干渉を除去するために、一つ以上の追加の捕捉部分に共役することによって修飾される。これらの実施形態の一つの態様では、追加の捕捉部分は、ビオチン飽和ストレプトアビジン被覆ビーズに共役され、抗ビオチンヘテロ親和性干渉洗浄試薬としての使用にさらに適している。これらの実施形態のさらなる態様では、追加の捕捉部分は、ルテニウム(元素)、ルミノール、アクリジニウムエステル、ABEIもしくは環状ABEI(ビオチンなど、有機小分子)、またはシグナル生成酵素(例えばアルカリホスファターゼもしくはホースラディッシュペルオキシダーゼ)、ストレプトアビジン、抗体(例えば非ヒト種からの抗体)、または抗原といったタンパク質である。なおさらなる態様では、捕捉部分は、任意の非抗体ペプチドまたはタンパク質であってもよい。これら全ての例において、追加の捕捉部分は、ストレプトアビジン被覆ビーズまたはビオチン飽和ストレプトアビジン被覆ビーズを、共役分子に関連するヘテロ親和性または交差反応性の干渉を除去または枯渇させるための洗浄試薬としての使用に適する。一部の実施形態は、一つ以上の捕捉部分を含む。一部の実施形態は、一つ以上の捕捉部分を含まない。例えば、一部の実施形態では、追加の捕捉部分はビオチンではない。
【0014】
ストレプトアビジン(可溶性、またはビーズ結合性、ビオチン飽和または非飽和)への共役を達成するために、いくつかの化学物質が利用可能である。共役は、アミン反応性試薬を使用して、ストレプトアビジン、典型的にはエステル、例えば、NHS修飾化合物またはタンパク質などの第一級アミンとの結合を形成するように進行しうる。代替的に、ストレプトアビジンの第一級アミンは、チオール化されてもよい。標準的なチオール化試薬は当該技術分野で公知であるが、スクシンイミジルtrans-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)およびスクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)を含む。次に、共役は、チオールまたはスルフヒドリル反応性試薬、例えばマレイミド修飾化合物またはタンパク質を使用して実施することができる。別の代替法では、ストレプトアビジンの第一級アミンを、標準的なエステル-マレイミドヘテロ二官能性架橋剤を使用してマレイミドと反応させる。次いで、チオールまたはスルフヒドリル修飾(または含有)化合物またはタンパク質を使用して共役を実施することができる。これらの化学反応および関連する試薬は、共役の手段と呼んでもよく、反応自体は共役のステップと呼んでもよい。
【0015】
典型的には、ストレプトアビジン被覆ビーズ、ビオチン飽和ストレプトアビジン被覆ビーズ、ストレプトアビジン、またはクエンチドストレプトアビジンへの追加の捕捉部分の共役は、ヘテロ二官能性リンカーの使用を伴う。リンカーの一端の官能基は、ストレプトアビジンへの共有結合を形成し、他方の端の官能基は、追加の捕捉部分への共有結合を形成する。特定の官能基の化学的性質を、以下に記載する。一部の実施形態では、リンカーに結合された捕捉部分は、市販されているものでもよい。一部の実施形態は、特定の官能基または官能基のセットを特異的に含む。一部の実施形態は、特定の官能基または官能基のセットを特異的に含まない。一部の実施形態では、ヘテロ二官能性リンカーの中央部分は、ポリエチレングリコール(PEG)または酸化ポリエチレン(PEO)を含む。この実施形態の態様では、リンカーは、例えば、PEGnまたはPEOnなどのPEOまたはPEGの複数の単位を含んでもよく、nは1から36までの任意の整数である。さらなる態様では、PEGリンカーは、直鎖状単官能性PEGである代わりに、単分散PEG、三官能性PEG、4アームPEG、8アームPEG、ヘテロ二官能性PEG、ホモ二官能性PEGなど、分岐または樹状であってもよい。他のリンカーが、以下に開示されている。
【0016】
ビオチンをビオチン飽和ストレプトアビジンに共役する様々な方法が、本明細書で以下に開示されている。しかしながら、任意の他の捕捉試薬は、ストレプトアビジン(ビオチン飽和または非ビオチン飽和、ビーズ結合または非ビーズ結合)に類似的に共役されてもよい。
【0017】
代替的な実施形態では、追加の捕捉部分は共有結合されないが、ビオチンリンカーを使用して結合される。一部の実施形態では、追加の捕捉部分は、ビオチンであり、リンカーは、各末端にビオチン分子、例えば、ビオチン-PEGn-ビオチンを有する。こうした実施形態では、ビス-ビオチンリンカーは、ストレプトアビジン飽和手順で使用されるビオチンのうちわずかな割合として添加される(ビーズ間の架橋を避けるために)。したがって、一方の端のビオチンはストレプトアビジンに結合し、他方の端のビオチンは捕捉部分としての役割を果たすために自由である。その他の実施形態では、一方の端にビオチン、他方の端に任意の他の捕捉部分を有するリンカー、例えば、ビオチン-(PEO)n-ルテニウムが使用される。さらなる実施形態では、二つ以上の異なる捕捉部分が、例えば、ビオチン-(PEO)n-ルテニウムおよびビオチン-(PEO)n-アルカリンホスファターゼとストレプトアビジンを共コーティングするなど、このアプローチを介して導入されうる。これらの実施形態では、ビーズ間の架橋は問題とならないはずであるため、ストレプトアビジン飽和手順で使用されるビオチンの潜在的により大きな割合が、捕捉部分に連結されたビオチンでありうる。しかしながら、捕捉部分のサイズおよびリンカーの長さに基づく立体的な考慮事項は、比率を制限する因子でありうる。
【0018】
一部の実施形態は、液体生体試料における干渉を軽減する方法である。その他の実施形態は、診断アッセイにおける干渉を低減する方法である。一部の実施形態では、ビオチン飽和ストレプトアビジン(ビオチンクエンチストレプトアビジン、QSAv)は、液体生体試料と組み合わされて、干渉を遮断または低減するようにストレプトアビジンへの干渉の結合を促進するように混合された混合物を形成する。一部の実施形態は、診断アッセイを実施することをさらに含む。一部の実施形態では、組み合わせおよび混合は、アッセイの分析段階の前に行われる。本明細書で使用される場合、「アッセイの分析段階」という用語は、試料が試薬と混合されて、分析物を取得または検出し、および/または分析物の存在を表示または定量化する信号を生成するときに開始し、信号の測定全体を通して継続される。
【0019】
その他の実施形態では(干渉を軽減または低減するための)、ストレプトアビジン(ビオチンクエンチされた否かを問わない)を含む粒子は、液体生体試料と組み合わされて、ストレプトアビジンへの干渉の結合を促進するために混合された混合物を形成し、粒子は、干渉を除去または低減するために試料から分離される。一部の実施形態は、診断アッセイを実施することをさらに含む。一部の実施形態では、組み合わせ、混合および分離は、アッセイの分析段階の前に行われる。これらの方法の一つの態様では、粒子は磁性であり、粒子を試料から分離することは、混合物を磁石に曝露し、液体試料を回収することを含む。さらなる態様では、試料は希釈されず、試料の損失はほとんどないかまたは全くない。
【0020】
干渉を軽減または低減するためのこれらの方法の一部の実施形態では、試料は、サンドイッチイムノアッセイで使用される。その他の実施形態では、試料は、競合イムノアッセイで使用される。
【0021】
一部の実施形態は、クエンチされたストレプトアビジンを作製する方法である。これらの実施形態の一部は、ストレプトアビジンを最小モル過剰の遊離ビオチンに曝露することを含む。一つの態様では、これは、ビオチン溶液をストレプトアビジン溶液と組み合わせるための計量式添加を含みうる。これらの実施形態の一部は、クエンチされたストレプトアビジンをホット緩衝液で洗浄することを含む。一つの態様では、これは透析ろ過を含むことができる。実施形態の一部は、凝集体の形成を回避するためにストレプトアビジンを遮断することを含む。一部の実施形態は、追加の捕捉部分を、クエンチされたストレプトアビジンに共役することを含む。一部の実施形態は、これらの方法のいずれかによって作製されたクエンチされたストレプトアビジンを含む。
【0022】
一部の実施形態は、粒子共役ストレプトアビジンを作製する方法である。これらの実施形態の一部は、粒子共役ストレプトアビジンを最小モル過剰の遊離ビオチンに曝露することを含む。一つの態様では、これは、ビオチン溶液を粒子共役ストレプトアビジン懸濁液と組み合わせるための計量式添加を含みうる。これらの実施形態の一部は、クエンチされたストレプトアビジンを熱水で洗浄することを含む。一つの態様では、これは、粒子の磁気的な分離を含むことができる。その他の態様では、これは、濾過または沈殿による粒子の分離を含むことができる。一部の実施形態は、追加の捕捉部分を、ビオチンクエンチされたか否かによらず、粒子共役ストレプトアビジンに共役することを含む。一部の実施形態は、ビオチンクエンチされたか否かにかかわらず、これらの方法のいずれかによって作製された粒子共役ストレプトアビジンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、ビオチン化された100BSストレプトアビジンビーズのサイズ分布を示す。このデータは、多分散度指数が12.2%である、均一サイズの単一ピーク883.9nmを示す。
【0024】
【
図2A】
図2A~Bは、(2A)ストレプトアビジンと共に30分間インキュベーションした後での、ビオチン化された100BSストレプトアビジンビーズのサイズ分布を示す。ビーズ凝集は、ピークが1,441.3nmおよび6,641nmで発生し、多分散度指数は173.3%であった。また(2B)ストレプトアビジンと共に4時間インキュベーションした後での、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズのサイズ分布を示す。ビーズ凝集は、1,512.6nmおよび14,536nmのピークで発生し、多分散度指数は242.8%であった。
【
図2B】
図2A~Bは、(2A)ストレプトアビジンと共に30分間インキュベーションした後での、ビオチン化された100BSストレプトアビジンビーズのサイズ分布を示す。ビーズ凝集は、ピークが1,441.3nmおよび6,641nmで発生し、多分散度指数は173.3%であった。また(2B)ストレプトアビジンと共に4時間インキュベーションした後での、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズのサイズ分布を示す。ビーズ凝集は、1,512.6nmおよび14,536nmのピークで発生し、多分散度指数は242.8%であった。
【0025】
【
図3】
図3は、モノクローナル抗ビオチン共役抗体と共に一晩インキュベーションした後の、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズのサイズ分布を示す。ビーズ凝集は、2,148nmのピークで発生し、多分散度指数は316.2%であった。
【0026】
【
図4A】
図4A~Cは、(4A)抗ビオチン抗体のSEC-HPLC標準曲線を示す。矢印で示されるデータ点は、抗ビオチン抗体を枯渇させるために、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズで前処理した後での、試料中のピーク領域および抗ビオチン抗体残量(μg/mL)に対応する。4B-Cは、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを用いた、(4B)枯渇前、および(4C)枯渇後の抗ビオチン抗体のSEC-HPLC分析を示す。抗ビオチン抗体の枯渇後、ピーク領域は1,384から318に減少し、抗ビオチン濃度は205μg/mLから44.62μg/mLに減少した。
【
図4B】
図4A~Cは、(4A)抗ビオチン抗体のSEC-HPLC標準曲線を示す。矢印で示されるデータ点は、抗ビオチン抗体を枯渇させるために、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズで前処理した後での、試料中のピーク領域および抗ビオチン抗体残量(μg/mL)に対応する。4B-Cは、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを用いた、(4B)枯渇前、および(4C)枯渇後の抗ビオチン抗体のSEC-HPLC分析を示す。抗ビオチン抗体の枯渇後、ピーク領域は1,384から318に減少し、抗ビオチン濃度は205μg/mLから44.62μg/mLに減少した。
【
図4C】
図4A~Cは、(4A)抗ビオチン抗体のSEC-HPLC標準曲線を示す。矢印で示されるデータ点は、抗ビオチン抗体を枯渇させるために、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズで前処理した後での、試料中のピーク領域および抗ビオチン抗体残量(μg/mL)に対応する。4B-Cは、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを用いた、(4B)枯渇前、および(4C)枯渇後の抗ビオチン抗体のSEC-HPLC分析を示す。抗ビオチン抗体の枯渇後、ピーク領域は1,384から318に減少し、抗ビオチン濃度は205μg/mLから44.62μg/mLに減少した。
【0027】
【
図5-1】
図5A~Dは、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを使用したHPLC-SEC枯渇アッセイの処理前後でのクロマトグラムである。5Aは、ビーズによるアフィニティ精製ヤギIgGの枯渇の不在を示す。5Bは、ビーズによるビオチン化アフィニティ精製ヤギIgGの枯渇の不在を示す。5Cは、ビーズによるヤギ抗ビオチンAbの枯渇を示す。5Dは、ビーズによるヤギ抗ストレプトアビジンの枯渇を示す。すべての場合において、未処置および処置済についてのプロファイルは、ラベル付きの矢印によって示されている。
【
図5-2】
図5A~Dは、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを使用したHPLC-SEC枯渇アッセイの処理前後でのクロマトグラムである。5Aは、ビーズによるアフィニティ精製ヤギIgGの枯渇の不在を示す。5Bは、ビーズによるビオチン化アフィニティ精製ヤギIgGの枯渇の不在を示す。5Cは、ビーズによるヤギ抗ビオチンAbの枯渇を示す。5Dは、ビーズによるヤギ抗ストレプトアビジンの枯渇を示す。すべての場合において、未処置および処置済についてのプロファイルは、ラベル付きの矢印によって示されている。
【0028】
【
図6】
図6は、様々な干渉物質を用いたELISAにより検出され、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズで処置済および未処置の血清副甲状腺ホルモンの量を示す。なし-干渉物質なし;ビオチン->250ng/mL;抗ビオチンIgG-16.5μg/mLのAb;抗SAv IgG 16.5μg/mLのAb;抗ビオチンIgG/SAv IgG-8.25μg/mLの各Ab。
【0029】
【
図7】
図7は、飽和手順においてビオチンをストレプトアビジンに定量式添加するための装置を示す。
【0030】
【
図8】
図8は、ビオチン飽和ストレプトアビジンを透析ろ過、洗浄、および濃縮するための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
アッセイ干渉を引き起こす化合物の同定または枯渇に対する既存のアプローチにもかかわらず、患者試料中の抗ビオチンおよび抗ストレプトアビジン干渉を検出および軽減するための迅速かつ使いやすい生成物溶液に対する臨床的なニーズが依然として残されている。こうした生成物溶液はまた、有病率研究を容易にし、臨床医および検査室医学専門家が、どの患者および患者集団がこれらの干渉に対して最大のリスクに晒されているかをより良く理解することを助けることになる。
【0032】
また、アッセイ製剤中で抗ストレプトアビジン干渉に特異的な遮断試薬を使用することによって、患者試料における抗ストレプトアビジン干渉を軽減する臨床的なニーズもある。また、この生成物溶液は、診断検査設計によって抗ストレプトアビジン干渉が軽減されることになるため、研究室のワークフローへの影響も最小限となることになる。
【0033】
イムノアッセイは、アッセイされる分析物の偽の高レベルまたは低レベルの報告につながる可能性がある干渉の影響を受けやすい。干渉の一つのタイプは、信号の生成および観察に関連する。これらには、濁度、溶血、クエンチング、および信号生成酵素の阻害などの因子が含まれる。一般に、これらの干渉は直接観察可能であるか、または特殊試薬なしで試験することができる。本明細書に開示の実施形態は、こうした信号の生成/観察の干渉に対処するものではなく、本明細書の干渉に対する一般的な言及はこうした干渉を含まない。
【0034】
別のタイプのイムノアッセイ干渉は、分析物の捕捉および物理的検出に関する。これらには、分析物と捕捉または検出試薬との間の相互作用を阻害するか、または分析物の存在(または不在)に関係なく、捕捉および検出試薬の関連性をもたらす干渉が含まれる。このタイプの干渉は、ヘテロ親和性干渉と呼ばれ、本明細書で使用される「干渉」は、文脈上別のことを指示しない限り、ヘテロ親和性干渉を意味すると理解されるべきである。本明細書に開示の実施形態は、様々な特定のヘテロ親和性干渉に対処する。概して、ヘテロ親和性干渉は直接的に観察することはできず、またそれらの存在を標準アッセイ試薬で容易に実証することもできない。本明細書に開示の実施形態の一部には、特定のヘテロ親和性干渉の存在を示すか、または定量化するために使用することができるものがある。ヘテロ親和性干渉には、ビオチン、抗ビオチン、抗ストレプトアビジン、および抗異種抗体の干渉のほか、アッセイ信号生成系(酵素、蛍光体など)の構成要素に結合する干渉も含まれる。抗異種抗体の干渉には、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、および/またはヤギの免疫グロブリンを認識するヒト抗体が含まれる。
【0035】
別のタイプのイムノアッセイ干渉は、交差反応性抗体に関連する。抗原間の交差反応性は、ある特定の抗原に対して指向する抗体が、別の異なる抗原との結合に成功した時に発生する。言い換えれば、交差反応性は、抗体によるその免疫原以外の抗原への結合が関与する。これは、例えば、特定の細菌株またはウイルス株に由来する抗原を認識する抗体を検出することを目的としたイムノアッセイにおいて、特に問題となる場合がある。こうしたアッセイは、対象者が、問題となる病原体または薬剤に曝露された(感染した)かどうかを判断するために一般的に使用される。対象者が関連する株に以前に曝露されていた場合、アッセイが検出を意図されている株由来の抗原と交差反応する抗体を有する可能性があり、したがって偽陽性の結果を生成する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「イムノアッセイ」は、分析物の検出または定量化が、分析物に特異的に結合する抗体(またはその抗原結合断片もしくは誘導体)の使用を用いるアッセイを一般的に指す。しかしながら、分析物に特異的に結合することができる非抗体剤が、抗分析物抗体と類似的に使用されるアッセイを設計することも可能である。一部の実施形態では、分析物に特異的に結合することができる非抗体剤は、アプタマーまたは分子的にインプリントされたポリマーである。したがって、一部の実施形態では、「イムノアッセイ」は、非抗体剤が、抗体によって典型的には供給される分析物特異的結合活性を提供するアッセイを包含しうる。様々な実施形態は、分析物特異的結合活性として抗体または非抗体剤を特異的に含むか、または含まない。一部の実施形態は、アプタマーまたは分子的にインプリントされたポリマーを特異的に含むか、または含まない。イムノアッセイは、構成要素の技術および物理的配置、アッセイフォーマットに基づいて、クラスに分けることができる。一つのクラスでは、アッセイ反応が行われる、マイクロチューブまたはマイクロタイタープレートなどの容器内の検出および/または信号生成試薬と、試料(分析物を含有する可能性がある)を組み合わせることが関与する。試薬は、アッセイの過程で容器に添加または容器から除去することができる。(一部のバリエーションでは、アッセイ構成要素の一部が最初の容器から取り除かれ、第二の容器に追加されて、そこでアッセイが進行する。)こうしたアッセイは、本明細書では、「ポット」アッセイと呼ばれるものとする。別のクラスでは、検出および/または信号生成試薬の一部は、固体基材または基質(例えば膜)の特定の領域に固定される。試料(潜在的に分析物を含有)は、固体基材または基質を含有する装置の特定の位置に適用され、例えば、ラテラルフローによって、試薬が固定されている領域内に、多くの場合、その領域を通過して移動することによって、固定された試薬に遭遇する。追加のアッセイ試薬は、移動相と共に移動する。こうしたアッセイは、本明細書では「ゾーン」アッセイと呼ばれる。ポットアッセイのためのアッセイ反応が実施される容器に試料が加えられる時点から、または、ゾーンアッセイのための固体基質もしくは基質を含有する装置の特定の位置に試料が加えられる時点から、生成された信号の測定全体を通して、アッセイの分析段階と呼ばれる。多くの実施形態では、本明細書に開示の干渉洗浄または遮断試薬は、試料に追加され、洗浄試薬については分析段階前に試料から除去される。すなわち、これらの実施形態では、干渉低減試薬は、「前処理」として使用される。
【0037】
高用量のビオチンを健康と美容のために(一日当たり5,000~20,000mcg)または治療的に(一日当たり100,000~300,000mcg)消費する患者は、ビオチン摂取以来の経過時間、患者固有のビオチンのクリアランス時間に応じて、また患者が、ビオチンのクリアランスを損ない、かつビオチンの循環レベルを増加させる可能性のある、腎臓疾患または腎機能不良を有する患者である場合には、血液中に最大1,000ng/mLまたはそれ以上の高循環濃度のビオチンを有することがある。血液、血清、もしくは血漿の試料を採取する前に、または尿試料を収集する前に、患者の遊離ビオチンが、検査特異的ビオチン干渉閾値を下回るまでまだ除去されていない場合、試料中にある検査特異的ビオチン干渉閾値を超えるビオチンは、抗ビオチン捕捉部分(すなわち、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラアビジン、単量体アビジン、CaptAvidin、または抗体 抗体断片/Fab/F(ab)’2、アプタマー、およびビオチンに特異性を有する分子インプリントされたポリマー)を求めて競合し、そこに結合し、その後、アッセイ製剤で使用されるビオチン化された抗体、タンパク質または抗原の結合に干渉する。これにより、偽の低アッセイ信号が生じ、アッセイフォーマットに応じて、偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)が生じる。
【0038】
ストレプトアビジンは、約52,000~55,000KDaのタンパク質であり、4つの同一のポリペプチド鎖から構成される。本明細書で使用される場合、単量体ストレプトアビジンは、非凝集性ストレプトアビジンタンパク質を指し、解離性ストレプトアビジンポリペプチド鎖を指さない。ビオチンのストレプトアビジンへの結合(10-14または10-15mol/Lとして文献で様々に報告されている)は、自然界で知られている最強の非共有結合相互作用の一つである。組換えストレプトアビジンは、免疫学および分子診断におけるユニバーサル検査システムを可能にするための適切なツールであり、ビオチン化抗体、タンパク質、および抗原を捕捉するための、または様々な生体分子を互いに、またはマイクロプレート、ビーズ、およびマイクロアレイなどの固体担体上に付着させるための、イムノアッセイなどの診断検査で一般的に使用される。ストレプトアビジンの使用により、アッセイ開発者は、アッセイの動態、精度、および感度の改善のために、実証済みの抗ビオチン遅延捕捉アッセイフォーマットを利用することができ、一方でSTATアッセイのためのアッセイのインキュベーション時間の短縮および所要時間(TAT)の短縮を促進することができる。
【0039】
試料がストレプトアビジンに対する特異性との干渉を含む場合、抗ストレプトアビジン干渉は、ストレプトアビジンまたはそのポリペプチド鎖に結合することができ、共役されたビオチンがストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合することを、立体的に阻害するかまたは弱めることができる。ストレプトアビジンが、ビオチン干渉と同様に、検査設計またはアッセイフォーマットで使用されるビオチン化抗体、タンパク質、または抗原を自由に結合することができなくなれば、抗ストレプトアビジン干渉は、偽の低アッセイ信号を生じさせることになり、偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)を生じさせうる。同様に、試料がビオチンに対する特異性との干渉を含む場合、抗ビオチン干渉は、ビオチンに結合し、共役されたビオチンがストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合することを、立体的に阻害するかまたは弱めることができる。ビオチンが、検査設計またはアッセイフォーマットで使用される。ビオチン化抗体、タンパク質、または抗原などに由来する場合、抗ビオチン干渉は、偽の低アッセイ信号を生じさせることになり、偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)を生じさせうる。一部の実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉に対処する。一部の実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉および抗ビオチン干渉の両方に対処する。
【0040】
ビオチン-ストレプトアビジン相互作用は、イムノアッセイ機構の捕捉部分において一般的に使用されるのに対し、ヘテロ親和性干渉は、共通の検出構成要素との相互作用を介しても生じうる。こうした成分には、フルオレセインまたは元素ルテニウムなどの蛍光体や、ルミノール、アクリジニウムエステル、ABEI、および環状ABEIなどの化学発光体や、ルシフェリンなどの生物発光体や、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素が含まれうる。これらの信号生成分子に結合する干渉は、分析物に結合した検出抗体(または他の検出試薬)と偽の高信号をもたらさない検出抗体(または他の検出試薬)との間の交差結合を引き起こす可能性がある。一部の実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉および抗信号生成分子干渉の両方に対処する。
【0041】
イムノアッセイは、典型的には、非ヒト種由来の抗血清、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体を利用する。血清または他のアッセイ試料は、これらの異種抗体(時にはヒト抗動物抗体(HAAA)と称される)を認識する干渉を含んでもよい。特に、ヒトは、多種多様な動物種に対する抗体を産生する。一般的に、これらは、マウス、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ウサギ、およびヒツジなど、最も相互作用が起こる種である。その中でも、マウス、ヤギ、ウサギ、およびヒツジ由来の抗体、特にIgGは、臨床免疫化学アッセイシステムで非常に一般的に使用される。しかしながら、ヒト以外の対象からの試料では、類似のヘテロ親和性干渉が生じることがある。こうした抗抗体干渉は、結合した分析物の不在下での捕捉抗体と検出抗体との間の交差結合、または分析物に結合した検出抗体とそうでない検出抗体との間の交差結合を生じさせ、偽の高信号または偽の低信号を発生させることがある。一部の実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉および抗異種抗体干渉の両方に対処する。
【0042】
イムノアッセイの干渉、遮断、および洗浄に対処する二つのモードがある。本明細書で使用される場合、遮断試薬は、アッセイ反応中に存在し、干渉物質とのその相互作用によって、干渉を防止または低減する。一部の実施形態は、可溶性ビオチン飽和ストレプトアビジンを含むか、またはそれを利用し、抗ストレプトアビジン干渉の遮断に適している。一部の実施形態では、可溶性ビオチン飽和ストレプトアビジンは、例えば、ビオチン、信号生成分子、または異種抗体などの干渉物質によって結合される対象となる第二分子と共役される。第二干渉標的分子と共役された可溶性ビオチン飽和ストレプトアビジンを含むか、またはそれを利用する実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉および抗第二分子干渉の両方を遮断するのに好適である。一部の実施形態は、第二干渉標的分子の一つ以上の属または種を特異的に含む。一部の実施形態は、第二干渉標的分子の一つ以上の属または種を特異的に含まない。遮断試薬は、アッセイの分析段階中に追加されてもよく、または分析前の段階で追加されて、分析段階で残存してもよい。一部の実施形態では、遮断試薬は、ラテラルフローアッセイなどのゾーンアッセイの分析段階の間にも遭遇させてもよく、またはそのようなアッセイの特定のゾーンに保持されてもよい。本明細書で使用される場合、アッセイの分析段階は、分析物の捕捉、検出、および定量化が発生するアッセイまたはアッセイシステムの時間的および/または物理的な部分を指す。
【0043】
「ブロック」および「遮断」という用語は、本明細書では、概念的には関連するが、二つ以上の意味で使用されることに留意されたい。本明細書に開示の試薬の調製において、「遮断」などは、化学的反応部位の反応性、および特異的および/または非特異的な結合部位の有効親和性の阻害、または別の方法での減少を説明するために使用される。これは、調製用遮断と呼ばれてもよい。したがって、本明細書に開示のストレプトアビジン被覆ビーズ、またはタンパク質集合体のコアナノ粒子への反応および/または非特異的結合を防止するために使用される、本明細書で使用される界面活性剤および高分子遮断試薬が、この意味の「ブロック」および「遮断」に関連する。ビオチンによるストレプトアビジンの飽和も、調製用遮断の一形態として、ビオチンが遮断試薬であるとみなすことができる。調製用遮断は、アッセイ干渉を防止または低減する遮断と混同すべきではなく、これは別個の機能である。
【0044】
本明細書で使用される場合、洗浄試薬は、血清もしくは他の生物学的試料(またはイムノアッセイ反応混合物の他の成分)に添加され、その後、イムノアッセイ反応混合物の成分をまとめて混合する前に、試料もしくは他の成分から除去される。すなわち、洗浄試薬は、アッセイの前分析段階で使用および除去され、分析段階では存在しない。干渉物質を試料および/または他のアッセイ試薬干渉から枯渇させるか、または除去することによって、干渉は防止または低減される。一部の実施形態は、ビオチン飽和ストレプトアビジンビーズである、磁性ナノ粒子上に被覆されたビオチン飽和ストレプトアビジンを含むか、またはそれを利用する。こうしたビオチン飽和ストレプトアビジンビーズは、ストレプトアビジン干渉の洗浄に適している。一部の実施形態では、ビーズのビオチン飽和ストレプトアビジンは、例えば、ビオチン、信号生成分子、異種抗体、または抗原などの干渉物質によって結合される第二分子と共役される。ストレプトアビジンが第二干渉標的分子と共役されたビオチン飽和ストレプトアビジンビーズを含むか、またはそれを利用する実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉および抗第二分子干渉の両方を洗浄するのに好適である。一部の実施形態は、第二干渉標的分子の一つ以上の属または種を特異的に含む。一部の実施形態は、第二干渉標的分子の一つ以上の属または種を特異的に含まない。
【0045】
ビオチン飽和ストレプトアビジンビーズは、その保存緩衝液から磁気的に分離され、保存緩衝液が除去されてから、試料または試薬がビーズに洗浄・添加されて、試料または試薬が、可溶性遮断試薬の使用とは異なり、洗浄プロセスで希釈されないようにすることができる。その他の実施形態では、ビーズは、濾過または沈殿によって流体相から分離される。
【0046】
検査設計、フォーマット、または製剤でストレプトアビジンを使用する検査は、試料中の抗ストレプトアビジン干渉を軽減するために、アッセイ緩衝液中の特定の遮断薬、添加剤、または成分として、天然ストレプトアビジンを単純に使用することはできない。試験において遮断薬として使用される場合、ストレプトアビジンは、ビオチン化抗体、タンパク質、オリゴマー、または抗原とも競合し、また結合し、偽の低アッセイ信号を発生させ、偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)をもたらす場合がある。ストレプトアビジンは、ビオチンについて非常に強力な結合定数と親和性を有しているため、これは特にストレプトアビジンの懸念材料である。一部の検査は、検査で使用されるストレプトアビジンの総量または総濃度を増加させることによって、抗ストレプトアビジン干渉のより低い力価または濃度を軽減することができるが、これは、検査特異的およびアッセイ形式特異的であり、検査費用を増大させる。試料が検査特異的ストレプトアビジン干渉閾値を超える高力価または高レベルの抗ストレプトアビジン干渉を含む場合、これは機能しない場合もある。
【0047】
本明細書に開示の干渉遮断試薬は、クエンチドストレプトアビジン(QSAv)とも呼ばれるビオチン飽和ストレプトアビジンに基づく。QSAvは主に非凝集性であるべきであり、すなわち単量体ストレプトアビジンタンパク質に基づくべきである。一部の態様では、主に非凝集性QSAvは、<1%二量体または凝集体のサイズ排除クロマトグラフィーHPLCによる<5%の凝集を有し、単量体ピークの観察された平均分子量は52~55KDである。その他の態様では、QSAvは、少なくとも80、90、95、97、98、99%単量体、またはそれらの値によって囲まれた任意の範囲である。一部の実施形態では、ストレプトアビジンは、単量体的な非凝集状態に維持するために、例えば、界面活性剤または高分子遮断試薬で遮断される。QSAvを使用して、抗ストレプトアビジン干渉を遮断することができる。一部の実施形態では、ストレプトアビジンは、一つ以上の追加の捕捉部分でビオチン飽和の前、間、または後に修飾されてもよい。捕捉部分は、ビオチン飽和プロセスの前または後にストレプトアビジンに共有結合されてもよい。代替的に、捕捉部分は、ビオチン化されて、ビオチン飽和プロセスの前または間に、ビオチン-アビジン結合を介してストレプトアビジンに結合されてもよい。しかしながら、追加の捕捉部分がビオチンである場合(例えばビス-ビオチンリンカーの使用を通して達成される)、これは過剰な遊離ビオチンの存在下で、すなわち飽和中に、ストレプトアビジンに結合されなければならない。一つ以上の追加の捕捉部分で修飾されたストレプトアビジンを含む実施形態を使用して、一つ以上の捕捉部分に結合する薬剤による抗ストレプトアビジン干渉を遮断することができる。
【0048】
本明細書に開示の干渉洗浄試薬は、ストレプトアビジンが微粒子(またはナノ粒子)に共役されてストレプトアビジン化ビーズを形成することに基づく。ビーズ、特に磁気ビーズの使用により、損失または希釈なしに試料またはアッセイ試薬の洗浄が促進される。一部の実施形態では、ストレプトアビジンはビオチンで飽和され、その他の実施形態では飽和されない。ビオチンで飽和されたストレプトアビジンを含む実施形態は、抗ストレプトアビジン干渉を除去または低減するための洗浄試薬として使用することができる。ビオチンで飽和されていないストレプトアビジンを含む実施形態は、ビオチン干渉および抗ストレプトアビジン干渉の両方を除去または低減するための洗浄試薬として使用することができる。一部の実施形態では、ストレプトアビジンは、一つ以上の追加の捕捉部分でビオチン飽和の前、間、または後に修飾されてもよい。捕捉部分は、ビオチン飽和プロセスの前または後にストレプトアビジンに共有結合されてもよい。代替的に、捕捉部分は、ビオチン化されて、ビオチン飽和プロセスの前または間に、ビオチン-アビジン結合を介してストレプトアビジンに結合されてもよい。一つ以上の追加の捕捉部分で修飾されたストレプトアビジンを含む実施形態を使用して、一つ以上の捕捉部分に結合する薬剤による抗ストレプトアビジン干渉を遮断することができる。一つ以上の捕捉部分は、ビオチン飽和ストレプトアビジンを利用するそれらの実施形態で、ビオチンを含みうる。
【0049】
追加の捕捉部分は、ヘテロ親和性または交差反応性の干渉を引き起こす任意の物質であってもよいが、ストレプトアビジンがビオチンで飽和されていない場合は別で、追加の捕捉部分はビオチンではありえない。一部の実施形態では、追加の捕捉部分は、ルテニウム(元素)、ルミノール、アクリジニウムエステル、ABEIもしくは環状ABEI(ビオチンなど、有機小分子)、またはシグナル生成酵素(例えばアルカリホスファターゼもしくはホースラディッシュペルオキシダーゼ)、ストレプトアビジン、抗体(例えば非ヒト種からの抗体)、または抗原といったタンパク質である。一部の実施形態では、抗原は、イムノアッセイの捕捉部分として使用される抗原と交差反応することができる抗体によって認識されうる高原である。様々な実施形態では、洗浄または遮断試薬、またはアッセイにおける捕捉部分として使用される抗原は、アレルゲン、病原体由来の抗原、または疾患もしくは障害に関連する抗原、単純ヘルペスウイルス抗原、および既知の自己抗体干渉問題を有する心臓トロポニンIまたはTSHなどの自己免疫性物質である。一部の実施形態では、病原体由来の抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、原生動物抗原である。一部の実施形態では、捕捉部分は、MERSウイルス、SARSウイルス、またはSARS-CoV-2以外の他のコロナウイルスに対する交差反応性抗体を除去する。一部の実施形態は、これらの捕捉部分の属または種のうちの一つ以上を特異的に含む。一部の実施形態は、これらの属または捕捉部分の種のうちの一つ以上を特異的に除外する。
【0050】
ビオチンリンカー、または共役ビオチンは、異なるリンカータイプおよび長さ、ならびに抗体、抗体断片、ペプチド、オリゴマー、抗原、および小分子(共役ビオチン)へのビオチンの共有結合のための異なる官能基を用いて構築または購入することができる。ビオチンと共に使用される共通リンカーおよび官能基(例えば、NHSエステル、TFPエステル、ヒドラジド、マレイミド、チオールなど)は、NHS-ビオチン、NHS-LC-ビオチン、TFP-LC-ビオチン、NHS-クロマリンク-ビオチン、NHS-PEO4-ビオチン、NHS-(PEO)n-ビオチン、TFP-(PEO)n-ビオチン、ヒドラジド-ビオチン、ヒドラジド-LC-ビオチン、ヒドラジド-PEO4-ビオチン、マレイミド-(PEO)n-ビオチン、およびSH-(PEO)n-ビオチンである。ビオチン標識試薬は、アミン反応性、カルボキシル反応性、カルボニル反応性、水溶性、および切断可能でありうる。例としては、アミン反応性、カルボニル反応性、カルボキシル反応性、切断可能なビオチン、クリックケミストリー、デスチオビオチン、スルフヒドリル反応性、テトラジンライゲーション、ビオチンアルコール、ビス-ビオチン-PEG、およびD-ビオチン-PEG-サリドマイドが挙げられる。
【0051】
試料がビオチンに対する特異性との干渉を含む場合、抗ビオチン干渉は、検査設計またはアッセイフォーマットで使用される共役ビオチンに結合し、共役されたビオチンのアクセス可能性を立体的に阻害または障害して、ストレプトアビジン固相または他の抗ビオチン捕捉部分に結合することができる。共役されたビオチンが、ビオチン干渉および抗ストレプトアビジン干渉と同様に、抗ビオチン捕捉部分を自由に結合することができなくなると、抗ビオチン干渉は偽の低アッセイ信号を発生させ、偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)をもたらす可能性がある。
【0052】
検査設計、フォーマット、または製剤でビオチン共役体を使用する検査は、試料中の抗ビオチン干渉を軽減するために、アッセイ緩衝液中の特定の遮断薬、添加剤、または成分として、ビオチンまたは共役ビオチンを単純に使用することはできない。検査において遮断剤として使用される場合、ビオチンは、検査で使用されるストレプトアビジンとも競合し、またストレプトアビジンに結合し、偽の低アッセイ信号を発生させ、偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)をもたらす場合がある。試験特異的ビオチン干渉閾値を下回る低濃度のビオチンを使用して、抗ビオチン干渉を遮断することができるが、これは、患者試料に、試料ビオチン(内在性ビオチン)と試験ビオチン(遮断剤としてのビオチン)との組み合わせまたは総和が、試験特異的ビオチン干渉閾値を超え、偽の低アッセイ信号および偽の低用量(サンドイッチアッセイ)または偽の高用量(競合阻害アッセイ)をもたらしうる、干渉閾値に近いビオチン干渉も含まれる場合に問題となりうる。
【0053】
ストレプトアビジンは、ビオチンを非常に迅速かつ強力に結合する(結合定数は、文献では10-14または10-15mol/Lと様々に報告されている)。いくつかの研究は、4つの結合部位へのビオチンのタンパク質構造変化または協力的結合があることを示すが[28-29]、他の研究は、四量体の4つのサブユニットに結合したビオチンに対する協同的結合はないと結論付けている[30-31]。ストレプトアビジンがモル過剰の遊離ビオチンに曝露された場合、4つすべての結合部位に対するビオチンの非常に高速かつ強力な結合相互作用が生じ、すべてのビオチン結合部位での100%のビオチン飽和(100BS)が生じる。自然界で知られている最も強力な非共有結合相互作用を有すること、および正常な生理学的条件およびpHにおいてストレプトアビジンからのビオチンの非常に遅いオフレートを有することから、100BSストレプトアビジンは、診断検査において、ビオチン化抗体、タンパク質、オリゴマーおよび抗原などの追加のビオチンまたは共役ビオチンを結合する可能性は非常に低い。本明細書で使用される場合、飽和は、ビオチンによるストレプトアビジン上のビオチン結合部位の遮断を指す。これはビオチン化ではなく、ビオチンのストレプトアビジンへの共有結合である。飽和ストレプトアビジンは、抗ストレプトアビジン物質を結合することができるが、ビオチン含有物質を結合または交差結合しない。ビオチン飽和ストレプトアビジンは、クエンチドストレプトアビジン(QSAv)とも呼ばれうる。
【0054】
ストレプトアビジンは、ビオチン(すなわちD-ビオチン)で飽和させて、100BSストレプトアビジンを遮断薬として調製し、抗ストレプトアビジン干渉を軽減および管理することができる。その他の実施形態では、ストレプトアビジン活性ビオチン結合部位のクエンチングは、ストレプトアビジンを、ビオチン-PEG(n)-COOHもしくはビオチン-PEG(n)-CH3もしくはビオチン-PEG(n)-OH、またはRが炭素鎖もしくは環構造である他のビオチン-R-(非反応性末端化学反応)などの溶解ビオチン化剤に曝露することによって、代わりに達成されうる。飽和には、ストレプトアビジンのモル過剰のビオチンへの曝露が関与する。様々な実施形態では、ビオチンとストレプトアビジンとのモル比は、5:1~11:1、または7:1~11:1、または7:1~8:1の範囲内である。一部の実施形態では、モル比は、7.4:1である。一部の実施形態では、ストレプトアビジンは、記載したモル比を構成する飽和ビオチンの全てに、単一のバッチで曝露される。その他の実施形態では、飽和は、反復バッチ全体を通して進行し、各々が総ビオチンの画分を含み、バッチの総和は記載したモル比を構成する。例えば、6:1である単一バッチの代わりに、ビオチン:ストレプトアビジン比が2:1である3つの反復バッチを使用することができ、ビオチン:ストレプトアビジン比は、各反復バッチにおいて同じである必要はない。一部の実施形態では、ビオチン溶液およびストレプトアビジン溶液は、Y型コネクタを介した定量式添加によって組み合わされる。一部の実施形態では、Y型コネクタの出口に接続されたチューブ内にインラインミキサーがあり、迅速、即時、および完全な混合を保証する。ポンプ速度とチューブ長さの組み合わせを使用して、飽和プロセスにおける総相互作用時間を決定することができる。一部の実施形態では、9体積のビオチン溶液が、1体積のストレプトアビジン溶液と組み合わせられる。一部の実施形態では、ストレプトアビジンおよびビオチン溶液は、トリス緩衝生理食塩水、pH8.5中で調製される。一つの態様では、初期ストレプトアビジン濃度は、0.1~10.0mg/mLの範囲内にあり、その結果得られたQSAv溶液は、0.01~1.0mg/mLの範囲内のストレプトアビジン濃度であり、好ましくは0.02~0.05mg/mLである。こうした条件は、ビオチン結合部位の飽和を促進し、ビオチンのストレプトアビジンへの非特異的結合を軽減する。
【0055】
一部の実施形態では、QSAvは次に、例えば、中空繊維フィルターでの透析ろ過を使用して、QSAvの濃縮および再希釈を繰り返すことによって、一連のホット緩衝液による洗浄を受ける。QSAvを干渉遮断試薬として使用した場合に干渉源とならないように、洗浄は、過剰かつ非特異的に結合したビオチンを除去するために使用される。一部の実施形態では、4~6回またはそれ以上の洗浄、例えば、5回の洗浄が使用され、続いて、所望の濃度、例えば、0.1~30mg/mL、または1~10mg/mLに達するように容積を減少させるための最終濃縮ステップが使用される。一つの態様では、容積は、QSAv溶液の元の容積の5~20%、例えば、10%に減少させることができる。一部の実施形態では、高温洗浄の温度は、15°C~60°C、好ましくは40°C~55°Cであり、より好ましくは45°C~50°Cである。一部の実施形態では、高温洗浄緩衝液は、7.5~11、または8~9、例えば8.5の範囲のpHを有する。一部の実施形態では、高温洗浄緩衝液は、10~500mM、または20~150mM、または25~75mMの範囲内のNaCl濃度を有する。一部の実施形態では、緩衝液は、10mMのトリス、50~150mMのNaClである。洗浄および最終濃縮ステップの後、遊離ビオチン濃度は、<1200pg/mL、例えば、<1000、<800、<700、または<600pg/mLであるべきである。一部の実施形態では、洗浄されたQSAv溶液は、1~6pgの遊離ビオチン/μgのストレプトアビジンを含む。一部の実施形態では、最終透析ろ過からの流出は、PBSとの定量式添加によって組み合わせられ、適切に濃縮されて、PBS中でQSAvを提供する。試料を洗浄するための一部の実施形態では、容積が<480pgの遊離ビオチンを含有するように、QSAvの体積が400μlの試料に加えられる。
【0056】
一部の実施形態では、飽和プロセスからの流出物は、後の洗浄のために収集され、他の実施形態では、飽和プロセスからの流出物は、中空繊維フィルター装置に直接供給される。飽和プロセスからの流出物を分割して、複数の中空繊維フィルターに供給し、容量を増加させて、過剰な背圧を避けることができる。
【0057】
これらのストレプトアビジン溶液は比較的希釈されており、凝集がいくらか起こりやすく、これはビーズ結合ストレプトアビジンでは生じない問題である。これが、QSAvを生成するための飽和および洗浄手順でアルカリ緩衝液が使用される理由である。(対照的に、水は、ビーズ結合ストレプトアビジンの類似した洗浄に使用される。)凝集は、0.01~1%w/vのTWEEN(登録商標) 20、または別の界面活性剤を洗浄緩衝液に含めることによってさらに緩和することができる。凝集は、ビオチンで飽和させる前に、例えばストレプトアビジンのPEG化によって、調製用遮断試薬を用いた共有結合性修飾によってさらに緩和することができる。したがって、一部の実施形態では、QSAvは、遮断された単量体性のビオチン飽和ストレプトアビジンである。一部の実施形態では、単量体QSAvは、サイズ排除クロマトグラフィーHPLCによって<5%の凝集体であり、その他の実施形態では、単量体QSAvは<1%の凝集体である。
【0058】
一つの実施形態では、100BSストレプトアビジン(QSAv)は、試料中の抗ストレプトアビジン干渉を標的化および枯渇させるための遮断試薬またはタンパク質遮断薬として使用することができる。100BSストレプトアビジンは、アッセイ緩衝液、遮断緩衝液、または検出抗体などの検査製剤で使用される検査成分、またはそれらの任意の組み合わせに添加されて、抗ストレプトアビジン干渉に対する検査の感受性を軽減することができる。別の実施形態では、ストレプトアビジンは、微粒子結合表面に共有結合され、その後、モル過剰のビオチンと共にインキュベートされて、100BSストレプトアビジンビーズを調製する。100BSストレプトアビジンビーズは、診断検査の前に抗ビオチン干渉を標的化・枯渇させるために、試料を前処理するために使用することができる。
【0059】
本明細書に開示の干渉洗浄試薬は、ストレプトアビジン共役ビーズに基づく。一部の実施形態では、ストレプトアビジンは、コア粒子に結合された後、ビオチンでクエンチされる(飽和)。一部の実施形態では、ストレプトアビジンは、例えば、本明細書に記載されるQSAvを使用して、コア粒子に付着する前にビオチンでクエンチされる。一部の実施形態では、コア粒子は磁性である。一部の実施形態では、コア粒子は、直径≧500nm、または約0.5マイクロメートルであり、したがって、ナノ粒子または微粒子のどちらで呼ばれてもよい。一部の実施形態では、コア粒子は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド化学反応を使用してストレプトアビジンに共有結合される。受動的に吸着されたストレプトアビジンを除去し、さらなる調製ステップでビーズへの非特異的結合を防止するために、および干渉洗浄試薬として使用する場合に、ビーズ表面は、ストリッピング試薬(塩、界面活性剤、低pHおよび高pH)および界面活性剤および高分子遮断試薬を使用して遮断されたビーズで調整される。これはまた、ナノ粒子の単分散およびコロイド安定性を促進する。100BSストレプトアビジンビーズを生成するために、ストレプトアビジンのビオチンクエンチングを、上記の10BSストレプトアビジン(QSAv)の産生と類似して実施することができる。飽和には、ビーズ結合ストレプトアビジンのモル過剰のビオチンへの曝露が関与する。上述のように、ストレプトアビジン活性ビオチン結合部位の飽和は、ストレプトアビジンを、ビオチン-Peg(n)-COOHもしくはビオチン-Peg(n)-CH3もしくはビオチン-Peg(n)-OH、またはRが炭素鎖または環構造である他のビオチン-R-(非反応性末端化学)などの溶解ビオチン化剤に曝露することによって、代わりに達成されうる。様々な実施形態では、1のビオチンとストレプトアビジンとのモル比は、4:1~6:1の範囲であり、例えば、5:1である。ビオチン結合部位の一部は、コア粒子による立体障害のためにアクセスできなくなるため、有効なビオチンのモル過剰は、この正式な比率よりもいくらか高い。一部の実施形態では、ストレプトアビジン化ビーズは懸濁され、ビオチン溶液はPBS、pH6.8で構成された。一部の実施形態では、ビオチン溶液およびビーズ懸濁液は、容器中で組み合わせられ、例えば、室温で1時間混合される。一部の実施形態では、ストレプトアビジン化ビーズ懸濁液とビオチン溶液とを、定量式添加により組み合わせ、基本的にQSAvの産生において上述したとおりに行う。
【0060】
一部の実施形態では、ビオチン飽和ストレプトアビジン化ビーズは、使用中に浸出して干渉源とならないように、受動的に吸着されたビオチンを除去するために高温での洗浄がなされる。上記の100BSストレプトアビジンとは異なり、100BSストレプトアビジンビーズの洗浄は、透析ろ過の代替として、濾過、沈殿、または磁気分離を利用することができる。洗浄はまた、緩衝液の代わりに高温のアルカリ(pH≧7.5)水を使用して洗浄する100BSストレプトアビジンとは異なってもよい。洗浄懸濁液は、超音波処理もなされる。一部の実施形態では、洗浄された100BSストレプトアビジンビーズの懸濁液の遊離ビオチン濃度は<1200pg/mLであり、例えば、<1000、<800、<600、<400、または<200pg/mLである。一部の実施形態では、洗浄された100BSストレプトアビジンビーズの懸濁液は、5~30pgの遊離ビオチン/μgのストレプトアビジンを含む。試料を洗浄するための一部の実施形態では、容積が<480pgの遊離ビオチンを含有するように、ある体積の100BSストレプトアビジンビーズが400μlの試料に加えられる。
【0061】
遊離ビオチン(すなわち、D-ビオチン)を100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズ保存溶液、アッセイ緩衝液、または試験成分に添加して、100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズの安定性を改善し、経時的にストレプトアビジンがビオチンで100%飽和されたままであることを保証することもできる。一つの実施形態では、過剰なビオチンを含有する保存溶液、アッセイ緩衝液、または試験成分中の100BSストレプトアビジンは、単一の遮断試薬を用いて、抗ストレプトアビジンおよび抗ビオチン干渉メカニズムの両方を標的とする遮断試薬として使用することができる。一つの実施形態では、遮断試薬は、試験の前に、試料を前処理して、それによって抗ストレプトアビジンおよび/または抗ビオチン干渉メカニズムを遮断するために使用することができる。一つの実施形態では、遮断試薬は、アッセイ緩衝液または試薬緩衝液などの診断検査またはアッセイ設計において、検査中の干渉メカニズムを遮断および軽減するために使用することができる。一つの実施形態では、遊離ビオチンは、100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズに、最大1,100pg/mLの生理的範囲内の濃度で添加することができる。別の実施形態では、遊離ビオチンは、100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズに、100,000pg/mL(100ng/mL)または1,000,000pg/mL(1,000ng/mL)などの高濃度で添加することができる。100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズが遊離ビオチンを含有する溶液中に貯蔵される場合、ストレプトアビジンから解離するビオチンがあると、ビオチンに対する非常に強力な結合定数および高速オンレートのため、保存溶液に加えられたビオチンから別のビオチンで直ちに置換されるため、100BSストレプトアビジンは残存する。したがって、100BSストレプトアビジン、またはビオチンクエンチドストレプトアビジンは、ストレプトアビジンベースの検査またはイムノアッセイのための遮断試薬として使用することができ、ここで100BSストレプトアビジンは、安定性のために生理学的ビオチン濃度以下を含有するアッセイ緩衝液に加えられる。いずれかのビオチンがストレプトアビジン遮断薬から解離する場合、そのビオチンは、アッセイ緩衝液に添加されたビオチンと置き換えられ、その後にこのアッセイ緩衝液から試料または試験反応に添加されたビオチンの量は最小限であり、生理学的ビオチン濃度範囲内である。
【0062】
IVD会社は、ビオチン干渉の影響を受けやすい各アッセイについて、その添付文書(PI)または取扱説明書(IFU)で、検査固有のビオチン干渉閾値を試験し、提供している[9、14-15]。ビオチン干渉閾値が<51ng/mLである検査は、2.4ng/mLの閾値を有するOrtho Clinical Diagnostics製Vitros心臓TnI検査など、高リスク検査、または脆弱な免疫測定法および競合的な方法とみなされている[9]。安定性を改善し、時間経過に伴い100%の飽和を保証するために、ビオチンを100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズ保存溶液に加えることができる一方で、保存溶液に加えたビオチンからの検査干渉を軽減するために、最終的な遊離ビオチン濃度は、検査特異的ビオチン干渉閾値未満でなければならない。一つの実施形態では、100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズは、検査に干渉しないように、生理学的範囲内のビオチン濃度(すなわち、<1,100pg/mL)のビオチン溶液中に保存される。別の実施形態では、100BSストレプトアビジンビーズは、>1,100pg/mLのビオチン、例えば2、5、10、20、30、50、100、250、または500ng/mLのビオチンを含有するビオチン溶液中に保存される。100BSストレプトアビジンビーズは、その後、濾過、遠心分離、または磁気的に試料から分離され、またはそれらの組み合わせにより、100BSストレプトアビジンビーズに試料を追加する前に、ビオチン保存溶液が100BSストレプトアビジンビーズから除去される。100BSストレプトアビジンビーズ使用の直前にビオチン保存溶液を除去することにより、遊離ビオチン濃度が1,100pg/mL未満、500pg/mL未満、または好ましくは100pg/mL未満に減少し、遊離ビオチン濃度が検査のビオチン干渉閾値未満であることを保証する。
【0063】
100BSストレプトアビジンおよび100BSストレプトアビジンビーズの第一級アミン(R-NH2)は、NHS-ビオチン、NHS-LC-ビオチン、NHS-LC-LC-ビオチン、NHS-クロマリンク-ビオチン、NHS-PEO4-ビオチン、およびNHS-(PEO)n-ビオチン、TFP-(PEO)n-ビオチン(アミン反応性手段)などのアミン反応性ビオチン標識試薬を使用して、また、モル過剰の遊離ビオチン中でビオチン共役することによって、ストレプトアビジンビオチン結合部位によるビオチン標識試薬の結合および捕捉を軽減することで、ビオチンに共有結合することができる。一つの実施形態では、ストレプトアビジンは、微粒子結合表面に共有結合され、微粒子結合表面は、共有結合したストレプトアビジンのみが残るように調整(遮断および除去)され、ストレプトアビジン共役微粒子結合表面が、モル過剰の遊離ビオチン(D-ビオチン)に曝露され、100BSストレプトアビジンビーズが調製され、モル過剰の遊離ビオチンが、100BSストレプトアビジンビーズ保存溶液(PBS pH7.4など)に加えられ、および100BSストレプトアビジンの第一級アミンをNHS-PEO4-ビオチンに共役して、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズが調製される。ストレプトアビジン結合ビーズのビオチン化は、ビオチンの磁性粒子(またはその上にあるストレプトアビジン)への共有結合を指し、ストレプトアビジンのビオチン結合部位の飽和と混同または同一視されるべきではない。ビオチン化ストレプトアビジンビーズは、(抗ストレプトアビジン物質に加えて)抗ビオチン物質を結合することができる。ストレプトアビジンを飽和させるために使用されるビオチンは一般的に、ビオチン分子の必要な部分がストレプトアビジンと係合するため、最も問題のある抗ビオチン物質に結合しない。別の実施形態では、100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズは、ストレプトアビジン第一級アミン(R-NH2)のチオール化を介して、スクシンイミジルトランス-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、SPDP-PEG(4、6、8、12、24、または36)-NHSエステル、SPDP NHSエステル、SPDP-C6-NHSエステル、SPDP-C6-Sulfo-NHSエステル、PC SPDP-NHS炭酸エステル、およびSPDP-C6-Gly-Leu-NHSエステル(チオール化の手段)などの当該技術分野で公知の標準的なチオール化化学反応を使用して、ストレプトアビジン上に導入された、チオール基(スルフヒドリル基、またはR-SH)を有する。SPDPを使用する場合、ストレプトアビジンに共役されたSPDPは、TCEPおよびEDTAを使用して切断され、SPDP脱離基は洗浄、脱塩、または透析されて、SH-R共役された100BSストレプトアビジンのみが残される。モル過剰のビオチンを用いて100BSチオレートストレプトアビジンを調製した後、100BSストレプトアビジンおよび100BSストレプトアビジンビーズのチオール(R-SH)は、マレイミド-PEO(2、3、6、または11)-ビオチンおよびビオチン-SPDP(チオールまたはスルフヒドリル反応性手段)などの、チオール反応性またはスルフヒドリル反応性のビオチン標識試薬を使用して、ビオチンに共有結合することができる。スルフヒドリル反応性ビオチン標識は、EDTA(最大2mM)、TCEP(<1mM)、およびモル過剰の遊離ビオチンを含むPBS pH6.8緩衝液中で、1)チオールを減少させ、ジスルフィド結合または架橋を軽減するため、および2)ストレプトアビジンビオチン結合部位によるビオチン標識試薬の結合および捕捉を軽減するために実施される。マレイミド基は、pH6.5~7.5でアミンよりも遊離スルフヒドリルに対して1000倍高い反応性を有し、pH>8.5ではマレイミド基は第一級アミンに優先して反応するため、第一級アミンに対する反応を最小化するために、マレイミドの共役はpH6.8で実施される。SPDPの代替として、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)に基づく類似試薬を使用できる。
【0064】
別の実施形態では、100BSストレプトアビジンまたは100BSストレプトアビジンビーズは、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、マレイミド-PEG-NHSエステル、マレイミド-PEO(1,2,3,4,5,6,8または12)-NHSエステル、またはマレイミド-PEG(1,2,3,4,5または6)-PFP(マレイミド化の手段)など、当該分野で既知の標準的なエステル‐マレイミドヘテロ二官能性架橋ケミストリーを使用してストレプトアビジン第一級アミン(R-NH2)上に導入されたマレイミド基を有する。100BSのマレイミドストレプトアビジンを、モル過剰のD-ビオチンを用いて調製した後、100BSストレプトアビジンおよび100BSストレプトアビジンビーズのマレイミドは、ビオチン-PEG-SHまたはビオチン-PEG-チオールなどのマレイミド反応性ビオチン標識試薬を使用して、ビオチンに共有結合することができ、ここでPEGnまたはPEOnは、n=1、2、3、4、5、6、8または12など、異なる長さであってもよい。マレイミド反応性ビオチン標識は、EDTA(最大2mM)、TCEP(<1mM)、およびモル過剰の遊離ビオチンを含むPBS pH6.8緩衝液中で、1)チオールを減少させ、ジスルフィド結合またはビオチン標識試薬の架橋を軽減するため、および2)ストレプトアビジンビオチン結合部位によるビオチン標識試薬の結合および捕捉を軽減するために実施される。マレイミド基は、pH6.5~7.5でアミンよりも遊離スルフヒドリルに対して1000倍高い反応性を有し、pH>8.5ではマレイミド基は第一級アミンに優先して反応するため、マレイミドビオチン共役はpH6.8で実施される。
【0065】
類似のエステル、チオール、またはマレイミドの化学反応も、ストレプトアビジンがビオチン飽和ではない実施形態で適用される。例えば、ルテニウムエステルを、ストレプトアビジンの第一級アミンと反応させることができる。
【0066】
特定の実施形態では、1)ストレプトアビジンは、微粒子結合表面に共有結合され、2)微粒子結合表面は、微粒子結合表面上に共有結合で付着したストレプトアビジンのみを残し、表面が極めて低い非特異的結合を有するように調整され、3)ストレプトアビジン共役微粒子結合表面が、モル過剰の遊離ビオチン(D-ビオチン)に曝露されて、100BSストレプトアビジンビーズを調製し、4)100BSストレプトアビジンビーズは、ビオチン標識試薬を使用して、モル過剰の遊離ビオチンの存在下にある間に、ビオチンに共有結合され、5)ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズは、濾過、遠心分離または磁気分離されて、緩衝液および過剰なビオチンが除去され、6)ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズは、50℃の水で複数回洗浄され、保存溶液中に再懸濁されて、最終試薬が得られる。
【0067】
特定の実施形態では、1)ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズは、濾過、遠心分離、または磁気的に分離されて、保存溶液が除去され、2)抗ストレプトアビジン干渉、抗ビオチン干渉、または両方の干渉を含有する試料を、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズに添加して、試料を前処理し、7)試料干渉が、アッセイ遮断閾値(ABT)または検査干渉閾値より低く枯渇または減少させ、8)ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを濾過、遠心分離、または磁気的に試料から分離し、および9)本質的にビーズを含まない試料上清が吸引され、診断検査によって検査されて、正確な検査結果が報告される。
【0068】
特定の実施形態では、100BSストレプトアビジンビーズは、診断検査の前に、アッセイ遮断閾値(ABT)を下回るか、または検査干渉閾値を下回るまで、抗ストレプトアビジン干渉を結合し、抗ストレプトアビジン干渉を枯渇させるために、試料を前処理するために使用される。別の実施形態では、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズは、診断検査の前に、抗ビオチン干渉に結合し、アッセイ遮断閾値(ABT)を下回るか、または検査干渉閾値を下回るまで抗ビオチン干渉を枯渇させるために、試料を前処理するために使用される。別の実施形態では、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズは、診断検査の前に、同一の試料からの抗ストレプトアビジン干渉および抗ビオチン干渉の両方に同時に結合し、アッセイ遮断閾値(ABT)を下回るか、または検査干渉閾値を下回るまで抗ビオチン干渉を枯渇させるために、試料を前処理するために使用される。
【0069】
現時点では、患者試料におけるビオチン、抗ビオチン、および抗ストレプトアビジン干渉を検出、特徴付け、および軽減するための、迅速かつ使いやすい生成物溶液は存在しない。特定の実施形態では、ストレプトアビジンビーズ(ビーズ1)、100BSストレプトアビジンビーズ(ビーズ2)、およびビオチン化100BSストレプトアビジンビーズ(ビーズ3)を、体系的または連続的に使用して、どの干渉メカニズムまたはメカニズムが試料中に存在するかを検出および決定することができる。疑わしい干渉を有する試料は、ニート(ビーズは添加されない)で検査され、対照結果である。試料の三つの異なるアリコートを、それぞれビーズ1(アリコート1)、ビーズ2(アリコート2)、およびビーズ3(アリコート3)で処理する。三つの前処理されたアリコートを再試験し、各ビーズタイプの検査結果を対照検査結果と比較する(表1)。対照の検査結果が、ビーズ1、2および3の前処置からの試験結果と類似している場合、試料干渉の可能性は低く、ないものと判断されうる。しかしながら、ビーズ1の前処理結果が対照結果と有意に異なる場合、ビオチン干渉および/または抗ストレプトアビジン干渉の可能性が高く、試料干渉があるものと判断されうる。ビーズ2の前処理結果が対照結果と有意に異なる場合、抗ストレプトアビジン干渉の可能性が高く、試料干渉があるものと判断されうる。ビーズ3の前処理結果が対照結果と有意に異なる場合、抗ストレプトアビジン干渉および/または抗ビオチン干渉の可能性が高く、試料干渉があるものと判断されうる。ビーズ1の前処理結果が対照結果と有意に異なるが、ビーズ2およびビーズ3の前処理結果が対照と類似している場合、ビオチン干渉があるものと判断されうる。ビーズ1およびビーズ2の前処理結果が対照結果と類似しているが、ビーズ3の結果が対照結果と有意に異なる場合、抗ビオチン干渉があるものと判断されうる。ビーズ1、ビーズ2、およびビーズ3の前処理結果がすべて対照結果と有意に異なる場合、抗ストレプトアビジン干渉があるものと判断されうる。
【表1】
3つの異なるサンプル前処理試薬のビーズ1、ビーズ2、およびビーズ3を使用し、対照と結果を比較することによる可能な結果。類似(-)および異なる(+)。抗ビオチン干渉は、抱合されたビオチンのみを認識するのでない限り、遊離ビオチンを結合するので、ビーズ1+、ビーズ2-、およびビーズ3+は、おそらくない。抗ストレプトアビジン干渉は、ビーズ1およびビーズ2の両方によって枯渇するので、ビーズ1-、ビーズ2+、およびビーズ3-は不可能である。結果4に示されるように、抱合されたビオチンが抗ストレプトアビジン抗体またはタンパク質結合を立体的にブロックまたは干渉する場合、ビーズ3は抗ストレプトアビジン干渉(-)を枯渇させない場合がある。
【0070】
遊離(または可溶性)ビオチン飽和ストレプトアビジン(クエンチしたストレプトアビジン、QSAv)の生産は、ビオチン飽和ストレプトアビジン抱合ビーズの生産とおおむね類似している。さらに、ストレプトアビジンは、捕捉部分として機能するため、またはストレプトアビジンの凝集を促進し得る部位をブロックするため、追加の部分に抱合され得る。こうした抱合は、クエンチの前または後に実行することができる(追加の捕捉部分がビオチンである場合を除く、その場合、クエンチ後にのみ実行することができる)。ビーズの最小飽和手順で使用される5:1の比率よりもやや高い、約7~8のビオチンとストレプトアビジンのモル比が使用される。これは、ビーズ抱合ストレプトアビジン上のビオチン結合部位の一部が立体的に妨げられ、その結果、有効比が正式な比よりもいくらか高いためである。
【0071】
QSAvは、主に単量体であることが好ましい。様々な実施形態において、QSAvは、少なくとも80、90、95、97、98、99%単量体、またはそれらの値によって囲まれた任意の範囲である。試薬が単量体であり、かつ単量体で存続し、凝集体を形成しないことを確実にするために、ストレプトアビジンは、洗剤または高分子ブロッキング試薬でブロックすることができる。ブロッキングには、PEG化が含まれ得る。ThermoFisher Scientific、Broadpharm、Quanta Biodesign、およびCreative Pegworksなど、様々なサイズおよび化学修飾の多種多様な市販のPEG化試薬が存在する。一例は、NHS-エステル-PEG(4)-OHである。他の例には、TFP-(PEO)n-OHまたはTFP-(PEG)n-OH(Quanta Biodesign)が含まれる。これらは、NHS-エステルの化学作用を介してストレプトアビジン上の任意の露出リジン残基に共有結合することができる。あるいは、TFP-(PEG)n-COOHまたはNHS-(PEG)n-COOHは、EDCの化学作用を通してリジン残基に結合し得る。他の多くの代替案は、当業者にはよく知られているであろう。単量体QSAvの調製はまた、尿素、イミダゾール、トレハロース、またはその他などのコスモトロピック試薬を含有する緩衝液内のビオチンクエンチによって達成することができる。
【実施例】
【0072】
以下の非限定的実施例は、現在企図されている代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするために、例示目的のみのために提供されている。これらの実施例は、本明細書に記載される実施形態のいずれかを制限するものと解釈されるべきではない。
【0073】
実施例1
ビオチン化ストレプトアビジン被覆磁性ナノ粒子またはビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを調製する方法。
550~600nmの磁性カルボン酸ナノ粒子を、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の化学作用を使用してストレプトアビジンに共有結合で抱合し、ビーズ表面を、ストリッピング試薬(塩、洗剤、低pHおよび高pH)で調整して、受動的に吸収されたストレプトアビジンを除去し、洗剤および高分子ブロッキング試薬を使用してビーズをブロックして、非特異的結合を低減し、ナノ粒子の単分散およびコロイド安定性を促進した。ビーズに共有結合で抱合したストレプトアビジンの総濃度は、改変マイクロBCA総タンパク質アッセイを使用して、17.69マイクログラム/ミリグラム(μg/mg)であると決定された。最終ビーズ濃度を重量測定により決定し、2mM EDTA、pH6.8のPBS中、ビーズ10.0ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)に調整した。
【0074】
pH 7.4のPBS中のD-ビオチンの10.0mg/mL原液(Sigma、製品番号B4601-100MG、ロットSLBS8478、分子量244.31)を、DMSO(Baker、製品番号9224-01、ロット0000217025)中、D-ビオチンの100mg/mL濃縮原液を作ることによって、または100μLのDMSOに10mgのD-ビオチンを加えて混合することによって調製した。D-ビオチンがDMSOに完全かつ均質に溶解したら、900μLのPBS、pH7.4を添加し、混合して、10.0mg/mLのD-ビオチン原液1.0mL 90:10(PBS:DMSO)を調製した。
【0075】
合計2.5mLのストレプトアビジン磁性ナノ粒子を一定分量にし、反応バイアルに分注した。このバイアルは、合計442.25μgのストレプトアビジンに相当した:〔(ビーズ25mg)×(ストレプトアビジン17.69μg/ビーズ1mg)〕。合計442.25μgのストレプトアビジンは、0.00804μMのストレプトアビジンに相当する:〔(ストレプトアビジン442.25μg)/(ストレプトアビジン55,000μg/ストレプトアビジン1μM)。
【0076】
ストレプトアビジン17.69μg/ビーズ1mgのストレプトアビジン抱合磁性粒子25mgに、または442.25μgのストレプトアビジンに、1,964.475μgのD-ビオチンを添加することによって、ストレプトアビジンの総モルに対して1000倍モル過剰量のD-ビオチンを調製した:〔(0.00804μM×1000)×(ビオチン244.31μg/μM)〕。1000倍モル過剰量のD-ビオチンを0.00804μmolのストレプトアビジンに添加するために、10.0mg/mLのD-ビオチン原液200μL、または2,000μgのD-ビオチンを、ストレプトアビジン17.69μg/ビーズ1mgのストレプトアビジン磁性ナノ粒子25mgに、2mM EDTA、pH6.8のPBS中で添加した。ストレプトアビジン磁性ナノ粒子を、室温で1時間混合しながらD-ビオチンとインキュベートし、ストレプトアビジンビオチン結合部位をビオチンで100%飽和させ、100BSストレプトアビジンビーズを調製した。
【0077】
100BSストレプトアビジン-ビーズを、モル過剰量のD-ビオチンのビオチンに共有結合で抱合するために、100倍モル過剰量のNHS-PEG4-ビオチン(Broadpharm社、製品番号20566、ロットB93-039、分子量588.7)、または500μgのNHS-PEG4-ビオチンを、ストレプトアビジン17.69μg/ビーズ1mgのストレプトアビジン抱合磁性粒子25mg、または442.25μgのストレプトアビジン、または0.00804μMのストレプトアビジンに添加した。5mgのNHS-PEG4-ビオチンを100μLのDMSOに添加して混合し、DMSO中50.0mg/mLのNHS-PEG4-ビオチン原液を調製した。DMSO中50.0mg/mLのNHS-PEG4-ビオチン原液10.0μLを、飽和工程からの1000倍モル過剰量のD-ビオチンとともに、2mM EDTA、pH6.8のPBS中、ストレプトアビジン17.69μg/ビーズ1mgの100BSストレプトアビジン-ビーズ25mgに添加し、室温で1時間混合することによって、100倍モル過剰量のNHS-PEG4-ビオチン、または473.315μgのNHS-PEG4-ビオチン〔(0.804μMのNHS-PEG4-ビオチン)×100〕×(588.7μgのビオチン/μM]を、100BSのストレプトアビジンビーズに添加した。ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズをpH7.4のPBSで4回洗浄し、過剰なNHS-PEG4-ビオチンを洗浄した。
【0078】
異なるビーズ上の抱合ビオチンのストレプトアビジン介在結合(すなわち、ビーズの架橋)からのいかなるビーズ凝集も伴わずに、100BSストレプトアビジン-ビーズがビオチンにうまく抱合されたことを確認するために、ビオチン化100BSストレプトアビジンビーズを、Anton Paar Litesizer 500アナライザーを使用した粒子径測定で分析した。平均サイズ分布は883.9nmであった(
図1)。
【0079】
ビオチンが100BSストレプトアビジンビーズ上のストレプトアビジンにうまく抱合されたことを実証するために、制限量の未変性ストレプトアビジンをビオチン化100BSストレプトアビジンビーズに添加し、ビーズのストレプトアビジン介在性架橋からのビーズ凝集を促進した。合計50μgのストレプトアビジンを、25mgのビオチン化100BSストレプトアビジンビーズに添加し、室温で4時間インキュベートした。ビーズは、1,441.3nmおよび6,641nmのピーク、173.3%の多分散指数(
図2A)、ならびに1,512.6nmおよび14,536nmのピーク、242.8%の多分散指数(
図2B)により、ストレプトアビジン添加の30分後に凝集を示した。
【0080】
ストレプトアビジンと類似の親和性を有する抱合ビオチンを認識するが、ストレプトアビジンよりも100万倍低い親和性で遊離ビオチンを認識する抗ビオチン抱合モノクローナル抗体、またはビオチン抱合体のビオチンに特異的に結合し、遊離ビオチンよりもビオチン抱合体のビオチンに対する親和性が高い抗体を使用して、類似のビーズ凝集を実施した(WO2020/028776;VeraBind Biotin(商標)、Veravas)。抗体を、ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズに添加し、室温で一晩インキュベートした。ビーズは、2,148nmのピークおよび316.2%の多分散指数で凝集を示した(
図3)。
【0081】
実施例2
ビオチン化ストレプトアビジン被覆磁性ナノ粒子、またはビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズを使用して、試料から抗ビオチン抗体を枯渇させる方法。
100%ビオチン飽和ストレプトアビジン抱合磁性ナノ粒子、または100BSストレプトアビジン-ビーズのビオチン化に成功したことを実証するために、抱合ビオチンに対する特異性を有するモノクローナル抗ビオチン抗体を含有する凍結乾燥マウス腹水を、Melon Gel精製キット(ThermoFisher社、製品番号45214)、および腹水調整緩衝液(ThermoFisher社、製品番号45219、ロットTB263120)を使用して精製し、Zeba Spin Desalting Columns、40K MWCO(ThermoFisher、製品番号87770)を使用して、pH7.2のPBS中、脱塩した。抗ビオチン抗体の最終濃度は0.205mg/mLであり、50μLの抗ビオチン抗体、または10.25μgの抗ビオチン抗体を、ガラスHPLVバイアル中、pH7.4のPBS950μLに添加して、10.25μg/mLの抗ビオチン原液を作製した。100μL、50μL、25μLおよび10μLの抗ビオチン原液を、流量1.0mL/分、移動相PBS pH7.4のPhenomenex s4000 SEC HPLCカラムに順次注入し、注入した抗体の各濃度についてピーク面積を決定して、ピーク面積(Y軸)対抗体濃度(X軸)の検量線を生成した:y=6.6466x+21.4286,R
2=1.0000(
図4A)。
【0082】
次に、0.205mg/mLの抗ビオチン抗体750μLを、ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズで次のように前処理した。
1.ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズ試薬バイアルを保管庫から取り出し、最低10秒間、中速度でボルテックスする。
2.空の2mL Sarstedt Microチューブを、チューブのつばが磁石フレームに接触するまで、VeraMag 400(商標)磁気分離器に入れる。
3.よく混合した試薬の750μLまたは10.0mg/mLで7.5mgのビーズを、2mLのSarstedt Microチューブに分注する。
4.少なくとも30秒間待ち、磁性ナノ粒子のペレットを妨害することなく、慎重に上清をすべて吸引し、廃棄する。
5.0.205mg/mLの十分に混合された抗ビオチン抗体750μLを分注する。
6.チューブにキャップをして、試料を中速度で最低10秒間ボルテックスする。
7.チューブを中速度の回転混合器上に置き、室温で30分間インキュベートする。
8.スクリューキャップを緩め、チューブのつばが磁石フレームに接触するまでチューブをVeraMag 400に入れる。
9.5分間、ナノ粒子を試料から磁気的に分離させる。
10.磁性ナノ粒子のペレットを妨害することなく、慎重に試料を吸引し、清潔なチューブに分注する。このステップを慎重に行うと、すべての試料を吸引することができる。注:磁性ナノ粒子を誤って吸引した場合、単に混合物をチューブに戻し、チューブにキャップをして、ステップ9に戻る。
11.これで、調整済み試料は分析の準備ができたことになる。
12.0.2ミクロンの酢酸セルロースシリンジフィルターを使用して試料を濾過する。このフィルターを使用した平均タンパク質損失は16.5μgであった)。
13.Phenomenex s4000 SEC HPLCカラムに100μLの試料を注入し、流量1.0mL/分、および移動相(50mMのリン酸カリウム、250mMの塩化カリウム、pH6.8)で、保持時間約9.6~9.9分のピーク面積を求める。
14.検量線方程式に基づき、抗体ピーク(y)のピーク面積を使用して、x(抗体μg/mL)を求める。
【0083】
抗ビオチンAb試料100μLのピーク面積は1,384(
図4B)であり、このピーク面積が検量線上で対応する濃度は205μg/mLである(
図4A)。前処理および枯渇された抗ビオチン試料100μLのピーク面積は318であり(
図4C)、このピーク面積が検量線上で対応する濃度は44.62μg/mLであった(
図4A)。枯渇試薬で前処理した抗体の開始容量は750μLであったため、これは抗体33.465μgに相当する〔44.62μg/mL×0.750mL〕。0.2ミクロンの酢酸セルロースシリンジフィルターに16.5μgの抗体が失われたため、試料前処理後の残りの抗体の合計は、抗体49.965μg〔33.465μg+16.5μg〕であった。前処理された抗ビオチン抗体の開始量は、抗体153.75μg:〔205μg/mLx0.750mL〕であった。ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズによって捕捉および枯渇された抗ビオチン抗体%は、67.5%であった:〔((153.75μg~49.965μg)/153.75μg)×100%〕。
【0084】
この研究は、ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズが103.785μgの抗体(153.75μg~49.965μg)を枯渇させることができることを実証した。これは、ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズ1mg当たり13.838μgの抗ビオチン抗体の結合能力に相当する:〔(抗体103.785μg)/(ビーズ7.5mg)〕。
【0085】
実施例3
低いモル過剰量のビオチンを使用したビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズの調製。
ストレプトアビジン被覆ビーズのビオチン飽和のための1000倍モル過剰量の遊離ビオチンの使用は、ビオチンとストレプトアビジンまたはビーズとの非特異的な会合をもたらす可能性がある。使用時、抗ビオチンおよび抗ストレプトアビジンを枯渇させることに成功したとしても、非特異的に会合したビオチンは、100BSストレプトアビジン-ビーズから浸出または解離し、アッセイにおいてビオチン干渉を引き起こす可能性がある。この非特異的ビオチン結合を除去または緩和するためのいくつかのアプローチを調査した。これには、磁性ナノ粒子への抱合前にストレプトアビジンを飽和させること、飽和後の様々な洗浄手順、より低いモル過剰量のビオチンの使用、および様々なビオチンリンカーモル過剰量の使用が含まれる。最終的に、低モル過剰量のビオチンと特定の洗浄条件との組み合わせにより、遊離ビオチン浸出の問題なしに生成物が産生された。
【0086】
ストレプトアビジンを磁性ナノ粒子に抱合した後、ビオチン化の前に、ストレプトアビジンビーズを5倍モル過剰量の遊離ビオチン(すなわち、ビオチン:ストレプトアビジンの5:1モル比またはビオチン:ビオチン結合部位の5:4比)に曝露した。次いで、飽和ビーズを、超音波処理を用いて50℃で水洗浄した。(ストレプトアビジンのビーズへの抱合が、一部のビオチン結合部位の立体障害につながるため、ビオチンとビオチン結合部位の有効比はいくらか高い。
【0087】
ビオチン化は、4倍、25倍、および50倍モル過剰量のビオチン化試薬(ビオチン-PEG4-NHSリンカー)で実施された。50倍モル過剰量が最適な結果をもたらしたことが判明した。
【0088】
終了したビーズを中性について試験し、ビーズが、以下のプロトコルに従って血清試料を前処理するために使用された時、それ自体が干渉を引き起こさなかったことを証明した:
1.ビオチン化100BSストレプトアビジン-ビーズ試薬バイアルを保管庫から取り出し、中速度で最低10秒間ボルテックスして、よく混合し、試薬を再懸濁する。
2.試薬バイアルを発泡バイアルホルダーに挿入する。
3.空の2mlマイクロチューブ(SARSTEDT注文番号72.694)を、チューブのつばが磁石フレームに接触するまでVeraMag(商標)磁石(Veravas)に挿入する。
4.十分に混合された試薬(ビーズ)の200μLを空のチューブに分注し、磁石上で試薬を30秒を超える間分離して、試薬ペレットを形成する。
5.試薬ペレットを乱すことなく、貯蔵緩衝液上清(約200μL)をすべて注意深く吸引し、廃棄する。
6.400μLの充分に混合された血清または血漿サンプルを、試薬ペレットを含有する管に分注する。
7.管のスクリューキャップをきつく締め、磁石から管を取り出し、少なくとも10秒間、中速でボルテックスしてよく混合し、試薬をサンプル中に再懸濁する。
8.管を中速でラボミキサーに置き、室温で10分間インキュベートする。
9.スクリューキャップを緩めて取り外し、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、管を磁石に挿入する。
10.試薬を4分間よりも長く磁気的に分離させ、試薬ペレットを形成させる。
11.試薬ペレットを乱すことなく、サンプル上清を慎重に吸引し、サンプルを試験用輸送管に分注する。注:この工程を慎重に行うことで、サンプル上清をすべて(約400μL)吸引することができる。試薬のいずれかが誤って吸引された場合、サンプル/試薬混合物をシンプルに管に戻し、工程10に戻る。
12.以上によりサンプルの試験準備が整う。
【0089】
次いでサンドイッチ免疫アッセイの例としてRoche Elecsys TSHアッセイ、および競合免疫アッセイの例としてRoche Elecsys FT4アッセイにおいて、前処理されたサンプルが使用された(表2を参照)。両方のアッセイによって試験されたすべてのサンプルについて、処理と未処理で結果において有意な分析的差異または臨床的差異はなかった。
【表2】
【0090】
実施例4
検証ロットの調製
3ロットのビーズを、減速として実施例3に記載されるように調製した。すなわち、飽和については、ビオチンとストレプトアビジンのモル比が5:1、50倍モル過剰のビオチン-PEG4-NHSリンカー、および異なる源のストレプトアビジンを使用した超音波処理を用いた50℃の洗浄を用いた。1つのロットであるFSAvは、新鮮なストレプトアビジンを使用した。1つのロットであるRSAvは、以前のビーズコーティング反応から回収されたストレプトアビジンを使用した。さらにもう1つのロットであるMSAvは、回収ストレプトアビジン80%と新鮮ストレプトアビジン20%の混合物を使用した。3ロットのストレプトアビジン含有量は、ロットFSAvについては35μg/mgビーズ、RSAvについては30μg/mgビーズ、およびMSAvについては19μg/mgビーズであった。次いで、当該3ロットを、以下の実施例5~8に記載される検証試験で使用した。
【0091】
ストレプトアビジンの磁気ナノ粒子へのコンジュゲーションは、過剰量のストレプトアビジンを使用する。未消費試薬は廃棄するのではなく、濾過、脱塩、および濃縮により回収することができる。そのようにして回収されたストレプトアビジンは、安定性または性能に影響を受けずに、機能性生成物に組み込まれ得ることが判明している。
【0092】
実施例5
製造中の凝集の指標としての粒子サイズ
初期の品質管理として、完成ビーズのサイズ計測を行い、製造中の凝集をチェックした。5uLのビーズを、使い捨てキュベットにおいて、1mLのdiH2Oと混合し、短いボルテックス(5~10秒)、混合(ミキサー上で10分間)、および30~60秒の超音波処理(使用する場合)の後に、Anton Paar Litesizer(商標)100粒子サイズアナライザーによって読み取った。3ロットのいずれも、超音波処理前後の生成品に由来する凝集を示していない(表3および表4)。平均して、凝集多分散体は、単量体多分散体よりも大きい。
【表3】
【表4】
【0093】
実施例6
ビオチン浸出試験
潜在的に問題のあるレベルのビオチン浸出に関して試験するために、ビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズ(ビオチニル化100BSストレプトアビジンビーズ)を、100pg/ml未満のビオチン濃度で血清中に懸濁した。400μLの血清を、0.5mgのビーズ(200μL~2.5mg/mL)を用いて室温、ミキサー上で10分間処理し、以下のプロトコルに従って磁気的に分離した。
1.ストックからビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズロットのMSAv、FSAv、またはRSAv試薬バイアルを取り出し、中速で少なくとも10秒間ボルテックスしてよく混合し、試薬を再懸濁する。
2.試薬バイアルを発泡バイアルホルダーに挿入する。
3.空のマイクロチューブ2ml(SARSTEDT注文番号72.694)を、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、VeraMag磁石に挿入する。
4.充分に混合された試薬(ビーズ)の200μLを空の管に分注し、磁石上で30秒よりも長く試薬を分離させ、試薬ペレットを形成させる。
5.試薬ペレットを乱すことなく、貯蔵緩衝液上清(約200μL)をすべて注意深く吸引し、廃棄する。
6.400μLの充分に混合された血清または血漿サンプルを、試薬ペレットを含有する管に分注する。
7.管のスクリューキャップをきつく締め、磁石から管を取り出し、少なくとも10秒間、中速でボルテックスしてよく混合し、試薬をサンプル中に再懸濁する。
8.管を中速でラボミキサーに置き、室温で10分間インキュベートする。
9.スクリューキャップを緩めて取り外し、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、管を磁石に挿入する。
10.試薬を4分間よりも長く磁気的に分離させ、試薬ペレットを形成させる。
11.試薬ペレットを乱すことなく、サンプル上清を慎重に吸引し、サンプルを試験用輸送管に分注する。注:この工程を慎重に行うことで、サンプル上清をすべて(約400μL)吸引することができる。試薬のいずれかが誤って吸引された場合、サンプル/試薬混合物をシンプルに管に戻し、工程10に戻る。
12.以上によりサンプルの試験準備が整う。
【0094】
処理した血清を、IDK BIOTIN ELISAアッセイ(Immundiagnostik AG社)で試験した。IDK BIOTIN ELISAは競合免疫アッセイであり、サンプル中のビオチンは生成されるシグナルを減少させる。ビオチンの濃度は、較正曲線と比較することにより決定される。3つの試験ロットのそれぞれを用いて、較正曲線が作成される。すべての事例において、ビオチンは1200pg/ml未満のレベルで検出された。このことから、ビーズからのビオチンの浸出はいずれも、標準的な免疫アッセイにおいて異好性干渉を引き起こさないレベルであったことが示される(表5)。
【表5】
【0095】
実施例7
HPLC枯渇アッセイ
ビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズの3つのロットを、枯渇アッセイにおいて使用し、抗ストレプトアビジン干渉および抗ビオチン干渉を特異的に除去するが、他の干渉は除去しないそれらの能力を評価した。この目的のために、一連の4つのHPLC枯渇試験を実施した。
1)アフィニティ精製ヤギIgG、およびビオチンにコンジュゲートされたアフィニティ精製ヤギIgGを使用して、抗SAv抗体および抗Bt抗体のみに対する生成物の特異性を評価するためのHPLC枯渇アッセイ。
2)抗ストレプトアビジン抗体を使用して、試薬の結合能力を定量化するためのHPLC枯渇アッセイ。
3)抗ビオチン抗体を使用したHPLC枯渇アッセイを実施して、試薬の結合能力を定量する。
4)A)抗ビオチン抗体および抗ストレプトアビジン抗体、ならびにB)抗ストレプトアビジン抗体およびアフィニティ精製ヤギIgGの混合物を使用して、試薬の多重化能力および特異性を実証するためのHPLC枯渇アッセイ。
【0096】
pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の様々な抗体(Ab)および抗体-ビオチン(Ab-Bt)コンジュゲートの濃度を決定した。各サンプルについて、ビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズ懸濁液(2.5mg/ml)の200μlを管に分注し、磁気的に分離させ、貯蔵緩衝液を除去した。各AbまたはAb-Btコンジュゲートの400μLを、ビーズ含有管に加え、ボルテックスし、10分間ミキサー上でインキュベートした。ビーズは再び磁気的に分離され、処理サンプルの上清を吸出し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析用のHPLC管のマイクロチューブインサートにローディングした。前処理の詳細なプロトコルは以下の通りであった:
1.ストックからビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズロットのMSAv、FSAv、またはRSAv試薬バイアルを取り出し、中速で少なくとも10秒間ボルテックスしてよく混合し、試薬を再懸濁する。
2.試薬バイアルを発泡バイアルホルダーに挿入する。
3.空のマイクロチューブ2ml(SARSTEDT注文番号72.694)を、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、VeraMag磁石に挿入する。
4.充分に混合された試薬(ビーズ)の200μLを空の管に分注し、磁石上で30秒よりも長く試薬を分離させ、試薬ペレットを形成させる。
5.試薬ペレットを乱すことなく、貯蔵緩衝液上清(約200μL)をすべて注意深く吸引し、廃棄する。
6.400μLの充分に混合された血清または血漿サンプルを、試薬ペレットを含有する管に分注する。
7.管のスクリューキャップをきつく締め、磁石から管を取り出し、少なくとも10秒間、中速でボルテックスしてよく混合し、試薬をサンプル中に再懸濁する。
8.管を中速でラボミキサーに置き、室温で10分間インキュベートする。
9.スクリューキャップを緩めて取り外し、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、管を磁石に挿入する。
10.試薬を4分間よりも長く磁気的に分離させ、試薬ペレットを形成させる。
11.試薬ペレットを乱すことなく、サンプル上清を慎重に吸引し、サンプルを試験用輸送管に分注する。注:この工程を慎重に行うことで、サンプル上清をすべて(約400μL)吸引することができる。試薬のいずれかが誤って吸引された場合、サンプル/試薬混合物をシンプルに管に戻し、工程10に戻る。
12.以上によりサンプルの試験準備が整う。
【0097】
未処理抗体も、対照としてSECを実施した。SEC緩衝液は、50mMのリン酸カリウム、250mMの塩化カリウム、pH6.8であり、G4000カラム7.8mm×30cm上で、1ml/分で20分間、5μg/100μlの注入を使用してポンプ注入した。220nmおよび280nmでの吸光度を監視し、A280をピーク分析に使用した。結果を表6に示す。
【表6】
【0098】
抗ビオチンまたは抗ストレプトアビジンに特異的ではない抗体に対してビーズは中立的であることが意図されているため、アフィニティ精製ヤギIgGを対照として使用して、バックグラウンド枯渇を確立した。3つのロットすべてが、この対照の結合が最小限、または全くないことを示している(92.56%~96.78%の抗体が、処理後にまだ存在する。
図5Aは、MSAvロットでの結果を示す)。
【0099】
再度、たとえビオチニル化されていたとしても、抗ビオチンまたは抗ストレプトアビジンに特異的ではない抗体に対してビーズは中立的であることが意図されているため、ビオチンにコンジュゲートされたアフィニティ精製ヤギIgGをさらに対照として使用して、バックグラウンド枯渇を確立した。3つのロットすべてが、この対照の結合が最小限、または全くないことを示している(98.91%~100%の抗体が、処理後に存在する。
図5Bは、MSAvロットでの結果を示す)。
【0100】
3つのロットすべてが、抗ビオチン抗体のビーズ1mg当たり10μgを超える枯渇を示す(12、34.4、および21μg/mgの枯渇;表6を参照;
図5Cは、MSAvロットの結果を示す)。3つのロットすべてが、抗SAv抗体のビーズ1mg当たり20μgを超える枯渇を示す(31、33.5、および27.6μg/mgの枯渇;表6を参照;例示的プロファイルを
図5Dに示す。この図は、MSAvロットの結果を示す)。
抗ストレプトアビジン抗体と抗ビオチン抗体の混合物を、MSAvロットのビーズを使用して試験し、ビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズの多重化能力を実証した。また、抗ストレプトアビジンとAPヤギIgG抗体の混合物を試験して、試薬による結合の特異性を実証した。データは、ビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズは、タンデムで存在するときの抗ストレプトアビジン抗体と抗ビオチン抗体の両方を枯渇すること(存在する23.4μgのうち19.1μgが枯渇した)、および生成物が、APヤギIgGと混合されたときに抗ストレプトアビジン抗体のみを特異的に除去すること(存在する23.8μgのうち10.9μgが枯渇した)を示す。従前のデータは、個々のAPヤギIgGの結合が無いことを示している(Abの97%が処理後もまだ存在)ため、混合物の約半分(46%)の枯渇は、抗ストレプトアビジンAbのみが枯渇したことを示していると問題なく推測することができる。
【0101】
実施例8
分析物検出に対する処理の影響
ビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズ(ビオチニル化100BSストレプトアビジンビーズ)の中立性を、血清副甲状腺ホルモンの市販アッセイで試験した。DRG PTH Intact ELISA(DRG International社、Part Number EIA3645)は、ホルモンの別個の部分を認識する2つの異なるヤギ抗PTHポリクローナル抗体を使用したサンドイッチELISAアッセイである。抗体の一方はビオチニル化され、捕捉試薬として機能し、他方の抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされ、検出試薬として機能する。
【0102】
2つの血清試料(QC1およびQC3)の各400μlを、以下のプロトコルに従い、0.5mgのビーズ(200ul、2.5mg/mL)を用いて室温で10分間、ミキサー上で処理し、磁気的に分離させた。
1.ストックからビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズロットのSAv、FSAv、またはRSAv試薬バイアルを取り出し、中速で少なくとも10秒間ボルテックスしてよく混合し、試薬を再懸濁する。
2.試薬バイアルを発泡バイアルホルダーに挿入する。
3.空のマイクロチューブ2ml(SARSTEDT注文番号72.694)を、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、VeraMag磁石に挿入する。
4.充分に混合された試薬(ビーズ)の200μLを空の管に分注し、磁石上で30秒よりも長く試薬を分離させ、試薬ペレットを形成させる。
5.試薬ペレットを乱すことなく、貯蔵緩衝液上清(約200μL)をすべて注意深く吸引し、廃棄する。
6.400μLの充分に混合された血清または血漿サンプルを、試薬ペレットを含有する管に分注する。
7.管のスクリューキャップをきつく締め、磁石から管を取り出し、少なくとも10秒間、中速でボルテックスしてよく混合し、試薬をサンプル中に再懸濁する。
8.管を中速でラボミキサーに置き、室温で10分間インキュベートする。
9.スクリューキャップを緩めて取り外し、管のカラーが磁石フレームに接触するまで、管を磁石に挿入する。
10.試薬を4分間よりも長く磁気的に分離させ、試薬ペレットを形成させる。
11.試薬ペレットを乱すことなく、サンプル上清を慎重に吸引し、サンプルを試験用輸送管に分注する。注:この工程を慎重に行うことで、サンプル上清をすべて(約400μL)吸引することができる。試薬のいずれかが誤って吸引された場合、サンプル/試薬混合物をシンプルに管に戻し、工程10に戻る。
12.以上によりサンプルの試験準備が整う。
【0103】
次いで、処理血清を、DRG PTH ELISAアッセイで試験した。QC1は、100pg/mL未満のビオチン(PTHアッセイの機構には影響しない)、およびおよそ190pg/mLのPTHを含む実験室内QCサンプルである。QC3は、約250,000pgのビオチン/mL(PTHアッセイの機構に影響する-アッセイは極めて低い結果が出る)、およびおよそ190pg/mLのPTHを含む実験室内QCサンプルである。異なるロットの各々で処理されたQC1血清は、PTHの結果において、有意な偏差を示さず(100.6、101.2、および106.1%の検出)、100BSストレプトアビジンビーズは遊離ビオチンに結合しないことから予測されるとおり、QC3サンプルはすべて極めて低い結果を出した(表7)。これらのデータは、100BSストレプトアビジンビーズのビーズの中立性を示す。
【表7】
【0104】
抗ストレプトアビジン抗体および抗ビオチン抗体の干渉物質を含有するサンプルの処理後の分析物検出を判定した。血清QC1にアフィニティ精製抗ストレプトアビジン抗体と抗ビオチンヤギ抗体を添加し、処理サンプルと未処理サンプルからの分析物の検出結果を比較することによって判定が行われた。
【0105】
各血清サンプル(QC1、および16.5μg/mLの抗ビオチン抗体を入れたQC1)の400μl分注物を、3ロットすべてからの様々な量のビーズ(100~400μl、2.5mg/mL)を用いて10分間、室温でミキサー上で処理し、磁気的に分離させ、処理血清をDRG PTH ELISAアッセイで試験した。QC1は、100pg/mL未満のビオチン(PTHアッセイの機構には影響しない)、およびおよそ190pg/mLのPTHを含む実験室内QCサンプルである。QC1に添加された抗ビオチン抗体の濃度は、PTHアッセイ機構に干渉し、極めて低下した結果をもたらす。
【0106】
MSAvビーズは、すべての抗Bt抗体(抗Bt Aby)を枯渇させることに成功し、サンプル200μl当たり1mgのビーズ(16.5μg/mLの抗Bt Aby濃度)で補正PTHの結果を復元することができた。FSAvとRSAvは、同じ結果をはるかに少ない量で達成することができた:FSAvについては0.25mg、RSAvについては0.375mgであった。抗Bt Abyが添加され、ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズで処理されなかったQC1サンプルは、予測通り、対照の2.7%のみの極めて低い結果であった(表8および表9)。MSAvロットのキャパシティの低さは、実施例7(上記)で観察された結果と一致する。
【表8】
【表9】
【0107】
同様に、各血清サンプル(QC1、および抗ストレプトアビジンAby(抗SAv Aby)を添加したQC1サンプルを16.5μg/mL、または抗SAv Aby/抗Bt Aby多重混合物を16.5μg/mL、それぞれ8.25μg/mL)の200μlの分注物を、2.5mg/mLのビーズ100μlで10分間、室温、ミキサー上で処理し、磁気的に分離させ、処理血清を、DRG PTH ELISAアッセイで試験した。上述のように、QC1は、100pg/mL未満のビオチン(PTHアッセイの機構には影響しない)、およびおよそ190pg/mLのPTHを含む実験室内QCサンプルである。抗SAv Abyと抗Bt Abyは、PTHアッセイ機構に干渉し、極めて低い結果をもたらす。
【0108】
使用した濃度(16.5μg/mL)で、抗SAv Abyは、予測通り極めて低い結果をもたらした(基準の29%)。多重混合物も同様であった(基準の21%)。ロットのRSAvのビーズは、抗SAv Abyを枯渇させることに成功し、200μlのサンプル当たり0.25mgのビーズでPTH検出を回復し始め、基準値の最大82%の読取り結果をもたらすことができた。処理に使用されるビーズの量を、当該サンプル200μl当たり0.5mgに増加させることにより、値は基準の104%に回復した。サンプル200μl当たり0.25mgのビーズで、ロットFSAvのビーズは、PTHレベルを基準の91%まで回復させた。当該サンプル200μl当たり0.375mgのビーズで、ロットMSAvのビーズは、PTH値を基準の92%まで回復させた。すべてのロットが、0.5mgのビーズで補正PTH結果を復元させることができた(RSAv-104%、FSAv-101%、MSAv100%)(表10)。
【表10】
【0109】
ロットMSAvを使用した上記のPTH検出実験の結果の概要を
図6に示す。ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズは、干渉物質を使用しない場合、またはビオチンが干渉物質である場合、効果はなかったが、個別にまたは一緒に混合された、抗ビオチン干渉物質および抗ストレプトアビジン干渉物質の除去には有効であった。
【0110】
具体的には、「なし」とラベルされている
図6の左端のバー群において、干渉物質添加サンプルに加えられた干渉物質はなかった。すなわち、基準サンプルの再試行であり、検出されたPTHの濃度は、-0.1%だけ差があった。いかなる干渉も伴わないビオチン飽和され、コンジュゲートされたストレプトアビジン被覆ビーズとともに基準サンプルを処理した場合(なし)、基準サンプルとは+1.3%のみ異なっており、基準サンプル再試行とは+1.4%のみ異なっていた(干渉添加なし)。これらの結果は、このPTH ELISAの精度プロファイルにおいて良好であり、試薬の中立性を示し、およびサンプルの処理は、いかなる希釈効果またはマトリクス効果も導入しなかったことを実証する。ビオチン添加は、このPTH ELISAアッセイに有意な干渉を引き起こし、検出において87%の低下をもたらした。ビオチン添加サンプルをビーズで処理した場合、結果は有意に変化せず、-2.3%のみの差であり、基準結果よりも88%低かった。この結果は、ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズは遊離ビオチンに結合せず、この干渉メカニズムを軽減しないことから予測されたことである。抗Bt Aby添加は、このPTH ELISAアッセイに有意な干渉を引き起こし、検出において97%の低下をもたらした。抗Bt Aby添加が処理されたとき、結果は有意に変化し、+3,546%異なっていたが、基準結果との差は-1.5%のみであった。この結果は、ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズは、抗ビオチン干渉に結合して枯渇させ、抗ビオチン干渉を伴わない基準結果と類似した正確な結果を報告するように設計されていることから予測されたことである。抗SAv Aby添加も、このPTH ELISAアッセイに有意な干渉を引き起こし、検出において74%の低下をもたらした。抗SAv Aby添加が処理されたとき、結果は有意に変化し、+253%異なっていたが、基準結果との差は-8.2%のみであった。この結果は、ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズは、抗ストレプトアビジン干渉に結合して枯渇させ、抗SAv Aby干渉を伴わない基準結果と類似した正確な結果を報告するように設計されていることから予測されたことである。最後に、抗SAv Abyと抗Bt Abyの1:1混合物の添加は、このPTH ELISAアッセイに有意な干渉を引き起こし、検出において81%の低下をもたらした。抗SAv Abyおよび抗Bt Aby添加が処理されたとき、結果は有意に変化し、+379%異なっていたが、基準結果との差は-9.9%のみであった。これらの結果でも、このPTH ELISAの精度プロファイル内にある。この結果は、ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズは、抗ビオチンおよび抗ストレプトアビジン干渉の両方に結合して枯渇させ、抗ビオチンおよび抗ストレプトアビジン干渉を伴わない基準結果と類似した正確な結果を報告するように設計されていることから予測されたことである。これらのデータはまた、ビオチニル化100BSストレプトアビジン-ビーズが、同じサンプルの両方の干渉機構に同時に結合し、枯渇させる能力も実証する。
【0111】
実施例9
可溶性ストレプトアビジンのビオチン飽和
トリス緩衝生理食塩水、pH8.5(TBS)中の希釈ストレプトアビジン(SAv)(または改変SAvもしくはブロックSAv)の溶液を、約200μg SAv/mLで調製する。ビオチンのTBS希釈溶液も、約0.50~1.00μg ビオチン/mLで調製される。2つの溶液は一緒に計量され、1体積SAv/TBSと9体積ビオチン/TBSの比率で、例えば、Yコネクタ(例えばMasterflex PN 30614-08 (Cole Parmer社))で会合するシリコンチューブ(例えばPN 96440-13(Cole Parmer社))を通じてポンプ注入し、直ちに排出管中のインラインミキサー(例えば、インラインミキサーのPPN HT-40-3.18-12-PP (StaMixCo社))で混合することにより(
図7)、インラインで混合される。SAv溶液は、2mL/分でポンプ注入されてもよく、ビオチン溶液は、例えば、蠕動ポンプ(例えばMasterflex EZload2モデル07522-20(Cole Parmer社))を使用して18mL/分でポンプ注入されてもよい。ビオチンとストレプトアビジンを含有する溶液を、30~120分間混合する。
【0112】
他の濃度のビオチンおよびSAv、他の緩衝系、および他のポンプ速度を使用してもよいが、ビオチン濃度とSAv濃度の比率、および計量される添加比は維持されなければならない。9体積のビオチン溶液は、SAv溶液中のストレプトアビジンの各モルに対して7.4モルのビオチンを含有しなければならない。ビーズコンジュゲートSAvの最小飽和手順で使用されたものよりも、ビオチンとストレプトアビジンの比率がやや高いことに留意されたい。ストレプトアビジンの分子量を52000とすると、300mLの200μg/mLのSAv溶液は、1.1538モルのストレプトアビジンを含有する。ビオチンの分子量を244.31とすると、8.53072μモルのビオチン(7.4:1のモル比)は、2084μgのビオチンであり、その結果、9体積ではビオチン濃度は772ng/mLとなる。
【0113】
非結合ビオチンおよび非特異結合したビオチンを除去するために、ビオチン飽和ストレプトアビジンに透析濾過および洗浄を行った。温水槽を精製水で満たし、50℃に加熱した。第2の温水槽を、10mM トリス、50~150mM NaClの緩衝液で満たし、50℃に加熱した。(あるいは、この緩衝液は、0.01~1%w/v TWEEN(登録商標) 20または他の界面活性剤を含有してもよい)。ビオチン飽和ストレプトアビジンを含有する貯蔵部を、第1の温水槽に入れた。例えば10kDの分子量カットオフ(Repligen社;PN S04-E010-05-N;mPes;0.5mm)を備えたMiniKros Sampler Hollow Fiber Filterなどの中空糸フィルターを使用して、インラインフローポート(上部および下部)および片側ポートに管を取り付けた。第2のサイドポートに蓋をした。サイドポートの管は、濾液を廃液容器に導く。貯蔵部から導かれる管は、蠕動ポンプを通って中空糸フィルターに進む。インラインフロー排出ポートから導かれる管は、保持液を貯蔵部に戻す(
図8)。水槽および貯蔵部が50℃に達したとき、蠕動ポンプをオンにして、保持液管を締めて背圧を生じさせてろ過を行い、ビオチン飽和ストレプトアビジン溶液の体積を減少させ、タンパク質を濃縮した。保持液の流量は約360ml/分であり、濾液の流量は約95ml/分であった。貯蔵部が元の容量の約15%(またはそれ以下)に達した時、第2の水槽からの緩衝液を貯蔵部に加え、元の容量を回復させた。(品質管理のためのサンプルは、容量回復直前に採取した)。濾過および容量の回復を合計で少なくとも5回繰り返した。必要に応じて、追加の洗浄サイクルを加えてもよい。容量の最終回復後、保持液を元の容量の約10%まで濃縮した(必要に応じて、他の容量を使用してもよい)。最終保持液中の遊離ビオチンは、1200pg/ml未満でなければならない。濃縮ビオチン飽和ストレプトアビジンを、0.2μmフィルターを通して濾過した。
【0114】
可溶化ストレプトアビジンの存在下での遊離ビオチンは、ビオチンクエンチプロセス完了の証拠とみなされる。しかしながら、遊離ビオチンそれ自体が干渉を引き起こす可能性があるため、ストレプトアビジンおよび他の干渉物を遮断する遮断試薬において遊離ビオチンは望ましいものではなく、除去する必要がある。各洗浄後の保持液および最終保持液(二重)を、ELISAビオチンアッセイ(Immundiagnostik社、PN KR8141)を使用して遊離ビオチン含量についてアッセイし、表11に示す結果を得た。
【表11】
【0115】
最終保持液は、700pg/mL未満の遊離ビオチンを含有し、実質的に1200pg/mL未満の要件を下回っていた。最終保持液は、約3.16~3.33pgの遊離ビオチン/μgストレプトアビジンを含有するように、201μgのストレプトアビジン/mLの濃度を有した。
【0116】
不完全にクエンチされたストレプトアビジンを除去するためのさらなる工程が加えられてもよい。アガロース(Sigma Aldrich社 PN I4507-5ML)にコンジュゲートされた2-イミノビオチンを、この目的に対し使用することができる。2-イミノビオチンは、アルカリ条件下でSAvに可逆的に結合する。結合は、pH10~11で最も強い。SAvは、pH4.0などの酸性条件下で放出される。ビオチンですでにクエンチされているSAvは、結合しないはずである。したがって、アルカリ2-イミノビオチン-アガロースのカラムからのクエンチ済みSAvのフロースルーは、ビオチンでクエンチされたSAvのみであるはずである。ビオチンでクエンチされていないSAvは、カラムに付着するはずである。カラムは、pH4緩衝液を用いて再生され、その後に再利用されてもよい。
【0117】
実施例10
マウスIgGとコンジュゲートされたストレプトアビジンビーズを用いたヤギ抗マウス抗体の除去
直径500~600nmの磁気ナノ粒子(ビーズ)を、ストレプトアビジンで被覆した。二つのアフィニティ精製マウスIgG調製物を、NHSester-Peg(4)-Biotinと共有結合してビオチニル化した。マウスIgG #1は、ポリクローナル非特異的マウスIgGであった。マウスIgG #2は、モノクローナルマウスIgGであった。ビーズをビオチニル化マウスIgGに曝露したとき、約30μgのIgGが、ビーズ各1mgに付着した。ビーズは、ポリクローナルマウスIgGのみを用いて、モノクローナルマウスIgGのみを用いて、および2つのマウスIgG調製物の混合物を用いて、作製された。これらのマウス抗体は、特異的アフィニティ精製、または異好性のいずれかで、それら抗体が暴露される任意の抗マウスIgG抗体に対する捕捉部分としての機能を果たす。次いで、これらマウスIgGコンジュゲートストレプトアビジンビーズを使用して、アフィニティ精製ヤギ抗マウス抗体(Lampire Biological Laboratories社)が添加されたサンプル(この場合は緩衝液)を洗浄した。次いで、サンプルの分注物を、IgG含量についてHPLCサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。
【0118】
ビオチニル化を使用してストレプトアビジン上に捕捉試薬をアンカーすることに関する懸念は、洗浄手順の流れのなかで、捕捉試薬がストレプトアビジンから解離する程度までの遊離ビオチンのアフィニティよりも、ビオチンのアフィニティのほうが低い可能性があることである。これをチェックするために、洗浄手順を通常通り、および20μg/mLの遊離ビオチン(ストレプトアビジンよりも200倍モル超過剰)の存在下で、実施した。ビオチニル化IgGがストレプトアビジン被覆ビーズから解離する場合、過剰な遊離ビオチンの存在下では再結合することができず、その結果として、ビーズで除去されるヤギ抗マウス抗体の量は減少する。あるいは、ビオチニル化IgGの解離が有意な程度までは発生しない場合、ヤギ抗マウスIgGの量は、遊離ビオチンを含むサンプルと含まないサンプルとの間で有意には変化しない。
【0119】
具体的には、3つのマウスIgGコンジュゲートストレプトアビジンビーズ(IgG#1、IgG#2、および2つの混合物を含む)の各々の1本の分注物を、貯蔵緩衝液(TBS)から磁気的に分離し、20μg/mlのビオチンを含有するTBSと混合した。ヤギ抗マウスIgGを、a)TBS中、およびb)20μg/mlのビオチンを含有するTBS中で、200μg/mLに希釈した。3つのマウスIgGコンジュゲートストレプトアビジンビーズの各々の2本の分注物、1本はビオチン暴露、他方はビオチン暴露なしを、それぞれの緩衝液から磁気的に分離した。ヤギ抗マウスIgGの1mL当たり2.5mgのビーズを使用して、TBS中のヤギ抗マウスIgGを、ビオチン曝露が無いビーズに加え、20μg/mlのビオチンを含有するTBS中のヤギ抗マウスIgGを、ビオチン曝露ビーズに加えた。これらの混合物を10秒間ボルテックスして、ビーズを懸濁し、一晩混合した。得られた混合物はビーズを磁気的に分離され、次いで上清サンプルを、ヤギIgGに対応するピークの280nmでの吸光度に関する曲線下面積を使用してHPLC-SECにより分析した。結果を表12に示す。
【表12】
【0120】
これらのデータは、マウスIgGコンジュゲートストレプトアビジンビーズが、ビーズ1mg当たり26.0~60.1μgの抗マウス抗体を除去できることを実証した。これらのデータはさらに、ビオチニル化捕捉試薬(マウスIgG)の付着は、大量の過剰遊離ビオチンの存在下であっても、洗浄手順の条件下で安定的であることを実証した。最後に、これらのデータは、これら手順が、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにその2種の混合物である捕捉部分で効果的であることを実証した。
【0121】
実施例11.マウスIgGとコンジュゲートされたストレプトアビジンビーズを用いたビオチンの除去
実施例10で上述した3つのマウスIgGコンジュゲートストレプトアビジンビーズ調製物(ポリクローナルマウスIgG、モノクローナルマウスIgG、およびポリクローナルマウスIgGとモノクローナルマウスIgGの混合物)が、遊離ビオチンをサンプルから除去する能力について、試験した。本質的に上述と同じプロトコルを使用して、0.75mgのビーズを、約250,000pgビオチン/mL、50ngビオチンを含む実験室内QCサンプルであるQC3の200μLと混合し、10分間インキュベートし、5分間磁気分離させて、サンプル上清を収集した。処理サンプルを、IDK BIOTIN ELISAアッセイ(Immundiagnostik AG社、実施例6を参照)で試験した。3つのビーズ調製物はすべて、これらの条件下で、250ngビオチン/mLの0.200mLのQC3(合計で50ngのビオチン)から少なくとも49.7ngのビオチンを除去することができ、または66.3ngビオチン/mgビーズで除去することができ、ビオチン濃度を250,000pg/mLから300pg/mL未満に低下させることができた。
【0122】
まとめると、本明細書の態様は特定の実施形態を参照することによって強調されることが理解されるが、当業者であれば、これらの開示された実施形態は、本明細書に開示される主題の原理関する例示に過ぎないことを容易に認識するであろう。したがって、開示された主題は、本明細書に記述された特定の方法論、プロトコル、および/または試薬などに決して限定されないことが理解されるものとする。したがって、本開示の主題に関する様々な改変もしくは変更、または代替的な構成は、本明細書の主旨から逸脱することなく、本明細書の教示に従って行うことができる。最後に、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記述する目的で使用されており、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ規定される。したがって、本発明は、正確に図示および記載されるとおりには限定されない。
【0123】
本発明の実施を目的として、発明者に公知のベストモードを含む、本発明の特定の実施形態が本明細書に記述される。もちろんこれらの記述される実施形態の変形は、前述の記載を読むことで当業者に明白となるであろう。本発明者は、当業者に、かかる変形を適宜採用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記述される以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法により許容されるとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題の全ての改変および均等を含む。さらに、本明細書に別段の記載がない限り、または文脈により別段であることが明白に矛盾しない限り、すべての可能性のある変形において、上述の実施形態の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0124】
本発明の代替的な実施形態、要素、または工程のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各群の構成因子は、個別に、または本明細書に開示される他の群の構成因子との任意の組み合わせで、言及され、特許請求され得る。群の一つ以上の構成因子が、簡便さ、および/または特許性を理由に、群に含まれ、または群から除外され得ることが予測される。任意のそのような包含または除外が発生した場合、本明細書は、改変されたとおりの群を含有するとみなされ、従って添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュ群の明細書記載を満たすとみなされる。
【0125】
別段の示唆が無い限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、特性、品目、数量、パラメータ、性質、期間などを表す全ての数字は、全ての場合で「約」という用語によって改変されていると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そのように修飾された特性、品目、数量、パラメータ、性質、または期間が、記述された特性、品目、数量、パラメータ、性質、または期間の値の上下に、プラスまたはマイナス10パーセントの範囲を包含することを意味する。したがって逆であることが示唆されない限り、明細書および添付の請求の範囲に記載される数値パラメータは、変化し得る近似値である。少なくとも、請求の範囲に対する均等の原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値の示唆は少なくとも報告される有効桁の数値に照らし合わせて、および通常の四捨五入法を適用することで解釈されるものとする。本発明の広範な範囲を記載する数値範囲および値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値範囲および値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値範囲または値は、それぞれの試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じた特定の誤差を本質的に含んでいる。本明細書の値の数値範囲の列挙は、単に、その範囲内にあるそれぞれの別個の数値を個々に参照する、簡易的な方法としての役割を果たすことが意図されているに過ぎない。本明細書に別段の示唆がない限り、数値範囲のそれぞれ個々の値は、本明細書に個別に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。
【0126】
本明細書に別段の示唆がない限り、または文脈から相反することが明白でないかぎり、(特に以下の請求の範囲の文脈において)本発明を記載する文脈において使用される、「a」、「an」、「the」、および類似の指示対象の用語の使用は、単数および複数の両方を包含するとみなされる。本明細書に別段の示唆が無い限り、または文脈から相反することが明白でないかぎり、本明細書に記載のすべての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提示される任意の、およびすべての実施例の使用、または例示的文言(「例えば」)は単に本発明をより詳細に解説することを意図しているに過ぎず、別段であることが請求される本発明の範囲に対する限定を与えるものではない。本発明の明細書の文言は、本発明の実施に必須である任意の請求されていない要素を示すとみなされるべきではない。
【0127】
本明細書に開示される特定の実施形態は、文言からなる、または本質的に文言からなる、を使用した特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において使用される場合、出願されたか、または補正に従い追加されたかにかかわらず、移行用語の「~からなる」は、特許請求の範囲において特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。移行用語の「~から本質的になる」は、特許請求の範囲を、指定される物質または工程、および基礎的な特性および新規の特性に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書に本質的にまたは明示的に記述され、有効化される。
【0128】
本明細書において参照され、および特定される全ての特許、特許公開、および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るかかる刊行物に記載される組成物および方法論を記述および開示する目的で、その全体が参照により個々に、および明示的に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日の前の開示についてのみ、提示されるものである。この点に関するいかなる記述も、発明者らが、先行発明を理由として、またはその他の理由のために、かかる開示に先行する権利が与えられないと認めるものとして解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付または表明に関するすべての意見は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
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