(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20250604BHJP
【FI】
A63B37/00 618
A63B37/00 644
A63B37/00 532
A63B37/00 418
A63B37/00 328
A63B37/00 422
A63B37/00 332
A63B37/00 540
A63B37/00 214
(21)【出願番号】P 2021134161
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋之口 真理子
(72)【発明者】
【氏名】神野 一也
(72)【発明者】
【氏名】井上 英高
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-252374(JP,A)
【文献】特開平11-104269(JP,A)
【文献】特開2016-123633(JP,A)
【文献】特開2019-097713(JP,A)
【文献】特開2020-171623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0179001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、
下記数式(1)及び(2)を満たすゴルフボール。
(Fa/Fan) ≦ 0.90 (1)
(Fa/Fan)
2 / (Fp/Fpn)≦ 0.90 (2)
(これらの数式において、Faは第一条件にて測定された上記ゴルフボールの最大垂直力を表し、Fanはこの第一条件にて測定された標準ボールの最大垂直力を表し、Fpは第二条件にて測定された上記ゴルフボールの最大垂直力を表し、Fpnはこの第二条件にて測定された上記標準ボールの最大垂直力を表す。
上記第一条件では、ヘッド速度が16m/sである条件で、サンドウェッジのフェースのスイートスポットを打点として、上記ゴルフボール及び上記標準ボールが打撃される。上記第二条件では、水平であってスティップメーターで測定された速度が10.0mであるグリーン上で転がり距離が15mとなる条件で、パターのフェースの中心点を打点として、上記ゴルフボール及び上記標準ボールが打撃される。上記第一条件での最大垂直力は、加速度センサーで測定された打撃方向の加速度と、ヘッド、シャフト及びこの加速度センサーの総質量との、積である垂直力の、最大値である。上記第二条件での最大垂直力は、加速度センサーで測定された打撃方向の加速度と、ヘッド及びこの加速度センサーの総質量との、積である垂直力の、最大値である。上記標準ボールは、直径が39.0mmであり中心硬度が62(ショアC)であり中心からの距離が10mmである地点の硬度が71(ショアC)であり表面硬度が78(ショアC)であるコア、厚さが1.4mmであり材料硬度が71(ショアD)であり表面硬度が97(ショアC)である中間層、厚さが0.5mmであり材料硬度が40(ショアD)であり表面硬度が87(ショアC)であるカバー、及び厚さが10μmであり押し込み深さが971nmであるペイント層を有しており、その圧縮変形量CDnは3.12mmである。)
【請求項2】
下記数式(3)を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
(Fp/Fpn) ≦ 0.98 (3)
【請求項3】
下記数式(4)を満たす請求項1又は2に記載のゴルフボール。
(Tp/Tpn) ≧ 1.01 (4)
(この数式において、Tpは上記第二条件にて測定された上記ゴルフボールの接触時間を表し、Tpnはこの第二条件にて測定された上記標準ボールの接触時間を表す。)
【請求項4】
下記数式(5)を満たす請求項3に記載のゴルフボール。
(Fp/Fpn) / (Tp/Tpn) ≦ 0.98 (5)
【請求項5】
初荷重が98Nであり終荷重が1275Nである条件で測定された圧縮変形量CDが、3.00mm以上である、請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記中間層の表面硬度H2s(ショアC)が、上記コアの表面硬度H1s(ショアC)よりも大きく、かつ上記カバーの表面硬度H3s(ショアC)よりも大きい、請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記コアにおける、表面硬度H1s(ショアC)と中心硬度H1o(ショアC)との差(H1s-H1o)が、14以上である、請求項1から6のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記中間層の厚さT2と上記カバーの厚さT3との合計(T2+T3)の、上記コアの直径D1に対する比が、0.042以下である、請求項1から7のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項9】
上記中間層の硬度H2(ショアD)と上記カバーの硬度H3(ショアD)との比(H2/H3)が、1.80以上である、請求項1から8のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項10】
上記カバーの外側に位置する1又は2以上のペイント層をさらに備えており、
最も外側のペイント層の、荷重が30mgfであるときの押し込み深さが、300nm以上3000nm以下である、請求項1から9のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、コア、中間層及びカバーを有するゴルフボールを開示する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールに対するゴルフプレーヤーの関心事は、飛行性能である。ゴルフプレーヤーは、大きな飛距離が得られるゴルフボールを好む。ゴルフプレーヤーは、ゴルフボールのコントロール性能も重視する。コントロール性能は、スピン性能と相関する。さらにゴルフプレーヤーは、ゴルフボールの打球感も重視する。概してプレーヤーは、ソフトな打球感を好む。
【0003】
典型的なゴルフボールは、コア、中間層及びカバーを有する。コア、中間層及びカバーに関する工夫が、特開2020-171623公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフプレーヤーは、ドライバーでのショットにおける飛距離と同様、ミドルアイアンでのショットにおける飛距離を重視する。
【0006】
ゴルフプレーヤーは、ラフにあるゴルフボールがショートアイアンで打撃されたときのスピン性能を、重視する。
【0007】
ゴルフプレーヤーは、ショートアイアンでのショットにおける打球感を重視する。プレーヤーはさらに、パッティングにおける打球感を重視する。
【0008】
本出願人の意図するところは、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能、ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能、ショートアイアンでのショットにおける打球感、及びパッティングにおける打球感の、全てに優れるゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
好ましいゴルフボールは、コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、下記数式(1)及び(2)を満たす。
(Fa/Fan) ≦ 0.90 (1)
(Fa/Fan)2 / (Fp/Fpn) ≦ 0.90 (2)
これらの数式において、Faは第一条件にて測定されたゴルフボールの最大垂直力を表し、Fanはこの第一条件にて測定された標準ボールの最大垂直力を表し、Fpは第二条件にて測定されたゴルフボールの最大垂直力を表し、Fpnはこの第二条件にて測定された標準ボールの最大垂直力を表す。
【発明の効果】
【0010】
このゴルフボールは、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能、ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能、ショートアイアンでのショットにおける打球感、及びパッティングにおける打球感の、全てに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るゴルフボールが模式的に示された、一部切り欠き断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のゴルフボールの評価のためのサンドウェッジが示された正面図である。
【
図3】
図3は、
図2のサンドウェッジが示された側面図である。
【
図4】
図4は、
図1のゴルフボールの評価のためのパターが示された平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0013】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8と、このカバー8の外側に位置する内側ペイント層10と、この内側ペイント層10の外側に位置する外側ペイント層12とを有している。ペイント層の数は、2である。外側ペイント層12は、最も外側に位置するペイント層である。ペイント層の数は、1でもよく、3以上でもよい。このゴルフボール2は、その表面に複数のディンプル14を有している。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側に、マーク層(図示されない)を有している。
【0014】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。
【0015】
このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0016】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることで形成されている。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。コア4の反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合、ポリブタジエンが主成分であることが好ましい。具体的には、全基材ゴムに対するポリブタジエンの比率は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。シス-1,4結合の比率が80%以上であるポリブタジエンが、特に好ましい。
【0017】
コア4のゴム組成物は、好ましくは、共架橋剤を含む。ゴルフボール2の耐久性及び反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β-不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤として、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが例示される。コア4の反発性能の観点から、アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が特に好ましい。
【0018】
ゴム組成物が、炭素数が2から8であるα,β-不飽和カルボン酸と、酸化金属とを含んでもよい。両者はゴム組成物中で反応し、塩が得られる。この塩が、共架橋剤として機能する。好ましいα,β-不飽和カルボン酸として、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。好ましい酸化金属として、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0019】
共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上45質量部以下が好ましい。この量が10質量部以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この量は15質量部以上がより好ましく、20質量部以上が特に好ましい。この量が45質量部以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、この量は40質量部以下がより好ましく、35質量部以下が特に好ましい。
【0020】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、コア4の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ-t-ブチルパーオキサイドが例示される。特に汎用性の高い有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイドである。
【0021】
有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3.0質量部以下が好ましい。この量が0.1質量部以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この量は0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。この量が3.0質量部以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、この量は2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下が特に好ましい。
【0022】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、有機硫黄化合物を含む。有機硫黄化合物は、コア4の反発性能に寄与する。有機硫黄化合物には、ナフタレンチオール系化合物、ベンゼンチオール系化合物及びジスルフィド系化合物が含まれる。
【0023】
ナフタレンチオール系化合物として、1-ナフタレンチオール、2-ナフタレンチオール、4-クロロ-1-ナフタレンチオール、4-ブロモ-1-ナフタレンチオール、1-クロロ-2-ナフタレンチオール、1-ブロモ-2-ナフタレンチオール、1-フルオロ-2-ナフタレンチオール、1-シアノ-2-ナフタレンチオール及び1-アセチル-2-ナフタレンチオールが例示される。
【0024】
ベンゼンチオール系化合物として、ベンゼンチオール、4-クロロベンゼンチオール、3-クロロベンゼンチオール、4-ブロモベンゼンチオール、3-ブロモベンゼンチオール、4-フルオロベンゼンチオール、4-ヨードベンゼンチオール、2,5-ジクロロベンゼンチオール、3,5-ジクロロベンゼンチオール、2,6-ジクロロベンゼンチオール、2,5-ジブロモベンゼンチオール、3,5-ジブロモベンゼンチオール、2-クロロ-5-ブロモベンゼンチオール、2,4,6-トリクロロベンゼンチオール、2,3,4,5,6-ペンタクロロベンゼンチオール、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンチオール、4-シアノベンゼンチオール、2-シアノベンゼンチオール、4-ニトロベンゼンチオール及び2-ニトロベンゼンチオールが例示される。
【0025】
ジスルフィド系化合物として、ジフェニルジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(4-シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2-クロロ-5-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2-シアノ-5-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2-シアノ-4-クロロ-6-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6-ペンタクロロフェニル)ジスルフィド及びビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)ジスルフィドが例示される。
【0026】
反発性能の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、この量は1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。2以上の有機硫黄化合物が、併用されてもよい。
【0027】
コア4のゴム組成物が、カルボン酸又はカルボン酸塩を含んでもよい。カルボン酸及びカルボン酸塩は、コア4の硬度分布の適正化に寄与しうる。好ましいカルボン酸として、安息香酸が挙げられる。好ましいカルボン酸塩として、オクタン酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0028】
コア4のゴム組成物が、比重調整等を目的とした充填剤を含んでもよい。好適な充填剤として、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、コア4の意図した比重が達成されるように適宜決定される。
【0029】
コア4のゴム組成物が、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤を適量含んでもよい。このゴム組成物が、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末を含んでもよい。
【0030】
コア4の直径D1は、35.0mm以上40.7mm以下が好ましい。直径D1が35.0mm以上であるコア4を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、直径D1は37.0mm以上がより好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。直径D1が40.7mm以下であるコア4を有するゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、直径D1は40.3mm以下がより好ましく、40.0mm以下が特に好ましい。
【0031】
コア4の中心硬度H1oは、45以上70以下が好ましい。中心硬度H1oが45以上であるコア4を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、中心硬度H1oは48以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。中心硬度H1oが70以下であるコア4を有するゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、中心硬度H1oは67以下がより好ましく、65以下が特に好ましい。
【0032】
中心硬度H1oは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計によって測定される。この硬度計が、ゴルフボール2が切断されて得られる半球の断面中心に押しつけられる。測定は、23℃の環境下でなされる。
【0033】
中心からの距離が10mmである地点におけるコア4の硬度H1(10)は、55以上85以下が好ましい。この硬度H1(10)が55以上であるコア4を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この硬度H1(10)は58以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。この硬度H1(10)が85以下であるコア4を有するゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、この硬度H1(10)は82以下がより好ましく、80以下が特に好ましい。
【0034】
硬度H1(10)は、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計によって測定される。この硬度計が、ゴルフボール2が切断されて得られる半球の断面の、中心から10mm離れた位置に押しつけられる。測定は、23℃の環境下でなされる。
【0035】
コア4の表面硬度H1sは、70以上90以下が好ましい。表面硬度H1sが70以上であるコア4を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、表面硬度H1sは73以上がより好ましく、75以上が特に好ましい。表面硬度H1sが90以下であるコア4を有するゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、表面硬度H1sは87以下がより好ましく、85以下が特に好ましい。
【0036】
表面硬度H1sは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計によって測定される。この硬度計が、コア4の表面に押しつけられる。測定は、23℃の環境下でなされる。
【0037】
表面硬度H1sと中心硬度H1oとの差(H1s-H1o)は、14以上が好ましい。差(H1s-H1o)が14以上であるコア4を有するゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能に優れる。このゴルフボール2はさらに、ショートアイアンでのショット及びパッティングにおける打球感に優れる。これらの観点から、差(H1s-H1o)は16以上がより好ましく、18以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、差(H1s-H1o)は30以下が好ましい。
【0038】
表面硬度H1sと中心からの距離が10mmの地点の硬度H1(10)との差(H1s-H1(10))は、7以上が好ましい。差(H1s-H1(10))が7以上であるコア4を有するゴルフボール2は、ドライバーでのショットにおけるスピンが小さく、従って飛行性能に優れる。このゴルフボール2はさらに、アプローチショット及びパッティングにおける打球感に優れる。これらの観点から、差(H1s-H1(10))は8以上がより好ましく、9以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、差(H1s-H1(10))は15以下が好ましい。
【0039】
コア4の質量は、10g以上42g以下が好ましい。コア4の架橋温度は、典型的には140℃以上180℃以下である。コア4の架橋時間は、典型的には10分以上60分以下である。
【0040】
中間層6は、コア4の外側に位置している。中間層6は、熱可塑性樹脂組成物から成形されている。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー及び熱可塑性ポリスチレンエラストマーが例示される。特に、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は、高弾性である。アイオノマー樹脂を含む中間層6を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。
【0041】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに対するアイオノマー樹脂の比率は、50質量%以上が好ましい。
【0042】
好ましいアイオノマー樹脂として、α-オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα-オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β-不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α-オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β-不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα-オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β-不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β-不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα-オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β-不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンとアクリル酸との共重合体である。特に好ましい他のアイオノマー樹脂は、エチレンとメタクリル酸との共重合体である。
【0043】
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
【0044】
アイオノマー樹脂の具体例として、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7329」及び「ハイミランAM7337」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。
【0045】
中間層6の樹脂組成物が、着色剤、充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を適量含んでもよい。ゴルフボール2の色相が白である場合、典型的な着色剤は二酸化チタンである。
【0046】
中間層6の厚さT2は、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。厚さT2が0.5mm以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、厚さT2は0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上が特に好ましい。厚さT2が2.0mm以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、厚さT2は1.7mm以下が好ましく、1.5mm以下が特に好ましい。厚さT2は、ランド16の直下において測定される。
【0047】
中間層6の材料硬度H2は、55以上75以下が好ましい。硬度H2が55以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度H2は58以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。硬度H2が75以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、硬度H2は72以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。
【0048】
中間層6の硬度H2は、「ASTM-D 2240-68」の規定に準拠して測定される。自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアD型硬度計により、硬度H2が測定される。測定には、熱プレスで成形された、中間層6の材料と同一の材料からなる、厚さが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。
【0049】
中間層6の表面硬度H2sは、85以上100以下が好ましい。表面硬度H2sが85以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、表面硬度H2sは88以上がより好ましく、90以上が特に好ましい。表面硬度H2sが100以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、表面硬度H2sは98以下がより好ましく、96以下が特に好ましい。
【0050】
表面硬度H2sは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計によって測定される。この硬度計が、コア4及び中間層6からなる球の表面に押しつけられる。測定は、23℃の環境下でなされる。
【0051】
カバー8は、樹脂組成物から成形されている。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン及びポリスチレンが例示される。打球感及びスピン性能の観点から、好ましい基材ポリマーは、ポリウレタンである。カバー8にポリウレタンと他の樹脂とが併用される場合、全基材樹脂に対するポリウレタンの比率は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
【0052】
カバー8の樹脂組成物が、熱可塑性ポリウレタンを含んでもよく、熱硬化性ポリウレタンを含んでもよい。ゴルフボール2の生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。熱可塑性ポリウレタンは、軟質である。このポリウレタンが用いられたカバー8は、耐擦傷性に優れる。
【0053】
熱可塑性ポリウレタンは、分子内にウレタン結合を有する。このウレタン結合は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によって形成されうる。ウレタン結合の原料であるポリオールは、複数のヒドロキシル基を有する。低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールが用いられうる。
【0054】
低分子量のポリオールとして、ジオール、トリオール、テトラオール及びヘキサオールが挙げられる。ジオールの具体例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール及び1,6-シクロヘキサンジメチロールが例示される。アニリン系ジオール又はビスフェノールA系ジオールが用いられてもよい。トリオールの具体例として、グリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。テトラオールの具体例として、ペンタエリスリトール及びソルビトールが挙げられる。
【0055】
高分子量のポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。ゴルフボール2の打球感の観点から、高分子量のポリオールの数平均分子量は400以上が好ましく、1000以上がより好ましい。数平均分子量は、10000以下が好ましい。
【0056】
ウレタン結合の原料であるポリイソシアネートとして、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
【0057】
芳香族ジイソシアネートとして、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。脂環式ジイソシアネートとして、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0058】
熱可塑性ポリウレタンの具体例として、BASFジャパン社の商品名「エラストランNY80A」、「エラストランNY82A」、「エラストランNY83A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」、「エラストランNY88A」、「エラストランNY90A」、「エラストランNY95A」、「エラストランNY97A」、「エラストランNY585」及び「エラストランKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。
【0059】
カバー8の樹脂組成物が、着色剤、充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤、滑剤等を適量含んでもよい。ゴルフボール2の色相が白である場合、典型的な着色剤は二酸化チタンである。
【0060】
カバー8の厚さT3は、0.3mm以上1.5mm以下が好ましい。厚さT3が0.3mm以上であるゴルフボール2は、コントロール性能及び打球感に優れる。この観点から、厚さT3は0.4mm以上がより好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。厚さT3が1.5mm以下であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、厚さT3は1.0mm以下がより好ましく、0.8mm以下が特に好ましい。厚さT3は、ランド16の直下において測定される。
【0061】
カバー8の材料硬度H3は、20以上45以下が好ましい。硬度H3が20以上であるゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、硬度H3は25以上がより好ましく、28以上が特に好ましい。硬度H3が45以下であるゴルフボール2は、コントロール性能及び打球感に優れる。この観点から、硬度H3は40以下がより好ましく、35以下が特に好ましい。
【0062】
カバー8の硬度H3は、「ASTM-D 2240-68」の規定に準拠して測定される。自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアD型硬度計により、硬度H3が測定される。測定には、熱プレスで成形された、カバー8の材料と同一の材料からなる、厚さが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。
【0063】
カバー8の表面硬度H3sは、70以上95以下が好ましい。表面硬度H3sが70以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、表面硬度H3sは75以上がより好ましく、80以上が特に好ましい。表面硬度H3sが95以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、表面硬度H3sは92以下がより好ましく、90以下が特に好ましい。
【0064】
表面硬度H3sは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計によって測定される。この硬度計が、コア4、中間層6及びカバー8からなる球の表面に押しつけられる。測定は、23℃の環境下でなされる。
【0065】
ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に、補強層を備えてもよい。補強層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。補強層は、中間層6からのカバー8の剥離を抑制する。補強層は、樹脂組成物から形成されている。補強層の好ましい基材ポリマーとして、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が例示される。補強層の厚さは5μm以上30μm以下が好ましい。
【0066】
中間層6の厚さT2とカバー8の厚さT3との合計(T2+T3)の、コア4の直径D1に対する比((T2+T3)/D1)は、0.042以下が好ましい。この比が0.042以下であるゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能に優れる。この観点から、この比((T2+T3)/D1)は0.040以下がより好ましく、0.038以下が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、この比((T2+T3)/D1)は0.032以上が好ましい。
【0067】
中間層6の硬度H2とカバー8の硬度H3との比(H2/H3)は、1.80以上が好ましい。この比(H2/H3)が1.80以上であるゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能に優れる。このゴルフボール2はさらに、ミドルアイアンでのショット及びパッティングにおける打球感に優れる。これらの観点から、この比(H2/H3)は2.00以上がより好ましく、2.10以上が特に好ましい。この比(H2/H3)は、3.00以下が好ましい。
【0068】
好ましくは、中間層6の表面硬度H2sは、コア4の表面硬度H1sよりも大きく、かつカバー8の表面硬度H3sよりも大きい。このゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能に優れる。このゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおけるスピン性能に優れる。このゴルフボール2はさらに、ミドルアイアンでのショット及びパッティングにおける打球感に優れる。これらの観点から、差(H2s-H1s)は6以上が好ましく、9以上がより好ましく、11以上が特に好ましい。差(H2s-H1s)は、20以下が好ましい。差(H2s-H3s)は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が特に好ましい。差(H2s-H3s)は、15以下が好ましい。
【0069】
内側ペイント層10は、樹脂組成物から形成されている。この樹脂組成物の基材樹脂として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が例示される。特に好ましい基材樹脂は、ウレタン樹脂である。内側ペイント層10の厚さは、5μm以上20μm以下が好ましい。
【0070】
外側ペイント層12は、樹脂組成物から形成されている。この樹脂組成物の基材樹脂として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が例示される。特に好ましい基材樹脂は、ウレタン樹脂である。外側ペイント層12の厚さは、5μm以上20μm以下が好ましい。
【0071】
典型的には、内側ペイント層10はポリウレタン塗料から形成され、外側ペイント層12は他のポリウレタン塗料から形成される。好ましいポリウレタン塗料は、主剤と硬化剤とを有している。主剤はポリオール組成物(A)であり、硬化剤はポリイソシアネート組成物(B)である。
【0072】
ポリオール組成物(A)は、ポリオール化合物を含有する。ポリオール化合物は、分子中に2以上の水酸基を有する。分子鎖の末端に水酸基を有するポリオール化合物(a1)であってもよく、分子鎖の末端以外に水酸基を有するポリオール化合物(a2)であってもよい。ポリオール組成物(A)が、2種以上のポリオール化合物を有してもよい。
【0073】
分子鎖の末端に水酸基を有するポリオール化合物(a1)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオールのようなジオール;並びにグリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールのようなトリオールが例示される。分子鎖の末端に水酸基を有する他のポリオール化合物(a1)として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ウレタンポリオール及びアクリルポリオールが例示される。ポリエーテルポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)が例示される。ポリエステルポリオールとして、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール及びポリヘキサメチレンアジペートジオールが例示される。ポリカプロラクトンポリオールとして、ポリ-ε-カプロラクトンジオールが例示される。ポリカーボネートポリオールとして、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールが例示される。
【0074】
分子の末端以外に水酸基を有するポリオール化合物(a2)として、水酸基を有する修飾ポリロタキサン、及び水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が例示される。
【0075】
ポリイソシアネート組成物(B)は、ポリイソシアネート化合物を含有する。ポリイソシアネート化合物は、2以上のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネート化合物として、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ジイソシアネート類;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びノルボルネンジイソシアネート(NBDI)のような脂環式又は脂肪族ジイソシアネート類;並びにジイソシアネートのアロハネート体、ビュレット体、イソシアヌレート体及びアダクト体のようなトリイソシアネート類が例示される。ポリイソシアネート組成物(B)が、2種以上のポリイソシアネート化合物を含んでもよい。
【0076】
外側ペイント層12の押し込み深さは、300nm以上が好ましい。押し込み深さが300nmである外側ペイント層12を有するゴルフボール2は、ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能に優れる。このゴルフボール2はさらに、ショートアイアンでのショット及びパッティングにおける打球感に優れる。この観点から、押し込み深さは500nm以上がより好ましく、700nm以上が特に好ましい。外側ペイント層12の耐久性の観点から、押し込み深さは3000nm以下が好ましい。
【0077】
押し込み深さの測定では、ゴルフボール2が割られて、半球が得られる。この半球には、ゴルフボール2の中心を通過する断面が露出する。この断面は、外側ペイント層12の断面を含んでいる。クライオミクロトームにより、この半球の断面が水平とされる。外側ペイント層12の断面に、ナノインデンターの圧子が当てられ、断面に対して垂直な方向に押圧される。押圧により、圧子は進行する。圧子の荷重が50mgfに到達するまで、押圧が継続される。荷重が30mgfであるときの圧子の進行距離が、押し込み深さとして計測される。測定条件は、以下の通りである。
ナノインデンター:株式会社エリオニクスの「ENT-2100」
温度:30℃
圧子:バーコビッチ圧子(65.03° As(h)=26.43h2)
分割数:500ステップ
ステップインターバル:20msec (100mgf)
【0078】
ゴルフボール2の圧縮変形量CDは、3.00mm以上が好ましい。圧縮変形量CDが3.00mm以上であるゴルフボール2は、ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能に優れる。このゴルフボール2はさらに、ショートアイアンでのショット及びパッティングにおける打球感に優れる。この観点から、圧縮変形量CDは3.15mm以上がより好ましく、3.25mmm以上が特に好ましい。ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能の観点から、圧縮変形量CDは4.00mm以下が好ましい。
【0079】
圧縮変形量CDは、YAMADA式コンプレッションテスター「SCH」によって測定される。測定では、ゴルフボール2が金属製の剛板の上に置かれる。このゴルフボール2に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれたゴルフボール2は、変形する。ゴルフボール2に98Nの初荷重がかかった状態から1275Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、測定される。初荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、0.83mm/sである。初荷重がかかってから終荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、1.67mm/sである。
【0080】
本明細書では、第一条件及び第二条件にて、ゴルフボール2の最大垂直力が測定される。本明細書では、第一条件及び第二条件にて、標準ボールの最大垂直力も測定される。
【0081】
この標準ボールの仕様は、以下の通りである。
コア
直径:39.0mm
中心硬度:62(ショアC)
中心からの距離が10mmである地点の硬度:71(ショアC)
表面硬度:78(ショアC)
中間層
厚さ:1.4mm
材料硬度:71(ショアD)
表面硬度:97(ショアC)
カバー
厚さ:0.5mm
材料硬度:40(ショアD)
表面硬度:87(ショアC)
ペイント層
厚さ:10μm
押し込み深さ:971nm
圧縮変形量CDn:3.12mm
【0082】
この標準ボールの製作では、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-60」)、24.3質量部のアクリル酸亜鉛、5.0質量部の酸化亜鉛、12.4質量部の硫酸バリウム及び0.6質量部のジクミルパーオキサイド(DCP)が混練され、ゴム組成物が得られる。このゴム組成物が共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入されて加熱され、直径が39.0mmであるコアが得られる。50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8150」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「サーリ9150」)、4質量部の二酸化チタン及び9質量部の硫酸バリウムが二軸混練押出機で混練され、樹脂組成物が得られる。それぞれが半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に、コアが投入される。樹脂組成物が射出成形法にてコアの周りに被覆され、中間層が形成される。この中間層の厚さは、1.4mmである。前述のPTMG及びTDIが、40のショアD硬度が達成されうる比率で混練され、樹脂組成物が得られる。半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型が、80℃以上100℃以下に加熱される。このファイナル金型に樹脂組成物が投入され、さらにコア及び中間層を有する球が投入されて、圧縮成形法にてカバーが形成される。このカバーの厚さは、0.5mmである。このカバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成される。このカバーの周りに、二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料が塗装される。この塗料が乾燥させられ、標準ゴルフボールが得られる。
【0083】
第一条件では、
図2及び3に示されたサンドウェッジ18(クリーブランドゴルフ社の商品名「RTX-3」)にて、ゴルフボール2又は標準ボールが打撃される。
図2及び3には、固定具19及び加速度センサー20(東陽テクニカ社の商品名「356A01」)も示されている。このサンドウェッジ18は、ヘッド22、シャフト24及びグリップ26を有している。ヘッド22のロフト角度は、58°である、シャフト24の銘柄は、トゥルーテンパー社の「DG-S200」である。このシャフト24のフレックスは、S200である。このシャフト24に、固定具19を介して加速度センサー20が固定されている。この加速度センサー20とグリップ26とは、10mm離れている。この加速度センサー20は、X軸、Y軸及びZ軸を有している。X軸は、シャフト24の長さ方向と一致している。Z軸は、X軸に直交しており、かつゴルフボール2の打ち出し方向に平行である。Y軸は、X軸及びZ軸に直交している。
【0084】
このサンドウェッジ18が、スイングマシン(ゴルフラボラトリー社)に装着される。ヘッド速度が16m/sの条件で、サンドウェッジ18にてゴルフボール2又は標準ボールが打撃される。この打撃における打点は、ヘッド22のスイートスポットである。この打撃のときのZ軸方向の加速度が、加速度センサー20によって測定される。ヘッド22、シャフト24及び加速度センサー20の総質量と、加速度との積は、垂直力である。垂直力が発生した時点から、垂直力がなくなる時点までの時間は、接触時間である。接触時間中の垂直力の最大値は、最大垂直力である。12回の打撃で得られたデータの平均値が、算出される。
【0085】
第二条件では、
図4及び5に示されたパター28(クリーブランド社の商品名「ハンティントンビーチ ソフトパター #4」)にて、ゴルフボール2又は標準ボールが打撃される。
図4及び5には、前述の加速度センサー20(東陽テクニカ社の商品名「356A01」)も示されている。このパター28は、ヘッド30及びシャフト32を有している。ヘッド30は、フェース34及びソール35を含んでいる。フェース34は、トウ側端点36、ヒール側端点38及びボトムエッジライン40を有している。
図4及び5において符号CPは、フェース34の中心点を表す。中心点CPは、中心線CLの上にある。中心線CLからヒール側端点38までの距離は、中心線CLからトウ側端点36までの距離に等しい。ボトムエッジライン40から中心点CPまでの距離は、20mmである。中心点CPの裏側において、加速度センサー20がヘッド30に固定されている。
【0086】
このパター28が、スイングマシン(ゴルフラボラトリー社)に装着される。水平であってスティップメーターで測定された速度が10.0mであるグリーン上で転がり距離が15mとなる条件で、パター28にて、ゴルフボール2又は標準ボールが打撃される。この打撃における打点は、中心点CPである。この打撃のときの、打撃方向の加速度が、加速度センサー20によって測定される。ヘッド30と加速度センサー20との総質量と、加速度との積は、垂直力である。垂直力が発生した時点から、垂直力がなくなる時点までの時間は、接触時間である。接触時間中の垂直力の最大値は、最大垂直力である。12回の打撃で得られたデータの平均値が、算出される。
【0087】
本実施形態に係るゴルフボール2は、下記数式(1)及び(2)を満たす。
(Fa/Fan) ≦ 0.90 (1)
(Fa/Fan)2 / (Fp/Fpn) ≦ 0.90 (2)
Fa:第一条件にて測定されたゴルフボール2の最大垂直力
Fan:第一条件にて測定された標準ボールの最大垂直力
Fp:第二条件にて測定されたゴルフボール2の最大垂直力
Fpn:第二条件にて測定された標準ボールの最大垂直力
【0088】
ラフにあるゴルフボール2がゴルフクラブで打撃されると、ゴルフボール2とヘッド22との間に芝生が挟まれる。この芝生は、ゴルフボール2のスリップを誘発する。このスリップは、スピン速度を減じ、ゴルフプレーヤーが意図しない位置にゴルフボール2を運ぶ。上記数式(1)を満たすゴルフボール2のショートアイアンでのショットでは、ゴルフボール2とヘッド22との間に芝生が挟まれても、スリップが抑制される。このゴルフボール2は、ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能に優れる。さらに、上記数式(1)を満たすゴルフボール2のショートアイアンでのショットでは、ソフトな打球感が達成される。上記数式(2)を満たすゴルフボール2では、ショートアイアンでのショットにおけるソフトな打球感と、パッティングにおけるソフトな打球感とが、両立される。このゴルフボール2では、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能は、阻害されない。
【0089】
上記数式(1)を満たすゴルフボール2では、比(Fa/Fan)は0.90以下である。ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能及び打球感の観点から、比(Fa/Fan)は0.86以下がより好ましく、0.84以下が特に好ましい。比(Fa/Fan)は、0.75以上が好ましい。
【0090】
上記数式(2)を満たすゴルフボール2では、比((Fa/Fan)2/ (Fp/Fpn))は0.90以下である。ショートアイアンでのショット及びパッティングにおける打球感の観点から、比((Fa/Fan)2/ (Fp/Fpn))は0.80以下がより好ましく、0.77以下が特に好ましい。比((Fa/Fan)2/ (Fp/Fpn))は、0.70以上が好ましい。
【0091】
上記数式(1)及び(2)を達成する手段として、
(a)コア4の硬度の差(H1s-H1o)を大きく設定する。
(b)コア4の硬度の差(H1s-H1(10))を、大きく設定する。
(c)中間層6の硬度H2とカバー8の硬度H3との比(H2/H3)を、大きく設定する。
(d)中間層6の厚さT2とカバー8の厚さT3との合計(T2+T3)の、コア4の直径D1に対する比を、小さく設定する。
等が例示される。
【0092】
好ましくは、ゴルフボール2は、下記数式(3)を満たす。
(Fp/Fpn) ≦ 0.98 (3)
換言すれば、比(Fp/Fpn)は、0.98以下である。このゴルフボール2は、パッティングにおいて、ソフトな打球感としっかり感とが両立される。この観点から、比(Fp/Fpn)は0.96以下がより好ましく、0.95以下が特に好ましい。比(Fp/Fpn)は、0.80以上が好ましい。
【0093】
好ましくは、ゴルフボール2は、下記数式(4)を満たす。
(Tp/Tpn) ≧ 1.01 (4)
Tp:第二条件にて測定されたゴルフボール2の接触時間
Tpn:第二条件にて測定された標準ボールの接触時間
換言すれば、比(Tp/Tpn)は、1.01以上である。このゴルフボール2は、パッティングにおいて、ソフトな打球感としっかり感とが両立される。この観点から、比(Tp/Tpn)は1.02以上がより好ましく、1.03以上が特に好ましい。比(Tp/Tpn)は、1.15以下が好ましい。
【0094】
好ましくは、ゴルフボール2は、下記数式(5)を満たす。
(Fp/Fpn)/(Tp/Tpn) ≦ 0.98 (5)
換言すれば、比((Fp/Fpn)/(Tp/Tpn))は、0.98以下である。このゴルフボール2は、パッティングにおいて、ソフトな打球感としっかり感とが両立される。この観点から、比((Fp/Fpn)/(Tp/Tpn))は0.95以下がより好ましく、0.92以下が特に好ましい。比((Fp/Fpn)/(Tp/Tpn))は、0.75以上が好ましい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に係るゴルフボールの効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0096】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-60」)、25.3質量部のアクリル酸亜鉛、5.0質量部の酸化亜鉛、12.0質量部の硫酸バリウム、0.3質量部のペンタブロモジフェニルジスルフィド(PBDS)及び0.7質量部のジクミルパーオキサイド(DCP)を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入して加熱し、直径が39.7mmであるコアを得た。
【0097】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミラン1605」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)、4質量部の二酸化チタン及び9質量部の硫酸バリウムを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。それぞれが半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に、コアを投入した。樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに被覆し、中間層を形成した。この中間層の厚さは、1.0mmであった。
【0098】
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE」)を、調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とを含む。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の二酸化チタンとを含む。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で12時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚さは、10μmであった。
【0099】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(前述の「エラストランNY84A」)、2質量部の滑剤(BASFジャパン社の商品名「ワックスマスターVD」)、4質量部の二酸化チタン及び0.2質量部の光安定剤(城北化学工業社の商品名「JF-90」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層を含む球を被覆した。これらのハーフシェル及び球を、それぞれが半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型に投入し、圧縮成形法にてカバーを得た。このカバーの厚さは、0.5mmであった。このカバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。
【0100】
このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、内側ペイント層を形成した。この内側ペイント層の周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とする他のクリアー塗料を塗装し、外側ペイント層を形成した。こうして、直径が約42.7mmであり質量が約45.3gである実施例1のゴルフボールを得た。
【0101】
[実施例2]
コア、中間層及びカバーの仕様を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のゴルフボールを得た。
【0102】
[比較例1及び2]
比較例1として、市販のゴルフボールを準備した。比較例2として、市販の他のゴルフボールを準備した。
【0103】
[フライトテスト、I#7]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、7番アイアンクラブ(住友ゴム工業社の商品名「XXIO 11」、シャフト品番:MP1100、シャフト硬度:S、ロフト角:28°)を装着した。ゴルフボールを、ヘッド速度が33m/secである条件で打撃して、スピン速度及び飛距離を測定した。飛距離は、打撃地点からゴルフボールが静止した地点までの距離である。12回の測定を行い、得られたデータの平均値を算出した。さらに、飛距離の平均値に基づき、下記の格付けを行った。
A:148.0ヤード以上
B:145.0ヤード以上148.0ヤード未満
C:145.0ヤード未満
この結果が、下記の表3に示されている。
【0104】
[コントロール性能]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社の商品名「RTX-3」、ロフト角:58°)を装着した。ゴルフボールの表面に、野芝の葉を2枚、粘着テープで貼り付けた。このゴルフボールとヘッドとの間に野芝が介在し、かつヘッドの溝が野芝の長さ方向と直交する位置に、ゴルフボールをセットした。このゴルフボールを、ヘッド速度が16m/sである条件で打撃して、スピン速度を測定した。12回の測定を行い、得られたデータの平均値を算出した。さらに、この平均値に基づき、下記の格付けを行った。
A:3500rpm以上
B:3000rpm以上3500rpm未満
C:3000rpm未満
この結果が、下記の表3に示されている。
【0105】
[打球感、ウェッジ]
テスターにウェッジにてゴルフボールを打撃させ、下記の基準に従って点数を付与した。
0点:硬い
2点:やや硬い
5点:普通
8点:やや軟らかい
10点:軟らかい
50名のテスターによる点数の合計を算出し、下記の格付けを行った。
A:340点以上
B:310点以上340点未満
C:310点未満
この結果が、下記の表3に示されている。
【0106】
[打球感、パター]
テスターにパターにてゴルフボールを打撃させ、下記の基準に従って点数を付与した。
0点:硬い
2点:やや硬い
5点:普通
8点:やや軟らかい
10点:軟らかい
50名のテスターによる点数の合計を算出し、下記の格付けを行った。
A:330点以上
B:300点以上330点未満
C:300点未満
この結果が、下記の表3に示されている。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
表3に示されるように、各実施例のゴルフボールは、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能、ショートアイアンでのショットにおけるスピン性能、ショートアイアンでのショットにおける打球感、及びパッティングにおける打球感の、全てに優れる。この評価結果から、このゴルフボールの優位性は明らかである。
【0111】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0112】
[項目1]
コアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、
下記数式(1)及び(2)を満たすゴルフボール。
(Fa/Fan) ≦ 0.90 (1)
(Fa/Fan)2 / (Fp/Fpn) ≦ 0.90 (2)
(これらの数式において、Faは第一条件にて測定された上記ゴルフボールの最大垂直力を表し、Fanはこの第一条件にて測定された標準ボールの最大垂直力を表し、Fpは第二条件にて測定された上記ゴルフボールの最大垂直力を表し、Fpnはこの第二条件にて測定された上記標準ボールの最大垂直力を表す。)
【0113】
[項目2]
下記数式(3)を満たす項目1に記載のゴルフボール。
(Fp/Fpn) ≦ 0.98 (3)
【0114】
[項目3]
下記数式(4)を満たす項目1又は2に記載のゴルフボール。
(Tp/Tpn) ≧ 1.01 (4)
(この数式において、Tpは上記第二条件にて測定された上記ゴルフボールの接触時間を表し、Tpnはこの第二条件にて測定された上記標準ボールの接触時間を表す。)
【0115】
[項目4]
下記数式(5)を満たす項目3に記載のゴルフボール。
(Fp/Fpn) / (Tp/Tpn) ≦ 0.98 (5)
【0116】
[項目5]
初荷重が98Nであり終荷重が1274Nである条件で測定された圧縮変形量CDが、3.00mm以上である、項目1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
【0117】
[項目6]
上記中間層の表面硬度H2s(ショアC)が、上記コアの表面硬度H1s(ショアC)よりも大きく、かつ上記カバーの表面硬度H3s(ショアC)よりも大きい、項目1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
【0118】
[項目7]
上記コアにおける、表面硬度H1s(ショアC)と中心硬度H1o(ショアC)との差(H1s-H1o)が、14以上である、項目1から6のいずれかに記載のゴルフボール。
【0119】
[項目8]
上記中間層の厚さT2と上記カバーの厚さT3との合計(T2+T3)の、上記コアの直径D1に対する比が、0.042以下である、項目1から7のいずれかに記載のゴルフボール。
【0120】
[項目9]
上記中間層の硬度H2(ショアD)と上記カバーの硬度H3(ショアD)との比(H2/H3)が、1.80以上である、項目1から8のいずれかに記載のゴルフボール。
【0121】
[項目10]
上記カバーの外側に位置する1又は2以上のペイント層をさらに備えており、
最も外側のペイント層の、荷重が30mgfであるときの押し込み深さが、300nm以上3000nm以下である、項目1から9のいずれかに記載のゴルフボール。
【産業上の利用可能性】
【0122】
前述のゴルフボールは、ゴルフコースでのプレイ、ドライビングレンジでのプラクティス等に適している。
【符号の説明】
【0123】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・中間層
8・・・カバー
10・・・内側ペイント層
12・・・外側ペイント層
14・・・ディンプル
16・・・ランド