(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-02
(45)【発行日】2025-06-10
(54)【発明の名称】結合タンパク質1
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20250603BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250603BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250603BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250603BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250603BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250603BHJP
C07K 16/44 20060101ALI20250603BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/68
A61P35/00
A61P43/00 111
C07K16/44 ZNA
(21)【出願番号】P 2020502992
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042532
(87)【国際公開番号】W WO2019018426
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520018277
【氏名又は名称】ニュークリアス・セラピューティクス・ピーティーワイ・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511042706
【氏名又は名称】イェール・ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーナ・ドゥブリェヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ザーラ・ラトレー
(72)【発明者】
【氏名】ジアンビン・ジョウ
【合議体】
【審判長】中村 浩
【審判官】上條 肇
【審判官】水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503511(JP,A)
【文献】国際公開第2016/033321(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 16/00 - 16/46
A61K 39/395
A61P 1/00 - 43/00
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメインを有する核透過性抗DNA結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインがDNAに結合し、かつ
- 配列番号1に示されているとおりの相補性決定領域(CDR)1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有する重鎖可変領域(V
H)、ならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有する軽鎖可変領域(V
L)、ならびに
- 配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも98%同一な配列を含むV
H、及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも98%同一な配列を含むV
L
を含み、前記CDRがKabatナンバリングシステムを使用して規定される、前記核透過性抗DNA結合タンパク質。
【請求項2】
配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも99%同一な配列を含むV
H、及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも99%同一な配列を含むV
Lを含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
配列番号21に示されているとおりの配列を含むV
H、及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むV
Lを含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記V
H及びV
Lが、配列番号30に示されている配列を含むリンカーによって分離されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
前記V
H及びV
Lが単一のポリペプチド鎖中にある、請求項1~4のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項6】
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(ジ-scFv)、
(iii)三量体scFv(トリ-scFv)、
(iv)抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメインC
H2及び/またはC
H3に連結している(i)、(ii)または(iii)のいずれか1つ
である、請求項5に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
scFvである、請求項6に記載の結合タンパク質。
【請求項8】
ジ-scFvである、請求項6に記載の結合タンパク質。
【請求項9】
前記scFvが、配列番号31に示されている配列を含むリンカーによって分離されている、請求項8に記載の結合タンパク質。
【請求項10】
前記V
H及びV
Lが別々のポリペプチド鎖中にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項11】
インタクトな抗体である、請求項10に記載の結合タンパク質。
【請求項12】
核透過性抗DNA Fv断片で
ある、
請求項1または2に記載の結合タンパク質。
【請求項13】
ジ-scFvである、請求項12に記載の
結合タンパク質。
【請求項14】
別の化合物にコンジュゲートされている、請求項1~1
3のいずれか1項に記載の結合タンパク
質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に定義される結合タンパク質をコードする核酸。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に定義される結合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項17】
がんを処置するための医薬品の製造における、請求項1~14のいずれか1項に定義される結合タンパク質または請求項16に記載の組成物の使用。
【請求項18】
がんの処置において使用するための、請求項1~14のいずれか1項に定義される結合タンパク質または請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記がんが、以下のうち1つ以上である:
-相同性配向型修復(HDR)欠損である、
-PARP阻害に対して抵抗性を有する、
-BRCA2欠損である、
-PTEN欠損である、
請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記がんが、結腸癌、脳癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌、黒色腫、または膵臓癌である、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
前記がんが神経膠芽細胞腫または三重陰性乳癌である、請求項17に記載の使用。
【請求項22】
前記がんが、以下のうち1つ以上である:
-相同性配向型修復(HDR)欠損である、
-PARP阻害に対して抵抗性を有する、
-BRCA2欠損である、
-PTEN欠損である、
請求項18に記載の結合タンパク質。
【請求項23】
前記がんが、結腸癌、脳癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌、黒色腫、または膵臓癌である、請求項18に記載の結合タンパク質。
【請求項24】
前記がんが神経膠芽細胞腫または三重陰性乳癌である、請求項18に記載の結合タンパク質。
【請求項25】
抗原結合ドメインを有する核透過性抗DNA結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインがDNAに結合し、かつ
- 配列番号1に示されているとおりの相補性決定領域(CDR)1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有する重鎖可変領域(V
H)、ならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有する軽鎖可変領域(V
L)、ならびに
配列番号21に示されているとおりの配列を含むV
H、及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むV
L
を含む、前記核透過性抗DNA結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞透過性抗DNA結合タンパク質に関する。これらの結合タンパク質を含む組成物は、作用物質を細胞に送達するために、及びがんなどの疾患を処置するために有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
ヒト疾患のための治療薬としての細胞透過性抗DNA結合タンパク質の開発は、特に、DNA修復経路を選択的に損なう、及び/または様々な治療的ペイロードを標的細胞に送達するそれらの能力によって、多大な臨床的可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改善された細胞透過性抗DNA結合タンパク質が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、核透過を驚くほど増大させる細胞透過性抗DNA結合タンパク質の修飾を同定した。場合によっては、これらの修飾はまた、物理的安定性を改善し得る、及び免疫原性を低下させ得る。
【0005】
したがって、第1の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する細胞透過性抗DNA結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインが、DNAに結合する、または特異的に結合し、かつ配列番号1に示されているとおりの相補性決定領域(CDR)1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有する重鎖可変領域(VH)ならびに配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記細胞透過性抗DNA結合タンパク質に関する。この例では、CDRは、Kabatを使用して定義されている。
【0006】
別の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する細胞透過性抗DNA結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインが、DNAに結合する、または特異的に結合し、かつ:
- 配列番号9に示されているとおりの相補性決定領域(CDR)1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有する重鎖可変領域(VH)、
- 配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記細胞透過性抗DNA結合タンパク質に関する。この例では、CDRは、IMGTを使用して定義されている。
【0007】
別の例では、本開示による結合タンパク質は、
(i)配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH、
(ii)配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVL、または
(iii)配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVL
を含む。例えば、結合タンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含み得る。別の例では、結合タンパク質は、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、結合タンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。
【0008】
別の例では、VH及びVLは、リンカーによって分離されている。例えば、リンカーは、(Gly4Ser)3を含み得る。別の例では、リンカーは、配列番号30に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。
【0009】
一例では、VH及びVLは、単一のポリペプチド鎖中にある。例えば、結合タンパク質は、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(ジ-scFv)、
(iii)三量体scFv(トリ-scFv)、
(iv)抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメインCH2及び/またはCH3に連結している(i)、(ii)または(iii)のいずれか1つ
であってよい。例えば、結合タンパク質は、ジ-scFvであってもよい。この例では、scFvは、リンカーによって分離されていてもよい。例えば、リンカーは、配列番号31に示されているとおりのアミノ酸配列を含み得る。
【0010】
別の例では、VH及びVLは、別々のポリペプチド鎖中にある。例えば、結合タンパク質は、
(i)ダイアボディ、
(ii)トリアボディ(triabody)、
(iii)テトラボディ、
(iv)Fab、
(v)F(ab’)2、
(vi)Fv、
(vii)抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメインCH2及び/またはCH3に連結している(i)~(vi)の1つ、または、
(viii)インタクトな抗体
であり得る。
【0011】
したがって、FvのVH及びVLは、単一のペプチド鎖(例えば、scFv)から形成され得るか、または2つの別々のペプチド鎖から形成され得る。
【0012】
一例では、結合タンパク質は、ヒト化されている。
【0013】
別の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する細胞透過性抗DNA Fv断片であって、前記抗原結合ドメインが、DNAに結合する、または特異的に結合し、かつ
- 配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2、配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVL、
- 配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2、配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVL、
- 配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVL
のうちの少なくとも1つを含む、前記細胞透過性抗DNA Fv断片に関する。この例では、Fv断片は、ジ-scFvであってもよい。一例では、Fv断片は、配列番号32~47のいずれか1つに示されているとおりのアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、Fv断片は、配列番号41に示されているとおりのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0014】
一部の実施形態では、Fvは、ネイキッドである。別の例では、Fv断片は、別の化合物にコンジュゲートされていてもよい。
【0015】
一例では、Fvは、ヒト化されている。例えば、Fvは、ヒト化ジ-scFvであってもよい。
【0016】
別の例では、本開示は、上で言及した結合タンパク質をコードする核酸配列に関する。例示的な核酸配列は、配列番号51~66に示されている。本開示の核酸配列は、タンパク質を合成する発現レベルを上昇させるためにコドン最適化され得る。別の例では、本開示は、本開示による核酸配列を含む発現ベクターに関する。例えば、発現ベクターは、配列番号51~66のいずれか1つに示されている核酸配列またはそのコドン最適化配列を含んでもよい。
【0017】
別の例では、本開示は、上で言及した結合タンパク質、核酸もしくはベクター、またはそのコドン最適化配列を含む宿主細胞に関する。
【0018】
別の例では、本開示は、がんを処置する方法に関する。例えば、対象に、配列番号32、36、41または43のいずれか1つに示されているとおりのアミノ酸配列を含むFv断片を投与することを含む、がんを処置する方法。例えば、配列番号32に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFv断片を対象に投与してもよい。別の例では、配列番号36に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFv断片を対象に投与してもよい。別の例では、配列番号41に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFv断片を対象に投与してもよい。別の例では、配列番号43に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFv断片を対象に投与してもよい。一例では、がんは、結腸癌、脳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、乳癌、または膵臓癌である。例えば、がんは、結腸癌または脳癌であってもよい。一例では、がんは脳癌である。一例では、脳癌は神経膠芽細胞腫である。
【0019】
別の例では、本開示は、がんを処置するための医薬品の製造における、本開示によるFv断片、組成物、ベクターまたは宿主細胞などの結合タンパク質の使用に関する。別の例では、本開示は、がんの処置において使用するための、本開示によるFv断片、組成物、ベクターまたは宿主細胞などの結合タンパク質に関する。
【0020】
下の実験結果も、本明細書に開示の結合タンパク質が、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬と共に作用して、がん細胞を死滅させ得ることを例証している。したがって、別の例では、本開示は、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、対象に、本明細書に定義の結合タンパク質またはFv断片と、PARP阻害薬とを投与することを含む、前記方法に関する。
【0021】
一例では、PARP阻害薬は、オラパリブである。
【0022】
一例では、がんは、実質的にHDR欠損している。別の例では、がんは、実質的にBRCA2欠損している。別の例では、がんは、実質的にPTEN欠損している。一例では、がんは、結腸癌、脳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、乳癌、または膵臓癌である。例えば、がんは、結腸癌または脳癌であってもよい。一例では、がんは脳癌である。一例では、脳癌は神経膠芽細胞腫である。一例では、がんはPARP阻害に対して抵抗性を有する。例えば、がんは、オラパリブでの処置に対して抵抗性があってもよい。別の例では、がんは三重陰性乳癌である。
【0023】
別の例では、本開示は、本明細書に定義の結合タンパク質またはFv断片と、PARP阻害薬とを含む治療用組み合わせであって、同時または連続投与で与えられる、前記治療用組み合わせに関する。別の例では、本開示は、
- 配列番号41のCDRを含む結合タンパク質もしくはFv、または、
- 配列番号41に示されているアミノ酸配列を含む結合タンパク質と、
PARP阻害薬とを含む治療用組み合わせであって、同時または連続投与で与えられる、前記治療用組み合わせに関する。例えば、結合タンパク質またはFvは、配列番号1、3及び4に示されているとおりの重鎖CDRならびに配列番号6、7及び8に示されているとおりの軽鎖CDRを含み得る。これらの例では、治療用組み合わせを、がんを処置するために使用してもよい。さらに、これらの例では、PARP阻害薬はオラパリブであってよい。
【0024】
本明細書のいずれの例も、別段に特に述べられていない限り、必要な変更を加えて、いずれの他の例にも当てはまると解釈されるものとする。
【0025】
本開示は、本明細書に記載の具体的な実施例によって範囲を限定されることはなく、それらは、例示の目的のために意図されているにすぎない。機能的に均等な生成物、組成物及び方法は明らかに、本明細書に記載のとおり、本開示の範囲内である。
【0026】
本明細書を通じて、別段に具体的に述べられていない限り、または別段に文脈が必要としていない限り、単一のステップ、物質組成、ステップの群または物質組成の群についての言及は、それらのステップ、物質組成、ステップの群または物質組成の群のうちの1つ及び複数(すなわち1つまたは複数)を包含すると解釈されることとする。
【0027】
本明細書において下記では、本開示を、次の非限定的実施例に従って、かつ添付の図面を参照することによって記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】還元型及び変性バリアントのSDS-PAGE分析の結果を示す画像である。
【
図2】非還元型バリアントのSDS-PAGE分析の結果を示す画像である。
【
図3】核透過のアルカリホスファターゼベースの検査の結果を示す画像である。
【
図4】核透過のアルカリホスファターゼベースの検査の定量分析を示すプロットである。
【
図5-1】核透過のアルカリホスファタゼ-ベースの検査の定量分析のヒストグラムである。
【
図5-2】核透過のアルカリホスファタゼ-ベースの検査の定量分析のヒストグラムである。
【
図6】核透過の免疫蛍光ベースの検査の結果を示す画像である。
【
図7】核透過の免疫蛍光ベースの検査の定量分析を示すプロットである。
【
図8】パネルAは、PTEN有能及びPTEN欠損がん細胞におけるDNA損傷の蓄積を示す例示的な画像である。パネルBは、PTEN有能及びPTEN欠損がん細胞におけるDNA損傷の蓄積を示すヒストグラムである。
【
図9】PTEN欠損がん細胞の細胞生存率を示すヒストグラムである。
【
図10】パネルAは、BRCA2有能及びBRCA2欠損がん細胞におけるDNA損傷の蓄積を示す例示的な画像である。パネルBは、BRCA2有能及びBRCA2欠損がん細胞におけるDNA損傷の蓄積を示すヒストグラムである。
【
図11】ジ-scFv(配列番号41)は、HDR欠損DLD-1結腸癌細胞核を透過する。
【
図12】ジ-scFv(配列番号41)は、HDR欠損MCF-7乳癌細胞核を透過する。
【
図13】HDR欠損がん細胞においてジ-scFv(配列番号41)及びPARP阻害薬によって媒介される、相加を上回る細胞死(
*p<0.05、単独のオラパリブまたはジ-scFvと比較)。
【
図14】ジ-scFv(配列番号41)は、一次ヒト神経膠芽細胞腫細胞を死滅させる。
【
図15】ジ-scFv(配列番号41)は、ヒト神経膠芽細胞腫球を透過し(A)、かつスフェア体積を時間依存的(B)に、かつ用量依存的(C)に縮小させる。
【
図16】神経膠芽細胞腫の同所マウスモデルにおけるジ-scFv(配列番号41)のインビボ評価である。a)対照またはジ-scFv(配列番号41)で処置されたマウスからの代表的なH&E染色脳切片及び対応する面積定量化(
*P<0.04、n=3)。b)TUNEL染色の代表的な顕微鏡写真、及び対応するTUNEL陽性細胞のパーセンテージ。
*は、一元ANOVA検定によって決定されたP≦0.05を示す。c)腫瘍及び隣接脳組織においてジ-scFv(配列番号41)を比較するためのプロテインLベースの免疫染色。d)生存試験におけるマウスの体重(グラム)プロファイル(n=7)。e)対照PBS対ジ-scFv(配列番号41)処置アームでの生存データ(n=7、P=0.02、マンテル・コックス検定)。
【
図17】フォーカス蓄積に対するジ-scFv(配列番号41)の効果。HDR欠損DLD1及びU251細胞において、24時間のPAT-DX1及び併用処理(複数可)後に、P53BP1陽性細胞のパーセンテージが上昇した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
配列表の要点
配列番号1 - 重鎖CDR1 KABAT
配列番号2 - 重鎖CDR2(バリアント2~4、6~8、10~12)KABAT
配列番号3 - 重鎖CDR2(バリアント13~19)KABAT
配列番号4 - 重鎖CDR3 KABAT
配列番号5 - 軽鎖CDR1(バリアント2~4、6~8、10~12)KABAT
配列番号6 - 軽鎖CDR1(バリアント13~19)KABAT
配列番号7 - 軽鎖CDR2 KABAT
配列番号8 - 軽鎖CDR3 KABAT
配列番号9 - 重鎖CDR1 IMGT
配列番号10 - 重鎖CDR2(バリアント2~4、6~8、10~12)IMGT
配列番号11 - 重鎖CDR2(バリアント13~19)IMGT
配列番号12 - 重鎖CDR3 IMGT
配列番号13 - 軽鎖CDR1(バリアント2~4、6~8、10~12)IMGT
配列番号14 - 軽鎖CDR1(バリアント13~19)IMGT
配列番号15 - 軽鎖CDR2 IMGT
配列番号16 - 軽鎖CDR3 IMGT
配列番号17 - 重鎖可変領域(バリアント2、6及び10)
配列番号18 - 重鎖可変領域(バリアント3、7及び11)
配列番号19 - 重鎖可変領域(バリアント4、8及び12)
配列番号20 - 重鎖可変領域(バリアント6及び10)
配列番号21 - 重鎖可変領域(バリアント13、16及び19)
配列番号22 - 重鎖可変領域(バリアント14及び17)
配列番号23 - 重鎖可変領域(バリアント15及び18)
配列番号24 - 軽鎖可変領域(バリアント2、3及び4)
配列番号25 - 軽鎖可変領域(バリアント6、7及び8)
配列番号26 - 軽鎖可変領域(バリアント10、11及び12)
配列番号27 - 軽鎖可変領域(バリアント13、14及び15)
配列番号28 - 軽鎖可変領域(バリアント16、17及び18)
配列番号29 - 軽鎖可変領域(バリアント19)
配列番号30 - リンカー配列1
配列番号31 - リンカー配列2
配列番号32 - バリアント2
配列番号33 - バリアント3
配列番号34 - バリアント4
配列番号35 - バリアント6
配列番号36 - バリアント7
配列番号37 - バリアント8
配列番号38 - バリアント10
配列番号39 - バリアント11
配列番号40 - バリアント12
配列番号41 - バリアント13
配列番号42 - バリアント14
配列番号43 - バリアント15
配列番号44 - バリアント16
配列番号45 - バリアント17
配列番号46 - バリアント18
配列番号47 - バリアント19
配列番号48 - 重鎖可変領域マウス(D31N)抗DNA結合抗体
配列番号49 - 軽鎖可変領域マウス(D31N)抗DNA結合抗体
配列番号50 -(D31N)P.pastorisから産生されたマウス原型
配列番号51 - DNA配列バリアント2
配列番号52 - DNA配列バリアント3
配列番号53 - DNA配列バリアント4
配列番号54 - DNA配列バリアント6
配列番号55 - DNA配列バリアント7
配列番号56 - DNA配列バリアント8
配列番号57 - DNA配列バリアント10
配列番号58 - DNA配列バリアント11
配列番号59 - DNA配列バリアント12
配列番号60 - DNA配列バリアント13
配列番号61 - DNA配列バリアント14
配列番号62 - DNA配列バリアント15
配列番号63 - DNA配列バリアント16
配列番号64 - DNA配列バリアント17
配列番号65 - DNA配列バリアント18
配列番号66 - DNA配列バリアント19
配列番号67 -(GGGGS)3リンカー
配列番号68 - 3E10ヒトIgG1 L2345A/L235A重鎖全長配列
配列番号69 - 3E10ヒトIgG1定常重領域1
配列番号70 - 3E10ヒトIgG1ヒンジ領域
配列番号71 - 3E10ヒトIgG1 L2345A/L235A定常重領域2
配列番号72 - 3E10ヒトIgG1定常重領域3
配列番号73 - 3E10ヒトIgG1 N297D重鎖全長配列
配列番号74 - 3E10ヒトIgG1 N297D定常重領域2
配列番号75 - 3E10ヒトIgG1 L2345A/L235A/N297D重鎖全長配列
配列番号76 - 3E10ヒトIgG1 L2345A/L235A/N297D定常重領域2
配列番号77 - 未修飾定常重鎖領域2
配列番号78 - 軽鎖全長配列
【0030】
本発明の詳細な説明
一般的技術及び選択定義
別段に特に定義されていない限り、本明細書で使用されている専門及び科学用語はすべて、当技術分野(例えば、分子生物学、生化学、抗体、一本鎖可変断片などの抗体断片、及び臨床研究)における当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有すると解釈されることとする。
【0031】
「細胞透過(性)」という用語は、本開示の文脈では、生哺乳類細胞の核に輸送されて、DNA(例えば、一本鎖及び/または二本鎖DNA)に結合する抗原結合断片などの抗DNA結合タンパク質を指すために使用される。一例では、細胞透過性抗DNA結合タンパク質は、担体またはコンジュゲートの援助なしに、細胞の核に輸送される。
【0032】
「抗DNA結合タンパク質」という用語は、本開示の文脈では、DNAに結合し得るタンパク質を指すために使用される。例示的な結合タンパク質には、免疫グロブリン、抗体及び抗原結合断片が含まれる。結合タンパク質の他の例は、下で論述する。
【0033】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンドメインを含む任意の抗DNA結合タンパク質を含むと理解されるであろう。例示的な免疫グロブリンは、抗体である。「免疫グロブリン」という用語に包含される追加のタンパク質には、ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体及び軟骨魚類に由来する抗体(すなわち、免疫グロブリン新抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor)(IgNAR))が含まれる。一般に、ラクダ科動物抗体及びIgNARは、VHを含むがVLを欠き、多くの場合に、重鎖免疫グロブリンと称される。他の「免疫グロブリン」には、T細胞受容体が含まれる。
【0034】
「抗体」という用語は、本開示の文脈では、特定の抗原と免疫学的に反応性な免疫グロブリン分子を指すために使用され、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方を含む。この用語にはまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)などの遺伝子操作された形態が含まれる。「抗体」という用語にはまた、抗原結合能を有する断片(例えば、Pierce Catalogue and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York(1998)に論述されているとおりのFab’、F(ab’)2、Fab、Fv及びrIgG)を含む抗体の抗原結合形態が含まれる。この用語は、組み換え一本鎖Fv断片(scFv)、さらにはその二価(ジ-scFv)及び三価(トリ-scFV)形態を指すためにも使用される。抗体という用語にはまた、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディが含まれる。二価及び二重特異性分子の例は、Kostelny et al.(1992)J Immunol 148:1547、Pack and Pluckthun(1992)Biochemistry 31:1579、Hollinger et al.,1993,supra、Gruber et al.(1994)J.Immunol.:5368、Zhu et al.(1997)Protein Sci 6:781、Hu et al.(1996)Cancer Res.56:3055、Adams et al.(1993)Cancer Res.53:4026、及びMcCartney,et al.(1995)Protein Eng.8:301に記載されている。
【0035】
抗体の「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の1つまたは複数の可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体、抗体断片から形成される一本鎖抗体分子及び多重特異性抗体が含まれる。例えば、抗原結合断片という用語は、組み換え一本鎖Fv断片(scFv)、さらには、その二価(ジ-scFv)及び三価(トリ-scFV)形態を指すために使用され得る。そのような断片は、当技術分野で公知の様々な方法によって生成され得る。例えば、本開示に包含されるジ-scFvを、下の実施例1に記載の方法によって生成及び精製することができる。
【0036】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」または「全抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、全抗体には、Fc領域を含めて、重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであってよい。
【0037】
本明細書で使用する場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合する、本明細書で定義するとおりの抗体の軽鎖及び/または重鎖の部分を指し、例えば、CDR、すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3、ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む。例えば、可変領域は、3つまたは4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3及び任意選択でFR4)を3つのCDRと一緒に含む。VHは、重鎖の可変領域を指す。VLは、軽鎖の可変領域を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「相補性決定領域」という用語(同意語はCDR、すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3)は、その存在が特異的な抗原結合の主な一因である抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は典型的には、CDRl、CDR2及びCDR3として同定される3つのCDR領域を有する。一例では、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991(本明細書では「Kabatナンバリングシステム」または「Kabat」とも称される)に従って定義される。
【0039】
可変ドメインのための補正または代替ナンバリングシステムを含む他の規則には、IMGT(Lefranc,et al.(2003),Dev Comp Immunol 27:55-77)、Chothia(Chothia C,Lesk AM(1987),J Mal Biol 196:901-917、Chothia,et al.(1989),Nature 342:877-883)及びAHo(Honegger A,Pluckthun A(2001)J Mol Biol 309:657-670)が含まれる。便宜的に、本開示の結合タンパク質の例は、IMGTに従って標識されることもある。これらの例は、そのように明確に示される。例えば、配列番号9~16を参照されたい。
【0040】
「フレームワーク領域」(同意語はFR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0041】
本明細書で使用する場合の「定常領域」という用語は、可変領域以外の抗体の重鎖または軽鎖の部分を指す。重鎖では、定常領域は一般に、複数の定常ドメイン及びヒンジ領域を含み、例えば、IgG定常領域は、次の連結した構成要素、定常重鎖CH1、リンカー、CH2及びCH3を含む。重鎖では、定常領域はFcを含む。軽鎖では、定常領域は一般に、1つの定常ドメイン(CL1)を含む。
【0042】
「結晶性断片」または「Fc」または「Fc領域」または「Fc部分」(本明細書では互換的に使用され得る)という用語は、少なくとも1つの定常ドメインを含む抗体の領域を指し、それは一般に(必ずではないが)、グリコシル化され、1つまたは複数のFc受容体及び/または補体カスケードの構成要素に結合することができる。重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ、α、δ、ε、γ、またはμのいずれかから選択され得る。例示的な重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、及びガンマ3(IgG3)、またはそれらのハイブリッドである。
【0043】
「定常ドメイン」は、抗体におけるドメインであり、その配列は、抗体/同じ種類の抗体、例えば、IgGまたはIgMまたはIgEで非常に類似している。抗体の定常領域は一般に、複数の定常ドメインを含み、例えば、γ、α、またはδ重鎖の定常領域は、2つの定常ドメインを含む。
【0044】
「ネイキッド」という用語は、別の化合物、例えば、毒性化合物または放射標識にコンジュゲートしていない本開示の結合タンパク質を指すために使用される。例えば、「ネイキッド」という用語は、別の化合物にコンジュゲートしていないジ-scFvなどの結合タンパク質を指すために使用され得る。したがって、一例では、本開示の結合タンパク質は「ネイキッド」である。言い換えると、本開示の結合タンパク質は、コンジュゲートされていなくてよい。
【0045】
対照的に、「コンジュゲートされている」という用語は、本開示の文脈では、別の化合物、例えば、細胞傷害性薬物または放射標識などの毒性化合物にコンジュゲートしている本開示の結合タンパク質を指すために使用されている。したがって、一例では、本開示の結合タンパク質は、「コンジュゲートされている」。
【0046】
本明細書で使用する場合の「細胞傷害性薬物」という用語は、細胞機能を阻害または妨害する、及び/または細胞死または破壊をもたらす物質を指す。細胞傷害性薬物には、これに限定されないが、放射性同位体(例えば、At211、1131、1125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi、P、Pb及びLuの放射性同位体)、化学療法薬または薬物(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤)、成長阻害剤、核酸分解酵素などの酵素及びその断片、抗生物質、その断片及び/またはバリアントを含む細菌、真菌、植物または動物由来の小分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素、ならびに下記に開示の様々な抗腫瘍または抗がん剤が含まれる。
【0047】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」などの用語は、外来核酸が導入されている細胞(そのような細胞の後代を含む)を指すために本開示の文脈で互換的に使用される。宿主細胞には、一次形質転換細胞及び継代数にかかわらず、それに由来する後代を含む「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれる。後代は、核酸内容において親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。当初の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物学的活性を有する変異後代は本明細書に含まれる。
【0048】
本開示による「単離核酸」は、その天然環境の構成要素から分離されている核酸分子である。単離核酸は、核酸分子を普通は含有する細胞中に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0049】
基準ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列同士をアラインさせ、かつ必要な場合には、ギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後に、かついずれの保存的置換も配列同一性の一部としてみなさなかった場合に、基準ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一な、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントは、当業者の技能の範囲内である様々な方法で、例えば、公共利用可能なコンピューターソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含めて、配列をアラインさせるために適切なパラメーターを決定することができる。
【0050】
本明細書で使用する場合、結合タンパク質及び抗原の相互作用に関する「結合する」という用語は、その相互作用が抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存していることを意味する。例えば、結合タンパク質は、一般に抗原ではなく、特異的な抗原構造を認識し、それに結合する。例えば、ある結合タンパク質がエピトープ「A」に結合する場合、標識「A」及びその結合タンパク質を含有する反応において、エピトープ「A」を含有する分子(または遊離の非標識「A」)の存在は、結合タンパク質に結合する標識「A」の量を減少させるであろう。
【0051】
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」という用語は、結合タンパク質とDNAとの間の結合相互作用が、結合タンパク質によるDNAの検出に左右されることを意味すると解釈されることとする。したがって、結合タンパク質は、他の分子または生体の混合物中に存在する場合にも、DNAに優先的に結合またはそれを優先的に認識する。
【0052】
一例では、結合タンパク質は、代替の抗原または細胞と反応または会合するよりも、より頻繁に、より迅速に、より長い持続期間で、及び/またはより高い親和性で、DNAと反応または会合する。この定義を読むことによって、例えば、DNAに特異的に結合する結合タンパク質が第2の抗原に特異的に結合しても、または結合しなくてもよいことも理解される。したがって、「特異的結合」は、排他的結合または別の抗原の検出不可能な結合を必ずしも必要としない。「特異的に結合する」という用語は、本明細書では「選択的に結合する」と互換的に使用され得る。一般に、本明細書における結合との言及は、特異的結合を意味し、かつ各用語は、その他の用語に対し明確な支持を与えると理解されることとする。特異的結合を決定するための方法は、当業者には明らかであろう。例えば、本開示の結合タンパク質を、DNAまたは代替抗原と接触させる。次いで、DNAまたは代替の抗原への結合タンパク質の結合を決定し、かつ代替の抗原ではなくDNAに上記のとおり結合する結合タンパク質をDNAに特異的に結合するとみなす。
【0053】
本開示による結合タンパク質及びそれを含む組成物は、対象に、様々な適応症を処置するために投与することができる。「対象」、「患者」または「個体」などの用語は、文脈において、本開示で互換的に使用され得る用語である。一例では、対象は哺乳類である。哺乳類は、イヌもしくはネコなどのコンパニオン動物、またはウマもしくはウシなどの家畜動物であってよい。一例では、対象はヒトである。例えば、対象は成人であってよい。別の例では、対象は小児であってよい。別の例では、対象は青年であってよい。
【0054】
本明細書で使用する場合、「処置」という用語は、臨床病理の経過中に、処置されている個体または細胞の自然な経過を変更するように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果には、疾患の進行速度を減速させること、病態を改善または緩和すること、及び寛解することまたは予後を改善することが含まれる。例えば、疾患に関連する1つまたは複数の症状が軽減または除去されるならば、個体は成功裏に「処置される」。
【0055】
本明細書で使用する場合、「予防」という用語は、個体において、疾患の発生または再発に関して予防をもたらすことを含む。個体は、疾患の発生または疾患の再発を起こしやすいか、またはそのリスクを有し得るが、まだ疾患または再発を有するとは診断されていない。
【0056】
「処置」という用語は、本明細書の文脈において、疾患、病的状態、または障害を治癒させる、改善させる、または安定化させる目的での患者の医学的管理を指すために使用される。「処置」という用語には、積極的な処置、すなわち、特に疾患、病的状態、または障害の改善を指向する処置が含まれ、また、原因的処置、すなわち、関連疾患、病的状態、または障害の原因の除去を指向する処置が含まれる。加えて、「処置」という用語には、姑息的処置、すなわち、疾患、病的状態、または障害の治癒ではなく、症状の軽減のために設計された処置、予防的処置、すなわち、関連疾患、病的状態、または障害の発生を最小限にする、または部分的もしくは完全に阻害することを指向する処置、及び支持的処置、すなわち、関連疾患、病的状態、または障害の改善を指向する別の特定の治療を補充するために用いられる処置が含まれる。
【0057】
「有効量」は、少なくとも、所望の治療または予防結果を達成するために必要な投薬及び期間で有効な量を指す。有効量を1回または複数回の投与で与えることもできる。本開示の一部の例では、「有効量」という用語は、下記の疾患または状態の処置を行うために必要な量を意味する。有効量は、処置される疾患または状態に応じて、また、処置されている対象に関連する体重、年齢、人種的背景、性別、健康状態及び/または体調ならびに他の要因に応じて変動し得る。典型的には、有効量は、医師によるルーチン的な試行及び実験によって決定することができる比較的広範囲(例えば、「投薬量」範囲)に該当するであろう。有効量を処置期間にわたって単回用量または1回もしくは複数回の反復用量で投与することができる。
【0058】
「治療有効量」は、少なくとも、特定の障害(例えば、がん)の測定可能な改善を得るのに必要とされる最小濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の病態、年齢、性別及び体重ならびに個体において結合タンパク質が所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて変動し得る。治療有効量はまた、治療上の有益効果が結合タンパク質の何らかの毒性または有害作用を上回る量である。がんの場合には、結合タンパク質の治療有効量は、がん細胞の数を減少させ得る、原発腫瘍のサイズを縮小させ得る、周辺器官へのがん細胞の浸潤を阻害し得る(すなわち、ある程度減速させ得る、及び一部の例では、停止させ得る)、腫瘍転位を阻害し得る(すなわち、ある程度減速させ得る、及び一部の例では、停止させ得る)、腫瘍成長または腫瘍進行をある程度阻害し得る、または遅延させ得る、及び/またはがんに関連する症状のうちの1つまたは複数をある程度緩和し得る。結合タンパク質はある程度、既存のがん細胞の成長を阻止し得る、及び/またはそれを死滅させ得るということにおいて、これは、細胞増殖抑制性及び/または細胞傷害性であり得る。がん治療では、インビボでの有効性を例えば、生存期間、無増悪期間(TTP)、奏功率(RR)、応答期間、及び/または生活の質を評価することによって測定することができる。
【0059】
脱免疫(deimmunized)、キメラ、ヒト化、合成ヒト化(synhumanized)、霊長類化及びヒト抗体または抗原結合断片
モノクローナル抗体は、本開示が企図する結合タンパク質の例示的な形態の1つである。「モノクローナル抗体」または「MAb」という用語は、同じ抗原(複数可)に、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することができる均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源または抗体が作製される手法に関して制限されることを意図されていない。
【0060】
一例では、本開示に包含される結合タンパク質は、「ヒト化」されていてもよい。「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDR(ドナー抗体)からの残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、移入されたCDRまたはフレームワーク配列においても見い出されない残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むこととなり、その際、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつフレームワーク(FR)領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。一例では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むこととなる(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992))。
【0061】
一例では、本開示の「ヒト」結合タンパク質は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基、例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的変異によって導入された変異を含み得る(特に、タンパク質の少数の残基、例えば、タンパク質の残基のうちの1、2、3、4または5個における保存的置換または変異を含む変異)。これらの「ヒト抗体」は必ずしも、ヒトの免疫応答の結果として生成される必要はなく、むしろそれらは、組み換え手段(例えば、ファージディスプレイライブラリのスクリーニング)を使用して、及び/またはヒト抗体定常及び/または可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)によって、及び/またはガイド選択(guided selection)(例えば、米国特許第5,565,332号に記載のとおり)を使用して生成され得る。この用語はまた、そのような抗体の親和性成熟形態を包含する。
【0062】
別の例では、本開示によって包含される結合タンパク質は、合成ヒト化されていてもよい。「合成ヒト化」という用語は、WO2007/019620に記載の方法によって調製される抗体を指す。合成ヒト化抗体は抗体の可変領域を含み、その際、可変領域は、新世界霊長類抗体可変領域からのFR及び非新世界霊長類抗体可変領域からのCDRを含む。
【0063】
別の例では、本開示の結合タンパク質は、霊長類化されていてもよい。「霊長類化抗体」は、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)の免疫化後に生成される抗体からの可変領域(複数可)を含む。一例では、非ヒト霊長類抗体の可変領域をヒト定常領域に連結して、霊長類化抗体を生成する。霊長類化抗体を生成するための例示的な方法は米国特許第6,113,898号に記載されている。
【0064】
一例では、本開示の結合タンパク質は、キメラ抗体または断片である。「キメラ抗体」または「キメラ抗原結合断片」という用語は、可変ドメインのうちの1つまたは複数が特定の種(例えば、マウスまたはラットなどのネズミ)に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属している一方で、抗体または断片の残りが、別の種(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類など)に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属している抗体または断片を指す。一例では、キメラ抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)に由来するVH及び/またはVLを含み、抗体の残りの領域は、ヒト抗体に由来する。
【0065】
本開示はまた、例えば、WO2000/34317及びWO2004/108158に記載されているとおりの脱免疫化抗体またはその抗原結合断片を企図する。脱免疫化抗体及び断片は、1種または複数のエピトープ、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープが除去されていて(すなわち、変異していて)、それによって、対象が抗体またはタンパク質に対する免疫応答を起こす可能性が低下している。例えば、本開示の抗体を分析して、1種または複数のBまたはT細胞エピトープを同定し、そのエピトープ内の1個または複数のアミノ酸残基を変異させて、それによって、抗体の免疫原性を低下させる。
【0066】
抗体断片
単一ドメイン抗体
一部の例では、本開示の結合タンパク質は、単一ドメイン抗体(「ドメイン抗体」または「dAb」という用語と互換的に使用される)であるか、またはそれを含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部を含む単一ポリペプチド鎖である。
【0067】
一本鎖Fv(scFv)断片
当業者は、scFvが、単一ポリペプチド鎖中のVH及びVL領域、ならびに抗原結合のために(すなわち、単一ポリペプチド鎖のVH及びVLが相互に会合してFvを形成するために)望ましい構造をscFvが形成することを可能にするVHとVLとの間のポリペプチドリンカーを含むことを認めるであろう。一本鎖可変断片は、完全抗体分子中に存在する定常Fc領域を欠いており、したがって、低下した免疫原性を有し得る。例示的なリンカーは、12個よりも多くのアミノ酸残基を含み、その際、(Gly4Ser)3が、scFvのためのより好ましいリンカーの1つである。適切なリンカーの別の例が、配列番号31で示されている。
【0068】
本開示はまた、単一のシステイン残基がVHのFR及びVLのFRに導入されていて、それらのシステイン残基がジスルフィド結合によって連結されて安定なFvをもたらしているジスルフィド安定化Fv(またはdiFvまたはdsFv)を企図している。
【0069】
別の例では、本開示は、二量体scFv(ジ-scFV)、すなわち、非共有結合もしくは共有結合によって、例えば、ロイシンジッパードメイン(例えば、FosまたはJunに由来)によって連結した2個のscFv分子を含むタンパク質、または三量体scFV(トリ-scFv)を包含する。別の例では、2個のscFvは、例えば、米国特許出願公開第20060263367号に記載されているとおりの、両方のscFvが形成し、かつ抗原に結合することを可能にする十分な長さのペプチドリンカーによって連結される。
【0070】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
一部の例では、本開示の抗原結合断片は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディまたはWO98/044001及び/またはWO94/007921に記載のものなどのより高次のタンパク質複合体であるか、またはそれを含む。
【0071】
例えば、ダイアボディは、2つの会合したポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、その際、各ポリペプチド鎖は、構造式VL-X-VHまたはVH-X-VLを含み、式中、Xは、単一のポリペプチド鎖中のVH及びVLが会合する(またはFvを形成する)ことを可能にするには不十分な残基を含むリンカーであるか、または存在せず、一方のポリペプチド鎖のVHが他方のポリペプチド鎖のVLに結合して、抗原結合部位を形成している、すなわち、1つまたは複数の抗原に特異的に結合し得るFv分子を形成している。VL及びVHは、各ポリペプチド鎖中で同じであってよいか、またはVL及びVHは、二重特異性ダイアボディを形成するように、各ポリペプチド鎖中で異なってよい(すなわち、異なる特異性を有する2つのFvを含む)。
【0072】
他の抗体及び抗体断片
本開示に包含される結合タンパク質の他の例には、
(i)米国特許第5,731,168号に記載されているとおりの「キー・アンド・ホール」二重特異性タンパク質、
(ii)例えば、米国特許第4,676,980号に記載のとおりのヘテロコンジュゲートタンパク質、
(iii)例えば、米国特許第4,676,980号に記載のとおりの化学的クロス-リンカーを使用して生成されるヘテロコンジュゲートタンパク質、及び
(iv)Fab3(例えば、欧州特許第19930302894号に記載のとおり)
が含まれる。
【0073】
免疫グロブリン及び免疫グロブリン断片
本開示の結合タンパク質の例は、T細胞受容体などの免疫グロブリンの可変領域を含むタンパク質(例えば、抗体模倣物質)または重鎖免疫グロブリン(例えば、IgNAR、ラクダ科動物抗体)である。
【0074】
V様タンパク質
本開示の結合タンパク質の一例は、T細胞受容体である。T細胞受容体は、組み合わさって抗体のFvモジュールと同様の構造になる、2つのVドメインを有する。Novotny et al.,Proc Natl Acad Sci USA 88:8646-8650,1991は、どのようにT細胞受容体の2つのVドメイン(アルファ及びベータと称される)が融合され、一本鎖ポリペプチドとして発現されるか、さらに、抗体scFvに類似の疎水性を直接的に低下させるためにどのようにして表面残基を変えるかを記載している。一本鎖T細胞受容体、または2つのV-アルファ及びV-ベータドメインを含む多量体T細胞受容体の生成を記載している他の刊行物には、WO1999/045110またはWO2011/107595が含まれる。
【0075】
抗原結合ドメインを含む他の非抗体タンパク質には、一般に単量体である、V様ドメインを有するタンパク質が含まれる。そのようなV様ドメインを含むタンパク質の例には、CTLA-4、CD28、及びICOSが含まれる。そのようなV様ドメインを含むタンパク質のさらなる本開示は、WO1999/045110に含まれる。
【0076】
アフィボディ
さらなる一例では、本開示の結合タンパク質は、アフィボディである。アフィボディは、抗原に結合するよう操作されることができる、Staphylococcus aureusのプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来するスキャフォールドである。Zドメインは、約58アミノ酸の3つのヘリックスの束からなる。ライブラリは、表面残基のランダム化によって生成されている。さらなる詳細については、欧州特許第1641818号を参照されたい。
【0077】
アビマー
さらなる一例では、本開示の結合タンパク質は、アビマーである。アビマーは、Aドメインスキャフォールドファミリーに由来するマルチドメインタンパク質である。約35アミノ酸の天然ドメインは規定のジスルフィド結合構造を取る。多様性は、Aドメインのファミリーによって示される天然変形のシャッフルによって生成される。さらなる詳細については、WO2002/088171号を参照されたい。
【0078】
結合タンパク質
一例では、本開示による抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有する重鎖可変領域(VH)を含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。
【0079】
別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0080】
別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0081】
上に例示の結合タンパク質はまた、IMGTシステムを使用して割り当てられたCDRを有してもよい。したがって、別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。
【0082】
別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0083】
別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0084】
別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号18に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号23に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号25に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号18に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号25に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号23に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。これらの例では、VH及び/またはVLは、列挙した配列番号と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得る。
【0085】
別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVHを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号18に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号23に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号25に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVLを含む。例えば、抗DNA結合タンパク質は、配列番号18に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号25に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号23に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。
【0086】
一例では、抗DNA結合タンパク質は、DNAに結合する、または特異的に結合する抗原結合ドメインを有する細胞透過性抗DNA Fv断片であり得る。例えば、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と同じエピトープに結合し得る。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと同じエピトープに結合し得る。一例では、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含む。例えば、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。
【0087】
別の例では、Fvは、配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、Fvは、配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0088】
別の例では、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0089】
上に例示のFvはまた、IMGTシステムを使用して割り当てられるCDRを有してもよい。したがって、別の例では、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含む。例えば、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。
【0090】
別の例では、Fvは、配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、Fvは、配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0091】
別の例では、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0092】
別の例では、Fvは、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含む。例えば、Fvは、配列番号18に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号23に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含む。例えば、Fvは、配列番号25に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含む。例えば、Fvは、配列番号18に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号25に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号23に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。これらの例では、VH及び/またはVLは、列挙した配列番号と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得る。これらの例では、Fvは、CDRの上で言及した組み合わせを有し得る。例えば、Fvは、配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得、その際、VHは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有し、かつVLは、配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有する。
【0093】
別の例では、Fvは、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVHを含む。例えば、Fvは、配列番号18に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号21に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号23に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVLを含む。例えば、Fvは、配列番号25に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVLを含む。例えば、Fvは、配列番号18に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号25に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号21に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、Fvは、配列番号23に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。
【0094】
別の例では、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、改善された製造可能性を有する。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと比較して、改善された製造可能性を有する。
【0095】
改善された製造可能性は、脱アミド部位、アスパラギン酸塩異性化部位、メチオニン及びトリプトファンなどの酸化部位、遊離システインチオール基、N&O-グリコシル化部位、C末端リシン及び/または等電点の存在の数の減少に関連する翻訳後修飾または化学的安定性の上昇を含む。
【0096】
一例では、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないアスパラギンを含む。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないアスパラギンを含む。
【0097】
一例では、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないメチオニンを含む。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないメチオニンを含む。
【0098】
一例では、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないトリプトファンを含む。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないトリプトファンを含む。
【0099】
一例では、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないアスパラギン酸を含む。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと比較して、VH及び/またはVL中に、より少ないアスパラギン酸を含む。
【0100】
一例では、Fvの物理的安定性は、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質よりも高い。別の例では、Fvの物理的安定性は、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvよりも高い。
【0101】
物理的安定性は、溶液中で凝集する性質を含み得る。「凝集」という用語は、本開示の文脈において、細胞培養及び発酵から単離、精製及び製剤プロセスまでの複数の環境中で生じ得るタンパク質自己会合を指すために使用される。例えば、「凝集」という用語は、特に、包含物の形成、細胞分画後の「不溶性」画分中でのタンパク質の蓄積、試料中での混濁、タンパク質沈殿もしくは粒子形成の出現、または小さな可溶性オリゴマーの形成について記載する場合に使用され得る。
【0102】
したがって、上で言及した例では、Fvの物理的安定性は、溶液中でのその物理的安定性に基づき得て、その際、溶液からのFvの沈殿は、Fvが不安定になっていることを示す。物理的安定性を評価するために、本開示によるFv、または配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質もしくは配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvのいずれかを含む溶液を4℃でインキュベートし、かつ2週間目、4週間目、12週間目、6か月目及び12か月目に沈殿について肉眼で評価することができる。
【0103】
一例では、本開示によるFvの物理的安定性は、Fvを少なくとも4週間にわたって4℃で溶液中にとどめた場合に、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質または配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvよりも高い。一例では、本開示によるFvの物理的安定性は、Fvを少なくとも6か月にわたって4℃で溶液中にとどめた場合に、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質または配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvよりも高い。
【0104】
別の例では、Fvは、ヒト対象において、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低下した免疫原性を有する。例えば、Fvは、免疫原性を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定した場合に、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低下した免疫原性を有し得る。別の例では、Fvは、免疫原性を表面プラスモン共鳴によって測定した場合に、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低下した免疫原性を有し得る。
【0105】
別の例では、細胞を透過するFvの能力は、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質よりも高い。別の例では、細胞を透過するFvの能力は、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvよりも高い。別の例では、細胞核を透過するFvの能力は、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質よりも高い。別の例では、細胞核を透過するFvの能力は、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvよりも高い。例えば、ジ-scFvは、配列番号36に示されているとおりのアミノ酸配列を含み得る。別の例では、ジ-scFvは、配列番号41に示されているとおりのアミノ酸配列を含み得る。別の例では、ジ-scFvは、配列番号43に示されているとおりのアミノ酸配列を含み得る。上で言及した例では、細胞または細胞核を透過する結合タンパク質の能力は、比色アッセイを使用して測定することができる。例えば、細胞を、対照培地、本開示による結合タンパク質または配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質もしくは配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvのいずれかで1時間にわたって処理することができる。次いで、細胞を洗浄し、固定し、1%BSA-TBSTで遮断し、次いで、プロテインLで1時間にわたってプローブする。次いで、細胞を洗浄し、抗プロテインL一次抗体と共に1時間にわたってインキュベートする。別のラウンドの洗浄後に、細胞をアルカリホスファターゼ-コンジュゲートした二次抗体と共に1時間にわたってインキュベートする。最後に、細胞を洗浄し、シグナルをNBT/BCIPの添加によって発生させる。明瞭な核染色を試料のいずれかにおいて同定することができると、シグナルの発生をNBT/BCIPの除去及び洗浄によって停止する。次いで、核及びまたは細胞染色を、Image Jを使用して測定する。
【0106】
一例では、少なくとも190の吸光度単位(au)の相反強度(reciprocal intensity)を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。一例では、少なくとも200auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。一例では、少なくとも210auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。一例では、少なくとも220auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、細胞核を透過するFvの能力を、個々の細胞の蛍光を測定することによって評価することができる。一例では、少なくとも20個の細胞で少なくとも190auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも30個の細胞で少なくとも190auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも40個の細胞で少なくとも190auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも20個の細胞で少なくとも200auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも30個の細胞で少なくとも200auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも50個の細胞で少なくとも200auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも70個の細胞で少なくとも200auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。別の例では、少なくとも80個の細胞で少なくとも200auの相反強度を有する核染色をもたらすFvは、細胞核を透過する高い能力を有する。
【0107】
別の例では、Fvは、DNAについて、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質よりも高い特異性を有する。別の例では、Fvは、DNAについて、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvよりも高い特異性を有する。
【0108】
別の例では、Fvは、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低い交差反応性(すなわち、異なるタンパク質上の同様の抗原部位と反応するFvの能力)を有する。別の例では、Fvは、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと比較して、低い他の標的との交差反応性を有する。この例では、Fvの交差反応性を、様々な方法を使用して測定することができる。一例では、交差反応性をELISAによって評価する。
【0109】
別の例では、Fvは、DNAについて、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質よりも高い結合親和性を有する。別の例では、Fvは、DNAについて、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvよりも高い結合親和性を有する。
【0110】
上で言及した例では、DNAについてのFvの親和性は、様々な方法を使用して測定することができる。一例では、DNAについての結合タンパク質の解離定数(KD)または会合定数(KA)または平衡定数(KD)を決定する。結合タンパク質についてのこれらの定数を一例では、放射標識または蛍光標識DNA結合アッセイによって測定する。このアッセイでは、結合タンパク質を、未標識DNAの滴定列の存在下で、最小濃度の標識DNA(または、例えば、Fc領域に融合しているDNAの細胞外領域を含むその可溶性形態)と平衡化させる。未結合DNAを除去するための洗浄後に、標識の量を決定する。
【0111】
親和性の測定は、抗体反応のための標準的な方法論、例えば、イムノアッセイ、表面プラスモン共鳴(SPR)(Rich and Myszka Curr.Opin.Biotechnol 11:54,2000、Englebienne Analyst.123:1599,1998)、等温滴定熱量測定(ITC)または当技術分野で公知の他の動力学的相互作用アッセイによって決定することができる。
【0112】
一例では、定数を、表面プラスモン共鳴アッセイを使用すること、例えば、固定化DNAを用いるBIAcore表面プラスモン共鳴(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用することによって測定する。例示的なSPR方法は、米国特許第7,229,619号に記載されている。
【0113】
一部の実施形態では、DNAについてのFvの結合親和性は、約5nMと約100pM、10pM、1pM、100fM、10fM、または1fMとの間である。
【0114】
一例では、本開示により包含されるFvは、DNAについて、約5nM以下、または約4.9nM、または約4.8nM、または約4.7nM、または約4.6nM、または約4.7nM、または約4.6nM、または約4.5nM、または約4.4nM、または約4.3nM、または約4.2nM、または約4.1nM、または約4.0nM、または約3.9nM、または約3.8nM、または約3.7nM、または約3.6nM、または約3.5nM、または約3.4nM、または約3.3nM、または約3.2nM、または約3.1nM、または約3.0nMに匹敵する結合親和性を有する。
【0115】
他の例では、本Fvは、表面プラスモン共鳴(例えば、BIAcore3000装置を使用)によって測定した場合に、DNAについて約100pM、または約150pM、または約200pM、または約250pM、または約300pM、または約350pM、または約400pM、または約450pM、または約466pMに匹敵する結合親和性を有し得る。
【0116】
他の例では、DNAについての結合タンパク質の親和性を、Isothermal Titration Microcalorimetryを使用して測定することができる。
【0117】
一例では、Fvはリンカーを含む。様々な適切なリンカー及びそれらを設計するための方法がすでに記載されている(例えば、米国特許第4,946,778号、WO1994/012520、及び米国特許第4,704,692号)。一例では、Fvは、グリシン-セリン(GS)リンカーを含む。例えば、GSリンカーは、(GGGGS)3(配列番号67)を含み得る。一例では、Fvは、配列番号30に示されている配列を有するリンカーを含む。別の例では、Fvは、配列番号31に示されている配列を有するリンカーを含む。別の例では、Fvは、配列番号30及び配列番号31に示されている配列を有するリンカーを含む。
【0118】
一例では、FvのVH及びVLは、単一のポリペプチド鎖中にあってよい。別の例では、Fvは、Fc領域を欠いている。例えば、Fvは、一本鎖Fv断片(scFv)、二量体scFv(ジ-scFv)、三量体scFv(トリ-scFv)であってよい。一例では、Fvは、scFvであってよい。別の例では、Fvは、ジ-scFvである。別の例では、Fvは、トリ-scFvである。
【0119】
別の例では、scFv、ジ-scFvまたはトリ-scFvは、抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメインCH2及び/またはCH3に連結していてよい。
【0120】
一例では、本開示は、DNAに結合する、または特異的に結合する抗原結合ドメインを有する細胞透過性ジ-scFvを包含する。
【0121】
一例では、本開示によるジ-scFvは、配列番号32~47のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号32に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号33に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号34に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号35に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号36に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号37に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号38に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号39に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号40に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号41に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号42に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号43に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号44に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号45に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号46に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号47に示されている配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。例えば、ジ-scFvは、配列番号32、36、41または43のいずれか1つに示されているアミノ酸配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。これらの例では、アミノ酸配列は、列挙した配列番号と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得る。
【0122】
一例では、本開示によるジ-scFvは、配列番号32~47のいずれか1つに示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号32に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号33に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号34に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号35に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号36に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号37に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号38に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号39に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号40に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号41に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号42に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号43に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号44に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号45に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号46に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。一例では、ジ-scFvは、配列番号47に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。例えば、ジ-scFvは、配列番号32、36、41及び43のいずれか1つに示されているとおりのアミノ酸配列を含み得る。
【0123】
別の例では、結合タンパク質のVH及びVLは、別々のポリペプチド鎖中にある。例えば、結合タンパク質は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab、F(ab’)2であってよい。別の例では、結合タンパク質は、VH及びVLを別々のポリペプチド鎖中に含むFvであり得る。これらの例では、結合タンパク質は、抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメインCH2及び/またはCH3に連結していてもよい。別の例では、結合タンパク質は、インタクトな抗体であってよい。したがって、一例では、本開示は、DNAに結合する、または特異的に結合する抗原結合ドメインを有する抗体を包含する。例えば、抗体は、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と同じエピトープに結合し得る。別の例では、抗体は、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を有するジ-scFvと同じエピトープに結合し得る。一例では、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含む。例えば、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る
【0124】
別の例では、抗体は、配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗体は、配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗DNA結合タンパク質は、配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0125】
別の例では、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2または配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5または配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0126】
上に例示の抗体はまた、IMGTシステムを使用して割り当てられたCDRを有してもよい。したがって、別の例では、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含む。例えば、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHを含み得る。
【0127】
別の例では、抗体は、配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗体は、配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0128】
別の例では、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10または配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13または配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。例えば、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号10に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号13に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号9に示されているとおりのCDR1、配列番号11に示されているとおりのCDR2及び配列番号12に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号14に示されているとおりのCDR1、配列番号15に示されているとおりのCDR2及び配列番号16に示されているとおりのCDR3を有するVLを含み得る。
【0129】
別の例では、抗体は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含む。例えば、抗体は、配列番号18に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号23に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含む。例えば、抗体は、配列番号25に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVHならびに配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含む。例えば、抗体は、配列番号18に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号25に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号23に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得る。これらの例では、VH及び/またはVLは、列挙した配列番号と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であり得る。これらの例では、抗体は、上で言及したCDRの組み合わせを有し得る。例えば、抗体は、配列番号21に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列と少なくとも95%同一な配列を含むVLを含み得、その際、VHは、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有し、かつVLは、配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有する。
【0130】
別の例では、抗体は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVHを含む。例えば、抗体は、配列番号18に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号21に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号23に示されているとおりの配列を含むVHを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVLを含む。例えば、抗体は、配列番号25に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号17~23のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号24~29のいずれか1つに示されているとおりの配列を含むVLを含む。例えば、抗体は、配列番号18に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号25に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号21に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。別の例では、抗体は、配列番号23に示されているとおりの配列を含むVH及び配列番号27に示されているとおりの配列を含むVLを含み得る。
【0131】
別の例では、上で言及した抗体は、配列番号69に示されているとおりの配列を含む定常重領域1を含み得る。別の例では、上で言及した抗体は、配列番号72に示されているとおりの配列を含む定常重領域3を含み得る。別の例では、上で言及した抗体は、配列番号70に示されているとおりの配列を含むヒンジ領域を含み得る。これらの例では、抗体は、配列番号27に示されているアミノ酸配列を含むVLを含み得る。例えば、抗体は、配列番号78に示されているアミノ酸配列を含み得る。
【0132】
別の例では、上で言及した抗体は、配列番号69に示されているとおりの配列を含む定常重領域1、配列番号72に示されているとおりの配列を含む定常重領域3、配列番号70に示されているとおりの配列を含むヒンジ領域及び配列番号71、74、76のいずれか1つに示されているとおりの配列を含む定常重領域2を含み得る。この例では、抗体は、配列番号27に示されているアミノ酸配列を含むVLを含み得る。例えば、抗体は、配列番号78に示されているアミノ酸配列を含み得る。
【0133】
別の例では、抗体は、配列番号68に示されているアミノ酸配列を有する。別の例では、抗体は、配列番号73に示されているアミノ酸配列を有する。別の例では、抗体は、配列番号75に示されているアミノ酸配列を有する。別の例では、抗体は、配列番号68、73または75のいずれか1つに示されているアミノ酸配列を有する。
【0134】
当技術分野で公知のとおり、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMなどの異なるアイソタイプで生じ得る。一例では、本開示によって包含される抗体は、IgGである。別の例では、本開示によって包含される抗体は、IgMである。
【0135】
一例では、本開示による抗体の物理的安定性は、対応するVH及びVL配列を有するscFvまたはジ-scFvなどのFvよりも高い。一例では、本開示による抗体の物理的安定性は、抗体を少なくとも4週間にわたって4℃で溶液中にとどめた場合に、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvよりも高い。一例では、本開示による抗体の物理的安定性は、抗体を少なくとも6か月間にわたって4℃で溶液中にとどめた場合に、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvよりも高い。
【0136】
別の例では、抗体は、ヒト対象において、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低下した免疫原性を有する。例えば、抗体は、免疫原性を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定した場合に、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低下した免疫原性を有し得る。別の例では、抗体は、免疫原性を表面プラスモン共鳴によって測定した場合に、配列番号48に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVH及び配列番号49に示されているとおりのアミノ酸配列を含むVLを有する結合タンパク質と比較して、低下した免疫原性を有し得る。
【0137】
別の例では、抗体は、ヒト対象において、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvと比較して、低下した免疫原性を有する。例えば、抗体は、免疫原性を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定した場合に、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvと比較して、低下した免疫原性を有し得る。別の例では、抗体は、免疫原性を表面プラスモン共鳴によって測定した場合に、配列番号50に示されているとおりのアミノ酸配列を含むジ-scFvと比較して、低下した免疫原性を有し得る。
【0138】
一例では、抗体は、修飾されたFc領域を有する。例えば、抗体Fc領域は、配列番号71に示されているとおりのアミノ酸配列を含み得る。別の例では、抗体Fc領域は、配列番号74に示されているとおりのアミノ酸配列を含む。別の例では、抗体は、配列番号76に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、配列番号71、74または76のいずれか1つに示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、3つのアミノ酸置換を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。この例では、アミノ酸置換のうちの2つは、配列番号77のアミノ酸1から10の間にある。別の例では、アミノ酸置換のうちの2つは、配列番号77のアミノ酸5から10の間にある。別の例では、アミノ酸置換のうちの2つは、配列番号77の7及び8位にある。これらの例では、第3のアミノ酸置換は、配列番号77のアミノ酸65から75の間にある。別の例では、第3のアミノ酸置換は、配列番号77のアミノ酸68から72の間にある。別の例では、第3のアミノ酸置換は、配列番号77のアミノ酸65から75の間にある。一例では、抗体は、L7A変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、L8A変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、N70D変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、L7A及びL8A変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、L7A及びN70D変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、L8A及びN70D変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。別の例では、抗体は、L7A、L8A及びN70D変異を有する配列番号77に示されているとおりのアミノ酸配列を含むFc領域を含む。
【0139】
上では、基準配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、重鎖及び軽鎖ポリペプチド配列、ならびにそのCDRを含む本開示の配列の変形形態が一般に提示されているが、より低い同一性を有するバリアントも明らかに本開示されている。したがって、一部の例では、DNA結合タンパク質は、配列番号32~47のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%同一なポリペプチドを含む。一部の実施形態では、DNA結合タンパク質は、配列番号32~47のいずれか(例えば、配列番号17~29のいずれか)の重鎖及び/または軽鎖のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%同一な可変重鎖及び/または軽鎖を含む。一部の実施形態では、DNA結合タンパク質は、配列番号32~47(例えば、配列番号1~16のいずれか)のいずれかのCDRのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%同一な1つまたは複数のCDRを含む。
【0140】
結合タンパク質の生成
組み換え発現
一例では、本明細書に記載のとおりの結合タンパク質は、ペプチドまたはポリペプチドである(例えば、抗体またはその抗原結合断片である)。一例では、結合タンパク質は組み換え体である。
【0141】
組み換えペプチドまたはポリペプチドの場合には、それらをコードする核酸を、発現ベクターにクローニングすることができ、次いで、それを、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、あるいはサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、または免疫グロブリンもしくは抗体タンパク質を他には産生しない骨髄腫細胞などの哺乳類細胞などの宿主細胞にトランスフェクトする。
【0142】
適切な分子クローニング技術は当技術分野で公知であり、例えば、Ausubel et al.,(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までのアップデート版を含む)またはSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている。広範囲の様々なクローニング及びインビトロ増幅方法が組み換え核酸の構築に適している。組み換え抗体を生成する方法も当技術分野で公知である。米国特許第4,816,567または米国特許第5,530,101を参照されたい。
【0143】
単離後に、核酸は、さらなるクローニング(DNA増幅)のために、または無細胞系もしくは細胞における発現のために、発現構築物または発現ベクター中のプロモーターに作動可能に連結して挿入される。したがって、本開示の別の例は、本開示の単離核酸及び1つまたは複数の追加のヌクレオチド配列を含む発現構築物を提供する。適切には、発現構築物は、当技術分野において理解されるように、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、酵母、または細菌性人工染色体の形態であるか、またはそれらの遺伝的構成要素を含む。発現構築物は、細菌もしくは他の宿主細胞における単離された核酸の維持及び増殖のために、組み換えDNA技術による操作のために、及び/または本開示の核酸または結合タンパク質の発現のために、適切であり得る。
【0144】
細胞において発現させるために多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素は一般に、限定されないが、次のうちの1つまたは複数を含む:シグナル配列、(例えば、本明細書に提供される情報に由来する)結合タンパク質をコードする配列、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。例示的なシグナル配列には、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、αファクターリーダー、または酸性ホスファターゼリーダー)、または哺乳類分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)が含まれる。
【0145】
哺乳類細胞において活性な例示的なプロモーターには、サイトメガロウイルス媒介初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、核内低分子RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要遅延プロモーター、β-アクチンプロモーター、CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター、または免疫グロブリンもしくは抗体プロモーターもしくはそれらの活性断片を含むハイブリッド調節エレメントが含まれる。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7、ATCC CRL1651)、ヒト胎児由来腎臓系(懸濁培養での成長のためにサブクローニングされた293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0146】
例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae及びS.pombeを含む群から選択される酵母細胞などの、酵母細胞における発現に適した典型的なプロモーターには、限定されないが、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、またはTEF1プロモーターが含まれる。
【0147】
単離核酸またはそれを含む発現構築物を発現のために細胞に導入する手段は当業者に公知である。所与の細胞のために使用される技術は既知の成功した技術による。組み換えDNAを細胞に導入する手段には、特に微量注入、DEAE-デキストランを媒介するトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco、MD、USA)及び/またはcellfectin(Gibco、MD、USA)を用いることなどによる、リポソームを媒介するトランスフェクション、PEG媒介性DNA取り込み、電気穿孔法及びDNAコーティングされたタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.、WI、USA)を用いることなどによる微粒子銃(microparticle bombardment)が含まれる。
【0148】
結合タンパク質(例えば、抗体または抗原結合断片)を生成するために使用される宿主細胞は、使用される細胞型に応じて、様々な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、Minimal Essential Medium((MEM),(Sigma)、RPMl-1640(Sigma)、及びDulbecco’s Modified Eagle’s Medium((DMEM),Sigma)などの市販の培地が哺乳類細胞を培養するために適している。本明細書で論述される他の細胞型を培養するための培地は当技術分野で公知である。
【0149】
当業者であれば、上述の記載から、本開示が本開示の結合タンパク質(例えば、ペプチドもしくはポリペプチド結合タンパク質または抗体もしくはその抗原結合断片)をコードする単離核酸も提供することを理解するであろう。
【0150】
本開示は、プロモーターに作動可能に連結した本開示の単離核酸を含む発現構築物も提供する。一例では、発現構築物は発現ベクターである。
【0151】
一例では、本開示の発現構築物は、プロモーターに作動可能に連結したポリペプチド(例えば、VHを含む)をコードする核酸及びプロモーターに作動可能に連結した別のポリペプチド(例えば、VLを含む)をコードする核酸を含む。
【0152】
本開示は、本開示による発現構築物を含む宿主細胞も提供する。
【0153】
本開示は、本開示の結合タンパク質を発現する単離細胞または結合タンパク質を発現するように遺伝子組み換えされた組み換え細胞も提供する。
【0154】
タンパク質の単離
本開示による結合タンパク質を精製するための方法は、当技術分野で公知であり、及び/または本明細書に記載されている。例を下の実施例1に示す。
【0155】
ペプチドまたはポリペプチドが培地に分泌される場合、このような発現系からの上清を先ず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を用いて濃縮することができる。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害薬が前述のステップのうちのいずれかに含まれていてもよく、外来性混入物の増殖を予防するために、抗生物質が含まれていてもよい。
【0156】
細胞から調製された結合タンパク質は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーまたはプロテインGクロマトグラフィー)または前述のいずれかの組み合わせを用いて精製することができる。これらの方法は、当技術分野で公知であり、例えば、WO99/57134またはEd Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)に記載されている。
【0157】
コンジュゲート
一例では、本開示の結合タンパク質は、別の化合物にコンジュゲートしている。結合タンパク質を化合物に直接的または間接的に結合することができる(例えば、間接的な結合の場合には、リンカーを含み得る)。化合物の例には、放射性同位体(例えば、ヨウ素-131、イットリウム-90またはインジウム-111)、検出可能な標識(例えば、フルオロフォアまたは蛍光ナノ結晶または量子ドット)、治療用化合物(例えば、化学療法薬または抗炎症薬)、コロイド(例えば、金)、毒素(例えば、リシンまたは破傷風トキソイド)、核酸、ペプチド(例えば、血清アルブミン結合ペプチド)、タンパク質(例えば、抗体の抗原結合ドメインを含むタンパク質または血清アルブミン)、対象における化合物の半減期を増加させる作用物質(例えば、ポリエチレングリコールまたはこの活性を有する他の水溶性ポリマー)及びその混合物が含まれる。
【0158】
抗体に薬物または他の小分子医薬を結合させるための方法は周知であり、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾアート、スルホンスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾアート、4-スクシンイミジル-オキシカルボニル--(2-ピリジルジチオ)トルエン、スルホンスクシンイミジル-6-[α-メチル-∀-(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノアート、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロプリオナート、スクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロプリオンアミド]ヘキサノアート、スルホスクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノアート、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、S-(2-チオピリジル)-L-システインなどの二官能性化学的リンカーの使用を含み得る。さらなる二官能性連結分子が、例えば、米国特許第5,349,066号、同第5,618,528号、同第4,569,789号、同第4,952,394号、及び同第5,137,877号において論述されている。
【0159】
リンカーは、切断可能または切断不可能であってよい。高度に安定なリンカーは、循環で減少するペイロードの量を減少させ、したがって、安全性プロファイルを改善し、かつペイロードの大部分が標的細胞に到達することを保証し得る。リンカーは、ジスルフィド、ヒドラゾンまたはペプチド(切断可能)、またはチオエーテル(切断不可能)を含む化学的モチーフに基づいてよく、かつ標的細胞への活性薬剤の分布及び送達を制御し得る。リンカーの切断可能または切断不可能な種類は、前臨床及び治験で安全であることが実証されている(例えば、カテプシンによって切断可能な酵素感受性リンカーを含むブレンツキシマブベドチン、及び安定していて切断不可能なリンカーを含むトラスツズマブエムタンシンを参照されたい)。特定の実施形態では、リンカーは、エドマン分解によって切断可能なペプチドリンカーである(Bachor,et al.,Molecular diversity,17(3):605-11(2013))。
【0160】
切断不可能なリンカーは、活性薬剤を細胞または標的微小環境内に維持し得る。結果として、抗体全体、リンカー及び活性薬剤は標的化細胞に侵入し、そこで、その抗体は、アミノ酸のレベルまで分解される。抗体のアミノ酸と、リンカーと、活性薬剤との間で生じる複合体は実薬となる。対照的に、切断可能なリンカーは、標的細胞または微小環境において酵素によって触媒されて、そこで、活性薬剤を放出する。切断されると、ペイロードは標的化細胞から脱出して、隣接細胞を攻撃し得る(「バイスタンダー死滅」とも称される)。本開示の結合タンパク質の場合には、リンカーの切断は、標的細胞または微小環境において異なる作用機序を有し得る2つの活性薬剤、抗体自体及びそのペイロードをもたらし得る。
【0161】
一部の実施形態では、活性薬剤と切断部位との間に1つまたは複数の追加の分子が存在する。他の検討事項には、部位特異的コンジュゲーション(TDC)(Axup,Proceedings of the National Academy of Sciences,109(40):16101-6(2012))ならびに安定性及び治療指数を改善し得る、Lyon,et al.,Bioconjugate Chem.,32(10):1059-1062(2014)、及びKolodych,et al.,Bioconjugate Chem.,26(2):197-200(2015)に記載されているものなどのコンジュゲーション技術、ならびにα線放射性免疫複合体(Wulbrand,et al., Multhoff,Gabriele,ed.,PLoS ONE.8(5):e64730(2013))が含まれる。
【0162】
一例では、結合タンパク質を、ナノ粒子またはマイクロ粒子にコンジュゲートさせる(例えば、Kogan et al.,Nanomedicine(Lond).2:287-306,2007において概説されているとおりに)。ナノ粒子は、金属ナノ粒子であってもよい。粒子は、ポリマー粒子、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、ならびに当技術分野で公知の他の担体及び送達ビヒクルであり得る。
【0163】
送達ビヒクルがポリマー粒子である場合、結合タンパク質を、粒子に、またはポリマーに組み込まれている脂肪酸などのアダプター要素に直接カップリングさせることができる。リガンドを、粒子の表面上に存在する官能性化学基(カルボン酸、アルデヒド、アミン、スルフヒドリル及びヒドロキシル)、及び結合させるリガンド上に存在する官能性化学基(カルボン酸、アルデヒド、アミン、スルフヒドリル及びヒドロキシル)を介してポリマー粒子の表面に結合させてもよい。官能基を、粒子の調製後に、粒子及びリガンドをホモまたはヘテロ二官能性クロスリンカーで架橋することによって導入してもよい。この手順では、適切な化学作用、及び調製後に粒子表面の化学的修飾によって粒子表面にリガンドをカップリングする一群のクロスリンカー(下により詳細に論述するとおりのCDT、EDAC、グルタルアルデヒドなど)または任意の他のクロスリンカーを使用してもよい。
【0164】
結合タンパク質を、ポリマー粒子と相互作用するアダプター要素を介して間接的に、ポリマー粒子に結合させてもよい。アダプター要素は、少なくとも2つの方法でポリマー粒子に結合させることができる。第1の方法は、マイクロ及びナノ粒子の調製中に、例えば、マイクロ粒子のエマルジョン調製中に官能性化学基を有する安定剤を導入することによる方法である。例えば、脂肪酸、疎水性または両親媒性ペプチド及びポリペプチドなどのアダプター要素を、エマルジョン調製中に、粒子に挿入することができる。第2の実施形態では、アダプター要素は、粒子表面に受動的に吸着及び結合し、それによって、結合タンパク質に係留するための官能性末端基を導入することができる脂肪酸または脂質などの両親媒性分子であってもよい。アダプター要素は、限定されないが、疎水性相互作用、静電相互作用及び共有結合を含む様々な相互作用によって、マイクロ及びナノ粒子と会合してよい。
【0165】
適切なポリマーには、エチルセルロース及び他の天然または合成セルロース誘導体が含まれる。水性環境中でゆっくり溶解してゲルを形成するヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリエチレンオキシドなどのポリマーも、粒子の材料として適し得る。他のポリマーには、限定されないが、ポリ無水物、ポリ(エステル無水物)、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシブチラート(PHB)及びそのコポリマー、ポリ-4-ヒドロキシブチラート(P4HB)及びそのコポリマー、ポリカプロラクトン及びそのコポリマー、ならびにその組み合わせが含まれる。
【0166】
本開示の結合タンパク質にコンジュゲートさせ得る一部の例示的化合物を表1に列挙する。
【表1】
【0167】
一例では、本開示の結合タンパク質は、化学療法薬にコンジュゲートしている。
【0168】
一例では、本開示の結合タンパク質は、メイタンシノイド、例えば、DM1またはDM4にコンジュゲートしている。
【0169】
別の例では、本開示の結合タンパク質は、オーリスタチン、例えば、MMAEまたはMMADにコンジュゲートしている。
【0170】
別の例では、本開示の結合タンパク質は、酵素、例えば、MTM1、GAAまたはAGLにコンジュゲートしている。
【0171】
別の例では、本開示の結合タンパク質は、MBNLにコンジュゲートしている。
【0172】
別の例では、本開示の結合タンパク質は、熱ショックタンパク質(HSP)にコンジュゲートしている。様々な例で、本開示の結合タンパク質は、HSP33、HSP70、HSP90、HSP100、スモールHSP(sHSP)のファミリーまたはその組み合わせからのHSPにコンジュゲートしている。例えば、本開示の結合タンパク質は、HSP72にコンジュゲートしていてよい。したがって、一例では、本開示は、HSP70ファミリーからのHSPにコンジュゲートしているFvを包含する。別の例では、本開示は、HSP72にコンジュゲートしているFvを包含する。
【0173】
別の例では、本開示の結合タンパク質は、本明細書に開示のPARP阻害薬にコンジュゲートしている。例えば、本開示の結合タンパク質は、オラパリブにコンジュゲートしていてよい。
【0174】
上の例の一態様では、結合タンパク質コンジュゲートを、コンジュゲートしたペイロードを細胞に送達するために使用することができる。例示的な細胞には、心筋細胞などの心臓細胞、肺胞細胞などの肺細胞及びニューロンなどの神経細胞が含まれる。他の例示的な細胞には、がん細胞またはウイルス感染細胞が含まれる。
【0175】
一部の実施形態では、上述の化合物の1種または複数は、本開示の結合タンパク質にコンジュゲートしていることから明確に除外される。例えば、結合タンパク質は、ネイキッドであってよい。
【0176】
組成物
適切には、本開示による結合タンパク質を対象に投与するための組成物または方法では、当技術分野で理解されるように、結合タンパク質を薬学的に許容される担体と組み合わせる。一例では、本開示は、薬学的に許容される担体と組み合わされた本開示の結合タンパク質を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。別の例では、本開示は、対象に投与する前に結合タンパク質と組み合わせるまたは混合するために適した薬学的に許容される担体を含むキットを提供する。この例では、キットは、取扱説明書をさらに含んでもよい。
【0177】
一般名では、「担体」は、対象、例えば、ヒト対象に安全に投与することができる固体または液体の増量剤、結合剤、希釈剤、カプセル化物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁化剤、コーティング剤または滑沢剤を指すために使用される。個別の投与経路に応じて、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.N.J.USA,1991)に記載されているとおりの当技術分野で公知の様々な許容される担体を使用することができる。
【0178】
例えば、適切な担体は、糖(例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース)、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油及び合成モノ-またはジ-グリセリドを含む油、低級アルコール、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、ステアリン酸ナトリウムまたはマグネシウムなどの滑沢剤、等張性生理食塩水ならびに発熱物質不含の水を含む群から選択することができる。一例では、担体は、H2Oではない。
【0179】
一例では、担体は、非経口投与と適合するか、または適している。非経口投与には、消化管を介さないいずれの投与経路も含まれる。非経口投与の例には、注射、注入などが含まれる。注射による投与の例には、静脈内、動脈内、筋肉内及び皮下注射が含まれる。別の例では、組成物は、皮内、筋肉内または皮下送達することができるデポー剤または徐放性製剤によって送達することができる。
【0180】
一部の実施形態では、結合タンパク質を、限定されないが、上に論述されているものなどのナノ粒子、マイクロ粒子、または他の送達ビヒクルに封入するか、または組み込む。
【0181】
一部の実施形態では、DNA結合タンパク質を、がん、組織損傷、傷害、感染、または虚血の1つまたは複数の部位を検出するために利用する。この方法は典型的には、それを必要とする対象に、画像診断または核医学技術を使用して検出可能な有効量の作用物質を投与すること、及びその作用物質を検出することを含む。そのような方法では、作用物質は典型的には、DNA結合タンパク質にコンジュゲートしているか、またはDNA結合タンパク質とコンジュゲートしている送達ビヒクル中にカプセル封入されている。画像診断または核医学技術は、例えば、PET-CT、骨スキャン、MRI、CT、心エコー、超音波、及びX線であってよい。
【0182】
一例では、結合タンパク質及びそれを含む組成物は、状態を処置するための医薬品の製造において使用することができる。別の例では、本開示は、状態の処置において使用するための結合タンパク質またはそれを含む組成物に関する。処置される状態の例は、下に論述する。
【0183】
方法及び使用は典型的には、それを必要とする対象に、有効量の結合タンパク質を投与することを含む。一部の実施形態では、対象は、がん細胞またはウイルス感染細胞または形質転換細胞を有する。一部の実施形態では、対象は、限定されないが、虚血、組織損傷、傷害、または感染を含む外因性または細胞外DNAによって特徴づけられる疾患または障害を有する。方法及び使用は、第2、第3、またはそれ以上の追加の活性薬剤との併用療法を含み得る。例えば、本開示の結合タンパク質は、標準的な化学療法、放射線療法、及び他の抗がん処置と組み合わせて使用することができる。放射線療法(radiation therapy)(放射線療法(radiotherapy)としても公知)は、悪性細胞を制御するためのがん処置の一部としての、電離放射線の医学的使用である。
【0184】
併用療法
本発明者が編集したデータは、本開示の結合タンパク質がポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬と共に作用して、がん細胞を死滅させることを示している。例えば、相加を上回る細胞死が、ジ-scFv及びPARP阻害薬で処置したHDR欠損がん細胞で観察された。
【0185】
したがって、別の例では、本開示は、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、対象に、本明細書に開示の結合タンパク質及びPARP阻害薬を投与することを含む、前記方法を包含する。別の例では、本開示は、本明細書に開示の結合タンパク質及びPARP阻害薬を含み、その組み合わせが同時または連続投与で与えられる治療用組み合わせに関する。別の例では、本開示は、がんの処置において使用するための、本明細書に開示の結合タンパク質及びPARP阻害薬を含む治療用組み合わせに関する。
【0186】
一例では、PARP阻害薬は、オラパリブ、ニラパリブ、ベリパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びBGB-290からなる群から選択される。例えば、PARP阻害薬は、オラパリブであってよい。
【0187】
PARP阻害薬と共に投与するために適した結合タンパク質の例は上に示されている。一例では、結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。別の例では、結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号2に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。別の例では、結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号5に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。別の例では、結合タンパク質は、配列番号1に示されているとおりのCDR1、配列番号3に示されているとおりのCDR2及び配列番号4に示されているとおりのCDR3を有するVHならびに配列番号6に示されているとおりのCDR1、配列番号7に示されているとおりのCDR2及び配列番号8に示されているとおりのCDR3を有するVLを含む。これらの例では、結合タンパク質は、Fvであってよい。一例では、結合タンパク質は、ジ-scFvであってよい。
【0188】
下に論述されている状態のうちの1つまたは複数を有する対象を、本明細書に開示の結合タンパク質及びPARP阻害薬を投与することによって処置することができる。一例では、対象は、膵臓癌を有する。別の例では、対象は、結腸癌を有する。一例では、対象は、実質的にBRCA2欠損のがんを有する。
【0189】
別の例では、上で言及した併用療法を、PARP阻害薬治療に抵抗性を有するがんを有する対象を処置するために使用することができる。
【0190】
一例では、結合タンパク質及びPARP阻害薬を単一組成物として投与する。
【0191】
別の例では、結合タンパク質及びPARP阻害薬を別々の組成物として投与する。例えば、結合タンパク質及びPARP阻害薬を同時で投与することができる。別の例では、結合タンパク質及びPARP阻害薬を連続的に投与することができる。この例では、結合タンパク質及びPARP阻害薬の投与を規定期間(通常、複数分、複数時間または複数日間)にわたって実施する。一例では、第2の治療薬が投与されるときに第2の治療薬の治療効果が得られるか、それに付け加わるまだ十分なレベルの第1の治療薬が存在する限り、連続投与の間の期間は数日であってよい。一例では、結合タンパク質の投与の後に、PARP阻害薬の連続投与が続く。別の例では、PARP阻害薬の投与の後に、結合タンパク質の連続投与が続く。
【0192】
本開示による治療用組み合わせは、様々な経路によって投与することができる。例示的な投与経路には、ボーラスとしての、またはある期間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、髄腔内、経口経路が含まれる。
【0193】
一例では、結合タンパク質及びPARP阻害薬を同じ経路によって投与する。例えば、結合タンパク質及びPARP阻害薬の両方を、連続注入によって静脈内投与することができる。別の例では、結合タンパク質及びPARP阻害薬を異なる経路によって投与する。例えば、結合タンパク質は連続注入によって静脈内投与することができ、PARP阻害薬は経口投与することができる。
【0194】
一部の例では、本明細書に定義の結合タンパク質またはFv断片及びPARP阻害薬の投与は、結合タンパク質またはFv断片及びPARP阻害薬を単独で、または単離して投与する場合よりも大きな結果を達成する。例えば、この組み合わせによって達成される結果は、個々の成分によって単独で達成される結果の相加を上回り得る。
【0195】
一例では、本明細書に定義の結合タンパク質またはFv断片及びPARP阻害薬の組み合わせの投与は、がんを有する対象において、対象に同量の個々の成分を単独で投与する場合よりも高い程度で、がん細胞増殖または生存の減少に有効である。例えば、がんを有する対象におけるがん細胞増殖または生存の減少は、個々の成分によって単独で達成される結果の相加を上回り得る。一部の例では、がんを有する対象では、この組み合わせは、腫瘍量を減少させるために、腫瘍の進行を減少させるために、またはその組み合わせのために有効であり、これは、個々の成分によって単独で達成される結果の相加を上回り得る。
【0196】
処置される状態
一例では、本開示による結合タンパク質は、対象に、様々な状態を処置するために投与することができる。
【0197】
本開示の一部の例では、本明細書に記載の方法は、がんを処置するための方法である。「がん」という用語は、典型的には未制御の細胞成長/増殖によって特徴づけられる哺乳類における生理学的状態を指す、またはそれを説明する。がんの例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはリンパ悪性病変が含まれる。そのようながんのより個別の例には、これに限定されないが、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌及び胃腸間質癌を含む胃(gastric)または胃(stomach)癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)または腎臓(renal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子型黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽急性白血病(ALL)、ヘアリーセル白血病、慢性骨髄芽球性白血病、ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、さらには、母斑症と関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍と関連するものなど)、メーグス症候群、脳、さらには頭頚部癌、ならびに関連転移が含まれる。別の例では、「がん」という用語は、三重陰性乳癌を包含する。したがって、一例では、本開示は、乳房、卵巣、結腸、前立腺、肺、脳、皮膚、肝臓、胃、膵臓または血液ベースのがんを処置する方法に関する。別の例では、本開示は、神経膠芽細胞腫の処置に関する。この例では、神経膠芽細胞腫を、配列番号41を有するジ-scFvまたは配列番号41に定義されている重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体などの本明細書に開示の結合タンパク質を投与することによって処置し得る。
【0198】
他の例では、本明細書に記載の方法を、BRCA1、BRCA2、PALB2、OR RAD51B、RAD51C、RAD51Dまたは関連遺伝子の変異に関連しているがんを処置するために使用する。他の例では、本明細書に記載の方法を、DNAミスマッチ修復と関連している遺伝子、例えば、MSH2、MLH1、PMS2、及び関連遺伝子における変異に関連するがんを処置するために使用する。他の例では、本明細書に記載の方法を、サイレンスDNA修復遺伝子、例えば、BRCA1、MLH1、OR RAD51B、RAD51C、OR RAD51Dを有するがんを処置するために使用する。
【0199】
別の例では、本明細書に記載の方法を、DNA修復プロセスが損傷している細胞を死滅させるために使用する。例えば、DNA修復が損傷している細胞は、DNA修復、DNA合成、または相同的な組み換えと関係する遺伝子を異常発現し得る。例示的な遺伝子には、XRCC1、ADPRT(PARP-1)、ADPRTL2、(PARP-2)、POLYMERASE BETA、CTPS、MLH1、MSH2、FANCD2、PMS2、p53、p21、PTEN、RPA、RPAl、RPA2、RPA3、XPD、ERCC1、XPF、MMS19、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、DMC1、XRCCR、XRCC3、BRCA1、BRCA2,PALB2、RAD52、RAD54、RAD50、MREU、NB51、WRN、BLM、KU70、KU80、ATM、ATR CPIK1、CHK2、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、RAD1、及びRAD9が含まれる。一例では、本明細書に記載の方法を、HDR欠損細胞を死滅させるために使用することができる。別の例では、本明細書に記載の方法を、変異腫瘍抑制遺伝子を有する細胞を死滅させるために使用する。例えば、細胞は、BRCAlまたはBRCA2中の1つまたは複数の変異を有し得る。例えば、細胞は、BRCA2欠損結腸癌細胞であってよい。
【0200】
一例では、本明細書に記載の方法は、実質的にHDR欠損しているがんを処置するための方法である。一例では、本明細書に記載の方法は、実質的にBRCA2欠損しているがんを処置するための方法である。例えば、BRCA2欠損結腸癌を処置することができる。別の例では、本明細書に記載の方法は、実質的にPTEN欠損しているがんを処置するための方法である。例えば、PTEN欠損脳癌を処置することができる。別の例では、本明細書に記載の方法は、PARP阻害に対して抵抗性を有するがんを処置するための方法である。
【0201】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、オンコウイルスに感染した細胞などのウイルス形質転換細胞を処置するために使用する。「オンコウイルス」という用語は、本開示の文脈では、腫瘍細胞において複製することができ、かつその成長を減少させることができるウイルスを指すために使用される。一例では、オンコウイルスは、腫瘍細胞において天然に複製することができ、かつその成長を減少させることができる。そのようなウイルスの例には、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎、粘液腫、レオウイルス、シンドビス、麻疹及びコクサッキーウイルスが含まれる。別の例では、オンコウイルスを、腫瘍細胞において複製し、かつその成長を減少させるように操作する。そのような操作に適した例示的なウイルスには、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レンチウイルス、ワクシニア(vaccina)及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)が含まれる。
【0202】
他の例示的なオンコウイルスには、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヒトT-リンホトロピックウイルス(HTLV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(HHV-8)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)が含まれる。
【0203】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、潜在性ウイルスで形質転換された細胞を死滅させるために使用する。例示的な潜在性ウイルスには、CMV、EBV、単純ヘルペスウイルス(1及び2型)、及び水痘帯状疱疹ウイルスが含まれる。
【0204】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、がん、免疫不全、肝炎、脳炎、肺実質炎または呼吸器疾患を起こすウイルスによる活発なウイルス感染症を処置するために使用する。例示的なウイルスには、上で言及したオンコウイルス、パルボウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルスが含まれる。
【0205】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、コロラドダニ熱(コルチウイルス、RNAウイルスに起因)、ウエストナイル熱(中東及びアフリカで主に発生する、フラビウイルスに起因する脳炎)、黄熱病、狂犬病(ラブドウイルス科の神経向性ウイルスのいくつかの異なる株に起因)、ウイルス性肝炎、胃腸炎(ウイルス性)-ノーウォーク及びノーウォーク様ウイルス、ロタウイルス、カリチウイルス、及びアストロウイルスに起因する急性ウイルス性胃腸炎、灰白髄炎、頻繁な抗原変異を受け得るオルトミクソウイルスに起因するインフルエンザ(流感)、麻疹(はしか)、パラミクソウイルス、流行性耳下腺炎、まとめて急性呼吸器ウイルスと称される様々なウイルスに起因するウイルス性肺炎を含む呼吸器症候群及び偽膜性喉頭炎を含む急性呼吸器症候群、ならびに呼吸器合胞体ウイルスに起因する呼吸器疾患を処置するために使用する。
【0206】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、ヌクレオチドリピート障害(nucleotide repeat disorder)またはエクソンスプライシング障害(exon splicing disorder)を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、筋強直性ジストロフィーなどの、異常なマイクロサテライト伸長と関連する障害を処置するために使用する。例えば、本開示の方法を、筋強直性ジストロフィーを処置するために使用することができる。筋強直性ジストロフィー1型(DM1、筋強直性ジストロフィー-プロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子の3’-非翻訳領域におけるトリヌクレオチド(CTG)n伸長(n=50~>3000))及び2型(DM2、亜鉛フィンガープロテイン9(ZNF9)遺伝子の第1のイントロンにおけるテトラヌクレオチド(CCTG)n伸長(n=75~約11,000))の例。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、神経線維種症を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、ハンチントン病を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、筋細管筋障害を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、グリコーゲン貯蔵障害を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、ポーンプ病を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、フォーブス-コーリー病を処置するために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、ラフォラ病を処置するために使用する。
【0207】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、MBNLポリペプチドにコンジュゲートした本開示による結合タンパク質を投与することによって、細胞においてインビトロで、または対象において、マッスルブラインド様(MBNL)活性を上昇させるために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を酵素またはタンパク質補充療法のために使用する。
【0208】
本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、HSP70ファミリーからのHSPにコンジュゲートしている本開示による結合タンパク質を投与することによって、細胞においてインビトロで、または対象において、HSP活性を上昇させるために使用する。本開示の他の例では、本明細書に記載の方法を、HSP72ポリペプチドにコンジュゲートした本開示による結合タンパク質を投与することによって、細胞においてインビトロで、または対象において、HSP72活性を上昇させるために使用する。
【実施例】
【0209】
実施例1 - ジ-scFVバリアントの発現及び精製
単一遺伝子GSベクター(Lonza’s GS Xceed(商標)Gene Expression Systemを使用)を樹立し、配列決定し、直線化し、各バリアントのための安定なプールを生成するために使用した。凍結保存後に、増殖させた安定なプールをそれぞれ200mL培養体積に展開し、4日目の単回ボーラス供給で短縮供給バッチ過剰成長(abridged fed batch overgrow)に掛け、8日目に採取した。上清力価を、Protein L Octetによって決定した。遠心分離、続く、0.22μmフィルターを用いるフィルター滅菌によって、イオン交換精製用の清澄化上清を得た。基準としてマウス抗体の二量体バージョンを使用して、イオン交換精製法を展開した。
【0210】
事前充填5mL HiTrap Capto Sカラム(GE Healthcare、17-544122)をAKTA清浄器(5mL/分で実行)で用いて清澄化上清を精製した。試料の装填前後にカラムを50mMリン酸ナトリウムpH6で平衡化し、生成物を0~1M NaClの直線勾配で溶離した。Protein L Octetによる結合及び非結合物質の定量化は、物質の約57%が非結合画分中に残ったことを示した。再び非結合画分を用いてクロマトグラフィーを繰り返すと、出発物質の約64%が非結合画分中に残った。
【0211】
残留した上清の精製を、0~1M NaClの線形溶離勾配でのイオン交換クロマトグラフィーの2つの連続ステップを用いて行った。精製後に、生成物を定量化し、Amicon Ultra-15フィルター(Millipore、UFC903024)を用いる限外濾過によって約1mg/mLまで濃縮した。
【0212】
二重試料を、SE-HPLCによって、Agilent 1200シリーズHPLCシステムで、Zorbax GF-250 9.4mm ID×25cmカラム(Agilent)を用いて、かつSDS-PAGE分析によって分析した。発現培養物の収量及び力価を表1にまとめている。バリアントのSDS-PAGE分析が
図1及び2に示されている。
【表2】
【0213】
実施例2 - バリアントの核透過
核透過のアルカリホスファターゼベースの検査
DLD1結腸癌細胞を、対照培地または表示のバリアントのそれぞれで、1時間にわたって処理した。次いで、細胞を洗浄し、固定し、1%BSA-TBSTで遮断し、次いで、プロテインLで1時間にわたってプローブした。次いで、細胞を洗浄し、抗プロテインL一次抗体と共に1時間にわたってインキュベートした。別のラウンドの洗浄の後に、細胞をアルカリホスファターゼ-コンジュゲート二次抗体と共に1時間にわたってインキュベートした。最後に、細胞を洗浄し、シグナルを、NBT/BCIPの添加によって発生させた。代表的な画像が
図3に示されている。暗色の着色部がバリアントの位置を示している。
【0214】
図3の実験からのDLD1細胞における核アルカリホスファターゼ染色を反映する生の密度積算値を、ImageJを用いる分析によって得た。値の分布の箱ひげ図が、各バリアントについて
図4において示されている。
【0215】
細胞数と核染色強度(相反強度として任意単位で表されている)とのヒストグラムプロットが
図5に示されている。バリアント12及び14以外のバリアントのほとんどが、原型酵母と比べて改善された核透過を示し、これは、ヒストグラムピークの右移動によって実証されている。加えて、ヒト化バリアントの多くについてヒストグラムで観察された分布の狭細化は、原型酵母と比べて改善された核透過の均一性を示している。バリアント13及び15は特に、原型酵母と比べて顕著な右移動及び分布の狭細化を示した。
【0216】
核透過の免疫蛍光ベースの検査
DLD1結腸癌細胞を、対照培地または表示のバリアントのそれぞれで、1時間にわたって処理した。次いで、細胞を洗浄し、固定し、1%BSA-TBSTで遮断し、次いで、プロテインLで1時間にわたってプローブした。次いで、細胞を洗浄し、抗プロテインL一次抗体と共に1時間にわたってインキュベートした。別のラウンドの洗浄の後に、細胞をAlexa488-コンジュゲート二次抗体と共に1時間にわたってインキュベートした。最後に、細胞を洗浄し、シグナルを蛍光顕微鏡法によって可視化した。代表的な画像が
図6に示されている。緑色のシグナルがバリアントの位置を示している。
【0217】
図6の実験からのDLD1細胞におけるAlexa488蛍光シグナルを反映する生の密度積算値を、ImageJを用いる分析によって得た。値の分布の箱ひげ図が、各バリアントについて
図7において示されている。
【0218】
実施例2 - DNA損傷の蓄積
PTEN有能及び欠損U251ヒト膠腫細胞の対応対を対照培地またはバリアント10、11、13、15、もしくは16を含有する培地で24時間にわたって処理した。次いで、細胞を洗浄し、固定し、遮断し、次いで、抗ホスホ-53BP1抗体で終夜プローブした。次いで、細胞を洗浄し、AlexaFluor555-コンジュゲート二次抗体と共にインキュベートした。最後に、細胞を洗浄し、DAPIで対比染色し、蛍光顕微鏡下で可視化した。CellProfilerによって画像を保存し、評価して、1細胞あたりのホスホ-53BP1フォーカスの平均数を決定した。新たなバリアントは、PTEN欠損細胞ではフォーカスの数を増加させたが、PTEN有能細胞では増加させなかった。代表的な画像は
図8のパネルAに示されており、CellProfilerによる定量分析は、
図8のパネルBに示されている。
【0219】
対照培地またはバリアント10、13、15、もしくは16を含有する培地での処置後に、PTEN欠損U87ヒト膠腫細胞の細胞生存率も評価した。処理から7日後に、トリパンブルー排除アッセイを使用して、かつ光学顕微鏡法による細胞形態の直接的な可視化によって、細胞生存率を決定した。すべてのバリアントが、対照処理された細胞と比べて細胞生存率の低下をもたらした(
図9)。
【0220】
次に、BRCA2有能及び欠損DLD1結腸癌細胞の対応対を対照培地またはバリアント10、13、15、もしくは16を含有する培地で処理した。7日後に、トリパンブルー排除アッセイによって、かつ光学顕微鏡法による細胞形態の直接的な可視化によって、細胞生存率を決定した。バリアントはBRCA2有能細胞に対しては毒性がなかったが、BRCA2欠損細胞はバリアントによって死滅した。これらのデータは、バリアントが、DNA修復の損傷を有するがん細胞を選択的に死滅させることができることを示している。さらに、これらのデータは、バリアントが、DNA修復の損傷を有するがん細胞と健康な細胞とを識別して、がん細胞を選択的に死滅させることができるであろうことを示している。バリアントで処理されたBRCA2欠損がん細胞の形態変化を示す代表的な光学顕微鏡画像が
図10のパネルAに示されている。トリパンブルー排除アッセイによる細胞生存率の定量分析が、
図10のパネルBに示されている。
【0221】
実施例3 - HDR欠損がん細胞におけるPARP阻害とのジ-scFv同時投与
DLD-1及びMCF-7細胞を対照またはジ-scFv(配列番号41)で処理し、核透過を固定細胞のプロテインL免疫染色によって評価した。ジ-scFvは、DLD-1及びMCF-7細胞核を成功裏に透過した(
図11及び12)。
【0222】
相同性配向型修復(HDR)欠損BRCA2-DLD1細胞及びPTEN-U251細胞を対照、5nMオラパリブ、10μMジ-scFv、または10μMジ-scFv+5nMオラパリブで処理した。生存率をコロニー形成アッセイによって決定した。驚くべきことに、相加を上回る細胞死がジ-scFv及びPARP阻害薬で処理されたHDR欠損がん細胞において観察された(
図13)。
【0223】
次いで、ジ-scFv及びオラパリブの組み合わせがDNA修復状態にかかわらず、単に普遍的に細胞傷害性であるかどうかを決定した。この可能性を評価するために、HDR有能DLD1細胞を上のレジメンで処理して、HDR欠損悪性細胞に対する併用療法の選択性を確認した。単独か、またはPARP阻害薬と組み合わせたジ-scFvについて、細胞死に対する効果は観察されなかった。これらの所見は、HDR有能細胞が、ジ-scFv及びオラパリブの両方の作用に対して、それらを組み合わせて使用した場合にも、抵抗性であり続けることを実証している。
【0224】
実施例4 - 一次ヒト神経膠芽細胞腫(GBM)細胞に対するジ-scFv(配列番号41)の効果
患者からの一次ヒトGBM腫瘍から抽出された一次ヒト神経膠芽細胞腫(GBM)がん細胞を対照またはジ-scFv(配列番号41)で処理し、生細胞のパーセンテージをトリパンブルー染色によって評価した。ジ-scFv(配列番号41)で処理された7つの神経膠芽細胞腫腫瘍外植片のうちの5つが、有意ながん細胞死を示した(
図14)。
【0225】
患者からの一次ヒトGBM腫瘍から抽出され、スフェアとして成長させたGBMがん幹細胞を対照またはジ-scFv(配列番号41)で処理し、スフェア体積の減少に対する用量及びインキュベーション時間の作用を、GBM細胞へのDX1-ローダミン細胞透過の共焦点顕微鏡写真によって評価した。腫瘍スフェアは、腫瘍異質性を保持し、かつ元の患者腫瘍をより綿密に表すので、前臨床研究のための有用なツールと認識されている。腫瘍スフェアとして成長させたヒトGBMがん幹細胞(CSC)のジ-scFvでの処理(配列番号41)は、GBMスフェアにおける細胞透過を実証し、かつ用量依存的及び時間依存的にスフェア体積を縮小させた(
図15)。
【0226】
実施例5 - 同所マウスモデルにおけるヒトGBM細胞に対するジ-scFv(配列番号41)の作用の評価
GBMの同所マウスモデルを、ヒトGBM腫瘍から抽出されたGBM細胞の頭蓋内注射によって生成した。腫瘍が脳内で生じたら、マウスを対照またはジ-scFvバリアント13(配列番号41)の尾静脈注射によって処理し、腫瘍体積の減少に対するジ-scFvの作用を腫瘍の抽出によって評価した。脳切片の評価は、ジ-scFvで処理されたマウスにおける神経膠芽細胞腫腫瘍が対照マウスにおける比較可能な腫瘍よりも40%超小さいことを示した(
図16A)。TUNEL染色はまた、ジ-scFv処理腫瘍におけるアポトーシスの発生率の上昇を実証した(
図16B)。ジ-scFv処理GBM腫瘍において観察される腫瘍サイズの縮小及びTUNEL染色の増加は、ジ-scFvバリアント13(配列番号41)が血液脳関門を成功裏に通過して、GBM腫瘍において局在化し、かつその成長に影響を及ぼすことを示唆した。これを確認するために、腫瘍及び正常脳をプロテインL免疫染色によって、ジ-scFvについて調べた。
図16Cに示されているとおり、ジ-scFvがGBM腫瘍細胞の核で検出されたが、周囲の隣接する正常脳細胞では明らかではなかった。
【0227】
加えて、7匹のマウスからなる群を延命効果について評価したところ、ジ-scFvで処置されたマウスは、対照(中央値72日)よりも20%超長い87日の生存期間中央値を示した。平均生存データは、これらの傾向を反映した(ジ-scFv処理マウスでは83日±3.2日、対照では71日±1.2日)(
図16E)。統計的解析は2つの群の間での有意な差を示し、P値=0.004であった。ジ-scFv処置と関連する毒性または体重減少は観察されなかった(
図16D)。
【0228】
実施例6 - フォーカス蓄積に対するPAT-DX1の効果
BRCA2有能及び欠損DLD1結腸癌細胞ならびにPTEN有能及び欠損U251ヒト膠腫細胞の対応対を対照培地または10μMジ-scFvバリアント13(配列番号41)、5nMオラパリブ、もしくは併用処理を含有する培地で処理した。ホスホ-53BP1抗体染色をCellProfilerによって評価して、1細胞あたりのホスホ-53BP1フォーカスの平均数を決定した。単独、及びオラパリブと組み合わせたジ-scFvバリアント13(配列番号41)処理は、BRCA2欠損DLD1及びPTEN欠損U251細胞の両方ではホスホ-53BP1フォーカスの数を増加させたが、有能細胞では増加させなかった(
図17)。
【0229】
広く記載されている本開示の意図及び範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態に示されているような本開示に対して、多数の変形及び/または変更が成され得ることは、当業者によって認められるであろう。したがって、本実施形態は、すべての点について例示であり、限定と考えられるべきではない。
【0230】
上記で論述したすべての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれている文献、行為、材料、デバイス、記事などの任意の考察は、本開示の文脈を提供する目的のためのものにすぎない。これらの事項のいずれかまたはすべてが従来技術の基礎の一部を形成するか、または本出願の各請求の優先日前に存在するような、本開示に関連する分野の共通の一般的な知識であったという承認と解釈されるべきではない。
【0231】
参照文献
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