(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-02
(45)【発行日】2025-06-10
(54)【発明の名称】ポリアルキレンジオール変性物
(51)【国際特許分類】
C10M 107/50 20060101AFI20250603BHJP
C10M 105/76 20060101ALI20250603BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20250603BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20250603BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20250603BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20250603BHJP
【FI】
C10M107/50
C10M105/76
C10N30:02
C10N20:04
C10N20:02
C10N40:02
(21)【出願番号】P 2023503911
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008875
(87)【国際公開番号】W WO2022186276
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021033764
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】相田 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 義隆
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-325275(JP,A)
【文献】特表2011-516671(JP,A)
【文献】国際公開第2014/139935(WO,A1)
【文献】特表2011-528394(JP,A)
【文献】特開平08-311474(JP,A)
【文献】特開平08-134453(JP,A)
【文献】特開2010-261010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンジオール変性物を含む潤滑油基油を含有する潤滑油組成物であって、
前記潤滑油基油が、下記一般式(1)で表され、対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量が750~1760であり、前記ポリアルキレンジオール変性物の粘度指数が
183以上300以下である、潤滑油組成物(ただし、冷凍機油を除く)。
【化1】
(一般式(1)中、R
1が、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、若しくはブタン-1,4-ジイル基、又はそれらの組み合わせであり、Q
1及びQ
2が、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、及びジメチルフェニルシリル基から選ばれる1種以上のシリル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアルキレンジオール変性物に関し、より詳しくは、高粘度指数の合成系潤滑基油として好ましく用いることのできるポリアルキレンジオール変性物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑は、可動部を有する各種の機械装置において、部材の摩擦および摩耗を低減し、装置の省エネルギー性および寿命を向上させるために不可欠の要素である。
【0003】
潤滑剤としては、潤滑基油と、任意的に増ちょう剤と、任意的に1種以上の性能添加剤とを含む潤滑組成物が、幅広い分野で用いられている。そのような潤滑組成物の例としては、潤滑油およびグリース(半固体状潤滑剤)を挙げることができる。
【0004】
潤滑基油は、潤滑組成物の基材である。潤滑基油には、潤滑組成物が用いられる温度範囲において、潤滑に適した粘度を有することが求められる。一般に、流体の粘度は高温で減少し、低温で増大する。潤滑組成物が幅広い温度範囲で使用可能であるためには、潤滑基油の粘度の温度依存性が小さいこと、すなわち、潤滑基油の粘度指数が高いことが望ましい。
【0005】
米国石油協会API(American Petroleum Institute)が定めるAPI基油分類は、潤滑基油をグループI~Vの5つのカテゴリに分類する。グループI基油は、硫黄分が0.03質量%超かつ/又は飽和分が90質量%未満であって、且つ粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。グループII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。グループIII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が120以上の鉱油系基油である。グループIV基油はポリα-オレフィン基油である。グループV基油は上記グループI~IV以外の基油である。
【0006】
最も粘度指数が高い鉱油系基油であるグループIII基油は、一般に、水素化分解および水素化精製プロセスを経て製造されるか、又はフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)プロセスにより得られるワックス(FTワックス)やガス・トゥ・リキッド(Gas-to-Liquid)プロセスにより得られるワックス(GTLワックス)等のワックスを異性化するワックス異性化プロセスにより製造される。これら従来の鉱油系基油が達成可能な粘度指数は概ね135程度であり、これより高い粘度指数を求められる用途には、ポリ-α-オレフィン基油(グループIV基油)やエステル基油(グループV基油)等の合成系基油が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら従来の合成系基油は、必ずしも全ての用途に適した化学性状を備えるわけではない。
【0009】
本発明は、高粘度指数の潤滑基材として好適に用いることのできる、新規な機能性流体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次の[1]~[6]の実施形態を包含する。
[1] 下記一般式(1)で表されるポリアルキレンジオール変性物であって、対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量が100~8000である、ポリアルキレンジオール変性物。
【0011】
【化1】
(一般式(1)中、複数のR
1は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に、炭素数2~5の直鎖アルキレン基、又は、炭素数3~8の分岐鎖アルキレン基であって主鎖の炭素数が2~5である分岐鎖アルキレン基を表し、Q
1及びQ
2は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるシリル基であり、nは2以上の整数を表す。)
【0012】
【化2】
(一般式(2)中、R
2、R
3、及びR
4は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1~9の炭化水素基である。)
【0013】
[2] 前記一般式(1)中、R1が、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン―2,3-ジイル基、若しくはブタン-1,4-ジイル基、又はそれらの組み合わせである、[1]に記載のポリアルキレンジオール変性物。
【0014】
[3] 前記一般式(1)中、Q1及びQ2が、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ブチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ベンジルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、ジシクロヘキシルフェニルシリル基、及びシクロヘキシルジフェニルシリル基から選ばれる1種以上のシリル基である、[1]又は[2]に記載のポリアルキレンジオール変性物。
【0015】
[4] 前記一般式(1)において、Q1及びQ2が、同一のシリル基であるか、又は、2種以上のシリル基の同一の組み合わせである、[1]~[3]のいずれかに記載のポリアルキレンジオール変性物。
【0016】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のポリアルキレンジオール変性物を含有する、潤滑油基油。
【0017】
[6] [5]に記載の潤滑油基油を含有する、潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様に係る機能性流体であるポリアルキレンジオール変性物は、高粘度指数の潤滑基材として好適に用いることができる。
本発明の第2の態様に係る潤滑油基油によれば、本発明の第1の態様に係るポリアルキレンジオール変性物を含有することにより、粘度指数を高めることが可能である。
本発明の第3の態様に係る潤滑油組成物によれば、本発明の第2の態様に係る潤滑油基油を含有することにより、組成物全体での温度-粘度特性を改善することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。なお本明細書においては、特に断らない限り、数値AおよびBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」と等価であるものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。本明細書において、「または」および「もしくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。本明細書において、要素E1およびE2について「E1および/またはE2」という表記は「E1、もしくはE2、またはそれらの組み合わせ」と等価であり、N個の要素E1、…、Ei、…、EN(Nは3以上の整数である。)について「E1、…、および/またはEN」という表記は「E1、…、もしくはEi、…、もしくはEN、またはそれらの組み合わせ」(iは1<i<Nを満たす全ての整数を値にとる変数である。)と等価である。また本明細書において、「アルカリ土類金属」にはマグネシウムも包含されるものとする。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
【0021】
本明細書において、「ジオール」は最も広義に解釈され、2価のアルコールを意味する。別途指定がない限り、「ジオール」中の2つのヒドロキシ基の位置関係は制限されない。
【0022】
本明細書において、別途指定のない限り、油中のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、リン、硫黄、ホウ素、バリウム、およびモリブデンの各元素の含有量は、JIS K0116に準拠して誘導結合プラズマ発光分光分析法(強度比法(内標準法))により測定されるものとする。また油中の窒素元素の含有量は、JIS K2609に準拠して化学発光法により測定されるものとする。また本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量および数平均分子量を意味する。GPCの測定条件は次の通りである。
[GPC測定条件]
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT125A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本、および、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT45A(ゲル粒径1.7μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶離液:テトラヒドロフラン
溶液注入量:20.0μL
流量:0.7mL/分
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)10点(分子量:30230、9590、2970、890、786、682、578、474、370、266)
【0023】
<1.ポリアルキレンジオール変性物>
本発明の第1の態様に係るポリアルキレンジオール変性物(以下において単に「ポリアルキレンジオール変性物」ということがある。)は、対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量が100~8000であるポリアルキレンジオール変性物であって、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0024】
【化3】
(一般式(1)中、複数のR
1は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に、炭素数2~5の直鎖アルキレン基、又は、炭素数3~8の分岐鎖アルキレン基であって主鎖の炭素数が2~5である分岐鎖アルキレン基を表し、Q
1及びQ
2は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるシリル基であり、nは2以上の整数を表す。)
【0025】
【化4】
(一般式(2)中、R
2、R
3、及びR
4は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1~9の炭化水素基である。)
【0026】
対応するポリアルキレンジオールは、一般式(1)において、Q1及びQ2を水素原子で置き換えることにより得られ、下記一般式(3)で表される。
【0027】
【化5】
対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量は、揮発性を低減する観点および耐摩耗性を高める観点から100以上、好ましくは150以上、より好ましくは200以上である。また粘度を低減して省エネルギー性を高める観点から8000以下、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下、一の実施形態において2500以下である。一の実施形態において100~8000、又は150~6000、又は200~5000、又は200~2500であり得る。
【0028】
あるポリアルキレンジオール変性物が与えられたとき、対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量は、次のようにして決定することができる。
i)シリル基Q1、Q2を同定する。異なるシリル基の数およびそれらの存在比率は、ポリアルキレンジオール変性物の29Si NMRスペクトルを測定することにより確認することができる。さらに、ポリアルキレンジオール変性物のSi-O結合を開裂させる処理を行い、生じた低分子量のケイ素化合物を単離することにより、シリル基の構造を同定することができる。ポリアルキレンジオール変性物の29Si NMRスペクトルの測定では異なる複数のシリル基の存在比率を決定できない場合には、単離されたそれぞれのケイ素化合物の量から、各シリル基の存在比率を確認することができる。ポリアルキレンジオール変性物のSi-O結合を開裂させる処理は、フッ化物イオン源として作用する試薬(典型的にはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)又はHF-ピリジン。)を用いて、アルコールのシリル脱保護と同様の条件(例えばテトラヒドロフラン溶媒中でTBAFを用いて常温で1~5時間反応させる。)により行うことができる。この反応により一般式(3)のシリル基に対応して得られるケイ素化合物は、F-SiR3R4R5の構造を有する。R3~R5の決定は、1H NMRスペクトル、及び、必要に応じて13C NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析(MS)等の公知の分析手段により、有機化学分野の常識的な手法に基づいて行うことができる。
ii)上記i)のSi-O開裂反応(脱保護反応)において同時に得られるポリアルキレンジオールを回収し、その数平均分子量Mn’をGPCにより測定する。測定されたMn’は、対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量MnPAGに等しい。
なお、シリル基Q1及びQ2が同一かつ1種のシリル基である場合には、上記工程ii)に代えて、簡便法として下記工程ii’)を行ってもよい。
ii’)ポリアルキレンジオール変性物全体の数平均分子量Mn''をGPCにより測定する。測定されたMn''及びシリル基の分子量Msilylに基づいて、対応するポリアルキレンジオールの数平均分子量MnPAGを下記数式(1)により求める。
MnPAG=Mn''-Msilyl+2.016 …(1)
【0029】
一般式(1)において、R1は炭素数2~5の直鎖アルキレン基、又は、炭素数3~8の分岐鎖アルキレン基であって主鎖の炭素数が2~5である分岐鎖アルキレン基である。R1が直鎖アルキレン基であるとき、R1の炭素数は好ましくは2~4である。R1が分岐鎖アルキレン基であるとき、R1の炭素数は好ましくは3~6であり、R1の主鎖の炭素数は好ましくは2~4である。ただしR1の炭素数は必ず主鎖の炭素数以上である。本明細書において、R1の主鎖の炭素数は、R1と結合した2つの酸素原子を繋ぐ最短の炭素鎖の炭素数を意味し、R1の命名に用いられる主鎖の選択とは関係なく定まる。例えばR1がブタン-1,2-ジイル基であるとき、R1の主鎖の炭素数は2である。R1が直鎖アルキレン基であるとき、R1の主鎖の炭素数はR1の炭素数に等しい。R1が分岐鎖アルキレン基であるとき、R1の側鎖は炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、一の実施形態においてメチル基であり得る。炭素数Y(Yは2~8の整数)のアルキレン基R1(主鎖の炭素数はZ(Zは2~5の整数、Y≧Z)である)を有する繰り返し単位R1Oは、炭素数Yの無置換または置換Z+1員環飽和脂肪族環状エーテルの開環重合により得ることができる。無置換環状エーテルの開環重合はR1が直鎖アルキレン基であるアルキレンオキシド繰り返し単位R1Oを与え、置換環状エーテルの開環重合はR1が分岐鎖アルキレン基である繰り返し単位R1Oを与える。アルキレン基R1の好ましい例としては、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ペンタン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘプタン-1,2-ジイル基、オクタン-1,2-ジイル基、等の主鎖炭素数2のアルキレン基;プロパン-1,3-ジイル基、3-メチルブタン-1,3-ジイル基、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基、等の主鎖炭素数3のアルキレン基;ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、2-メチルブタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、4-メチルペンタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-2,5-ジイル基、等の主鎖炭素数4のアルキレン基;並びに、ペンタン-1,5-ジイル基、3―メチルペンタン-1,5-ジイル基、等の主鎖炭素数5のアルキレン基を挙げることができる。R1は単一のアルキレン基であってもよく、2種以上のアルキレン基の組み合わせであってもよい。
【0030】
一の好ましい実施形態において、アルキレン基R1は、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、若しくはブタン-1,4-ジイル基、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0031】
開環重合によりアルキレンオキシド繰り返し単位R1Oを与える環状エーテルの好ましい例としては、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、1,2-ペンチレンオキシド、1,2-ヘキシレンオキシド、1,2-ヘプチレンオキシド、1,2-オクチレンオキシド、等の無置換または置換3員環エーテル;オキセタン(トリメチレンオキシド)、2,2-ジメチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン、等の無置換または置換4員環エーテル;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2-エチルテトラヒドロフラン、2,2-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、等の無置換または置換5員環エーテル;並びに、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、等の無置換または置換6員環エーテルを挙げることができる。アルキレンオキシド繰り返し単位R1Oは1種の環状エーテルに対応する繰り返し単位からなっていてもよく、2種以上の環状エーテルに対応する繰り返し単位の組み合わせであってもよい。
【0032】
一般式(1)において、nは2以上の整数である。通常、nは分布を有し、nの分布に対応して数平均分子量が定まる。
【0033】
一般式(2)において、R2、R3、及びR4は同一でも相互に異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1~9の炭化水素基である。炭化水素基の好ましい例としては、アルキル基(環構造を有していてもよい。)、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、等を挙げることができる。
【0034】
R2~R4について、アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよく、環構造を有していてもよい。炭素数1~9の鎖式アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、及びノニル基を挙げることができる。アルキル基が有し得る環構造の例としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環等の炭素数5~7のシクロアルキル環を挙げることができる。シクロアルキル環はさらにアルキル置換基及び/又はアルキレン置換基を有していてもよく、それらのシクロアルキル環上の置換位置は任意である。環構造を有する炭素数1~9のアルキル基の好ましい例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、等を挙げることができる。
【0035】
R2~R4について、炭素数1~9のアリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クミル基、及びベンジル基を挙げることができる。
【0036】
Q1及びQ2について、一般式(2)で表されるシリル基の好ましい例としては、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ブチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ベンジルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、ジシクロヘキシルフェニルシリル基、及びシクロヘキシルジフェニルシリル基、等を挙げることができる。
一の実施形態において、Q1及びQ2としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、及びtert-ブチルジフェニルシリル基から選ばれる1種以上のシリル基を好ましく採用できる。
【0037】
一の実施形態において、Q1及びQ2は、同一かつ1種のシリル基であり得る。そのようなポリアルキレンジオール変性物は、後述する製造方法においてシリル化剤として1種のシリル化剤を単独で用いることにより得ることができる。他の一の実施形態において、Q1及びQ2は、2種以上のシリル基の同一の組み合わせであり得る。そのようなポリアルキレンジオール変性物は、後述する製造方法においてシリル化剤として2種以上のシリル化剤を組み合わせて用いることにより得ることができる。
【0038】
(製造)
本発明のポリアルキレンジオール変性物は、一般的な第1級または第2級アルコールのシリル保護と同様に、対応するポリアルキレンジオールと、一般式(2)のシリル基に対応するシリル化剤(X1-SiR2R3R4)とから、例えば下記一般式(4)で表される反応により製造することができる。シリル化剤としては1種のシリル化剤を単独で用いてもよく、2種以上のシリル化剤を組み合わせて用いてもよい。例えばシリル基Aに対応するシリル化剤A’と、シリル基Bに対応するシリル化剤B’とを組み合わせて用いた場合に得られるポリアルキレンジオール変性物(シリル化生成物)は、一般式(1)においてQ1及びQ2の両方がシリル基Aであるポリアルキレンジオール変性物と、Q1及びQ2の両方がシリル基Bであるポリアルキレンジオール変性物と、Q1及びQ2の一方がシリル基A、他方がシリル基Bであるポリアルキレンジオール変性物との混合物である。またシリル基Aに対応するシリル化剤A’を単独で用いてQ1及びQ2の両方がシリル基Aである第1のポリアルキレンジオール変性物を製造し、シリル基Bに対応するシリル化剤B’を単独で用いてQ1及びQ2の両方がシリル基Bである第2のポリアルキレンジオール変性物を製造し、任意的に他の1種以上のシリル基C(、D、…)に対応するシリル化剤C’(、D’、…)を同様にそれぞれ単独で用いて1種以上のポリアルキレンジオール変性物をそれぞれ製造した後、製造したこれらの2種以上のポリアルキレンジオール変性物を混合することにより、Q1とQ2とが同一のシリル基である2種以上のポリアルキレンジオール変性物の混合物を得てもよい。
【0039】
【化6】
一般式(4)中、R
1~R
4及びnは上記一般式(1)~(3)における定義の通りである。X
1はシリル化剤の脱離基を表す。X
1の好ましい例としては、-Cl基、-Br基、及び-I基等のハロゲノ基、及びトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(-OTf基)等を挙げることができる。一般式(4)中、「base」はポリアルキレンジオールの末端ヒドロキシ基とSi-Xとから生じる酸H-Xを中和する、又はヒドロキシ基を脱プロトン化するための塩基である。塩基の好ましい例としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、ピリジン、及び2,6-ルチジン等のアミン類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、等の金属水素化物;アルキルリチウム、Grignard試薬等の有機金属化合物;並びに、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属カルシウム、等の活性金属を挙げることができる。
【0040】
一般式(4)の反応は非プロトン性の溶媒中で又は無溶媒で行うことができる。溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン等の塩基を兼ねられるアミン系溶媒;並びに、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性有機溶媒を挙げることができる。溶媒としては、原料ポリアルキレンジオール及びシリル化生成物の両方を溶解できる溶媒を用いることが好ましい。
【0041】
一般式(4)の反応は、シリル化反応として公知の手順により行うことができる。例えば、ポリアルキレンジオールの溶液に塩基を添加混合した後、反応混合物にシリル化剤を添加混合することによりシリル化反応を行うことができる。シリル化剤の添加混合は、例えば、低温(例えば0℃)のポリアルキレンジオール溶液と塩基との混合物に、シリル化剤又はその溶液を滴下することにより行うことができる。反応混合物にシリル化剤を加えた後は、低温または常温で一定時間(例えば0.01~100時間)反応混合物を撹拌することによりシリル化反応を進行させることができる。なおシリル化剤の反応性はポリアルキレンジオールの構造および/またはケイ素原子上の置換基R2~R4に依存して異なる。常温で反応の進行が遅い場合には、より高い温度(例えば溶媒の還流条件)で反応を行うことが好ましい。
【0042】
一般式(4)の反応においては、ポリアルキレンジオールのヒドロキシ基1molに対し、例えば塩基1~10mol、及び、シリル化剤0.5~2mol、好ましくは1.0~1.2molを用いることができる。なおヒドロキシ基の当量未満のシリル化剤を用いた際は、ポリアルキレンジオールの両末端のヒドロキシ基がシリル化された完全シリル化物とともに、ポリアルキレンジオールの片末端のヒドロキシ基のみがシリル化された部分シリル化物が生成する。またシリル化反応の反応性によって、完全シリル化物とともに部分シリル化物が生成することもあるが、完全シリル化物と部分シリル化物とを含む混合物をそのまま使用することも可能である。
【0043】
反応終了後の後処理は、一般的なアルコールのシリル化反応と同様に行ってもよい。未反応のシリル化剤は、水処理またはアルコール処理によりクエンチすることができる。シリル化生成物は、末端ヒドロキシ基がシリルエーテルに変換されたことにより疎水性が向上している。したがって反応後の混合物を水で洗浄することにより、反応混合物中の塩(例えば、塩基がトリエチルアミンであり、シリル化剤の脱離基X1が-Cl基である場合にはトリエチルアミン塩酸塩。)並びにシリル化が不完全なポリアルキレンジオール(すなわち、シリル化されていない未反応のポリアルキレンジオール、及び、ポリアルキレンジオールの片末端のヒドロキシ基のみがシリル化された部分シリル化物。)を除去して、シリル化生成物の有機溶媒溶液を得ることができる。
ただし、原料ポリアルキレンジオールの繰り返し単位に占めるポリエチレンオキシド繰り返し単位の割合が高い場合(すなわちアルキレン基R1に占めるエタン-1,2-ジイル基の割合が高い場合)には、反応混合物を水と混合した際にシリル化生成物が有機層から水層に移行して、収率が低下する場合がある。そのような場合には、水を使わない後処理によりシリル化生成物を回収することが可能である。具体的には、原料ポリアルキレンジオールを溶解するためにある程度の極性を有する溶媒(例えばトルエン等。)を用いて反応を行った後、必要に応じて残存する未反応のシリル化剤をアルコール(例えばメタノールやエタノール等。)で処理し、スラリー状の反応混合物に疎水性溶媒(例えばヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、さらなるトルエン等の炭化水素溶媒。)を加えて沈殿した塩を濾別により除去することにより、シリル化生成物の有機溶媒溶液を得ることができる。
得られたシリル化生成物の有機溶媒溶液から有機溶媒を(例えば減圧条件下で)留去することにより、シリル化生成物を分離できる。
【0044】
(物性)
本発明のポリアルキレンジオール変性物は、末端ヒドロキシ基がシリルエーテルに変換されていることにより、シリル化されていない対応するポリアルキレンジオールよりも向上した粘度指数を有しているので、高粘度指数の潤滑基材として好ましく用いることができる。
【0045】
また本発明のポリアルキレンジオール変性物は従来の鉱油系基油およびポリα-オレフィン基油、並びに従来の汎用の高粘度指数潤滑基材であるシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)よりも高い極性を有するため、極性を有する添加剤の溶解性において有利である。さらに従来のエステル系合成基油はエステル結合のカルボニル炭素が求核攻撃を受けやすいのに対し、本発明のポリアルキレンジオール変性物が有するエーテル結合及びシリルエーテル結合は塩基性条件下での求核攻撃に対してエステル結合よりも頑強である。したがって本発明のポリアルキレンジオール変性物によれは、その求核性のために従来のエステル系合成基油と組み合わせて用いることが難しかった添加剤との組み合わせが可能になり得る。
【0046】
本発明のポリアルキレンジオール変性物は、対応するポリアルキレンジオールよりも向上した粘度指数を有する。一般に嵩高いシリル基ほどシリルエーテル結合の化学的な安定性は高いので、想定される用途に必要な安定性および粘度指数を考慮してシリル基を選択することができる。ポリアルキレンジオール変性物の具体的な粘度指数は、例えば100~300、一の実施形態において150~300であり得る。
【0047】
上記説明したように、本発明のポリアルキレンジオール変性物は、ポリアルキレンジオールのヒドロキシ基をシリル化することにより製造できる。本発明のポリアルキレンジオール変性物の動粘度は、対応するポリアルキレンジオールの動粘度、及び、シリル基(一般式(1)中のQ1及びQ2)に依存して異なり得る。対応するポリアルキレンジオールの動粘度が高いほど、得られるポリアルキレンジオール変性物の動粘度も高くなる傾向にある。また、対応するポリアルキレンジオールが同一であれば、シリル基が嵩高いほど、ポリアルキレンジオール変性物の動粘度は増大する傾向にある。所望の動粘度および粘度指数を有するポリアルキレンジオール変性物を得るために、原料のポリアルキレンジオールとして2種以上のポリアルキレンジオールの混合物を用いてもよい。また、所望の動粘度および粘度指数を有するポリアルキレンジオール変性物を得るために、2種以上のポリアルキレンジオール変性物を混合してもよい。
【0048】
<2.潤滑油基油>
本発明の第2の態様に係る潤滑油基油(以下において単に「潤滑油基油」ということがある。)は、上記本発明の第1の態様に係るポリアルキレンジオール変性物(以下において「(a)成分」ということがある。)を含む。潤滑油基油は、1種のポリアルキレンジオール変性物を単独で含んでもよく、2種以上のポリアルキレンジオール変性物を含んでもよい。一の実施形態において、潤滑油基油は、1種以上のポリアルキレンジオール変性物からなる。潤滑油基油は、さらに不純物として、ポリアルキレンジオール変性物の精製過程で取り除かれなかった、シリル化が不完全なポリアルキレンジオールを含んでもよい。シリル化が不完全なポリアルキレンジオールの例としては、シリル化されていないポリアルキレンジオール、及び片末端のヒドロキシ基のみがシリル化されたポリアルキレンジオール(部分シリル化物)を挙げることができる。一の実施形態において、これらのシリル化が不完全なポリアルキレンジオールの含有量は、ポリアルキレンジオール変性物100質量部あたり例えば50質量部未満、又は30質量部未満であり得る。シリル化が不完全なポリアルキレンジオールの含有量は、後述する条件下での13C NMRによって測定することが可能である。一の実施形態において、ポリアルキレンジオールのシリル化されていないヒドロキシ基の含有量は、ポリアルキレンジオール変性物のシリル基1molあたり例えば0.5mol未満、又は0.3mol未満であり得る。
一の実施形態において、潤滑油基油は、ポリアルキレンジオール変性物以外の1種以上の基油成分をさらに含んでもよい。そのような他の基油成分としては、鉱油系基油、若しくは従来の合成系基油、又はそれらの組み合わせを用いることができる。
【0049】
一の実施形態において、鉱油系基油の例としては、原油を常圧蒸留および/または減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、溶剤精製、水素化精製、薬品洗浄、白土処理等の精製処理から選ばれる1種または2種以上の組み合わせにより精製したパラフィン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油、及びナフテン系基油、ならびにこれらの混合物などを挙げることができる。
【0050】
一の実施形態において、鉱油系基油の好ましい例としては、下記(1)~(8)のいずれかを原料油として用いて、当該原料油および/または当該原料油から回収された潤滑油留分を、精製することによって得られる基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)、および/または、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch;FT)プロセス(例えばガス・トゥ・リキッド(Gas-to-Liquid;GTL)プロセス等)により得られる合成ワックス(例えばGTLワックス等のFTワックス)、エチレンのオリゴマー化によって得られる合成ワックス
(4)原料油(1)、(2)、若しくは(3)、又はそれらの混合物のマイルドハイドロクラッキング処理油
(5)原料油(1)~(4)から選ばれる2種以上の混合油
(6)原料油(1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO)
(7)原料油(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)原料油(1)~(7)から選ばれる2種以上の混合油
【0051】
鉱油系基油の特に好ましい例としては、上記(1)~(8)から選ばれる原料油または当該原料油から回収された潤滑油留分について、所定の処理を行うことにより得られる下記(9)又は(10)の基油を挙げることができる。
(9)上記(1)~(8)から選ばれる原料油または当該原料油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解基油
(10)上記(1)~(8)から選ばれる原料油または当該原料油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化異性化基油。脱ろう工程としては接触脱ろう工程を経て製造された基油が好ましい。
【0052】
また、上記(9)又は(10)の鉱油系基油を得るに際して、必要に応じて溶剤精製処理および/または水素化仕上げ処理工程を、適当な段階で更に行ってもよい。
【0053】
一の実施形態において、鉱油系基油としては、API基油分類のグループI基油(以下において「APIグループI基油」ということがある。)、グループII基油(以下において「APIグループII基油」ということがある。)、若しくはグループIII基油(以下において「APIグループIII基油」ということがある。)、又はそれらの組み合わせを用いることができる。API基油分類については前述の通りである。APIグループI基油は通常、溶剤精製プロセスを経て製造され、APIグループII基油およびグループIII基油は通常、水素化分解プロセスを経て製造される。なお本明細書において、粘度指数とは、JIS K 2283-2000に準拠して測定された粘度指数を意味する。また本明細書において「潤滑油基油中の硫黄分の含有量」は、JIS K 2541-2003に準拠して測定されるものとする。また本明細書において「潤滑油基油中の飽和分の含有量」は、ASTM D 2007-93に準拠して測定された値を意味する。
【0054】
従来の合成系基油としては、API基油分類グループIV基油(ポリα-オレフィン基油、以下において「APIグループIV基油」ということがある。)、若しくは従来のAPI基油分類グループV基油(以下において「APIグループV基油」ということがある。)、又はそれらの組み合わせを用いることができる。
【0055】
潤滑油基油中の(a)成分の含有量は特に制限されるものではないが、潤滑油基油全量基準で例えば1~100質量%、又は5~100質量%、又は10~100質量%、又は20~100質量%、又は50~100質量%、又は80~100質量%であり得る。
【0056】
<3.潤滑油組成物>
本発明の第3の態様に係る潤滑油組成物(以下において単に「潤滑油組成物」ということがある。)は、上記本発明の第2の態様に係る潤滑油基油(以下において「(A)成分」ということがある。)を含む。一の実施形態において、潤滑油組成物は、(A)成分からなるものであってもよい。他の一の実施形態において、潤滑油組成物は、(A)成分と、1種以上の添加剤とを含み得る。
【0057】
潤滑油組成物中の(A)成分の含有量は特に制限されるものではないが、組成物全量基準で例えば60~100質量%、又は60~99質量%であり得る。
【0058】
添加剤としては、潤滑油の分野において公知の添加剤を用いることができる。そのような添加剤の例としては、(B)酸化防止剤、(C)無灰分散剤、(D)金属系清浄剤、(E)摩擦調整剤、(F)摩耗防止剤または極圧剤、(G)粘度指数向上剤または流動点降下剤、(H)腐食防止剤、(I)防錆剤、(J)金属不活性化剤、(K)抗乳化剤、(L)消泡剤、及び(M)着色剤を挙げることができる。
【0059】
(B)酸化防止剤(以下において「(B)成分」ということがある。)の例としては、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、及びフェノール系酸化防止剤を挙げることができる。
【0060】
芳香族アミン系酸化防止剤の例としては、アルキル化α-ナフチルアミン等の第1級芳香族アミン化合物;及び、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-β-ナフチルアミン等の第2級芳香族アミン化合物、を挙げることができる。
【0061】
ヒンダードアミン系酸化防止剤の例としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を有する化合物(2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体)を挙げることができる。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体としては、4-位に置換基を有する2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体が好ましい。また、2個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格が、それぞれの4-位の置換基を介して結合していてもよい。また2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格のN-位は無置換であってもよく、該N-位に炭素数1~4のアルキル基が置換していてもよい。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格は好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格である。
【0062】
フェノール系酸化防止剤の例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチル)フェノール;4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル類;3-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノール脂肪酸エステル類、等のヒンダードフェノール化合物およびビスフェノール化合物を挙げることができる。
【0063】
潤滑油組成物が(B)成分を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.01~5.0質量%、又は0.1~5.0質量%であり得る。ポリアルキレンジオール変性物((a)成分)の自動酸化を抑制する観点からは、潤滑油組成物は少なくとも(B)成分を含有することが好ましい。
【0064】
(C)無灰分散剤としては、例えばコハク酸イミド系無灰分散剤等の公知の無灰分散剤を用いることができる。無灰分散剤の例としては、数平均分子量が900~3,500のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、及びこれらの誘導体(例えばホウ酸変性物等。)等を挙げることができる。
潤滑油組成物が無灰分散剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.01~20質量%、又は0.1~10質量%であり得る。
【0065】
(D)金属系清浄剤としては、潤滑油分野において公知の金属系清浄剤を用いることができる。一般に潤滑油分野において、金属系清浄剤としては、基油中でミセルを形成することが可能な有機酸金属塩(例えばアルカリ又はアルカリ土類金属アルキルサリシレート、アルカリ又はアルカリ土類金属アルキルベンゼンスルホネート、及びアルカリ又はアルカリ土類金属アルキルフェネート等。)、又は該有機酸金属塩と塩基性金属塩(例えば該有機酸金属塩を構成するアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩等。)との混合物が用いられる。金属としてはアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ土類金属としてはCaおよび/またはMgが好ましい。
潤滑油組成物が金属系清浄剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、金属元素換算量として、例えば0.001~5.0質量%であり得る。
【0066】
(E)摩擦調整剤としては、潤滑油分野において公知の摩擦調整剤を用いることができ、その例としては、油性剤系摩擦調整剤;有機モリブデン化合物;アルキルメルカプチルボレートなどの有機ホウ素化合物;グラファイト;二硫化モリブデン;硫化アンチモン;ホウ素化合物;ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
【0067】
潤滑油組成物が摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.05~5.0質量%であり得る。
【0068】
(F)摩耗防止剤または極圧剤としては、潤滑油分野において公知の摩耗防止剤または極圧剤を用いることができる。その例としては、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn塩、Pb塩、Sb塩等)、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、硫化鉱油、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィド等の硫黄系添加剤;ジチオリン酸金属塩(Zn塩、Pb塩、Sb塩、Mo塩等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸部分エステルのアミン塩、リン酸部分エステルの金属塩(Zn塩など)、(モノチオ-又はジチオ-又はトリチオ-)リン酸の完全エステル及び部分エステル並びに部分エステルの金属塩およびアミン塩、(モノチオ-又はジチオ-)亜リン酸の完全エステル及び部分エステル並びに部分エステルの金属塩およびアミン塩、等のリン系およびリン-硫黄系添加剤;並びに、ナフテン酸金属塩(Pb塩等)、脂肪酸金属塩(Pb塩等)、ホウ素化合物、等を挙げることができる。
潤滑油組成物が摩耗防止剤または極圧剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.05~5質量%であり得る。
【0069】
(G)粘度指数向上剤または流動点降下剤としては、潤滑油分野において公知の粘度指数向上剤または流動点降下剤を用いることができる。粘度指数向上剤の例としては、分散型又は非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート;非分散型又は分散型エチレン-α-オレフィン共重合体及びその水素添加物;ポリイソブチレン及びその水素添加物;スチレン-ジエン共重合体の水素添加物;スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体;並びに、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
流動点降下剤の例としては、ポリメタクリレート系ポリマー、エチレンビニルアセテート等を挙げることができる。
潤滑油組成物が粘度指数向上剤または流動点降下剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.01~20質量%であり得る。
【0070】
(H)腐食防止剤としては、潤滑油分野において公知の腐食防止剤を用いることができる。その例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、及びイミダゾール系化合物等を挙げることができる。
潤滑油組成物が腐食防止剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.005~5質量%であり得る。
【0071】
(I)防錆剤としては、潤滑油分野において公知の防錆剤を用いることができる。その例としては、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等を挙げることができる。
潤滑油組成物が防錆剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.005~5質量%であり得る。
【0072】
(J)金属不活性化剤としては、潤滑油分野において公知の金属不活性化剤を用いることができる。その例としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等を挙げることができる。
潤滑油組成物が金属不活性化剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.005~1質量%であり得る。
【0073】
(K)抗乳化剤としては、例えばポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を用いることができる。潤滑油組成物が抗乳化剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.005~5質量%であり得る。
【0074】
(L)消泡剤としては、潤滑油分野において公知の消泡剤を用いることができる。その例としては、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等を挙げることができる。潤滑油組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、例えば0.0001~0.1質量%であり得る。
【0075】
(M)着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例>
(分子量および分子量分布測定)
以下の実施例において、試料の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算での数平均分子量として測定した。GPCの測定条件は次の通りである。
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT125A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本、および、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT45A(ゲル粒径1.7μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液
溶離液:THF
溶液注入量:20.0μL
流量:0.7mL/分
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)10点(分子量:30230、9590、2970、890、786、682、578、474、370、266)
【0077】
(動粘度および粘度指数の測定)
以下の実施例において、試料の動粘度は、JIS K 2283-2000に準拠し、測定装置として自動粘度計(商品名「CAV-2000」、Cannon Instrument社製)を用いて測定した。また試料の粘度指数は、JIS K 2283-2000に準拠して、40℃及び100℃における動粘度の測定値に基づいて決定した。
【0078】
(参考例1)
以下の手順によりポリプロピレングリコール(PPG)のヒドロキシ基をトリメチルシリル(TMS)基でシリル化して、対応するポリアルキレンジオールがPPG(一般式(1)においてR1がプロパン-1,2-ジイル基)であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物(TMS変性PPG)を製造した。
PPG(Mn=200)10.00gを200mLのナスフラスコに測り取り、ここに脱水THF50mLを加えた。ここにトリエチルアミン(TEA)200mmolを加え、強力に攪拌しながら氷冷下(0℃)にて、トリメチルクロロシラン(TMS-Cl)101mmolを1時間かけて滴下し、スラリー状の反応混合物をさらに1時間継続して攪拌した。反応終了後に20mLの水をゆっくり加えて、白色不溶物を溶解し、エバポレーターでTHFを留去し、残存物からヘキサン50mLで2回、有機物を抽出した。ヘキサン層を飽和食塩水で洗浄し、洗浄されたヘキサン層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過にて乾燥剤を除去したヘキサン溶液から減圧下でヘキサンを留去して、TMS変性PPGを得た。得られた変性物の動粘度を測定した。結果を表1中に示す。
【0079】
(比較例1)
実施例1で原料として用いたPPGについて、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表1中に示す。
【0080】
(実施例2)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物(TMS変性PPG)を製造した。
ポリアルキレンジオールとして実施例1で使用したPPGとは数平均分子量の異なるPPG(Mn=750)20.00gを使用し、TEAの使用量を150mmolに変更し、TMS-Clの使用量を68mmolに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、TMS変性PPGを合成した。得られた変性物の動粘度を表1中に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例2で原料として用いたPPGについて、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表1中に示す。
【0082】
(実施例3)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物(TMS変性PPG)を製造した。
ポリアルキレンジオールとして実施例1で使用したPPGとは数平均分子量の異なるPPG(Mn=1120)9.82gを使用し、TEAの使用量を60mmolに変更し、TMS-Clの使用量を22mmolに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、TMS変性PPGを合成した。得られた変性物の動粘度を表1中に示す。
【0083】
(比較例3)
実施例3で原料として用いたPPGについて、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表1中に示す。
【0084】
(参考例4)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物(TMS変性PPG)を製造した。
ポリアルキレンジオールとして実施例1で使用したPPGとは数平均分子量の異なるPPG(Mn=2110)20.00gを使用し、TEAの使用量を50mmolに変更し、TMS-Clの使用量を24mmolに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、TMS変性PPGを合成した。得られた変性物の密度および動粘度を表1中に示す。
【0085】
(比較例4)
実施例4で原料として用いたPPGについて、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表1中に示す。
【0086】
(実施例5)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がジメチルフェニル基(DMPS基)である形態のポリアルキレンジオール変性物(DMPS変性PPG)を製造した。
実施例3で使用したPPG19.56gを200mLのナスフラスコに測り取り、ここに脱水ヘキサン50mLを加えた。ここにTEA(46mmol)を加えて、さらにジメチルフェニルクロロシラン(DMPS-Cl、38mmol)をゆっくりと加えて、反応混合物を3時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、水(20mL)を加え、白色沈殿を溶解した。ヘキサン層を分離し、水層をトルエン50mLで2回抽出した。有機層を混合し、飽和食塩水で洗浄し、洗浄された有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過で分離し、溶媒を減圧下で留去することで、DMPS変性PPGを得た。得られた変性物の動粘度を表2中に示す。
【0087】
(実施例6)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がtert-ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)である形態のポリアルキレンジオール変性物(TBDMS変性PPG)を製造した。
水素化ナトリウム(NaH、60% in Oil、40mmol)を200mLナスフラスコに測り取り、脱水ヘキサン10mLを加えて攪拌、静置後に上澄みを注射器で取り除いた。このヘキサン洗浄操作を3回繰り返し、洗浄されたNaHに脱水トルエン100mLを加えた。ここに実施例3で使用したPPG(11.12g)を発泡に注意しながらゆっくりと加えた。さらにtert-ブチルジメチルクロロシラン(TBDMS-Cl、22mmol)を加え、80℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水20mLを加えて、白色沈殿を溶解させた。トルエン層を分離し、水層をトルエン50mLで2回抽出した。有機層を混合し、飽和食塩水で洗浄した。洗浄したトルエン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過で乾燥剤を除去し、減圧下でトルエンを留去して、TBDMS変性PPGを得た。得られた変性物の動粘度を表2中に示す。
【0088】
(実施例7)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がトリイソプロピルシリル基(TIPS基)である形態のポリアルキレンジオール変性物(TIPS変性PPG)を製造した。
実施例3で使用したPPGの使用量を10.48gとし、トルエンの使用量を200mLとし、TBDMS-Clの代わりにトリイソプロピルクロロシラン(TIPS-Cl、20mmol)を使用すること以外は、実施例6と同様の手順により、TIPS変性PPGを得た。得られた変性物の動粘度を表2中に示す。
【0089】
(参考例8)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがPPGであり、一般式(1)においてQ1及びQ2がtert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS基)である形態のポリアルキレンジオール変性物(TBDPS変性PPG)を製造した。
実施例3で使用したPPGの使用量を16.01gとし、トルエンの使用量を200mLとし、TBDMS-Clの代わりにtert-ブチルジフェニルクロロシラン(TBDPS-Cl、30mmol)を使用すること以外は、実施例6と同様の手順により、TBDPS変性PPGを得た。得られた変性物の動粘度を表2中に示す。
【0090】
(実施例9)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがポリエチレングリコール(PEG)であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物(TMS変性PEG)を製造した。
PEG(Mn=810)11.19gを200mLのナスフラスコに測り取り、ここに脱水トルエン50mLを加えた。ここにTEA(70mmol)を加え、強力に攪拌しながら氷冷下(0℃)にて、TMS-Cl(48mmol)を1時間かけて滴下し、スラリー状の反応混合物をさらに1時間続けて攪拌した。反応混合液を減圧濾過し、そのままケーキ分からヘキサン300mLで可溶分を抽出して、先のろ液(トルエン溶液)と混合した。白色沈殿が再度生成し、再度減圧濾過を行った。ろ液から減圧下で溶媒を留去し、TMS変性PEGを得た。その動粘度を表3に示す。
【0091】
(比較例5)
実施例9で原料として用いたPEGについて、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表3中に示す。
【0092】
(実施例10)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがプロピレンオキシド(PO、90質量%)-エチレンオキシド(EO、10質量%)共重合体であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物を製造した。
ポリアルキレンジオール(PO(90質量%)-EO(10質量%)共重合体(Mn=1210))21.07gをTHF(50mL)に溶解し、ここにTEA(70mmol)を加えた。氷冷下で強力に攪拌しながら、この溶液にTMS-Cl(50mmol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後も攪拌を1時間継続した。この反応溶液に水20mLを加えて、減圧下でTHFを留去した。残留液からヘキサン50mLで2回、有機物を抽出した。得られたヘキサン溶液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過で乾燥剤を除去し、減圧下でヘキサンを留去してTMS変性物を得た。得られた変性物の動粘度を測定した。結果を表4中に示す。
【0093】
(比較例6)
実施例10で原料として用いたPO-EO共重合体(PO:EO共重合比=90:10w/w)について、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表4中に示す。
【0094】
(実施例11)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがブテンオキシド(BO)重合体であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物を製造した。
PO-EO共重合体に代えて、BO重合体(Mn=910)19.60gを使用すること以外は実施例10と同様の手順により、TMS変性物を得た。得られたTMS変性物の動粘度を表4中に示す。
【0095】
(比較例7)
実施例11で原料として用いたBO重合体について、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表4中に示す。
【0096】
(参考例12)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールが実施例11で用いたものとは数平均分子量の異なるBO重合体であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物を製造した。
ポリアルキレンジオールとして、実施例11で用いたものとは数平均分子量の異なるBO重合体(Mn=570)20.50gを用い、TEAの使用量を100mmolとし、TMS-Clの使用量を70mmolとすること以外は実施例10と同様の手順により、TMS変性物を得た。得られたTMS変性体の動粘度を表4中に示す。
【0097】
(比較例8)
実施例12で原料として用いた、数平均分子量570のBO重合体について、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表4中に示す。
【0098】
(実施例13)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがTHF(45質量%)-EO(55質量%)共重合体であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物を製造した。
ポリアルキレンジオールとしてTHF(45質量%)-EO(55質量%)共重合体(Mn=1760)19.29gを用い、TEAの使用量を150mmolとし,TMS-Clの使用量を103mmolとすること以外は実施例10と同様の手順により、TMS変性物を得た。得られたTMS変性体の動粘度を表4中に示す。
【0099】
(比較例9)
実施例13で原料として用いたTHF-EO共重合体(THF:EO共重合比=45:55w/w)について、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表4中に示す。
【0100】
(参考例14)
以下の手順により、対応するポリアルキレンジオールがTHF(60質量%)-EO(40質量%)共重合体であり、一般式(1)においてQ1及びQ2がTMS基である形態のポリアルキレンジオール変性物を製造した。
ポリアルキレンジオールとしてTHF(60質量%)-EO(40質量%)共重合体20.36gを用い、TEAの使用量を70mmolとし、TMS-Clの使用量を50mmolとすること以外は、実施例10と同様の手順により、TMS変性物を得た。得られたTMS変性体の動粘度を表4中に示す。
【0101】
(比較例10)
実施例14で原料として用いたTHF-EO共重合体(THF:EO共重合比=60:40w/w)について、40℃及び100℃における動粘度を測定した。結果を表4中に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】