(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】送風ユニットおよび空調衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20250604BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/00 102
(21)【出願番号】P 2021064622
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2024-03-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、環境省、空調負荷低減を実現する革新的快適新素材創出事業「未来型快適新素材の開発・実証」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 秀和
(72)【発明者】
【氏名】吉村 敏満
【審査官】岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007103(JP,A)
【文献】特開2018-194175(JP,A)
【文献】国際公開第2004/006699(WO,A1)
【文献】特開2018-091155(JP,A)
【文献】実開昭61-046207(JP,U)
【文献】特開平05-015862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服内に気流を発生させる空調衣服用の送風ユニットであって、空気を取り込むための吸気口および取り込んだ空気を衣服内へ送り込むための送風口を有するケースと、該ケース内に装填されたファンと、前記衣服内および/または前記ケース内に設置される温湿度センサーと、該温湿度センサーからの信号に応じてファンの回転数を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記温湿度センサーからの信号に応じて、少なくとも強弱いずれかの風量モードに設定可能であり、前記風量モードが強であるときに
、風量が一時的に低下する
とともに風量の波形が最小に到達した後には急激に大きくなるのこぎり波となるゆらぎ運転を行うことを特徴とする送風ユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載の送風ユニットを備えてなることを特徴とする空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暑熱感が抑制されることで衣服内環境を快適に保つことができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても着用快適性や意匠性に優れる空調衣服を提供することができる送風ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として、夏場にエアコンの設定温度を高くすることや冬場にエアコンの設定温度を低くすることは、二酸化炭素排出量の削減に有効な手段の一つである。しかしながら、エアコンの温度を変更した場合、オフィスや住居などの室内空間における快適性が低下し、特に夏場においては発汗によるべたつきによって不快を感じることが問題となる。そこで、ファンを用いることにより衣服内に気流を送り込み、快適性を維持するための衣服が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、羽根と該羽根を回転するモーターとにより衣服内に外気を送風し、着用者が行う作業量に応じて発生した汗を効率よく気化することを可能とした衣服が提案されている。該技術によれば、発生した汗をすべて気化することで体温を下げエアコンを利用した場合と比べて少ない電力で冷却を行うことができる。
【0004】
さらに特許文献2では、送風機ケース内に温度、湿度および加速度が検出できるセンサーを配置することで、衣服外の温度や不快指数、さらには着用者の運動量などから、あらかじめプログラムされたファンの風量を自動で切り替えることを可能とした衣服が提案されている。該技術によれば、不要なモーターの消費電力を抑えることができ、ファンの駆動時間を延ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4329118号公報
【文献】特開2019-7103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術によると、着用者が発汗した汗を効率よく気化することで効率よく着用者の身体を冷却することが可能となる。しかしながら、特許文献1の開示技術においては、ファンの風量を着用者が選択するため、過剰な強い風量を設定した場合は、適度な風量設定をした場合と比べてバッテリーの駆動時間が短くなってしまう。さらには着用者の深部体温が低下し、着用者が疲れを感じたり体調を崩す危険があったりという課題があった。
【0007】
また、特許文献2で開示されている技術によると、送風機ケース内に温度、湿度および加速度が検出できるセンサーを配置し、空気吸入口から空気排出口までの風路内の温度や不快指数、さらには着用者の運動量などからファンの風量を自動で設定するため、比較的最適なファン風量で送風することが可能となり、消費電力を抑えファンの駆動時間を延ばすことが可能となる。しかしながら、特許文献2の開示技術においては、センサーにより検知した着用者や着用者近辺の状況に応じて、例えば送風開始時に最も涼しさを得ることができる強風量モードがプログラムにより選択された場合であっても、その気流に身体が慣れてしまい、着用者が清涼感を持続的に感じることができないないという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来技術の課題を解決することを目的とし、強風量モードにおける身体の慣れを抑制し着用者が清涼感を持続的に感じることが可能な空調衣服用の送風ユニットおよび空調衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが検討を進めたところ、衣服内に気流を発生させ涼しさを得ようとした場合、最も涼しいと感じられるのはファンが駆動した直後であり、その後は身体が気流に慣れてしまうために涼しさが失われてしまうものの、最大風量に設定された状況においてあえて風量を一時的に低下させると、着用者が清涼感を持続的に感じることができるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、以下のいずれかの手段により達成される
(1)衣服内に気流を発生させる空調衣服用の送風ユニットであって、空気を取り込むための吸気口および取り込んだ空気を衣服内へ送り込むための送風口を有するケースと、該ケース内に装填されたファンと、前記衣服内および/または前記ケース内に設置される温湿度センサーと、該温湿度センサーからの信号に応じてファンの回転数を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、温湿度センサーからの信号に応じて、少なくとも強弱いずれかの風量モードに設定可能であり、前記風量モードが強であるときに風量が一時的に低下するゆらぎ運転を自動で行うことを特徴とする送風ユニット。
(2)前記ゆらぎ運転における風量の波形が、正弦波、のこぎり波、および矩形波のいずれかであることを特徴とする、前記(1)に記載の送風ユニット。
(3)前記(1)または(2)に記載の送風ユニットを備えてなることを特徴とする空調衣服。
【発明の効果】
【0011】
本発明の送風ユニットによれば、衣服内や送風ユニットケースに設置される温湿度センサーからの信号に応じて、送風開始時に最も涼しさを得ることができる強風量モードに設定された場合に、風量をあえて一時的に低下する運転を行うため、身体の慣れを抑制し着用者が清涼感を持続的に感じることが可能となる。すなわち、例えば衣服内に設置した温度センサーおよび湿度センサーにて検出されたデータから算出した不快指数などの信号に基づきファンの風量を自動で設定し、さらに、前記不快指数が「暑い」と判断され強風量モードに設定された場合においても、常時一律の強風量とするのではなく、設定された周期でファンの回転数を下げ風量を一時的に低下させる。このようなゆらぎ運転を行うことで、着用者が涼しさを持続的に感じることが可能となる。さらに、ファンの風量を着用者が設定するのではなく制御部が自動で設定するため、不必要な強い風量が設定されてしまうということがなく、適当な風量とすることが可能となる。更には、回転数を下げる制御を行うことや小型のファンを選定できるようになることから、ファンの消費電力が抑えられ、バッテリーを使用する場合においては、従来の送風ユニットと比べて駆動時間を長くすることが可能となる。このため、オフィスや家庭などの着用シーンを想定した場合には、従来に比べてファンの送風性能を抑えた静音性の高い小型のファンを選定し設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる送風ユニットの概略斜視図
【
図2】本発明の一実施形態にかかる送風ユニットの正面図
【
図4】本発明の一実施形態にかかる送風ユニットの側面図
【
図6】本発明の一実施形態にかかる送風ユニットを装着した空調衣服の背面図
【
図7】本発明の送風ユニットの動作にかかるフローチャート
【
図8】温度データと湿度データから算出した不快指数と標準的なファンの設定閾値
【
図9】温度データと湿度データから算出した不快指数と暑さを感じやすい人のファンの設定閾値
【
図10】温度データと湿度データから算出した不快指数と暑さを感じにくい人のファンの設定閾値
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の望ましい実施形態について説明する。
【0014】
[送風ユニット]
本発明の送風ユニットは、衣服内に気流を発生させ衣服内に留まった熱気や湿度の高い空気を効率よく衣服の外に排出させ快適性を得ることを目的とするものであり、後述するように、空調衣服に設けられた取付け具などによって、例えば衣服内背中部分の肩甲骨周辺に固定して使用するものである。具体的には、例えば上衣に使用し空気を吸入する場合、本発明の送風ユニットは、背中から腰部分の熱気を取り込むための吸気口と、取り込んだ空気を衣服内へ送り込むための送風口を有することとなるため、腰近傍に滞った空気が送風口から排気され、最終的に衣服の襟元および/または襟周辺から衣服の外に排出される。それゆえ、快適性を得る事が可能となる。送風ユニットは衣服内の温度や湿度データを取得し、それを基に算出される不快指数などによって、送風ユニットから排出する気流が制御され、着用者が意識することなく快適性を持続することが可能となる。以下、詳述する。
【0015】
本発明の送風ユニットは、衣服内に気流を発生させるため、ケースと、ケース内に収納された少なくとも1つのファンを備えている必要がある。また、衣服内の温湿度データを取得するための温湿度センサーを衣服内および/またはケース内に有し、さらに、温湿度センサーのデータに基づいてファンの回転数を電気的に制御・変更する制御部も有している。なお、本発明において温湿度センサーには、温度センサーおよび湿度センサーが別体で構成されるものも、一体化されたものも含まれ、いずれの構成を採用してもよい。また、ファン、制御部、センサーを連結するケーブルは、いずれも露出することがないようケース内に収納されていることが好ましい。さらに、ケースの外部から電源を供給せずに動作させることを可能とするために、ファンに電力を供給するためのバッテリーが、ケースに収納されていることが好ましい。
【0016】
本発明の送風ユニットに用いるケースは、その外壁に、空気を取り込むための吸気口と、取り込んだ空気を衣服内へ送り込むための送風口を有する。本発明の送風ユニットにおいて、吸気口と送風口の数は限定されず、少なくとも1つずつあればよい。少なくとも1つの吸気口は、送風ユニットを衣服と身体との間に設置した際のケース底面に開口し、例えば該送風ユニットを上衣後ろ見頃に配した場合には背中において腰部の空気を吸気できるようにすることが好ましい。かかる態様の場合、ケース内には、底面に開口している吸気口からファンに向かって、すなわちファンの回転軸方向と直交する方向に延在する略矩形断面の通風流路を有していることが好ましい。これによって、背中から腰部分に滞った空気を効率良く吸入することが可能となる。
【0017】
なお、ここでいう「略矩形断面」とは、完全な矩形である場合のみならず、矩形の角を面取りやR面取りしたような形状をも含むものとする。例えば、ケース外壁のエッジに面取りやR面取りが施されている場合は、ケースの厚みが一定となるように、ケース外壁の形状に応じてケース内壁も変形することが好ましく、そのような態様も含まれる。このようにすることで、ケースに無駄な厚み部分が生じず、通風流路の断面積をより大きく有効に活用することが可能となる。また、製造時に通風流路内壁のエッジ加工を容易にするために面取りやR面取りを施しても良く、そのような態様も含まれる。
【0018】
本発明の送風ユニットに用いるケースにおいては、少なくとも1つの送風口が吸気口とは異なる面に開口していることが好ましく、さらに、衣服内へ設置した際の上面に開口していることが好ましい。これによって、肌面や襟元および襟周辺の生地に沿って空気を送風することが可能となる。
【0019】
送風口は、単純に開口しているだけの形状としても良いが、襟元などで肌面に沿って広い範囲へ気流が流れるようにするために、羽板を設けることが好ましい。その場合はケース上面および上面と接する面の間の辺を含むよう開口させ、羽板などを設けることが有効である。そのようにすることで、送風ユニットからの気流を肌面へ直接当てることができ、より涼しさ感じることが可能となる。
【0020】
本発明の送風ユニットに用いるケースは、厚みが5~40mmであることが好ましい。かかる厚みは、送風ユニットを衣服内へ設置した際に肌面と平行方向に延在することとなる対向面間の最大距離をいう。ケースの厚みを5mm以上とすることにより、ケースの強度をより高め破損をより防止することができるとともに、風量の大きいファンの搭載が可能となる。該厚みは、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは7mm以上である。一方、ケースの厚みを40mm以下とすることにより、着座時に邪魔になるのを防ぐことができ、着用時の快適性をより高める事が可能となる。該厚みは、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。
【0021】
本発明の送風ユニットに用いるケースは、その外形が略直方体形状であることが好ましい。なお、「略直方体形状」とは、完全な直方体である場合のみならず、直方体の角を面取りやR面取りしたような形状や、部分的に緩やかな曲面や凹凸を有するものをも含む。ケースの外形が略直方体形状であることにより、半球形状や球体形状のケースに比べ、衣服の収納部に取付ける際の固定が容易となり、送風ユニットの吸気口および送風口と衣服の開口部とがずれにくくなる。また、送風ユニットを上衣後ろ見頃に配する場合にはケースの外壁を肌面に実質的に平行に沿うように配することができるため、腰部分に滞りやすい空気を効率良く吸入するとともに、着用快適性をさらに高めることができる。なお、ケースの外形形状は、角をR加工することが、衣服や身体に送風ユニットが引っ掛かることを防止する点から好ましい。
【0022】
本発明の送風ユニットに用いるケースは、最も長い辺の長さが200mm以下であることが好ましい。最も長い辺の長さを好ましくは200mm以下、より好ましくは180mm以下、さらに好ましくは150mm以下とすることにより、送風ユニット自体がコンパクトとなるため、着用時の快適性に優れる。また、最も長い辺の長さの下限は特に制限されないが、50mm程度である。
【0023】
本発明の送風ユニットに用いるケースは、ケース内部に収納されたデバイスを外部衝撃などから守る役割を有する。ケースの材質としては、アルミ合金やステンレスなどの金属系材料や、ポリオレフィンやポリカーボネート、ナイロン、ABS樹脂などの樹脂系材料、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂などのFRP材料などが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、軽量かつ耐衝撃性の高いABS樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の送風ユニットに用いるファンは、モーターなどの回転エネルギーを得る装置を有し、ファン軸方向に略垂直な方向に送風する遠心ファンもしくは横断流ファンであるであることが好ましい。遠心ファンもしくは横断流ファンを用いることにより、身体に対して略平行方向に指向性を有した空気を送風することが容易となり、局所的な冷却が可能となる。さらに、身体に対して略平行方向に送風することにより、身体に対して略垂直方向に送風した場合と比較して衣服が膨らみにくくなるため、意匠性に優れた空調衣服を提供することが可能となる。
【0025】
本発明の送風ユニットに用いるファンは、ファン軸方向に垂直な方向の直径が10~60mmであることが好ましい。該直径を好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上とすることにより、外気を衣服内に送り込むのに十分な風量を得ることができる。また、該直径を好ましくは60mm以下、より好ましくは55mm以下、さらに好ましくは50mm以下とすることにより、ファン駆動時の騒音が小さくなるとともに、送風ユニット本体を小さくすることができるため、着用時に違和感の小さい送風ユニットとなる。
【0026】
本発明の送風ユニットに用いるファンは、ファン軸方向の厚みが3~18mmであることが好ましい。ファン軸方向の厚みを好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上とすることにより、外気を衣服内に送り込むのに十分な風量を得ることができる。また、ファン軸方向の厚みを好ましくは18mm以下、より好ましくは16mm以下、さらに好ましくは14mm以下とすることにより、送風ユニット本体を薄くすることができるため着用時に違和感の小さい送風ユニットとなる。
【0027】
本発明の送風ユニットに用いるファンは、単数であっても複数であっても良い。ファンを複数用いる場合、例えば回転方向の異なるファンを積層させた二重反転ファンであっても良く、遠心ファンと軸流ファンを組み合わせて使用しても良い。
【0028】
上記のファンに用いるモーターは、DCモーターであることが好ましい。モーターをDCモーターとすることにより、低電圧であっても安定した動作が可能となる。
【0029】
本発明の送風ユニットは、ファンに電力を供給するためのバッテリーを有していることが好ましい。バッテリーを送風ユニットに内蔵させることにより、送風ユニットとバッテリーを接続する電源ケーブルが露出することがないため、着用時の快適性に優れた送風ユニットとなる。
【0030】
本発明の送風ユニットに用いるバッテリーは、繰り返し充放電が可能な二次電池であることが好ましい。このようなバッテリーの例としては、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、小型化かつ大容量化が可能である点から、リチウムイオン電池を用いることが好ましい。
【0031】
本発明の送風ユニットは、バッテリーを充電するための充電用端子を有し、かつ充電用端子の電源ケーブル接続部がケース外装に配されていることも好ましい。充電用端子を送風ユニットに具備させることにより、送風ユニットからバッテリーを取り外すことなく充電が可能となるため、送風ユニットの実用性が大きく向上する。
【0032】
本発明の送風ユニットは、送風ユニットを稼働および停止させるための電源スイッチを有し、かつ電源スイッチの操作部がケース外装に配されていることも好ましい。電源スイッチを送風ユニットに具備させることにより、任意のタイミングで送風ユニットを稼働もしくは停止することができる。なお、定常使用時の電源の入切は、上記電源スイッチ以外のスイッチ、例えば外部装置からの無線信号などにより実施しても良い。
【0033】
本発明の送風ユニットにおいては、温度データを取得するための温度センサーと湿度データを取得するための湿度センサー、さらには、温度データや湿度データを基に不快指数などを算出しファンの回転数を制御する制御部が必要である。これらの信号処理によりファンの風量モードが設定される。
【0034】
本発明の送風ユニットに用いる温度センサーおよび湿度センサーは、衣服内の温湿度を正確に測定できる位置であればよく、ケース表面にセンサーが配するようにしても構わないが、ケース内に配することで、ケーブルがケースの外に露出しないようにすることでき好ましい。その場合は、前記通風流路内にセンサーを配することがスペース確保の観点で好ましい。
【0035】
温度センサーの方式としてはICセンサー、熱電対、抵抗体、サーミスタのいずれでも良い。また、湿度センサーの方式としては抵抗変化型と容量変化型のいずれでも良いが、容量変化型とすることで応答速度が速くなり、より好ましい。なお、温度センサーと湿度センサーが1つのパッケージとなったセンサーが一般的に普及しているため、そのようなセンサーを使用することも可能である。
【0036】
本発明の送風ユニットに用いる制御部は、前記ケース内に配することで、ケーブルが露出することがないため好ましく、不快指数の算出や風量の変更を行うための処理を行うことができるマイクロコンピュータなどのプロセッサを用いることが好ましい。このような制御部を使用することで、ファンの風量を連続的に変更できるPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことが可能となり、回転数を簡単に変更でき好ましい。
【0037】
本発明の送風ユニットに用いる風量モードは、基本的に、少なくとも強弱(強風量および弱風量)の2段階以上で切替可能であり、好ましくは強中弱(強風量、中風量、弱風量)の3段階以上で切替可能である。前述の温湿度センサーからの信号に基づいて、適切な風量モードに設定される。そして、最大風量のモードである「強風量」に設定されたときには、風量をあえて制御して一時的に低下させる「ゆらぎ運転」が行われる。具体的には、例えばファンの風量を制御するPWMのデューティー比を徐々に小さくすることでファンの回転数を減速し、その結果連続的に気流を小さくする。温湿度が最大風量モードに設定される状況においてあえてこのように風量を一時的に低下させるゆらぎ運転を行うことで、身体が最大風量モードに慣れることを抑制し、着用者が清涼感を持続的に感じることが可能となる。また、ファンの風量モードが着用者によって設定されるのではなく温湿度センサーからの信号に基づいて自動で設定されるため、不必要な強い風量が設定されてしまうということがなく、上記「ゆらぎ運転」による効果をふまえた、適当な風量とすることが可能となる。更には、回転数を下げる制御を行うことや小型のファンを選定できるようになることから、ファンの消費電力が抑えられ、バッテリーを使用する場合においては、従来の送風ユニットと比べて駆動時間を長くすることが可能となる。このため、オフィスや家庭などの着用シーンを想定した場合には、従来に比べてファンの送風性能を抑えた静音性の高い小型のファンを選定し設計することが可能となる。
【0038】
強風量モードのゆらぎ運転における最小気流は、最大気流の50~90%程度が好ましく、70~90%とすることがより好ましい。なお、急激に気流を減少させると、気流の変化によって着用者が暑さを感じやすくなるため前記最小気流まで1~20分で到達するようにすることが好ましい。また、最小気流に到達した後は急激に気流を大きくすることで着用者が涼しさを得ることが可能となる。このように強風量においても一律の気流ではなく設定されたのこぎり刃状の周期で気流に強弱のゆらぎを与えられることで、より涼しいと感じられることが可能となる。
【0039】
そして、本発明においては、中風量モード、弱風量モードにおいても風量を変動させる運転を行ってもよい。中風量モードにおける最大気流と最小気流は、それぞれ、強風量モードにおける最大気流の30~90%程度と、10~60%程度とすることが好ましい、中風量モードでの気流変動は、強風量モードと同様にのこぎり刃状の周期でも良いが、正弦波や矩形波の周期であっても構わない。このように、中風量モードにおいて気流に強弱のゆらぎを与えることで、着用者の深部体温の低下を抑制し疲れを感じることや体調を崩す危険を防止することが可能となる。
【0040】
弱風量モードにおける最大気流と最小気流は、それぞれ、強風量モードにおける最大気流の10~60%程度と、0~40%程度とすることが好ましい、弱風量モードでの気流変動も、中風量モードと同様に、のこぎり刃状の周期や、正弦波、矩形波の周期で構わない。このように、弱風量モードにおいて気流に強弱のゆらぎを与えることで、中風量モードの際と同様に、着用者の深部体温の低下を抑制し疲れを感じることや体調を崩す危険を防止することが可能となる。
【0041】
本発明の送風ユニットに用いる制御部の動作プログラムについて、風量モードの切替えを弱風量、中風量、強風量の3段階とした場合の例について
図7を用いて説明する。まず、送風ユニットの使用者の操作でファンの回転を開始してスタートする(
図7のS1)。制御部はメモリーに保存されている弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)および中風量モードと強風量モードの閾値(THB)を読み込む(
図7のS2)。その後、温度センサーデータを取得する(
図7のS3)とともに湿度センサーデータを取得(
図7のS4)し、その両データを基に例えば下記式1を用いて不快指数(THI)を算出し、あらかじめ
図7のS2で読み込んでいた弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)および中風量モードと強風量モードの閾値(THB)と比較し風量モードを設定する(
図7のS5)。THIがTHA以下の場合は弱風量モードが選択される(
図7のS6)。THIがTHAより大きくTHB以下の場合は中風量モードが選択される(
図7のS7)THIがTHBより大きく場合は強風量モードが選択される(
図7のS8)。
THI=0.81Td+0.01H(0.99Td-14.3)+46.3 ・・・(式1)
【0042】
本発明の送風ユニットに用いる制御部に関して、弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)を75、中風量モードと強風量モードの閾値(THB)を79と設定した場合の温湿度データと風量の関係を
図8に表す。この図は横軸に温度、縦軸に湿度を配しておりそれぞれの温度と湿度から式1によって算出された不快指数を各セル内に記載している。例えば温度28℃、湿度40%の場合は、薄く塗りつぶされたS6のエリアとなるため、弱風量モードとなるようにファンを駆動する。同様に温度30℃、湿度40%の場合はS7のエリアとなるため、中風量モードとなるようにファンを駆動する。さらに、温度35℃、湿度40%の場合は濃く塗りつぶされたS8のエリアとなるため、強風量モードとすることで、着用者が意識せずとも風量が切り替わり快適性を得られることが可能となる。
【0043】
本発明の送風ユニットに用いる制御部に関して、弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)および中風量モードと強風量モードの閾値(THB)などは、使用者によって変更できることが好ましい。例えば、着用者が暑さを感じやすい場合は
図9のように弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)を73、中風量モードと強風量モードの閾値(THB)を77と設定することで、
図8の場合と比べて低い不快指数でも風量を上げることが可能となる。また、着用者が暑さを感じにくい場合は
図10のように弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)を77、中風量モードと強風量モードの閾値(THB)を81と設定することで、
図8の場合と比べて高い不快指数にならないと風量が上がらないようにすることが可能となる。
【0044】
本発明の送風ユニットは、ファンや、モーター、バッテリー、充電用端子、電源スイッチ、温度センサー、湿度センサー、制御部などのデバイスが、一つのケースに収納されていることが好ましい。上記デバイスが一つのケースに収納されていることにより、衣服への取付けや取外しが容易となるだけでなく、使用時に配線ケーブルがケース外に露出することがないため、着用時の快適性に優れた空調衣服を提供することができる。
【0045】
[空調衣服]
本発明の空調衣服は、上記送風ユニットを固定するための取付け具を1個または複数個有していることが好ましい。該取付け具は、安全ピン、縫い付け、ホック、ボタン、または面ファスナーなどでよく、着用者が送風ユニットを使用する際に衣服へ取り付けることで空調衣服としてもよい。
【0046】
本発明の空調衣服は、送風ユニットの収納部を有することが好ましく、該収納部を構成する素材の少なくとも一部は、伸縮性のある素材で構成されていることが好ましい。伸縮性素材としては、スパンデックスや捲縮繊維からなる織編物や、ゴム素材が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、スパンデックスや捲縮繊維からなる織物が、耐久性や保持性に優れるため好ましい。
【0047】
本発明の空調衣服に用いられる繊維の素材としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、レーヨン系繊維、アセテート系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、綿、麻、絹、ウールなどが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、ポリエステル系繊維やポリアミド系繊維は、機械的特性や耐久性に優れるため好ましい。
【0048】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープル、紡績糸などのいずれであってもよく、仮撚や撚糸などの加工が施されていてもよい。
【0049】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、マルチフィラメントとしての総繊度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~500dtexであることが好ましい。総繊度を好ましくは10dtex以上、より好ましくは30dtex以上、さらに好ましくは50dtex以上とすることにより、糸切れが少なく、工程通過性が良好となることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる空調衣服となる。また、総繊度を好ましくは500dtex以下、より好ましくは400dtex以下、さらに好ましくは300dtex以下とすることにより、衣服の柔軟性が高くなり、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。
【0050】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、単繊維繊度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5~4.0dtexであることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、総繊度を単繊維数で除した値を指す。単繊維繊度を好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.6dtex以上、さらに好ましくは0.8dtex以上とすることにより、糸切れが少なく、工程通過性が良好となることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる空調衣服となる。また、単繊維繊度を好ましくは4.0dtex以下、より好ましくは2.0dtex以下、さらに好ましくは1.5dtex以下とすることにより、衣服の柔軟性が高くなり、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。
【0051】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、破断強度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、機械的特性の観点から2.0~5.0cN/dtexであることが好ましい。破断強度を好ましくは2.0cN/dtex以上、より好ましくは3.0cN/dtex以上とすることにより、使用時に毛羽の発生が少なく、また耐久性に優れる空調衣服となる。また、破断強度を好ましくは5.0cN/dtex以下とすることにより、衣服の柔軟性が高くなり、着用時の快適性に優れる空調衣服となる。
【0052】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、破断伸度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10~60%であることが好ましい。破断伸度を好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上とすることにより、衣服の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる空調衣服となる。また、破断伸度を好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下とすることにより、衣服の寸法安定性が良好となるため、耐久性に優れる空調衣服となる。
【0053】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例としては、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の空調衣服に用いられる生地は、通気度が50~500cm3/cm2・sであることが好ましい。生地の通気度を好ましくは50cm3/cm2・s以上、より好ましくは70cm3/cm2・s以上、さらに好ましくは90cm3/cm2・s以上とすることにより、汗の蒸散性に優れるため、空調衣服としても、発汗時の蒸れ感、べたつき感、暑熱感を軽減できる。また、生地の通気度を好ましくは500cm3/cm2・s以下、より好ましくは400cm3/cm2・s以下、さらに好ましくは350cm3/cm2・s以下とすることにより、生地の機械的特性が良好となるため、生地や衣服を製造時の工程通過性や取り扱い性が向上するだけでなく、使用時の耐久性にも優れる空調衣服となる。また、生地が薄地となり過ぎず、違和感なく着用することが可能となる。
【0055】
本発明の空調衣服に用いられる生地は、生地形態に関して特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布などにすることができる。また、かかる生地は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織、二重織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
【0056】
本発明の空調衣服に用いられる生地は、必要に応じて染色してもよい。染色方法は特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。また、本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。
【0057】
本発明の空調衣服の形態は、特に制限がなく、上衣、下衣のいずれであってもよいが、特に熱気がこもりやすい背中から腰部分にかけて気流を発生させ、比較的少ない風量で効率的に身体を冷却するためには、上衣であることが好ましい。本発明において上衣は長袖、短袖、袖なしのいずれであってもよく、下衣は長裾、短裾のいずれであってもよい。本発明において、上衣とは上半身に着用する衣服であり、下衣とは下半身に着用する衣服を意味する。上衣の具体例としては、インナーシャツ、タンクトップ、キャミソールなどの下着や、Tシャツ、ポロシャツ、カットソー、パジャマ、ブラウス、ブルゾン、作業着などの一般衣料、スポーツ用インナーシャツ、スポーツ用シャツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、下衣の具体例としては、インナーパンツのような下着や、スラックス、パンツ、スカート、パジャマ、作業着などの一般衣料、スポーツ用パンツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、上衣、下衣いずれの場合も、ホルスターのように送風ユニットを取り付ける目的で着用するものなどであってもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0059】
<実施例1>
図1~
図5に示す構成の送風ユニットを製作した。すなわち、まず、3Dプリンタでケース(2)を作製した。ケースの設計としては、15mm×75mm×130mmとした略直方体の、15mm×75mmの面と接する75mmの一片に、ケース内へ連通する開口部を設け、そこへ約45°に傾斜した羽板(22)を2枚取り付けて、送風口(21)とした。送風口(21)を設けた面と対向する15mm×75mmの面に、3mm×60mmの吸気口(31)を設け、吸気口(31)からファンの取付位置へと連通するように厚み3mmの矩形断面の通風流路(33)を設けた。さらに通風流路(33)内には、該通風流路(33)を、流れる空気と同一の方向に5つに分断する1mm厚みの隔壁(32)を設け、分断された各流路の断面アスペクト比が3.73となるようにした。このとき、隔壁(32)の、吸気口と反対側の端面は、
図5に示すように、ファン取付位置に収束するような設計とした。続いて、小型ブロワファン(51)を、ファンの出口が送風口へ、ファンの入り口が通風流路へ繋がるように設置し、そのファンを制御するための制御部(52)として、Wi-Fiを内蔵したマイクロプロセッサ(Espressif Systems社製)を搭載した基板、温湿度センサー(54)、さらには、ファンや制御部へ電力を供給するためのバッテリー(53)をケース内に設置した。また、電源スイッチ(41)を操作部がケースから露出するように設置し、配線を施した。
【0060】
次に、スマートフォンからの操作でファン回転の開始と停止を操作でき、かつ
図7のフローチャートでファンの風量が変更されるプログラムを作成し、前記マイクロプロセッサに書き込んだ。なお、弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)は75、中風量モードと強風量モードの閾値(THB)は79と設定した(温湿度データと風量の関係が
図8の態様)。また、弱風量モードにおける気流の変動は、
図11のようにデューティー比30~50%(風速1.7~2.9m/s)を10分周期で繰り返すように設定した。中風量モードにおける気流の変動は
図12のようにデューティー比50~70%(風速2.9~3.8m/s)を10分周期で繰り返すように設定した。強風量モードにおける気流の変動は
図13のようにデューティー比100%(風速4.9m/s)を1分間保持した後に9分間にわたって最終のデューティー比が83%(風速4.2m/s)となるよう毎分2%ずつデューティー比が滑らかに減少したのちに再度デューティー比を100%とする変動を10分周期で繰り返すように設定した。
【0061】
市販のポリエステス製シャツの肌面側にゴム紐(取り付け具)を縫い付け、
図6に示す位置に送風ユニットを取り付けて空調衣服とすることができるように準備した。
【0062】
室温28℃、湿度60%にコントロールした室内で、前記送風ユニットの電源スイッチ(41)をONとした後に前記シャツに送風ユニットを装着して空調衣服とし、かかる空調衣服を被験者10人に着用せしめた。空調衣服着用後29分間はファンの回転を開始せず、空調衣服着用後30分経過した時点でスマートフォンからの操作でファンの回転を開始したところ、被験者全員において強風量モードが選択された。なお、ファンの回転直前の官能評価で「ちょうど良い」、「やや寒い」、「寒い」と評価していた被験者についても、衣服内の温湿度データから強風量モードが設定された。ファンの回転直前、ファンの回転開始から10分後、30分後と50分後に得られた官能評価結果を表1に示す。この間、ファンの風量は強風量モードに維持された。
【0063】
<比較例1>
実施例1と同様に送風ユニットおよび空調衣服を準備した。ただし、各風量について、弱風量がデューティー比40%(風速2.2m/s)の気流を一律で送風するように設定した。中風量はデューティー比60%(風速3.4m/s)の気流を一律で送風するように設定した。強風量はデューティー比100%(風速4.9m/s)の気流を一律で送風するように設定した。
【0064】
室温28℃、湿度60%にコントロールした室内で、前記送風ユニットの電源スイッチ(41)をONとした後に前記シャツに送風ユニット装着して空調衣服とし、かかる空調衣服を被験者10人に着用せしめた。空調衣服着用後29分間はファンの回転を開始せず、空調衣服着用後30分経過した時点でスマートフォンからの操作でファンの回転を開始したところ、被験者全員において強風量モードが選択された。なお、ファンの回転直前の官能評価で「ちょうど良い」、「やや寒い」、「寒い」と評価していた被験者についても、衣服内の温湿度データから強風量モードが設定された。ファンの回転直前、ファンの回転開始から10分後、30分後と50分後に得られた官能評価結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1は実施例1および比較例1における被験者10人の官能評価結果である。ファンを回転する前の空調衣服着用後29分後は「暑い」や「やや暑い」など暑さを感じている被験者が50%であったが、ファンを回転開始し10分後は、比較例1および実施例1で前記暑さを感じている被験者が10%に減少した。その後、ファンの回転開始から30分後および50分後では、比較例1においては前記暑さを感じている被験者が40%だったのに対して実施例1では10%であり、比較例1と比較して実施例1では清涼感が持続できることが確認できた。これにより、ファンの風量が最も強い「強風量モード」に設定されるような状況であっても、一律の気流ではなく風量をあえて一時的に低下させる運転を行うことで、一律の気流を与える場合よりも消費電力が少ないにも関わらず、空調衣服着用者により持続的に涼しいと感じさせることが可能であることがわかる。
【0067】
なお、ファン回転直前の官能評価が「ちょうど良い」、「やや寒い」、「寒い」という被験者については、弱風量モードと中風量モードの閾値(THA)や中風量モードと強風量モードの閾値(THB)を適宜変更・調整することで、被験者により適した送風ユニット・空調衣服とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の送風ユニットによれば、強風量モードが設定された場合において風量をあえて一時的に低下する運転を行うため、身体が強風量に慣れることを抑制でき、着用者が清涼感を持続的に感じることが可能となる。そのため、従来に比べて大型のファンを必要とせず、静音性の高い小型のファンを選定することが可能となるので、オフィスや家庭などでの着用に好適である。
【符号の説明】
【0069】
1:送風ユニット
2:ケース
21:送風口
22:羽板
31:吸気口
32:隔壁
33:通風流路
41:電源スイッチ
51:ファン
52:制御部
53:バッテリー
54:温湿度センサー