(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20250604BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20250604BHJP
F02D 17/00 20060101ALI20250604BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20250604BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20250604BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/48 ZHV
F02D17/00 G
F02D17/00 Q
F02D29/02 321C
F02D29/06 D
F02D9/02 R
F02D9/02 315B
F02D9/02 325Z
(21)【出願番号】P 2022004427
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄大
(72)【発明者】
【氏名】加地 雅広
(72)【発明者】
【氏名】野口 真裕
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214211(JP,A)
【文献】特開2005-155549(JP,A)
【文献】特開2005-188422(JP,A)
【文献】特開2005-188475(JP,A)
【文献】特開2008-095519(JP,A)
【文献】特開2015-183608(JP,A)
【文献】特開2005-188473(JP,A)
【文献】特開2005-282538(JP,A)
【文献】特開2008-133792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F02D 17/00 - 17/02
F02D 29/02
F02D 29/06
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動力源である内燃機関を備えた車両の制御装置において、
前記内燃機関の自動停止に際して燃焼が停止した惰性回転中に、スロットル開度を第1開度から前記第1開度よりも大きい第2開度に切り替えて前記第2開度から前記第2開度よりも小さい第3開度に切り替えることにより、前記内燃機関の停止位置制御を実行する制御部と、
前記停止位置制御の実行中に前記スロットル開度が前記第3開度に切り替えられてから何れかの気筒の吸気弁が閉じたタイミングでの、スロットル弁よりも下流側の吸気通路内の圧力であるインマニ圧を取得する取得部と、
前記インマニ圧が目標値に対して許容範囲に含まれる場合には、前記第2開度を維持し、前記インマニ圧が前記許容範囲よりも高い場合には、前記インマニ圧が前記許容範囲に含まれる場合と比較して前記第2開度を減少させ、前記インマニ圧が前記許容範囲よりも低い場合には、前記インマニ圧が前記許容範囲に含まれる場合と比較して前記第2開度を増大させる調整部と、を備えたハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の自動停止に際して燃焼が停止した惰性回転中にスロットル開度を一時的に増大させることにより、内燃機関の停止位置を制御する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の停止位置制御では、スロットル開度の制御精度のばらつきやスロットル弁の経年変化により、所望の気筒に所望の吸気量だけを充填することができずに、内燃機関の停止位置の精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、内燃機関の停止位置の精度の低下が抑制された車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、走行動力源である内燃機関を備えた車両の制御装置において、前記内燃機関の自動停止に際して燃焼が停止した惰性回転中に、スロットル開度を第1開度から前記第1開度よりも大きい第2開度に切り替えて前記第2開度から前記第2開度よりも小さい第3開度に切り替えることにより、前記内燃機関の停止位置制御を実行する制御部と、前記停止位置制御の実行中に前記スロットル開度が前記第3開度に切り替えられてから何れかの気筒の吸気弁が閉じたタイミングでの、スロットル弁よりも下流側の吸気通路内の圧力であるインマニ圧を取得する取得部と、前記インマニ圧が目標値に対して許容範囲に含まれる場合には、前記第2開度を維持し、前記インマニ圧が前記許容範囲よりも高い場合には、前記インマニ圧が前記許容範囲に含まれる場合と比較して前記第2開度を減少させ、前記インマニ圧が前記許容範囲よりも低い場合には、前記インマニ圧が前記許容範囲に含まれる場合と比較して前記第2開度を増大させる調整部と、を備えたハイブリッド車両の制御装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内燃機関の停止位置の精度の低下が抑制された車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ハイブリッド車両の概略構成図である。
【
図3】
図3は、停止位置制御の一例を示したタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、ECUが実行するスロットル開度調整制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ハイブリッド車両の概略構成]
図1は、ハイブリッド車両1の概略構成図である。ハイブリッド車両1には、エンジン10から駆動輪13までの動力伝達経路に、K0クラッチ14、モータ15、トルクコンバータ18、及び変速機19が順に設けられている。エンジン10及びモータ15はハイブリッド車両1の走行動力源として搭載されている。エンジン10は、例えばV型6気筒ガソリンエンジンであるが気筒数はこれに限定されず、直列型のガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。K0クラッチ14、モータ15、トルクコンバータ18、及び変速機19は、変速ユニット11内に設けられている。変速ユニット11と左右の駆動輪13とは、ディファレンシャル12を介して駆動連結されている。
【0010】
K0クラッチ14は、同動力伝達経路上のエンジン10とモータ15との間に設けられている。K0クラッチ14は、解放状態から油圧の供給を受けて係合状態となって、エンジン10とモータ15との動力伝達を接続する。K0クラッチ14は、油圧供給の停止に応じて解放状態となって、エンジン10とモータ15との動力伝達を遮断する。係合状態とは、K0クラッチ14の両係合要素が連結しエンジン10とモータ15が同じ回転数となっている状態である。解放状態とは、K0クラッチ14の両係合要素が離れた状態である。
【0011】
モータ15は、インバータ17を介してバッテリ16に接続されている。モータ15は、バッテリ16からの給電に応じて車両の駆動力を発生するモータとして機能し、更にエンジン10や駆動輪13からの動力伝達に応じてバッテリ16に充電する電力を発電する発電機としても機能する。モータ15とバッテリ16との間で授受される電力は、インバータ17により調整されている。
【0012】
インバータ17は、後述するECU100によって制御され、バッテリ16からの直流電圧を交流電圧に変換し、またはモータ15からの交流電圧を直流電圧に変換する。モータ15がトルクを出力する力行運転の場合、インバータ17はバッテリ16の直流電圧を交流電圧に変換してモータ15に供給される電力を調整する。モータ15が発電する回生運転の場合、インバータ17はモータ15からの交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ16に供給される電力を調整する。
【0013】
トルクコンバータ18は、トルク増幅機能を有した流体継ぎ手である。変速機19は、ギア段の切替えにより変速比を多段階に切替える有段式の自動変速機であるが、これに限定されず無段式の自動変速機であってもよい。変速機19は、動力伝達経路上のモータ15と駆動輪13の間に設けられている。トルクコンバータ18を介して、モータ15と変速機19とが連結されている。トルクコンバータ18には、油圧の供給を受けて係合状態となってモータ15と変速機19とを直結するロックアップクラッチ20が設けられている。
【0014】
変速ユニット11には、更にオイルポンプ21と油圧制御機構22とが設けられている。オイルポンプ21で発生した油圧は、油圧制御機構22を介して、K0クラッチ14、トルクコンバータ18、変速機19、及びロックアップクラッチ20にそれぞれ供給されている。油圧制御機構22には、K0クラッチ14、トルクコンバータ18、変速機19、及びロックアップクラッチ20のそれぞれの油圧回路と、それらの作動油圧を制御するための各種の油圧制御弁と、が設けられている。尚、トルクコンバータ18の代わりに湿式クラッチが設けられていてもよい。
【0015】
ハイブリッド車両1には、同車両の制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100が設けられている。ECU100は、車両の走行制御に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリと、を備える電子制御ユニットである。ECU100は車両の制御装置の一例であり、詳しくは後述する制御部、取得部、及び調整部を機能的に実現する。
【0016】
ECU100は、エンジン10及びモータ15の駆動を制御する。具体的にはECU100は、エンジン10のスロットル開度、点火時期、燃料噴射量を制御することにより、エンジン10のトルクや回転数を制御する。ECU100は、インバータ17を制御してモータ15とバッテリ16との間での電力の授受量を調整することで、モータ15の回転数やトルクを制御する。またECU100は、油圧制御機構22の制御を通じて、K0クラッチ14やロックアップクラッチ20、変速機19の駆動制御を行う。
【0017】
ECU100には、イグニッションスイッチ71、クランク角センサ72、モータ回転数センサ73、アクセル開度センサ74、エアフローメータ75、圧力センサ76、及び水温センサ77からの信号が入力される。クランク角センサ72は、エンジン10のクランクシャフトの回転速度を検出する。モータ回転数センサ73は、モータ15の出力軸の回転速度を検出する。アクセル開度センサ74は、運転者のアクセルペダルの踏込量であるアクセルペダル開度を検出する。エアフローメータ75は、エンジン10の吸入空気量を検出する。圧力センサ76は、後述するスロットル弁40よりも下流側の吸気通路37内の圧力(以下、インマニ圧と称する)を検出する。水温センサ77は、エンジン10の冷却水の温度を検出する。
【0018】
ECU100は、モータモード及びハイブリッドモードの何れかの走行モードでハイブリッド車両を走行させる。モータモードでは、ECU100はK0クラッチ14を解放し、モータ15の動力により走行する。ハイブリッドモードでは、ECU100はK0クラッチ14を係合状態に切り替えて少なくともエンジン10の動力により走行する。尚、ハイブリッドモードには、エンジン10のみの動力で走行するモード、モータ15を力行運転させてエンジン10及びモータ15の双方を動力源として走行するモードを含む。
【0019】
走行モードの切り替えは、車速やアクセル開度から求められた車両の要求駆動力と、バッテリ16の充電状態などに基づいて行われる。例えば、要求駆動力が比較的小さくバッテリ16の蓄電量を示すSOC(State Of Charge)が比較的高い場合には、燃費を向上させるためにエンジン10を停止したモータモードが選択される。要求駆動力が比較的大きい場合やバッテリ16のSOCが比較的低い場合には、エンジン10が駆動したハイブリッドモードが選択される。
【0020】
ECU100は、所定の停止条件が成立した場合にエンジン10を自動停止させ、所定の再始動条件が成立した場合に自動停止したエンジン10を再始動させる間欠運転制御を実行する。例えばECU100は、ハイブリッドモードにおいてアクセル開度がゼロになった場合に、自動停止条件が成立したものとしてエンジン10を自動停止させる。また、ECU100は、例えばアクセル開度がゼロよりも大きくなった場合に、再始動条件が成立したものとしてエンジン10を自動で再始動させる。自動停止の際には、ECU100はK0クラッチ14を解放して燃焼を停止する。自動再始動の際には、ECU100はK0クラッチ14を介してモータ15によりエンジン10をクランキングして燃焼を開始し、その後にK0クラッチ14を係合させる。また、エンジン10の自動停止の際に燃焼が停止し惰性回転中に、再びアクセル開度が増大して再始動条件が成立すると、燃焼が開始されてK0クラッチ14が係合する。
【0021】
[エンジンの概略構成]
図2は、エンジン10の概略構成図である。エンジン10は、気筒30、ピストン31、コネクティングロッド32、クランク軸33、吸気通路35、吸気弁36、排気通路37、及び排気弁38を有している。
図2には、エンジン10が有する複数の気筒30のうちの一つのみが表示されている。気筒30では混合気の燃焼が行われる。ピストン31は、各気筒30に往復動可能に収容され、エンジン10の出力軸であるクランク軸33にコネクティングロッド32を介して連結されている。コネクティングロッド32は、ピストン31の往復運動をクランク軸33の回転運動に変換する。
【0022】
吸気通路35は、各気筒30の吸気ポートに吸気弁36を介して接続されている。排気通路37は、各気筒30の排気ポートに排気弁38を介して接続されている。吸気通路35には、エアフローメータ75、圧力センサ76、及び吸入空気量を調整するスロットル弁40が設けられている。排気通路37には排気浄化用の触媒43が設けられている。
【0023】
気筒30には筒内噴射弁41が設けられている。筒内噴射弁41は気筒30内に直接燃料を噴射する。尚、筒内噴射弁41の代わりに、又は筒内噴射弁41に加えて、吸気ポートに向けて燃料を噴射するポート噴射弁が設けられていてもよい。各気筒30には、吸気通路35を通じて導入された吸気と筒内噴射弁41が噴射した燃料との混合気を火花放電により点火する点火装置42が設けられている。
【0024】
[エンジンの停止位置制御]
エンジン10の自動停止の際に、スロットル開度を一時的に増大することによりエンジン10の停止位置を制御する停止位置制御が実行される。エンジン10の停止位置を所望の停止位置とすることにより、エンジン10の再始動の際にモータ15に要求されるエンジン10のクランキングトルクが少なくて済む。このため、例えばモータモードでの走行中にエンジン10を再始動させる際に、モータ15の出力トルクのうちクランキングトルクに消費される分が抑制される。これにより、モータ15の出力トルクのうちハイブリッド車両1の走行に消費されるトルクを確保することができ、モータモードで走行できる運転領域を確保して燃費の向上を図ることができる。
【0025】
図3は、エンジン10の停止位置制御の一例を示したタイミングチャートである。
図3には、エンジン回転数[rpm]、スロットル開度[deg]、及びインマニ圧[kPa]の推移を示している。エンジン10の燃焼が停止してスロットル開度が、第1開度A1(以下、開度A1と称する)に制御されてエンジン回転数が低下する(時刻t1)。開度A1は0に近い値であり0であってもよい。次に所定のタイミングでスロットル開度が開度A1から第2開度A2(以下、開度A2と称する)に切り替えられ(時刻t2)、所定の時間スロットル開度が開度A2に維持される。開度A2は、0よりも最大開度に近い値である。次にスロットル開度は開度A2から第3開度A3(以下、開度A3と称する)に切り替えられる(時刻t3)。開度A3は0に近い値であり0であってもよい。このようなスロットル開度の一時的な増大により、スロットル弁40よりも下流側の吸気通路35内に吸気が導入され、インマニ圧が目標インマニ圧にまで増大する(時刻t4)。目標インマニ圧は、エンジン10を停止するのに適したインマニ圧の目標値である。
【0026】
次に、吸気行程にある気筒30の吸気弁36が閉じることにより、スロットル弁40よりも下流側に導入された吸気の一部がその気筒30内に充填される(時刻t5)。次に吸気行程となる気筒30の吸気弁36が閉じることにより、その気筒30内に吸気の一部が充填される(時刻t6)。その後に、最初に吸気が充填された気筒30のピストン31が膨張行程に位置し、次に吸気が充填された気筒30のピストン31が圧縮行程に位置して、エンジン10の回転が停止する(時刻t7)。その後にインマニ圧は大気圧へ戻る(時刻t8)。
【0027】
このように、2つの気筒30に充填された吸気の圧縮反力が釣り合う位置でエンジン10は停止する。これにより、エンジン10の再始動の際には、ピストン31が圧縮行程で停止した気筒30から燃焼を開始することができ、再始動性を確保することができる。停止位置制御は制御部が実行する処理の一例である。
【0028】
[スロットル開度制御]
図4は、ECU100が実行するスロットル開度調整制御の一例を示したフローチャートである。本制御では、イグニッションがオンの状態で所定の周期ごとに繰り返し実行される。ECU100は、エンジン10が停止位置制御の実行中であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でNoの場合には、本制御は終了する。
【0029】
ステップS1でYesの場合にECU100は、各気筒30が吸気弁36を閉じるタイミングでのインマニ圧を気筒30毎に取得する(ステップS2)。吸気弁36を閉じるタイミングでのインマニ圧が高いほど、その吸気弁36を備えた気筒30内の吸気の充填量は増大する。このため、各気筒30の吸気弁36を閉じるタイミングでのインマニ圧を把握することにより、停止位置制御の実行中での各気筒30の吸気の充填量を把握することができる。
【0030】
次にECU100は停止位置制御が終了したか否か、即ちエンジン10の回転が停止したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3でNoの場合にはステップS2が継続される。即ち、本実施例のエンジン10は6気筒エンジンであるため、ECU100は停止位置制御の実行中には常に6気筒分のインマニ圧を取得、更新する。ステップS2は取得部が実行する処理の一例である。
【0031】
ステップS3でYesの場合、ECU100は取得した6気筒分のインマニ圧のうちの最大値が目標インマニ圧よりも高く、最大値が目標インマニ圧と比較して所定値よりも高いか否かを判定する(ステップS4)。インマニ圧の最大値は、各気筒30での吸気の充填量の最大値を意味する。また、ステップS4での所定値は、最大値がインマニ圧よりも高い場合にエンジン10の停止位置の精度に影響を与えない許容範囲の上限値である。ステップS4でYesの場合には、上述した最大値が目標インマニ圧に対して高すぎるとみなして、ECU100はHIカウンタ値に「1」を加算し、LOカウンタ値から「1」を減算する(ステップS5)。
【0032】
ステップS4でNoの場合、上述した最大値が目標インマニ圧よりも低く、最大値が目標インマニ圧と比較して所定値よりも低いか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6での所定値は、最大値がインマニ圧よりも低い場合にエンジン10の停止位置の精度に影響を与えない許容範囲の上限値である。ステップS6でYesの場合には、最大値が目標インマニ圧に対して低すぎるとみなして、ECU100はHIカウンタ値から「1」を減算し、LOカウンタ値に「1」を加算する(ステップS7)。ステップS6でNoの場合には本制御を終了する。即ち、ステップS4及びS6では最大値が目標インマニ圧に対して許容範囲外にあるか否かが判定される。
【0033】
次にECU100はHIカウンタ値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8でYesの場合には、ECU100は開度A2から所定の微小開度ΔA2を減算した開度を新たな開度A2として学習する(ステップS9)。ステップS8でNoの場合には、ECU100はLOカウンタ値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10でYesの場合には、ECU100は開度A2に微小開度ΔA2を加算した開度を新たな開度A2として学習する(ステップS11)。ステップS9及びS11は、調整部が実行する処理の一例である。尚、開度A2を減少させる際の微小開度ΔA2と、開度A2を増大させる際の微小開度ΔA2とは同じ開度であってもよいし異なる開度であってもよい。ステップS10でNoの場合には本制御を終了する。即ち、ステップS10でNoの場合には、現状では開度A2は適切な開度に設定されているものとみなして、開度A2は現状の開度に維持され、調整は行われない。また、ステップS6でNoの場合にも同様に、開度A2は適切な開度であるものとしてその調整は行われない。
【0034】
以上のように吸気弁36が閉じたタイミングでのインマニ圧の最大値が目標インマニ圧に対して許容範囲内にある場合には、開度A2は現状の開度に維持され、最大値が目標インマニ圧に対して高すぎる場合には、開度A2は減少側に調整され、低すぎる場合には開度A2は増大側に調整される。これにより、スロットル開度の制御精度のばらつきやスロットル弁40の経年変化に対応して開度A2を調整することができ、所望の気筒に所望の吸気量を充填することができる。この結果、エンジン10の停止位置の精度の低下を抑制することができる。
【0035】
上記実施例では停止位置制御の実行中に気筒30毎に吸気弁36が閉じたタイミングでのインマニ圧を取得し、そのうちの最大値と目標インマニ圧とを比較した。ここでインマニ圧はスロットル開度が開度A2から開度A3に切り替えられてから遅れて増大する。このため取得されたインマニ圧のうちの最大値は、スロットル開度が開度A3に切り替えられた以降のインマニ圧となる。従って、上述した最大値の代わりに、例えばスロットル開度が開度A3に切り替えられてから最初に吸気弁36が閉じるタイミングでのインマニ圧を目標インマニ圧と比較してもよい。また、スロットル開度が開度A3に切り替えられてから2番目に吸気弁36が閉じるタイミングでのインマニ圧と目標インマニ圧とを比較してもよい。また、スロットル開度が開度A3に切り替えられてから、吸気弁36が閉じるタイミングでのインマニ圧を気筒毎に取得して、それらの最大値と目標インマニ圧とを比較してもよい。
【0036】
ステップS4及びS6のそれぞれの所定値は同じであってもよいし異なっていてもよい。ステップS5及びS7での各カウンタ値に対する加算値、減算値は全て同じ値であるがこれに限定されず、一部又は全てが異なっていてもよい。ステップS8及びS10のそれぞれの所定値は同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0037】
上記実施例では、単一のECU100によりハイブリッド車両を制御する場合を例示したが、これに限定されず、例えばエンジン10を制御するエンジンECU、モータ15を制御するモータECU、K0クラッチ14を制御するクラッチECU等の複数のECUによって、上述した制御を実行してもよい。
【0038】
上記実施例では、ハイブリッド車両1を例に説明したがこれに限定されない。例えば走行動力源としてエンジンのみが設けられており、アイドリングストップ機能によりエンジンの自動停止と自動再始動が行われるエンジン車両に対しても、本実施例の停止位置制御を適用できる。
【0039】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ハイブリッド車両(車両)
10 エンジン(内燃機関)
15 モータ
40 スロットル弁
100 ECU(制御部、取得部、調整部)