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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/86 20140101AFI20250604BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20250604BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250604BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
E05B81/86
B60R16/033 C
H02J7/00 303C
H02J7/34 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021061624
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157421
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高田 祐輔
【審査官】桐野 将伍
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-189238(JP,A)
【文献】特開平05-321797(JP,A)
【文献】特開2018-182935(JP,A)
【文献】特開平11-002051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0011096(US,A1)
【文献】国際公開第2014/156016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 81/00-81/90
B60R 16/033
H02J 7/00,7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた電気電子機器と、
前記電気電子機器を制御する制御部と、
前記制御部及び前記電気電子機器に給電する主電源部と、
車両故障時に前記主電源部に代わって給電を行う予備電源部と、
前記予備電源部に給電を行う補助電源部と、
前記予備電源部に設けられたコンデンサで構成されたキャパシタユニットと、
前記補助電源部に設けられた二次電池と、
前記予備電源部の電圧値を検出する診断部とを有し、
前記制御部は、前記診断部が前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下となったと判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行う、車両用電源装置。
【請求項2】
前記電気電子機器は、車両ドアを施解錠駆動するドアラッチ装置のアクチュエータである、請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記電気電子機器は、車両ドアに設けられ、ユーザが所有する携帯機器と通信を行うための通信機器である、請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記電気電子機器は、車両ドアに設けられ、ユーザ操作を検出するハンドルセンサである、請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記車両は複数の車両ドアを有し、前記予備電源部は各車両ドアに設けられ、
前記補助電源部は、所定の車両ドアに少なくとも一つ設けられた、請求項1乃至請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記診断部の判定に従って、電圧値が低下している前記予備電源部に前記二次電池による充電を開始する、請求項5記載の車両用電源装置。
【請求項7】
アクチュエータ部により施解錠駆動するドアラッチ装置と、
前記アクチュエータ部の駆動を制御する制御部と、
前記制御部及び前記アクチュエータ部に設けられたモータに給電する主電源部と、
車両故障時に前記主電源部に代わって給電を行う予備電源部と、
前記予備電源部に給電を行う補助電源部と、
前記予備電源部に設けられたコンデンサで構成されたキャパシタユニットと、
前記補助電源部に設けられた二次電池と、
前記予備電源部の電圧値を検出する診断部と、を有し、
前記制御部は、前記診断部が前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下となったと判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行う車両用電源装置。
【請求項8】
車両は複数の車両ドアを有し、各車両ドアのドアラッチ装置毎に前記予備電源部が設けられ、所定の車両ドアの少なくとも1つに前記補助電源部が設けられた、請求項7に記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記診断部の判定に従って、電圧値が低下している前記キャパシタユニットに前記二次電池による充電を開始することを特徴とする請求項8に記載の車両用電源装置。
【請求項10】
車両ドアに設けられた内外操作ハンドルの操作を検出する操作部をさらに有し、前記診断部は、前記操作部の操作が検出されたドアラッチ装置に対応する前記予備電源部の電圧値を判定し、前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下と判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行うことを特徴とする請求項7乃至9に記載の車両用電源装置。
【請求項11】
前記補助電源部は、車両故障時に前記主電源部に代わって、前記制御部、または所定の前記電気電子機器への給電を行うことを特徴とする請求項1乃至に記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のドアに電気式のドアラッチ装置を採用することが知られている。従来、電気式のドアラッチ装置においては、車両側に設置された主電源から電力供給用の配線を介してドアに設けられたドアラッチ装置に電力を供給するように構成されていた。
【0003】
一方、車両の事故などによって、主電源からドアラッチ装置への電力が遮断された場合に備えて、スーパーキャパシタを使用した緊急用の予備電源を設けたドアラッチ装置が開発されており、例えば、特表2016-503135号公報にかかるドアラッチの電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-503135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の緊急用スーパーキャパシタを使用した予備電源を使用したドアラッチ装置においては、各ドアに配置された予備電源を各ドアのドアラッチで使用するのみの構成であったため、限られた電力能力しか得ることができなかった。また、スーパーキャパシタは、放電により数時間程度で使用できなくなるため信頼性に欠けていいた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による車両用電源装置は、車両に設けられ電気電子機器と、前記電気電子機器を制御する制御部と、前記制御部及び前記電気電子機器に給電する主電源部と、車両故障時に前記主電源部に代わって給電を行う予備電源部と、前記予備電源部に給電を行う補助電源部と、前記予備電源部に設けられたコンデンサで構成されたキャパシタユニットと、前記補助電源部に設けられた二次電池と、前記予備電源部の電圧値を検出する診断部とを有する。
【0007】
また、前記制御部は、前記診断部が前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下となったと判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態による車両用電源装置によれば、高出力、高効率で電力を必要な電気電子機器に供給することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両用電源装置を説明するための図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係る車両用電源装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素は重複する説明を省略することがある。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用電源装置を説明するための図である。図1に示す車両用電源装置は、例えば、自動車等の車両100に設置される。
【0012】
車両100は、電気電子機器111及び制御部112を有している。電気電子機器111は、車両に設けられる様々な電気機器及び電子機器を包括的に含むもので、後述する車両ドアのラッチ装置を構成するアクチュエータ部や、キーレスエントリーなどに用いられるユーザ所有の携帯機との通信を行う通信機器、又は、ユーザ操作を検出する静電容量センサなどのハンドルセンサ等が含まれる。
制御部112は、マイクロプロセッサ等の演算装置を含んで構成され、電気電子機器の動作を制御する。
【0013】
例えば、電気電子機器111が車両ドアラッチ装置を構成するアクチュエータ部である場合、車両ドアに設けられたハンドル操作部(図示せず)からの解錠信号を受け、アクチュエータ部に設けられたモータを駆動するような制御を行う。特に制限されないが、アクチュエータ部は、ドアポストに固定されたストライカーに対して選択的に回転可能なラチェットと、かかるラチェットの回転を阻止するポールと、そのポールを回転駆動するドアラッチモータを有している。ドアポストに固定されたストライカーに対して選択的に回転可能なラチェットとかかるラチェットを回転駆動するドアラッチモータを含んで構成される。
【0014】
電気電子機器111及び制御部112には電源ライン102を介して車両の主電源部101からそれぞれ電力が供給される。特に制限されないが、主電源部101から電気電子機器111への電力供給は、制御部112に必要な電源回路を設けることなどにより、制御部112を介して行うように構成することもできる。かかる主電源101は、例えば、自動車用バッテリとして広く普及している鉛蓄電池などの蓄電池を用いることができる。
【0015】
上述のとおり、主電源101は、制御部112及び/又は電気電子機器111に常時電力を供給することが期待されているが、車両の事故などの緊急時において、主電源101からの電力供給が遮断されたり、電源ライン102の断線などにより、その給電が途絶してしまう場合がある。
【0016】
予備電源部113は、主電源が途絶してしまったような車両故障状態(電源故障状態とも言う)の際に、制御部112及び/又は電気電子機器111に電力を供給するものである。
予備電源部113は、静電容量素子(コンデンサ)により構成されたキャパシタユニットであり、例えば、スーパーキャパシタ(ウルトラキャパシタと呼ばれることもある)を用いて構成される。スーパーキャパシタは、電解二重層コンデンサ、疑似コンデンサ、又は、これらを組み合わせたコンデンサを含むものである。
【0017】
一般に、スーパーキャパシタは、エネルギ密度が高く、高い出力電流特性を有しており、比較的サイズも小さいため、予備電源部として適している一方で、その性質上、自然放電により数時間程度で使用できなくなってしまう。
【0018】
そこで、本実施形態にかかる車両用電源装置においては、予備電源部113に加え、補助電源部114及び診断部117とを設けている。補助電源部114は、二次電池により構成され、例えばニッケル水素二次電池により構成されている。
【0019】
診断部117は予備電源部113の電圧値を検出し、かかる電圧値が所定の閾値以下となったことを判別した場合に、補助電源部114から予備電源部113に充電を行うように予備電源部113及び補助電源部114を制御する。
【0020】
以下、再び図1を参照しながら、本実施形態における車両用電源装置の構成及び動作を説明する。
【0021】
主電源部101から正常に給電が行われている通常作動時においては、主電源部101は、電源ライン102を介して制御部112及び/又は電気電子機器111に電力を供給している。
【0022】
また、主電源部101は電源ライン102を介して、充電制御部115にも電力を供給している。通常作動時において、充電制御部115は、予備電源部113の電圧値を測定し、その電圧値が一定の閾値を下回った場合に主電源部101から予備電源部113へ充電を行うよう充電制御している。さらに、充電制御部115は、補助電源部114の電圧値を測定し、その電圧値が一定の閾値を下回った場合に主電源部101から補助電源部114へ充電を行うよう制御している。このように、通常作動時において、予備電源部113及び補助電源部114は常に適切な電力値を有するよう制御され、必要な電力を蓄えることが可能となる。
【0023】
なお、充電制御部115による各電圧値の判定は、常時行うことも可能であるが、一定期間毎に定期的にモニタすることもできる。
【0024】
また、充電制御部115は制御部112と接続されており、適宜制御112からの制御を受けることも想定される。例えば、後述する車両故障状態(電源故障状態)においては、制御部112からの指示により充電制御を停止することが考えられる。
【0025】
また、図1では制御部112と充電制御部115を別々のブロックによって説明したが、これに限定されるものではなく、制御部112が充電制御部の機能を実施できるよう構成することも可能である。
【0026】
制御部112は、常時、又は、定期的に電源ライン102の電圧を検出しており、主電源部101からの給電が途絶えたことを検知することができる(車両故障状態又は電源故障状態)。なお、制御部は、主電源からの電力が完全に途絶した場合に限らず、主電源の電圧が一定程度低下した状態を車両故障状態として検出するように構成することも可能である。
【0027】
車両故障状態において、例えば車両ドアのハンドル操作部が操作され、ドアラッチ装置の解錠が要求されるなど、電気電子機器111を動作させることが必要となると、制御部112及び/又は電気電子機器111は予備電源部113から電力が供給され動作が行われる。なお、ハンドル操作部は、車両事故状態において予備電源部から給電されている図示しないセンサ部を有しており、センサ部がその操作を検出すると操作を検出したことを示す操作検出信号を制御部へ送出する。操作部はかかる操作検出信号を受け解錠制御を行う。
【0028】
図1の実施形態においては、予備電源部113の電圧を昇圧する昇圧回路116がさらに示されている。予備電源部113を構成するキャパシタの電圧が十分でない場合、かかる昇圧回路116を設け、その電圧値を昇圧して用いることもできる。特に制限されないが、かかるスーパーキャパシタの最大使用電圧は2.5V程度であり、2個直列接続することにより全体として5.0Vの電圧を生じることができる。昇圧回路116は、かかる電圧を12V程度に昇圧し、電気電子機器111を駆動する。あるいは、特に制限されないが、かかるキャパシタを5個直列接続することにより全体として12.5Vの電圧を生じることも可能である。この場合、昇圧回路を用いなくても電気電子機器111を駆動する十分な電圧が確保できるが、放電により電圧が低下した場合等を考慮し、昇圧回路116を設けておくこともできる。
【0029】
補助電源部114は、例えば、ニッケル水素二次電池により構成される。ニッケル水素二次電池の公称電圧は1.2V程度であるが、複数本直列に接続することにより、予備電源部113を充電するための十分な電圧を得ることができる。例えば、予備電源部の最大使用電圧が全体で5.0Vである場合には、ニッケル水素二次電池を5本直列に接続することにより、補助電源部114を構成できる。また、ニッケル水素二次電池の電流容量は電池の構造により異なる値のものが入手可能であるが、必要に応じ複数個を並列に接続することにより、所望の電流容量を得ることができ、スーパーキャパシタを必要な回数充電できるよう構成できる。
【0030】
診断部117は、車両故障状態において、制御部112の指示により、又は診断部117の内部論理により、常時、又は、定期的に予備電源部113の電圧値を検出する。かかる検出の結果、予備電源部113の電圧値が所定の閾値以下となったことが判定された場合、診断部117は、補助電源部114を予備電源部113に接続することにより、予備電源部113の充電を行う。
【0031】
なお、診断部117の電力は制御部を介して、又は、昇圧回路116から供給されることが想定されている。
【0032】
また、図1では制御部112と充電制御部115、診断部117を別々のブロックによって説明したが、これに限定されるものではなく、制御部112が充電制御部及び診断部117の機能を実施できるよう構成することも可能である。もちろん、診断部117のみの機能を制御部112が担い、充電回路115のみを別のブロックとして構成してもよい。
【0033】
なお、通常時は、各電圧値を充電制御部115によって一定期間毎に定期的にモニタし、車両故障状態時は診断部117によって、定期的に予備電源部113の電圧値を検出しているが、通常時も診断部117によって定期的に予備電源部113の電圧値を検出してもよく、電圧値の検出については診断部117に機能を集約してもよい。この場合には、制御部112又は診断部117からの指示に応じて充電回路115が予備電源部113の充電を行う。
【0034】
上述のように、本実施形態によれば、車両故障状態において、予備電源部113の蓄電量が少なくなった場合であっても、補助電源部から適宜充電を行うことができるため、電気電子機器111をより確実に動作させることができ、電源装置としての信頼性を向上することができる。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両用電源装置を説明するための図である。図2に示された実施形態は、図1を用いて説明した実施形態のより具体的な形態を示したものである。図1と同様の部分についてはその説明を省略する。
【0036】
車両200は、車両ドア210、220、230及び240を有している。それぞれの車両ドアは、電気電子機器211、221,231並びに241、及び、制御部212、222、232並びに242を有している。
【0037】
電気電子機器211、221、231及び241は、図1と同じく、車両に設けられる様々な電気機器及び電子機器を包括的に示すもので、後述する車両ドアのラッチ装置を構成するアクチュエータ部や、キーレスエントリーなどに用いられるユーザ所有の携帯機との通信を行う通信機器、ユーザ操作を検出する静電容量センサなどのハンドルセンサ等が含まれる。
【0038】
上述のとおり、制御部は、マイクロプロセッサ等の演算装置を含んで構成され、電気電子機器の動作を制御する。
【0039】
電気電子機器211、221,231並びに241、及び、制御部212、222、232並びに242には電源ライン202を介して車両の主電源部201から電力が供給される。特に制限されないが、主電源部201から電気電子機器への電力供給は、制御部に必要な電源回路を設けることなどにより、制御部を介して行うように構成することもできる。
【0040】
上述のとおり、主電源201は、通常作動時において、制御部及び/又は電気電子機器に常時電力を供給することが期待されているが、車両の事故などの緊急時において、主電源201からの電力供給が遮断されたり、電源ライン202の断線などにより、その給電が途絶してしまう場合がある。
【0041】
本実施形態は、各車両ドアに予備電源部213、223,233及び243が設けられ、主電源が途絶してしまったような車両故障状態の際にそれぞれの制御部及び/又は電気電子機器に電力を供給するものである。予備電源部は、上述のとおり、コンデンサにより構成されるキャパシタユニットであり、例えば、スーパーキャパシタにより構成される。図中に記載されたキャパシタの記号は模式的なものであり、本実施形態におけるスーパーキャパシタも、同様に、5個直列接続することにより全体として12.5Vの電圧を生じるよう構成され、又は、2個直列接続することにより全体として5.0Vの電圧を生じるように構成することもでき、適宜その個数を変更することができる。
【0042】
また、図2の電源装置においては、各予備電源部の電圧を昇圧するための昇圧回路が設けられていることも上述の通りである。なお、別の実施形態によれば、各コンデンサと並列にツェナーダイオード等の定電圧素子(図示せず)を接続することにより、各コンデンサに蓄積される電圧を一定に保つ等価回路を設けることも可能である。
【0043】
ここで、本実施形態においては、図1で示した補助電源部及び診断部を後席の車両ドア220に設けている。すなわち、車両ドア220においては、予備電源部223に加え、補助電源部224及び診断部227が設けられている。補助電源部224は、上述のとおり、二次電池により構成され、例えばニッケル水素二次電池により構成されている。図2に示された電池の記号は模式的なものであり、ニッケル水素電池の直列接続数及び並列接続数を適宜設定できることも上述のとおりである。
【0044】
また、上述のとおり、診断部227は予備電源部223の電圧値を検出し、かかる電圧値が所定の閾値以下となったことを判別した場合に、補助電源部224から予備電源部223に充電を行うように制御される。
【0045】
以下、再び図2を参照しながら、本実施形態における車両用電源装置の構成及び動作を説明する。なお、図1の実施形態と同様の動作については適宜説明を省略する。
【0046】
主電源部201から正常に給電が行われている通常作動時においては、主電源部201は、電源ライン202を介して各車両ドアの制御部212,222,232並びに242、及び/又は電気電子機器211,221,231並びに241に電力を供給している。
【0047】
主電源部201は、電源ライン202を介して、充電制御部215、225,235及び245にも電力を供給している。通常作動時において、充電制御部215、225,235及び245は、予備電源部213,223,233及び243の電圧値を測定し、その電圧値が一定の閾値を下回った場合に主電源部201からそれぞれの予備電源部213,223,233及び243へ充電を行うよう制御している。このように、通常作動時において、予備電源部は常に適切な電力値を有するよう制御され、必要な電力を蓄えることが可能となる。
【0048】
図2の態様では、車両ドア220にのみ補助電源部224が設けられているため、充電制御部225が、補助電源部224の電圧値を測定し、その電圧値が一定の閾値を下回った場合に主電源部201から補助電源部224へ充電を行うよう制御している。このように、通常作動時において、補助電源部224も常に適切な電力値を有するよう制御され、必要な電力を蓄えることが可能となる。
【0049】
なお、充電制御部の各電圧値の判定は、常時行うことも可能であるが、一定期間毎に定期的にモニタすることもできる。また、充電制御部は制御部と接続されており、上述したような制御部からの制御を受けることも想定される。また、制御部と充電制御部を別々のブロックによって説明したが、これに限定されるものではなく、制御部が充電制御部の機能を実施できるよう構成することも可能である。
【0050】
各車両ドアの制御部212、222,232及び242は、常時、又は、定期的に電源ライン202の電圧を検出しており、主電源部201からの給電が途絶えたことを検知することができる(車両故障状態又は電源故障状態)。
【0051】
車両故障状態において、例えば車両ドアのハンドル操作部218、228,238及び248のいずれかが操作され、ドアラッチ装置の解錠が要求されるなど、電気電子機器211,221,231及び241のいずれかを動作させることが必要となると、対応する制御部及び/又は電気電子機器はそれぞれの予備電源部から電力が供給され動作が行われる。なお、制御部212、222,232及び242は、主電源部201からの給電が途絶えたことを検知すると、制御部212、222,232及び242への電力供給及び、車両ドアのハンドル操作部218、228,238及び248などの電気電子機器については、予備電源部から間欠的に電力が供給されるように制御を行う。
【0052】
ここで、本実施形態においては、補助電源部224が後席の車両ドア220にのみ設けられている。また、その一方で、かかる補助電源部224は、車両ドア220の診断部227に加え、各車両ドアの診断部217、237及び247にも補助電源ライン203を介して接続されている。
【0053】
車両故障状態において、各診断部は、各制御部の指示により、又は各診断部の内部論理により、常時、又は、定期的に対応する予備電源部の電圧値を検出している。かかる検出の結果、ある予備電源部(例えば233)の電圧値が所定の閾値以下となったことが判定された場合、対応する診断部(例えば237)は、車両ドア220の補助電源部224を対応する予備電源部(例えば233)に接続することにより、かかる予備電源部(例えば233)の充電を行う。
【0054】
このように、本実施形態によれば、車両故障状態において、いずれの車両ドアの予備電源部の蓄電量が少なくなった場合であっても、補助電源部から適宜充電を行うことができる。そのため、各車両ドアの電気電子機器をより確実に動作させることができ、電源装置としての信頼性が向上する。
【0055】
また、補助電源部は一つの車両ドアにのみ設けられているため、車両乃至は車両ドアの重量を軽減しスペースを有効に活用することが可能となる。車両重量の軽減は、特に電気自動車の場合などに主電源部の消耗を抑制することも可能となる。
【0056】
本実施形態においては、後席の車両ドアに補助電源部を設けている。その理由は、後席は比較的事故による破損の可能性が低いため、事故時に補助電源部が使用不能となる可能性を低減することができる。一方、これに限らず、前席の車両ドアに補助電源部を設けることも可能である。
【0057】
また、補助電源部は必ずしも一つの車両ドアにのみ設ける必要は無く、例えば、後席のそれぞれの車両ドアに設けることもでき、または、後席及び前席の車両ドア一つずつに設けることも可能であり、さらに、全席の車両ドアに設けることも可能である。補助電源部の数が増えるに従い、電源装置としての信頼性は向上するが、よりスペースを占有し重量を増加させる要因となりえる。
【0058】
また、図2においては、全ての診断部が一つの補助電源部に接続した構成を示しているが、補助電源部を2つ等の複数設けた場合には、それぞれの補助電源部に接続される診断部の数を少なくすることにより、より冗長的な電源装置となりえる。具体的には、車両ドア220及び240に補助電源部を設け、車両ドア220の補助電源部を車両ドア220と車両ドア210とで共用し、車両ドア240の補助電源部を車両ドア240と車両ドア230で共用することなどが考えられる。
【0059】
なお、図2においては、車両200が四つのドアを用いる場合を説明したが、これに限定されるものではなく、車両ドアの数は二ドアのもの、若しくは、三つ、または五つ以上でも同様の構成とすることが可能である。図1又は図2に記載された車両ドアには、車両に対し回動可能に設けられた通常のタイプのドアのほか、スライド式のドアや、両開き式のドア、ガルウイング式のドアなど、いかなる開閉方式のドアであっても良く、ドアの方式、配置された場所、数などに応じて、第一のドアラッチ装置又は第二ドアラッチ装置の配置を適宜変更することが可能である。
【0060】
また、車両故障状態の際に予備電源部から制御部及び/または、電気電子機器電力が供給されるように制御を行うように記載したが、小電力消費で十分な制御部やキーレスエントリーなどに用いられるユーザ所有の携帯機との通信を行う通信機器、又は、ユーザ操作を検出する静電容量センサなどのハンドルセンサ等は補助電源部から直接電力を供給する構成としてもよい。この場合には、予備電源部への充電能力が低下することになるため、診断部により補助電源部の電圧値を計測するようにしてもよく、制御部にのみ補助電源部から電源供給をするようにするなど、選択的に予備電源部と補助電源部を接続し、電力を供給するようにしてもよい。
【0061】
以上のとおり、本発明にかかる実施形態を説明した。これに加え、本発明の実施形態は以下の形態をも含むものである。
【0062】
(1)本発明の実施形態にかかる車両用電源装置は、車両に設けられ電気電子機器と、前記電気電子機器を制御する制御部と、前記制御部及び/又は前記電気電子機器に給電する主電源部と、車両故障時又は電源故障時に前記主電源部に代わって給電を行う予備電源部と、前記予備電源部に電力を供給する補助電源部と、前記予備電源部に設けられたキャパシタユニットと、前記補助電源部に設けられた二次電池と、前記予備電源部の電圧値を検出する診断部とを有し、前記制御部は、前記診断部が前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下となったと判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行う。
【0063】
(2)前記車両用電源装置において、前記電気電子機器は、車両ドアを施解錠駆動するドアラッチ装置のアクチュエータである。
【0064】
(3)前記車両用電源装置において、前記電気電子機器は、車両ドアに設けられ、ユーザが所有する携帯機器と通信を行うための通信機器である。
【0065】
(4)前記車両用電源装置において、前記電気電子機器は、車両ドアに設けられ、ユーザ操作を検出するハンドルセンサである。
【0066】
(5)前記車両用電源装置において、前記車両は複数の車両ドアを有し、前記予備電源部は前記複数のドアの各車両ドアに設けられ、前記補助電源部は、所定の車両ドアに少なくとも一つ設けられる。
【0067】
(6)前記車両用電源装置において、前記制御部は、前記診断部の判定に従って、電圧値が低下している前記予備電源部に前記二次電池による充電を開始するよう制御する。
【0068】
(7)本発明の実施形態にかかる車両用電源装置は、アクチュエータ部により施解錠駆動するドアラッチ装置と、前記アクチュエータ部の駆動を制御する制御部と、前記制御部及び/又は前記アクチュエータ部に設けられたモータに給電する主電源部と、車両故障時に前記主電源部に代わって電力の供給を行う予備電源部と、前記予備電源部に電力を供給する補助電源部と、前記予備電源部に設けられたコンデンサで構成されたキャパシタユニットと、前記補助電源部に設けられた二次電池と、前記予備電源部の電圧値を検出する診断部と、を有し、
前記制御部は、前記診断部が前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下となったと判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行う車両用電源装置。
【0069】
(8)前記車両用電源装置において、前記車両は複数の車両ドアを有し、各車両ドアのドアラッチ装置毎に前記予備電源部が設けられ、所定の車両ドアの少なくとも1つに前記補助電源部が設けられる。
【0070】
(9)前記車両用電源装置において、前記制御部は、前記診断部の判定に従って、電圧値が低下している前記キャパシタユニットに前記二次電池から充電を開始する。
【0071】
(10)前記車両用電源装置において、車両ドアに設けられた内外操作ハンドルの操作を検出する操作部をさらに有し、前記診断部は、前記操作部の操作が検出されたドアラッチ装置に対応する前記予備電源部の電圧値を判定し、前記予備電源部の電圧値が所定の閾値以下と判定した場合に前記補助電源部から前記予備電源部への充電制御を行う。
【0072】
(11)前記車両用電源装置において、前記補助電源部は、車両故障時に前記主電源部に代わって、前記制御部、または所定の前記電気電子機器への給電を行う。
【符号の説明】
【0073】
100、200 車両
101、201 主電源部
102、202 電源ライン
210、220、230、240 車両ドア
111、211、221、231、241 電気電子機器
112、212、222、232、242 制御部
113、213、223、233、243 予備電源部
114、224 補助電源部
115、215、225、235、245 充電制御部
116,216,226,236,246 昇圧回路
117、217,227,237,247 診断部
203 補助電源ライン
218,228,238,248 ハンドル操作部
図1
図2