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特許7690717拡張可能な血塊係合フレームワークを有する血塊回収システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】拡張可能な血塊係合フレームワークを有する血塊回収システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20250604BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021102255
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2022001257
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-05-01
(31)【優先権主張番号】16/908,161
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ウィーラン
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535352(JP,A)
【文献】特表2018-537183(JP,A)
【文献】特開2019-005587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0021750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血塊を身体血管から除去するための血塊除去装置であって、前記血塊除去装置は、
血塊係合フレームワークであって、前記血塊係合フレームワークは、畳み込まれた送達構成と、血塊係合展開構成と、血塊挟持構成と、を含み、前記血塊係合フレームワークの少なくとも一部は、前記血塊係合展開構成で血塊と係合し、前記血塊係合展開構成から前記血塊挟持構成への移動時に血塊を挟持するように構成されている、血塊係合フレームワークと、
近位端及び遠位端を含むハイポチューブであって、前記遠位端は、前記ハイポチューブの前記遠位端に近接する前記血塊係合フレームワークによって少なくとも部分的に囲まれている、ハイポチューブと、
前記ハイポチューブ内の畳み込まれた送達構成から、前記ハイポチューブの前記遠位端に対して遠位の、拡張された展開構成へと移動可能である、遠位塞栓保護システムと、を備える、血塊除去装置。
【請求項2】
前記ハイポチューブは、血塊把持外面を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記血塊係合フレームワークの少なくとも一部が、らせん状構成で前記ハイポチューブを取り囲む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハイポチューブは、前記血塊を越えるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記拡張された展開構成にある前記遠位塞栓保護システムは、回収カテーテルを通して移動するようにサイズ決めされている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、血管内医療処置中に血管から遮断物を除去するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、血管から急性の遮断物を除去することを目的とした装置に関する。急性の閉塞物としては、血塊、誤配置された装置、移動された装置、大きな塞栓などが挙げられ得る。血栓塞栓症は、血栓の一部又は全てが血管壁から剥離したときに発生する。この血塊(ここでは、塞栓と呼ぶ)は次に、血流の方向に運ばれる。虚血発作は、血塊が静脈系で又は心臓の右側で発生し、かつ肺動脈又はその支脈内で詰まった場合に、結果として生じ得る。血塊はまた、解放されずに塞栓の形状で発達して血管を局所的に遮断し得るが、この機序は、冠状動脈の遮断物の形成において一般的である。
【0003】
血塊は、多くの場合、血管から除去する際に剪断又は破損を受け得る。本発明は、血塊を剪断することなく、かつ/又は血塊の残留部分を残すことなく、血管全体を除去するのに特に適している。本装置は、急性虚血発作(AIS)に苦しむ患者の大脳動脈内、心筋梗塞(MI)に苦しむ患者の本来の血管又は移植血管内、及び肺塞栓症(PE)に苦しむ患者の肺動脈内、並びに凝血塊が閉塞を引き起こしているその他の末梢動脈及び静脈内で使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
血塊を身体血管から除去するための血塊除去装置が本明細書に提示される。装置は、著しい表面積にわたって血塊と係合するように拡張することによって血塊回収を容易にし得る。血塊は、少なくとも1つの硬質部分及び少なくとも1つの軟質部分を有し得る。血塊の少なくとも1つの硬質部分は、装置の近位部分によって挟持され得る一方、血塊の少なくとも1つの軟質部分は、抽出時に装置の遠位部分によって保持され得る。挟持は、カテーテルの先端部と装置上のクラウン又はストラットとの間で血塊の一部が圧縮されるまで、マイクロカテーテル又は中間カテーテルを装置の上に進めることによって達成され得る。しかしながら、血塊の移動及び除去は、血塊のより軟質な部分を剪断又は破断させる場合があり、その結果、血管内の血塊の小さな浮遊断片が主血塊に付着しなくなる。この装置はまた、血管から血塊を除去する際に、血塊の剪断又は拡張された遠位部分を捕捉又は保持することが意図される。
【0005】
本明細書に提示されるいくつかの実施例では、マイクロカテーテル及びガイドワイヤは、回収カテーテルを介して患者の脈管構造に挿入され、血塊を横切って前進させられ得る。マイクロカテーテルが適所にあるとき、ガイドワイヤを除去して、血塊回収装置がマイクロカテーテルを通って血塊まで前進することを可能にすることができる。装置は、畳み込まれた構成で前進させられ得る。次いで、装置が血塊を横切って展開されるように装置の位置が維持されている間に、マイクロカテーテルを後退させることができる。
【0006】
いくつかの実施例では、装置は、血塊係合フレームワーク、ハイポチューブ、及び遠位塞栓保護システムを含み得る。係合フレームワークは、畳み込まれた送達構成と、血塊係合展開構成と、血塊挟持構成と、を有し得る。係合フレームワークはまた、近位端、遠位端、及び遠位先端を有し得る。ハイポチューブは、らせん状構成の血塊係合フレームワークによって少なくとも部分的に囲まれた遠位端を含み得る。遠位塞栓保護システムは、ハイポチューブ内の畳み込まれた送達構成からハイポチューブの遠位端に対して遠位の展開構成に拡張し得る。
【0007】
いくつかの実施例では、装置が血塊を横切って展開された後、マイクロカテーテルを係合フレームワーク内へと遠位に前進させて、係合フレームワークを血塊挟持構成に移動させることができる。血塊挟持構成では、係合フレームワークの近位端のストラットが圧縮されて、血塊が挟持され得る。次いで、遠位塞栓保護システムが畳み込まれた送達構成でハイポチューブを通して前進させられ、ハイポチューブの遠位端に対して遠位の、拡張された構成に展開され得る。展開構成における係合フレームワークのストラットは、血塊の硬質部分に係合して保持するための血塊把持面を有し得る。装置が挟持構成にあり、遠位塞栓保護システムが展開された後は、マイクロカテーテル及び装置を回収カテーテルに向かって後退させることができる。後退中、血塊の小さく、より軟質な部分は、より硬質でより大きい血塊から破断又は剪断され得る可能性がある。遠位塞栓保護システムは、装置の除去時に血塊のこれらのより軟質な部分を保持する包括的機序として機能し得る。装置は、回収カテーテルを通して除去され得る。
【0008】
本明細書に記載されるいくつかの実施例では、装置は、プルワイヤ及びステントリーバを含み得る。プルワイヤは、ステントリーバの遠位端に隣接して固定され得る。ステントリーバは、近位らせん状セクション、遠位円筒体セクション、及び遠位円錐を含み得る。らせん状セクションの少なくとも一部は、プルワイヤを取り囲み得る。ステントリーバは、先に述べたようにマイクロカテーテルを後退させると、畳み込まれた送達構成から挟持構成へと拡張し、次いで、拡張構成に更に拡張し得る。挟持構成では、遠位円筒体セクションは第1の直径を有し得、マイクロカテーテルは、近位らせん状セクションに向かって遠位方向に前進して、近位らせん状部分の開口部を畳み込み、マイクロカテーテルの遠位端と近位らせん状セクションとの間に血塊の硬質部分を挟持し得る。ステントリーバが挟持構成になった後は、プルワイヤを後退させて、ステントリーバを拡張構成に拡張することができる。拡張構成では、遠位円筒体セクションは、第2のより大きな直径まで半径方向に拡張し、そうでなければ装置の除去時の剪断又は破損に対して脆弱であり得る血塊の任意の軟質部分と係合し得る。ステントリーバが拡張構成になった後、マイクロカテーテル及び装置を、患者から除去するために、脈管構造を通して回収カテーテル内に後退させることができる。
【0009】
閉塞血管を有する患者を処置するための例示的な方法は、特定の順番なしに提示される以下の工程のうちの1つ以上を含むことができ、この方法は、ここでは含まれていない追加の工程を含むことができる。マイクロカテーテル内に位置付けられた血塊係合フレームワークは、標的閉塞血管に送達され得る。遠位塞栓保護システムを有するハイポチューブは、血塊係合フレームワークを用いて閉塞血管に送達され得る。血塊係合フレームワークは、展開されて、血塊の少なくとも一部と接触し得る。ハイポチューブは、血塊を横切って前進させられ得る。マイクロカテーテルは、血塊係合フレームワークの近位部分上に前進し、それによって血塊を挟持し得る。遠位塞栓保護システムは展開され得る。次いで、血塊係合フレームワーク、遠位塞栓保護システム、及び血塊を患者から引き抜くことができる。この方法は、血塊をハイポチューブの外面で把持することを更に含み得る。この方法はまた、遠位塞栓保護システムを用いて血塊断片を捕捉することを含み得る。
【0010】
閉塞血管を有する患者を処置するための別の例示的な方法は、特定の順番なしに提示される以下の工程のうちの1つ以上を含むことができ、この方法は、ここでは含まれていない追加の工程を含むことができる。ステントリーバ及びプルワイヤを含む装置は、マイクロカテーテルを通して閉塞血管に送達され得る。ステントリーバは、ステントリーバの近位らせん状部分がらせん体を形成し、ステントリーバの遠位円筒形部分が円筒体を形成する展開されて、血塊の少なくとも一部と接触し得る。血塊の少なくとも一部は、ステントリーバのらせん状部分によって挟持され得る。プルワイヤを後退させると、ステントリーバの円筒形部分が半径方向に拡張され得る。マイクロカテーテル及び装置は、血管から同時に引き抜かれ得る。次いで、装置、マイクロカテーテル、及び血塊が患者から除去され得る。この方法は、ステントリーバの遠位円錐内に血塊の少なくとも一部を収集することを更に含み得る。この方法はまた、らせん状セクションの少なくとも一部がプルワイヤを取り囲むように装置を位置決めすることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、例示目的のみで示されるそのいくつかの実施形態の以下の説明から、添付の図面を参照して、より明確に理解されるであろう。
図1A】本発明の態様による、血管内の標的場所への血塊回収装置の送達を示す。
図1B】本発明の態様による、血管内の標的場所への血塊回収装置の送達を示す。
図2A】本発明の態様による、血塊回収装置の様々な機械的構成要素を示す。
図2B】本発明の態様による、血塊回収装置の様々な機械的構成要素を示す。
図2C】本発明の態様による、血塊回収装置の様々な機械的構成要素を示す。
図3A】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図3B】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図3C】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図3D】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図3E】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図4A】本発明の態様による、血管内の標的場所への血塊回収装置の送達を示す。
図4B】本発明の態様による、血管内の標的場所への血塊回収装置の送達を示す。
図5A】本発明の態様による、血塊回収装置の様々な機械的構成要素を示す。
図5B】本発明の態様による、血塊回収装置の様々な機械的構成要素を示す。
図6A】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図6B】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図6C】本発明の態様による、血塊回収装置を使用した血管からの血塊の除去を示す。
図7】本発明の態様による、閉塞血管を有する患者を処置する方法を示すフロー図である。
図8】本発明の態様による、閉塞血管を有する患者を処置する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の具体的な実施形態が、ここで図面を参照して詳細に説明されるが、同一の参照番号は、同一又は機能的に類似した要素を示す。「遠位」及び「近位」という用語は、以下の記載において、治療する医師に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」とは、医師から離れた位置又は医師から離れる方向である。「近位」又は「近位に」又は「近接」とは、医師に近い位置又は医師に向かう方向である。
【0013】
大脳、冠状動脈、及び肺静脈にアクセスすることは、多数の市販の製品及び従来の処置工程を使用することを伴う。ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、血管造影カテーテル及びマイクロカテーテルなどのアクセス製品は、他の場所で説明され、カテーテル検査法で定常的に使用されるものである。以下の記述において、これらの製品及び方法は、本発明の装置及び方法と併せて用いられることが想定され、そのことを詳細に説明する必要はない。
【0014】
以下の詳細な説明は、本質的に単に説明的なものであり、本発明又は本発明の用途及び使用を制限することを意図されていない。本発明の説明は、多くの場合は頭蓋内動脈の処置との関連におけるものであるが、本発明はまた、前述のようなその他の身体通路においても使用され得る。
【0015】
開示された設計の拡張可能な部材は、望ましくは、強く変形された送達構成から解放されると、その形状を自動的に回復することができる材料から作製される。ニチノール又は類似の特性を有する合金などの超弾性材料が特に好適である。材料は、ワイヤ又はストリップ又はシート又は管などの多くの形態であり得る。特に好適な製造プロセスは、ニチノール管をレーザ切断し、次いで、結果として生じた構造体を熱処理及び電解研磨して、ストラット及び接続要素のフレームワークを作製することである。このフレームワークは、本明細書に開示されるように多種多様な形状のいずれかにすることができ、合金元素(例えば、白金など)の添加を通して、又は様々な他のコーティング若しくはマーカーバンドを通して、蛍光透視法の下で可視化されてもよい。
【0016】
本明細書で使用されるとき、用語「管状」及び「管」は、広義に解釈されるものとし、直円柱構造や、断面が厳密に円形である構造、長さにわたって均一な断面である構造に制限されるものではない。例えば、管状構造又は管状システムは、一般に、実質的に直円柱構造として図示される。しかしながら、管状システムは、本発明の範囲から逸脱することなく、テーパ状又は湾曲した外側表面を有し得る。
【0017】
この装置は、著しい表面積にわたって血塊と係合するように拡張することによって血塊回収を容易にすることが意図される。血塊の一部は、カテーテルの先端と装置のニチノールストラットとの間に挟持され得る。血塊は、少なくとも1つの硬質部分及び少なくとも1つの軟質部分を有し得る。血塊の少なくとも1つの硬質部分は、装置の近位部分によって挟持され得る一方、血塊の少なくとも1つの軟質部分は、抽出時に装置の遠位部分によって保持され得る。挟持は、カテーテルの先端部と装置上のクラウン又はストラットとの間で血塊の一部が圧縮されるまで、マイクロカテーテル又は中間カテーテルを装置の上に進めることによって達成され得る。この挟持により、血塊に対して、特に、フィブリンが豊富な血塊に対して装置の把持力が増すので、血塊の除去は容易になる。これはまた、血塊も伸長させ得、移動させるプロセス中に血塊を血管壁から離れる方向に引くことによって、移動に要する力を減少させ得る。しかしながら、血塊の移動及び除去は、血塊の軟質部分を剪断又は破断させる場合があり、その結果、血管内の血塊の小さな浮遊断片は、主血塊に付着しなくなる。この装置はまた、血管から血塊を除去する際に、血塊の軟質の剪断又は拡張された遠位部分を捕捉し、保持することが意図される。
【0018】
図1A及び図1Bは、血塊101を除去するための血塊回収装置110の、血管100から標的場所への送達を示す。図1Aに示すように、マイクロカテーテル103及びガイドワイヤは、回収カテーテル104を介して脈管構造100内に挿入され、従来既知の技法を用いて血塊101を横切って前進させられ得る。マイクロカテーテル103が血塊101の遠位に位置付けられると、血塊回収装置110がマイクロカテーテル102を通って前進することができるように、ガイドワイヤを脈管構造から除去することができる。装置110は、装置110の遠位先端がマイクロカテーテル103の遠位端に到達するまで、畳み込まれた構成で前進させられ得る。
【0019】
図1Bでは、装置110の遠位端が血塊101の遠位に位置付けられるような方法で装置110が血塊101を横切って展開されるように、装置110の位置が維持されている間に、マイクロカテーテル103を後退させることができる。
【0020】
図2A図2Cに更に示されるように、装置110は、血塊係合フレームワーク112、ハイポチューブ111、及び遠位塞栓保護システム115を含み得る。係合フレームワーク112は、畳み込まれた送達構成と、血塊係合展開構成と、血塊挟持構成と、を有し得る。係合フレームワークはまた、近位端112a、遠位端112b、及び遠位先端162を有し得る。血塊挟持構成では、血塊係合フレームワーク112の少なくとも一部は、展開構成で血塊101の硬質部分と係合し、展開構成から血塊挟持構成への移動時に血塊101を挟持するように構成され得る。ハイポチューブ111は、近位端及び遠位端を含み得、遠位端は、ハイポチューブ111の遠位端に隣接する血塊係合フレームワーク112によって少なくとも部分的に囲まれている。ハイポチューブ111はまた、血塊把持外面を有し得る。遠位塞栓保護システム115は、ハイポチューブ111内の畳み込まれた送達構成から、ハイポチューブの遠位端に対して遠位の、拡張された展開構成に移動可能であり得る。遠位塞栓保護システム115はまた、近位縁部115aを有し得る。
【0021】
図2Aでは、装置110が、展開構成にて示されている。図2Aに見られるように、血塊係合部分112の少なくとも一部は、らせん状構成でハイポチューブ111を取り囲む。図2Bに示されるように、マイクロカテーテル103を係合フレームワーク112内へと遠位に前進させると、係合フレームワークは血塊挟持構成に移動することができ、これによって、血塊を挟持して血管から抽出するために、係合フレームワークの近位端112aのストラットが圧縮される。この挟持効果は、図2A及び図2Bに示される矢印によって見ることができる。このセクションのセルは、装置110が完全に展開されたときに開放される。装置110がマイクロカテーテル103によって圧縮されると、それらの間の血塊101を除去するためにより堅固に把持するため、セルが閉じて血塊101を「挟持」する。図2Cに更に示されるように、遠位塞栓保護システム115は、畳み込まれた送達構成でハイポチューブ111を通って前進させられ、ハイポチューブ111の外側に拡張された構成に展開され得る。塞栓保護システム115は、ハイポチューブ111の遠位端に対して遠位に展開され得る。塞栓保護システム115は、係合フレームワーク112の遠位先端162の遠位に展開され得る。
【0022】
図3A図3Eでは、血塊回収装置110を使用した血管からの血塊101の除去が示されている。装置110は、図1A及び図1Bで前述したように、血塊101を横切って前進させられ得る。図3Aに示されるように、マイクロカテーテル103を後退させると、係合フレームワーク112が展開構成へと拡張し得る。展開構成における係合フレームワーク112のストラットは、血塊101の除去を補助するために、血塊101aの硬質部分に係合して保持するための血塊把持面を有し得る。係合フレームワークが展開構成になった後、遠位塞栓保護システム115は、係合フレームワーク112の遠位先端162の遠位の、拡張された構成に展開され得る。次いで、図3Bに示されるように、マイクロカテーテル103は、前述のようにマイクロカテーテルと係合フレームワーク112との間で血塊の硬質部分を挟持するように前進させられ得る。図3Eは、係合フレームワーク112が、血塊101aの硬質な近位端を挟持する挟持構成にあり、保護システム115が展開されている、装置110の構成の拡大図を示す。挟持が達成された後、マイクロカテーテル及び装置は、図3Cに示されるように、脈管構造を通して回収カテーテル104に向かって後退させられ得る。後退中、血塊101bの小さく、より軟質な部分は、より硬質でより大きい血塊101から破断又は剪断され得る可能性がある。遠位塞栓保護システム115は、装置の除去時に血塊のこれらのより軟質な部分を保持する包括的機序として機能し得る。保護システム115は、軟質な血塊断片101bと血管の遠位部分との間にバリアを形成して、血塊断片101bが血管に再び入ることを防止し、血塊断片101bが血塊101の残りの部分と共に除去されることを確実にし得る。
【0023】
図3Dでは、装置110は回収カテーテル104を通して除去される。拡張された展開構成にある遠位塞栓保護システム115は、回収カテーテル104を通して移動するようにサイズ決めされ得る。
【0024】
図1A及び図1Bのものと同様に、図4A及び図4Bは、血塊101を除去するための血塊回収装置200の、血管100から標的場所への送達を示す。図4Aに示すように、マイクロカテーテル103及びガイドワイヤは、回収カテーテル104を介して脈管構造100内に挿入され、従来既知の技法を用いて血塊101を横切って前進させられ得る。血塊101は、前述のように、少なくとも1つの硬質部分及び少なくとも1つの軟質部分を有し得る。マイクロカテーテル103が血塊101の遠位に位置付けられると、血塊回収装置200がマイクロカテーテル103を通って前進することができるように、ガイドワイヤを脈管構造から除去することができる。装置200は、装置200の遠位先端がマイクロカテーテル103の遠位端に到達するまで、畳み込まれた構成で前進させられ得る。
【0025】
図4Bでは、装置200の遠位端が血塊101の遠位に位置付けられるような方法で装置200が血塊101を横切って展開されるように、装置200の位置が維持されている間に、マイクロカテーテル103を後退させることができる。装置200は、プルワイヤ204及びステントリーバ202を含み得る。プルワイヤ204は、ステントリーバ202の遠位端に隣接してステントリーバ202に固定され得る。ステントリーバ202は、近位らせん状セクション206、遠位円筒体セクション208、及び遠位円錐210を含み得る。らせん状セクション206の少なくとも一部は、プルワイヤ204を取り囲み得る。ステントリーバ202は、畳み込まれた送達構成から挟持構成へと拡張し、次いで拡張構成に更に拡張するように構成され得る。畳み込まれた送達構成では、ステントリーバ202及びプルワイヤ204は、カテーテル103の内部にあり得る。装置はまた、先行する図に記載されたものと同様の遠位保護システム115を含み得る。
【0026】
図5Aに示すように、挟持構成では、ステントリーバ202及びプルワイヤ204の一部は、カテーテル103の外側に位置し得る。挟持構成では、遠位円筒体セクション208は、第1の直径D1を有し得る。図5Bでは、マイクロカテーテル103が、近位らせん状セクション206に向かって遠位に前進して、マイクロカテーテルの遠位端103aと近位らせん状セクション206との間の血塊の硬質部分を挟持し得る。カテーテル103が遠位に移動すると、ステントリーバ202の近位らせん状部分206の開口部が畳み込まれて血塊を挟持し、その結果、血塊の近位端がカテーテル103及び近位らせん状セクション206によって保持される。図5Bに更に示されるように、ステントリーバ202がマイクロカテーテル103を出て挟持構成になったら、ステントリーバ202を拡張構成に拡張するために、プルワイヤ104をステントリーバ202に対して後退させることができる。拡張構成では、プルワイヤ204がステントリーバ202に対して移動すると、遠位円筒体セクション208は、第2の直径D2まで拡張し得る。拡張構成では、円筒体セクション208は、そうでなければ装置200の除去時の剪断又は破損に対して脆弱であり得る血塊の任意の軟質部分と係合し得る。プルワイヤ204がステントリーバ202に対して近位に後退すると、円筒体セクション208の直径D2は、挟持構成で円筒体セクション208の直径D1よりも大きくなるように半径方向に拡張し得る。
【0027】
図6A図6Cでは、血塊回収装置200を使用した血管からの血塊101の除去が示されている。図6Aでは、装置200は、図4A及び図4Bで前述したように、血塊101を横切って前進させられ得る。図6Aに示されるように、マイクロカテーテル103が後退すると、ステントリーバ202は展開構成へと拡張し得る。展開構成におけるステントリーバ202のストラットは、血塊101の除去を補助するために、血塊101に係合して保持するための血塊把持面を有し得る。ステントリーバ202が展開構成になった後、図6Bに示されるように、ステントリーバ202は、拡張構成へと拡張され得る。次いで、マイクロカテーテル103は、前述のようにマイクロカテーテルと近位らせん状セクション206との間で血塊101aの硬質部分を挟持するように前進させられ得る。挟持が達成された後、マイクロカテーテル及び装置200は、図6Cに示されるように、回収カテーテル104に向かって後退させられ得る。装置200の後退中に、円筒体セクション208は、そうでなければ装置200の除去時の剪断又は破損に対して脆弱であり得る血塊101の任意の軟質部分と係合して、血塊101全体が除去されることを確実にし得る。
【0028】
他の実施例は、前に例示したように、遠位塞栓保護システムを含み得る。遠位塞栓保護システム115は、装置の除去時にこれらの血塊を保持する包括的機序として機能し得る。保護システム115は、血塊断片101bと血管の遠位部分との間にバリアを形成して、血塊断片101bが血管に再び入ることを防止し、血塊断片101bが血塊101の残りの部分と共に除去されることを確実にし得る。しかしながら、この実施例は、遠位塞栓保護システム115の有無にかかわらず、漂遊塞栓101bを捕捉し得ることに留意されたい。
【0029】
図7は、閉塞血管を有する患者を処置する方法300を示すフロー図である。この方法は、マイクロカテーテル内に位置付けられた血塊係合フレームワークを送達すること(310)と、血塊係合フレームワークを用いて、遠位塞栓保護システムを内部に収容するハイポチューブを閉塞血管に送達すること(320)と、血塊係合フレームワークを展開して、血塊の少なくとも一部と接触させること(330)と、ハイポチューブで血塊を越えること(340)と、血塊係合フレームワークの近位部分上にマイクロカテーテルを前進させ、それによって血塊を挟持すること(350)と、遠位塞栓保護システムを展開すること(360)と、血塊係合フレームワーク、遠位塞栓保護システム、及び血塊を患者から引き抜くこと(390)と、を含み得る。
【0030】
方法300では、血塊係合部分は、らせん状構成でハイポチューブを少なくとも部分的に取り囲み得る。方法300は、血塊係合フレームワーク及び遠位塞栓保護システムをマイクロカテーテル内に引き込むことと、血塊係合フレームワーク、遠位塞栓保護システム、及び血塊を患者から除去することと、を更に含み得る。方法300はまた、血塊、血塊係合フレームワーク、及び遠位塞栓保護システムを同時に引き抜くことを含み得る。方法300は、血塊をハイポチューブの外面で把持すること(370)を更に含み得る。方法300はまた、遠位塞栓保護システムを用いて血塊断片を捕捉すること(380)を含み得る。
【0031】
図8は、閉塞血管を有する患者を処置する方法400を示すフロー図である。閉塞は血塊を含み得る。方法400は、マイクロカテーテルを介して装置を送達することであって、装置は、閉塞血管へのステントリーバ及びプルワイヤを有する、こと(410)と、ステントリーバの近位らせん状部分がらせん体を形成し、ステントリーバの遠位円筒形部分が円筒体を形成するように、ステントリーバを展開して、血塊の少なくとも一部と接触させること(420)と、ステントリーバのらせん状部分によって血塊の少なくとも一部を挟持すること(430)と、ステントリーバの円筒形部分を半径方向に拡張させるためにプルワイヤを後退させること(440)と、マイクロカテーテル及び装置を血管から同時に引き抜くこと(450)と、装置、マイクロカテーテル、及び血塊を患者から除去すること(470)と、を含み得る。
【0032】
血塊の少なくとも一部をらせん状部分で挟持する工程430は、らせん状部分の第1の部分をマイクロカテーテルに向かって近位に移動させ、それによって、らせん状部分の第2の部分を畳み込み、血塊を挟持させることを更に含み得る。方法400は、ステントリーバの遠位円錐内に血塊の少なくとも一部を収集すること(460)を更に含み得る。遠位円錐内に血塊の少なくとも一部を収集する工程460は、プルワイヤを後退させて遠位円錐を半径方向に拡張させることを更に含み得る。方法400は、らせん状セクションの少なくとも一部がプルワイヤを取り囲むように装置を位置決めすることを更に含み得る。
【0033】
本明細書に含まれる記述は、本発明の実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本開示の教示に従って当業者に明らかな変更は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0034】
〔実施の態様〕
(1) 血塊を身体血管から除去するための血塊除去装置であって、前記血塊除去装置は、
血塊係合フレームワークであって、前記血塊係合フレームワークは、畳み込まれた送達構成と、血塊係合展開構成と、血塊挟持構成と、を含み、前記血塊係合フレームワークの少なくとも一部は、前記展開構成で血塊と係合し、前記展開構成から前記血塊挟持構成への移動時に血塊を挟持するように構成されている、血塊係合フレームワークと、
近位端及び遠位端を含むハイポチューブであって、前記遠位端は、前記ハイポチューブの前記遠位端に近接する前記血塊係合フレームワークによって少なくとも部分的に囲まれている、ハイポチューブと、
前記ハイポチューブ内の畳み込まれた送達構成から、前記ハイポチューブの前記遠位端に対して遠位の、拡張された展開構成へと移動可能である、遠位塞栓保護システムと、を備える、血塊除去装置。
(2) 前記ハイポチューブは、血塊把持外面を更に含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記血塊係合部分の少なくとも一部が、らせん状構成で前記ハイポチューブを取り囲む、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記ハイポチューブは、前記血塊を越えるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記拡張された展開構成にある前記遠位塞栓保護システムは、回収カテーテルを通して移動するようにサイズ決めされている、実施態様1に記載の装置。
【0035】
(6) 血塊を身体血管から除去するための血塊除去装置であって、前記血塊除去装置は、カテーテルを介して前記血管に送達され、前記血塊除去装置は、
プルワイヤと、
近位らせん状セクションと遠位円筒体セクションとを含むステントリーバであって、前記遠位円筒体セクションは、畳み込まれた送達構成から挟持構成及び拡張構成へと拡張するように構成されている、ステントリーバと、を備え、
前記畳み込まれた送達構成では、前記ステントリーバ及び前記プルワイヤは、前記カテーテルの内側にあり、
前記挟持構成では、前記ステントリーバ及び前記プルワイヤの一部は、前記カテーテルの外側にあり、前記ステントリーバは第1の直径を含み、
前記拡張構成では、前記血塊の近位端は、カテーテルの遠位端に接触し、前記プルワイヤが前記ステントリーバに対して移動する際に、前記ステントリーバは第2の直径に移動する、血塊除去装置。
(7) 前記プルワイヤが前記ステントリーバに対して近位に後退すると、前記円筒体セクションの前記直径は、前記挟持構成における前記円筒体セクションの前記直径より大きくなるように半径方向に拡張する、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記プルワイヤは、前記ステントリーバの遠位端に隣接して前記ステントリーバに固定されている、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記らせん状セクションの少なくとも一部が前記プルワイヤを取り囲んでいる、実施態様6に記載の装置。
(10) 閉塞血管を有する患者を処置する方法であって、前記閉塞は血塊を含み、前記方法は、
マイクロカテーテル内に位置付けられた血塊係合フレームワークを送達する工程と、
前記血塊係合フレームワークを用いて、遠位塞栓保護システムを内部に備えるハイポチューブを前記閉塞血管まで送達する工程と、
前記血塊係合フレームワークを展開して、前記血塊の少なくとも一部と接触させる工程と、
前記ハイポチューブで前記血塊を越える工程と、
前記血塊係合フレームワークの近位部分上に前記マイクロカテーテルを前進させ、それによって前記血塊を挟持する工程と、
前記遠位塞栓保護システムを展開する工程と、
前記血塊係合フレームワーク、前記遠位塞栓保護システム、及び血塊を前記患者から引き抜く工程と、を含む、方法。
【0036】
(11) 前記血塊係合フレームワーク及び前記遠位塞栓保護システムを前記マイクロカテーテル内に引き込むことと、
前記血塊係合フレームワーク、前記遠位塞栓保護システム、及び血塊を前記患者から除去することと、を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記血塊、前記血塊係合フレームワーク、及び前記遠位塞栓保護システムを同時に引き抜くことを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記血塊を前記ハイポチューブの外面で把持することを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(14) 血塊断片を前記遠位塞栓保護システムで捕捉することを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記血塊係合部分が、らせん状構成において前記ハイポチューブを少なくとも部分的に取り囲む、実施態様10に記載の方法。
【0037】
(16) 閉塞血管を有する患者を処置する方法であって、前記閉塞は血塊を含み、前記方法は、
ステントリーバ及びプルワイヤを備える装置を、マイクロカテーテルを通して前記閉塞血管まで送達する工程と、
前記ステントリーバの近位らせん状部分がらせん体を形成し、前記ステントリーバの遠位円筒形部分が円筒体を形成するように、前記ステントリーバを展開して、前記血塊の少なくとも一部と接触させる工程と、
前記ステントリーバの前記らせん状部分によって前記血塊の少なくとも一部を挟持する工程と、
前記ステントリーバの前記円筒形部分を半径方向に拡張させるために前記プルワイヤを後退させる工程と、
前記血管から、前記マイクロカテーテル及び前記装置を同時に引き抜く工程と、
前記装置、前記マイクロカテーテル、及び前記血塊を前記患者から除去する工程と、を含む、方法。
(17) 前記血塊の少なくとも一部を前記らせん状部分で挟持する前記工程は、前記らせん状部分の第1の部分を前記マイクロカテーテルに向かって近位に移動させ、それによって、前記らせん状部分の第2の部分を畳み込み、前記血塊を挟持させることを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記血塊の少なくとも一部を、前記ステントリーバの遠位円錐内に収集することを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記遠位円錐を半径方向に拡張させるために、前記プルワイヤを後退させることを更に含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記らせん状セクションの少なくとも一部が前記プルワイヤを分割するように、前記装置を位置決めすることを更に含む、実施態様16に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8