(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20250604BHJP
B25D 15/02 20060101ALI20250604BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
B25B21/02 G
B25D15/02
B25F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021129436
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 友幸
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141984(JP,A)
【文献】特開2010-014220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02;
B25D 1/00-17/32;
B25F 5/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより駆動される打撃機構と、
先端工具が装着されるアンビル軸部と、前記アンビル軸部の後端部から径方向外側に突出し前記打撃機構により回転方向に打撃されるアンビル突起部と、を有するアンビルと、
前記打撃機構を収容するハンマケースと、
前記ハンマケースに保持され、前記アンビル軸部の周囲に配置されるベアリングと、
少なくとも一部が前記アンビル突起部の前面に対向するように配置され、前記ベアリングの後端面に接触するリング部材と、
前記ハンマケース及び前記リング部材に係合し、前記リング部材が後方に抜けることを抑制する抑制部材と、を備え、
前記ハンマケースの内面に、前記抑制部材の少なくとも一部が嵌まる溝が設けられ、
径方向において、前記溝の前方に隣接する前記ハンマケースの第1筒部は、前記ベアリングを保持する前記ハンマケースの第2筒部よりも外側に配置され
、
径方向において、前記リング部材の外周面は、前記第2筒部の外周面よりも外側に配置される、
インパクト工具。
【請求項2】
前記ハンマケースは、前記リング部材の前面の少なくとも一部に対向する支持面を有し、
前記リング部材の少なくとも一部は、前記アンビル突起部の前面と前記ハンマケースの支持面との間に配置される、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項3】
前記リング部材は、前記ハンマケースと前記アンビル突起部との接触を抑制する、
請求項2に記載のインパクト工具。
【請求項4】
前記リング部材の前面の少なくとも一部は、前記ハンマケースの支持面に接触する、
請求項2又は請求項3に記載のインパクト工具。
【請求項5】
前記リング部材の前面の外縁部は、前記ハンマケースの支持面に接触し、
前記リング部材の前面の内縁部は、前記ベアリングの後端面に接触する、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項6】
前記リング部材の後面の外縁部は、前記抑制部材に接触する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項7】
前後方向において、前記抑制部材は、前記アンビル突起部の前面の外縁部と前記リング部材の後面の外縁部との間に配置される、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項8】
前記アンビル突起部の前面の外縁部は、径方向外側に向かって後方に傾斜する、
請求項7に記載のインパクト工具。
【請求項9】
前記ハンマケースは、前記打撃機構の周囲に配置される第1筒部と、前記第1筒部よりも前方に配置され前記第1筒部の外径よりも小さい外径の第2筒部と、を有し、
前記ベアリングは、前記第2筒部に保持される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具に係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなインパクト工具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インパクト工具を用いる作業性の向上のために、インパクト工具の大型化を抑制する技術が要求される。
【0005】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具の大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクト工具を開示する。インパクト工具は、モータと、モータにより駆動される打撃機構と、先端工具が装着されるアンビル軸部と、アンビル軸部の後端部から径方向外側に突出し打撃機構により回転方向に打撃されるアンビル突起部と、を有するアンビルと、打撃機構を収容するハンマケースと、ハンマケースに保持され、アンビル軸部の周囲に配置されるベアリングと、少なくとも一部がアンビル突起部の前面に対向するように配置され、ベアリングの後端面に接触するリング部材と、ハンマケース及びリング部材に係合し、リング部材が後方に抜けることを抑制する抑制部材と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、インパクト工具の大型化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るインパクト工具を示す前方からの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す横断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るインパクト工具の一部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、モータと、モータにより駆動される打撃機構と、先端工具が装着されるアンビル軸部と、アンビル軸部の後端部から径方向外側に突出し打撃機構により回転方向に打撃されるアンビル突起部と、を有するアンビルと、打撃機構を収容するハンマケースと、ハンマケースに保持され、アンビル軸部の周囲に配置されるベアリングと、少なくとも一部がアンビル突起部の前面に対向するように配置され、ベアリングの後端面に接触するリング部材と、ハンマケース及びリング部材に係合し、リング部材が後方に抜けることを抑制する抑制部材と、を備えてもよい。
【0010】
上記の構成では、ベアリングの後端面にリング部材が接触するので、ベアリングはリング部材に支持される。リング部材は、抑制部材により後方に抜けることが抑制される。ベアリングは、リング部材を介して抑制部材に支持されるので、ベアリングが後方に抜けることが抑制される。ベアリングがリング部材に支持され、リング部材が抑制部材に支持されるので、モータの回転軸と平行な軸方向におけるインパクト工具の大型化が抑制される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ハンマケースは、リング部材の前面の少なくとも一部に対向する支持面を有し、リング部材の少なくとも一部は、アンビル突起部の前面とハンマケースの支持面との間に配置されてもよい。
【0012】
上記の構成では、リング部材は、ハンマケースの支持面と抑制部材とにより前後方向から挟まれるように支持される。これにより、ハンマケースに対してリング部材が動いてしまうことが抑制される。ベアリングは、リング部材に安定して支持される。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施形態において、リング部材は、ハンマケースとアンビル突起部との接触を抑制してもよい。
【0014】
上記の構成では、ハンマケースとアンビル突起部との間に配置されたリング部材により、ハンマケースとアンビル突起部との接触が抑制される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態において、リング部材の前面の少なくとも一部は、ハンマケースの支持面に接触してもよい。
【0016】
上記の構成では、リング部材の前面がハンマケースの支持面にダイレクトに接触するので、軸方向におけるインパクト工具の大型化が抑制される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態において、リング部材の前面の外縁部は、ハンマケースの支持面に接触し、リング部材の前面の内縁部は、ベアリングの後端面に接触してもよい。
【0018】
上記の構成では、ハンマケースの支持面とベアリングの後端面とが実質的に同一面内に配置され、リング部材の前面が、ハンマケースの支持面及びベアリングの後端面のそれぞれに接触する。これにより、ベアリングは、リング部材に安定して支持され、軸方向におけるインパクト工具の大型化が抑制される。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施形態において、リング部材の後面の外縁部は、抑制部材に接触してもよい。
【0020】
上記の構成では、リング部材の後面が抑制部材にダイレクトに接触するので、軸方向におけるインパクト工具の大型化が抑制される。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ハンマケースの内面に、抑制部材の少なくとも一部が嵌まる溝が設けられてもよい。
【0022】
上記の構成では、軸方向においてハンマケースと抑制部材との相対位置の変動が抑制される。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態において、前後方向において、抑制部材は、アンビル突起部の前面の外縁部とリング部材の後面の外縁部との間に配置されてもよい。
【0024】
上記の構成では、アンビル突起部とリング部材との間に配置された抑制部材により、アンビル突起部とリング部材との接触が抑制される。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態において、アンビル突起部の前面の外縁部は、径方向外側に向かって後方に傾斜してもよい。
【0026】
上記の構成では、アンビル突起部の前面の外縁部と抑制部材との接触が抑制される。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ハンマケースは、打撃機構の周囲に配置される第1筒部と、第1筒部よりも前方に配置され第1筒部の外径よりも小さい外径の第2筒部と、を有してもよい。ベアリングは、第2筒部に保持されてもよい。
【0028】
上記の構成では、ベアリングは、第2筒部に安定して保持される。
【0029】
[実施形態]
実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。インパクト工具1は、動力源としてモータ6を有する。
【0030】
実施形態において、モータ6の回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0031】
回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0032】
<インパクト工具>
図1は、実施形態に係るインパクト工具1を示す前方からの斜視図である。
図2は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す側面図である。
図3は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す縦断面図である。
図4は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す横断面図である。
【0033】
実施形態において、インパクト工具1は、ねじ締め工具の一種であるインパクトドライバである。インパクト工具1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、ハンマケース4と、ハンマケースカバー5と、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、工具保持機構11と、ファン12と、バッテリ装着部13と、トリガレバー14と、正逆転切換レバー15と、操作表示部16と、モード切換スイッチ17と、ライトアセンブリ18とを備える。
【0034】
ハウジング2は、合成樹脂製である。実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。
【0035】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0036】
モータ収容部21は、筒状である。モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、ハンマケース4の少なくとも一部を収容する。
【0037】
グリップ部22は、モータ収容部21から下方に延びる。トリガレバー14は、グリップ部22の上部に設けられる。グリップ部22は、作業者に握られる。
【0038】
バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0039】
リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、モータ収容部21の後方に配置される。リヤカバー3は、ファン12の少なくとも一部を収容する。ファン12は、リヤカバー3の内周側に配置されている。リヤカバー3は、モータ収容部21の後端部の開口を覆うように配置される。リヤカバー3は、2本のねじ3Sによりモータ収容部21の後端部に固定される。
【0040】
モータ収容部21は、吸気口19を有する。リヤカバー3は、排気口20を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0041】
ハンマケース4は、金属製である。実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4は、モータ収容部21の前部に接続される。ハンマケース4の後部にベアリングボックス24が固定される。ベアリングボックス24の外周部にねじ山が形成される。ハンマケース4の内周部にねじ溝が形成される。ベアリングボックス24のねじ山とハンマケース4のねじ溝とが結合されることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定される。ハンマケース4は、左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとに挟まれる。ハンマケース4の少なくとも一部は、モータ収容部21に収容される。ベアリングボックス24は、モータ収容部21及びハンマケース4のそれぞれに固定される。
【0042】
ハンマケース4は、減速機構7、スピンドル8、打撃機構9、及びアンビル10の少なくとも一部を収容する。減速機構7の少なくとも一部は、ベアリングボックス24の内側に配置される。減速機構7は、複数のギヤを含む。
【0043】
ハンマケース4は、第1筒部401と、第2筒部402とを有する。第1筒部401は、打撃機構9の周囲に配置される。第2筒部402は、第1筒部401よりも前方に配置される。第2筒部402の外径は、第1筒部401の外径よりも小さい。
【0044】
ハンマケースカバー5は、ハンマケース4の表面の少なくとも一部を覆う。ハンマケースカバー5は、ハンマケース4を保護する。ハンマケースカバー5は、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。
【0045】
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、モータ収容部21に支持される。ロータ27の少なくとも一部は、ステータ26の内側に配置される。ロータ27は、ステータ26に対して回転する。ロータ27は、前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転する。
【0046】
ステータ26は、ステータコア28と、前インシュレータ29と、後インシュレータ30と、コイル31とを有する。
【0047】
ステータコア28は、ロータ27よりも径方向外側に配置される。ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。
【0048】
前インシュレータ29は、ステータコア28の前部に設けられる。後インシュレータ30は、ステータコア28の後部に設けられる。前インシュレータ29及び後インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。前インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。後インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0049】
コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28に装着される。コイル31は、複数配置される。コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28のティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前インシュレータ29及び後インシュレータ30により電気的に絶縁される。複数のコイル31は、ヒュージング端子38を介して接続される。
【0050】
ロータ27は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ27は、ロータコア部32と、ロータシャフト部33と、ロータ磁石34と、センサ用磁石35とを有する。
【0051】
ロータコア部32及びロータシャフト部33のそれぞれは、鋼製である。ロータシャフト部33は、ロータコア部32の端面から前後方向に突出する。ロータシャフト部33は、ロータコア部32の前端面から前方に突出する前側シャフト部33Fと、ロータコア部32の後端面から後方に突出する後側シャフト部33Rとを含む。
【0052】
ロータ磁石34は、ロータコア部32に固定される。ロータ磁石34は、円筒状である。ロータ磁石34は、ロータコア部32の周囲に配置される。
【0053】
センサ用磁石35は、ロータコア部32に固定される。センサ用磁石35は、円環状である。センサ用磁石35は、ロータコア部32の前端面及びロータ磁石34の前端面に配置される。
【0054】
前インシュレータ29にセンサ基板37が取り付けられる。センサ基板37は、ねじ29Sにより前インシュレータ29に固定される。センサ基板37は、中心に孔が設けられた円板状の回路基板と、回路基板に支持される回転検出素子とを有する。センサ基板37の少なくとも一部は、センサ用磁石35に対向する。回転検出素子は、ロータ27のセンサ用磁石35の位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。
【0055】
ロータシャフト部33は、ロータベアリング39に回転可能に支持される。ロータベアリング39は、前側シャフト部33Fを回転可能に支持する前側ロータベアリング39Fと、後側シャフト部33Rを回転可能に支持する後側ロータベアリング39Rとを含む。
【0056】
前側ロータベアリング39Fは、ベアリングボックス24に保持される。ベアリングボックス24は、ベアリングボックス24の後面から前方に窪む凹部24Aを有する。前側ロータベアリング39Fは、凹部24Aに配置される。後側ロータベアリング39Rは、リヤカバー3に保持される。ロータシャフト部33の前端部は、ベアリングボックス24の開口を介してハンマケース4の内部空間に配置される。
【0057】
ロータシャフト部33の前端部にピニオンギヤ41が形成される。ピニオンギヤ41は、減速機構7の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト部33は、ピニオンギヤ41を介して減速機構7に連結される。
【0058】
減速機構7は、モータ6よりも前方に配置される。減速機構7は、ロータシャフト部33とスピンドル8とを連結する。減速機構7は、ロータ27の回転をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータシャフト部33の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。
【0059】
減速機構7は、複数のギヤを有する。減速機構7のギヤは、ロータ27により駆動される。
【0060】
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。ピニオンギヤ41、プラネタリギヤ42、及びインターナルギヤ43のそれぞれは、ハンマケース4に収容される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。スピンドル8は、プラネタリギヤ42により回転される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に固定される。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に対して常に回転不可能である。
【0061】
モータ6の駆動によりロータシャフト部33が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト部33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0062】
スピンドル8は、モータ6の少なくとも一部よりも前方に配置される。スピンドル8は、ステータ26よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、ロータ27よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7の前方に配置される。スピンドル8は、アンビル10の後方に配置される。スピンドル8は、ロータ27により回転される。スピンドル8は、減速機構7により伝達されたロータ27の回転力により回転する。スピンドル8は、モータ6の回転力を、ボール48及びハンマ47を介してアンビル10に伝達する。
【0063】
スピンドル8は、フランジ部8Aと、フランジ部8Aから前方に突出するスピンドル軸部8Bとを有する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してフランジ部8Aに回転可能に支持される。スピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。スピンドル8は、回転軸AXを中心に回転する。スピンドル8は、スピンドルベアリング44に回転可能に支持される。スピンドル8の後端部に凸部8Cが設けられる。凸部8Cは、フランジ部8Aから後方に突出する。凸部8Cは、スピンドルベアリング44を囲むように配置される。
【0064】
ベアリングボックス24は、スピンドル8の周囲の少なくとも一部に配置される。スピンドルベアリング44は、ベアリングボックス24に保持される。ベアリングボックス24は、ベアリングボックス24の前面から前方に突出する凸部24Bを有する。スピンドルベアリング44は、凸部24Bの周囲に配置される。
【0065】
打撃機構9は、モータ6により駆動される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介して打撃機構9に伝達される。打撃機構9は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。打撃機構9は、ハンマ47と、ボール48と、第1コイルスプリング49と、第2コイルスプリング50と、第3コイルスプリング51と、第1ワッシャ52と、第2ワッシャ53とを有する。ハンマ47、ボール48、第1コイルスプリング49、第2コイルスプリング50、第3コイルスプリング51、第1ワッシャ52、及び第2ワッシャ53を含む打撃機構9は、ハンマケース4の第1筒部401に収容される。
【0066】
ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、スピンドル8の周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドル8に保持される。ボール48は、スピンドル8とハンマ47との間に配置される。ハンマ47は、筒状のハンマボディ47Dと、ハンマボディ47Dの前部に設けられるハンマ突起部47Eとを有する。ハンマボディ47Dの後面にリング状の凹部47Cが設けられる。凹部47Cは、ハンマボディ47Dの後面から前方に窪む。
【0067】
ハンマ47は、スピンドル軸部8Bの周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドル軸部8Bが配置される孔47Aを有する。
【0068】
ハンマ47は、モータ6により回転される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介してハンマ47に伝達される。ハンマ47は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、スピンドル8と一緒に回転可能である。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。ハンマ47は、回転軸AXを中心に回転する。
【0069】
第1ワッシャ52は、凹部47Cの内側に配置される。第1ワッシャ52は、複数のボール54を介してハンマ47に支持される。ボール54は、第1ワッシャ52よりも前方に配置される。
【0070】
第2ワッシャ53は、凹部47Cの内側において第1ワッシャ52よりも後方に配置される。第2ワッシャ53の外径は、第1ワッシャ52の外径よりも小さい。第2ワッシャ53とハンマ47とは前後方向に相対移動可能である。
【0071】
第1コイルスプリング49は、スピンドル軸部8Bの周囲に配置される。第1コイルスプリング49の後端部は、フランジ部8Aに支持される。第1コイルスプリング49の前端部は、凹部47Cの内側に配置され、第1ワッシャ52に支持される。第1コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。
【0072】
第2コイルスプリング50は、スピンドル軸部8Bの周囲に配置される。第2コイルスプリング50は、第1コイルスプリング49の径方向内側に配置される。第2コイルスプリング50の後端部は、フランジ部8Aに支持される。第2コイルスプリング50の前端部は、凹部47Cの内側に配置され、第2ワッシャ53に支持される。第2コイルスプリング50は、ハンマ47が後方に移動したときにハンマ47を前方に移動させる弾性力を発生する。
【0073】
第3コイルスプリング51は、スピンドル軸部8Bの周囲に配置される。第3コイルスプリング51は、第1コイルスプリング49の径方向内側に配置される。第3コイルスプリング51は、凹部47Cの内側に配置される。第3コイルスプリング51の後端部は、第2ワッシャ53に支持される。第3コイルスプリング51の前端部は、第1ワッシャ52に支持される。第3コイルスプリング51は、第2コイルスプリング50を後方に移動させる弾性力を発生する。第3コイルスプリング51の弾性力により、第2コイルスプリング50の後端部がフランジ部8Aに押し付けられる。これにより、フランジ部8Aに対して第2コイルスプリング50が遊動することが抑制される。
【0074】
ボール48は、鉄鋼のような金属製である。ボール48は、スピンドル軸部8Bとハンマ47との間に配置される。スピンドル8は、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝8Dを有する。スピンドル溝8Dは、スピンドル軸部8Bの外面の一部に設けられる。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝47Bを有する。ハンマ溝47Bは、ハンマ47の内面の一部に設けられる。ボール48は、スピンドル溝8Dとハンマ溝47Bとの間に配置される。ボール48は、スピンドル溝8Dの内側及びハンマ溝47Bの内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ボール48に伴って移動可能である。スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝8D及びハンマ溝47Bにより規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0075】
アンビル10は、モータ6よりも前方に配置される。アンビル10は、ロータ27の回転力に基づいて回転するインパクト工具1の出力部である。アンビル10の少なくとも一部は、ハンマ47よりも前方に配置される。アンビル10は、先端工具が挿入される工具孔10Aを有する。工具孔10Aは、アンビル10の前端部に設けられる。先端工具は、アンビル10に装着される。
【0076】
アンビル10は、アンビル凸部10Bを有する。アンビル凸部10Bは、アンビル10の後端部に設けられる。アンビル凸部10Bは、アンビル10の後端部から後方に突出する。アンビル10の後方にスピンドル8が配置される。スピンドル軸部8Bの前端部にスピンドル凹部8Eが設けられる。アンビル凸部10Bは、スピンドル凹部8Eに配置される。
【0077】
アンビル10は、ロッド状のアンビル軸部101と、アンビル突起部102とを有する。工具孔10Aは、アンビル軸部101の前端部に設けられる。先端工具は、アンビル軸部101に装着される。アンビル突起部102は、アンビル10の後端部に設けられる。アンビル突起部102は、アンビル軸部101の後端部から径方向外側に突出する。
【0078】
アンビル10は、ベアリング46に回転可能に支持される。アンビル10の回転軸とハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、回転軸AXを中心に回転する。ベアリング46は、アンビル軸部101の周囲に配置される。ベアリング46は、ハンマケース4の第2筒部402の内側に配置される。ベアリング46は、ハンマケース4の第2筒部402に保持される。ベアリング46は、アンビル軸部101の前部を回転可能に支持する。ベアリング46とアンビル軸部101との間にOリング45が配置される。
【0079】
実施形態において、ベアリング46は、軸方向に2つ配置される。以下の説明において、2つのベアリング46のそれぞれを適宜、ベアリング46A及びベアリング46B、と称する。ベアリング46Aは、ベアリング46Bよりも前方に配置される。
【0080】
また、実施形態において、Oリング45は、軸方向に2つ配置される。以下の説明において、2つのOリング45のそれぞれを適宜、Oリング45A及びOリング45B、と称する。Oリング45Aは、Oリング45Bよりも前方に配置される。Oリング45Aは、ベアリング46Aとアンビル軸部101との間に配置される。Oリング45Bは、ベアリング46Bとアンビル軸部101との間に配置される。
【0081】
ハンマ47の少なくとも一部は、アンビル突起部102に接触可能である。ハンマ47の前部に前方に突出するハンマ突起部47Eが設けられる。ハンマ突起部47Eとアンビル突起部102とが接触可能である。ハンマ47とアンビル突起部102とが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。
【0082】
アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。例えば、ねじ締め作業において、アンビル10に作用する負荷が高くなると、第1コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。第1コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。スピンドル8とハンマ47とは、ボール48を介して軸方向及び周方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する動力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48がスピンドル溝8D及びハンマ溝47Bのそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47は、ボール48から力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ47とアンビル突起部102との接触が解除される。
【0083】
上述のように、第1コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。第2コイルスプリング50は、ハンマ47が規定位置よりも後方に移動した後にハンマ47を前方に移動させる弾性力を発生する。後方に移動したハンマ47は、第1コイルスプリング49及び第2コイルスプリング50の弾性力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ47は、回転しながらアンビル突起部102に接触する。これにより、アンビル突起部102は、ハンマ47のハンマ突起部47Eにより回転方向に打撃される。アンビル10には、モータ6の動力とハンマ47の慣性力との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。
【0084】
工具保持機構11は、アンビル10の前部の周囲に配置される。工具保持機構11は、アンビル10の工具孔10Aに挿入された先端工具を保持する。工具保持機構11は、先端工具を着脱可能である。
【0085】
工具保持機構11は、ボール71と、リーフスプリング72と、スリーブ73と、コイルスプリング74と、位置決め部材75とを備える。
【0086】
アンビル10は、ボール71を支持する支持凹部76を有する。支持凹部76は、アンビル軸部101の外面に形成される。実施形態において、支持凹部76は、アンビル軸部101に2つ形成される。
【0087】
ボール71は、アンビル10に移動可能に支持される。ボール71は、支持凹部76に配置される。ボール71は、1つの支持凹部76に1つ配置される。
【0088】
アンビル軸部101に、支持凹部76の内面と工具孔10Aの内面とを結ぶ貫通孔が形成される。ボール71の直径は、貫通孔の直径よりも小さい。ボール71が支持凹部76に支持された状態で、ボール71の少なくとも一部を介して、工具孔10Aの内側に配置される。ボール71は、工具孔10Aに挿入された先端工具を固定することができる。ボール71は、先端工具を固定する係合位置と先端工具の固定を解除する解除位置とに移動可能である。
【0089】
リーフスプリング72は、ボール71を係合位置に移動させる弾性力を発生する。リーフスプリング72は、アンビル軸部101の周囲に配置される。リーフスプリング72は、ボール71を前方に移動させる弾性力を発生する。
【0090】
スリーブ73は、円筒状の部材である。スリーブ73は、アンビル軸部101の周囲に配置される。スリーブ73は、アンビル軸部101の周囲において軸方向に移動可能である。スリーブ73は、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することを阻止することができる。スリーブ73は、軸方向に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させることができる。
【0091】
スリーブ73は、アンビル軸部101の周囲において、ボール71の径方向外側への移動を阻止する阻止位置と径方向外側への移動を許容する許容位置とに移動可能である。
【0092】
スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが抑制される。すなわち、スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが阻止される。スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が維持される。
【0093】
スリーブ73が許容位置に移動されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが許容される。スリーブ73は、許容位置に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させる。すなわち、スリーブ73が許容位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが許容される。スリーブ73が許容位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が解除可能になる。
【0094】
コイルスプリング74は、スリーブ73が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。コイルスプリング74は、アンビル軸部101の周囲に配置される。阻止位置は、許容位置よりも後方に規定される。コイルスプリング74は、スリーブ73を後方に移動させる弾性力を発生する。
【0095】
位置決め部材75は、アンビル軸部101の外面に固定されたリング状の部材である。位置決め部材75は、スリーブ73の後端部に対向可能な位置に固定される。位置決め部材75は、スリーブ73を阻止位置に位置決めする。コイルスプリング74から後方に移動する弾性力を付与されているスリーブ73は、位置決め部材75に接触することにより、阻止位置に位置決めされる。
【0096】
ファン12は、モータ6のステータ26よりも後方に配置される。ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12は、ブッシュ12Aを介して後側シャフト部33Rの後部に固定される。ファン12は、後側ロータベアリング39Rとステータ26との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト部33が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト部33と一緒に回転する。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン12が回転することにより、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0097】
バッテリ装着部13は、バッテリ保持部23の下部に配置される。バッテリ装着部13は、バッテリパック25に接続される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に着脱可能である。バッテリパック25は、バッテリ保持部23の前方からバッテリ装着部13に挿入されることにより、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13から前方に抜去されることにより、バッテリ装着部13から外される。バッテリパック25は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部13に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクト工具1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。操作表示部16は、バッテリパック25から供給される電力により作動する。
【0098】
トリガレバー14は、グリップ部22に設けられる。トリガレバー14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガレバー14が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0099】
正逆転切換レバー15は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆転切換レバー15は、作業者に操作される。正逆転切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。
【0100】
操作表示部16は、バッテリ保持部23に設けられる。操作表示部16は、グリップ部22よりも前方側において、バッテリ保持部23の上面に設けられる。操作表示部16に複数の操作ボタン16Aと、インジケータ表示器16Bとを有する。作業者により操作ボタン16Aが操作されることにより、モータ6の動作モードが切り換えられる。インジケータ表示器16Bは、複数の発光部を有する。インジケータ表示器16Bは、複数の発光部の点灯パターンを変更することによって、モータ6の動作モードを表示する。
【0101】
モード切換スイッチ17は、トリガレバー14の上部に設けられる。モード切換スイッチ17は、モータ6の動作モードを切り換えるために作業者に操作される。
【0102】
ライトアセンブリ18は、照明光を射出する。ライトアセンブリ18は、アンビル10及びアンビル10の周辺を照明光で照明する。ライトアセンブリ18は、アンビル10の前方を照明光で照明する。また、ライトアセンブリ18は、アンビル10に装着された先端工具及び先端工具の周辺を照明光で照明する。実施形態において、ライトアセンブリ18は、リング状のベース部材18Aと、ベース部材18Aに保持される複数の発光素子18Bとを含む。ベース部材18Aは、ハンマケース4の第2筒部402の周囲に配置される。また、ライトアセンブリ18は、ベース部材18Aが第2筒部402から前方に抜けることを抑制するリング部材18Cを有する。
【0103】
<リング部材及び抑制部材>
図5は、
図4の一部を拡大した図である。
図6は、実施形態に係るインパクト工具1の一部を示す分解斜視図である。
【0104】
図3、
図4、
図5、及び
図6に示すように、インパクト工具1は、ハンマケース4と、ベアリング46と、Oリング45と、リング部材61と、抑制部材62とを備える。
【0105】
ハンマケース4は、第1筒部401と、第2筒部402とを有する。第1筒部401は、打撃機構9の周囲に配置される。第2筒部402は、第1筒部401よりも前方に配置される。第2筒部402の外径は、第1筒部401の外径よりも小さい。ベアリング46は、ハンマケース4に保持される。ベアリング46は、ハンマケース4の第2筒部402の内側に配置される。
【0106】
ベアリング46は、アンビル軸部101の周囲に配置される。Oリング45は、アンビル軸部101の外周部とベアリング46の内周部との間に配置される。Oリング45は、アンビル軸部101の外周部及びベアリング46の内周部のそれぞれに接触する。ベアリング46は、アンビル軸部101を回転可能に支持する。上述のように、ベアリング46は、前後方向に2つ配置される。Oリング45は、前後方向に2つ配置される。ベアリング46は、ベアリング46Aと、ベアリング46Aよりも後方に配置されるベアリング46Bとを含む。Oリング45は、Oリング45Aと、Oリング45Aよりも後方に配置されるOリング45Bとを含む。Oリング45Aは、ベアリング46Aとアンビル軸部101との間に配置される。Oリング45Bは、ベアリング46Bとアンビル軸部101との間に配置される。
【0107】
ベアリング46は、ボールベアリングである。ベアリング46A及びベアリング46Bのそれぞれは、内輪46Cと、ボール46Dと、外輪46Eとを有する。ベアリング46Aの内輪46Cは、Oリング45Aに接触する。ベアリング46Bの内輪46Cは、Oリング45Bに接触する。ボール46Dは、径方向において内輪46Cと外輪46Eとの間に配置される。ボール46Dは、内輪46C及び外輪46Eのそれぞれに接触する。ボール46Dは、周方向に複数配置される。外輪46Eは、内輪46C及びボール46Dよりも径方向外側に配置される。ベアリング46Aの外輪46Eは、第2筒部402の内周面に接触する。ベアリング46Bの外輪46Eは、第2筒部402の内周面に接触する。
【0108】
リング部材61は、輪帯状の部材である。リング部材61は、金属製である。リング部材61を形成する金属として、鉄が例示される。リング部材61の前面及び後面のそれぞれは、平坦である。
【0109】
前後方向において、リング部材61は、アンビル突起部102と後側のベアリング46Bとの間に配置される。ベアリング46Bは、リング部材61よりも前方に配置される。アンビル突起部102は、リング部材61よりも後方に配置される。リング部材61の後面の少なくとも一部は、アンビル突起部102の前面に対向するように配置される。リング部材61の前面の少なくとも一部は、後側のベアリング46Bの後端面に接触する。
【0110】
抑制部材62は、ハンマケース4及びリング部材61のそれぞれに係合する。抑制部材62は、リング部材61が後方に抜けることを抑制する。抑制部材62として、スナップリング又はCリングが例示される。抑制部材62は、リング部材61に接触するように配置される。
【0111】
ハンマケース4は、リング部材61の前面の少なくとも一部に対向する支持面4Aと、リング部材61の外周面に対向する内周面4Cとを有する。ハンマケース4の支持面4Aと後側のベアリング46の後端面とは、実質的に同一面内に配置される。リング部材61の少なくとも一部は、アンビル突起部102の前面とハンマケース4の支持面4Aとの間に配置される。
【0112】
リング部材61は、ハンマケース4とアンビル突起部102との接触を抑制する。
【0113】
リング部材61の前面の少なくとも一部は、ハンマケース4の支持面4Aに接触する。また、リング部材61の前面の少なくとも一部は、後側のベアリング46Bの後端面に接触する。
【0114】
図5に示すように、リング部材61の前面の外縁部を示す前面外縁部61Aは、ハンマケース4の支持面4Aに接触する。リング部材61の外周面は、ハンマケース4の内周面4Cに接触可能である。リング部材61の前面の内縁部を示す前面内縁部61Bは、ベアリング46Bの外輪46Eの後端面に接触可能である。リング部材61は、ベアリング46Bの内輪46Cよりも径方向外側に配置される。リング部材61とベアリング46Bの内輪46Cとは接触しない。
【0115】
リング部材61の後面の外縁部を示す後面外縁部61Cは、抑制部材62に接触する。
【0116】
ハンマケース4の第1筒部401の内面に、抑制部材62の少なくとも一部が嵌まる溝4Bが設けられる。ハンマケース4は、内周面4Cの後端部に接続される第1支持面4Dと、第1支持面4Dよりも後方に配置される第2支持面4Eと、内周面4Fとを有する。第1支持面4Dは、後方を向く。第1支持面4Dは、内周面4Cよりも径方向外側に配置される。第2支持面4Eは、前方を向く。第2支持面4Eは、第1支持面4Dに対向する。内周面4Fは、第1支持面4Dの径方向外側の端部と第2支持面4Eの径方向外側の端部とを繋ぐように配置される。第1支持面4Dは、抑制部材62の前面の外縁部に対向可能である。第2支持面4Eは、抑制部材62の後面の外縁部に対向可能である。内周面4Fは、抑制部材62の外周面に対向可能である。溝4Bは、第1支持面4Dと第2支持面4Eと内周面4Fとにより規定される。抑制部材62が溝4Bに配置されることにより、少なくとも軸方向におけるハンマケース4と抑制部材62との相対位置の変動が抑制される。
【0117】
リング部材61及び抑制部材62により、ベアリング46が後方(軸方向他方側)に脱落することが阻止される。
【0118】
図3に示すように、アンビル突起部102の前面の外縁部を示す前面外縁部102Aは、径方向外側に向かって後方に傾斜する。
【0119】
前後方向において、抑制部材62は、アンビル突起部102の前面外縁部102Aとリング部材61の後面外縁部61Cとの間に配置される。
【0120】
<インパクト工具の動作>
次に、インパクト工具1の動作について説明する。例えば、作業対象にねじ締め作業を実施するとき、ねじ締め作業に使用される先端工具(ドライバビット)が、アンビル10の工具孔10Aに挿入される。工具孔10Aに挿入された先端工具は、工具保持機構11により保持される。先端工具がアンビル10に装着された後、作業者は、グリップ部22を例えば右手で握ってトリガレバー14を右手の人差し指で引き操作する。トリガレバー14が引き操作されると、バッテリパック25からモータ6に電力が供給され、モータ6が起動し、同時にライトアセンブリ18が点灯する。モータ6の起動により、ロータ27のロータシャフト部33が回転する。ロータシャフト部33が回転すると、ロータシャフト部33の回転力がピニオンギヤ41を介してプラネタリギヤ42に伝達される。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。プラネタリギヤ42の公転により、スピンドル8は、ロータシャフト部33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0121】
ハンマ47とアンビル突起部102とが接触している状態で、スピンドル8が回転すると、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。アンビル10が回転することにより、ねじ締め作業が進行する。
【0122】
ねじ締め作業の進行により、アンビル10に所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ハンマ47は、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ47とアンビル突起部102との接触が解除される。後方に移動したハンマ47は、第1コイルスプリング49及び第2コイルスプリング50の弾性力により、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動することにより、アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。これにより、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
【0123】
<効果>
以上説明したように、実施形態において、インパクト工具1は、モータ6と、モータ6により駆動される打撃機構9と、先端工具が装着されるアンビル軸部101と、アンビル軸部101の後端部から径方向外側に突出し打撃機構9により回転方向に打撃されるアンビル突起部102と、を有するアンビル10と、打撃機構9を収容するハンマケース4と、ハンマケース4に保持され、アンビル軸部101の周囲に配置されるベアリング46と、少なくとも一部がアンビル突起部102の前面に対向するように配置され、ベアリング46の後端面に接触するリング部材61と、ハンマケース4及びリング部材61に係合し、リング部材61が後方に抜けることを抑制する抑制部材62と、を備える。
【0124】
上記の構成では、ベアリング46の後端面にリング部材61が接触するので、ベアリング46はリング部材61に支持される。リング部材61は、抑制部材62により後方に抜けることが抑制される。ベアリング46は、リング部材61を介して抑制部材62に支持されるので、ベアリング46が後方に抜けることが抑制される。ベアリング46がリング部材61に支持され、リング部材61が抑制部材62に支持されるので、インパクト工具1の大型化が抑制される。特に、モータ6の回転軸AXと平行な軸方向におけるインパクト工具1の上部の寸法が大きくなることが抑制される。例えば、リヤカバー3の後端面とアンビル軸部101の前端面との距離を示す軸長が長くなることが抑制される。
【0125】
実施形態において、ハンマケース4は、リング部材61の前面の少なくとも一部に対向する支持面4Aを有し、リング部材61の少なくとも一部は、アンビル突起部102の前面とハンマケース4の支持面4Aとの間に配置される。
【0126】
上記の構成では、リング部材61は、ハンマケース4の支持面4Aと抑制部材62とにより前後方向から挟まれるように支持される。これにより、ハンマケース4に対してリング部材61が動いてしまうことが抑制される。ベアリング46は、リング部材61に安定して支持される。
【0127】
実施形態において、リング部材61は、ハンマケース4とアンビル突起部102との接触を抑制する。
【0128】
上記の構成では、ハンマケース4とアンビル突起部102との間に配置されたリング部材61により、ハンマケース4とアンビル突起部102との接触が抑制される。
【0129】
実施形態において、リング部材61の前面の少なくとも一部は、ハンマケース4の支持面4Aに接触する。
【0130】
上記の構成では、リング部材61の前面がハンマケース4の支持面4Aにダイレクトに接触するので、軸方向におけるインパクト工具1の大型化が抑制される。すなわち、軸長が長くなることが抑制される。
【0131】
実施形態において、リング部材61の前面の外縁部を示す前面外縁部61Aは、ハンマケース4の支持面4Aに接触し、リング部材61の前面の内縁部を示す前面内縁部61Bは、ベアリング46の後端面に接触する。
【0132】
上記の構成では、ハンマケース4の支持面4Aとベアリング46の後端面とが実質的に同一面内に配置され、リング部材61の前面が、ハンマケース4の支持面4A及びベアリング46の後端面のそれぞれに接触する。これにより、ベアリング46は、リング部材61に安定して支持され、軸方向におけるインパクト工具1の大型化が抑制される。すなわち、軸長が長くなることが抑制される。
【0133】
実施形態において、リング部材61の後面の外縁部を示す後面外縁部61Cは、抑制部材62に接触する。
【0134】
上記の構成では、リング部材61の後面が抑制部材62にダイレクトに接触するので、軸方向におけるインパクト工具1の大型化が抑制される。すなわち、軸長が長くなることが抑制される。
【0135】
実施形態において、ハンマケース4の内面に、抑制部材62の少なくとも一部が嵌まる溝4Bが設けられる。
【0136】
上記の構成では、軸方向においてハンマケース4と抑制部材62との相対位置の変動が抑制される。
【0137】
実施形態において、前後方向において、抑制部材62は、アンビル突起部102の前面の外縁部を示す前面外縁部102Aとリング部材61の後面外縁部61Cとの間に配置される。
【0138】
上記の構成では、アンビル突起部102とリング部材61との間に配置された抑制部材62により、アンビル突起部102とリング部材61との接触が抑制される。
【0139】
実施形態において、アンビル突起部102の前面外縁部102Aは、径方向外側に向かって後方に傾斜する。
【0140】
上記の構成では、アンビル突起部102の前面外縁部102Aと抑制部材62との接触が抑制される。
【0141】
実施形態において、ハンマケース4は、打撃機構9の周囲に配置される第1筒部401と、第1筒部401よりも前方に配置され第1筒部401の外径よりも小さい外径の第2筒部402と、を有する。ベアリング46は、第2筒部402に保持される。
【0142】
上記の構成では、ベアリング46は、第2筒部402に安定して保持される。
【0143】
<変形例>
上述の実施形態においては、インパクト工具1がインパクトドライバであることとした。インパクト工具1は、インパクトレンチでもよい。
【0144】
上述の実施形態において、インパクト工具1の電源は、バッテリパック25でなくてもよく、商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0145】
1…インパクト工具、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、3…リヤカバー、3S…ねじ、4…ハンマケース、4A…支持面、4B…溝、4C…内周面、4D…第1支持面、4E…第2支持面、4F…内周面、5…ハンマケースカバー、6…モータ、7…減速機構、8…スピンドル、8A…フランジ部、8B…スピンドル軸部、8C…凸部、8D…スピンドル溝、8E…スピンドル凹部、9…打撃機構、10…アンビル、10A…工具孔、10B…アンビル凸部、11…工具保持機構、12…ファン、12A…ブッシュ、13…バッテリ装着部、14…トリガレバー、15…正逆転切換レバー、16…操作表示部、16A…操作ボタン、16B…インジケータ表示器、17…モード切換スイッチ、18…ライトアセンブリ、18A…ベース部材、18B…発光素子、18C…リング部材、19…吸気口、20…排気口、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…ベアリングボックス、24A…凹部、24B…凸部、25…バッテリパック、26…ステータ、27…ロータ、28…ステータコア、29…前インシュレータ、29S…ねじ、30…後インシュレータ、31…コイル、32…ロータコア部、33…ロータシャフト部、33F…前側シャフト部、33R…後側シャフト部、34…ロータ磁石、35…センサ用磁石、37…センサ基板、38…ヒュージング端子、39…ロータベアリング、39F…前側ロータベアリング、39R…後側ロータベアリング、41…ピニオンギヤ、42…プラネタリギヤ、42P…ピン、43…インターナルギヤ、44…スピンドルベアリング、45…Oリング、45A…Oリング、45B…Oリング、46…ベアリング、46A…ベアリング、46B…ベアリング、46C…内輪、46D…ボール、46E…外輪、47…ハンマ、47A…孔、47B…ハンマ溝、47C…凹部、47D…ハンマボディ、47E…ハンマ突起部、48…ボール、49…第1コイルスプリング、50…第2コイルスプリング、51…第3コイルスプリング、52…第1ワッシャ、53…第2ワッシャ、54…ボール、61…リング部材、61A…前面外縁部、61B…前面内縁部、61C…後面外縁部、62…抑制部材、71…ボール、72…リーフスプリング、73…スリーブ、74…コイルスプリング、75…位置決め部材、76…支持凹部、101…アンビル軸部、102…アンビル突起部、102A…前面外縁部、401…第1筒部、402…第2筒部、AX…回転軸。