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特許7691106情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/029 20180101AFI20250604BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20250604BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20250604BHJP
   H04W 4/33 20180101ALI20250604BHJP
   H04W 84/12 20090101ALN20250604BHJP
【FI】
H04W4/029
G01S5/02 Z
H04W4/38
H04W4/33
H04W84/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021162621
(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公開番号】P2022125957
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2024-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2021023710
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月8日 信学技報 Vol.120 No.429の第10~13貢を通じて公開 令和3年3月15日 電子情報通信学会システム数理と応用研究会を通じて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「大学発新産業創出プログラム 社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】豊味 諒磨
(72)【発明者】
【氏名】藤野 雄亮
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197988(JP,A)
【文献】特開2021-101521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0373692(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110831102(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S5/00-5/14
19/00-19/55
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理アドレスが変化し得る携帯端末から送信された、物理アドレスを含む信号が複数のセンサの少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末の移動履歴を取得する取得部と、
第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続している場合に、前記第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末の物理アドレスであると判定する判定部と、を備えた情報処理装置。
【請求項2】
観測領域は、携帯端末から送信された信号を観測した前記センサの覆域領域内における当該信号の電波強度に応じた領域である、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、携帯端末から送信された信号が複数の前記センサで観測された場合に、当該複数のセンサに対応する複数の観測領域の重複する領域を当該携帯端末の位置とする、請求項1または請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、移動方向及び移動速度の少なくとも一方が連続している場合に、前記第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、前記第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続していると判定する、請求項1から請求項3のいずれか記載の情報処理装置。
【請求項5】
携帯端末及び前記複数のセンサは、複数の空間に仕切られた建物内に存在し、
前記取得部は、前記建物内のある空間に配置された前記センサによって観測された信号のうち、所定の閾値を超える電波強度の信号の観測情報を用いて、当該空間における携帯端末の移動履歴を取得する、請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
携帯端末及び前記複数のセンサは、複数の空間に仕切られた建物内に存在し、
観測情報には、観測された信号の電波強度も含まれており、
前記取得部は、所定の閾値を超える電波強度の信号を観測したセンサの存在する空間を、当該信号を送信した携帯端末が存在する空間とし、前記センサと異なる空間に存在する携帯端末から送信された信号に関する当該センサによる観測結果に応じた観測情報をも用いて移動履歴を取得する、請求項4記載の情報処理装置。
【請求項7】
携帯端末及び前記複数のセンサは、複数の空間に仕切られた建物内に存在し、
観測情報には、観測された信号の電波強度も含まれており、
携帯端末から送信された信号に関する電波強度と観測領域との複数の組と、当該携帯端末の位置とを対応付ける対応情報が複数記憶される記憶部をさらに備え、
前記取得部は、同じ観測時間を含む複数の観測情報にそれぞれ含まれる観測領域と電波強度との複数の組と、前記対応情報とを用いて、携帯端末の位置を特定する、請求項4から請求項6のいずれか記載の情報処理装置。
【請求項8】
携帯端末及び前記複数のセンサは、複数の階床に仕切られた建物内に存在し、
前記複数のセンサのうち少なくとも1個のセンサは、前記建物に設置されたエレベータのカゴ内に配置されており、
前記取得部は、前記カゴ内に配置されたセンサによる観測結果に応じた観測情報をも用いて携帯端末の移動履歴を取得する、請求項4から請求項7のいずれか記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記判定部による判定結果を用いて、物理アドレスごとの移動履歴をマージすることによって、携帯端末ごとの移動履歴を取得する端末移動履歴取得部と、
前記端末移動履歴取得部によって取得された携帯端末ごとの移動履歴に基づいて、携帯端末の移動空間を仮想的に分割した複数のエリアにおけるエリアごとの携帯端末の個数、及び隣接するエリア間の携帯端末の移動を時間ごとに特定する特定部と、
前記特定部による特定結果を用いて、エリアごとの携帯端末の個数を時間ごとに予測する予測部と、をさらに備えた、請求項4から請求項8のいずれか記載の情報処理装置。
【請求項10】
ある時間の予測結果と当該時間の特定結果とに閾値を超える乖離があるかどうかを判断する判断部をさらに備え、
前記判断部によって、予測結果と特定結果とに閾値を超える乖離があると判断された場合に、前記予測部は、新たな予測を行う、請求項9記載の情報処理装置。
【請求項11】
請求項5から請求項10のいずれか記載の情報処理装置と、
複数の階床に仕切られた建物内に配置された前記複数のセンサと、を備え、
前記センサは、各階床において略同一の平面位置に配置されている、情報処理システム。
【請求項12】
請求項5から請求項10のいずれか記載の情報処理装置と、
複数の階床に仕切られた建物内に配置された前記複数のセンサと、を備え、
ある階床の前記センサは、平面視において、当該階床に隣接する階床に配置された複数の前記センサのうち、隣接する2個のセンサの間の空間に配置される、情報処理システム。
【請求項13】
物理アドレスが変化し得る携帯端末から送信された、物理アドレスを含む信号が複数のセンサの少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末の移動履歴を取得するステップと、
第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続している場合に、前記第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末の物理アドレスであると判定するステップと、を備えた情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
物理アドレスが変化し得る携帯端末から送信された、物理アドレスを含む信号が複数のセンサの少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末の移動履歴を取得する取得部、
第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続している場合に、前記第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末の物理アドレスであると判定する判定部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の移動履歴を用いることによって、複数の物理アドレスが同じ携帯端末に対応しているかどうかについて判定する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内や商業施設、観光地などのように人が多く集まる場所において、人数や人流を把握したいという要望がある。そのような混雑の程度や人流について把握することによって、例えば、人流に応じたプロモーションや、新たなビジネスの開拓、業務の効率化などを行うことができる。また、台風などの水害、地震などの自然災害や疫病の感染拡大が発生した際に、混雑の程度や人流について把握した結果を用いて、危機管理対策を行うこともできる。
【0003】
そのような混雑の程度や人流について把握するためにカメラによって通行人を撮影する手法もあるが、その場合には、個人情報の取り扱いが問題となるため、導入することが難しいという問題がある。
【0004】
そのような問題を解決するため、スマートフォンなどの携帯端末から送信されるWi-Fi(登録商標)の無線信号に含まれるMAC(Media Access Control)アドレスを用いて、混雑の程度や人流について把握することが行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
MACアドレスに個人情報は含まれないが、MACアドレスを継続的に検知することによって、端末の追跡を行うことができる。そのような端末の追跡に対してプライバシーを保護するため、MACアドレスを変化させることによってランダマイズ化(秘匿化)する機能が導入されるようになってきている。このような機能の導入が進むと、MACアドレスを用いた混雑の程度や人流の把握を正確に行うことができなくなるという問題がある。そのため、無線信号のシーケンス番号やパケット長、無線信号のタイプなどの無線信号の属性を用いて、異なるMACアドレスを含む複数の無線信号が同じ端末から送信されたかどうかについて推定を行うシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6578521号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】西田純二、「Wi-Fiパケットセンサ商用化に至る課題克服の歩み-産学官連携が生んだ交通流動解析システム-」、情報処理学会デジタルプラクティス Vol.11 No.3、pp.489-510、2020年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、同じ端末から送信された、異なるMACアドレスをそれぞれ含む複数の無線信号が異なる属性を有する場合には、上記の推定を適切に行うことができないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、無線信号の属性を用いることなく、複数の物理アドレスが同じ携帯端末に対応しているかどうかについて判定することができる情報処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による情報処理装置は、物理アドレスが変化し得る携帯端末から送信された、物理アドレスを含む信号が複数のセンサの少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末の移動履歴を取得する取得部と、第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続している場合に、第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末の物理アドレスであると判定する判定部と、を備えたものである。
このような構成により、2個の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される経時的な移動が連続しているかどうかに応じて、2個の物理アドレスが同じ携帯端末に対応しているかどうかについて判定することができる。したがって、無線信号の属性を用いることなく判定を行うことができ、同じ携帯端末に対応する複数の物理アドレスをそれぞれ含む無線信号が、それぞれ異なる属性を有する場合であっても、適切に判定を行うことができるようになる。
【0011】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、観測領域は、携帯端末から送信された信号を観測したセンサの覆域領域内における信号の電波強度に応じた領域であってもよい。
このような構成により、観測領域を覆域領域よりも小さくすることができ、より正確な携帯端末の位置を特定することができ、結果として、より精度の高い判定を実現することができるようになる。
【0012】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、取得部は、携帯端末から送信された信号が複数のセンサで観測された場合に、複数のセンサに対応する複数の観測領域の重複する領域を携帯端末の位置としてもよい。
このような構成により、より正確な携帯端末の位置を特定することができ、結果として、より精度の高い判定を実現することができるようになる。
【0013】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、判定部は、移動方向及び移動速度の少なくとも一方が連続している場合に、第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続していると判定してもよい。
このような構成により、より精度の高い判定を実現することができるようになる。
【0014】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、取得部によって取得された物理アドレスごとの移動履歴と、判定部による判定結果とを用いて、携帯端末ごとの移動履歴を取得する端末移動履歴取得部をさらに備えてもよい。
このような構成により、携帯端末ごとの移動履歴を知ることができるようになり、その移動履歴を用いて、例えば、混雑の程度や人流について把握することができるようになる。
【0015】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、携帯端末及び複数のセンサは、複数の空間に仕切られた建物内に存在し、取得部は、建物内のある空間に配置されたセンサによって観測された信号のうち、所定の閾値を超える電波強度の信号の観測情報を用いて、その空間における携帯端末の移動履歴を取得してもよい。
【0016】
このような構成により、建物内における空間ごとの携帯端末の移動履歴を取得することができるようになる。
【0017】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、携帯端末及び複数のセンサは、複数の空間に仕切られた建物内に存在し、観測情報には、観測された信号の電波強度も含まれており、取得部は、所定の閾値を超える電波強度の信号を観測したセンサの存在する空間を、その信号を送信した携帯端末が存在する空間とし、センサと異なる空間に存在する携帯端末から送信された信号に関するそのセンサによる観測結果に応じた観測情報をも用いて移動履歴を取得してもよい。
【0018】
このような構成により、携帯端末から送信され、仕切りを通過した電波をも用いて携帯端末の移動履歴が取得されることになる。その結果、例えば、より多くのセンサを用いた移動履歴の取得を実現でき、取得した移動履歴がより細かいものになる。または、例えば、より少ないセンサを用いた移動履歴の取得を実現することができるようになる。
【0019】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、携帯端末及び複数のセンサは、複数の空間に仕切られた建物内に存在し、観測情報には、観測された信号の電波強度も含まれており、携帯端末から送信された信号に関する電波強度と観測領域との複数の組と、その携帯端末の位置とを対応付ける対応情報が複数記憶される記憶部をさらに備え、取得部は、同じ観測時間を含む複数の観測情報にそれぞれ含まれる観測領域と電波強度との複数の組と、対応情報とを用いて、携帯端末の位置を特定してもよい。
【0020】
このような構成により、複数のセンサの観測結果を用いて携帯端末の位置を特定するため、より精度の高い位置の特定を実現できる。
【0021】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、携帯端末及び複数のセンサは、複数の階床に仕切られた建物内に存在し、複数のセンサのうち少なくとも1個のセンサは、建物に設置されたエレベータのカゴ内に配置されており、取得部は、カゴ内に配置されたセンサによる観測結果に応じた観測情報をも用いて携帯端末の移動履歴を取得してもよい。
【0022】
このような構成により、携帯端末がエレベータを介して移動する際にも、その移動に応じた移動履歴を取得することができるようになる。
【0023】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、判定部による判定結果を用いて、物理アドレスごとの移動履歴をマージすることによって、携帯端末ごとの移動履歴を取得する端末移動履歴取得部と、端末移動履歴取得部によって取得された携帯端末ごとの移動履歴に基づいて、携帯端末の移動空間を仮想的に分割した複数のエリアにおけるエリアごとの携帯端末の個数、及び隣接するエリア間の携帯端末の移動を時間ごとに特定する特定部と、特定部による特定結果を用いて、エリアごとの携帯端末の個数を時間ごとに予測する予測部と、をさらに備えてもよい。
【0024】
このような構成により、各エリアに存在する携帯端末の個数を予測することができる。その結果、複数のエリアにおける人流を予測することができるようになる。
【0025】
また、本発明の一態様による情報処理装置では、ある時間の予測結果と当該時間の特定結果とに閾値を超える乖離があるかどうかを判断する判断部をさらに備え、判断部によって、予測結果と特定結果とに閾値を超える乖離があると判断された場合に、予測部は、新たな予測を行ってもよい。
【0026】
このような構成により、予測結果が現実と乖離してきた場合に、最新の特定結果をも用いた予測を行うことによって、予測の精度を絶えず、高い状態に維持することができるようになる。
【0027】
また、本発明の一態様による情報処理システムは、上記した情報処理装置と、複数の階床に仕切られた建物内に配置された前記複数のセンサと、を備え、センサは、各階床において略同一の平面位置に配置されていてもよい。
【0028】
このような構成により、例えば、携帯端末が存在する階床をより高精度に特定することができるようになる。
【0029】
また、本発明の一態様による情報処理システムは、上記した情報処理装置と、複数の階床に仕切られた建物内に配置された前記複数のセンサと、を備え、ある階床のセンサは、平面視において、その階床に隣接する階床に配置された複数のセンサのうち、隣接する2個のセンサの間の空間に配置されてもよい。
【0030】
このような構成により、各階床に配置するセンサの個数を減らすことができ、より少ない個数のセンサを用いて、携帯端末の移動履歴を取得することができるようになる。
【0031】
また、本発明の一態様による情報処理方法は、物理アドレスが変化し得る携帯端末から送信された、物理アドレスを含む信号が複数のセンサの少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末の移動履歴を取得するステップと、第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続している場合に、第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末の物理アドレスであると判定するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様による情報処理装置等によれば、無線信号の属性を用いることなく、2個の物理アドレスが同じ携帯端末に対応しているかどうかについて判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態による情報処理装置を含む情報処理システムの模式図
図2A】同実施の形態による情報処理装置の構成を示すブロック図
図2B】同実施の形態による情報処理装置の他の構成を示すブロック図
図2C】同実施の形態による情報処理装置の他の構成を示すブロック図
図3A】同実施の形態による情報処理装置の動作を示すフローチャート
図3B】同実施の形態による情報処理装置の動作を示すフローチャート
図3C】同実施の形態による情報処理装置の動作を示すフローチャート
図4】同実施の形態における携帯端末の移動の一例を示す模式図
図5】同実施の形態における観測情報等の一例を示す図
図6A】同実施の形態における移動履歴等の一例を示す図
図6B】同実施の形態における移動履歴等の一例を示す図
図6C】同実施の形態における移動履歴等の一例を示す図
図7】同実施の形態における携帯端末の位置の特定について説明するための図
図8】同実施の形態における電波強度に応じた観測情報の取得及び携帯端末の位置の特定について説明するための図
図9】同実施の形態における建物内の携帯端末の位置の特定について説明するための図
図10】同実施の形態における建物内の携帯端末の位置の特定について説明するための図
図11】同実施の形態における建物内のセンサの配置の一例を示す透視平面図
図12】同実施の形態における複数の対応情報の一例を示す図
図13】同実施の形態におけるエレベータを介した携帯端末の移動の一例を示す図
図14】同実施の形態における携帯端末の移動空間における複数のエリアの一例を示す図
図15】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明による情報処理システム、情報処理装置、及び情報処理方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による情報処理装置は、携帯端末から送信される信号に含まれる物理アドレスごとに移動履歴を取得し、その移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動が連続しているかどうかによって、2個の物理アドレスが同じ携帯端末に対応しているかどうかを判定するものである。
【0035】
図1は、本実施の形態による情報処理装置1を含む情報処理システム100の構成を示す模式図であり、図2Aは、情報処理装置1の構成を示すブロック図である。情報処理システム100は、情報処理装置1と、携帯端末4から送信される信号を観測する複数のセンサ3-1,3-2とを備える。なお、センサ3-1,3-2を特に区別しない場合には、単にセンサ3と呼ぶこともある。他の構成要素についても同様である。
【0036】
携帯端末4は、例えば、スマートフォンやタブレット端末、スマートウォッチ、PDA(Personal Digital Assistant)などであってもよい。図1で示されるように、携帯端末4は、アクセスポイント2に対して無線信号を送信する。本実施の形態では、アクセスポイント2が無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントであり、携帯端末4が無線LANの端末である場合について主に説明する。アクセスポイント2は、例えば、Wi-Fiルータなどであってもよい。なお、説明の便宜上、図1では1個の携帯端末4のみを示しているが、通常、携帯端末4は複数存在している。また、携帯端末4は、自らが移動するものではなく、携帯端末4を所持しているユーザが移動することに付随して移動するものであるが、説明の便宜上、そのような移動を携帯端末4の移動と呼ぶこともある。
【0037】
携帯端末4が送信する無線信号には、物理アドレスが含まれているものとする。物理アドレスは、例えば、MACアドレスであってもよく、携帯端末4を識別可能な他の情報であってもよい。本実施の形態では、物理アドレスがIEEE802.11規格の無線信号に含まれるMACアドレスである場合について主に説明する。また、本実施の形態では、物理アドレスが変化し得る携帯端末4が物理アドレスを含む信号を送信する場合について主に説明する。ただし、携帯端末4に、物理アドレスが変化しない端末が含まれたとしても、その端末から送信される物理アドレスは、他の物理アドレスと紐付けられないだけであるため、特に問題になることはない。
【0038】
なお、物理アドレスが変化し得るかどうかは、受信した信号によって判断することも可能である。例えば、G/Lビット「1」、及びI/Gビット「0」を含むMACアドレスを有する信号を送信する端末は、ランダムなMACアドレスを送信する端末であることになる。したがって、携帯端末4が送信する無線信号に含まれるMACアドレスが変化し得る場合には、G/Lビットは「1」であり、かつ、I/Gビットは「0」となっている。そのため、そのようなMACアドレスを含む無線信号のみが、本実施の形態による情報処理装置1による処理対象となってもよい。
【0039】
また、プライバシー保護の観点から、無線信号に含まれる物理アドレスについて、一方向ハッシュ関数等を用いることによって匿名化を行った上で処理が行われてもよい。その場合でも、物理アドレスそのものと、物理アドレスが一方向ハッシュ関数等によって匿名化された後の情報とは一対一に対応しており、携帯端末4を識別する性質としては実質的に同じであるため、そのような匿名化後の情報も物理アドレスと呼ぶことにする。
【0040】
携帯端末4から送信される、物理アドレスを含む信号は、例えば、プローブリクエストであってもよく、それ以外の信号であってもよい。本実施の形態では、物理アドレスを含む信号がプローブリクエストである場合について主に説明する。物理アドレスを含む信号は、携帯端末4から一定または不定の間隔で繰り返して送信されることが好適である。
【0041】
センサ3は、携帯端末4から送信された、物理アドレスを含む無線信号を観測し、無線信号に含まれる物理アドレスを取得するものである。例えば、センサ3-1は、領域A1内に存在する携帯端末4から送信された信号を観測できるものとする。この領域A1を、センサ3-1の覆域領域と呼ぶ。なお、図1では、センサ3の覆域領域を破線の円で示しており、アクセスポイント2の覆域領域を一点鎖線の円で示している。このセンサ3は、パケットセンサとして公知であり、その詳細な説明を省略する。パケットセンサについては、例えば、上記非特許文献1を参照されたい。本実施の形態では、センサ3が固定されている場合、すなわち、センサ3の位置が時間の経過に応じて変化しない場合について主に説明する。
【0042】
センサ3は、携帯端末4から送信された、物理アドレスを含む信号を観測した場合に、信号に含まれる物理アドレスと、観測領域及び観測時間を含む観測情報とを情報処理装置1に、有線または無線の通信回線を介して送信してもよい。通信回線は、例えば、インターネットやイントラネット、公衆電話回線網などであってもよい。また、それらの情報は、複数のセンサ3間のマルチホップの無線通信によって情報処理装置1に送信されてもよい。
【0043】
観測領域は、携帯端末4から送信された信号の観測された領域である。観測領域は、その領域を示す情報であればどのようなものであってもよく、例えば、センサ3の覆域領域を示す情報(例えば、複数の点などによって、覆域領域の周囲の境界を示す情報)であってもよく、覆域領域の半径があらかじめ決まっている場合には、センサ3の位置であってもよく、覆域領域の半径及び各センサ3の位置があらかじめ決まっている場合には、センサ3の識別子であってもよい。なお、観測領域がセンサ3の位置や識別子である場合には、情報処理装置1において、覆域領域の半径、またはセンサ3ごとの位置及び覆域領域の半径が記憶されていてもよい。また、観測領域は、例えば、広がりを有する領域であってもよく、または、ピンポイントの点であってもよい。後者の場合には、例えば、領域を代表する点が観測領域として用いられてもよい。その点は、例えば、センサ3の位置であってもよく、領域の重心であってもよい。
【0044】
後述するように、観測領域は、覆域領域内における、観測された信号の電波強度に応じた領域であってもよい。例えば、観測された信号の電波強度が大きい場合には、観測領域はセンサ3に近い領域となり、観測された信号の電波強度が小さい場合には、観測領域はセンサ3から遠い環状の領域となってもよい。電波強度は、例えば、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)であってもよい。この場合には、各センサ3において、電波強度を用いて観測領域が取得されてもよい。なお、例えば、センサ3の識別子などの覆域領域を示す情報と、電波強度を示す情報とがあれば、電波強度に応じた観測領域を特定することができる。したがって、観測領域の特定に信号の電波強度も用いる場合には、観測領域に、例えば、覆域領域を示す情報と、信号の電波強度とが含まれていてもよい。
【0045】
観測時間は、例えば、信号の観測時点を示す時刻であってもよく、信号の観測時点を示す年月日及び時刻であってもよい。観測時間は、例えば、時計部やカレンダー部から取得されてもよい。
【0046】
センサ3から情報処理装置1への情報の送信は、リアルタイムで行われてもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、センサ3は、例えば、信号を観測するごとに、物理アドレス等の情報を情報処理装置1に送信してもよい。一方、後者の場合には、センサ3は、例えば、物理アドレス等の情報をセンサ3内に蓄積しておき、その蓄積した情報をまとめて定期的にまたは不定期に情報処理装置1に送信してもよい。情報処理装置1への情報の送信がリアルタイムで行われる場合には、例えば、センサ3から情報処理装置1に送信される情報に、観測時間が含まれていなくてもよい。情報処理装置1が物理アドレス等を受け取った時間を、観測時間としてもよいからである。
【0047】
複数のセンサ3は、携帯端末4から送信される信号に含まれる物理アドレスが同じである期間内に、その信号が2以上のセンサ3で観測される程度の密度で配置されていることが好適である。例えば、一つのアクセスポイント2の覆域領域に存在している場合には、物理アドレスを変更しない携帯端末4が知られている。そのような携帯端末4からの信号を観測するセンサ3は、アクセスポイント2の覆域領域に複数配置されることが好適である。そのようなセンサ3の配置によって、同じ物理アドレスを含む信号を2以上のセンサ3で受信することができ得るからである。また、例えば、一定の時間ごとに物理アドレスを変更する携帯端末4も知られている。そのような携帯端末4からの信号を観測するセンサ3は、物理アドレスの変更間隔に応じた携帯端末4の移動範囲に複数配置されることが好適である。
【0048】
図1で示されるように、携帯端末4が領域A1に存在している場合には、その携帯端末4から送信される信号は、センサ3-1で観測される。そして、例えば、その信号に含まれる物理アドレスや、領域A1を示す観測領域、その信号の観測時間が情報処理装置1に送信される。また、携帯端末4が領域A2に移動した場合には、その携帯端末4から送信される信号は、センサ3-2で観測される。そして、例えば、その信号に含まれる物理アドレスや領域A2を示す観測領域、その信号の観測時間が情報処理装置1に送信される。このようにして、情報処理装置1は、携帯端末4について、物理アドレスごとの移動状況を示す移動履歴を取得することができ、その移動履歴を用いて、後述するように、2個の物理アドレスの紐付けを行うことができるようになる。
【0049】
図2Aで示されるように、本実施の形態による情報処理装置1は、受付部11と、記憶部12と、取得部13と、判定部14と、出力部15とを備える。本実施の形態では、情報処理装置1が、複数のセンサ3から情報を受信して、2個の物理アドレスが同じ携帯端末4に対応しているかどうかについての判定を行うサーバとして機能する場合について主に説明する。この情報処理装置1は、例えば、地域ごとに設けられ、地域ごとに処理が行われてもよい。通常、異なる地域間での物理アドレスの紐付けを行う必要はないと考えられるからである。
【0050】
受付部11は、センサ3から、携帯端末4から送信された信号に含まれる物理アドレスと、その信号に関する観測領域及び観測時間を含む観測情報とを受信する。後述するように、センサ3と情報処理装置1が一体となっている場合には、受付部11は、一部の観測情報を、一体となっているセンサ3から直接受け付け、他の観測情報を、他のセンサ3から受信してもよい。受付部11は、受け付けた観測情報を、受け付けた物理アドレスに対応付けて記憶部12に蓄積する。なお、上記のように、センサ3から観測時間を受け付けない場合には、受付部11は、観測領域を受け付けた時間である観測時間を図示しない時計部やカレンダー部から受け取り、その観測時間と、センサ3から受け付けた観測領域とを含む観測情報を記憶部12に蓄積してもよい。
【0051】
受付部11は、例えば、有線または無線の通信回線を介して送信された情報を受信してもよく、センサ3から出力された情報を受け付けてもよい。なお、受付部11は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、通信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受付部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、または所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0052】
記憶部12では、受付部11によって蓄積された物理アドレスと観測情報との複数の組が記憶される。また、記憶部12では、例えば、後述する物理アドレスごとの移動履歴が記憶されてもよく、判定部14による判定結果の情報が記憶されてもよく、その判定結果を用いて取得された、携帯端末4ごとの移動履歴が記憶されてもよい。
【0053】
記憶部12は、不揮発性の記録媒体によって実現されることが好適であるが、揮発性の記録媒体によって実現されてもよい。記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなどであってもよい。
【0054】
取得部13は、携帯端末4から送信された信号が複数のセンサ3の少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末4の移動履歴を取得する。ある物理アドレスに対応する移動履歴は、その物理アドレスで識別される携帯端末4の経時的な位置の変化を示す情報である。その位置は、通常、ピンポイントの位置ではなく、領域によって示されることになるが、領域の代表点を携帯端末4の位置としてもよい。領域の代表点は、例えば、領域の中心の点や、領域の重心等であってもよい。なお、例えば、観測領域がピンポイントの点で示される場合には、その位置もピンポイントの位置であってもよい。移動履歴は、例えば、物理アドレスごとの観測領域及び観測時間の複数の組を有するものであってもよい。また、移動履歴に含まれる携帯端末4の位置は、後述するように、複数の観測領域を用いて生成されてもよい。取得された移動履歴は記憶部12に蓄積されてもよい。
【0055】
判定部14は、第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末4の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末4の経時的な移動とが連続している場合に、第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末4の物理アドレスであると判定する。この場合には、第1及び第2の物理アドレスが、同じ携帯端末4に対応するとして紐付けられることになる。一方、判定部14は、第1及び第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末4の経時的な移動が連続していない場合には、第1及び第2の物理アドレスが異なる携帯端末4の物理アドレスであると判定してもよい。なお、携帯端末4の経時的な移動は、例えば、複数の観測情報によって示されるように、携帯端末4の時間的な位置の変化を示すものであってもよい。すなわち、携帯端末4の経時的な移動は、時間をパラメータとして携帯端末4の位置を示すものであってもよい。
【0056】
このような2個の物理アドレスに関する判定を、複数の物理アドレスの2個の組み合わせについて繰り返して実行することによって、同じ携帯端末4に対応する複数の物理アドレスを紐付けることができる。なお、第1の物理アドレスと第2の物理アドレスとを紐付けるとは、同じ携帯端末4に対応する物理アドレスであるとして両者を関連付けることである。その関連付けは、例えば、複数の物理アドレスを含む情報を生成することによって行われてもよく、複数の物理アドレスに同じIDなどの情報を付与することによって行われてもよい。
【0057】
判定部14は、2個の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される経時的な移動が時間的に、かつ、空間的(位置的)に連続している場合に、両者が連続していると判断してもよい。例えば、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端の時間が、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端の時間よりも以前であり、両者の時間間隔があらかじめ設定された時間の閾値より小さい場合に、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端が、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端に時間的に連続していると判断されてもよい。時間の閾値は、通常、物理アドレスを含む信号の送信間隔程度の小さい時間間隔に設定されることが好適である。また、例えば、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端の位置と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端の位置との距離があらかじめ設定された距離の閾値より小さい場合に、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端が、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端に空間的に連続していると判断されてもよい。そして、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端が、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端に時間的に、かつ、空間的に連続していると判断した場合に、判定部14は、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端とが連続していると判断してもよい。なお、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端とが連続していないと判断された場合には、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の始端と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の終端とが連続しているかどうかについても判断されてもよい。
【0058】
判定部14は、さらに、移動方向及び移動速度の少なくとも一方が連続している場合に、第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末4の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末4の経時的な移動とが連続していると判定してもよい。この場合には、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端が、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端に時間的に、かつ、空間的に連続していると判断すると共に、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端側の移動方向及び移動速度の少なくとも一方と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端側の移動方向及び移動速度の少なくとも一方とが連続していると判断したときに、判定部14は、第1の物理アドレスに対応する移動履歴の終端と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴の始端とが連続していると判断してもよい。
【0059】
なお、移動方向が連続しているとは、移動方向が大きく変化しないことである。また、移動速度が連続しているとは、移動速度が大きく変化しないことである。したがって、例えば、移動方向の変化の程度が方向に関する閾値より小さい場合に、移動方向が連続していると判断されてもよく、移動速度の変化の程度が速度に関する閾値より小さい場合に、移動速度が連続していると判断されてもよい。通常、物理アドレスが変化する位置の前後において、移動方向や移動速度は大きくは変化しないと考えられる。携帯端末4を保持するユーザは、通常、道路に沿って移動することが多く、道路の折れ曲がり等がなければ、移動方向の変化は小さくなると考えられる。また、歩行速度などの移動速度もユーザごとに大体一定になることが多いと考えられる。したがって、このような移動方向や移動速度の連続性を見ることによって、より厳密に移動履歴に応じた経時的な移動の連続性を判断することができるようになる。
【0060】
移動方向や移動速度を取得する際に、判定部14は、例えば、移動履歴の端部に近い情報を用いて移動方向等の取得を行ってもよい。例えば、ある移動履歴の始端の移動方向や移動速度を取得する場合には、判定部14は、その移動履歴の始端側の所定個数の位置(例えば、観測情報)を用いて、移動方向や移動速度を取得してもよい。より具体的には、判定部14は、例えば、始端側の1個目と2個目の位置を用いて、1個目の位置から2個目の位置までの方向及び速度を、移動方向及び移動速度として用いてもよい。なお、移動履歴に含まれる位置が、広がりを有する領域である場合には、その領域の代表点(例えば、重心など)を用いて移動方向や移動速度を取得してもよい。
【0061】
判定部14は、移動方向と移動速度について、一方のみの判断を行ってもよく、または、両方の判断を行ってもよい。また、両方の判断を行う場合に、判定部14は、両方が連続しているときにのみ、両移動履歴に応じた経時的な移動が連続していると判定してもよく、または、どちらか一方が連続しているときにも、両移動履歴に応じた経時的な移動が連続していると判定してもよい。
【0062】
判定部14による判定結果は、上記のように、同じ携帯端末4に対応している2以上の物理アドレスを紐付ける情報であってもよい。その情報は、紐付け対象の2以上の物理アドレスの組であってもよい。本実施の形態では、判定結果が、そのような紐付けられた物理アドレスの組である場合について主に説明する。なお、判定結果において、物理アドレスの変化の順序が示されてもよい。例えば、判定結果に、物理アドレスM101、及び物理アドレスM102が、その順番で含まれる場合に、物理アドレスが、物理アドレスM101から物理アドレスM102に変化したことが示されてもよい。
【0063】
出力部15は、判定結果を出力する。ここで、この出力は、例えば、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。この出力が記録媒体への蓄積である場合には、出力部15は、例えば、判定結果を記憶部12に蓄積してもよく、他の記録媒体に蓄積してもよい。なお、出力部15は、出力を行うデバイス(例えば、通信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部15は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0064】
なお、情報処理装置1による移動履歴の取得や判定などの処理は、リアルタイム処理であってもよく、または、バッチ処理であってもよい。前者の場合には、携帯端末4の移動に応じてリアルタイムで各処理が行われることになり、後者の場合には、1日単位や1週間単位などの時間区切りごとに各処理が行われることになる。情報処理装置1においてリアルタイム処理が行われる場合には、センサ3からの情報の送信もリアルタイムであることが好適である。一方、情報処理装置1においてバッチ処理が行われる場合には、センサ3からの情報の送信は、リアルタイムであってもよく、所定の期間の情報をまとめた送信であってもよい。
【0065】
次に、情報処理装置1の動作について図3Aのフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受付部11は、観測情報と物理アドレスとを受け付けたかどうか判断する。そして、観測情報等を受け付けた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS103に進む。
【0066】
(ステップS102)受付部11は、受け付けた観測情報と物理アドレスとを対応付けて記憶部12に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。
【0067】
(ステップS103)判定部14は、判定処理を行うかどうか判断する。そして、判定処理を行う場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、判定部14は、例えば、判定処理を行うと定期的に判断してもよい。情報処理装置1における処理がリアルタイム処理である場合には、判定処理の行われる間隔は、例えば、10分ごとや30分ごとなどのように短くてもよい。情報処理装置1における処理がバッチ処理である場合には、判定処理の行われる間隔は、例えば、1日ごとや1週間ごと、1か月ごとなどのように長くてもよい。
【0068】
(ステップS104)取得部13は、観測情報を用いて物理アドレスごとに移動履歴を取得する。この処理の詳細については、図3Bのフローチャートを用いて後述する。
【0069】
(ステップS105)判定部14は、移動履歴を用いて判定の処理を行う。この処理の詳細については、図3Cのフローチャートを用いて後述する。
【0070】
(ステップS106)出力部15は、判定結果を出力する。そして、ステップS101に戻る。
【0071】
なお、図3Aのフローチャートにおいて、移動履歴の取得と判定とを別のタイミングで行ってもよい。例えば、移動履歴の取得は、判定よりも高い頻度で行われてもよい。また、図3Aのフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。後述する図3B図3Cのフローチャートについても同様である。また、図3Aのフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0072】
図3Bは、図3Aのフローチャートにおける移動履歴の取得処理(ステップS104)の詳細を示すフローチャートである。
(ステップS201)取得部13は、カウンタiを1に設定する。
【0073】
(ステップS202)取得部13は、i番目の物理アドレスに対応する観測情報が記憶部12で記憶されているかどうか判断する。そして、i番目の物理アドレスに対応する観測情報が記憶部12で記憶されている場合には、ステップS203に進み、そうでない場合には、図3Aのフローチャートに戻る。
【0074】
(ステップS203)取得部13は、i番目の物理アドレスに対応する観測情報を用いて移動履歴を取得する。例えば、取得部13は、i番目の物理アドレスに対応する観測情報を取得し、その取得した観測情報を観測時間の昇順となるように並べることによって移動履歴を取得してもよい。
【0075】
(ステップS204)取得部13は、ステップS203で取得した移動履歴を、i番目の物理アドレスに対応付けて記憶部12に蓄積する。
【0076】
(ステップS205)取得部13は、カウンタiを1だけインクリメントする。そして、ステップS202に戻る。
【0077】
なお、情報処理装置1における処理がリアルタイム処理である場合には、携帯端末4の一連の移動の一部についてのみ移動履歴が取得されることもあり得る。そのような場合には、取得部13は、その後の移動履歴の取得において、それまでの移動履歴の取得において用いなかった観測情報を用いて移動履歴を取得すると共に、その取得した移動履歴を、既存の移動履歴に追加してもよい。
【0078】
図3Cは、図3Aのフローチャートにおける判定処理(ステップS105)の詳細を示すフローチャートである。
(ステップS301)判定部14は、カウンタiを1に設定する。
【0079】
(ステップS302)判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴が記憶部12で記憶されているかどうか判断する。そして、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴が記憶部12で記憶されている場合には、ステップS303に進み、そうでない場合には、図3Aのフローチャートに戻る。
【0080】
(ステップS303)判定部14は、カウンタjをカウンタiの値に1を足した値に設定する。
【0081】
(ステップS304)判定部14は、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴が記憶部12で記憶されているかどうか判断する。そして、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴が記憶部12で記憶されている場合には、ステップS305に進み、そうでない場合には、ステップS310に進む。
【0082】
(ステップS305)判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴とが時間的に連続しているかどうか判断する。そして、両者が時間的に連続している場合には、ステップS306に進み、そうでない場合には、ステップS309に進む。
【0083】
この場合に、判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴の終端と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴の始端とが時間的に連続しているかどうか、及び、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴の始端と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴の終端とが時間的に連続しているかどうかについて判断してもよい。そして、一方が時間的に連続している場合に、判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴とが時間的に連続していると判断してもよい。
【0084】
(ステップS306)判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴とが空間的に連続しているかどうか判断する。そして、両者が空間的に連続している場合には、ステップS307に進み、そうでない場合には、ステップS309に進む。
【0085】
この場合に、例えば、ステップS305において、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴の終端と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴の始端とが時間的に連続していると判断したときには、判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴の終端と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴の始端とが空間的に連続しているかどうかについてのみ判断してもよい。また、例えば、ステップS305において、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴の始端と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴の終端とが時間的に連続していると判断したときには、判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴の始端と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴の終端とが空間的に連続しているかどうかについてのみ判断してもよい。
【0086】
(ステップS307)判定部14は、i番目の物理アドレスに対応する移動履歴と、j番目の物理アドレスに対応する移動履歴とについて、移動方向及び移動速度の少なくとも一方が連続しているかどうか判断する。そして、移動方向及び移動速度の少なくとも一方が連続している場合には、ステップS308に進み、そうでない場合には、ステップS309に進む。
【0087】
この場合にも、ステップS306と同様に、ステップS305において連続していると判断された2個の移動履歴の終端と始端との組み合わせについてのみ、判断が行われてもよい。
【0088】
(ステップS308)判定部14は、i番目の物理アドレス、及びj番目の物理アドレスが同じ携帯端末4の物理アドレスであると判定する。そして、判定部14は、i番目の物理アドレスとj番目の物理アドレスとを組とする判定結果を示す情報を生成してもよい。すなわち、i番目の物理アドレスとj番目の物理アドレスとが紐付けられてもよい。なお、それまでの判定結果において、i番目の物理アドレス、及びj番目の物理アドレスの少なくとも一方が他の物理アドレスと紐付けられている場合には、新たな判定結果と、それまでの判定結果とがマージされてもよい。
【0089】
(ステップS309)判定部14は、カウンタjを1だけインクリメントする。そして、ステップS304に戻る。
【0090】
(ステップS310)判定部14は、カウンタiを1だけインクリメントする。そして、ステップS302に戻る。
【0091】
なお、情報処理装置1における処理がリアルタイム処理である場合には、記憶されている移動履歴が更新されることがあり得る。そのような場合には、例えば、各移動履歴の始端及び終端のうち、他の移動履歴と連続していると判断されていない側について、図3Cの処理が行われ、他の移動履歴と連続していると判断された側については、図3Cの処理が行われなくてもよい。
【0092】
次に、本実施の形態による情報処理装置1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、情報処理装置1においてバッチ処理が行われるものとする。そのため、1日分の観測情報等が情報処理装置1で記憶され、その情報を用いて、深夜の所定の時間(この具体例では、午前2時とする)に1日分の観測情報等に関する処理が行われるものとする。
【0093】
また、この具体例では、図4で示されるように複数のセンサ3、及び複数のアクセスポイント2が配置されているものとする。また、あるユーザが携帯端末4を保持している状態で、図中の矢印で示されるように移動したとする。ここで、図4では、図中の上が北であるとする。そのため、携帯端末4を保持しているユーザは、西向きに移動していることになる。また、その携帯端末4が、アクセスポイント2-1の覆域領域からアクセスポイント2-2の覆域領域に移動する際に、物理アドレスがM101からM103に変化したとする。なお、図4では、1個の携帯端末4のみを示しているが、他のユーザが保持している他の携帯端末4も移動しているものとする。また、図4においても、各センサ3の覆域領域は破線の円で示しており、各アクセスポイント2の覆域領域は一点鎖線の円で示している。また、この具体例では、ステップS307において、移動方向のみの判断が行われるものとする。
【0094】
携帯端末4からプローブリクエストが送信されると、各センサ3は、そのプローブリクエストを受信して、物理アドレスであるMACアドレスをプローブリクエストから読み出すと共に、観測時間を時計部やカレンダー部から取得する。また、センサ3で保持されている、センサ3の位置を示す観測領域を読み出し、読み出した物理アドレスと、観測時間及び観測領域を含む観測情報とを情報処理装置1に送信する。
【0095】
情報処理装置1の受付部11は、センサ3から物理アドレス及び観測情報を受信すると、それらを対応付けて記憶部12に蓄積する(ステップS101,S102)。このようなセンサ3からの観測情報等の送信と、情報処理装置1における観測情報等の受信等が繰り返されることにより、記憶部12では、図5で示されるように、物理アドレスと、観測情報との組が蓄積されていく。なお、図5において、観測情報に含まれる観測時間T1等は、数値が大きくなるほど後の時間になるものとする。また、観測情報に含まれる観測領域は、その観測領域を送信したセンサ3の覆域領域を示している。
【0096】
その後、午前2時になると、判定部14は、判定の処理を行うと判断し、取得部13に移動履歴を取得するように指示する(ステップS103)。その指示を受け取ると、取得部13は、記憶部12で記憶されている物理アドレスと観測情報とを用いて、移動履歴を取得する(ステップS104)。具体的には、取得部13は、図5の情報を参照し、1番目の物理アドレスM101に対応付けられている観測情報を取得し、その観測情報を観測時間の昇順となるように並べることによって移動履歴を取得する(ステップS201~S203)。その移動履歴は、図6Aで示されるように、観測時間と観測領域とを時系列に沿って並べたものである。図6Aの移動履歴を取得すると、取得部13は、その移動履歴を物理アドレスM101に対応付けて記憶部12に蓄積する(ステップS204)。また、同様にして、取得部13は、図6B図6Cで示されるように、物理アドレスM102,M103についても移動履歴を取得し、それらを物理アドレスに対応付けて記憶部12に蓄積する(ステップS202~S205)。
【0097】
移動履歴の取得が終了すると、判定部14は、判定の処理を行う(ステップS105)。具体的には、判定部14は、1番目の物理アドレスM101の移動履歴(図6A)と、2番目の物理アドレスM102の移動履歴(図6B)とを参照し、両移動履歴の始端と終端とが時間的に連続しているかどうか判断する。この場合には、両移動履歴に時間T3~T6などのように同じ時間帯が含まれているため、判定部14は、両移動履歴の始端と終端とが時間的に連続していないと判断することになる(ステップS301~S305)。
【0098】
次に、判定部14は、1番目の物理アドレスM101の移動履歴(図6A)と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴(図6C)とを参照し、両移動履歴の始端と終端とが時間的に連続しているかどうか判断する。この場合には、1番目の物理アドレスM101の移動履歴における終端の時間T7と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴における始端の時間T9との差が閾値より小さかったとする。すると、判定部14は、両移動履歴が時間的に連続していると判断する(ステップS309,S304,S305)。
【0099】
その後、判定部14は、1番目の物理アドレスM101の移動履歴の終端と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴の始端が空間的に連続しているかどうか判断する。この場合には、1番目の物理アドレスM101の移動履歴における終端の領域A5と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴における始端の領域A5とが一致しているため、判定部14は、両移動履歴が空間的に連続していると判断する(ステップS306)。
【0100】
その後、判定部14は、1番目の物理アドレスM101の移動履歴の終端と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴の始端との移動方向が連続しているかどうか判断する。この場合には、1番目の物理アドレスM101の移動履歴における終端側では、領域A2から領域A5への西向きの移動が行われており、3番目の物理アドレスM103の移動履歴における始端側でも、領域A5から領域A6への西向きの移動が行われている。したがって、判定部14は、両移動履歴の移動方向が連続していると判断する(ステップS307)。
【0101】
1番目の物理アドレスM101の移動履歴の終端と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴の始端とは、時間的かつ空間的に連続しており、また、移動方向も連続しているため、判定部14は、1番目の物理アドレスM101の移動履歴の終端と、3番目の物理アドレスM103の移動履歴の始端とが連続していると判断し、両物理アドレスを紐付ける情報(M101,M103)を生成する(ステップS308)。また、判定部14は、他の移動履歴についても同様に判断処理等を行う(ステップS302~S310)。
【0102】
判定処理が終了すると、出力部15は、判定結果を示す情報を判定部14から受け取って出力する(ステップS106)。この出力結果を用いることによって、携帯端末4のより正確な移動に関する情報を取得することができるようになる。なお、この具体例では、バッチ処理が行われる場合について説明したが、リアルタイム処理も実質的に同様の処理であり、その詳細な説明を省略する。
【0103】
以上のように、本実施の形態による情報処理装置1によれば、携帯端末4の物理アドレスが変化する場合であっても、物理アドレスに対応する経時的な移動の連続性について判断することにより、複数の物理アドレスが同じ携帯端末4に対応しているかどうかについて判定することができる。また、その判定を無線信号の属性を用いることなく行うため、同じ携帯端末4に対応する複数の物理アドレスをそれぞれ含む無線信号が、それぞれ異なる属性を有する場合であっても、適切に判定を行うことができるようになる。また、移動方向や移動速度をも用いて判定を行う場合には、より正確な判定を行うことができるようになる。
【0104】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
[複数の観測領域を用いた携帯端末の位置の特定]
携帯端末4から送信された信号が複数のセンサ3で受信された場合に、取得部13は、複数のセンサ3に対応する複数の観測領域の重複する領域を携帯端末4の位置としてもよい。例えば、図7で示されるように、携帯端末4から送信されたある信号が、センサ3-1と、センサ3-2との両方で観測されたとする。この場合には、センサ3-1から、携帯端末4の物理アドレスと、観測時間及び観測領域A1を含む観測情報とが送信され、センサ3-2から、携帯端末4の物理アドレスと、観測時間及び観測領域A2を含む観測情報とが送信されることになる。なお、物理アドレス及び観測時間を用いることによって、取得部13は、複数のセンサ3-1,3-2によって、同じ信号が受信されたかどうかについて判断することができる。例えば、取得部13は、複数のセンサ3-1,3-2によって受信された信号の物理アドレスが同じであり、観測時間の差が閾値より小さい場合に、複数のセンサ3-1,3-2によって、同じ信号が受信されたと判断してもよい。そして、取得部13は、同じ信号が複数のセンサ3で受信されたと判断した場合に、複数のセンサ3に対応する複数の観測領域A1,A2の重複する領域A101を携帯端末4の位置としてもよい。このようにすることで、携帯端末4の位置をより詳細に特定することができ、移動履歴における携帯端末4の位置がより正確なものになり、判定の精度を向上させることができる。なお、ここでは、センサ3の覆域領域を観測領域としている。また、このように一つの信号が複数のセンサ3で受信されることによって、より細かい位置を特定する場合には、各センサ3の覆域領域が重なるように複数のセンサ3が配置されることが好適である。なお、例えば、観測領域がピンポイントの点を示す情報である場合には、複数のセンサ3に対応する複数の観測領域の重複する領域は、複数のセンサ3に対応する複数の観測領域(この観測領域はピンポイントの点である)の重心であってもよい。
【0105】
[電波強度に応じた観測領域]
上記したように、観測領域は、携帯端末4から送信された信号を観測したセンサの覆域領域内における信号の電波強度に応じた領域であってもよい。例えば、図8で示されるように、センサ3-1の覆域領域(観測領域)A1が、電波強度の大きい領域A1-1、電波強度が中程度の領域A1-2、電波強度が小さい領域A1-3に分かれているとする。センサ3-2の覆域領域A2についても同様に、領域A2-1~A2-3に分かれているとする。この場合に、携帯端末4から送信されたある信号が、センサ3-1と、センサ3-2との両方で観測され、各センサ3で取得された信号の電波強度と、あらかじめ設定された閾値とが比較されることにより、センサ3-1で受信された信号の電波強度は中程度であり、センサ3-2で受信された信号の電波強度は小さいと判断されたとする。すると、センサ3-1では、観測領域A1-2が取得され、センサ3-2では、観測領域A2-3が取得されることになる。各センサ3から、物理アドレスと観測情報とが情報処理装置1に送信されると、取得部13は、両観測領域A1-2、A2-3の重複する領域A102を携帯端末4の位置とすることができる。なお、図8では、複数のセンサ3の覆域領域が重なる場合について示しているが、覆域領域が重ならない場合であっても、観測された信号の電波強度に応じた観測領域が用いられることによって、携帯端末4のより細かい位置の特定が可能となり、判定の精度を向上させることができるようになる。
【0106】
[携帯端末ごとの移動履歴の取得]
本実施の形態では、物理アドレスを紐付ける判定処理について説明したが、その判定結果を用いて、物理アドレスごとの移動履歴をマージすることによって、携帯端末4ごとの移動履歴が取得されてもよい。この場合には、情報処理装置1は、図2Bで示されるように、端末移動履歴取得部16をさらに備えてもよい。端末移動履歴取得部16は、取得部13によって取得された物理アドレスごとの移動履歴と、判定部14による判定結果とを用いて、携帯端末4ごとの移動履歴を取得する。より具体的には、端末移動履歴取得部16は、判定結果である物理アドレスを紐付ける情報を用いて、紐付け対象の物理アドレスにそれぞれ対応する移動履歴をマージすることによって、携帯端末4に対応する移動履歴を取得してもよい。上記具体例の場合には、図6A図6Cで示される移動履歴は紐付け対象の物理アドレスM101,M103にそれぞれ対応しているため、端末移動履歴取得部16は、両移動履歴を時間の順となるように併合することによって、物理アドレスM101,M103で識別される携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。その取得された携帯端末4の移動履歴は、例えば、記憶部12に蓄積されてもよく、出力部15によって出力されてもよい。
【0107】
[複数の空間を有する建物内における移動履歴の取得(仕切りを通過した電波の観測情報を用いない場合)]
本実施の形態では、複数のセンサ3や携帯端末4が屋外に存在する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。複数のセンサ3や携帯端末4は、建物内に存在してもよい。この場合には、例えば、複数のセンサ3及び携帯端末4が、内部が複数の空間に仕切られた建物内に存在してもよい。この建物は、例えば、水平方向に延びる仕切り(例えば、天井や床など)によって、複数の空間(例えば、各階床)に仕切られていてもよく、垂直方向に延びる仕切り(例えば、仕切り壁など)によって複数の空間(例えば、部屋や廊下など)に区切られていてもよく、その両方であってもよい。この仕切りは、物理的なものであり、ある空間から隣接する空間に電波が伝搬する際には、通常、仕切りを通過することによって、電波が減衰するものとする。以下の説明では、建物内が水平方向の仕切りによって複数の階床に分割されている場合について主に説明する。なお、建物は、特に限定されないが、例えば、店舗の入っている商業ビル、オフィスビル、工場などであってもよく、地下街、大型船等の構築物などであってもよい。
【0108】
図9は、仕切り6によって複数の空間、すなわち1階と2階に仕切られた建物内を示す模式図である。また、各階にセンサ3-1~3-4が配置されているものとする。なお、図9では、アクセスポイントの表示を省略している。図10図13においても同様である。この場合には、1階に存在する携帯端末4からの信号は、1階のセンサ3-1で観測されると共に、2階のセンサ3-3でも観測される。そのため、センサ3-1,3-3で観測された両方の信号を用いて携帯端末4の移動履歴が取得された場合には、携帯端末4が同時に2つの階床に存在することになり、不正確な移動履歴が取得されることになる。
【0109】
なお、携帯端末4から送信された電波は、通常、仕切り6を通過することによって大きく減衰する。したがって、取得部13は、建物内のある空間に配置されたセンサ3によって観測された信号のうち、所定の閾値を超える電波強度の信号の観測情報を用いて、その空間における携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。この場合には、その所定の閾値未満の電波強度の信号の観測情報は、その空間における携帯端末4の移動履歴の取得に用いられなくてもよい。なお、その閾値に等しい電波強度の信号の観測情報は、例えば、移動履歴の取得に用いられてもよく、または、用いられなくてもよい。その所定の閾値は、例えば、仕切り6を通過した電波の電波強度が、その閾値未満となるように設定されてもよい。一方、ある空間において、携帯端末4がセンサ3の覆域領域内に存在する場合には、その携帯端末4からの信号のセンサ3による観測結果に応じた電波強度は、閾値を超えていることが好適である。この場合には、例えば、図9において、携帯端末4から送信された信号について、携帯端末4とは異なる空間(すなわち、2階)に配置されたセンサ3-3での観測結果に応じた観測情報は、移動履歴の取得に用いられないことになり、携帯端末4と同じ空間(すなわち、1階)に配置されたセンサ3-1での観測結果に応じた観測情報を用いて、移動履歴が取得されることになる。なお、図9では、携帯端末4から送信された電波の強度を、矢印の太さで示している。
【0110】
この場合には、例えば、各センサ3において、閾値未満の電波強度の信号を観測したときには、その観測結果に応じた観測情報を情報処理装置1に送信しなくてもよい。また、例えば、各センサ3は、観測した信号の電波強度に関係なく、その信号の電波強度を含む観測情報を情報処理装置1に送信し、取得部13は、閾値を超える電波強度を含む観測情報のみを用いて、携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。このようにすることで、取得部13は、建物内の各空間における移動履歴を、より正確に取得することができるようになる。建物が複数の階床に分割されている場合には、携帯端末4の位置や領域は、例えば、階数を含む情報であってもよい。例えば、携帯端末4の位置は、階数と、その階数における平面方向の位置とを含む情報であってもよい。この場合には、例えば、センサ3の観測結果に応じた観測領域に、そのセンサ3の存在する階数が含まれていてもよく、情報処理装置1等において、センサ3の識別子と、そのセンサ3の存在する階数とが対応付けられて記憶されていてもよい。
【0111】
このように、仕切りを通過した電波の観測情報を用いない場合には、各センサ3は、そのセンサ3の配置されている空間に存在する携帯端末4から送信された信号をより強い電波強度で受信するが、他の空間に存在する携帯端末4から送信された信号をより弱い電波強度で受信するような指向性を有するアンテナ、すなわちセンサ3の存在する空間の方向に指向性を有するアンテナを用いて携帯端末4からの信号を観測するようにしてもよい。
【0112】
なお、複数の階床に仕切られた建物内において、各センサ3は、各階床において略同一の平面位置に配置されていてもよい。この場合には、携帯端末4から送信された信号を観測したセンサ3のうち、最も電波強度の強い信号を観測したセンサ3の存在する階床に携帯端末4が存在することになる。したがって、各センサ3は、信号の電波強度を含む観測情報を情報処理装置1に送信し、取得部13は、ある物理アドレスについて、最も電波強度の強い信号を観測したセンサ3と同じ階床に配置されている複数のセンサ3の観測情報を用いて、その携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。この場合には、取得部13は、例えば、携帯端末4が存在する階床に配置されたセンサ3で取得された観測情報を用いて、その携帯端末4の移動履歴を取得してもよく、携帯端末4が存在する階床に配置されたセンサ3で取得された観測情報のうち、閾値を超える電波強度を含む観測情報のみを用いて、その携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。
【0113】
[複数の空間を有する建物内における移動履歴の取得(仕切りを通過した電波の観測情報を用いる場合)]
複数のセンサ3及び携帯端末4が、内部が複数の空間に仕切られた建物内に存在する場合に、仕切り6を通過して減衰した電波の観測情報をも用いて、携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。この場合には、観測情報に、観測された信号の電波強度も含まれていることが好適である。そして、情報処理装置1の取得部13は、所定の閾値を超える電波強度の信号を観測したセンサ3の存在する空間を、その信号を送信した携帯端末4が存在する空間としてもよい。例えば、図10において、携帯端末4から送信された信号を観測したセンサ3-1から送信された観測情報に、閾値を超える電波強度が含まれている場合には、取得部13は、信号を送信した携帯端末4が、センサ3-1と同じ空間、すなわち1階に存在すると判断することができる。一方、携帯端末4から送信された信号を観測したセンサ3-3から送信された観測情報に、閾値未満の電波強度が含まれている場合には、取得部13は、信号を送信した携帯端末が、センサ3-3と同じ空間、すなわち2階に存在するとは判断しないことになる。なお、この場合には、例えば、センサ3と携帯端末4とは同じ空間に存在するが、両者の距離が遠いために電波強度が閾値未満となっているのか、または、両者が異なる空間に存在し、両者の間に仕切りが存在するために電波強度が閾値未満になっているのかを、電波強度が閾値未満であることのみを用いて区別することはできない。したがって、取得部13は、閾値未満の電波強度を含む観測情報を、携帯端末4が存在する空間の特定に用いなくてもよい。
【0114】
この場合には、取得部13は、センサ3と異なる空間に存在する携帯端末4から送信された信号に関するそのセンサ3による観測結果に応じた観測情報をも用いて移動履歴を取得してもよい。すなわち、取得部13は、ある物理アドレスの携帯端末4について、閾値を超える電波強度が含まれている観測情報を用いて、携帯端末4の存在する空間を特定し、その携帯端末4に関するすべての観測情報を用いて、特定した空間における位置を特定してもよい。例えば、図10において、矢印で示されるように携帯端末4が移動している場合には、取得部13は、センサ3-1で観測された携帯端末4の閾値を超える電波強度の信号に応じた観測情報に基づいて、ある物理アドレスの携帯端末4が1階に存在すると判断することができる。また、取得部13は、センサ3-1,3-3,3-2における観測結果に応じた観測情報に基づいて、その物理アドレスの携帯端末4が、1階において、センサ3-1に応じた位置、センサ3-3に応じた位置、センサ3-2に応じた位置の順番に移動したことを示す移動履歴を取得することができる。その移動履歴は、例えば、ある物理アドレスの携帯端末4の位置と、その携帯端末4からの信号の観測時間との複数の組を有するものであってもよい。携帯端末4の位置は、例えば、上記のようにして特定された空間を識別する情報(例えば、階数など)と、平面方向の位置(例えば、センサ3-1等の平面方向の位置や、センサ3-1等の覆域領域など)を含んでいてもよい。
【0115】
なお、建物内が垂直方向に延びる仕切り6によって複数の空間に分割されている場合であって、ある空間に存在する携帯端末4の信号が、異なる空間に存在するセンサ3によって観測されたときには、その携帯端末4の位置は、携帯端末4の存在する空間における、電波を観測したセンサ3に最も近い位置(例えば、仕切りの近傍など)とされてもよい。
【0116】
仕切り6を通過した電波の観測情報をも用いて、携帯端末4の移動履歴が取得される場合において、観測領域が、携帯端末4から送信された信号を観測したセンサ3の覆域領域に応じた領域である場合には、センサ3の覆域領域は、そのセンサ3と異なる空間に存在する携帯端末4から送信された信号を、そのセンサ3が観測した際には、そのセンサ3と同じ空間に存在する携帯端末4から送信された信号を、そのセンサ3が観測した際よりも狭くなってもよい。例えば、図11は、図10に示される複数のセンサ3の配置を示す透視平面図である。図11において、各センサ3の覆域領域を破線の円形状で示している。センサ3-1,3-2は、携帯端末4と同じ空間(階床)に存在するが、センサ3-3は、携帯端末4と異なる空間に存在することになる。したがって、センサ3-1,3-2の覆域領域は、センサ3-3の覆域領域よりも広くなっている。複数の階床に仕切られた建物内に複数のセンサ3及び携帯端末4が存在する場合には、このような覆域領域を用いて、携帯端末4の平面方向の位置が特定されてもよい。
【0117】
なお、複数の階床に仕切られた建物内に配置された複数のセンサ3によって、仕切り6を通過した電波の観測情報をも用いて、携帯端末4の移動履歴が取得される場合には、ある階床のセンサ3は、平面視において、その階床に隣接する階床に配置された複数のセンサ3のうち、隣接する2個のセンサ3の間の空間に配置されてもよい。例えば、図11で示されるように、2階のセンサ3-3は、平面視において、2階に隣接する階床である1階に配置された複数のセンサ3のうち、隣接する2個のセンサ3-1,3-2の間の空間S1に存在してもよい。このようにすることで、携帯端末4が1階を移動する際に、空間S1における位置を、2階に配置されているセンサ3-3を用いて特定することができるようになり、1階の空間S1に別途、センサ3を配置しなくてもよいことになる。その結果、建物内に配置するセンサ3の個数を、全体として低減することができるようになる。
【0118】
[複数の空間を有する建物内における移動履歴の取得(対応情報を用いる場合)]
複数のセンサ3及び携帯端末4が、内部が複数の空間に仕切られた建物内に存在する場合に、対応情報を用いて携帯端末4の位置を特定し、携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。対応情報は、携帯端末4から送信された信号に関する電波強度と観測領域との複数の組と、その携帯端末4の位置とを対応付ける情報である。対応情報は、例えば、電波強度と観測領域との複数の組と、携帯端末4の位置とを有する情報であってもよい。本実施の形態では、この場合について主に説明する。複数の対応情報は、情報処理装置1の記憶部12で記憶されていてもよい。対応情報によって、位置に対応付けられる電波強度と観測領域との組は、例えば、観測結果に応じた情報であってもよく、観測結果に基づいて生成された情報であってもよい。後者の場合には、例えば、観測結果に基づいて、電波強度を範囲で示す対応情報が生成されてもよく、電波強度と観測領域との複数の組に対応付けられている位置も、範囲で示される位置であってもよい。このように、対応情報を用いて移動履歴が取得される場合には、観測情報に、観測された信号の電波強度も含まれていることが好適である。
【0119】
取得部13は、ある物理アドレスに対応する観測情報であって、同じ観測時間を含む複数の観測情報にそれぞれ含まれる観測領域と電波強度との複数の組と、記憶部12で記憶されている複数の対応情報とを用いて、携帯端末4の位置を特定してもよい。より具体的には、取得部13は、ある物理アドレスに対応する、同じ観測時間を含む複数の観測情報にそれぞれ含まれる観測領域と電波強度との複数の組と一致する観測領域と電波強度との複数の組を有する対応情報を特定し、その対応情報に含まれる位置を、その物理アドレスに対応する携帯端末4の位置としてもよい。
【0120】
なお、観測時間が同じであるとは、例えば、観測時間が厳密に一致することであってもよく、観測時間が所定の誤差の範囲内で一致することであってもよい。また、対応情報を用いて携帯端末4の位置を特定する場合には、観測領域は、例えば、センサ3の位置や、センサ3の識別子であってもよい。また、観測情報から取得された観測領域と電波強度との複数の組と、対応情報に含まれる観測領域と電波強度との複数の組とが一致するかどうかは、例えば、観測情報から取得された複数の観測領域と組になっている複数の電波強度と、対応情報において、その複数の観測領域と一致する複数の観測領域と組になっている複数の電波強度とがそれぞれ一致するかどうかによって判断されてもよい。
【0121】
なお、複数の観測情報に含まれる複数の電波強度と、対応情報に含まれる複数の電波強度とが一致するとは、例えば、両者が厳密に一致することであってもよく、両者が所定の誤差の範囲内で一致することであってもよい。また、観測領域と電波強度との複数の組が一致するかどうかは、例えば、観測領域ごとの電波強度の値そのものを用いて判断されてもよく、または、観測領域ごとの電波強度の比を用いて判断されてもよい。例えば、複数の観測情報に含まれる観測領域ごとの複数の電波強度が(L11,L12,L13)であり、ある対応情報に含まれる同じ観測領域ごとの複数の電波強度が(L21,L22,L23)であるとすると、前者の場合には、│L11-L21│+│L12-L22│+│L13-L23│の値があらかじめ決められた閾値より小さいときに、両電波強度が一致すると判断され、そうでないときに、両電波強度が一致しないと判断されてもよく、後者の場合には、│L11-L21×(L11/L21)│+│L12-L22×(L11/L21)│+│L13-L23×(L11/L21)│=│L12-L22×(L11/L21)│+│L13-L23×(L11/L21)│の値があらかじめ決められた閾値より小さいときに、両電波強度が一致すると判断され、そうでないときに、両電波強度が一致しないと判断されてもよい。なお、算出した値が閾値と等しい場合には、例えば、一致すると判断されてもよく、一致しないと判断されてもよい。また、ここでは、電波強度が一致するかどうかの判断において、電波強度の差の絶対値を用いたが、例えば、電波強度の差の二乗を用いてもよく、結果として同様の判断を行うことができるのであれば、他の計算式を用いてもよいことは言うまでもない。
【0122】
対応情報を用いた携帯端末4の位置の特定について、より具体的に説明する。例えば、図12で示される複数の対応情報が記憶部12で記憶されており、ある物理アドレスの携帯端末4について、観測時間T101を有する3つの観測情報が情報処理装置1で受信され、各観測情報に、観測領域と電波強度との組として、
(A101,L101-1)
(A102,L101-2)
(A103,L101-3)
が含まれていたとする。なお、A101等が観測領域であり、L101-1等が電波強度であるとする。すると、取得部13は、まず、記憶部12で記憶されている複数の対応情報から、観測領域A101,A102,A103を含む対応情報を特定する。そして、特定した対応情報から、観測情報に含まれる観測領域A101,A102,A103にそれぞれ対応する電波強度と一致する電波強度を有する対応情報を特定する。この場合には、観測領域A101,A102,A103にそれぞれ対応する電波強度L1,L2,L3が、電波強度L101-1,L101-2,L101-3と誤差の範囲内で一致したとする。すると、取得部13は、観測時間T101に対応する携帯端末4の位置を、電波強度L1,L2,L3を有する対応情報に含まれている位置A51とする。このようにして、対応情報を用いて携帯端末4の位置を特定することができる。なお、対応情報を用いた携帯端末4の位置の特定において、仕切りを通過した電波の観測情報が用いられてもよい。この場合には、仕切りを通過した電波の観測情報が用いられない場合と比較して、より少ない個数のセンサ3を用いて携帯端末4の位置を特定することができるようになる。
【0123】
また、対応情報を用いて携帯端末の位置を特定する場合には、各対応情報に含まれる観測領域と電波強度との組の個数があらかじめ決まっていてもよい。あらかじめ決められた個数は、例えば、2個や3個などであってもよい。そして、取得部13は、対応情報を用いて携帯端末4の位置を特定する際に、ある物理アドレスに対応する、同じ観測時間を含む複数の観測情報のうち、電波強度の高い順にあらかじめ決められた個数の観測情報を特定し、その特定した複数の観測情報に含まれる観測領域と電波強度との複数の組を用いるようにしてもよい。
【0124】
[エレベータのカゴ内に配置されたセンサの観測結果を用いた移動履歴の取得]
複数のセンサ3及び携帯端末4が、内部が複数の階床に仕切られた建物内に存在する場合であって、その建物に設置されたエレベータのカゴ内に少なくとも1個のセンサ3が配置されている場合には、取得部13は、そのカゴ内のセンサ3による観測結果に応じた観測情報をも用いて携帯端末4の移動履歴を取得してもよい。この場合には、例えば、カゴ内に配置されたセンサ3による携帯端末4からの信号の観測結果に応じた観測情報には、観測された信号の電波強度と、その信号の観測時のカゴの停止階または通過階を示す階床情報と、その信号の観測時のカゴのドアの開閉状態とが含まれていてもよい。カゴ内に配置されたセンサ3は、例えば、階床情報やドアの開閉状態を、エレベータのカゴに設けられた制御装置から受け取ってもよい。階床情報は、例えば、カゴの存在する階数を示す情報であってもよく、階数と共に、その階数にカゴが停止しているのか、その階数をカゴが通過しているのかを示す情報(例えば、3階に停止していることを示す「停止階3」や、3階を通過していることを示す「通過階3」など)であってもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明する。取得部13は、カゴ内に配置されたセンサ3からの観測情報に含まれる電波強度と階床情報とドアの開閉状態とを用いて、カゴの内外に関する携帯端末4の位置を特定してもよい。カゴの内外に関する位置とは、例えば、携帯端末4がカゴの内部に存在することや、携帯端末4がカゴの外部であるエレベータホールに存在することなどであってもよい。このように、カゴの内外に関する位置が特定されることにより、例えば、携帯端末4のエレベータのカゴへの出入りを示す移動履歴が取得されることになる。
【0125】
取得部13は、例えば、エレベータのカゴのドアが閉じている際における、カゴ内のセンサ3による観測結果に応じた観測情報を用いて、携帯端末4の位置を特定してもよい。例えば、エレベータのカゴ内に配置されたセンサ3の観測結果に応じた観測情報によって、エレベータのカゴのドアが閉じていることが開閉状態によって示されると共に、電波強度が第1の閾値を超えている場合には、取得部13は、その観測情報に含まれる観測時間によって示される時点に、その観測情報に含まれる階床情報によって示される階床(この階床は、停止階であってもよく、通過階であってもよい。)のカゴ内に、その観測情報に対応する携帯端末4が存在することを特定できる。なお、その第1の閾値は、例えば、ドアが閉じられているカゴ内のセンサ3によって取得された、カゴと同じ階床のエレベータホールに存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が第1の閾値未満となり、カゴ内に存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が第1の閾値を超えるように設定されてもよい。また、例えば、エレベータのカゴ内に配置されたセンサ3の観測結果に応じた観測情報によって、エレベータのカゴのドアが閉じていることが開閉状態によって示されると共に、電波強度が第1の閾値未満であり、第2の閾値を超えている場合には、取得部13は、その観測情報に含まれる観測時間によって示される時点に、その観測情報に含まれる階床情報によって示される階床(この階床は、停止階であってもよく、通過階であってもよい。)のエレベータホールに、携帯端末4が存在することを特定できる。なお、その第2の閾値は、例えば、ドアが閉じられているカゴ内のセンサ3によって取得された、カゴと同じ階床のエレベータホールに存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が第2の閾値を超え、カゴ内及びカゴと同じ階床のエレベータホール以外の場所に存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が第2の閾値未満となるように設定されてもよい。
【0126】
また、取得部13は、例えば、ドアの開閉の前後における電波強度の変化に応じて、携帯端末4の位置を特定してもよい。取得部13は、ある物理アドレスの携帯端末4に対応する観測情報について、ある停止階において、ドアが閉じているときに電波強度が閾値未満であり、その後にドアが開いたとき、及びその後にドアが閉じたときに電波強度が閾値を超えているのであれば、その携帯端末4は、最初にドアが閉じているときには、停止階のエレベータホールに存在し、その後にドアが開いて閉じたときには、停止階のエレベータのカゴ内に存在している、すなわち、その携帯端末4は、停止階においてエレベータのカゴに乗り込んだと判断してもよい。また、取得部13は、ある物理アドレスの携帯端末4に対応する観測情報について、ある停止階において、エレベータのカゴのドアが閉じているとき、及びその後にドアが開いたときに電波強度が閾値を超えており、その後にドアが閉じたときに電波強度が閾値未満となるのであれば、その携帯端末4は、最初にドアが閉じているときには、停止階のエレベータのカゴ内に存在し、その後にドアが開いて閉じたときには、停止階のエレベータホールに存在している、すなわち、その携帯端末4は、停止階においてエレベータのカゴから降りたと判断してもよい。この場合に用いられる閾値は、例えば、ドアが閉じているカゴ内のセンサ3によって取得された、カゴと同じ階床のエレベータホールに存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が閾値未満となり、ドアが開いているカゴ内のセンサ3によって取得された、カゴと同じ階床のエレベータホールまたはカゴ内に存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が閾値を超えるように設定されてもよい。
【0127】
例えば、図13で示されるように、携帯端末4を有するユーザが1階でエレベータのカゴ7に乗り込み、2階でエレベータのカゴ7から降りたとする。この携帯端末4の移動に応じて、エレベータのカゴ7内に配置されたセンサ3-1によって、次の観測情報が取得され、情報処理装置1に送信されたとする。
(観測時間,階床情報,開閉状態,電波強度,観測領域)
(T201,停止階1,閉,L201,A201)
(T202,停止階1,開,L202,A201)
(T203,停止階1,閉,L203,A201)
(T204,停止階2,閉,L204,A201)
(T205,停止階2,開,L205,A201)
(T206,停止階2,閉,L206,A201)
【0128】
なお、観測領域A201は、エレベータのカゴ7内に配置されたセンサ3-1の識別子であるとする。また、電波強度L202,L203,L204,L205は、閾値を超えており、電波強度L201,L206は、閾値未満であるとする。この場合には、取得部13は、観測時間T201の携帯端末4の位置を、停止階である1階のエレベータホールとし、観測時間T203の携帯端末4の位置を、停止階である1階のエレベータのカゴ7内としてもよい。また、取得部13は、観測時間T204の携帯端末4の位置を、停止階である2階のエレベータのカゴ7内とし、観測時間T206の携帯端末4の位置を、停止階である2階のエレベータホールとしてもよい。
【0129】
このようにして、エレベータのカゴ内に配置されたセンサ3を用いることによって、エレベータを介した携帯端末4の移動、すなわちエレベータの乗り降りに関する携帯端末4の移動についても移動履歴を取得することができるようになる。なお、図13において、エレベータのカゴ7が各階床に存在する場合に、例えば、その各階床のカゴ7が、1つのアクセスポイントの覆域領域に含まれており、エレベータのカゴ7を介した携帯端末4の移動において、携帯端末4の物理アドレスが変化しないようになっていてもよい。
【0130】
なお、上記説明では、エレベータのカゴ内に配置されたセンサ3による携帯端末4からの信号の観測結果に応じた観測情報に、階床情報と、ドアの開閉状態とが含まれている場合について説明したが、そうでなくてもよい。エレベータのカゴ内のセンサ3による観測結果に応じた観測情報には、階床情報と、ドアの開閉状態とが含まれていなくてもよい。なお、その観測情報に電波強度は含まれていてもよく、または含まれていなくてもよい。前者の場合には、所定の閾値を超える電波強度の観測情報が携帯端末4の移動履歴の取得に用いられてもよく、後者の場合には、所定の閾値を超える電波強度の信号の観測結果に応じた観測情報のみが情報処理装置1に送信されてもよい。この閾値は、例えば、ドアが閉じているカゴ内のセンサ3によって取得された、カゴ外に存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が閾値未満となり、カゴ内のセンサ3によって取得された、カゴ内に存在する携帯端末4から送信された信号の電波強度が閾値を超えるように設定されてもよい。この場合であっても、取得部13は、ある物理アドレスの携帯端末4について、エレベータのカゴ内のセンサ3からの観測情報に含まれる観測時間の前後に他のセンサ3によって取得された観測情報、すなわち、カゴ内のセンサ3からの観測情報に含まれる観測時間の前後の観測時間を含む観測情報をそれぞれ用いることによって、その携帯端末4の移動履歴を取得することができる。例えば、図13で示されるカゴ7内のセンサ3-1による観測結果に応じた観測情報の前後に、それぞれ異なる階床のセンサ3(例えば、1階のセンサ3-2、及び2階のセンサ3-3など)による観測結果に応じた観測情報が取得された場合には、取得部13は、カゴ7内のセンサ3-1による観測結果に応じた観測情報に含まれる観測時間に、携帯端末4がエレベータのカゴ7内に存在したことを示す移動履歴を取得することができる。例えば、取得部13は、その携帯端末4について、1階→エレベータのカゴ→2階の移動を示す移動履歴を取得することができる。一方、例えば、カゴ7内のセンサ3-1による観測結果に応じた観測情報の前後の観測情報が両方とも同じ階床のセンサ3(例えば、1階のセンサ3-2)による観測結果に応じたものである場合には、取得部13は、カゴ7内のセンサ3-1による観測結果に応じた観測情報に含まれる観測時間に、携帯端末4がカゴ内には存在せず、エレベータホールに存在したことを示す移動履歴を取得することができる。例えば、取得部13は、その携帯端末4について、1階の第1の領域→1階のエレベータホール→1階の第2の移動を示す移動履歴を取得することができる。なお、1階の第1及び第2の領域は、例えば、同じ領域であってもよく、または異なる領域であってもよい。
【0131】
[移動の予測]
情報処理装置1は、携帯端末4ごとの移動履歴を用いて、携帯端末4の移動を予測してもよい。この場合には、情報処理装置1は、図2Cで示されるように、端末移動履歴取得部16と、特定部17と、予測部18と、判断部19とをさらに備えてもよい。なお、端末移動履歴取得部16は、図2Bで示される端末移動履歴取得部16と同様のものであり、その説明を省略する。
【0132】
特定部17は、端末移動履歴取得部16によって取得された携帯端末4ごとの移動履歴に基づいて、携帯端末4の移動空間を仮想的に分割した複数のエリアにおけるエリアごとの携帯端末4の個数、及び隣接するエリア間の携帯端末4の移動を時間ごとに特定する。このエリアは、例えば、各センサ3の覆域領域とは独立して決められた領域であってもよく、または、複数のセンサ3にそれぞれ対応する複数の覆域領域のうち、少なくとも一部の覆域領域であってもよい。後者の場合には、例えば、複数のセンサ3に対応する複数の覆域領域から、携帯端末4の移動空間を網羅することができ、重複が少なくなる複数の覆域領域が、複数のエリアとして選択されてもよい。なお、エリアは仮想的なものであるため、実空間におけるエリア間の境界には、通常、仕切り等は存在していない。本実施の形態では、各エリアが覆域領域とは独立して決められる場合について主に説明する。なお、各エリアの境界の位置を示す情報は、例えば、記憶部12で記憶されていてもよい。
【0133】
特定部17は、携帯端末4ごとの移動履歴を用いることによって、各携帯端末4が各時間にどのエリアに存在するのかを特定することができる。例えば、移動履歴によって、ある携帯端末4が時間T1に第1のエリア内の領域A1に存在し、時間T2に第2のエリア内の領域A2に存在することが示される場合には、その携帯端末4が領域A1から領域A2まで等速で移動したと仮定すると、特定部17は、その携帯端末4が第1のエリアと第2のエリアとの境界を通過した時点を特定することができる。したがって、特定部17は、時間ごと(例えば、1分ごと、5分ごと、10分ごとなど)の各エリアにおける携帯端末4の個数、及び隣接するエリア間の携帯端末4の移動を特定することができる。エリア間の携帯端末4の移動を特定するとは、第1のエリアと第2のエリアとが隣接している場合に、第1のエリアから第2のエリアに移動した携帯端末4の個数と、第2のエリアから第1のエリアに移動した携帯端末4の個数とを特定することであってもよい。また、特定部17は、あるエリアについて、隣接するエリア以外との間での携帯端末4の移動を特定してもよい。例えば、道路に沿って複数のエリアが設定されている場合には、道路に面した店から道路に移動した携帯端末4や、道路から道路に面した店に移動した携帯端末4は、あるエリアについて、隣接するエリア以外との間で移動した携帯端末4となる。なお、各エリアに存在する携帯端末4の個数は、例えば、所定の時間間隔ごとのピンポイントの時点に各エリアに存在する携帯端末4の個数であってもよく、エリア間で移動した携帯端末4の個数は、例えば、所定の時間的な長さを有する期間に移動した携帯端末4の個数であってもよい。
【0134】
例えば、図14で示されるようにエリアAR1~AR3が道路に沿って設定されており、10:00から10:05までなどのように、5分ごとに各エリアの携帯端末4の個数やエリア間の携帯端末4の移動などが特定される場合であって、10:00から10:05までの間に、エリアAR2について、図14における矢印M1~M6の方向に移動する携帯端末4のそれぞれの個数がN1~N6と特定され、10:00にエリアAR2に存在する携帯端末4の個数がN0と特定された場合には、10:05の時点におけるエリアAR2に存在する携帯端末4の個数は、N0+(N1+N4+N5)-(N2+N3+N6)となる。したがって、特定部17は、各期間(例えば、10:00から10:05までなど)における携帯端末4のエリア間の移動などを特定することによって、時間ごと(例えば、5分ごとなど)の各エリアの携帯端末4の個数を特定することができる。
【0135】
予測部18は、特定部17による特定結果を用いて、エリアごとの携帯端末4の個数を時間ごとに予測する。この予測は、例えば、エリアごとの携帯端末4の個数を直接予測することによって行われてもよく、または、隣接するエリア間の携帯端末4の移動を予測し、その予測結果を用いてエリアごとの携帯端末4の個数を算出することによって行われてもよい。また、この予測は、例えば、過去の特定結果について、時間軸の未来の方向について個数を外挿することによって行われてもよく、ニューラルネットワークなどの機械学習の結果を用いた予測によって行われてもよく、その他の方法によって行われてもよい。なお、人流などを予測する方法は、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。予測部18による予測結果は、例えば、出力部15によって出力されてもよい。
【0136】
予測部18は、判断部19によって、予測結果と特定結果とに閾値を超える乖離があると判断された場合に、新たな予測を行う。新たな予測とは、それまでの予測よりも新しい特定結果を用いた予測であってもよい。予測部18は、例えば、9:00から10:00までの特定結果を用いて10:00以降の予測を順次行った場合に、そのようにして予測した10:30の予測結果と、10:30に特定部17によって特定された特定結果とに閾値を超える乖離があると判断部19によって判断されたときには、10:30以降の予測を、9:30から10:30までの特定結果を用いて新たに予測し直すようにしてもよい。このようにすることで、より正確な予測を行うことができるようになる。
【0137】
判断部19は、ある時間の予測結果と、その時間の特定結果とに閾値を超える乖離があるかどうかを判断する。判断部19は、例えば、ある時間における各エリアに関する携帯端末4の個数の予測結果と特定結果との差の二乗を、すべてのエリアについて加算した結果が、あらかじめ決められた閾値を超えているかどうかによって判断してもよい。その加算結果が閾値を超えている場合には、予測結果と特定結果とに閾値を超える乖離があると判断されたことになり、その加算結果が閾値を超えていない場合には、予測結果と特定結果とに閾値を超える乖離がないと判断されたことになってもよい。なお、例えば、予測部18が、絶えず最新の特定結果を用いて予測を行う場合には、この判断部19による判断処理は行われなくてもよい。この場合には、例えば、図2Cで示される情報処理装置1は、判断部19を備えていなくてもよい。
【0138】
[その他の変形例]
また、本実施の形態において、物理アドレスごとの移動履歴、または携帯端末4ごとの移動履歴において、移動方向及び移動ベクトルの少なくとも一方が算出されてもよい。そして、その算出結果を用いて、移動履歴がより細かい情報に変更されてもよい。移動履歴をより細かい情報に変更するとは、例えば、移動履歴における時間間隔をより細かくすることであってもよく、移動履歴に含まれる領域の範囲をより狭くすることであってもよい。この処理は、例えば、移動履歴と、移動方向及び移動ベクトルの少なくとも一方とを用いた補間などの処理によって行われてもよい。また、算出された移動方向及び移動ベクトルの少なくとも一方が移動履歴に追加されてもよい。これらの処理は、例えば、取得部13によって行われてもよい。
【0139】
また、本実施の形態では、物理アドレスがIEEE802.11規格の無線信号に含まれるMACアドレスである場合について主に説明したが、物理アドレスは、他の規格のMACアドレスであってもよい。例えば、物理アドレスは、Bluetooth(登録商標)のMACアドレスであってもよい。
【0140】
また、本実施の形態では、センサ3が時間の経過に応じて移動しない場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。センサ3は、移動可能なもの、すなわち、時間の経過に応じて移動するものであってもよい。移動可能なセンサ3は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの移動可能な装置であってもよい。例えば、あらかじめ登録している移動可能な装置が、センサ3として機能してもよい。この場合には、センサ3の位置が変化し得るため、GPSなどの現在位置取得部によって取得されたセンサ3の現在位置が、物理アドレス等と一緒に情報処理装置1に送信されることが好適である。
【0141】
また、本実施の形態では、センサ3で取得された観測情報等が通信回線を介して情報処理装置1に送信される場合について主に説明したが、観測情報等が情報処理装置1に入力される方法は問わない。例えば、記録媒体等を介して、観測情報等が情報処理装置1に入力されてもよい。
【0142】
また、本実施の形態では、情報処理装置1とセンサ3とが別の装置である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。いずれかのセンサ3が、情報処理装置1の機能を有していてもよい。この場合には、複数のセンサ3に、親のセンサ3と、子のセンサ3とが含まれており、親のセンサ3が、情報処理装置1の各構成要素を有していてもよい。この場合には、子のセンサ3によって観測された信号から取得された物理アドレス等が、親のセンサ3に送信されることになる。その送信は、複数のセンサ3間のマルチホップの無線通信によって行われてもよく、他の通信回線を介して行われてもよい。そして、親のセンサ3は、子のセンサ3の観測結果と、親のセンサ3の観測結果とを用いて、本実施の形態の情報処理装置1と同様の処理を行ってもよい。
【0143】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0144】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0145】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0146】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0147】
また、上記実施の形態において、情報処理装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0148】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態における情報処理装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、物理アドレスが変化し得る携帯端末から送信された、物理アドレスを含む信号が複数のセンサの少なくともいずれかによって観測された結果に応じた観測領域及び観測時間を含む複数の観測情報を用いて、物理アドレスごとに携帯端末の移動履歴を取得する取得部、第1の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動と、第2の物理アドレスに対応する移動履歴によって示される携帯端末の経時的な移動とが連続している場合に、第1及び第2の物理アドレスが同じ携帯端末の物理アドレスであると判定する判定部として機能させるためのプログラムである。
【0149】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を受け付ける受付部、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0150】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD-ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0151】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0152】
図15は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による情報処理装置1を実現するコンピュータシステム900の一例を示す図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0153】
図15において、コンピュータシステム900は、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムや、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータが記憶されるフラッシュメモリ等のROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、無線通信モジュール915と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス916とを備える。なお、無線通信モジュール915に代えて、有線通信モジュールを備えていてもよい。また、タッチパネルなどの入出力デバイスを備えていてもよく、タッチパネルに代えてディスプレイと、マウスやキーボード等の入力デバイスとを備えていてもよい。
【0154】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による情報処理装置1の機能を実行させるプログラムは、無線通信モジュール915を介してROM912に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、ネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0155】
プログラムは、コンピュータシステム900に、上記実施の形態による情報処理装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0156】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0157】
以上より、本発明の一態様による情報処理装置等によれば、異なる物理アドレスが同じ携帯端末に対応しているかどうかを判定できるという効果が得られ、例えば、送信された信号に含まれる物理アドレスを用いて混雑の程度や人流に関する情報を取得する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0158】
1 情報処理装置
3 センサ
4 携帯端末
11 受付部
12 記憶部
13 取得部
14 判定部
15 出力部
16 端末移動履歴取得部
17 特定部
18 予測部
19 判断部
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15