(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250604BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250604BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20250604BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20250604BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/32 E
B32B15/085 Z
H01B5/14 A
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2024523863
(86)(22)【出願日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2024015373
(87)【国際公開番号】W WO2024225155
(87)【国際公開日】2024-10-31
【審査請求日】2024-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2023074057
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023220404
(32)【優先日】2023-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川床 遼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一馬
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/209190(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/129851(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/210693(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/137791(WO,A1)
【文献】特開2014-051658(JP,A)
【文献】国際公開第2023/008400(WO,A1)
【文献】国際公開第2024/058078(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B 1/00-43/00
B29C 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主配向軸方向をA方向、主配向垂直方向をB方向、動的粘弾性測定における前記A方向と前記B方向の160℃貯蔵弾性率をそれぞれE’
A(GPa)、E’
B(GPa)、前記A方向と前記B方向のTMA測定における160℃収縮応力をそれぞれP
A(MPa)、P
B(MPa)としたときに、下記式1及び2を満たし、
層構成が、単層構成、2種3層構成、3種3層構成より選択されるいずれかの構成であり、
組成物全体を100質量%としたときに、ポリプロピレン樹脂を95質量%以上100質量%以下含み、かつ融点が166.0℃以上170.0℃以下、半結晶化時間が5秒以上200秒以下、
200℃での溶融粘弾性測定により得られる貯蔵粘弾性率G’と損失粘弾性率G’’において、G’=G’’となる角周波数ωが10rad/s以上70rad/s以下である樹脂組成物をポリプロピレン組成物Xとし、前記ポリプロピレン組成物Xで構成される層をX層としたときに、前記X層が厚み基準でポリプロピレンフィルム全体中90%以上100%以下を占め
、
かつ、前記角周波数ωが10rad/s以上70rad/s以下である、ポリプロピレンフィルム。
式1:0.30≦E’
A+E’
B≦2.00
式2:-1.0≦P
A+P
B≦5.0
【請求項2】
(P
A+P
B)/(E’
A+E’
B)が0.001以上7.500以下である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記A方向及び前記B方向におけるTMA測定による収縮開始温度が、ともに140℃以上170℃以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
昇温速度20℃/分でのDSC測定の1st runにおける全融解熱量に対する175℃以上200℃以下の融解熱量割合Hが10%≦H≦50%である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
少なくとも一方の面において、二乗平均平方根傾斜Sdqが0.005以上1.000以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
昇温速度20℃/分でのDSC測定の2nd runで得られる融点Tm
2が164.0℃以上170.0℃以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=5.0以下の成分の割合が39.0質量%以下、対数分子量Log(M)=6.0以上の成分の割合が10.0質量%以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
離型フィルムである、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項9】
工程フィルムである、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項10】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜が接してなる、積層体。
【請求項11】
前記金属膜が周期表の1族または2族に属する金属を含んでなる、請求項
10に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に透明導電膜が接してなる、積層体。
【請求項13】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に電解質膜が接してなる、積層体。
【請求項14】
前記電解質膜が燃料電池用、半固体電池用、または全固体電池用である、請求項
13に記載の積層体。
【請求項15】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムを用いてなる、集電体。
【請求項16】
請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルムを用いてなる、蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での低収縮性と高剛性を両立し、耐熱性に優れたポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、透明性や電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。また、ポリプロピレンフィルムは機械特性や離型性にも優れることから、プラスチック製品や建材、光学部材など、様々な部材の離型フィルムや工程フィルムとして特に好適に用いられる。
【0003】
離型フィルムの使われ方としては、塗工物および溶融製膜時の支持体やプレス成型時のスペーサーなどが挙げられる。離型フィルムへの要求特性は、その使用用途によって適宜設定されるが、材料の高性能化や生産性向上に伴い加熱工程やプレス成型時の温度が年々上昇傾向であることから、特に耐熱性が重要となってきている。
【0004】
従来150℃を超える温度域では、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが使用される場合があったが、離型性との両立が難しく、要求特性を満足できない場合があった。一方で、離型性は高いものの従来のポリプロピレンフィルムでは、120~130℃付近から大きく熱収縮し始めるとともに、融点近傍の160℃付近では融解し始めてフィルム剛性が大きく低下することで、高温での乾燥や成型が必要な熱可塑性樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物などからなる相手部材の品位を損なうことが問題となる。そのため、150℃以上、特に160℃以上の高温下ではポリプロピレンフィルムを離型フィルムとして使用することは非常に困難であった。
【0005】
ポリプロピレンフィルムの耐熱性の重要特性として、熱収縮特性と高温での剛性が挙げられる。熱収縮特性を高くする、すなわち熱収縮応力を低減させる方法として、一般的にポリプロピレン原料を低分子量化し、弛緩処理や熱固定により延伸で発現した配向や残留ひずみを緩和させる手法が用いられる。しかしながら、当該手法では弾性率等の機械強度に寄与する構造が低減するため、ポリプロピレンフィルムの剛性が低下する傾向にあった。一方で高剛性化させる方法として、ポリプロピレン原料を高分子量化し、低温延伸や高倍率延伸により分子配向や非晶部分の緊張度合いを高め、室温状態から弾性率を高める手法が用いられているが、当該手法では高温下で緩和しやすい構造が増加するため、熱収縮応力が高くなる傾向であった。このように従来の技術では、ポリプロピレンフィルムの高温での熱収縮特性と剛性を両立することは非常に困難であった。
【0006】
上記の状況の中、従来の耐熱化の手段の例として、例えば特許文献1には、ポリプロピレン原料の分子量を低くすることで、熱収縮率を低くする例が記載されている。また、特許文献2には、弛緩処理での熱処理温度を高くして分子配向を緩和させることで、熱収縮率を低くする例が記載されている。さらに特許文献3には、150℃以下の低温延伸を含む幅方向の多段延伸により、高温でのフィルム剛性を高くする例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-051657号公報
【文献】国際公開第2020/196602号
【文献】特開2021-178974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら前述の特許文献1、2に記載の方法では、得られるポリプロピレンフィルムの高温での剛性や延伸安定性が低いことが課題となる。また、特許文献3に記載の方法では、得られるポリプロピレンフィルムの高温での熱収縮応力が高く、高温での熱収縮特性と剛性を両立する点が課題となる。すなわち、これらの方法で得られるポリプロピレンフィルムは、高温環境下で離型フィルムとして使用することが困難である。
【0009】
そこで本発明の課題は、上記の問題点を解決することにある。すなわち、従来ポリプロピレンフィルムでは離型フィルムとして使用することが不可能であった高温環境下においても、離型フィルムとして好適に使用可能なポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明のポリプロピレンフィルムは以下の構成よりなる。すなわち本発明のポリプロピレンフィルムは、主配向軸方向をA方向、主配向垂直方向をB方向、動的粘弾性測定における前記A方向と前記B方向の160℃貯蔵弾性率をそれぞれE’A(GPa)、E’B(GPa)、前記A方向と前記B方向のTMA測定における160℃収縮応力をそれぞれPA(MPa)、PB(MPa)としたときに、下記式1及び2を満たす、ポリプロピレンフィルムである。
式1:0.30≦E’A+E’B≦2.00
式2:-1.0≦PA+PB≦5.0
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来のポリプロピレンフィルムでは離型フィルムとして使用することが不可能であった高温環境下においても、離型フィルムとして好適に使用可能なポリプロピレンフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】耐熱特性評価時の加圧方法を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリプロピレンフィルムは、主配向軸方向をA方向、主配向垂直方向をB方向、動的粘弾性測定における前記A方向と前記B方向の160℃貯蔵弾性率をそれぞれE’A(GPa)、E’B(GPa)、前記A方向と前記B方向のTMA測定における160℃収縮応力をそれぞれPA(MPa)、PB(MPa)としたときに、下記式1及び2を満たす。以下、本発明のポリプロピレンフィルムについて詳細を説明する。
式1:0.30≦E’A+E’B≦2.00
式2:-1.0≦PA+PB≦5.0 。
【0014】
なお、本発明において数値範囲を「~」で表す場合、当該数値範囲には両端の数値が含まれるものとし、数値範囲の後ろにのみ単位が記載されている場合は、数値範囲全体にわたり単位は同じものとする。
【0015】
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温下でのフィルム剛性維持の観点から、主配向軸方向をA方向、主配向垂直方向をB方向、動的粘弾性測定におけるA方向とB方向の160℃貯蔵弾性率をそれぞれE’A(GPa)、E’B(GPa)としたときに、0.30≦E’A+E’B≦2.00を満たすことが重要である。上記観点からE’A+E’Bの下限は、好ましくは0.40、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.60、特に好ましくは0.70である。E’A+E’Bが0.30未満であると、相手部材を被着させて高温下の成型プレスや加熱オーブンで処理した際に、ポリプロピレンフィルムが熱に耐えきれずに圧縮や伸長変形し、相手部材への過剰なめり込みや貼り付きを誘発する。そのため、相手部材からポリプロピレンフィルムを剥離する際に、相手部材の破損や変形を引き起こす懸念がある。また、E’A+E’Bの上限はポリプロピレンの熱的性質から2.00であり、熱収縮応力との両立の観点から1.50が好ましい。
【0016】
なお、本発明のポリプロピレンフィルムにおける主配向軸方向(A方向)とは、フィルム面内において、長手方向を0°とした場合に、該長手方向に対して0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°の角度をなす各々の方向で動的粘弾性測定をしたときに、30℃で最も高い貯蔵弾性率を示す方向をいう。一方、フィルムの外観からは何れの方向が長手方向に対応する方向であるかが不明なフィルムの場合は、例えば、フィルム平面上の任意の直線を基準に15°刻みで線を引き、その各線に平行にスリット状のフィルム片をサンプリングして、動的粘弾性測定にて30℃における貯蔵弾性率を求め、最大の貯蔵弾性率を与える方向を、その主配向軸方向とみなす。ここで長手方向とは、製造工程中でフィルムが走行する方向(フィルムロールであれば巻き方向に相当)をいい、これにフィルム面内で直交する方向を幅方向という。また、本発明のポリプロピレンフィルムにおける主配向垂直方向(B方向)とは、主配向軸方向にフィルム面内で直交する方向をいう。なお、E’AやE’Bを含む動的粘弾性測定による貯蔵弾性率の測定方法の詳細については後述する。
【0017】
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温下でのフィルム収縮特性の観点から、A方向とB方向のTMA測定における160℃収縮応力をそれぞれPA(MPa)、PB(MPa)としたときに、-1.0≦PA+PB≦5.0を満たすことが重要である。上記観点からPA+PBの上限は、好ましくは4.0、より好ましくは3.5、さらに好ましくは3.0、特に好ましくは2.0、最も好ましくは1.0である。PA+PBが5.0を超えると、相手部材を重ねたり、被着させて高温下の成型プレスや加熱オーブンで処理したりした際に、ポリプロピレンフィルムの熱収縮が進む。そのため、ポリプロピレンフィルムにしわやカールなどが発生しやすくなるため、被着させた相手部材にしわなどのフィルムの変形状態が転写してしまう懸念がある。また、PA+PBの下限はフィルムの製膜性の観点から-1.0であり、高温でのフィルムの剛性との両立を考慮すると0.0が好ましい。なお、TMA測定における160℃収縮応力の測定方法の詳細については後述する。
【0018】
E’A+E’BとPA+PBの値をともに上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とする方法を用いることができる。特に、高温製膜条件下での高融点結晶形成と非晶緩和を適切に制御するために、高融点かつ速い結晶化速度、緩和特性を示す角周波数ω(詳細は後述)が適正な範囲であるポリプロピレン組成物を原料として使用することが効果的である。また、プロセス面では縦延伸および横延伸の予熱と延伸温度を後述の範囲に設定すること、さらに縦延伸後と横延伸後に緩和工程を導入し、後述の範囲の温度および総面積Relax率で処理することが効果的である。なお、これらの方法は適宜併用することもできる。上記の原料組成やプロセス条件を採用することにより、フィルムの製膜性を維持したまま高温条件下での延伸および緩和処理が可能となり、熱収縮応力の要因となる緊張非晶鎖の緩和を促進させながら、ポリプロプレンフィルムとしては従来想定されない非常に高い融点を持つ結晶を形成することが出来る。その結果、160℃以上の高温でも剛性と熱収縮応力の両立が可能となり、得られるポリプロピレンフィルムはこのような高温環境下でも使用可能なものとなる。
【0019】
本発明のポリプロピレンフィルムは、(PA+PB)/(E’A+E’B)が0.001以上7.500以下であることが好ましい。(PA+PB)/(E’A+E’B)は従来トレードオフの関係にある高温での弾性率と熱収縮応力のバランスを示す指標であり、これが上記範囲にあることで高温環境下での圧縮や伸長変形を軽減することができる。上記観点から、(PA+PB)/(E’A+E’B)の上限はより好ましくは5.000であり、さらに好ましくは2.000であり、特に好ましくは1.000である。(PA+PB)/(E‘A+E‘B)が7.500以下であると、熱収縮応力より弾性率が相対的に高くなり、高温下の成型プレスや加熱オーブンで相手部材を被着させた際に、ポリプロピレンフィルムの熱収縮が抑えられ、被着させた相手部材の品質低下を軽減することができる。また、(PA+PB)/(E’A+E’B)の下限は、高温でのフィルム剛性維持の観点から0.001が好ましく、0.0100がより好ましく、0.500がさらに好ましい。
【0020】
(PA+PB)/(E’A+E’B)を上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とすることが効果的である。特に、原料面では非晶緩和ととともに高融点結晶形成をより促進させるために緩和特性を示す角周波数ω(詳細は後述)をより適正な範囲とすることや、耐熱特性が高い樹脂を多く含有するX層(詳細は後述)をポリプロピレンフィルム全体で高い割合で構成することが効果的である。また、プロセス面では縦延伸Relax率を0.1%以上、好ましくは1.0%以上とすることで、非晶緩和を促しつつ高融点結晶の形成を促進することが効果的である。
【0021】
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温環境下での熱収縮を抑える観点から、A方向及びB方向におけるTMA測定による収縮開始温度が、ともに140℃以上170℃以下であることが好ましい(なお、以下「TMA測定による収縮開始温度」を「TMA収縮応力開始温度」ということがある。)。A方向とB方向のTMA収縮応力開始温度の下限は、両方向共に、より好ましくは145℃であり、さらに好ましくは150℃である。TMA収縮応力開始温度がA方向とB方向共に140℃以上であることで、従来のポリプロピレンフィルムでは使用が難しい高温領域でも、ポリプロピレンフィルムの全方向の熱収縮率を低く抑えやすくなり、結果、寸法安定性が向上する。TMA収縮応力開始温度の上限は、実質的には170℃である。なお、TMA収縮応力開始温度の測定方法の詳細は後述する。
【0022】
TMA収縮応力開始温度を上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とすることが効果的である。特に、原料面では、より高温下での緩和を促進するために、緩和特性を示す角周波数ω(詳細は後述)の下限が15rad/s以上(好ましくは19rad/s以上)であるポリプロピレン樹脂や組成物を使用することが効果的である。また、プロセス面では縦延伸と横延伸によって生じたひずみをより高温下での緩和処理で解消するために、縦延伸と横延伸後のそれぞれのRelax温度を後述の範囲とすることが効果的である。なお、これらの方法は適宜組み合わせてもよい。
【0023】
本発明のポリプロピレンフィルムは、昇温速度20℃/分でのDSC測定の1st runにおける全融解熱量に対する175℃以上200℃以下の融解熱量割合Hが10%≦H≦50%であることが好ましい(以下、「昇温速度20℃/分でのDSC測定の1st runにおけるによる175℃以上200℃以下の融解熱量割合H」を「融解熱量割合H」ということがある。)。この融解熱量割合Hは、従来のポリプロピレンフィルムでは存在割合が極めて少ない175℃以上で融解する結晶の含有割合を示す指標であり、この融解熱量割合Hが高いことは、ポリプロピレンフィルムが優れた耐熱性を有することを意味する。上記観点から、融解熱量割合Hの下限は15%がより好ましく、20%がさらに好ましく、25%が特に好ましい。
【0024】
ポリプロピレンフィルムの融解熱量割合Hが10%以上であると、従来のポリプロピレンフィルムでは耐えられない160℃以上の高温環境下においても多くの結晶が融解せずに残存し、高い耐熱性を実現しやすい。融解熱量割合Hの上限は、実質的に50%が好ましく、他の特性との両立を考慮すると40%がより好ましい。なお、融解熱量割合Hの測定方法の詳細は後述する。
【0025】
融解熱量割合Hを上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とすることが効果的である。特に、高温製膜条件下での高融点結晶形成を促進するために、融点が166.0℃以上、半結晶化時間が100秒以下、かつレオメーターから観測される緩和特性である角周波数ω(詳細は後述)が50rad/s以下であるポリプロピレン樹脂や組成物を使用することが効果的である。また、プロセス面ではキャスト温度を低温化し、キャスト工程で未延伸フィルム中に低融点結晶であるβ晶の形成を抑制するとともに、縦延伸および横延伸の予熱と延伸温度を後述の範囲に設定すること、さらに延伸によって一部崩れた結晶を緩和工程で再配列させて結晶高融点化を促進するために、縦延伸後と横延伸後に緩和工程を導入し、後述の範囲の温度およびRelax率で各延伸後に処理すること等が効果的である。なお、これらの方法は適宜併用することもできる。
【0026】
本発明のポリプロピレンフィルムは、離型フィルムとして用いる際の相手部材との剥離性の観点から、少なくとも一方の面において、二乗平均平方根傾斜Sdqが0.005以上1.000以下であることが好ましい(以下、「二乗平均平方根傾斜Sdq」を「Sdq」ということがある。)。ここで少なくとも一方の面とは、片面又は両面を意味する。Sdqはフィルム表面の凹凸構造の傾斜を示す表面パラメーターの一つであり、急峻な凹凸構造を表面に含むと高い値を示す。Sdqの下限は、0.005が好ましく、0.007がより好ましく、0.015がさらに好ましい。Sdqの上限は特に限定されないが、フィルムの製膜性の観点から実質的に1.000、好ましくは0.100である。Sdqが0.005以上であると、ポリプロピレンフィルムが当該表面に急峻な凹凸構造を持つこととなり、離型フィルムと用いたときにフィルム同士が密着しにくく、高温下での融着耐性が向上しやすい。なお、Sdqは公知の非接触表面・層断面形状計測システム(例えば、(株)菱化システム“VertScan”(登録商標)シリーズ等)により測定することができ、その詳細は後述する。
【0027】
Sdqを上記範囲とするには、原料や製膜条件を後述する範囲とすることが効果的である。特に、原料面では延伸と相まって急峻な突起を形成させるために、表層(単層構成の場合はフィルム自体)にポリプロピレンと非相溶の樹脂や添加物を添加することや、緩和特性を悪化させない程度に分岐鎖状ポリプロピレン等を添加することが効果的である。プロセス面では、ポリプロピレン由来の表面凹凸構造を粗大化するために、縦延伸工程の予熱延伸温度を高温にすることが効果的である。なお、これらの方法は適宜併用することができる。
【0028】
本発明のポリプロピレンフィルムは、耐熱性等の観点から、昇温速度20℃/分でのDSC測定の2nd runで得られる融点Tm2が164.0℃以上170.0℃以下であることが好ましい(以下、「昇温速度20℃/分でのDSC測定の2nd runで得られる融点Tm2」を「Tm2」ということがある。)。上記観点から、融点Tm2の下限は、165.0℃がより好ましく、166.0℃がさらに好ましい。また、融点Tm2の上限はポリプロピレンの特性を考慮すると170.0℃である。なお、Tm2の測定方法の詳細は後述する。
【0029】
融点Tm2はポリプロピレンフィルム全体の原料融点を示す指標であり、これが上記範囲内にあると、より高温条件下での製膜が可能となる。そのため、熱収縮特性を改善しやすく、高融点結晶の形成の面でも有利となり、結果、ポリプロピレンフィルムとして耐熱性を高めやすい。融点Tm2を上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルムの原料組成を後述する範囲とすること、特に、高融点の原料を用いるとともに、高融点原料以外の混合物を極力少なくすることや、後述のX層の割合を増やすことが効果的である。なお、これらの方法は適宜併用してもよい。
【0030】
本発明のポリプロピレンフィルムは、耐熱性向上の観点から、200℃での溶融粘弾性測定により得られる貯蔵粘弾性率G’と損失粘弾性率G’’において、G’=G’’となる角周波数ωが10rad/s以上70rad/s以下であることが好ましい(以下、「200℃での溶融粘弾性測定により得られる貯蔵粘弾性率G’と損失粘弾性率G’’において、G’=G’’となる角周波数ω」を「角周波数ω」ということがある。)。角周波数ωはポリプロピレンフィルム中のポリマーの緩和特性を示す指標であり、その値が低いほど緩和特性が低く、高いほど緩和特性が高いことを表す。上記観点から、角周波数ωの下限は15rad/sがより好ましく、20rad/sがさらに好ましい。また、角周波数ωの上限は60rad/sがより好ましく、50rad/sがさらに好ましく、40rad/sが特に好ましい。角周波数ωが上記範囲内であると、ポリプロピレンフィルムとして適正な緩和特性を持つこととなり、製膜時の結晶高融点化と非晶緩和の両立に優れ、優れた耐熱性を発揮しやすい。なお、角周波数ωは回転式レオメーターで測定することができ、測定方法の詳細は後述する。
【0031】
角周波数ωを上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とすることが効果的である。特に、後述のように角周波数ωが後述の範囲内である樹脂を使用するとともに、緩和特性を悪化させる要因となる分岐鎖状ポリプロピレンの添加量を少なくすることが効果的である。
【0032】
本発明のポリプロピレンフィルムの厚みは用途によって適宜調整されるものであり特に限定はされないが、0.5μm以上100μm以下であることがハンドリング性の観点から好ましい。このような特徴を活かすために、ポリプロピレンフィルムの厚みは1μm以上40μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることがさらに好ましく、6μm以上30μm以下であることが特に好ましい。ポリプロピレンフィルムの厚みは他の物性を低下させない範囲内で、押出機のスクリュー回転数、未延伸シートの幅、製膜速度、延伸倍率などにより調整可能である。なお、ポリプロピレンフィルムの厚みは公知のマイクロ厚み計で測定することができ、その詳細は後述する。
【0033】
本発明のポリプロピレンフィルムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=5.0以下の成分の割合が39.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは37.0質量%以下であり、さらに好ましくは36.0質量%以下であり、特に好ましくは35.0質量%未満である。対数分子量Log(M)=5.0以下の成分の割合の下限については、30.0質量%以上が好ましく、33.0質量%以上がより好ましい。
【0034】
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=6.0以上の成分の割合が10.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。対数分子量Log(M)=6.0以上の成分の割合の下限については、3.0質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましい。
【0035】
対数分子量Log(M)=5.0以下の成分とLog(M)=6.0以上の成分の割合が上記範囲内であると、本発明のポリプロピレンフィルムは適正な緩和特性を持つこととなり、製膜時の結晶高融点化と非晶緩和の両立に優れ、優れた耐熱性を発揮しやすい。対数分子量Log(M)=5.0以下の成分とLog(M)=6.0以上の成分の割合を上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とすることが効果的である。特に、原料として角周波数ωが15rad/s以上70rad/s以下のポリプロピレン樹脂またはポリプロピレン樹脂組成物を使用することや、事前混錬や製膜時の混錬温度を調整し、適切に分子量制御することが効果的である。なお、これらの方法は適宜併用することができる。
【0036】
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造に用いることができる原料について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0037】
本発明のポリプロピレンフィルムは、後述のポリプロピレン組成物Xで構成される層をX層としたときに、X層が厚み基準でポリプロピレンフィルム全体中90%以上100%以下を占めることが好ましい。本発明のポリプロピレンフィルム中のX層の割合の下限は、厚み基準で90%が好ましく、92%がより好ましく、95%がさらに好ましく、98%が特に好ましい。なお、厚み基準とはポリプロピレンフィルム全体厚みを100%として比率を算出することを意味する。X層の比率が上記範囲内であると、ポリプロピレンフィルム中の高融点結晶の割合が高くなり、従来ポリプロピレンフィルムが使用不可能な高温においてもフィルムとしての剛性を維持しやすい。また、本発明のポリプロピレンフィルムは、上記X層が適正な厚み比で含まれることが好ましいが、層構成は単層であっても2種3層や3種3層などの複数層を持つ積層構成であってもよい。
【0038】
ポリプロピレン組成物Xは、組成物全体を100質量%としたときに、ポリプロピレン樹脂を95質量%以上100質量%以下含み、かつ融点が166.0℃以上170.0℃以下、半結晶化時間が5秒以上200秒以下、後述する角周波数ωが10rad/s以上70rad/s以下である樹脂組成物である。なお、ポリプロピレン樹脂に相当する成分が複数含まれる場合は、これらの合計量が95質量%を超えており、かつ融点、半結晶化時間、及び角周波数ωが上記範囲であれば、ポリプロピレン組成物Xに該当するものとする。また、ポリプロピレン樹脂とは、樹脂の分子鎖を構成する全構成単位を100モル%としたときに、プロピレン単位を50モル%より多く100モル%以下含む樹脂をいう。
【0039】
ポリプロピレン組成物Xの融点は166.0℃以上170.0℃以下である。ポリプロピレン組成物Xの融点の下限は、好ましくは166.5℃、より好ましくは167.0℃、さらに好ましくは167.5℃である。ポリプロピレン組成物Xの融点が166.0℃以上である場合、高温で製膜した際に高融点結晶が形成されやすく、高温領域のフィルム剛性などの耐熱性が向上する。なお、ポリプロピレン組成物Xの融点はDSCにより測定することができ、その詳細は後述する。
【0040】
また、ポリプロピレン組成物Xは、後述のDSC等温結晶化測定で得られる結晶化速度を示す半結晶化時間が、5秒以上200秒以下である。ポリプロピレン樹脂Xの半結晶化時間の上限は、100秒が好ましく、50秒がより好ましく、30秒がさらに好ましい。半結晶化時間が上記範囲内であると、フィルム製膜中でも再結晶化しやすく、高融点結晶が形成されやすい。ポリプロピレン組成物Xの半結晶化時間を上記範囲内にするには、ポリプロピレン組成物Xを構成するポリプロピレン樹脂の立体規則性や分子量分布を適切に調整することや、結晶核剤効果を示す分岐鎖状ポリプロプレンを添加することが効果的である。
【0041】
さらに、ポリプロピレン組成物Xは、200℃での溶融粘弾性測定により得られる貯蔵粘弾性率G’と損失粘弾性率G’’において、G’=G’’となる角周波数ωが10rad/s以上70rad/s以下である(以下、「200℃での溶融粘弾性測定により得られる貯蔵粘弾性率G’と損失粘弾性率G’’において、G’=G’’となる角周波数ω」を「角周波数ω」ということがある。)。角周波数ωは溶融したポリプロピレンの貯蔵粘弾性率G’と損失粘弾性率G’’が一致する角周波数であり、ポリプロピレンの緩和特性の指標となる。
【0042】
この角周波数ωが小さい場合、分子鎖同士の絡み合い等で緩和特性が低い(緩和が遅い)が、高温下でも分子鎖の絡み合い等が維持しやすく、結晶の高融点化に有利に働きやすい。一方で、角周波数ωが大きい場合は分子鎖同士の絡み合い等が少なく、緩和特性が高い(緩和が速く)、Relax工程で効率的に残留ひずみを低減し、非晶部分を緩和させやすい。ポリプロピレン組成物Xの角周波数ωの下限は15rad/sが好ましく、20rad/sがより好ましい。また、角周波数ωの上限は60rad/sが好ましく、50rad/s以下がより好ましく、40rad/sがさらに好ましい。角周波数ωが上記範囲内であると、ポリプロピレン組成物Xの結晶高融点化と非晶緩和の両立がしやすく、得られるポリプロピレンフィルムの耐熱性をさらに高めることが可能である。
【0043】
ポリプロピレン組成物Xの角周波数ωを上記範囲内とするには、ポリプロピレン組成物Xを構成するポリプロピレン樹脂の分子量分布を適正な範囲に調整するともに、事前混錬の条件で当該ポリプロピレン樹脂の分子量分布を調整したり、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂の添加量を調整したりすることが効果的である。なお、これらの方法は適宜組み合わせることができる。
【0044】
ポリプロピレン組成物Xはホモポリプロピレン樹脂単体より構成されていてもよいが、後述のように特性を悪化させない範囲で、その他の樹脂成分を事前混錬などで混合してもよい。ポリプロピレン組成物Xにその他の樹脂成分を添加する場合、その添加量はポリプロピレン組成物Xの全樹脂を100質量%として、1.2質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。なお、ここでホモポリプロピレン樹脂とは、ポリプロピレン樹脂の内、樹脂の分子鎖を構成する全構成単位を100モル%としたときのプロピレン単位量が99.9モル%以上100モル%以下のものをいう。
【0045】
ポリプロピレン組成物Xにその他の樹脂成分として添加することができるものとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂(樹脂の分子鎖を構成する全構成単位を100モル%としたときに、オレフィン単位を50モル%以上100モル%以下含む樹脂であって、ポリプロピレン樹脂でないものをいう。)や、ポリプロピレンと完全に相溶しないアクリル等のポリマー粒子等が挙げられる。例えば、最表層(ポリプロピレンフィルムが単層構成の場合はポリプロピレンフィルム自体)を構成するポリプロピレン組成物Xに、ポリプロピレン樹脂と完全に相溶しない樹脂成分を添加することにより、フィルムとしたときに表面に急峻な突起を形成することができ、結果、ポリプロピレンフィルムの高温での融着耐性を向上させることができる。
【0046】
ポリプロピレン組成物Xに用いるポリプロピレン樹脂は、前記したポリプロピレン組成物Xの条件を満たすものを好ましく選定できるが、商業的に入手可能なものとしては、例えば、(株)プライムポリマー製ポリプロピレン樹脂であるF-704NP、F133A、Borealis社製ポリプロピレン樹脂であるHC310BF、日本ポリプロ(株)製ポリプロピレン樹脂であるFY6H等が挙げられる。また、ポリプロピレン組成物Xに含むことができ、かつ商業的に入手可能な分岐鎖状ポリプロピレンとしては、例えば、Borealis社製“Daploy”(商標)WB130HMS、WB135HMS、WB140HMS、日本ポリプロ(株)社製“WAYMAX”(登録商標)MFX8、MFX6、MFX3などが挙げられる。
【0047】
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン組成物Xを含む樹脂全体には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
【0048】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は酸化防止剤のブリードアウトの観点から重要である。すなわち、かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等を単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。
【0049】
特に、リン系の酸化防止剤は、ポリプロピレンフィルム表面にブリードアウトしやすい場合がある。このようなブリードアウトが生じると、様々な不具合を誘発することがある。例えば、ポリプロピレンフィルムの表面に樹脂膜を形成する場合、未硬化又は半硬化状態の樹脂膜に硬化処理を施すと、硬化が阻害されることがある。また、ポリプロピレンフィルムの表面に電解質膜や金属膜を形成する場合、電解質膜の特性や金属層の品位が低下することがある。上記観点から、ポリプロピレンフィルム中のリン系酸化防止剤の含有量はポリプロピレン樹脂全量100質量部に対して、0.01質量部以下が好ましく、0.005質量部以下がより好ましく、0.001質量部以下がさらに好ましい。上記観点から、リン系酸化防止剤はポリプロピレンフィルム中に含有されていないことが好ましく、その含有量は0.000質量部が下限となる。リン系の酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(例えばBASF社製“Irgafos”(登録商標)168:分子量647)等が挙げられる。
【0050】
これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン樹脂全量100質量部に対して、0.03~1.0質量部の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると押出工程でポリマーが劣化してフィルムが着色する場合や、長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトにより透明性が低下する場合がある。より好ましい含有量は0.05~0.9質量部であり、特に好ましくは0.1~0.8質量部である。
【0051】
また、本発明のポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン原料(ポリプロピレン組成物Xを含む。)には、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を添加することができる。α晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2-ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナクリドン系化合物等)等が例示される。但し、上記別種の核剤の過剰な添加は延伸性の低下やボイド形成等による透明性や強度の低下を引き起こす場合があるため、添加量は原料全体を100質量部としたときに、通常0.5質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下とすることが好ましい。
【0052】
本発明のポリプロピレンフィルムは、二軸延伸フィルムとすることが好ましい。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法のいずれを用いてもよいが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの剛性と寸法安定性を制御する点においてステンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0053】
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法の一態様を、例として説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
まず、ホモポリプロピレン樹脂を99.0~99.9質量部と分岐鎖状ポリプロピレン樹脂0.1~1.0質量部(例えば、ホモポリプロピレン樹脂:分岐鎖状ポリプロピレン樹脂=99.7:0.3(質量比))をドライブレンドして、240~280℃に設定した二軸押出機に投入し、溶融混錬後、冷却して、基層(A層)用のポリプロピレン組成物Xのペレットを得る。また、ホモポリプロピレン樹脂を99.0~99.9質量部とアクリル粒子0.1~1.0質量部(例えば、ホモポリプロピレン樹脂:アクリル粒子=99.8:0.2(質量比))をドライブレンドして、240~280℃に設定した二軸押出機に投入し、溶融混錬後、冷却して、表層(B層)用のポリプロピレン組成物Xのペレットを得る。
【0055】
上述の手順で得られたポリプロピレン組成物Xのペレットを基層(A層)用と表層(B層)用の単軸押出機にそれぞれ供給し、200~290℃、より好ましくは240~280℃、更に好ましくは260~280℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、マルチマニホールド型の複合Tダイにて表層(B層)/基層(A層)/表層(B層)の層構成に積層し、キャスティングドラム上に吐出して冷却固化することにより、表層(B層)/基層(A層)/表層(B層)の層構成を有する積層未延伸シートを得る。この際、A層の占める比率は厚み換算で90%以上100%以下が好ましく、その下限は92%がより好ましく、95%がさらに好ましく、98%が特に好ましい。
【0056】
また、キャスティングドラムは表面温度が20~80℃であることが好ましく、より好ましくは25~60℃、さらに好ましくは30~60℃である。キャスティング温度が上記範囲内であると、結晶の中でも融点の低いβ晶の形成を抑制することができ、フィルム中の高融点結晶の割合増加に好適に作用しやすい。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、表面粗さの制御が容易なエアナイフ法が好ましい。エアナイフ法を用いる場合、エアナイフのエア温度は20~100℃が好ましく、吹き出しエア速度は130~150m/sが好ましい。また、積層未延伸シートの振動を生じさせないために、製膜下流側にエアが流れるようにエアナイフの位置を適宜調整することも好ましい。
【0057】
得られた積層未延伸シートは、縦延伸(長手方向への延伸)工程に導入される。縦延伸工程では、延伸の前に150℃以上160℃以下、好ましくは152℃以上158℃以下、より好ましくは154℃以上158℃以下で加熱された金属ロールにより積層未延伸シートを予熱する。予熱温度が上記範囲内であると、積層未延伸シートの構造が軟化した状態で縦延伸工程に進むこととなり、縦延伸工程で必要以上の応力をかけずに延伸が可能となるため、熱収縮応力が低減しやすい。また、積層未延伸シートに含まれる低融点のβ晶を低減させることも可能であり、フィルム中の高融点結晶の割合増加にも好適に作用しやすい。なお、上記予熱の前に予備予熱として、50℃以上145℃以下に保たれた複数の金属ロールに未延伸積層シートを接触させて加熱してもよい。
【0058】
そして、予熱直後の周速差を設けたロール間で長手方向に4.0倍以上8.0倍以下に延伸し、縦一軸延伸フィルムを得る。当該延伸倍率は4.0倍以上7.0倍以下が好ましく、4.3倍以上6.0倍以下がより好ましい。延伸温度は150℃を超えて160℃以下、好ましくは152℃以上158℃以下、より好ましくは154℃以上158℃以下である。延伸温度が上記範囲内であると、過度なひずみの残存を抑制しつつ、軟化した結晶から分子鎖を引き出すことが可能であり、後の緩和工程も合わせて、結晶高融点化が促進される。そのため、得られるポリプロピレンフィルムの動的粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率などで示される耐熱性が向上しやすい。
【0059】
縦延伸工程の最後に、周速差があり、かつ140~160℃に保たれた金属ロールに縦一軸延伸フィルムを接触させて長手方向に0%より大きく10%以下のRelax率で緩和させ、その後室温まで冷却する。緩和温度は145~160℃が好ましく、150~160がより好ましく、154~160℃がさらに好ましい。また、緩和温度は延伸温度-10℃以上延伸温度+5℃以下が好ましく、より好ましくは延伸温度-5℃以上延伸温度+5℃以下、さらに好ましくは延伸温度-5℃以上延伸温度以下である。緩和温度が上記範囲内であると、縦延伸により結晶から引き出された分子鎖の再配列を促進し、よりラメラ厚みの厚い高融点の結晶を形成することが可能となる。また、縦延伸工程でのRelax率は0.1~10%が好ましく、1.0~10%がより好ましく、3.0~10%がさらに好ましく、5.0~10%が特に好ましい。縦延伸工程でのRelax率が上記範囲内であることで、分子鎖の緊張が解消しやすくなる。その結果、非晶緩和が促進し、収縮応力が低減されることに加え、分子鎖の運動性が適度な範囲となり、分子鎖の再配列化も促進しやすい。その結果、ポリプロピレンフィルムの寸法安定性が向上する。
【0060】
次いで、縦一軸延伸フィルムをテンターに導いて、その幅方向両端部をクリップで把持して予熱後、幅方向に7.0~13倍、好ましくは9.6~13倍に横延伸する(横延伸工程)。このような延伸倍率を採用することで、得られるポリプロピレンフィルムの高温での圧着耐性が向上する。また、延伸前の予熱工程における温度は、好ましくは170℃以上190℃以下、より好ましくは173℃以上185℃以下、さらに好ましくは175℃以上185℃以下、特に好ましくは177℃以上185℃以下である。予熱温度が上記範囲内であると、縦延伸工程で形成した結晶を軟化した状態で横延伸工程に進むことができ、横延伸工程で必要以上の応力をかけずに延伸が可能となり、熱収縮応力が低減しやすい。
【0061】
そして、予熱工程後の横延伸工程における延伸温度は170℃を超えて180℃以下が好ましく、173℃以上180℃以下がより好ましく、175℃以上180℃以下がさらに好ましい。横延伸温度が上記範囲内であると、過度なひずみの残存を抑制しつつ、予熱で軟化した結晶から分子鎖を引き出すことが可能となる。そのため、後の緩和工程も合わせて、結晶高融点化が促進され、ポリプロピレンフィルムの動的粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率などで示される耐熱性が向上しやすい。
【0062】
続く横延伸後のRelax工程ではクリップで幅方向を適度な緊張把持したまま幅方向に好ましくは10%以上20%以下、より好ましくは11%以上18%以下、さらに好ましくは12%以上15%以下のRelax率で緩和させる。横延伸後のRelax率が上記範囲内であることで、分子鎖の緊張が解消しやすくなる。そのため、非晶緩和が促進し、収縮応力が低減されることに加え、分子鎖の運動性が適度な範囲となり、分子鎖の再配列化も促進しやすい。そしてその際の熱固定温度は、好ましくは168℃以上190℃以下、より好ましくは170℃を超えて190℃以下、さらに好ましくは173℃以上185℃以下、特に好ましくは175℃以上185℃以下で、かつ直前の延伸工程の延伸温度以上であることが好ましく、直前の延伸工程の延伸温度よりも2℃以上高いことがより好ましい。この緩和温度が上記範囲内であると、横延伸により結晶から引き出された分子鎖の再配列を促進し、よりラメラ厚みの厚い高融点の結晶を形成することが可能となる。
【0063】
また、本発明のポリプロピレンフィルムは縦延伸工程と横延伸工程にRelax工程を含み、縦延伸工程と横延伸工程の各延伸倍率とRelax率から算出した総面積Relax率(%)は10.0%以上30.0%以下が好ましく、13.0%以上25.0%以下がより好ましく、15.0%以上20.0%以下がさらに好ましい。総面積Relax率(%)は以下の式で算出され、上記範囲内であると、非晶緩和が進みやすく、ポリプロピレンフィルム全体として、収縮応力が低減されやすい。
総面積Relax率(%)=[1-(1-縦延伸工程Relax率÷100)×(1-横延伸工程Relax率÷100)]×100。
【0064】
その後クリップで幅方向を緊張把持したまま80~130℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。
【0065】
以上のようにして得られた本発明のポリプロピレンフィルムは、包装用フィルム、表面保護フィルム、工程フィルム、電池用フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途で用いることができ、特に耐熱性に優れることから、塗材の乾燥や熱硬化性樹脂の成型で高温での処理が必要な工程フィルム、離型フィルムや2次電池用集電泊用基材フィルムやレトルト用包装用フィルムとして好ましく用いることができ、特に好ましくは高温領域使用される離型フィルムとして用いることができる。
【0066】
本発明において、離型フィルムとは、成型体やフィルム等の対象物に貼り付けて加工時や運搬時において対象物をキズや汚染等から対象物を保護し、最終製品としての使用時には容易に剥離して破棄することのできる機能を有するフィルムをいう。また、工程フィルムとは成型体やフィルム等の対象物の製造過程で用いられるフィルムをいい、例えば、製造過程にある対象物に貼り付けてキズや汚染等から保護するものや、対象物自体が薄い又は脆い等の事情で製膜することが難しい場合に支持体として機能するもの等が挙げられる。
【0067】
以下、本発明の積層体について説明する。
【0068】
本発明のポリプロピレンフィルムは、耐熱性、離型性に優れることから、本発明のポリプロピレンフィルムに、蒸着加工やスパッタ加工を施し、金属膜との積層体を形成する際にも好ましく用いることができる。すなわち、本発明の積層体の一態様としては、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜や電解質膜が接してなるものが挙げられる。
【0069】
蒸着加工やスパッタ加工においては、耐熱性や剛性等の観点から、これらの特性に優れるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが使用されることが多かった。しかしながら、PETはエステル結合を有するため親水性が高く、PETフィルムは微量の水分を含有している。このような微量の水分は、蒸着加工やスパッタ加工する際に悪影響を与えることがあり、特に、水分と反応しやすい周期表の1族または2族に属する金属やこれらの金属を含む化合物を蒸着する場合に顕著となる。このような背景から、微量の水分の存在によりPETフィルムを使用しづらい場合においても好適に積層体を得ることができる点で、本発明の積層体は周期表の1族または2族に属する金属を含んでなることが好ましい。ここで1族または2族に属する金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムを指す。なお、金属膜はこれらの金属成分が単独で含まれるものであっても、複数種が含まれるものであってもよく、後者の場合における成分の組み合わせは任意である。
【0070】
また、高温環境下ではフィルム中の水分がアウトガスとして揮発し、特に金属蒸着工程等の高真空条件下ではその影響が顕著となる。フィルムからアウトガスが発生すると系内の真空度が悪化し、蒸着により形成する金属膜の膜質や、蒸着加工の歩留まりが低下する場合がある。かかる観点から、PETフィルムよりも水分量の少ない本発明のポリプロピレンフィルムは、金属膜を形成する用途に好適に用いることができ、本発明の積層体は金属膜の膜質を良好に保つことができる。
【0071】
また、燃料電池、半固体電池、全固体電池等に用いられる電解質膜は、通常、温度や湿度が厳密管理された環境で製造される。特に、硫化物型電解質膜は、水分と反応して硫化水素が発生するため、その製造に用いられる工程フィルムにも含水率は極めて低いことが求められる。そのため、このような電解質膜の製造における工程フィルムとして、本発明のポリプロピレンフィルムは好ましく用いられる。すなわち、本発明の積層体の好ましい態様としては、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に電解質膜が接してなるものも挙げられ、さらに電解質膜が燃料電池用、半固体電池用、または全固体電池用であるものが特に好ましい。
【0072】
上記観点から、本発明のポリプロピレンフィルムの含水率の上限は2000ppmが好ましく、1000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましく、200ppmが特に好ましく、100ppmが最も好ましい。含水率の下限は特に制限されないが実質的に1ppmである。なお、ポリプロピレンフィルムの含水率は、カールフィッシャー法によって測定することができ、その詳細は後述する。
【0073】
本発明のポリプロピレンフィルムの含水率を上記範囲とするには、ポリプロピレンフィルム中の親水性樹脂の含有量を最少化することや、添加剤の量を必要最低限とすることが好ましい。具体的には、本発明のポリプロピレンフィルムの全構成成分を100質量%として、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の含有量の下限を90質量%とすることが好ましく、より好ましくは95質量%、さらに好ましくは97質量%である。なお、これらの樹脂の含有量の上限は実質的に100質量%である。
【0074】
上記観点から、本発明のポリプロピレンフィルムのポリプロピレン樹脂全量100質量部に対して、酸化防止剤の含有量は、0.03~1.0質量部であることが好ましく、0.05~0.9質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.1~0.8質量部である。中でも、表面にブリードアウトしたリン系酸化防止剤は、表面に形成する金属膜の特性や品位を低下させる場合があることから、その含有量を制御することが好ましい。より具体的には、本発明のポリプロピレンフィルムの全構成成分を100質量部とした際、リン系酸化防止剤の含有量は0.01質量部以下が好ましく、0.005質量部ppm以下がより好ましく、0.001質量部がさらに好ましい。リン系酸化防止剤の含有量の下限には特に制限はなく、理論上0.000質量部(リン系酸化防止剤を含まないことと同義)となる。なお、リン系酸化防止剤を含む酸化防止剤の含有量については、特性や品位、及び効果阻害軽減の観点から、表面に形成する膜が金属膜でない場合においても同様とすることが好ましい。
【0075】
本発明のポリプロピレンフィルムにおける、ブリードアウトによる不具合を軽減する観点から、酸化防止剤以外の添加剤(例えば、帯電防止剤、粘度調整剤、着色防止剤、すべり剤等)の含有量は合計で0~0.05質量部以下が好ましい。
【0076】
本発明のポリプロピレンフィルムに好ましく用いられる酸化防止剤は、立体障害性を有するフェノール系のものであり、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものとすることが好ましい。具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT:分子量220.4)に、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい。
【0077】
本発明のポリプロピレンフィルムは、上記のとおりフィルムの含水率が極めて低く、アウトガスの発生も極めて少ない上、既存のオレフィン系フィルムよりも平滑性やハンドリング性に優れることから、より厳しい真空条件や高品位が求められる透明導電膜を形成する際に好ましく用いられる。すなわち、本発明の積層体の好ましい態様として、本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に透明導電膜が接してなるものも挙げられる。ここで透明導電膜とは、導電性を持ちながら、可視光を透過する性質を持つ材料で形成された薄膜のことをいい、具体例としてはインジウム-スズ複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、パラジウム膜等が挙げられる。
【0078】
次に本発明の集電体について説明する。本発明の集電体は、本発明のポリプロピレンフィルムを用いてなる。本発明のポリプロピレンフィルムは、耐熱性に優れることから、集電体として好ましく用いられる。集電体とは、リチウムイオン電池のような蓄電池の電極に使用される箔状の積層体である。通常、集電体としては金属箔が使用されるが、安全性向上と軽量化を目的として基材となる樹脂フィルムに金属膜が積層されてなる積層体も用いられる。この金属膜は、例えば蒸着やスパッタ、めっき、無電解めっき等の加工によって積層される。また、電池のエネルギー密度を高める観点から、集電体の基材となるフィルムには厚みが小さいことが求められる反面、フィルムが薄くなるとコシが低下するため、加工時のハンドリング性が大きく低下する。特に、金属膜を積層する工程では、加工時に輻射熱等の高熱がかかり、また、搬送方向に張力もかかるため、フィルムには良好なハンドリング性が求められる。本発明のポリプロピレンフィルムは、薄膜化が可能である上にハンドリング性も良好であるため、集電体に好ましく用いられる。
【0079】
次に本発明の蓄電池について説明する。本発明の蓄電池は、本発明のポリプロピレンフィルムを用いてなる。本発明のポリプロピレンフィルムは、耐熱性に優れることから、集電体として好ましく用いられ、概集電体を電極とする蓄電池に用いられる。蓄電池とは、電気エネルギーを蓄えておき、必要な時に電気エネルギーに戻して使う装置であり、具体例としては、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、NAS電池、レドックスフロー電池などが挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価した。
【0081】
(1)フィルム厚み
マイクロ厚み計(アンリツ社製)を用いて測定した。フィルムを10cm四方にサンプリングし、任意に5点測定し、平均値を求めた。
【0082】
(2)E’A+E’B(貯蔵弾性率)
ポリプロピレンフィルムより測定方向を長辺として切り出した矩形形状の試験片(幅5mm×長さ20mm)を23℃雰囲気下で装置チャック部に取付け、-100℃まで低温冷却し、昇温開始後-100℃から180℃に到達するまでのE’を測定した。動的粘弾性法により粘弾性-温度曲線を描き、30℃のE’を算出した。次いで、ポリプロピレンフィルムの長手方向を0°とした場合に、該長手方向に対して0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°の角度をなす各々の方向について同様に動的粘弾性を測定し、30℃における各方向のE’を算出し、最も高い貯蔵弾性率を示す方向をA方向、A方向と垂直な方向をB方向とした。その後、A方向とB方向について160℃の貯蔵弾性率を読み取り、それぞれE’A、E’Bとした。試験はn=3で行い、得られた値の平均値を当該ポリプロピレンフィルムの測定方向における貯蔵弾性率とした。EA’+EB’は、得られたEA’とEB’の和を算出することにより求めた。なお、測定装置及び条件は下記のとおりである。
<測定装置及び条件>
・装置 :EXSTAR DMS6100(セイコーインスツルメント(株)製)
・ジオメトリー :引張
・チャック間距離:20mm
・周波数 :10Hz
・歪み :0.1~0.2%
・温度範囲 :-100~200℃
・昇温速度 :5℃/分
・測定雰囲気 :窒素中。
【0083】
(3)PA+PB、収縮開始温度
TMA(SII・ナノテクノロジー(株)社製/型式TMA/SS6100)を用いて、以下の条件で測定方向(A方向及びB方向)の熱収縮応力曲線を取得した。
(a)サンプル:幅4mm×長さ20mm
(b)初期荷重:0.0mN
(c)温度プログラム:30℃から200℃まで、加熱レート10℃/minにて昇温
(d)熱収縮応力曲線の作成:観測した各温度の荷重(N)をポリプロピレンフィルムの断面積(厚み×サンプル幅)で割り、各温度の収縮応力(MPa)を算出し、温度-収縮応力曲線(熱収縮応力曲線)を作成。
【0084】
<PA+PB>
上記収縮応力曲線から160℃の収縮応力(MPa)を読み取った。測定は各方向で3回行い、それぞれ平均を求め、A方向の値をPA、B方向の値をPBをとし、PAとPBの和をPA+PBとした。
【0085】
<収縮開始温度>
上記収縮応力曲線において、昇温過程で最初に収縮応力が0.2MPaに到達した温度を読み取った。測定は各方向で各3回行い、それぞれ平均を求めた。
【0086】
(4)175℃以上200℃以下の融解熱量割合H
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレンフィルムの各層について25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、融解曲線を得た。得られた融解時の融解曲線について、60℃~200℃の範囲に直線ベースラインを設定し、係る直線ベースラインと融解曲線とで囲まれる部分の面積から融解熱量を算出し、これを試料質量当たりに換算して全体融解熱量(J/g)を算出した。また、175℃以上で係る直線ベースラインと融解曲線とで囲まれる部分の面積から熱量を算出し、これを試料質量当たりに換算して175℃以上融解熱量(J/g)とした。得られた全体融解熱量と175℃以上融解熱量を以下の式に当てはめ、175℃以上結晶融解割合H(%)を求めた。
175℃以上融解結晶割合H(%)=175℃以上融解熱量×100÷全体融解熱量 。
【0087】
(5)二乗平均平方根傾斜Sdq
測定は(株)菱化システム“VertScan”(登録商標)2.0 R5300GL-Lite-ACにより行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似にて面補正して表面形状を求めた。測定条件は下記のとおりとした。測定は、フィルムの両面について、それぞれn=3(測定回数=3回)で行い、それぞれの面の平均値を求めることにより、各面のSdqとして採用した。
製造元:株式会社菱化システム
装置名:“VertScan”(登録商標)2.0 R5300GL-Lite-AC
測定条件:CCDカメラ SONY HR-57 1/2インチ
対物レンズ:10x
中間レンズ:0.5x
波長フィルター:530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS-Measure Version5.5.1
解析ソフトウェア:VS-Viewer Version5.5.1
測定領域:561.097μm×561.473μm。
【0088】
(6)原料の融点およびポリプロピレンフィルムのTm2
原料5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下で測定した。まず、30℃から260℃まで20℃/分で昇温した後、5分間260℃を保持した。その後、20℃/分で260℃から30℃まで降温した後、再度30℃から260℃まで20℃/分で昇温した際に観測される融解曲線について、30℃~180℃の温度範囲で最大のピーク温度を原料の融点とした。また、ポリプロピレンフィルムについても同様に測定し、30℃~180℃の温度範囲で最大のピーク温度をポリプロピレンフィルムのTm2(℃)とした。
【0089】
(7)半結晶化時間
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレンフィルムを25℃から250℃まで20℃/minで昇温し、5分間保持した。次いで250℃から130℃まで20℃/minで降温し、130℃で30分保持した。サンプル温度が130℃に到達した時間を0秒とし、この130℃での等温保持の際に得られる吸熱カーブについて、最初に現れるピークの経過時間を半結晶化時間(秒)とした。
【0090】
(8)角周波数ω
回転式レオメーター(アントンパール・ジャパン製MCR302)に25mm径のコーンプレートを装着して測定を行った。200℃に加熱したプレート上に原料を窒素雰囲気下で10分間静置した。また、試料がポリプロピレンフィルムの場合は、事前に積層して200℃に加熱したプレス機で溶融させ、冷却することによりシート状に成型してから原料と同様にプレート上に静置した。プレート上で試料が溶融したことを確認した後、上下のプレートの間隙を測定時設定値(0.25mm)まで狭め、窒素雰囲気下で200℃に安定するまで5分静置した。そして200℃の状態を保持しながら、5%ひずみで角周波数0.5rad/sから500rad/sまで低角周波数から高角周波数の向きに変化させ、粘弾性測定を行った。得られた角周波数と貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の曲線から、G‘=G“となる角周波数を原料およびポリプロピレンフィルムの角周波数ω(rad/s)とした。
【0091】
(9)対数分子量Log(M)=5.0以下の成分とLog(M)=6.0以上の成分の割合
1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒とし、165℃で30分間攪拌してポリプロピレンフィルムを溶解させた。その後、0.5μmフィルターを用いてろ過し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、ろ液の分子量分布を測定し、ポリスチレン換算により測定結果を得た。その後、Q-ファクターを用いてポリプロピレンの分子量へ換算し、得られた分子量分布の積分曲線から対数分子量Log(M)が5.0以下の成分とLog(M)=6.0以上の成分の割合を求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による測定は下記の装置、条件により行った。
<装置及び測定条件>
装置:Agilent社製高温GPC装置PL-GPC220
検出器:Agilent社製示差屈折率検出器(RI検出器)
カラム:Agilent製PL1110-6200(20μm MIXED-A)×2本
流速:1.0mL/min
カラム温度:145℃
注入量:0.500mL
試料濃度:0.1質量%
標準試料:東ソー製単分散ポリスチレン、東京化成製ジベンジル。
【0092】
(10)耐熱特性評価
厚紙(大王製紙社製 品番C-55)を10cm四方に裁断後、15cm四方に裁断したポリプロピレンフィルムまたはPETフィルムを
図1のように、20cm四方のSUS板とともに厚紙両面に設置し、加熱プレス機を用いて圧力1.5MPa、温度160℃、165℃、170℃でそれぞれ15分間加熱加圧し、加圧プレス機から取り外して常温まで冷却した。その後、厚紙からはみ出した二軸配向ポリオレフィンフィルムまたはPETフィルム同士を剥離した後、ポリプロピレンフィルムまたはPETフィルムから厚紙を剥離した。なお、
図1中の符号1~4は順にSUS板、ポリプロピレンフィルムまたはPETフィルム、厚紙、加圧方向を示す。各温度での処理した厚紙およびポリプロピレンフィルムの状態を、目視により以下の観点で評価した。評価は各評価項目とも最初に加熱温度を160℃として実施し、合格だった評価項目のみ加熱温度165℃での評価に進行した。さらに165℃での評価で合格だった項目のみ加熱温度170℃での評価に進行した。
(圧着耐性)
厚紙からポリプロピレンフィルムまたはPETフィルムを完全に剥離できた場合を合格、剥離が不完全の場合、もしくは剥離により厚紙およびポリプロピレンフィルムまたはPETフィルムの一部がもう一方に残留した場合を不合格とし、以下の基準で評価した。
(寸法安定性)
厚紙に折れやしわが観察されなかった場合を合格、少なくとも折れまたはしわのいずれかが観察された場合を不合格とし、以下の基準で評価した。
(融着耐性)
加圧処理後の加圧面外のポリプロピレンフィルム同士またはPETフィルム同士が融着していなかった場合を合格、一部でも融着していた場合を不合格とし、以下の基準で評価した(なお、融着していた場合は融着部分を切除した後に厚紙から剥離し、上記評価を実施した。)。
<評価基準(圧着耐性、寸法安定性、融着耐性共通)>
圧着耐性、寸法安定性、融着耐性について下記基準で評価し、各特性がいずれもA~Cであれば耐熱性有とした。
A:160℃、165℃、170℃で合格であった。
B:160℃、165℃は合格であったが、170℃で不合格となった。
C:160℃は合格であったが、165℃で不合格となった。
D:160℃で不合格となった。
【0093】
(11)金属膜形成時の歩留まり評価
真空蒸着装置を使用し、大気圧から1×10-5ト-ルに減圧し、ポリプロピレンフィルムまたはPETフィルムの片方の面に、マグネシウムを蒸着源に用いて真空蒸着法により、膜厚200オングストロームのマグネシウムの蒸着膜を形成した。その際に、大気圧から1×10-5ト-ルに減圧するまでの時間を計測し、また、目視確認により金属膜表面の凹凸性を観察して、以下の基準により歩留まりを評価した。評価基準はAを合格、Bを不合格とした。
A:大気圧から1×10-5ト-ルに減圧するまでの時間が50分以下であり、かつ金属膜表面に凹凸が見えなかった。
B:大気圧から1×10-5ト-ルに減圧するまでの時間が50分より長かった、もしくは金属膜表面に凹凸が確認された。
【0094】
(12)含水率
ポリプロピレンフィルムまたはPETフィルムのサンプルを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させた。その後、サンプル表面の水分をふき取り、微量水分計(三菱化学(株)製、CA-20型)を用いて温度150℃でサンプル中の水分を乾燥・気化させた後、カールフィッシャー法により水分量を定量して、含水率を算出した。
【0095】
(ポリプロピレン樹脂等)
実施例、比較例のポリプロピレンフィルムに使用した原料及びその特性を、下記の表1~3に示す、これらの特性値は、樹脂ペレットの形態で評価した値である。ポリプロピレン原料として8種類(PP1~PP8)を用意した。なお、PP1~PP8はいずれも酸化防止剤としてBASF社製“Irganox”(登録商標)1010を1000ppm~5000ppmの範囲で含み、PP8のみ、さらに3000ppmのBASF社製“Irgafos”(登録商標)168を含む。また、表3の組成で事前混練して作製したポリプロピレン樹脂ペレットを7種類(PP9~PP15)用意した(混錬は、ドライブレンドした後に二軸押出機に投入して260℃で混錬し、冷却することにより行った。)。
ホモポリプロピレン樹脂1(PP1):プライムポリマー社製
ホモポリプロピレン樹脂2(PP2):プライムポリマー社製
ホモポリプロピレン樹脂3(PP3):プライムポリマー社製
分岐鎖状ポリプロピレン樹脂4(PP4):ボレアリス社製
ホモポリプロピレン樹脂5(PP5):プライムポリマー社製
ホモポリプロピレン樹脂6(PP6):住友化学社製
ホモポリプロピレン樹脂7(PP7):日本ポリプロ製
ホモポリプロピレン樹脂8(PP8):プライムポリマー社製
【0096】
【0097】
アクリル粒子1(粒子1):日本触媒社製アクリルビーズ“エポスター”(登録商標)MA1002
【0098】
【0099】
ポリプロピレン樹脂9(PP9):PP1とPP4を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
ポリプロピレン樹脂10(PP10):PP2とPP4を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
ポリプロピレン樹脂11(PP11):PP3とPP8を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
ポリプロピレン樹脂12(PP12):PP5と粒子1を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
ポリプロピレン樹脂13(PP13):PP3とPP4を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
ポリプロピレン樹脂14(PP14):PP5とPP4を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
ポリプロピレン樹脂15(PP15):PP9と粒子1を表3の質量比で混合した混合ポリプロピレン樹脂ペレット
【0100】
【0101】
(実施例1)
ポリプピレン樹脂9を基層(A層)用の単軸の一軸押出機に供給し、ポリプロピレン樹脂15を表層(B層)用の単軸の一軸押出機に供給した。各層用の樹脂混合物について260℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のB/A/B複合Tダイにて、表層(B層)/基層(A層)/表層(B層)が1/28/1の厚み比となるように積層し、得られた溶融積層体をTダイにてシート状に成型した。その後、Tダイより30℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに溶融シート状物を吐出し、エアナイフによりエア速度140m/sで25℃の圧空エアを噴射させて溶融シート状物をキャスティングドラムに密着させ、未延伸シートを得た。続いて、該未延伸シートをセラミックロールにより156℃に予熱し、周速差を設けた156℃のロール間で長手方向に倍率4.3倍で延伸した後、さらに周速差を設けた155℃のロールで長手方向に5.6%弛緩させて一軸延伸フィルムを得た。次に幅方向両端部をクリップで把持して一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導入し、180℃で10秒間予熱後、176℃で幅方向へ9.8倍に延伸し、幅方向に13%の弛緩を与えながら178℃で熱固定を行った。その後100℃の冷却工程を経てテンター式延伸機の外側へ導いて幅方向両端部のクリップを解放し、コアに巻き取って厚み30μmのポリプロピレンフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表4に示す。
【0102】
(実施例2~5、比較例1~5)
各層の原料組成、製膜条件を表4のとおりとした以外は実施例1と同様にポリプロピレンフィルムを得た。このとき、厚みの調節は押出時の吐出量の調整やキャスティングドラムの速度調整にて行った。得られたポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表4に示す。なお、単層構成である実施例2~4、比較例1、3~5においては2台の一軸押出機に同じ樹脂又は樹脂組成物を投入した。
(比較例6)
ポリプロピレンフィルムの代わりとして、PETフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製)を用い、耐熱特性評価、金属膜形成時の歩留まり評価を実施し、含水率を測定した。評価結果を表4に示す。
【0103】
【0104】
実施例2~4、比較例1、3~5のポリプロピレンフィルムは2台の一軸押出機に同じ樹脂又は樹脂組成物を投入して作製した単層ポリプロピレンフィルムであるため、表中の樹脂の種類はA層のみ記載した。また、比較例1、3はSdqが両面で値が等しかったため、高値面、低値面の区別はないが、表には両面の値を記載した。なお、含水率と金属膜製造時の歩留まりについては、実施例1、比較例3、6のみ評価した。
【産業上の利用可能性】
【0105】
上述のとおり、本発明のポリプロピレンフィルムは、包装用フィルム、離型フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品、集電体、蓄電池など様々な用途で用いることができる。特に、耐熱性に優れることから従来ポリプロピレンフィルムでは使用が難しい高温下で使用する離型フィルム、工程フィルムとして好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0106】
1:SUS板
2:ポリプロピレンフィルム
3:厚紙
4:加圧方向