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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】空間浮遊映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20250604BHJP
   G03B 35/00 20210101ALI20250604BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20250604BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20250604BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20250604BHJP
【FI】
G02B30/56
G03B35/00 Z
G02B5/30
H04N13/363
H04N13/346
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021120807
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2022089750
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020202251
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207370(JP,A)
【文献】特開2018-018003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024373(US,A1)
【文献】特開2020-095101(JP,A)
【文献】国際公開第2018/169018(WO,A1)
【文献】特開2020-134843(JP,A)
【文献】特開2018-031925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
表示パネルと、
前記表示パネルに特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、
再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射部材と、
前記表示パネルと前記再帰反射部材とを結んだ空間にある偏光分離部材と、
筐体と、
前記筐体の窓部として設けられた透明部材と、を備え、
前記偏光分離部材は、前記表示パネルからの特定偏波の映像光を前記再帰反射部材に向けて一旦は透過させ、前記再帰反射部材で偏光変換し他方の偏波に変換することで、前記偏光分離部材で反射させ、前記偏光分離部材で反射した映像光を前記窓部である前記透明部材を透過させて、前記窓部の外側に実像である空間浮遊映像を表示し、
前記表示パネルから前記再帰反射部材へ入射する光は、水平に対して斜め上方向に傾いており、前記再帰反射部材の反射面は鉛直方向に対して下向きに傾くように前記再帰反射部材が配置されている、空間浮遊映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記表示パネルの映像表示面と前記再帰反射部材の再帰反射面とは平行となるように配置されている、空間浮遊映像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記空間浮遊映像の表示位置は、前記表示パネルと前記偏光分離部材との間の距離に応じて定まる位置である、空間浮遊映像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記偏光分離部材は反射型偏光板あるいは特定偏波を反射させる金属多層膜から形成される、空間浮遊映像表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記窓部である前記透明部材の少なくとも一面に吸収型偏光板が設けられた、空間浮遊映像表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記窓部である前記透明部材は前記映像光が通過する部分を透明体で形成し、前記映像光が通過しない部分は遮光部材からなる、空間浮遊映像表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記表示パネルの映像表示面には反射防止膜を設け、前記表示パネルに設けた吸収型偏光板により反射光を吸収させる、空間浮遊映像表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記表示パネルを、前記窓部から離れた位置に設ける構成とした、空間浮遊映像表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記表示パネルから出射する映像光が前記窓部から視認できない位置に前記表示パネルを設ける構成とした、空間浮遊映像表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記窓部から出射した光によって空間浮遊映像が形成され、前記窓部から出射した光は反射ミラーで一旦反射する構成とし、前記窓部の平面に対して反射ミラーの角度を所望の角度に設定することで、得られる空間浮遊映像の位置と角度が変更できる、空間浮遊映像表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の空間浮遊映像表示装置であって、
前記窓部から出射した空間浮遊映像を反射する反射ミラーは特定偏波の反射率が高い特性を有する、空間浮遊映像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間浮遊映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間浮遊映像表示装置の一例として、特許文献1は「情報処理装置のCPUは、空気中に形成される像へのユーザの接近方向を検知する接近方向検知部と、入力が検知された座標を検知する入力座標検知部と、操作の受け付けを処理する操作受付部と、受け付けた操作に応じて操作画面を更新する操作画面更新部とを備える。CPUは、ユーザが予め定めた方向から像に接近する場合、ユーザの動きを操作として受け付け、操作に応じた処理を実行する(要約抜粋)。」とする記載を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-128722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の空間浮遊映像表示装置は、空間浮遊映像の操作性を向上させることはできても、空間浮遊映像の見た目の解像度やコントラストの向上については考慮されておらず、更なる映像品質の向上が求められているという実情がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、好適で視認性の高い空間浮遊映像を表示することができる空間浮遊映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、表示パネルと、前記表示パネルに特定の偏光方向の光を供給する光源装置と、再帰反射面に位相差板を設けた再帰反射部材と、前記表示パネルと前記再帰反射部材とを結んだ空間にある偏光分離部材と、筐体と、前記筐体の窓部として設けられた透明部材と、を備え、前記偏光分離部材は、前記表示パネルからの特定偏波の映像光を前記再帰反射部材に向けて一旦は透過させ、前記再帰反射部材で偏光変換し他方の偏波に変換することで、前記偏光分離部材で反射させ、前記偏光分離部材で反射した映像光を前記窓部である前記透明部材を透過させて、前記窓部の外側に実像である空間浮遊映像を表示し、前記表示パネルから前記再帰反射部材へ入射する光は、水平に対して斜め上方向に傾いており、前記再帰反射部材の反射面は鉛直方向に対して下向きに傾くように前記再帰反射部材が配置されている
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、好適で視認性の高い空間浮遊映像を表示することができる空間浮遊映像表示装置を実現できる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムの使用形態の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムの主要部構成と再帰反射部構成の一例を示す図である。
図3】空間浮遊映像表示システムの課題を示す図である。
図4】再帰反射部材の表面粗さと再帰反射像のボケ量の関係を表す特性図である。
図5】空間浮遊映像表示システムの課題を示す図である。
図6A】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施を示す図である。
図6B】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施を示す図である。
図6C】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施を示す図である。
図6D】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施を示す図である。
図6E】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施を示す図である
図7】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図8】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図9】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図10】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムの主要部を示す配置図である。
図11】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムを構成する映像表示装置の構成を示す断面図である。
図12】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図13】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図14】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図15】映像表示装置の拡散特性を説明するための説明図である。
図16】映像表示装置の拡散特性を説明するための説明図である。
図17】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムを構成する映像表示装置の構成を示す断面図である。
図18】本発明の一実施例に係る光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は実施例の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものには、同一の符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。なお、以下の実施例の説明において、空間に浮遊する映像を「空間浮遊映像」という用語で表現している。この用語の代わりに、「空中浮遊映像」、「表示映像の空間浮遊光学像」、「表示映像の空中浮遊光学像」と表現してもかまわない。実施例の説明で用いる「空間浮遊映像」との用語は、これらの用語の代表例として用いている。
【0010】
以下の実施例は、例えば、大面積な映像発光源からの映像光による映像を、ショーウィンドのガラス等の空間を仕切る透明部材を介して透過して、店舗(空間)の内部または外部に空間浮遊映像として表示することが可能な空間浮遊映像表示システムに関する。また、かかる空間浮遊映像表示システムを複数用いて構成される大規模なデジタルサイネージシステムに関する。
【0011】
以下の実施例によれば、例えば、ショーウィンドのガラス面や光透過性の板材上に高解像度な映像情報を空間浮遊した状態で表示可能となる。この時、出射する映像光の発散角を小さく、即ち鋭角とし、さらに特定の偏波に揃えることで、再帰反射部材に対して正規の反射光だけを効率良く反射させるため、光の利用効率が高く、従来の再帰反射方式での課題となっていた主空間浮遊映像の他に発生するゴースト像を抑えることができ、鮮明な空間浮遊映像を得ることができる。また本実施例の光源を含む装置により、消費電力を大幅に低減することが可能な、新規で利用性に優れた空間浮遊映像表示システムを提供することができる。また、例えば、車両のフロントガラスやリアガラスやサイドガラスを含むシールドガラスを介して、車両外部において視認可能である、いわゆる、一方向性の空間浮遊映像表示が可能な車両用浮遊映像表示システムを提供することができる。
【0012】
一方、従来の空間浮遊映像表示システムでは、高解像度なカラー表示映像源として有機ELパネルや液晶表示パネルを再帰反射部材と組合せる。従来技術による空間浮遊映像表示装置では映像光が広角で拡散するため、再帰反射部が6面体であるために正規に反射する反射光の他に、図3に示すように再帰反射部材(再帰反射シート)2に斜めから入射する映像光よってゴースト像が発生し空間浮遊映像の画質を損ねていた。従来技術として示した再帰反射部材は6面体であるために、図5に示すように空間浮遊映像の正規像R1の他に第1ゴースト像G1からから第6ゴースト像G6まで複数発生する。このため観視者以外にも同一空間浮遊映像であるゴースト像を監視されてしまいセキュリティ上大きな課題があった。
【0013】
また後述する狭角な指向特性を有する映像表示装置からの映像光を再帰反射部材で反射させ得られた空間浮遊映像は上述したゴースト像の他に図4に示したように液晶表示パネルの画素ごとにボケが視認された。
【0014】
<空間浮遊映像表示システム(1)>
図1は、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムの使用形態の一例を示す図である。図1(A)は、本実施例に係る空間浮遊映像表示システムの全体構成を示す図である。例えば、店舗等においては、ガラス等の透光性の部材であるショーウィンド(ウィンドガラス105)により空間が仕切られている。本実施例の空間浮遊情報表示システムによれば、かかる透明部材を透過して、浮遊映像を店舗(空間)の外部に対して一方向に表示することが可能である。具体的には、映像表示装置1から狭角な指向特性でかつ特定偏波の光が、映像光束として出射し、再帰反射部材2に一旦入射し、再帰反射してウィンドガラス105を透過して、店舗の外側に、実像である空中像(空間浮遊映像3)を形成する。図1では、ウィンドガラス105の内側(店舗内)を奥行方向にしてその外側(例えば、歩道)が手前になるように示している。他方、ウィンドガラス105に特定偏波を反射する手段を設けることで反射させ、店内の所望の位置に空中像を形成することもできる。
【0015】
図1(B)は、上述した映像表示装置1の構成を示すブロック図である。映像表示装置1は、空中像の原画像を表示する映像表示部1aと、入力された映像をパネルの解像度に合わせて変換する映像制御部1bと、映像信号を受信する映像信号受信部1cと、受信アンテナ1dとを含んでいる。映像信号受信部1cは、HDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)入力など有線での入力信号への対応と、Wi-Fi(Wireless Fidelity:登録商標)などの無線入力信号への対応を行い、映像受信・表示装置として単独で機能するものでもあり、タブレット、スマートフォンなどからの映像情報を表示することもできる。更にステックPCなどを接続すれば計算処理や映像解析処理などの能力を持たせることもできる。
【0016】
図2は、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムの主要部構成と再帰反射部構成の一例を示す図である。図2を用いて、空間浮遊映像表示システムの構成をより具体的に説明する。図2(A)に示すように、ガラス等の透明部材100の斜め方向には、特定偏波の映像光を狭角に発散させる映像表示装置1を備える。映像表示装置1は、液晶表示パネル11と狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えている。
【0017】
映像表示装置1からの特定偏波の映像光は、透明部材100に設けた特定偏波の映像光を選択的に反射する膜を有する偏光分離部材101(図中は偏光分離部材101をシート状に形成して透明部材100に粘着している)で反射され、再帰反射部材2に入射する。再帰反射部材の映像光入射面にはλ/4板21を設ける。映像光は、再帰反射部材2への入射のときと出射のときの2回、λ/4板21を通過させられることで特定偏波から他方の偏波へ偏光変換される。ここで、特定偏波の映像光を選択的に反射する偏光分離部材101は偏光変換された他方の偏波の偏光は透過する性質を有するので、偏光変換後の特定偏波の映像光は、偏光分離部材101を透過する。偏光分離部材101を透過した映像光が、透明部材100の外側に実像である空間浮遊映像3を形成する。
【0018】
なお、空間浮遊映像3を形成する光は再帰反射部材2から空間浮遊映像3の光学像へ収束する光線の集合であり、これらの光線は、空間浮遊映像3の光学像を通過後も直進する。よって、空間浮遊映像3は、一般的なプロジェクタなどでスクリーン上に形成される拡散映像光とは異なり、高い指向性を有する映像である。よって、図2の構成では、矢印Aの方向からユーザが視認する場合には空間浮遊映像3は明るい映像として視認されるが、矢印Bの方向から他の人物が視認する場合は、空間浮遊映像3は映像として一切視認することはできない。この特性は、高いセキュリティが求められる映像や、ユーザに正対する人物には秘匿したい秘匿性の高い映像を表示するシステムに採用する場合非常に好適である。
【0019】
なお、再帰反射部材2の性能によっては、反射後の映像光の偏光軸が不揃いになることがある。この場合、偏光軸が不揃いになった一部の映像光は、上述した偏光分離部材101で反射され映像表示装置1に戻る。この光が、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で再反射し、ゴースト像を発生させ空間浮遊映像の画質を低下させる可能性がある。そこで、本実施例では映像表示装置1の映像表示面に吸収型偏光板12を設ける。映像表示装置1から出射する映像光は吸収型偏光板12を透過させ、偏光分離部材101から戻ってくる反射光は吸収型偏光板12で吸収させることで、上記再反射を抑制できる。これにより、空間浮遊映像のゴースト像による画質低下を防止することができる。
【0020】
上述した偏光分離部材101は、例えば反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜などで形成すればよい。
【0021】
次に、図2(B)に代表的な再帰反射部材2として、今回の検討に用いた日本カ-バイト工業株式会社製の再帰反射部材2の表面形状を示す。規則的に配列された6角柱からなる再帰反射部2aの内部に入射した光線は、6角柱の壁面と底面で反射され再帰反射光として入射光に対応した方向に出射して図5に示す正規像R1を形成する。一方、図3に示したように映像表示装置1からの映像光の内で再帰反射部材2に斜めに入射した映像光によっては正規像R1とは別にゴースト像(図5中のG1からG6)が形成される。
【0022】
そこで、本発明の映像表示装置1に表示した映像に基づき、ゴースト像を形成することなく、実像である空間浮遊映像3を表示する。この空間浮遊映像3の解像度は液晶表示パネル11の解像度の他に、図2(B)で示す再帰反射部材2の再帰反射部2aの外径DとピッチPに大きく依存する。例えば、7インチのWUXGA(1920×1200画素)液晶表示パネル11を用いる場合には、1画素(1トリプレット)が約80μmであっても、例えば再帰反射部2aの直径Dが240μmでピッチが300μmであれば空間浮遊映像3の1画素は300μm相当となる。このため、空間浮遊映像3の実効的な解像度は1/3程度に低下する。そこで空間浮遊映像3の解像度を映像表示装置1の解像度と同等にするためには、再帰反射部2aの直径とピッチを液晶表示パネルの1画素に近づけることが望まれる。他方、再帰反射部材2と液晶表示パネル11の画素によるモアレの発生を抑えるため、それぞれのピッチ比を1画素の整数倍から外して設計すると良い。また形状は再帰反射部2aのいずれの一辺も液晶表示パネル11の1画素のいずれの一辺と重ならないように配置すると良い。
【0023】
発明者らは視認性を向上するために許容できる空間浮遊映像の像のボケ量lと画素サイズLとの関係を画素ピッチ40μmの液晶表示パネルと本願発明の狭発散角(発散角15°)の光源を組み合わせた映像表示装置1を作成し実験により求めた。図4のその実験結果を示す。視認性が悪化するボケ量lは画素サイズの40%以下が望ましく15%以下であればほとんど目立たないことが分かった。この時のボケ量lが許容量となる反射面の面粗さは測定距離40μmの範囲において平均粗さが160nm以下であり、より目立たないボケ量lとなるには反射面の面粗さは120nm以下が望ましいことが分かった。このため、前述した再帰反射部材の表面粗さを軽減するとともに反射面を形成する反射膜とその保護膜を含めた面粗さを上述した値以下とすることは望まれる。
【0024】
一方、再帰反射部材2を低価格で製造するためには、ロールプレス法を用いて成形すると良い。具体的には再帰反射部2aを整列させフィルム上に賦形する方法であり、賦形する形状の逆形状をロール表面に形成し、固定用のベース材の上に紫外線硬化樹脂を塗布しロール間を通過させることで、必要な形状を賦形し紫外線を照射して硬化させ、所望形状の再帰反射部材2を得る。
【0025】
本発明の映像表示装置1は、液晶表示パネル11と後述詳細に説明する狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13により上述した再帰反射部材2に対して斜めから映像が入射する可能性が小さくゴーストの発生と発生しても輝度が低いという構造的に優れたシステムとなる。
【0026】
<空間浮遊映像表示システム(2)>
図6Aは、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示システムの主要部構成の他の例(第二例)を示す図である。映像表示装置1は、映像表示素子としての液晶表示パネル11と、狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えて構成される。液晶表示パネル11は、画面サイズが5インチ程度の小型のものから、80インチを超える大型な液晶表示パネルで構成される。例えば反射型偏光板のような偏光分離部材101で液晶表示パネルからの映像光を再帰反射部材2に向けて反射させる。
【0027】
再帰反射部材2の光入射面にはλ/4板21を設け、映像光を2度通過させることで偏光変換し特定偏波を他方の偏波に変換することで、偏光分離部材101を透過させ、透明部材100の外側に実像である空間浮遊映像3を表示する。透明部材100の外光入射面には吸収型の偏光板を設ける。上述した偏光分離部材101では再帰反射することで偏光軸が不揃いになるため一部の映像光は反射し映像表示装置1に戻る。この光が再度映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で反射し、ゴースト像を発生させ空間浮遊映像3の画質を著しく低下させる。そこで本実施例では映像表示装置1の映像表示面に吸収型偏光板12を設け、映像光は透過させ、上述した反射光を吸収させることで空間浮遊映像3のゴースト像による画質低下を防止する。
【0028】
更に、セット外部の太陽光や照明光による画質低下を軽減するため、透明部材100の表面に吸収型偏光板112を設けると良い。さらに再帰反射部材2に外光が入射すると強力なゴースト像を発生させるため第4遮光部材25で外光の入射を妨げる構成とする。偏光分離部材101は反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜から形成される。
【0029】
偏光分離部材101と液晶表示パネル11の間に、空間浮遊映像を形成する正規映像光以外の斜め映像光を遮光する第2遮光部材23及び第3遮光部材24を併設している。また再帰反射部材2と偏光分離部材101の間にも正規映像光以外の斜め映像光を遮光する第1遮光部材22を設け、更に上述したように外光が直接再帰反射部材2に入射しないように第4遮光部材25も併設してゴースト像を発生させる斜め光を遮光する。この結果、ゴースト像の発生を抑えることができる。
【0030】
発明者らは実験により液晶表示パネル11と偏光分離部材101の空間に第3遮光部材24と第2遮光部材23を併設することで遮光の効果を高められることを確認した。この実験では、第2遮光部材23及び第3遮光部材24の内径は、空間浮遊映像を形成する正規映像光束が通過する領域に対して面積で110%とすることで部品精度を機械公差の範囲で作成し組み立てることができる。更に、ゴースト像発生をさらに軽減するには前述の遮光部材の正規映像光束が通過する領域に対して104%以下とすればゴースト像の発生を実用上問題のないレベルに抑えることができた。一方が再帰反射部材2と偏光分離部材101の間に設けた第1遮光部材22は、第1遮光部材22と再帰反射部材2の距離L1を再帰反射部材2と偏光分離部材101の距離に対して50%以下であればゴースト像の発生を更に軽減でき30%以下では目視では実用上問題のないレベルまで軽減できた。更に、再帰反射部材2を囲むように設けた第4遮光部材25と第1遮光部材22と第2遮光部材23及び第3遮光部材24を併設することで更にゴーストレベルを軽減できた。
【0031】
図6Aの遮光部材の断面形状は空間浮遊映像を形成する正規映像光束が通過する領域(本実施形態では吸収型偏光板112における映像光束が通過する領域に相当する。)に対する遮光部材の有効面積とほぼ同サイズとし内面に向かって梁を設けゴースト像を形成する異常光を梁の表面で複数回反射させ異常光を吸収させると更に良い。遮光部材外枠に対して正規映像光束が通過する領域を小さくし梁の内接する面と同等の面積としている。
【0032】
他方、再帰反射部材2の形状を映像表示装置1と正対した平面形状から曲率半径200mm以上の凹面又は凸面として再帰反射部材2で反射した斜め映像光によりゴースト像が発生しても、反射後に発生したゴースト像を観視者の視界から離してしまうことで監視できないようにしても良い。曲率半径が100mm以下とする再帰反射部材2の周辺で反射した光の内、正規で反射した光量が低下し得られる空間浮遊映像3の周辺光量が低下するという新たな課題が発生する。このため、ゴースト像を実用上問題のないレベルに軽減するためには上述した技術手段を選択し適用するか、併用すると良い。
【0033】
<空間浮遊映像表示システム(3)>
図6Bは本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の例(第三例)を示す図である。映像表示装置1は、映像表示素子としての液晶表示パネル11と、狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えて構成される。液晶表示パネル11は、画面サイズが5インチ程度の小型のものから、80インチを超える大型な液晶表示パネル11で構成される。例えば反射型偏光板のような偏光分離部材101で液晶表示パネル11からの映像光を再帰反射部材2に向けて一旦は透過させる。
【0034】
再帰反射部材2の光入射面にはλ/4板21を設け、映像光を2度通過させることで偏光変換し特定偏波を他方の偏波に変換することで、偏光分離部材101で反射させ、透明部材100の外側に実像である空間浮遊映像3を表示する。透明部材100の外光入射面には吸収型偏光板112を設ける。この透明部材100は映像光が通過する部分だけ透明体でありそのほかの部分は外光がセット内に入射しないように光を遮る遮光部材100bで構成されている。再帰反射部材2の性能によっては、反射後の映像光の偏光軸が不揃いになることがある。この場合、偏光軸が不揃いになった一部の映像光は偏光分離部材101で反射され映像表示装置1に戻る。この光が再度映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で再反射し、ゴースト像を発生させ空間浮遊映像3の画質を著しく低下させる。そこで本実施例では映像表示装置1の映像表示面にさらに吸収型偏光板12を設ける。もしくは、映像表示装置1の表面に設けた吸収型偏光板12の映像出射側面に反射防止膜(不図示)を設けることでゴースト像の光を透過させ、吸収型偏光板12で吸収させることで空間浮遊映像3のゴースト像による画質低下を防止する。
【0035】
更に、映像表示装置1やその他の光学部品を収容する筐体106の外部の太陽光や照明光による画質低下を軽減するため、透明部材100の外表面に吸収型偏光板112を設けると良い。さらに再帰反射部材2に外光が入射すると強力なゴースト像を発生させるため再帰反射部材2を傾け(傾きθ)、再帰反射映像光が通過する透明体で形成された窓部100aから離れた位置に配置し外光の入射を妨げる構成とする。映像表示装置1も同様に窓部100aから離れた位置に配置し、映像表示装置1から出射する映像光が窓部100aから視認できない位置に映像表示装置1を設けるとゴースト像の発生が軽減される。(窓部100aは開口部の一形態である。)
【0036】
また、偏光分離部材101は反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜から形成される。
【0037】
窓部100aから出射した空間浮遊映像3は反射ミラー400で反射される。この時、窓部100aの平面に対して反射ミラー400の角度を所望の角度に設定することで、得られる空間浮遊映像3の位置と角度を変更できる。反射ミラー400は特定偏波の反射率が高い特性のものを用いれば、透過度が高いミラーとして用いることができる。また空間浮遊映像光をS偏波で得る光学系とすれば反射膜を成膜することなく透明体ミラーを用いても高い反射率が得られる。この結果、視認性の高い良好な空間浮遊映像(図6B中は立体像と表記)を、透明体ミラーを用いても得ることができ、観視者が外景を監視する支障とならない。他方、反射ミラー400を除いた光学システムでは図6Bに示したように窓部100aを透過した映像光により図中に示す平面像を得ることができる。
【0038】
<空間浮遊映像表示システム(4)>
図6Cは本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の例(第四例)を示す図である。図6Cにおいて、図6Bと同様に、映像表示装置1は、映像表示素子としての液晶表示パネル11と、狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えて構成される。液晶表示パネル11は、画面サイズが5インチ程度の小型のものから、80インチを超える大型な液晶表示パネル11で構成される。例えば反射型偏光板のような偏光分離部材101で液晶表示パネル11からの映像光を再帰反射部材2に向けて一旦は透過させ、透過した映像光は再帰反射部材2で反射される。ここで、上記偏光分離部材101は、ビームスプリッタとも称され、特定の偏光(P偏光またはS偏光)を伴う映像光を透過するが、上記特定の偏光とは別の偏光(S偏光またはP偏光)を伴う映像光は反射する特徴を有している。
【0039】
再帰反射部材2の光入射面にはλ/4板21を設け、映像光を2度通過させることで偏光変換し特定偏波を他方の偏波に変換することで、偏光分離部材101で反射させ、透明部材100の外側に実像である空間浮遊映像3を表示する。図6B同様、透明部材100の外光入射面には吸収型偏光板112を設ける。また、図示はしないが、図6B同様、外光が再帰反射部材2や映像表示装置1に入射しないように、透明部材100の周囲を遮光部材100bで囲む構成としてもよい。
【0040】
図6Cを用いて空間浮遊映像表示装置の主要構成の配置を説明する。図6Cにおいて、矢印方向を示す観察方向Cから観察する場合、2次元平面形状の空間浮遊映像3は観察することができる。空間浮遊映像3が形成される位置は以下のように定まる。図6Cでは、映像表示装置1と再帰反射部材2とが互いに平行となるように配置されており、具体的に映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面と再帰反射部材2の反射面とは正対して配置されている。よって、好適な空間浮遊映像3を観察することが可能となる。一方、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面と再帰反射部材2の反射面とが互いに略平行となるように配置されてもよく、互いになす角が10度前後であれば、発生するゴースト像は実用上問題とならない、つまり、ゴースト像は発生しても空間浮遊映像3の視認性に影響を与えることがほぼない。
【0041】
映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11上の任意の点A(ここでは、液晶表示パネル11上の中央の1点)と、再帰反射部材2上の対応点A’(同様に、再帰反射部材2上の中央の1点)とを結んだ線分A-A’が偏光分離部材(ビームスプリッタ)101と交差する点Bとし、線分ABの長さをL1とする。線分A-A’は液晶表示パネル11の映像表示面から出射される映像光の光軸であり、当該光源の出射方向が液晶表示パネル11の映像表示面とほぼ垂直であり、あるいは線分A-A’は液晶表示パネル11の映像表示面に略垂直または垂直である。次に、上記偏光分離部材101上の点Bから鉛直方向(図6Cの透明部材100を配置する方向)に長さL2の点を点Cとし、線分ABの長さL1と線分BCの長さL2とはほぼ同じ長さである。すると、上記点Cを中央とする2次元平面上に空間浮遊映像3が形成される。
【0042】
ここでは、液晶表示パネル11上の中央の1点Aで説明したが、液晶表示パネル11上の任意の点について、上記、L1=L2の関係が成り立つ。したがって、図6Cにおいて、液晶表示パネル11を偏光分離部材101の点Bから遠ざけて配置すれば、L1は長くなり、L1=L2の関係から、L2も長くなるので、空間浮遊映像3が形成される位置はより上方となる。すなわち、透明部材100で構成される窓部100aから空間浮遊映像3までの距離が長くなる。よって、空間浮遊映像3の表示位置は液晶表示パネル11と偏光分離部材101との間の距離に応じて変化する。つまり、空間浮遊映像3の表示位置は、液晶表示パネル11と偏光分離部材101との間の距離に応じて定まる位置である。
【0043】
ただし、液晶表示パネル11から同じ強度の映像光を出射する場合、液晶表示パネル11を偏光分離部材101から遠ざけて配置することは、液晶表示パネル11と再帰反射部材2との距離も長くなるため、液晶表示パネル11から再帰反射部材2に到達する映像光の強度(輝度)は低くなり、結果的に、空間浮遊映像3の明るさも低下することになる。したがって、表示する空間浮遊映像3から透明部材100までの距離と、空間浮遊映像3の明るさとはトレードオフの関係にあるため、液晶表示パネル11と偏光分離部材101との配置位置を調整することで、好適で視認性の高い空間浮遊映像3を表示することができる。
【0044】
また、図6Cより明らかなように、偏光分離部材101と、線分A‐A’(液晶表示パネル11から出射される映像光の光軸)とのなす角が45度である場合には、映像表示装置1で生成される映像と、空間浮遊映像3との大きさは同一となる。一方、図示はしないが、上記角度が45度よりも大きい場合には、空間浮遊映像3の幅は、映像表示装置1で生成される映像に比べて小さくなり、逆に、上記角度が45度よりも小さい場合には、空間浮遊映像3の幅は、映像表示装置1で生成される映像に比べて大きくなる。
【0045】
<空間浮遊映像表示システム(5)>
図6D、および、図6Eは本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の例(第五例)を示す図である。図6Dに示す空間浮遊映像表示装置は、図6Cと同じ部品、すなわち、映像表示装置1、再帰反射部材2、λ/4板21、偏光分離部材101、透明部材100等より構成されている。また、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面と再帰反射部材2の再帰反射面とは正対して配置されている。
【0046】
ただし、図6D図6Cとは、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面と再帰反射部材2の反射面とは正対して配置されているものの、再帰反射部材2の方が映像表示装置1よりも上部に位置している点で異なる。つまり、映像表示装置1が透明部材100から離れた位置に配置されている。よって、映像表示装置1から出射する映像光が透明部材100から視認できない位置に映像表示装置1を設けるとゴースト像の発生が軽減される。また、再帰反射部材2を傾け、再帰反射映像光が通過する透明部材100から離れた位置に配置し外光の入射を妨げる構成とする。すなわち、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11から発せられる映像光の向き、換言すれば、点Aと点A’とを結ぶ線分A-A’は図6Cでは水平であるが、図6Dにおいては、左斜め上方に傾いており、線分A-A’と偏光分離部材101とのなす角が45度よりも大きい点で異なっている。上記の結果、傾いた空間浮遊映像3を観察することが可能となる。
【0047】
さらに、図6Dでは、空間浮遊映像3は、図6Cのごとく水平に形成されるのに対して、上記線分A-A’の傾き、および、偏光分離部材101の傾き角度に応じて、傾き角を有して形成される。すなわち、線分A-A’の傾き、および、偏光分離部材101の傾き角度を変化させることで、空間浮遊映像3が形成される平面の角度を調整することが可能であり、ユーザの観察方向Sを、適切な角度とすることが可能となる。
【0048】
図6Eに示す空間浮遊映像表示装置では、図6Dと同じ部品より構成され、また、部品の配置も同じであるが、偏光分離部材101の傾きが、図6Dと比較して大きく(より水平に近い傾き角を有し)、そのため、映像光の光軸、すなわち、線分A-A’と、偏光分離部材101のなす角βは、図6Dにおける角αと比較して、より小さい角度となっている。つまり、角度α>角度βの関係となっている。
【0049】
上記の関係(角度α>角度β)から、図6Eに示すように、空間浮遊映像3の観察方向Sは、図6Dに比較して、より鉛直から遠ざかる向きとなる。さらに、観察した空間浮遊映像3は図6Dより傾いている。
【0050】
上記の通り、映像光の向き、すなわち、線分A-A’と、偏光分離部材101のなす角(αまたはβ)を調整することにより、空間浮遊映像3と透明部材100とのなす角を変化させることができる。よって、ユーザにとって好適な観察方向を得ることが可能となる。
【0051】
<反射型偏光板>
本発明のグリッド構造の反射型偏光板は、偏光軸に対して垂直方向からの光についての特性は低下する。このため、偏光軸に沿った仕様が望ましく、液晶表示パネル11からの出射映像光を狭角で出射可能な本実施例の光源が理想的な光源となる。また、水平方向の特性も同様に斜めからの光については特性低下がある。以上の特性を考慮して、以下、液晶表示パネル11からの出射映像光をより狭角に出射可能な光源を液晶表示パネル11のバックライトとして使用する、本実施例の構成例について説明する。これにより、高コントラストな空間浮遊映像3が提供可能となる。
【0052】
<映像表示装置>
次に、本実施例の映像表示装置1について図を用いて説明する。本実施例の映像表示装置1は映像表示素子(液晶表示パネル11)と共に、その光源を構成する光源装置13を備えており、図7では、光源装置13を液晶表示パネルと共に展開斜視図として示している。
【0053】
この液晶表示パネル(映像表示素子)は、図7に矢印30で示すように、バックライト装置である光源装置13からの光により狭角な拡散特性を有する、即ち、指向性(直進性)が強く、かつ、偏光面を一方向に揃えたレーザ光に似た特性の照明光束を得て、入力される映像信号に応じて変調をかけた映像光を、再帰反射部材2により反射しウィンドガラス105を透過して実像である空間浮遊映像を形成する(図1参照)。また、図7では、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11と、更に、光源装置13からの出射光束の指向特性を制御する光方向変換パネル54、および、必要に応じて狭角拡散板(図示せず)を備えて構成されている。即ち、液晶表示パネル11の両面には偏光板が設けられ、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調して出射する(図7の矢印30を参照)構成となっている。これにより、所望の映像を指向性(直進性)の高い特定偏波の光として、光方向変換パネル54を介して、再帰反射部材2に向けて投写し、再帰反射部材2で反射後、店舗(空間)の外部の観視者の眼に向けて透過して空間浮遊映像3を形成する。なお、上述した光方向変換パネル54の表面には保護カバー50(図8図9を参照)を設けてよい。
【0054】
本実施例では、光源装置13からの出射光束(矢印30で示す)の利用効率を向上させ、消費電力を大幅に低減するために、光源装置13と液晶表示パネル11を含んで構成される映像表示装置1において、光源装置13からの光(図8の矢印30を参照)を、再帰反射部材2に向けて投写し、再帰反射部材2で反射後、ウィンドガラス105の表面に設けた透明シート(図示せず)により、空間浮遊映像3を所望の位置に形成するよう指向性を制御することもできる。具体的には、この透明シートは、フレネルレンズやリニアフレネルレンズ等の光学部品によって高い指向性を付与したまま浮遊映像の結像位置を制御する。このことによれば、映像表示装置1からの映像光は、レーザ光のようにウィンドガラス105の外側(例えば、歩道)にいる観察者に対して高い指向性(直進性)で効率良く届くこととなり、その結果、高品位な浮遊映像を高解像度で表示すると共に、光源装置13のLED(Light Emitting Diode)素子201を含む映像表示装置1による消費電力を著しく低減することが可能となる。
【0055】
<映像表示装置の例(1)>
図7は映像表示装置1の別例を示す図である。また図8は、図7の光源装置13の上に液晶表示パネル11と光方向変換パネル54を配置した状態を示す。この光源装置13は、例えば、プラスチックなどにより形成され、その内部にLED素子201、導光体203を収納して構成されており、導光体203の端面には、図8等にも示したようにそれぞれのLED素子201からの発散光を略平行光束に変換するために、受光部に対して対面に向かって徐々に断面積が大きくなる形状を有し、内部を伝搬する際に複数回全反射することで発散角が徐々に小さくなるような作用を有するレンズ形状を設けている。その上面には、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置13のケースのひとつの側面(本例では左側の端面)には、半導体光源であるLED素子201や、その制御回路を実装したLED基板202(図8参照)が取り付けられると共に、LED基板202の外側面には、LED素子201および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンクが取り付けられてもよい。
【0056】
また、光源装置13のケースの上面に取り付けられる液晶表示パネル11のフレーム(図示せず)には、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネル11と、更に、当該液晶表示パネル11に電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)(図示せず)などが取り付けられて構成される。即ち、映像表示素子である液晶表示パネル11は、固体光源であるLED素子201と共に、電子装置を構成する制御回路(図示せず)からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。この時、生成される映像光は拡散角度が狭く特定の偏波成分のみとなるため、映像信号により駆動された面発光レーザ映像源に近い、従来にない新しい映像表示装置1が得られることとなる。なお、現状では、レーザ装置により、上述した映像表示装置1で得られる画像と同等のサイズのレーザ光束を得ることは、技術的にも安全上からも不可能である。そこで、本実施例では、例えば、LED素子201を備えた一般的な光源からの光束から、上述した面発光レーザ映像光に近い光を得る。
【0057】
続いて、光源装置13のケース内に収納されている光学系の構成について、図8と共に、図9を参照しながら詳細に説明する。図8および図9は断面図であるため、光源を構成する複数のLED素子201が1つだけ示されており、これらは導光体203の受光端面203aの形状により略コリメート光に変換される。このため導光体端面の受光部とLED素子201は所定の位置関係を保って取り付けられている。なお、この導光体203は、各々、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、この導光体端部のLED受光面は、例えば、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有し、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有し、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有するものである(図示せず)。なお、導光体203の受光部外形形状は、円錐形状の外周面を形成する放物面形状をなし、LED素子201から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0058】
他方、LED素子201は、その回路基板であるLED基板202の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板202は、LEDコリメータ(受光端面203a)に対して、その表面上のLED素子201が、それぞれ、前述した凹部の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0059】
かかる構成によれば、導光体203の受光端面203aの形状によって、LED素子201から放射される光は略平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0060】
以上述べたように、光源装置13は、導光体203の端面に設けた受光部である受光端面203aに光源であるLED素子201を複数並べた光源ユニットを取り付けて構成され、LED素子201からの発散光束を導光体端面の受光端面203aのレンズ形状によって略平行光として、矢印で示すように、導光体203の内部を導光し(図面に平行な方向)、光束方向変換手段204によって、導光体203に対して略平行に配置された液晶表示パネル11に向かって(図面から手前に垂直な方向)出射する。導光体203内部または表面の形状によってこの光束方向変換手段204の分布(密度)を最適化することで、液晶表示パネル11に入射する光束の均一性を制御することができる。上述した光束方向変換手段204は導光体203の表面の形状や導光体203の内部に例えば屈折率の異なる部分を設けることで、導光体203内を伝搬した光束を、導光体203に対して略平行に配置された液晶表示パネル11に向かって(図面から手前に垂直な方向)出射する。この時、液晶表示パネル11を画面中央に正対し画面対角寸法と同じ位置に視点を置いた状態で画面中央と画面周辺部の輝度を比較した場合の相対輝度比が20%以上あれば実用上問題なく、30%を超えていれば更に優れた特性となる。
【0061】
なお、図8は上述した導光体203とLED素子201を含む光源装置13において、偏光変換する本実施例の光源の構成とその作用を説明するための断面配置図である。図8において、光源装置13は、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板216、レンチキュラーレンズなどから構成されており、その上面には、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える液晶表示パネル11が取り付けられている。
【0062】
光源装置13に対向した液晶表示パネル11の光源光入射面(図の下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設けており、LED素子201から出射した自然光束210のうち片側の偏波(例えばP波)212を選択的に反射させ、導光体203の一方(図の下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル11に向かうようにする。そこで、反射シート205と導光体203の間もしくは導光体203と反射型偏光板49の間に位相差板216(λ/4板)を設けて反射シート205で反射させ、2回通過させることで反射光束をP偏光からS偏光に変換し、映像光としての光源光の利用効率を向上する。液晶表示パネル11で映像信号により光強度を変調された映像光束は(図8の矢印213)、再帰反射部材2に入射して、図1に示したように、反射後にウィンドガラス105を透過して店舗(空間)の内部または外部に実像である空間浮遊映像3を得ることができる。
【0063】
図9は、図8と同様に、導光体203とLED素子201を含む光源装置13において、偏光変換する本実施例の光源の構成と作用を説明するための断面配置図である。光源装置13も、同様に、例えばプラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板216、レンチキュラーレンズなどから構成されており、その上面には、映像表示素子として、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える液晶表示パネル11が取り付けられている。
【0064】
また、光源装置13に対応した液晶表示パネル11の光源光入射面(図の下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設け、LED素子201から出射した自然光束210うち片側の偏波(例えばS波)211を選択的に反射させ、導光体203の一方(図の下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度液晶表示パネル11に向かう。反射シート205と導光体203の間もしくは導光体203と反射型偏光板49の間に位相差板216(λ/4板)を設けて反射シート205で反射させ、2回通過させることで反射光束をS偏光からP偏光に変換し、映像光として光源光の利用効率を向上する。液晶表示パネル11で映像信号により光強度変調された映像光束は(図9の矢印214)、再帰反射部材2に入射して、図1に示すように、反射後にウィンドガラス105を透過して店舗(空間)の内部または外部に実像である空間浮遊映像3を得ることができる。
【0065】
図8および図9に示す光源装置13においては、対向する液晶表示パネル11の光入射面に設けた反射型偏光板49の作用とともに、反射型偏光板49で片側の偏光成分を反射するため、理論上得られるコントラスト比は、反射型偏光板49のクロス透過率の逆数と液晶表示パネル11に付帯した2枚の偏光板により得られるクロス透過率の逆数を乗じたものとなる。これにより、高いコントラスト性能が得られる。実際には、表示画像のコントラスト性能が10倍以上向上することを実験により確認した。この結果、自発光型の有機ELに比較しても遜色ない高品位な映像が得られた。
【0066】
<映像表示装置の例(2)>
図10には、映像表示装置1の具体的な構成の他の一例を示す。図10の光源装置13は、図12等の光源装置と同様である。この光源装置13は、例えばプラスチックなどのケース内にLED、コリメータ、合成拡散ブロック、導光体等を収納して構成されており、その上面には液晶表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置13のケースのひとつの側面には、図12等に示す半導体光源であるLED(Light Emitting Diode)素子14a、14bや、その制御回路を実装したLED基板102が取り付けられると共に、LED基板102の外側面には、LED素子14a、14bおよび制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンク103(図10参照)が取り付けられている(図12図13等も参照)。
【0067】
また、ケースの上面に取り付けられた液晶表示パネルフレームには、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネル11と、更に、液晶表示パネル11に電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)403(図10参照)などが取り付けられて構成されている。即ち、映像表示素子である液晶表示パネル11は、固体光源であるLED素子14a,14bと共に、電子装置を構成する制御回路(ここでは図示せず)からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。
【0068】
<映像表示装置の例(3)>
続いて、図11を用いて映像表示装置1の具体的な構成の他の例(表示装置の例3)を説明する。この映像表示装置1の光源装置は、LEDからの光(P偏光とS偏光が混在)の発散光束をコリメータ(コリメータレンズまたはLEDコリメータレンズ)18により略平行光束に変換し、反射型導光体304の反射面により液晶表示パネル11に向け反射する。反射光は液晶表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された反射型偏光板49に入射する。反射型偏光板49では特定の偏波(例えばP偏光)は透過して液晶表示パネル11に入射する。反射型偏光板で他方の偏波(例えばS偏光)は反射され再び反射型導光体304へ向かう。反射型偏光板49は、反射型導光体304の反射面からの光の主光線に対して垂直とならないよう傾きを以て設置されており、反射型偏光板49で反射された光の主光線は、反射型導光体304の透過面に入射する。反射型導光体304の透過面に入射した光は、反射型導光体304の背面を透過し、位相差板であるλ/4板270を透過し、反射板271で反射される。反射板271で反射された光は、再びλ/4板270を透過し、反射型導光体304の透過面を透過する。反射型導光体304の透過面を透過した光は再び反射型偏光板49に入射する。このとき、反射型偏光板49に再度入射する光は、λ/4板270を2回通過しているため、反射型偏光板49を透過する偏波(例えば、P偏光)へ偏光が変換されている。よって、偏光が変換されている光は反射型偏光板49を透過し、液晶表示パネル11に入射する。なお、偏光変換に係る偏光設計について、上述の説明から偏波を逆に構成(S偏光とP偏光を逆にする)してもかまわない。
【0069】
この結果、LEDからの光は特定の偏波(例えばP偏光)に揃えられ、液晶表示パネル11に入射し、映像信号に合わせて輝度変調されパネル面に映像を表示する。上述の例と同様に光源を構成する複数のLEDが示されており(ただし、縦断面のため図16では1個のみ図示)、これらはコリメータ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、コリメータ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このコリメータ18は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有してもよい。その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有してもよい。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、コリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LEDから周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0070】
なお、LEDは、その回路基板である、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、コリメータ18に対して、その表面上のLEDが、それぞれ、円錐凸形状の頂部の中央部(頂部に凹部が有る場合はその凹部)に位置するように配置されて固定される。
【0071】
かかる構成によれば、コリメータ18によって、LEDから放射される光のうち、特に、その中央部分から放射される光は、コリメータ18の外形を形成する凸レンズ面 により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、コリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したコリメータ18によれば、LEDにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0072】
以上の構成は図12図13等に示した映像表示装置の光源装置と同様の構成である。 さらに、図11に示したコリメータ18により略平行光に変換された光は、反射型導光体304で反射される。当該光のうち、反射型偏光板49の作用により特定の偏波の光は反射型偏光板49透過し、反射型偏光板49の作用により反射された他方の偏波の光は再度導光体304を透過する。当該光は、反射型導光体304に対して、液晶表示パネル11とは逆の位置にある反射板271で反射する。この時、当該光は位相差板であるλ/4板270を2度通過することで偏光変換される。反射板271で反射した光は、再び導光体304を透過して、反対面に設けた反射型偏光板49に入射する。当該入射光は、偏光変換がなされているので、反射型偏光板49を透過して、偏光方向を揃えて液晶表示パネル11に入射される。この結果、光源の光を全て利用できるので光の幾何光学的な利用効率が2倍になる。また、反射型偏光板の偏光度(消光比)もシステム全体の消光比に乗せられるので、本実施例の光源装置を用いることで表示装置全体としてのコントラスト比が大幅に向上する。なお、反射型導光体304の反射面の面粗さおよび反射板271の面粗さを調整することで、それぞれの反射面での光の反射拡散角を調整することができる。液晶表示パネル11に入射する光の均一性がより好適になるように、設計毎に、反射型導光体304の反射面の面粗さおよび反射板271の面粗さを調整すればよい。
【0073】
なお、図11の位相差板であるλ/4板270は、必ずしもλ/4板270へ垂直に入射した偏光に対する位相差がλ/4である必要はない。図11の構成において、偏光が2回通過することで、位相が90°(λ/2)変わる位相差板であればよい。位相差板の厚さは偏光の入射角度分布に応じて調整すればよい。
【0074】
液晶表示パネル11からの出射光は、従来のTVセットでは画面水平方向(図16(A)X軸で表示)と画面垂直方向(図16(B)Y軸で表示)ともに同様な拡散特性を持っている。これに対して、本実施例の液晶表示パネル11からの出射光束の拡散特性は、例えば図16の例1に示すように輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が13度とすることで、従来の62度に対して1/5となる。同様に垂直方向の視野角は上下不均等として上側の視野角を下側の視野角に対して1/3程度に抑えるように反射型導光体の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、従来の液晶TVに比べ監視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は50倍以上となる。
【0075】
更に、図16の例2に示す視野角特性とすれば輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が5度とすることで従来の62度に対して1/12となる。同様に垂直方向の視野角は上下均等として視野角を従来に対して1/12程度に抑えるように反射型導光体の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、従来の液晶TVに比べ監視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は100倍以上となる。以上述べたように視野角を狭角とすることで監視方向に向かう光束量を集中できるので光の利用効率が大幅に向上する。この結果、従来のTV用の液晶表示パネルを使用しても、光源装置の光拡散特性を制御することで同様な消費電力で大幅な輝度向上が実現可能で、屋外に向けての空間浮遊映像表示システムに対応した映像表示装置1とすることができる。
【0076】
図11に戻る。基本構成としては、図11に示すように光源装置により狭角な指向特性の光束を液晶表示パネル11に入射させ、映像信号に合わせて輝度を変調することで、液晶表示パネル11の画面上に表示した映像情報を、再帰反射部材2で反射させ得られた空間浮遊映像3を、ウィンドガラス105を介して室外または室内に表示する。
【0077】
<光源装置13の例(1)>
続いて、筐体106(図6B参照)内に収納されている光源装置等の光学系の構成について、図12と共に、図13(A)および(B)を参照しながら、詳細に説明する。
【0078】
図12には、光源を構成するLED素子14a、14bが示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、このLEDコリメータ15は、図13(B)にも示すように、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面は、LED素子14a、14bから周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0079】
また、LED素子14a、14bは、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED素子14aまたは14bが、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0080】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED素子14aまたは14bから放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図13(B)の右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157、154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED素子14aまたは14bにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0081】
なお、図13に示すようにLEDコリメータ15の光の出射側には偏光変換素子21が設けられている。この偏光変換素子21は、図13からも明らかなように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材とを組み合わせ、LEDコリメータ15からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列して構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、偏光ビームスプリッタ(以下、「PBS膜」と省略する)211と反射膜212とが設けられており、また、偏光変換素子21へ入射してPBS膜211を透過した光が出射する出射面には、λ/2位相板215が備えられている。
【0082】
この偏光変換素子21の出射面には、更に、図13(A)にも示す矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED素子14aまたは14bから出射された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射し、出射側のテクスチャー161により拡散された後、導光体17に到る。
【0083】
導光体17は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形(図13(B)参照)の棒状に形成された部材であり、そして、図12からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1拡散板18aを介して対向する導光体光入射部(面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(面)172と、第2拡散板18bを介して、映像表示素子である液晶表示パネル11と対向する導光体光出射部(面)173とを備えている。
【0084】
この導光体17の導光体光反射部(面)172には、その一部拡大図である図13(B)にも示すように、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。そして、反射面172a(図では右上がりの線分)は、図において一点鎖線で示す水平面に対してαn(n:自然数であり、本例では、例えば、1~130である)を形成しており、その一例として、ここでは、αnを43度以下(ただし、0度以上)に設定している。
【0085】
導光体入射部(面)171は、光源側に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。これによれば、合成拡散ブロック16の出射面からの平行光は、第1拡散板18aを介して拡散されて入射し、図12からも明らかなように、導光体入射部(面)171により上方に僅かに屈曲(偏向)しながら導光体光反射部(面)172に達し、ここで反射して図12の上方の出射面に設けた液晶表示パネル11に到る。
【0086】
以上に詳述した映像表示装置1によれば、光利用効率やその均一な照明特性をより向上すると同時に、モジュール化されたS偏光波の光源装置を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。なお、上記の説明では、偏光変換素子21をLEDコリメータ15の後に取り付けるものとして説明したが、本発明はそれに限定されることなく、液晶表示パネル11に到る光路中に設けることによっても同様の作用・効果が得られる。
【0087】
なお、導光体光反射部(面)172には、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されており、照明光束は、各々の反射面172a上で全反射されて上方に向かい、更には、導光体光出射部(面)173には狭角拡散板(図示せず)を設けて略平行な拡散光束として指向特性を制御する光方向変換パネル54に入射し、斜め方向から液晶表示パネル11へ入射する。本実施例では光方向変換パネル54を導光体出射面173と液晶表示パネル11の間に設けたが、液晶表示パネル11の出射面に設けても、同様の効果が得られる。
【0088】
<光源装置13の例(2)>
光源装置13等の光学系の構成について、他の例を図14に示す。図13に示した例と同様に、光源を構成する複数(本例では、2個)のLED素子14a、14bが示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、図13に示した例と同様に、このLEDコリメータ15は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面は、LED素子14aから周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0089】
また、LED素子14a、14bは、その回路基板である、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED素子14aまたは14bが、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0090】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED素子14aまたは14bから放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図の右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157、154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED素子14aまたは14bにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0091】
なお、LEDコリメータ15の光の出射側には第1拡散板18aを介して導光体170が設けられている。導光体170は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形(図14(A)参照)の棒状に形成された部材であり、そして、図14(A)からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1拡散板18aを介して対向する導光体170の入射部(面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(面)172と、反射型偏光板200を介して映像表示素子である液晶表示パネル11と対向する導光体光出射部(面)173とを備えている。
【0092】
この反射型偏光板200は、例えばP偏光を反射(S偏光は透過)させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLED素子14a、14bから発した自然光のうちP偏光を反射し、図14(B)に示した導光体光反射部172に設けたλ/4板172cを通過して反射面172dで反射し、再びλ/4板172cを通過することでS偏光に変換され、液晶表示パネル11に入射する光束は全てS偏光に統一される。
【0093】
同様に、反射型偏光板200としてS偏光を反射(P偏光は透過)させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLED素子14a、14bから発した自然光のうちS偏光を反射し、図14(B)に示した導光体光反射部172に設けたλ/4板172cを通過して反射面172dで反射し、再びλ/4板172cを通過することでP偏光に変換され、液晶表示パネル52に入射する光束は全てP偏光に統一される。以上述べた構成でも偏光変換が実現できる。
【0094】
<光源装置13の例(3)>
光源装置等の光学系の構成についての他の例を、図11を用いて説明する。第3の例では、図11に示すようにLED基板102からの自然光(P偏光とS偏光が混在)の発散光束をLEDコリメータレンズ18により略平行光束に変換し、反射型導光体304により液晶表示パネル11に向け反射する。反射光は液晶表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された反射型偏光板49に入射する。反射型偏光板49で特定の偏波(例えばS偏波)が反射され導光体304の反射面を繋ぐ面を透過し、導光体304の反対面に面して配置された反射板271で反射され位相板(λ/4波長板)270を2度透過することで偏光変換され、導光体と反射型偏光板を透過して液晶表示パネル11に入射し映像光に変調される。この時、特定偏波と偏光変換された偏波面を合わせることで光の利用効率が通常の2倍となり、反射型偏光板の偏光度(消光比)もシステム全体の消光比に乗せられるので、本実施例の光源装置を用いることで情報表示システムのコントラスト比が大幅に向上する。
【0095】
この結果、LEDからの自然光は特定の偏波(例えばP偏波)に揃えられる。上述の例と同様に光源を構成する複数のLEDが設けられており(ただし、縦断面のため図12では1個のみ図示)、これらはLEDコリメータレンズ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータレンズ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このLEDコリメータレンズ18は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータレンズ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LEDコリメータレンズ18から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0096】
また、LEDは、その回路基板である、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータレンズ18に対して、その表面上のLEDが、それぞれ、その凹部の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0097】
かかる構成によれば、LEDコリメータレンズ18によって、LEDから放射される光のうち、特に、その中央部分から放射される光は、LEDコリメータレンズ18の外形を形成する2つの凸レンズ面により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータレンズ18の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータレンズ18によれば、LEDにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0098】
<映像表示装置の例(4)>
さらに、表示装置の光源装置等の光学系の構成についての他の例(表示装置の例4)を、図17を用いて説明する。表示装置の例3の光源装置において、反射型導光体304の代わりに拡散シートを用いる場合の構成例である。具体的には、LEDコリメータレンズ18の光の出射側には図面の垂直方向と水平方向(図の前後方向で図示せず)の拡散特性を変換する光学シートを2枚用い(光学シート207Aおよび光学シート207B)、LEDコリメータレンズ18からの光を2枚の光学シート(拡散シート)の間に入射させる。この光学シートは、2枚構成ではなく1枚としても良い。1枚構成とする場合には1枚の光学シートの表面と裏面の微細形状で垂直と水平の拡散特性を調整する。また、拡散シートを複数枚使用して作用を分担しても良い。ここで、図17の例では、光学シート207Aと光学シート207Bの表面形状と裏面形状による反射拡散特性について、液晶表示パネル11から出射する光束の面密度が均一になるように、LEDの数量とLED基板(光学素子)102からの発散角およびLEDコリメータレンズ18の光学仕様を設計パラメータとして最適設計すると良い。つまり、導光体の代わりに複数の拡散シートの表面形状により拡散特性を調整する。図17の例では偏光変換は上述した表示装置の例3と同様の方法で行われる。すなわち、図17の例において、反射型偏光板49はS偏光を反射(P偏光は透過)させる特性を有するように構成すればよい。その場合、光源であるLEDから発した光のうちP偏光を透過して、透過した光は液晶表示パネル11に入射する。光源であるLEDから発した光のうちS偏光を反射し、反射した光は、図17に示した位相差板270を通過する。位相差板270を通過した光は、反射板271で反射される。反射板271で反射した光は、再び位相差板270を通過することでP偏光に変換される。偏光変換された光は、反射型偏光板49を透過し、液晶表示パネル11に入射する。なお、図17の位相差板であるλ/4板270は、必ずしもλ/4板270へ垂直に入射した偏光に対する位相差がλ/4である必要はない。図17の構成において、偏光が2回通過することで、位相が90°(λ/2)変わる位相差板であればよい。位相差板の厚さは偏光の入射角度分布に応じて調整すればよい。なお、図17においても、偏光変換に係る偏光設計について、上述の説明から偏波を逆に構成(S偏光とP偏光を逆にする)してもかまわない。
【0099】
<光源装置13の例(5)>
光源装置13の光学系の構成についての他の例を、図18を用いて説明する。図18(C)に示すようにLEDコリメータレンズ18の光の出射側には偏光変換素子21を配置する。そしてLED素子14cからの自然光を特定の偏波に揃えて拡散特性を制御する光学素子81に入射し図面の垂直方向と水平方向(図の前後方向で図示せず)の拡散特性を制御することで反射型導光体220の反射面に向けての配光特性を最適なものとする。反射型導光体220の表面には図18(B)に示すように凹凸パターン222を設け、反射型導光体220の対向面に配置される映像表示装置(図示せず)に向けて反射し所望の拡散特性を得る。光源のLED素子14cとLEDコリメータレンズ18の配置精度は光源の効率に大きく影響するため通常光軸精度は50μm程度の精度が必要となるため発明者らはLEDの発熱によりLEDコリメータレンズ18の膨張により取り付け精度が低下する対策として、幾つかのLED素子14cとLEDコリメータレンズ18を一体とした光源ユニット223構造として複数又は単独のユニットを光源装置に用いることで取り付け精度の低下を軽減した。
【0100】
図18(A)(B)(C)に示した実施例では反射型導光体220の長辺方向の両端部にはLED素子14cとLEDコリメータレンズ18を一体化した光源ユニット223が複数組み込まれ(図18の実施例では片側3個ずつ)光源装置の輝度均一化を実現している。反射型導光体220の反射面220aには光源ユニットに略平行の凹凸パターン222が複数形成され、一つの凹凸パターン222においてもその表面は多面体を形成することで映像表示装置1に入射する光量を高精度に制御することができる。本実施例では反射面の形状を凹凸パターン222として説明したが三角面、波形面などが規則的または不規則に配列したパターンでも面形状により反射型導光体220から映像表示装置1に向けた配光パターンを制御すれば本願発明に抵触することは言うまでもない。また、反射型導光体220の側面にはLEDコリメータレンズ18で制御された光が光源装置13から外部に漏れないように遮光壁224を設けLED素子14cは金属製の基盤225により放熱性を高めた設計とするとよい。
【0101】
<レンチキュラーシート>
以下、映像表示装置1からの出射光の拡散特性を制御するレンチキュラーレンズによる作用について説明する。レンチキュラーレンズのレンズ形状を最適化することで、上述した映像表示装置1から出射されてウィンドガラス105を透過又は反射して効率良く空間浮遊映像3を得ることが可能となる。即ち、映像表示装置1からの映像光に対し、2枚のレンチキュラーレンズを組み合わせ、またはマイクロレンズアレイをマトリックス状に配置して拡散特性を制御するシートを設けて、X軸およびY軸方向において、映像光の輝度(相対輝度)をその反射角度(垂直方向を0度)に応じて制御することができる。本実施例では、このようなレンチキュラーレンズにより、従来に比較し、図16(B)に示すように垂直方向の輝度特性を急峻にできる。更に上下(Y軸の正負方向)方向の指向特性のバランスを変化させることで反射や拡散による光の輝度(相対輝度)を高めることができる。これらの作用効果により、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(直進性が高く)かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、従来技術による映像表示装置を用いた場合に再帰反射部材で発生していたゴースト像を抑え、効率良く観視者の眼に再帰反射による空間浮遊映像が届くように制御できる。
【0102】
また上述した各光源装置により、図16(A)、(B)に示した一般的な液晶表示パネル11からの出射光拡散特性(図中では従来と表記)に対してX軸方向およびY軸方向ともに大幅に狭角な指向特性を実現することができる。これにより、特定方向に対して平行に近い映像光束を出射する特定偏波の光を出射する映像表示装置が実現できる。
【0103】
図15には、本実施例で採用するレンチキュラーレンズの特性の一例を示している。この例では、特に、X方向(垂直方向)における特性を示しており、特性Oは、光の出射方向のピークが垂直方向(0度)から上方に30度付近の角度であり上下に対称な輝度特性を示している。また、図15の特性AやBは、更に、30度付近においてピーク輝度の上方の映像光を集光して輝度(相対輝度)を高めた特性の例を示している。このため、これらの特性AやBでは、30度を超えた角度において、特性Oに比較して、急激に光の輝度(相対輝度)が低減する。
【0104】
即ち、上述したレンチキュラーレンズを含んだ光学系によれば、映像表示装置1からの映像光束を再帰反射部材2に入射させる際、光源装置13,230で狭角に揃えられた映像光の出射角度や視野角を制御でき再帰反射部材2の設置の自由度を大幅に向上できる。その結果ウィンドガラス105を反射又は透過して所望の位置に結像する空間浮遊映像3の結像位置の関係の自由度を大幅に向上できる。この結果、拡散角度が狭く(直進性が高く)かつ特定の偏波成分のみの光として効率良く室外または室内の観視者の眼に届くようにすることが可能となる。このことによれば、映像表示装置1からの映像光の強度(輝度)が低減しても、観視者は映像光を正確に認識して情報を得ることができる。換言すれば、映像表示装置1の出力を小さくすることにより、消費電力の低い空間浮遊映像表示システムを実現することが可能となる。
【0105】
以上、種々の実施例について詳述したが、しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0106】
本実施例に係る技術では、空間浮遊映像を高解像度かつ高輝度な映像情報を空間浮遊した状態で表示することにより、例えば、ユーザは感染症の接触感染に対する不安を感じることなく操作することを可能にする。不特定多数のユーザが使用するシステムに本実施例に係る技術を用いれば、感染症の接触感染のリスクを低減し、不安を感じることなく使用できる非接触ユーザインタフェースを提供することを可能にする。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。
【0107】
また、本実施例に係る技術では、出射する映像光の発散角を小さく、さらに特定の偏波に揃えることで、再帰反射部材に対して正規の反射光だけを効率良く反射させるため、光の利用効率が高く、明るく鮮明な空間浮遊映像を得ることを可能にする。本実施例に係る技術によれば、消費電力を大幅に低減することが可能な、利用性に優れた非接触ユーザインタフェースを提供することができる。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9産業と技術革新の基盤をつくろう」および「11住み続けられるまちづくりを」に貢献する。
【0108】
さらに、本実施例に係る技術では、指向性(直進性)の高い映像光による空間浮遊映像を形成することを可能にする。本実施例に係る技術では、銀行のATMや駅の券売機等における高いセキュリティが求められる映像や、ユーザに正対する人物には秘匿したい秘匿性の高い映像を表示する場合でも、指向性の高い映像光を表示することで、ユーザ以外に空間浮遊映像を覗き込まれる危険性が少ない非接触ユーザインタフェースを提供することを可能にする。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「11住み続けられるまちづくりを」に貢献する。
【符号の説明】
【0109】
1 :映像表示装置
1a :映像表示部
1b :映像制御部
1c :映像信号受信部
1d :受信アンテナ
2 :再帰反射部材
2a :再帰反射部
3 :空間浮遊映像
11 :液晶表示パネル
12 :吸収型偏光板
13 :光源装置
13a :光源装置
14a~c :LED素子
15 :LEDコリメータ
16 :合成拡散ブロック
17 :導光体
18 :LEDコリメータレンズ
18a :第1拡散板
18b :第2拡散板
21 :λ/4板(偏光変換素子)
22 :第1遮光部材
23 :第2遮光部材
24 :第3遮光部材
25 :第4遮光部材
30 :矢印
49 :反射型偏光板
50 :保護カバー
52 :液晶表示パネル
54 :光方向変換パネル
81 :光学素子
100 :透明部材
100a :窓部
100b :遮光部材
101 :偏光分離部材
102 :LED基板
103 :ヒートシンク
105 :ウィンドガラス
106 :筐体
107 :光学素子
112 :吸収型偏光板
153 :凹部
154 :凸レンズ面
156 :外周面
157 :凸レンズ面
161 :テクスチャー
170 :導光体
172 :導光体光反射部
172a :反射面
172b :連接面
172c :λ/4板
172d :反射面
173 :導光体出射面
200 :反射型偏光板
201 :LED素子
202 :LED基板
203 :導光体
203a :受光端面
204 :光束方向変換手段
205 :反射シート
206 :反射型偏光板
207 :光学シート
210 :自然光束
211 :PBS膜
212 :反射膜
215 :λ/2位相板
216 :位相差板
220 :反射型導光体
220a :反射面
222 :凹凸パターン
223 :光源ユニット
230 :光源装置
270 :位相差板
271 :反射板
272 :反射面
304 :反射型導光体
400 :反射ミラー
1027 :光学素子偏光変換素子
2135 :2位相板
220 :導光体
222 :凹凸パターン
223 :光源ユニット
224 :遮光壁
225 :基盤
G1~G6 :第1ゴースト像~第6ゴースト像
R1 :正規像
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
図9
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図18