(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-02
(45)【発行日】2025-06-10
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸産生促進剤およびコラーゲン産生促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20250603BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250603BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20250603BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20250603BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20250603BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250603BHJP
C07K 5/062 20060101ALI20250603BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K38/05
A61P17/16
A61P43/00 107
C07K5/062
(21)【出願番号】P 2022524400
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017884
(87)【国際公開番号】W WO2021235275
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2020087454
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】江 偉娜
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 東彦
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055116(JP,A)
【文献】特開2011-126814(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 38/05
A61P 17/16
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有する、ヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項2】
さらに、コラーゲンの産生を促進できる、請求項1に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項3】
表皮細胞、表皮角化細胞、真皮細胞、および/または線維芽細胞におけるヒアルロン酸の産生を促進するために用いられる、請求項1または2に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項4】
I型コラーゲンおよび/またはIII型コラーゲンの産生を促進するために用いられる、請求項2に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項5】
ヒアルロン酸の産生を促進するための、N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有する組成物。
【請求項6】
さらに、コラーゲンの産生を促進するためである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ヒアルロン酸の産生能の低下による状態または疾患を治療するための治療剤である、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
コラーゲンの産生能の低下による状態または疾患を治療するための治療剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
皮膚外用剤である、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
シワ改善剤、ハリ改善剤、肌理改善剤、または皮膚水分量改善剤である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項11】
シワ改善剤、ハリ改善剤、肌理改善剤、または皮膚水分量改善剤である、請求項7
または8に記載の組成物。
【請求項12】
N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有するヒアルロン酸産生促進剤を適用することを含む、美容方法または非治療的方法。
【請求項13】
ヒアルロン酸の産生を促進するための、N-ベンゾイルグリシルグリシンの使用。
【請求項14】
さらに、コラーゲンの産生を促進するための、請求項13の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚状態改善の技術分野に関し、具体的には化粧、美容または医療技術に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は外側から角層、表皮、基底膜および真皮より構成されている。真皮はその中でも最も領域の広い部分であり、表皮ほど細胞が密に詰まっていない。むしろ細胞外空間が多く、「細胞外マトリックス」と呼ばれる巨大分子の網目構造によって満たされている。この細胞外マトリックスは、真皮内の線維芽細胞等において産生され、ヒアルロン酸やデルマタン硫酸等の酸性ムコ多糖と呼ばれる多糖類と、コラーゲン、エラスチン等の線維性タンパク質で構成されている。細胞外マトリックスは、皮膚の弾力性、はり、みずみずしさ、新陳代謝等に直接的に関わっている。線維芽細胞等における細胞外マトリックスの産生が鈍ると、皮膚の弾力性やみずみずしさが失われ、肌荒れが発生しやすくなり、皮膚老化がもたらされる一因になる。
【0003】
上記線維性タンパク質は主にコラーゲンからなり、その中でもI型コラーゲンが全体の80%を占める。I型コラーゲンのほかにはIII、V、XII、およびXIV型コラーゲンの存在が知られている。老化皮膚に見られるたるみの成因の一つは、皮膚組織が加齢に伴い菲薄化することによる。老化した皮膚では、真皮の主要なマトリックス成分であるコラーゲン線維の減少が著しく、このことが皮膚の厚さを薄くする主たる原因となっている可能性が高い。したがって、コラーゲンの産生を促進させてコラーゲン量を維持することが、たるみの予防・改善に有効であると考えられる。またコラーゲンの産生促進は、上記以外にも、皮膚の創傷治癒の改善のほか、骨粗しょう症、関節炎、腱鞘炎等の治療、高血圧の防止等にも有効である。
【0004】
このようなコラーゲン産生促進作用を有する成分としては、従来から種々の成分が知られており、例えば、シカクマメおよびその溶媒抽出物(特許文献1)等が知られている。また、特許文献2には、N-ベンゾイルグリシルグリシンがI型コラーゲンの産生促進作用を有することが示されている。
【0005】
一方、上記多糖類中のヒアルロン酸は、細胞間隙への水分の保持、組織内にジェリー状のマトリックスを形成することに基づく細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持、機械的障害等の外力に対する抵抗、および細菌感染の防止等、多くの機能を有している。さらに、昨今、ヒアルロン酸と癌転移との関連等についても多くの研究がなされている。
【0006】
皮膚のヒアルロン酸量は加齢とともに減少し、それに伴い、小ジワやかさつき等の皮膚老化が現れると考えられている。したがって、ヒアルロン酸の産生を促進させてヒアルロン酸量を維持することが、皮膚の老化の防止に有効であると考えられる。
【0007】
このように、加齢によるコラーゲンおよびヒアルロン酸の量および産生能の低下は、皮膚の老化の主要な原因の一つであると考えられている。コラーゲンおよびヒアルロン酸の産生促進効果を有する成分の検討も行われており、例えばコノテガシワ種子の有機溶媒抽出物の処理物が報告されている(特許文献3)。しかしながら、皮膚の老化をはじめとして、コラーゲンおよびヒアルロン酸の量および産生能の低下に関連する症状改善や予防・治療等に広く適用することができる更なる新規成分の開発が依然として求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-24222号公報
【文献】特開2014-55116号公報
【文献】国際公開第2012/057123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進するための組成物、シワ、ハリ、肌理、または皮膚水分量改善剤、ならびに、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進するための美容または非治療的方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、コラーゲンおよびヒアルロン酸の産生促進効果を有する新規の成分を開発すべく鋭意研究を行ったところ、N-ベンゾイルグリシルグリシンをコラーゲン産生促進剤およびヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として用いることができることをはじめて見出した。そして、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有することを特徴とする、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進するための組成物、シワ、ハリ、肌理、または皮膚水分量改善剤、ならびに、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進するための美容または非治療的方法を発明した。
【0011】
そこで、本発明は以下の発明に関する:
[1]
N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有する、ヒアルロン酸産生促進剤。
[2]
N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有する、コラーゲン産生促進剤。
[3]
表皮細胞、表皮角化細胞、真皮細胞、および/または線維芽細胞におけるヒアルロン酸の産生を促進するために用いられる、態様1に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
[4]
I型コラーゲンおよび/またはIII型コラーゲンの産生を促進するために用いられる、態様2に記載のコラーゲン産生促進剤。
[5]
ヒアルロン酸および/またはコラーゲンの産生を促進するための、N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有する組成物。
[6]
ヒアルロン酸またはコラーゲンの産生能の低下による状態または疾患を治療するための治療剤である、態様5に記載の組成物。
[7]
皮膚外用剤である、態様5または6に記載の組成物。
[8]
シワ改善剤、ハリ改善剤、肌理改善剤、または皮膚水分量改善剤である、態様5~7のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有するヒアルロン酸産生促進剤またはコラーゲン産生促進剤を適用することを含む、美容方法または非治療的方法。
[10]
ヒアルロン酸および/またはコラーゲンの産生を促進するための、N-ベンゾイルグリシルグリシンの使用。
【発明の効果】
【0012】
N-ベンゾイルグリシルグリシンを用いてコラーゲン産生およびヒアルロン酸産生を促進することができる。さらには、N-ベンゾイルグリシルグリシンを用いて、シワ、ハリ、肌理、または皮膚水分量を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、皮膚組織の免疫組織化学染色試験の結果を示す。本発明の組成物の塗布により、I型コラーゲンの産生が促進されることが示されている。
【
図2】
図2は、皮膚組織の免疫組織化学染色試験の結果を示す。本発明の組成物の塗布により、III型コラーゲンの産生が促進されることが示されている。
【
図3】
図3は、皮膚組織の免疫組織化学染色試験の結果を示す。本発明の組成物の塗布により、ヒアルロン酸の産生が促進されることが示されている。
【
図4】
図4は、表皮角化細胞を用いたIn-vitro試験の結果を示す。本発明の組成物の添加により、表皮角化細胞におけるヒアルロン酸産生が促進されることが示されている。
【
図5】
図5は、線維芽細胞を用いたIn-vitro試験の結果を示す。本発明の組成物の添加により、線維芽細胞におけるヒアルロン酸産生が促進されることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一つの態様において、本発明は、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有することを特徴とする、コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤に関する。
また、本発明の一つの態様は、ヒアルロン酸および/またはコラーゲンの産生を促進するための、N-ベンゾイルグリシルグリシンを有効成分として含有する組成物に関する。本態様にかかる組成物は、上述のヒアルロン酸産生促進剤またはコラーゲン産生促進剤であり得る。
【0015】
本明細書では、本発明にかかるコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、およびその他の組成物を、単に「本発明の組成物」または「本発明にかかる組成物」と記載することがある。
【0016】
N-ベンゾイルグリシルグリシンは、下記式:
【0017】
【化1】
によって表される化合物である。
ただし、式中、1つ以上の水素原子が、低級アルキル(例えば、C
1-3アルキル)等で置換された化合物を用いることもできる。
【0018】
N-ベンゾイルグリシルグリシンは、市販品(例えば、和光純薬工業社より販売されているものなど)を用いてもよく、または公知の方法に基づき製造してもよい。
【0019】
本発明において、コラーゲンおよびヒアルロン酸の産生の促進とは、細胞、例えば皮膚組織を構成する細胞におけるコラーゲンおよびヒアルロン酸の産生の促進または産生能の向上を意味する。したがって、本発明の組成物は、限定されるものではないが、例えば、表皮細胞、表皮角化細胞、真皮細胞、線維芽細胞等におけるヒアルロン酸および/またはコラーゲンの産生を促進するために用いることができる。一実施形態において、本発明の組成物は、表皮角化細胞および繊維芽細胞の両方において、ヒアルロン酸の産生を促進することができる。
【0020】
なお、本明細書において、コラーゲンおよびヒアルロン酸の産生能の評価方法は特に限定されるものではないが、例えば、本発明の組成物を適用(塗布)した皮膚組織におけるコラーゲン(I型コラーゲンおよびIII型コラーゲン)またはヒアルロン酸の存在量を免疫組織化学染色によって可視化することによって評価することができる。あるいは、本発明の組成物を含む培養液で培養した後の細胞培養液(培養上清)中のコラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の存在量をELISAなどにより測定することによって評価してもよい。
【0021】
N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有する本発明の組成物は、後述の実施例に開示するとおり、I型コラーゲンの産生だけでなく、III型コラーゲンの産生、さらにはヒアルロン酸の産生を促進する効果を併せ持っている。したがって、一態様において、本発明の組成物は、I型コラーゲンおよび/またはIII型コラーゲンの産生を促進するために用いられる。また、一態様において、本発明の組成物は、ヒアルロン酸の産生を促進するために用いられる。N-ベンゾイルグリシルグリシンが、I型コラーゲンの産生の促進効果だけでなく、III型コラーゲンおよびヒアルロン酸の産生促進効果を併せ持つことは、本発明者らによって初めて見出された知見である。
【0022】
皮膚を構成するコラーゲンには種々のタイプが存在するが、主としてI型コラーゲンとIII型コラーゲンであり、I型コラーゲンは主として皮膚の構造維持、III型コラーゲンは主として皮膚の柔軟性付与の機能を担っている。したがって、皮膚の弾力性の維持および回復には、I型コラーゲンのみではなく、III型コラーゲンが重要な役割を担っている。III型コラーゲンは胎児性コラーゲンとも呼ばれ、加齢に伴い急速に減少する傾向にあることが知られている。したがって、本発明の組成物を用いて、皮膚におけるIII型コラーゲン量を増加させることができれば、加齢による皮膚の老化を防止し、優れたシワ、ハリ、肌理、皮膚水分量の改善効果をもたらすことができる。また、本発明の組成物によるIII型コラーゲンの産生促進効果は、創傷治癒の促進、皮膚萎縮の改善、およびIII型コラーゲン合成不全に関連する状態および疾患の改善等の効果ももたらし得る。
【0023】
本発明の一態様は、ヒアルロン酸もしくはコラーゲンの異常分解、またはヒアルロン酸もしくはコラーゲンの産生能の低下による状態または疾患を予防、改善、または治療するための治療剤に関する。ヒアルロン酸もしくはコラーゲンの異常分解、またはヒアルロン酸もしくはコラーゲンの産生能の低下による状態または疾患の例としては、皮膚の老化、シワの増加、ハリの低下、肌理の低下、もしくは皮膚水分量の低下等;外的、内的要因によって生じる創傷、例えば、切創、裂創、刺創、咬創、擦過傷、銃創、挫傷、熱傷、褥瘡、糖尿病性潰瘍、化学損傷等;上述のIII型コラーゲンの合成不全に起因する各種疾患、例えば、エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlossyndrome)の臨床症状IV型、およびこれに起因する動脈破綻、腸穿孔等;さらには、肝炎、歯肉炎、リウマチ、変形関節炎、腱鞘炎、骨粗しょう症、悪性腫瘍、肝硬変、移植拒否、強皮症、肝硬変、動脈硬化、高血圧、線維症、乾皮症、乾燥肌、荒れ肌、腎炎、ケロイド、過修復、敗血症等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0024】
本発明の組成物は、特に、シワ改善剤、ハリ改善剤、肌理改善剤、または皮膚水分量改善剤として有用である。
【0025】
本発明にかかる組成物におけるN-ベンゾイルグリシルグリシンの含有量は、例えば、後述する化粧水、美容液といった最終製品の全量に対して、0.0001~10重量%の範囲に含まれる任意の含有量でありうる。例えば、本発明にかかる組成物は、少なくとも0.0001重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%のN-ベンゾイルグリシルグリシンを含んでいてもよい。また、例えば、本発明にかかる組成物は、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下のN-ベンゾイルグリシルグリシンを含んでいてもよい。最終製品の特性に応じて、これらの上限値および下限値の任意の組み合わせが、N-ベンゾイルグリシルグリシンの含有量の範囲として規定されうる。
【0026】
本発明の組成物は、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進することを目的として、機能性食品、化粧料、医薬部外品、医薬品に配合されうる。別の言い方をすれば、本発明にかかるN-ベンゾイルグリシルグリシンを含有する組成物は、機能性食品、化粧料、医薬部外品、または医薬品として調製されうる。
【0027】
本発明の組成物は、経口投与、静脈注射を含む任意の投与経路で用いることができるが、皮膚に直接作用させる観点から経皮投与が好ましい。経皮投与とすることで、全身投与では副作用が生じる薬剤であっても皮膚状態の改善の観点で許容されうる。
【0028】
したがって、本発明の組成物は、皮膚に直接適用することができる皮膚外用剤として配合することが好ましい。かかる皮膚外用剤には、N-ベンゾイルグリシルグリシンに加えて、化粧品や医薬品等に用いられる任意配合成分を、必要に応じて適宜配合することができる。そのような任意配合成分としては、例えば、油分、界面活性剤、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種皮膚栄養剤、pH調整剤、中和剤、粉末成分、色材、水性成分、水等などが挙げられる。
【0029】
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属イオン封鎖剤、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、抗炎症成分、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩、サリチル酸およびその誘導体またはその塩等の各種薬効成分、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、アデノシン一リン酸二ナトリウムOT、アルブチン、コウジ酸、4-メトキシサリチル酸、およびその塩、4-n-ブチルレゾルシノールおよびレゾルシノール誘導体、リノール酸、エラグ酸、カモミラ抽出液、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール、デクスパンテノール等の美白剤、レチノイン酸、レチナール、レチノール、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、パルミチン酸レチノール、およびその他レチノール導体、ニコチン酸アミドおよびその誘導体、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム、ピリドキシンおよびその塩、ライスパワーエキス、さらにはグルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0030】
皮膚外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も、皮膚に適用できるものであればいずれでもよく、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等、任意の剤型が適用される。皮膚外用剤としては、例えば、外用固形剤、外用散剤、外用液剤、リニメント剤、スプレー剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、テープ剤、パップ剤等が挙げられる。
【0031】
使用形態も任意であり、例えば化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料、やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料、日焼け止め、アフターケアローション、サンオイル等の全身用化粧料、芳香化粧料、浴用剤等などが挙げられるが、皮膚に適用されるものであれば任意の化粧料に配合することができる。
【0032】
また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型および形態に、本発明の組成物が採り得る形態が限定されるものではない。
【0033】
さらに、本発明の一つの態様は、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有する本発明の組成物(例えば、ヒアルロン酸産生促進剤またはコラーゲン産生促進剤)を適用することを含む、美容方法または非治療方法に関する。本態様の美容方法または非治療方法は、対象におけるヒアルロン酸もしくはコラーゲンの異常分解、またはヒアルロン酸もしくはコラーゲンの産生能の低下による状態または疾患を予防、改善、または治療するための方法であり得る。
本態様において、対象は、限定されるものではないが、哺乳動物、特にヒト、ならびにイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物であり得る。対象は、好ましくはヒトである。
【0034】
本態様にかかる美容または非治療的方法においては、本発明の組成物、例えば皮膚外用剤を所望の効果を得たい部位、例えば顔、首、手、腕、脚等に適用する。適用は、手や塗布具等によってする塗布など、任意の様式で行うことができる。適用の回数、頻度、量等は、所望の効果等に応じて適宜設定される。なお、一態様において、本発明にかかる美容または非治療的方法は、いわゆる医療行為を含まない。
【0035】
さらに、本発明の一つの態様は、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進するためのN-ベンゾイルグリシルグリシンの使用に関する。別の観点から言えば、本発明の態様は、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生の低下または不足の改善に使用するためのN-ベンゾイルグリシルグリシンを含む。本明細書に開示のデータは、N-ベンゾイルグリシルグリシンがコラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生の低下または不足の改善に有用であることを実証している。よって、N-ベンゾイルグリシルグリシンを用いて、コラーゲンおよび/もしくはヒアルロン酸の異常分解、またはコラーゲンおよび/もしくはヒアルロン酸の産生能の低下の改善に使用するための本発明の組成物を調製することができる。すなわち、本発明の一つの態様は、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生を促進するための組成物の製造におけるN-ベンゾイルグリシルグリシンの使用にも関する。これらの態様において、コラーゲンおよび/もしくはヒアルロン酸の異常分解、またはコラーゲンおよび/もしくはヒアルロン酸の産生能の低下の改善は、シワ、ハリ、肌理、または皮膚水分量の改善であり得る。
【0036】
N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有する本発明の組成物の処方例を例示するが、本発明はこれらの処方例に限定されるものではないことは言うまでもない。なお、各成分の数値は質量%である。
【0037】
処方例1 クリーム
(処方)
ステアリン酸 5.0
ステアリルアルコール 4.0
イソプロピルミリステート 18.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0
レチノール 0.1
ジプロピレングリコール 10.0
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 0.1
苛性カリ 0.35
亜硫酸水素ナトリウム 適量
防腐剤 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
(製法)
イオン交換水にジプロピレングリコールと苛性カリ、N-ベンゾイルグリシルグリシンを加え、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を徐々に加え、全部加え終わってからしばらくその温度に保ち反応を起こさせる。その後、ホモミキサーで均一に乳化し、よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0038】
処方例2 クリーム
(処方)
ステアリン酸 2.0
ステアリルアルコール 7.0
マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 2.0
スクワラン 5.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 6.0
ポリオキシエチレン(25モル) 3.0
セチルエーテル
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
酢酸レチノール 0.1
ジプロピレングリコール 5.0
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 0.001
苛性カリ 0.14
亜硫酸水素ナトリウム 適量
エチルパラベン 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
(製法)
イオン交換水にジプロピレングリコールと苛性カリ、N-ベンゾイルグリシルグリシンを加え、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0039】
処方例3 乳液(シワ改善剤、ハリ改善剤、肌理改善剤、または皮膚水分量改善剤)
(処方)
ステアリン酸 2.5
セチルアルコール 1.5
ワセリン 5.0
流動パラフィン 10.0
ステアリン酸PEG-5グリセリル 2.0
ポリエチレングリコール1500 3.0
トリエタノールアミン 1.3
カルボキシビニルポリマー 0.05
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 0.05
トラネキサム酸 1.0
亜硫酸水素ナトリウム 適量
エチルパラベン 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
(製法)
少量のイオン交換水にカルボキシビニルポリマーを溶解する(A相)。残りのイオン交換水にポリエチレングリコール1500とトリエタノールアミン、N-ベンゾイルグリシルグリシン、トラネキサム酸を加え、加熱溶解して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、A相を加えホモミキサーで均一乳化し、乳化後よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0040】
処方例4 ジェリー
(処方)
アルコール 10.0
ジプロピレングリコール 15.0
ポリオキシエチレン(50モル)オレイルエーテル 2.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
苛性カリ 0.12
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 0.1
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 0.2
エチレンジアミンテトラアセテート・
3ナトリウム・2水(EDTA-3Na) 0.05
メチルパラベン 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
(製法)
イオン交換水にカルボキシビニルポリマーを均一に溶解し、一方、アルコールにポリオキシエチレン(50モル)オレイルエーテルを溶解し、水相に添加する。次いで、その他の成分を加えたのち苛性カリ、L-アルギニンで中和させ増粘する。
【0041】
処方例5 クリーム
(処方)
ステアリン酸 5.0
ステアリルアルコール 4.0
イソプロピルミリステート 18.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0
ジプロピレングリコール 10.0
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 0.01
4-メトキシサリチル酸カリウム塩 1.0
苛性カリ 0.35
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
防腐剤 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
(製法)
イオン交換水にジプロピレングリコールと苛性カリ、N-ベンゾイルグリシルグリシンを加え、4-メトキシサリチル酸カリウム塩を加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を徐々に加え、全部加え終わってからしばらくその温度に保ち反応を起こさせる。その後、ホモミキサーで均一に乳化し、よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0042】
処方例6 乳液(シワ改善剤、ハリ改善剤、肌理改善剤、または皮膚水分量改善剤)
(処方)
マイクロクリスタリンワックス 1.0
ミツロウ 2.0
流動パラフィン 1.0
スクワラン 5.0
モノオレイン酸ポリオキシ 4.0
エチレンソルビタン(20E.O.)
ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
ジプロピレングリコール 7.0
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 10.0
ハクシニン加水分解エキス 0.1
苛性カリ 2.0
サクシノグリカン 1.0
亜硫酸水素ナトリウム 適量
エチルパラベン 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
(製法)
イオン交換水にジプロピレングリコール、サクシノグリカン、苛性カリ、N-ベンゾイルグリシルグリシンを加え、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し、加熱融解して70℃に保つ(油相)。油相をかきまぜながらこれに水相を徐々に加え、ホモミキサーで均一に乳化する。乳化後よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0043】
処方例7 パック
(処方)
(A相)
ジプロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 5.0
(B相)
オリーブ油 5.0
酢酸トコフェロール 0.2
エチルパラベン 適量
香料 適量
(C相)
亜硫酸水素ナトリウム 適量
ポリビニルアルコール 13.0
(ケン化度90、重合度2,000)
エタノール 7.0
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 5.0
ジメチルピラゾリルジメチルピリミジン塩酸塩 0.1
苛性カリ 1.0
精製水 残余
(製法)
A相、B相、C相をそれぞれ混合する。C相は加熱して70℃に保つ。A相にB相を加えて混合する。次いでこれをC相に加えてよく混合した後、冷却し充填を行う。
【0044】
処方例8 クリーム
(処方)
アルコール 5.0
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 7.0
水酸化カリウム 0.26
カルボキシビニルポリマー 0.25
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))
クロスポリマー 0.1
キサンタンガム 0.05
PPG-13デシルテトラデセス-24 1.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 15.0
水添ポリデセン 7.0
スクワラン 3.0
N-ベンゾイルグリシルグリシン
(コラーゲン産生促進剤またはヒアルロン酸産生促進剤) 0.48
フェノキシエタノール 適量
EDTA-3Na 適量
イオン交換水 残余
【0045】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0046】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除および置換を行うことができる。
【実施例】
【0047】
1.免疫組織化学染色試験
以下のとおり、同意を得た被験者から寄贈された皮膚組織に試験組成物を塗布し、10日間培養を行った。培養後の皮膚組織を用いて免疫組織化学染色試験で評価した。
[皮膚組織]
部位:非露光部(腹部)
皮膚組織サイズ:1cm×1cm
寄贈者:白人女性(40歳)
[試験組成物]
本発明の組成物:上記処方例8と同様にして本発明の組成物を調製した。
比較組成物(placebo):N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有しないこと以外は上記の本発明の組成物と同様にして比較組成物を調製した。
なお、本試験において用いたN-ベンゾイルグリシルグリシン(和光純薬工業社)の構造を以下に示す。
【0048】
【0049】
[免疫組織化学染色]
試薬等
一次抗体:
Anti-human collagen type I (Rabbit)
Anti-Collagen Type III (RABBIT) Antibody
Hyaluronic Acid Binding Protein, Bovine Nasal Cartilage, Biotinylated
発色基質:DAB(3,3’-ジアミノベンジジン)(DAKO社製)
対比染色:ヘマトキシリン溶液(富士フイルム和光純薬社製)
試験組成物を適用した皮膚組織を4%PFAで固定し、パラフィンブロック作製を行った。組織は5μm厚に薄切し、免疫組織化学染色を行った。簡潔には、脱バラフィン処理、内因性ペルオキシダーゼの失活処理、およびブロッキング処理の後、一次抗体の反応、発色基質DABによる発色反応、およびヘマトキシリンによる対比染色を行い、封入した。
【0050】
結果を
図1~3に示す。
図1および
図2に示すとおり、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有する本発明の組成物の塗布により、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの両方の産生が促進されることが分かる。また、
図3に示すとおり、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含有する本発明の組成物の塗布により、表皮および真皮の両方においてヒアルロン酸の産生が促進されることが分かる。
【0051】
2.表皮角化細胞を用いたIn vitro試験
24ウェルプレートを用いてHuMedia培地にてヒト表皮角化細胞を2×10
4cells/wellで播種し、細胞が十分接着するまで培養しながら24時間静置した。
1日後、所定の濃度の検体を含むHuMedia培地と置換して2日間培養した。
培養後、培養上清を抜き取り、ELISA(製品名:Hyaluronic Acid, ELISA Kit,QnE (96well))でヒアルロン酸産生量を測定した。
なお、検体としては、N-ベンゾイルグリシルグリシン(培地中濃度:0.00001%または0.0001%)、ネガティブコントロールとしてDMSO(
図4中「Blank(DMSO)」)、およびポジティブコントロールとしてレチノール(
図4中「RO」、培地中濃度:0.01μM)を用いた。
【0052】
結果を
図4に示す。結果は、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含まないBlankのヒアルロン酸産生量100に対する相対値として算定した。また、群間の有意差をt検定により検証した(p値の閾値0.05)。
図4に示すとおり、N-ベンゾイルグリシルグリシンの添加により、表皮角化細胞におけるヒアルロン酸産生が有意差をもって(p<0.01またはp<0.001)促進されることが分かる。また、N-ベンゾイルグリシルグリシンは、レチノール(p<0.01)と比較して、同等またはより優れたヒアルロン酸産生促進効果を有することが分かる。
【0053】
3.線維芽細胞を用いたIn vitro試験
24ウェルプレートを用いて10%FBS含有DMEM培地にてヒト線維芽細胞を6×10
4cells/wellで播種し、細胞が十分接着するまで培養しながら6時間静置した。血清濃度を落として0.5%FBS含有DMEM培地により培養した。
1日後、所定の濃度の検体を含む0.5%FBS含有DMEM培地と置換して3日間培養した。
培養上清を抜き取り、ELISA(製品名:Hyaluronic Acid, ELISA Kit,QnE (96well))でヒアルロン酸産生量を測定した。
なお、検体としては、N-ベンゾイルグリシルグリシン(培地中濃度:0.0001%または0.001%)、ネガティブコントロールとしてDMSO(
図5中「Blank(DMSO)」)、およびポジティブコントロールとして5%FBSを用いた。
【0054】
結果を
図5に示す。結果は、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含まないBlankのヒアルロン酸産生量100に対する相対値として算定した。また、群間の有意差をt検定により検証した(p値の閾値0.05)。
図5に示すとおり、N-ベンゾイルグリシルグリシンは、5%FBSと同等の有意差(いずれもp<0.001)をもって、ヒアルロン酸産生を促進する効果を有することが分かる。
【0055】
以上の結果より、N-ベンゾイルグリシルグリシンを含む本発明の組成物は、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲン、ならびにヒアルロン酸の産生を促進する効果を有することから、シワ、ハリ、肌理、および皮膚水分量の改善に有用であることが分かる。これらは本発明において初めて見出された知見である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤、コラーゲン産生促進剤、およびその他の組成物は、優れたコラーゲン産生促進作用およびヒアルロン酸産生作用を有し、シワ、ハリ、肌理、および皮膚水分量の改善に有用であることから、化粧、美容、医薬等に関連する様々な分野で利用することができる。