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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】吊下げ用フックおよび検査治具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/34 20060101AFI20250604BHJP
【FI】
B66C1/34 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2025061172
(22)【出願日】2025-04-02
【審査請求日】2025-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2024119218
(32)【優先日】2024-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 健志
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-33166(JP,Y1)
【文献】特開昭50-125456(JP,A)
【文献】実開昭61-14211(JP,U)
【文献】特開平8-282960(JP,A)
【文献】国際公開第2016/079488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊下げた状態で吊下げ用の連結部より下方に延設される基端部と、
前記基端部の下端から延設され、前記下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部と、
前記湾曲部の前記他端に接続され、上方に延設される先端部と、
前記基端部と前記湾曲部と前記先端部とで囲まれた内側部と、
を備え、
前記基端部と前記湾曲部と前記先端部は、前記内側部と接する内周部と、前記内周部とは反対側の外周部と、を有し、
前記基端部の前記外周部は、延設方向に直線状に延びて、吊下げた状態で前記湾曲部の湾曲中心より上方に位置する第1外周面を有し、
前記先端部の前記外周部は、延設方向に直線状に延びて、吊下げた状態で前記湾曲部の湾曲中心の下方から上方に向けて位置する第2外周面を有し、
前記第1外周面と前記第2外周面とは、互いに外向きで平行な位置関係にある、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項2】
吊下げた状態で吊下げ用の連結部より下方に延設される基端部と、
前記基端部の下端から延設され、前記下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部と、
前記湾曲部の前記他端に接続され、上方に延設される先端部と、
前記基端部と前記湾曲部と前記先端部とで囲まれた内側部と、
を備え、
前記基端部と前記湾曲部と前記先端部は、前記内側部と接する内周部と、前記内周部とは反対側の外周部と、を有し、
前記基端部の前記外周部と前記先端部の前記外周部は直線状に延びる外周面を有し、
前記基端部の前記外周面である第1外周面と前記先端部の前記外周面である第2外周面とは、互いに平行であり、
吊下げ用フックの開きを検査する検査治具は、前記湾曲部側から挿入する挿入部の対向する内面が平行であり、
前記吊下げ用フックの開き角度が、前記基端部の前記直線状に延びる前記外周面と前記先端部の前記直線状に延びる前記外周面とがともに前記内面と平行に摺接する角度であるときにのみ前記吊下げ用フックを前記挿入部に挿入できる、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吊下げ用フックであって、
前記第1外周面に形成される基端側凹部と、
前記第2外周面に形成される先端側凹部と、
を備えることを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項4】
請求項3に記載の吊下げ用フックであって、
前記基端側凹部は、前記吊下げ用フックに作用する曲げ力が最大となる位置より前記連結部側に形成される、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項5】
請求項3に記載の吊下げ用フックであって、
前記内周部に形成される肉厚の肉厚部と、前記外周部に形成される前記肉厚部より薄い肉薄部とを有し、
前記基端側凹部および前記先端側凹部は、前記肉薄部に形成され、
前記肉薄部には、前記吊下げ用フックに関する情報が記されている、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項6】
請求項1または2に記載の吊下げ用フックであって、
前記内周部に形成される肉厚の肉厚部と、前記外周部に形成される前記肉厚部より薄い肉薄部とを有し、前記肉厚部と前記肉薄部との境界部の一部であって前記基端部と前記先端部とにそれぞれ設けられる直線状の境界直線部を備え、
前記第1外周面と前記第2外周面とは、前記吊下げ用フックの変形を検出する第1変形検出部であり、
前記境界直線部は、目視で前記吊下げ用フックの変形を検出する第2変形検出部である、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項7】
請求項6に記載の吊下げ用フックであって、
前記境界直線部は、互いに平行になることで過荷重が作用したことを示す、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項8】
請求項6に記載の吊下げ用フックであって、
前記境界直線部は、前記湾曲部から離間するほど互いに近づくように傾斜して形成され、前記吊下げ用フックの変形時に平行に近づく、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項9】
請求項1または2に記載の吊下げ用フックであって、
前記基端部に回動軸が設けられ回動することで前記先端部に当接するフックラッチを備え、
前記フックラッチが当接する前記先端部の部位は、目視で前記吊下げ用フックの変形を検出する第3変形検出部として機能する、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項10】
請求項1または2に記載の吊下げ用フックであって、
前記内周部に形成される肉厚の肉厚部と、前記外周部に形成される前記肉厚部より薄い肉薄部とを有し、
前記第1外周面から上方にかけて、前記肉薄部が他の部分よりも幅広で平板状に延出しており、
前記肉薄部には、前記吊下げ用フックに関する情報が周囲より凸形状または凹形状に立体的に記されている、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項11】
請求項1または2に記載の吊下げ用フックであって、
吊下げた状態での、水平面と前記第1外周面とのなす角度は、75°±5°に設定される、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項12】
請求項3に記載の吊下げ用フックであって、
前記基端部に回動軸が設けられ回動することで前記先端部に当接するフックラッチを備え、
前記フックラッチが前記先端部の部位に当接している状態では、前記基端側凹部および前記先端側凹部は、前記基端側凹部と前記先端側凹部とを結ぶ直線が前記フックラッチに干渉しない位置に設けられる、
ことを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項13】
内径側へ延設される肉厚の肉厚部と、前記肉厚部より外径側に前記肉厚部より薄く延設される肉薄部と、を有する吊下げ用フックであって、
吊下げ用の連結部より下方に延設され、外周面に基端側凹部を有する基端部と、
前記基端部に対向し、外周面に先端側凹部を有する先端部と、
を備えることを特徴とする吊下げ用フック。
【請求項14】
吊下げ用フックの開きを検査する検査治具であって、
内部に前記吊下げ用フックを挿入して収容する収容部を備える本体部と、
前記収容部の幅方向の両端側に設けられ、前記本体部の前記内部に形成され挿入方向に直線状に延びて前記吊下げ用フックの前記挿入方向以外への移動を制止する溝部と、
を備え、
前記吊下げ用フックを前記収容部に収容した場合の前記吊下げ用フックの径方向に対向する一対の前記溝部の内面は互いに平行であり、前記内面間の距離は前記吊下げ用フックが摺接するように設定される、
ことを特徴とする検査治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊下げ用フックおよび検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
巻上機のような吊荷を吊り上げ下げする装置は、当該装置の下方に垂下されるワイヤロープやチェーン等の下端に、吊荷と連結するためのフックを有している。フックは、過大な負荷が作用すると、フックの先端側が開くように徐々に塑性変形し、フックの開口部の寸法が大きくなる。開口部の寸法が大きくなったことから、フック及びフックを備えた巻上機等に過大な負荷が作用したことが推定され、安全のため開口部の寸法管理が推奨されている。
【0003】
特許文献1は、吊り上げのチェーンスリングに用いられる取付具としてのフックを開示している。フックは、先端側が開口するように変形して交換すべきであることを作業者に知らせるための標識を備えている。標識は、フックの根元部分と先端部分とのそれぞれの側面にエンボス加工によって設けられ、作業者はこれらの2つの標識間の距離をノギス等によって測定することでフックの開き度合を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平7-501776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているフックは、製造時の熱処理や鍛造によってねじれ等が生じるため、標識間の初期寸法にばらつきが生じる場合がある。また、フックの先端部分は根元部分より細いため、標識の測定を容易にする目的でフックの側面方向に突出する標識の高さを揃える場合、先端部分の標識を高くすることが求められる。しかし、フックは鍛造成形であるため、標識を高くすることが難しい上に、鍛造ダレによって標識の側面に丸みが形成されてノギス等が引っ掛かりにくくなる。よって、ノギス等を用いて標識間の寸法を迅速に測定することが難しくなることがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、フックの開き度合を迅速かつ精度よく測定することが可能な吊下げ用フックおよび検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面の吊下げ用フックは、吊下げた状態で吊下げ用の連結部より下方に延設される基端部と、基端部の下端から延設され、下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部と、湾曲部の他端に接続され、上方に延設される先端部と、基端部と湾曲部と先端部とで囲まれた内側部と、を備え、基端部と湾曲部と先端部は、内側部と接する内周部と、内周部とは反対側の外周部と、を有し、基端部の外周部は、延設方向に直線状に延びて、吊下げた状態で湾曲部の湾曲中心より上方に位置する第1外周面を有し、先端部の外周部は、延設方向に直線状に延びて、吊下げた状態で湾曲部の湾曲中心の下方から上方に向けて位置する第2外周面を有し、第1外周面と第2外周面とは、互いに外向きで平行な位置関係にある。
【0008】
また、本発明の一側面の吊下げ用フックは、吊下げた状態で吊下げ用の連結部より下方に延設される基端部と、基端部の下端から延設され、下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部と、湾曲部の他端に接続され、上方に延設される先端部と、基端部と湾曲部と先端部とで囲まれた内側部と、を備え、基端部と湾曲部と先端部は、内側部と接する内周部と、内周部とは反対側の外周部と、を有し、基端部の外周部と先端部の外周部は直線状に延びる外周面を有し、基端部の外周面である第1外周面と先端部の外周面である第2外周面とは、互いに平行であり、吊下げ用フックの開きを検査する検査治具は、湾曲部側から挿入する挿入部の対向する内面が平行であり、吊下げ用フックの開き角度が、基端部の直線状に延びる外周面と先端部の直線状に延びる外周面とがともに内面と平行に摺接する角度であるときにのみ吊下げ用フックを挿入部に挿入できる。
【0009】
また、本発明の一側面の吊下げ用フックは、内径側へ延設される肉厚の肉厚部と、肉厚部より外径側に肉厚部より薄く延設される肉薄部と、を有する吊下げ用フックであって、吊下げ用の連結部より下方に延設され、外周面に基端側凹部を有する基端部と、基端部に対向し、外周面に先端側凹部を有する先端部と、を備える。
【0010】
また、本発明の一側面の吊下げ用フックの開きを検査する検査治具は、吊下げ用フックの開きを検査する検査治具であって、内部に吊下げ用フックを挿入して収容する収容部を備える本体部と、収容部の幅方向の両端側に設けられ、本体部の内部に形成され挿入方向に直線状に延びて吊下げ用フックの挿入方向以外への移動を制止する溝部と、を備え、吊下げ用フックを収容部に収容した場合の吊下げ用フックの径方向に対向する一対の溝部の内面は互いに平行であり、内面間の距離は吊下げ用フックが摺接するように設定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フックの開き度合を迅速かつ精度よく測定することが可能な吊下げ用フックおよび検査治具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る吊下げ用フックを有するチェーンブロックを示す側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る吊下げ用フックを示す側面図である。
図3図3は、図2の吊下げ用フックを基端部と先端部に設けられている凹部を通るA-A線で切断して矢印方向から見た状態を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る吊下げ用フックにおける凹部の変形例を示す図であり、A及びBは第1実施形態の吊下げ用フックとは凹部の形状が異なる場合を示し、Cは第1実施形態と吊下げ用フックの形状が異なる場合を示す。
図5図5は、第2実施形態に係る吊下げ用フックの開き度合を検査する検査治具を示す斜視図である。
図6図6は、第2実施形態に係る吊下げ用フックの開き度合を検査する検査治具に吊下げ用フックを挿入する様子を説明する説明図である。Aは吊下げ用フックを検査治具に挿入可能な状態を示し、Bは吊下げ用フックを検査治具に挿入不可である状態を示す。
図7図7は、比較例における吊下げ用フックとその検査治具について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る吊下げ用フックについて、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「吊下げ用フックの外径側」とは、基端部、湾曲部及び先端部によって画成される略U字形空間から放射状に外方を向く側を指し、「吊下げ用フックの内径側」とは、当該略U字形空間へ向けて放射状に内方を向く側を指す。
【0014】
[第1実施形態]
(チェーンブロック)
図1は、本実施形態に係る吊下げ用フック10を有するチェーンブロック1を示す側面図である。本実施形態では、吊下げ用フック10が、手動のチェーンブロック1に適用された場合について説明するが、電動チェーンブロックやその他の巻上機、チェーンスリング等に適用することも可能である。
【0015】
チェーンブロック1は、チェーンブロック本体2と、上フック3と、ロードチェーン4と、吊下げ用フック10と、ハンドチェーン5と、を備える。
【0016】
チェーンブロック本体2は、主に図示しないフレームから構成され、ロードチェーン4が噛み合うロードシーブ、ハンドチェーン5が噛み合うハンドホイール、ギヤから構成される減速機構などを収容する。
【0017】
上フック3は、チェーンブロック本体2のフレームの最上部に連結され、構造物の梁などに吊下げることでチェーンブロック1を吊り下げる。
【0018】
ロードチェーン4は、チェーンブロック本体2に設けられた、ロードチェーン4を支持するロードシーブから繰り出され、フックを介して吊荷の荷重を支持することで、吊り荷は昇降する。
【0019】
吊下げ用フック10は、ロードチェーン4の吊り荷側の下端に連結されるとともに、吊荷や吊荷のアイ部などに引っ掛けられて吊荷を支持する。
【0020】
ハンドチェーン5は、チェーンブロック本体2のハンドホイールから繰り出され、作業者の手引き動作に応じて一方周り又は他方周りに回転する。ハンドチェーン5の手引き動作に応じた回転方向にハンドホイールが回転することで、回転が減速機構を介してロードシーブへ伝達され、吊下げ用フック10が昇降する。
【0021】
(吊下げ用フック)
図2は、本実施形態に係る吊下げ用フック10を示す側面図である。
【0022】
図2に示す仮想円31の中心をとおり、図1に記載のロードチェーン4に沿う方向をZ軸とし、Z軸に垂直で、吊下げ用フック10の基端側と先端側を横切る図1の左右方向をX軸とし、X軸とY軸に垂直で図1の奥行方向をY軸とする。仮想円31は、後述する湾曲部13の内縁と接する仮想円で、その半径は湾曲部13の内縁の最小曲率半径と一致している。
【0023】
吊下げ用フック10は、チェーンブロック本体2のロードシーブから垂下されるロードチェーン4の下端に連結金具6を介して連結される。
【0024】
吊下げ用フック10は、連結金具6と連結する連結部32を有する基端部11と、先端部12と、湾曲部13と、基端側凹部14と、先端側凹部15と、を有する。基端部11、先端部12及び湾曲部13は、吊下げ用フック10の一部の領域であり、それぞれが吊下げ用フック10を吊下げた状態で、連結部32から下方に延設されるように一体的に形成される。
【0025】
具体的には、吊下げ用フック10は、基端部11と、湾曲部13と、先端部12と、をこの順に有する。基端部11の一端には連結部32が延設され、基端部11の延設方向他端には湾曲部の一端が連続して延設され、湾曲部13の延設方向他端には先端部12の一端が連続して延設されている。基端部11と湾曲部13と先端部12とでU字状に囲まれた内側部(ふところ部)30が形成され、内側部30と接する内縁部10bと内縁部10bと反対側に外周部としての外縁部10cとをそれぞれ有している。吊下げ用フックの外縁部側は、吊下げ用フックの外径側である。
【0026】
基端部11は、連結部32を含み、連結部32と湾曲部13を接合する接合部となっている。
【0027】
湾曲部13は、吊下げ用フック10で、吊荷またはスリング等の吊りかけ部を支持する部分であり、吊下げ用フック10のふところ部30側に湾曲している。内周部としての内縁面10aは、湾曲部13の肉厚部17の内縁部10bの外表面で、ふところ部側の面であり、仮想円31に接している。内縁面10aは、肉厚部17の平坦面(17a、17b)に接続する。肉厚部17の内縁面10aと反対側である外縁側(外縁部10c)には、肉薄部16が形成されている。肉薄部16は、平坦面(16a、16b)を有し、肉厚部17の平坦面(17a、17b)と肉薄部16の平坦面(16a、16b)の境界部には、湾曲部13の境界段部13aが形成されている。湾曲部13の肉薄部16の外縁には、外縁面13bが形成されている。肉厚部17は、肉薄部16に対し境界段部13aからY軸方向両側に平坦面(17a、17b)まで隆起している。
【0028】
先端部12は、湾曲部13の他端から先端部12の先端に向けて徐々に先細となるように略直線状に延びる部材である。先端部12の肉厚部17と肉薄部16の境界部は、湾曲部13の境界段部13aから連続して先端に向けて延びる境界段部12aを有している。先端部12と基端部11は所定の間隙を有し、吊下げ用フック10のふところ部30に吊荷等の吊りかけ部を挿入できるようになっている。
【0029】
基端部11の肉厚部17は、一端を連結部32に接続され、この接続された一端から他端に向けて斜め下方へ略直線状に延びている。基端部11の外縁側に形成された肉薄部16と、基端部11の肉厚部17との境界部には境界段部11aが形成され、肉薄部16の外縁には直線状に延びる外縁部10cと第1外周面としての外縁面11bが形成されている。外縁面11bは、湾曲部13の外縁面13bから連続して斜め上方に直線状に延びており、外縁面11cは、外縁面13bから連結部32の下端側(基端部11の一端側)に向けて直線状に延びている。
【0030】
図2に示すように、吊下げ用フック10を吊下げた状態での、水平面であるX軸と外縁面11bとのなす角度θaより、X軸と外縁面11bとのなす角度θbが大きく、X軸と境界段部11aとのなす角度θcは、θa<θc<θbの関係となっている。
【0031】
このため、基端部11の肉薄部16は、他の肉薄部より広い面積を有し、作業者が指先でつまんで把持し易い形状となっている。
【0032】
吊下げ用フック10を吊下げた状態での、水平面であるX軸と直線状に延びる外縁面11bとのなす角度θbは、75°±5°に設定され、好ましくは、72°~78°の範囲に設定される。
【0033】
先端部12の肉厚部17は、湾曲部13の肉厚部から基端部11の肉厚部に略平行に対向して斜め上方へ直線状に形成されている。先端部12は、湾曲部13の外縁面13bから斜め上方へ直線状に形成され、吊下げた状態で仮想円31の中心の下方から上方に向けて位置する直線状に延びる第2外周面としての外縁面12bと、を有する。先端部12の外縁面12bと基端部11の外縁面11bは互いに平行に形成されている。
【0034】
肉厚部17の平坦面(17a、17b)は、Y軸方向への曲がり(フックのねじれ)を確認することができるように、基端部11から湾曲部13にかけて平坦となっている。
【0035】
上述の基端部の外縁面11bと先端部の外縁面12bとの関係を定義付けすると、基端部11の直線状に延びる外縁面11bは、仮想円31の中心より上方に位置し、先端部12の直線状に延びる外縁面12bは、仮想円31の中心の下方から上方に向けて位置し、基端部11の直線状に延びる外縁面11bと先端部12の直線状に延びる外縁面12bとが、互いに平行である。したがって、第1変形検出部としての基端部11の直線状に延びる第1外縁面(直線状に延びる外縁面11b)と先端部12の直線状に延びる第2外縁面(直線状に延びる外縁面12b)とは、吊下げ用フック開き角度の変化(変形)を検出するために用いられる。
【0036】
基端部11と先端部12が外縁部10cの外縁に、互いに平行に設けられている直線部分を有することにより、吊下げ用フックの開きの有無を目視で確認することも可能で、直線上の2点で、基端部11と先端部12の距離差を確認するだけで、専用治具や測定器を用いずとも、吊下げ用フック10の変形による開き度合を調べることができる。
【0037】
また、後述する検査治具90を用いて変形による開き度合いを調べる場合には、この平行な部分を有することで吊下げ用フック10を一定の姿勢で確実に検査治具90の溝部92に落とし込んで挿入してやることができるので、この形状は検査治具90による検査に最適化したものであるともいえる。
【0038】
吊下げ用フック10は、基端部11から湾曲部13の一端から他端を介して先端部12に至るまで、吊下げ用フック10の内径側(ふところ部30側)である内縁側へ延設されY軸(紙面奥行き)方向に肉厚の肉厚部17と、肉厚部17より外径側である外縁側に延設されるY軸(紙面奥行き)方向に肉薄の肉薄部16と、肉厚部17と肉薄部16とを接続する境界部18と、を有する。
【0039】
境界部18は、さらに肉厚部17と肉薄部16との境界部18の一部であって基端部11と先端部12とにそれぞれ設けられる直線状の一対の境界直線部18cを有する。第2変形検出部としての一対の境界直線部18cは目視で吊下げ用フック10の開きを検出可能である。境界直線部18cは、互いに平行に設けられてもよいし、湾曲部13から離間するほど互いに近づくように傾斜して形成され、吊下げ用フック10に過荷重が作用したときに平行に近づくように設けられてもよい。
【0040】
上述の、基端部11の斜め下方へ直線状に形成される境界段部11aと、先端部12の斜め上方へ直線状に形成される境界段部12aとは、境界部18であって肉厚部17から肉薄部16へと移行する傾斜面18aのことを示す。
【0041】
肉厚部17及び肉薄部16は、図2の紙面手前側の面17a、16aと、面17a、16aに対応する紙面奥側の面17b、16bと、を有する(図3)。肉厚部17の面17a、17b及び肉薄部16の面17b、16bは、ともにX-Z平面に平行であるとともに、互いの面は平行である。肉厚部17の先端部12は、先端部の一端から他端(先端)に向けてY軸方向も徐々に先細の形状となっている。また、肉厚部17及び肉薄部16は、後述する基端側凹部14及び先端側凹部15の底面と垂直に成形されている。
【0042】
また、吊下げ用フック10は、基端部11の延設方向に垂直な基端部11の径方向の幅Bが、吊下げ用フック10の内径側の内縁面10aによって画成される略円形の仮想円31の直径Cよりも、小さい寸法となるように成形されている。
【0043】
肉薄部16には、基端部11に形成され吊下げ用フック10の内径側に向けて窪んだ基端側凹部14と、先端部12に形成され吊下げ用フック10の内径側に向けて窪んだ先端側凹部15と、が形成される。また、基端側凹部14および先端側凹部15は、基端側凹部14と先端側凹部15とを結ぶ直線が、後述する狭小部24にフックラッチ21が位置するときに、そのフックラッチ21に干渉しない位置に設けられる。また、基端側凹部14と先端側凹部15とを結ぶ直線は、直線状に延びる外縁面11b、12bと直交する位置に形成されている。
【0044】
基端側凹部14は、基端部11の湾曲部13の一端側外縁面13bから斜め上方へ直線状に形成される外縁面11bであって、荷重が作用した際に吊下げ用フック10に作用する曲げ力が最大となる位置19より連結部32側である湾曲部13とは反対側に形成される。先端側凹部15は、先端部12の湾曲部13の他端側外縁面13bから斜め上方へ直線状に形成される外縁面12bに形成される。吊下げ用フック10に作用する曲げ力が最大となる位置19は、X軸が基端部11を横切る位置に配置される。
【0045】
基端側凹部14及び先端側凹部15の底面部14a、15aは、基端部11と先端部12のそれぞれの直線状に形成された外縁面11b、12bに互いに略平行に形成される。
【0046】
ここで、図3を参照しながら、基端側凹部14及び先端側凹部15についてさらに説明する。図3は、図2の吊下げ用フックをA-A線で切断して矢印方向から見た状態を示す断面図である。
【0047】
基端側凹部14は、基端側凹部14の窪みの底面側である底面部14aを有し、当該底面部14aは平面状に形成される。同様に、先端側凹部15は、基端側凹部14の窪みの底面側である底面部15aを有し、当該底面部15aは平面状に形成される。
【0048】
基端側凹部14及び先端側凹部15は、吊下げ用フック10の基端部11と先端部12との開きである開口距離が、所定の基準寸法値内に収まっているか否かをチェックするために設けられる標点である。基端側凹部14と先端側凹部15の、外縁面11b、12bが直線状に延びる方向に沿う方向の幅は、ノギスの外側用ジョウの肉厚よりも僅かに広く設定される。そのため、基端側凹部14と先端側凹部15との距離は、例えば、ノギスによって一方のジョウを基端側凹部14に当てた状態で、他方のジョウを先端側凹部15に当て、基端側凹部14及び先端側凹部15を挟むようにして測定すれば、常に同じ箇所で簡単に開口距離を測定することができる。また、ノギス等の測定器を使用せずに、交換基準のゲージを用いて開口距離が所定の基準寸法値以内に収まっているか否かを確認しても良い。
【0049】
基端側凹部14及び先端側凹部15は、底面部14a及び底面部15aがいずれも平面状に形成されるので、ノギスのジョウを当てる際に、すぐにノギスの向きを調整することができ、より簡易に開口距離を測定することができる。なお、基端側凹部14と先端側凹部15との距離が、所定値より大きい場合には、吊下げ用フック10に過負荷が作用したと推定できるので、当該吊下げ用フック10は使用が中止される。
【0050】
肉厚部17の平坦面17a、17bはX-Z平面に平行に形成され、底面部14a、15aと直交しているので、例えば、ゲージ等を用いた寸法確認において、基端側凹部14及び先端側凹部15にゲージ等を合わせた際に、肉厚部17の平面にゲージ等を押し当てることにより、ゲージ等が斜めとなることを防止でき、簡単にゲージ等の合わせを行うことができる。
【0051】
肉薄部16は、上述のように、Y軸(紙面奥行き)方向に肉薄の肉薄部16であり、図3に示すように、基端部11の肉薄部16は、先端部12の肉薄部16より、径方向にも紙面縦方向にもともに大きい。このように、図2に示すように、肉薄部16は、先端部12、湾曲部13、基端部11の順に大きくなるように連続して延設され、基端部11の外縁面11bと外縁面11cとが交わる部分付近の肉薄部16が最大となる。すなわち、基端部11の肉薄部16は、作業者が把持可能な平板状に他の部分よりも外径側に延出している。これにより、作業者が肉薄部16をつまむような把持動作によって吊下げ用フック10を容易に把持することができ、吊下げ用フック10を把持して行う作業の作業性を向上させることができる。
【0052】
前述のように、吊下げ用フック10に作用する曲げ力は、基端部11の曲げ力が最大となる位置19付近で最大となるので、吊下げ用フック10の断面における基端部11の径方向の寸法を大きくすることで、吊下げ用フック10の強度を向上させることができる。
【0053】
基端部11の肉薄部16は面積が最大であるので、当該肉薄部16には耐荷重などの吊下げ用フック10に関する情報としての数字や文字がエンボス加工によって示されている。図2では、例として、開口距離のMAX値を示す「MAX95」と記されている。なお、数字や文字はエンボス加工で印字されなくてもよく、周囲より凸形状または凹形状に立体的に記されていたり、刻印、ペイントなどの方法によって印字されたりしていてもよい。
【0054】
図2に示すように、吊下げ用フック10は、さらに、吊下げ用フック10に吊下げている吊荷が吊下げ用フック10から外れることを防止するためのフックラッチ21と、フックラッチ21の回動軸である支持軸22と、フックラッチ21を先端部12の内径側に常に付勢するねじりコイルばね23と、を有する。
【0055】
支持軸22は、基端部11の先端部12に対向する位置に設けられる。ねじりコイルばね23は、支持軸22に同軸状に装着され、フックラッチ21が図2における反時計回りに回動するように常にフックラッチ21に付勢力を付与する。これにより、先端部12においてフックラッチ21は当接する部位に向けて常に付勢され、第3変形検出部としての当該部位は、目視で吊下げ用フック10の変形を検出可能である。特に、フックラッチ21の先端側に、鋭利な部分等が存在していて、フックラッチ21が当接する狭小部24に円弧状の傷が形成される場合には、その円弧状の傷の半径の変化を見ることで、目視で吊下げ用フック10の変形具合を検出可能となる。 吊下げ用フック10の内径側には、肉厚部17の軸方向の幅が小さい狭小部24が形成される。フックラッチ21の先端は二股に分かれて形成されており、フックラッチ21の先端が回動して先端部12に当接するとき、二股部分が狭小部24の両側に嵌り込む。これにより、フックラッチ21に支持軸方向の力が作用しても、フックラッチ21が先端部12の軸方向にずれて、吊荷が吊下げ用フック10から外れることを防止することができる。
【0056】
吊荷を吊下げ用フック10に吊下げるときは、フックラッチ21をねじりコイルばね23の付勢力に抗して図2の時計回りに回動させ、フックラッチ21の先端と先端部12の狭小部24とが離間した状態で、吊荷のスリングなどを吊下げ用フック10内へと引っ掛ければよい。
【0057】
[第2実施形態]
第1実施形態では、吊下げ用フック10の基端部11と先端部12との開きである開口距離をノギスを用いて測定し、開口距離が所定の基準寸法値以内に収まっているか否かを点検しているが、それに代えて、本実施形態では専用の検査治具を用いて点検する。なお、第1実施形態では、図1および図2においてX軸およびZ軸を用いて吊下げ用フック10について説明したが、本実施形態では軸については第1実施形態とは独立して、図5から図7に亘って新たなX軸、Y軸、Z軸を用いて説明する。また、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
(検査治具90:構造)
図5は、本実施形態に係る吊下げ用フック10の開きを検査する検査治具90を示す斜視図である。検査治具90は、本体部91と、溝部92とを備える。
【0059】
本体部91は、4つの壁部91aを略矩形状に組み合わせた一体的な構造を有する。4つの壁部91aは、内部に挿入される吊下げ用フック10を収容する収容部91bを形成する。また、本体部91の1つの壁部91a(Y軸の矢印方向の正面側の壁部91a)は収容部91bに連通する開口部91cを有している。このため、開口部91cに面する壁部91aは、X軸方向の両端部にそれぞれ配置されている。この開口部91cは、吊下げ用フック10を検査治具90に挿入した際に、吊下げ用フック10を検査治具90から離脱させるために用いられる。
【0060】
また、XY平面にほぼ垂直に切断された本体部91の上面91dおよび下面91eには、吊下げ用フック10を挿入するための開口である挿入部91fが形成され、その挿入部91fが収容部91bと連通している。なお、検査治具90は、図5に示す向きで使用される必要はなく、どの向きで使用されても検査治具90として機能する。また、検査治具90は上面91d側からでも下面91e側からでも挿入可能である。
【0061】
溝部92は収容部91bの一部であり、収容部91bのX軸方向の両端側に設けられている。溝部92は、4つの壁部91aで囲まれた部分であるので、吊下げ用フック10がZ軸方向以外へ移動することを制止する。溝部92の形状は、吊下げ用フック10の肉薄部に沿うように形成され(図6のA)ている。一対の溝部92を結ぶX方向の間隔(すなわち収容部91bの幅)は吊下げ用フック10の外縁面11b、12bの間隔より僅かに大きく設けられている。これにより、吊下げ用フック10は溝部92に対して摺動しながら直線状に移動する。
【0062】
溝部92は、本体部91のZ軸方向に沿って上面91dから下面91eまで同一の幅となるように形成されている。これにより、吊下げ用フック10が検査治具90に挿入された場合、吊下げ用フック10は上面91dから下面91eまで、若しくはその逆向きにZ軸方向にスライド可能である。なお、溝部92おいては、Z軸方向に沿って一部、例えば下面91e付近だけがXY平面を形成するように内側に延出させて溝部92(または収容部91b)の下面91e付近を塞ぐような形状であってもよい。これにより、延出させた部分がストッパとなり、検査治具90に上面91dから挿入した吊下げ用フック10は下面91e付近でスライド不可となるので、吊下げ用フック10が挿入側とは反対側から落下することを防止することができる。
【0063】
一対の溝部92のうち、X軸方向の端部に内面92aがそれぞれ設けられ、これらの内面92aは、互いに平行となるように形成される。内面92a間の距離は吊下げ用フック10の直線状に延びる外縁面11b、12b(図2)が摺動しながら収容される程度に設定される。
【0064】
(検査治具90:検査)
検査治具90を用いて吊下げ用フック10の開きを検査する場合について説明する。図6は、本実施形態に係る吊下げ用フック10の開き度合を検査する検査治具90に吊下げ用フック10を挿入する様子を説明する説明図である。Aは吊下げ用フック10を検査治具90に挿入できる状態を示し、Bは吊下げ用フック10が検査治具90に挿入できない状態を示す。また、図6のAのうち、上の図は下の図をH-H線で切断して矢印方向から見た状態を示す一部断面図であり、下の図は上の図をG-G線で切断して矢印方向から見た状態を示す一部断面図である。
【0065】
吊下げ用フック10は、塑性変形するほどの過負荷が作用すると先端部12と基端部11との間の開口距離が開く。この開口距離が所定の限界開口距離を超えると、安全のため当該フックの使用は中止される。吊下げ用フック10では、開口距離が限界開口距離にあるか否かの上記検査が定期的に行われるため、検査は精度を保ちながらできるだけ迅速かつ簡易に行えることが望ましい。
【0066】
検査治具90のX軸方向における一対の溝部92の内面92a間の最短距離Lmaxと、吊下げ用フック10のX軸方向の大きさであって吊下げ用フック10の直線状の外縁面11b、12b間の最短距離Lとは、同一または略同一となるように検査治具90の寸法が設定されている(図6のB)。
【0067】
具体的には、検査治具90のX軸方向の溝の内面92a間の最短距離Lmaxは、吊下げ用フック10の直線状の外縁面11b、12bが検査治具90に挿入されたとき、検査治具90の内面92aに摺動しながら収容される程度の値に設定される。このため、吊下げ用フック10は、開口距離が限界開口距離以下であるときのみ検査治具90に挿入でき、吊下げ用フック10の変形によって開口距離が限界開口距離を超えたとき検査治具90に挿入できなくなる。
【0068】
また、吊下げ用フック10の直線状に延びる外縁面11b、12bは互いに平行であり、かつ検査治具90の一対の溝部92のX軸方向両端の内面92aは互いに平行であるため、開口距離が限界開口距離以下であっても、Y軸を中心とした吊下げ用フック10の外縁面11b及び12bと検査治具90の内面92aとの相対的な傾きが一致しなければ吊下げ用フック10は検査治具90に挿入することができない。
【0069】
例えば、図6のBでは、吊下げ用フック10が図6のAよりY軸方向を中心として反時計回りに少しだけずれている。この状態では、開口距離が限界開口距離以内で、検査治具90のX軸方向の溝の内面92a間の最短距離Lmaxと吊下げ用フック10の直線状の外縁面11b、12b間の最短距離Lとが略同一であっても、吊下げ用フック10が検査治具90の挿入部91fにおいて平行部分が直線状に整列しないため、吊下げ用フック10を検査治具90に挿入することはできない。
【0070】
この場合、吊下げ用フック10をY軸方向を中心として時計回りに傾けて検査治具90の溝の内面92aと吊下げ用フック10の直線状の外縁面11b、12bとが直線状に整列して平行となったとき、吊下げ用フック10が検査治具90に挿入される(図6のA)。
【0071】
一方、吊下げ用フック10の変形によって開口距離が限界開口距離を超えていた場合には、吊下げ用フック10をY軸方向を中心として時計回りに傾けても、吊下げ用フック10の外縁面11b、12b間の最短距離Lが検査治具90の溝の内面92aの最短距離Lmaxより長いので、吊下げ用フック10をY軸方向を中心としてあらゆる角度に傾けたとしても、吊下げ用フック10を検査治具90に挿入することはできない。
【0072】
このように、吊下げ用フック10の外縁面11b、12bと検査治具90の一対の溝部92の内面92aとが直線状に整列して平行であって、かつ吊下げ用フック10の直線状の外縁面11b、12b間の最短距離Lが検査治具90の一対の溝部92の内面92a間の最短距離Lmax以下であるときのみ、吊下げ用フック10を検査治具90に挿入できる。
【0073】
この状態のとき、吊下げ用フック10の角度が、基端部11の直線状に延びる外縁面11bと先端部12の直線状に延びる外縁面12bとがともに検査治具90の内面92aと平行に摺接する角度になる。
【0074】
検査治具90のY軸方向における内部平面93の内面93aと吊下げ用フック10が挿入される空間を挟んで対向する二つの内面93bおよび93cは互いに平行であり、吊下げ用フック10の肉厚部17の平坦面(17a、17b)の面とが略平行となるよう形成されている。
【0075】
検査治具90のY軸方向における内部平面93の内面93aと対向する内面93bおよび93cの最短距離L2は、吊下げ用フック10の肉厚部17の厚さと同一または略同一となるように検査治具90の寸法が設定されている。
【0076】
また、検査治具90の内面92aのY軸方向における内部平面94の内面94aと吊下げ用フック10が挿入される空間を挟んで対向する面94bの面とは平行に形成されている。またその最短距離L3は検査治具90の内部平面93の最短距離L2より小さく設定されており、吊下げ用フック10のヒレ部にあたる肉薄部16の厚さと略同一となるように寸法が設定されている。
【0077】
これにより、変形が生じていない吊下げ用フック10を検査治具90に挿入する際は、検査治具90のY軸方向における内部平面93の内面93aとそれに対向する面93b及び93c、または溝部92のY軸方向における内面94aとそれに対向する面94bのいずれか一対の面に摺接するように、吊下げ用フック10の肉厚部17の面が挿入される。
【0078】
一方、吊下げ用フック10の先端部12がY軸方向に変形した場合、検査治具90のY軸方向における内部平面93の内面93a、93b及び93cと吊下げ用フック10の肉厚部17の面とが平行とならず、かつ吊下げ用フック10のY軸方向の寸法は、肉厚部17の厚さより長くなるため、検査治具90のY軸方向の内面の最短距離L2よりも長くなるため、吊下げ用フック10を検査治具90に挿入することができない。
【0079】
これにより、吊下げ用フック10の外縁面11b、12b間の最短距離Lが基準値を超えて開くように変形して吊下げ用フック10の使用限界となっているのにも拘わらず、誤って未だ使用可能な良品であると認識してしまうことを防止できる。よって、簡易な操作で開口の開きを迅速かつ精度よく検査することができる。
【0080】
また、吊下げ用フック10がY軸方向に捩じれるように変形していた場合においても、誤って未だ使用可能な良品であると認識してしまうことを防止できる。
【0081】
次に、比較例において吊下げ用フック80を検査治具100に挿入する場合について、図7に基づいて説明する。
【0082】
比較例では、検査治具100は本実施形態と類似する構造を有する。異なる点は、溝部102の形状であり、基端部111および先端部112のXY平面で切断した断面形状が大きく異なっていても、吊下げ用フック80を挿入可能な程度に余裕をもって寸法が設定される。よって、図7のAの下図のように、吊下げ用フック80の傾きによって変化する吊下げ用フック80の断面形状によってはガタツキが生じる場合がある。
【0083】
図7のAは吊下げ用フック80の標点113間の距離がPであり、Bは吊下げ用フック80の標点113間の距離がP+αであることを示している。図7のAのうち、上の図は下の図をF-F線で切断して矢印方向から見た状態を示す一部断面図であり、下の図は上の図をE-E線で切断して矢印方向から見た状態を示す一部断面図である。
【0084】
比較例では、吊下げ用フック80の基端部111と先端部112の側面にエンボス加工によって標点113がそれぞれ設けられている。このような吊下げ用フック80では、標点113間の測定距離が所定範囲を超えている場合、開口が開きすぎていると判定される。標点113間の距離はノギス等の測定器具を用いて測定される。
【0085】
比較例における吊下げ用フック80の構造では、図7のAに示すように、基端部111と先端部112との標点113間距離Pが基準寸法値以下であるとき、吊下げ用フック80を検査治具100に挿入することができる。
【0086】
一方で、基端部111と先端部112との標点113間距離P+αが基準寸法値より長いとき、吊下げ用フック80の傾きが図7のAに示す状態では検査治具100に挿入することができないが、図7のBに示すように、吊下げ用フック80をY軸を中心として反時計回りに傾ければ検査治具100に挿入することができてしまう。
【0087】
このように、吊下げ用フック80の基端部111と先端部112との開口距離を検査するときに、吊下げ用フック80のY軸を中心とした方向の傾き次第で、標点113間距離P+αが基準寸法値を超えていても良品として判断できてしまう可能性がある。
【0088】
これに対して、本実施形態では、吊下げ用フック10が平行な直線状の外縁面11b、12bを有するとともに、検査治具90の溝が平行な内面92aを有することにより、吊下げ用フック10の基端部11と先端部12との開口距離が少しでも限界開口距離を超えていると、吊下げ用フック10が検査治具90に挿入できなくなる。よって、良品判定の精度を向上させることができる。
【0089】
[変形例]
上記第1実施形態では、基端側凹部14及び先端側凹部15は、基端部11と先端部12のそれぞれの直線状な外縁面11b、12bに互いに略平行に形成されているが、吊下げ用フック10の開口距離を、ノギス等によって外側から挟み込むようにして測定することができる限りにおいて、必ずしも平行ではなくてもよい。
【0090】
また、基端側凹部14及び先端側凹部15の形状は、略U字形状や、三角形状等でもよい。図4は、第1実施形態に係る吊下げ用フック10における基端側凹部14及び先端側凹部15の変形例を示す図である。図4のA及びBは、本実施形態の吊下げ用フック10と互いに凹部の形状が異なるのみであり、その他の形状は同一である。図4のCは、基端部および先端部の外形に直線形状の部分を有しない吊下げ用フック60に凹部を設けた場合の形状例である。
【0091】
このような吊下げ用フック40、50、60では、基端側凹部44、54、64は吊下げ用フック40、50、60の内径側の略円中心を通るX軸上の基端部41、51、61より上方に位置した部分に配設され、先端側凹部45、55、65はX軸上の先端部42、52、62付近に配設されるようにしてもよい。
【0092】
各基端側凹部44、54、64及び先端側凹部45、55、65の形状は、図4のAでは、基端側凹部44及び先端側凹部45の形状は、図示する向きに見たときに、略三角形状に切り欠かれている。図4のBでは、基端側凹部54及び先端側凹部55の形状は、図示する向きに見たときに、底面が曲面の略U字型に切り欠かれている。図4のCでは、基端側凹部64及び先端側凹部65の形状は、図示する向きに見たときに、湾曲部方向に向かうほど吊下げ用フック60の径方向の深さが浅くなる形状に切り欠かれている。
【0093】
また、上記実施形態では、基端部11の肉薄部16に吊下げ用フック10に関する情報としての数字を示しているが、湾曲部13や先端部12の肉薄部16に示してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、荷を吊るための吊下げ用フック10を例に挙げて説明したが、上フック3や、チェーンスリング用のフック等に本実施形態の吊下げ用フック10を用いてもよい。
【0095】
[実施形態の補足説明]
上述した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以上の実施の形態で示される数値、構成要素の配置位置および接続形態の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0097】
[付記]
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0098】
(1)平行(肉薄限定なし)
吊下げた状態で吊下げ用の連結部32より下方に延設される基端部11と、
基端部11の下端から延設され、下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部13と、
湾曲部13の他端に接続され、上方に延設される先端部12と、
基端部11と湾曲部13と先端部12とで囲まれた内側部30と、
を備え、
基端部11と湾曲部13と先端部12は、内側部30と接する内縁面10aと、内縁面10aとは反対側の外縁部10cと、を有し、
基端部11の外縁部10cは、延設方向に直線状に延びて、吊下げた状態で湾曲部13の湾曲中心より上方に位置する外縁面11bを有し、
先端部12の外縁部10cは、延設方向に直線状に延びて、吊下げた状態で湾曲部13の湾曲中心の下方から上方に向けて位置する外縁面12bを有し、
外縁面11bと外縁面12bとは、互いに外向きで平行な位置関係にある。
【0099】
これにより、基端部11の直線状の外縁面11bと先端部12の直線状の外縁面12bとが平行になるため、作業者が吊下げ用フック10を把持して握る動作がやりやすくなり、作業性を向上させることができる。
【0100】
また、基端部11の直線状の外縁面11bと先端部12の直線状の外縁面12bとが平行であるため、作業者が吊下げ用フック10を手で握った状態で指をスライドさせたとき、吊下げ用フック10が変形して寸法が変化したことを検知しやすい。
【0101】
また、万が一、吊下げ用フック10が開いて開口距離が大きくなった場合、平行でなくなるため、もともと平行でないものが変化する場合と比べて、変化に気づきやすくなる。よって、目視で開口距離の異常を発見しやすくなり、吊下げ用フック10の安全性を向上させることができる。
【0102】
(2)検査治具向けフック
吊下げた状態で吊下げ用の連結部32より下方に延設される基端部11と、
基端部11の下端から延設され、下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部13と、
湾曲部13の他端に接続され、上方に延設される先端部12と、
基端部11と湾曲部13と先端部12とで囲まれた内側部30と、
を備え、
基端部11と湾曲部13と先端部12は、内側部30と接する内縁面10aと、内縁面10aとは反対側の外縁部10cと、を有し、
基端部11の外縁部10cと先端部12の外縁部10cは直線状に延びる外縁面11b、12bを有し、
基端部11の外縁部10cである外縁面11bと先端部12の外縁部10cである外縁面12bとは、互いに平行であり、
吊下げ用フック10の開きを検査する検査治具90は、湾曲部13側から挿入する挿入部91fの対向する内面92aが平行であり、
吊下げ用フック10の開き角度が、基端部11の直線状に延びる外縁面11bと先端部12の直線状に延びる外縁面12bとがともに内面92aと平行に摺接する角度であるときにのみ吊下げ用フック10を挿入部91fに挿入できる。
【0103】
これにより、内面92aが平行である検査治具90を用いて、基端部11および先端部12に互いに平行な直線状の外縁面11b、12bを有する吊下げ用フック10の開きを検査することができるので、吊下げ用フック10が、基端部11の直線状の外縁面11bと先端部12の直線状の外縁面12bとがともに内面92aと平行に摺接する角度であるときのみ挿入部91fに挿入される。
【0104】
よって、吊下げ用フック10の開口距離が限界開口距離を超えている場合に、吊下げ用フック10の適正角度以外の角度で吊下げ用フック10が検査治具90に挿入され、吊下げ用フック10の使用限界となっているのにも拘らず使用可能と判定されてしまうことを防止することができる。よって、簡易でありながら精度よく吊下げ用フック10の開きの異常を判定することができる。
【0105】
また、ノギス等の測定器具を用いなくても、吊下げ用フック10の開口距離が限界開口距離を超えているか否かを判定することができる。さらに、吊下げ用フック10の具体的な開口距離を把握しなくても、開口距離が限界開口距離以下であるか否かを検査することができるので、作業者の作業を簡素化することができる。
【0106】
(3)凹部
また、外縁面11bに形成される基端側凹部14と、外縁面12bに形成される先端側凹部15と、を備えることができる。
【0107】
これにより、ノギスを用いて基端側凹部14と先端側凹部15との間の距離を測定する際に、吊下げ用フック10の外側から挟み込むようにして測定することができるので、ノギスがずれたりすることがなく、簡易な方法で安定して精度よく吊下げ用フック10の開口距離を測定することができる。
【0108】
また、基端側凹部14及び先端側凹部15が吊下げ用フック10の外側に形成されることで、測定箇所を一目で確認することができるので、測定作業に要する時間を短縮することができる。
【0109】
また、基端側凹部14及び先端側凹部15が吊下げ用フック10の外側に形成されることで、外側と内側との間の面上に形成される場合と比べて、デザイン上違和感なく溶け込むので意匠性を向上させることができる。
【0110】
また、基端側凹部14と先端側凹部15は、いずれも直線状の外縁面11b、12bに形成されるので、湾曲した外縁面に形成される場合と比べて、ノギスを基端側凹部14および先端側凹部15にセットしやすいとともに、ノギスが基端側凹部14および先端側凹部15から浮き出ても遠ざかる方向に滑っていくことがなく、すぐに基端側凹部14および先端側凹部15の内部に戻すことができる。
【0111】
(4)曲げ力
また、基端側凹部14は、吊下げ用フック10に作用する曲げ力が最大となる位置19より連結部32側に形成されることができる。
【0112】
これにより、曲げ力によって比較的変形しにくい位置に基端側凹部14が配置されるので、曲げ力によって比較的変形しやすい先端側凹部15との間で、吊下げ用フック10の開口距離を測定することができ、より精度よく吊下げ用フック10の開口距離を測定することができる。
【0113】
(5)肉薄部に数字
また、内縁面10aに形成される肉厚の肉厚部17と、外縁部10cに形成される肉厚部17より薄い肉薄部16とを有し、基端側凹部14および先端側凹部15は、肉薄部16に形成され、肉薄部16には、吊下げ用フック10に関する情報を記すことができる。
【0114】
これにより、基端部11の肉薄部16の面積が最大であるので、吊下げ用フック10に関する情報をより大きく表示することができ、視認性を向上させることができる。
【0115】
また、基端側凹部14の近傍に情報を記すことができるので、記された情報が吊下げ用フック10の開口距離に関するものであれば、ノギスで吊下げ用フック10の開口距離を測定する際に、基準値が基端側凹部14の近くに表示されることになるので、作業性を向上させることができる。
【0116】
また、基端側凹部14および先端側凹部15、肉薄部16に形成されるので、吊下げ用フック10の厚み方向における基端側凹部14および先端側凹部15の寸法を小さくすることができる。これにより、ノギスと基端側凹部14および先端側凹部15の底面との平行合わせが容易になるので、ノギスによる測定作業を簡略化することができる。
【0117】
(6)変形検出1、2
また、内縁面10aに形成される肉厚の肉厚部17と、外縁部10cに形成される肉厚部17より薄い肉薄部16とを有し、肉厚部17と肉薄部16との境界部18の一部であって基端部11と先端部12とにそれぞれ設けられる直線状の境界直線部18cを備え、外縁面11bと外縁面12bとは、吊下げ用フック10の変形を検出する第1変形検出部であり、境界直線部18cは、目視で吊下げ用フック10の変形を検出する第2変形検出部であることができる。
【0118】
これにより、目視し易い境界直線部18cが第2変形検出部とされていることで、目視で吊下げ用フック10の変形に気付くことが容易となる。したがって、第2変形検出部を目視した際に吊下げ用フック10の変形が疑われる場合には、第1変形検出部において測定を行うことで、一層吊下げ用フック10の破損を防止することができ、安全性を高めることができる。
【0119】
さらに、検査治具90は、吊下げ用フック10の挿入方向以外への移動を制止する溝部92を有しており、肉厚部17は溝部92には侵入できない形状となっている。このため、吊下げ用フック10の開口距離が限界開口距離を超えている場合には、吊下げ用フック10を検査治具90に挿入する際、吊下げ用フック10の肉厚部17と肉薄部16の基端側の境界直線部18cで、検査治具90の溝部92(内部平面93と内部平面94の境界部)に引っ掛かるため挿入することができない。このため、境界直線部18cは検査治具90を用いて検査する際においても、第2変形検出部として機能し、検査の精度を向上させることができるため、安全性を高めることができる。
【0120】
(7)境界直線部1
また、境界直線部18cは、互いに平行にすることができる。
【0121】
これにより、吊下げ用フック10が開いて開口距離が大きくなった場合、境界直線部18cが平行でなくなるため、もともと平行でないものが変化する場合と比べて、変化に気づきやすくなる。よって、目視で開口距離の異常を発見しやすくなり、吊下げ用フック10の安全性を向上させることができる。
【0122】
(8)境界直線部2
また、境界直線部18cは、湾曲部13から離間するほど互いに近づくように傾斜して形成され、吊下げ用フック10の変形時に平行に近づくことができる。
【0123】
これにより、吊下げ用フック10が開いて開口距離が大きくなったとき、境界直線部18cが、目視で確認しやすい平行形状になるので、吊下げ用フック10の変形をより早期に発見することができる。
【0124】
(9)変形検出3
また、基端部11に支持軸22が設けられ回動することで先端部12に当接するフックラッチ21を備え、フックラッチ21が当接する先端部12の部位は、目視で吊下げ用フック10の変形を検出する第3変形検出部として機能することができる。
【0125】
これにより、フックラッチ21が当接する先端部12の部位は、フックラッチ21が当接および離間を繰り返すことで傷や塗装剥がれ等が生じ、吊下げ用フック10が開いて開口距離が大きくなった場合、当該傷などの位置が変化する。したがって、目視で当該傷などの位置を見るだけで吊下げ用フック10の変形を確認することができるので、吊下げ用フック10の変形をより早期に発見することができる。
【0126】
(10)平坦部分
また、内縁面10aに形成される肉厚の肉厚部17と、外縁面11bに形成される肉厚部17より薄い肉薄部16とを有し、外縁面11bから上方にかけて、肉薄部16が他の部分よりも幅広で平板状に延出しており、肉薄部16には、吊下げ用フック10に関する情報を周囲より凸形状または凹形状に立体的に記すことができる。
【0127】
これにより、吊下げ用フック10の基端部11の直線状の外縁面11bから上方にかけての肉薄部16は、他の部分より幅広で平板状に延出しているため、作業者が例えば親指と人差し指でつまむような把持動作によって吊下げ用フック10を容易に把持することができる。さらに、当該肉薄部16には吊下げ用フック10に関する情報が凸形状または凹形状に記されているので、作業者が当該肉薄部16を把持した際に、指が凸形状または凹形状に引っ掛かることで滑り止めとして機能し、吊下げ用フック10が指から滑ることを防止することができる。よって、吊下げ用フック10を把持して行う作業の作業性を向上させることができる。
【0128】
(11)角度θb
また、吊下げた状態での、水平面と外縁面11bとのなす角度θbは、75°±5°に設定することができる。
【0129】
これにより、吊下げ用フック10の開口部の寸法を適切な値に設定することができる。すなわち、上記角度を小さくすると、開口部の寸法は大きくなるが、吊り具の引掛り深さが浅くなるため、吊り具に引っ掛けたワイヤロープなどが外れやすくなる。また、開口部のX-X軸との角度を本実施形態の角度で固定した状態で、先端部12の外縁面12bの上記角度を小さくすると、先端部12の内縁面10aと外縁面12bの間の寸法が大きくなり、必要強度を確保するために必要な寸法以上の駄肉部ができるため、重量アップとなり、コストが上昇する。一方、上記角度を大きくすると、先端部12がより立つので開口部の寸法は小さくなるが、適切な開口部の寸法を確保するためには、吊下げ用フック10の鉛直方向の全長を長くする必要があり、吊下げ用フック10の重量が増加したりコストが上昇する。
【0130】
したがって、水平面と外縁面11bとのなす角度は、75°±5°に設定され、好ましくは、72°~78°の範囲に設定される。
【0131】
これにより、吊下げ用フック10に引っ掛けられたワイヤロープなどの外れを防止しながら、吊下げ用フック10の鉛直方向の寸法を抑制して重量の増加やコストの上昇を避けることができる。
【0132】
(12)凹部位置
また、基端部11に回動軸としての支持軸22が設けられ回動することで先端部12に当接するフックラッチ21を備え、フックラッチ21が先端部12の狭小部24に当接している状態では、基端側凹部14および先端側凹部15は、基端側凹部14と先端側凹部15とを結ぶ直線がフックラッチ21に干渉しない位置に設けることができる。
【0133】
これにより、ノギスや定規を用いて基端側凹部14と先端側凹部15との間の寸法を測定する際に、フックラッチが干渉しないので寸法測定作業をより行い易くなる。
【0134】
(13)凹部を有するフック
内径側へ延設される肉厚の肉厚部17と、肉厚部17より外径側に肉厚部17より薄く延設される肉薄部16と、を有する吊下げ用フック10であって、
吊下げ用の連結部32より下方に延設され、外縁面11bに基端側凹部14を有する基端部11と、
基端部11に対向し、外縁面12bに先端側凹部15を有する先端部12と、
を備える。
【0135】
これにより、ノギスを用いて基端側凹部14と先端側凹部15との間の距離を測定する際に、吊下げ用フック10の外側から挟み込むようにして測定することができるので、ノギスがずれたりすることがなく、簡易な方法で安定して精度よく吊下げ用フック10の開口距離を測定することができる。
【0136】
また、基端側凹部14及び先端側凹部15が吊下げ用フック10の外側に形成されることで、測定箇所を一目で確認することができるので、測定作業に要する時間を短縮することができる。
【0137】
また、基端側凹部14及び先端側凹部15が吊下げ用フック10の外側に形成されることで、外側と内側との間の面上に形成される場合と比べて、デザイン上違和感なく溶け込むので意匠性を向上させることができる。
【0138】
(14)検査治具
吊下げ用フック10の開きを検査する検査治具90であって、
内部に吊下げ用フック10を挿入して収容する収容部91bを備える本体部91と、
収容部91bの幅方向の両端側に設けられ、本体部91の内部に形成され挿入方向に直線状に延びて吊下げ用フック10の挿入方向以外への移動を制止する溝部92と、
を備え、
吊下げ用フック10を収容部91bに収容した場合の吊下げ用フック10の径方向に対向する一対の溝部92の内面92aは互いに平行であり、内面92a間の距離は吊下げ用フック10が摺動するように設定される。
【0139】
これにより、溝部92には、外縁面11b、12bの径方向両端に互いに対向する平行な面を有する吊下げ用フック10が挿入され、吊下げ用フック10の外縁面11b、12bが溝部92の内面92aに対して摺動する。よって、内面92a間の寸法を予め吊下げ用フック10の開口距離の限界開口距離に設定しておくことで、開口距離が限界開口距離を超える場合には、吊下げ用フック10は溝部92に挿入できないので、簡易に精度よく吊下げ用フック10の開きを鑑別することができる。
【0140】
また、溝部92の内面92aが互いに平行であるため、吊下げ用フック10の径方向両端の平行な外縁面11b、12bが溝部92の内面92aと平行になる特定の傾きでないと吊下げ用フック10を検査治具90に挿入できない。よって、開口距離が微小に長くなった場合でも、特定の傾きでないと吊下げ用フック10を検査治具90に挿入できないので、開口距離と同期して変化する吊下げ用フック10の径方向両端の平行な外縁面11b、12b間の距離Lが、基準値Lmaxより長くなっていないか否かを精度よく判定することができる。
【符号の説明】
【0141】
10 吊下げ用フック
10a 内縁面(内周部)
10c 外縁部(外周部)
11 基端部
11b 外縁面(第1外周面)
12 先端部
12b 外縁面(第2外周面)
13 湾曲部
14 基端側凹部
15 先端側凹部
16 肉薄部
17 肉厚部
18c 境界直線部
19 曲げ力が最大となる位置
21 フックラッチ
22 支持軸(回動軸)
30 内側部
32 連結部
90 検査治具
91 本体部
91b 収容部
91f 挿入部
92 溝部
92a 内面
【要約】
【課題】フックの開き度合を精度よく測定することが可能な吊下げ用フックを提供する。
【解決手段】
吊下げ用の連結部32より下方に延設される基端部11と、基端部11の下端を一端として他端に向けて円弧状に湾曲して形成される湾曲部13と、湾曲部13の他端に接続され、上方に延設される先端部12と、基端部11と湾曲部13と先端部12とで囲まれた内側部30と、を備え、基端部11と湾曲部13と先端部12は、内側部30と接する内周部10aと、内周部10aとは反対側の外周部10cと、を有し、基端部11の外周部10cは、延設方向に直線状に延びて、湾曲部13の湾曲中心より上方に位置する第1外周面11bを有し、先端部12の外周部10cは、延設方向に直線状に延びて、湾曲部13の湾曲中心の下方から上方に向けて位置する第2外周面12bを有し、第1外周面11bと第2外周面12bとは、互いに外向きで平行な位置関係にある。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7