(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】インピーダンス整合器および高周波電源システム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20250604BHJP
H03H 7/40 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H03H7/40
(21)【出願番号】P 2021159088
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄也
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-524654(JP,A)
【文献】特開2021-086659(JP,A)
【文献】特開2021-108414(JP,A)
【文献】特開2021-108415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H03H 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給する第1の電源と負荷との間に配置され、前記第1の電源側と前記負荷側とのインピーダンス整合を取るインピーダンス整合器であって、
前記第1の高周波電力に関する情報を取得する検出部と、
前記検出部によって取得された情報に基づいてインピーダンス値を算出するインピーダンス情報出力部と、
前記インピーダンス情報出力部から供給される
前記インピーダンス値に基づいて整合演算を行う整合部と、を備え、
前記インピーダンス情報出力部は、前記インピーダンス値を用いてインピーダンス軌跡を生成
し、
前記検出部は、前記第1の電源から供給される進行波電力と前記負荷からの反射波電力とを検出し、前記進行波電力の成分である進行波電圧および前記反射波電力の成分である反射波電圧を出力し、
前記インピーダンス情報出力部は、前記進行波電圧および前記反射波電圧をそれぞれ複素化し、当該複素化された進行波電圧および反射波電圧を前記第1の電源の基本周期で平均化し、当該平均化され、複素化された進行波電圧および反射波電圧を用いて前記インピーダンス値を算出し、当該インピーダンス値に対応する反射係数ベクトルで前記インピーダンス軌跡を生成する、
インピーダンス整合器。
【請求項2】
請求項
1において、
前記第1の基本周波数よりも低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力する第2の電源を用いて、前記負荷に第2の高周波電力を供給する場合に、前記インピーダンス情報出力部は、前記第2の高周波電圧の基本周期に対応した期間の前記反射係数ベクトルの変化を前記インピーダンス軌跡とする、インピーダンス整合器。
【請求項3】
請求項
1または2において、
前記進行波電力は、前記第1の電源において周波数制御されており、
前記インピーダンス情報出力部は、前記周波数制御された進行波電力に対応する進行波電圧、および当該周波数制御された進行波電力が前記負荷に供給され反射して戻ってきた反射波電力に対応する反射波電圧から前記インピーダンス値を算出する、インピーダンス整合器。
【請求項4】
接続される負荷に対して高周波電力を提供する、高周波電源システムであって、
第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力する第1の電源と、
第1の基本周波数よりも低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力する第2の電源と、
請求項1から
3の何れか1項に記載のインピーダンス整合器と、
を備える高周波電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インピーダンス整合器および高周波電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、電子機器の小型化・高機能化に伴って高密度な実装が要求されており、実装基板への素子の接続は微細化され、より信頼性の高い実装が必要となっている。
【0003】
実装の信頼性を確保する方法の一つに、プラズマによる表面改質方法がある。例えば、被処理基板にプラズマ処理を施すと、基板の表面に付着した有機物による汚染を除去でき、ワイヤーボンディングのボンディング強度の向上が図れ、濡れ性が改善され、基板と封止樹脂との密着性を向上できる。このようなプラズマ処理を施すためには、負荷となるプラズマリアクタ装置に対して電源装置を接続する必要がある。
【0004】
プラズマ処理において複数の電源から基本周波数(基本波の周波数)の異なる高周波電力を負荷に投入する方法が使用されている。例えば、第1の電源から第1の基本周波数(例えば40.68MHz)を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給するとともに、第2の電源から第2の基本周波数(例えば400kHz)(第1の基本周波数>第2の基本周波数)を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を負荷に供給する際、基本周波数が高い第1の電源側の出力に相互変調歪(以降、IMD)が発生し、反射波電力が第2の基本周波数の周期に応じて変動する現象が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/131180号
【文献】特開2017-188434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の整合器は、検出部からバンドパスフィルタを通して第1の基本周波数のみでインピーダンスを計算し、IMD成分を除去した状態で整合演算を行っている。このため、IMD成分を含めた電力では、第2の基本周波数に応じた反射波電力が発生しており、負荷(例えばプラズマリアクタ装置)に効率よく電力を供給できない。そこで先行技術文献にもあるように、高周波側の電源周波数を制御することによる反射波電力の低減方法が提案されている。この周波数制御を実施する場合、第2の基本周波数で周波数変動する高周波側のインピーダンスを逐次計算できる方法が必要となる。
本開示はこのような状況に鑑み、IMDによる反射波を考慮したインピーダンス変化(軌跡)を逐次演算するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給する第1の電源と負荷との間に配置され、前記第1の電源側と前記負荷側とのインピーダンス整合を取るインピーダンス整合器であって、前記第1の高周波電力に関する情報を取得する検出部と、前記検出部によって取得された情報に基づいてインピーダンス値を算出するインピーダンス情報出力部と、前記インピーダンス情報出力部から供給されるインピーダンス値に基づいて整合演算を行う整合部と、を備え、前記インピーダンス情報出力部は、前記インピーダンス値を用いてインピーダンス軌跡を生成する、インピーダンス整合器を提供する。
【0008】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素および多様な要素の組み合わせ、ならびに以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、IMDによる反射波を考慮したインピーダンス変化(軌跡)を演算することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による電源供給システム(高周波電源システムとも言う)1にプラズマ負荷40を接続した状態を示す図である。
【
図2】本実施形態によるインピーダンス情報出力部312の内部構成例を示す図である。
【
図3】インピーダンス情報出力部312の動作(進行波電圧Vfおよび反射波電圧Vrを取得してからインピーダンス軌跡を出力するまでの処理)を説明するためのフローチャートである。
【
図4】検出部311からの出力される進行波電圧Vfおよび反射波電圧Vrの波形(例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0012】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0013】
更に、本開示の実施形態は、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0014】
<電源供給システム1の構成例>
図1は、本実施形態による電源供給システム(高周波電源システムとも言う)1にプラズマ負荷40を接続した状態を示す図である。電源供給システム1は、第1の基本周波数を有する第1の高周波電圧を出力することにより第1の高周波電力を負荷に供給するソース電源10(第1の電源)と、第1の基本周波数より低い第2の基本周波数を有する第2の高周波電圧を出力することにより第2の高周波電力を負荷に供給するバイアス電源20(第2の電源)と、ソース電源10およびバイアス電源20のそれぞれから出力が供給され、ソース電源10およびバイアス電源20側とプラズマ負荷40側とのインピーダンス整合を取る整合器(インピーダンス変換装置ともいう)30と、を備え、ソース電源10から出力する進行波(ソース電力)とバイアス電源20から出力する進行波(バイアス電力)とを、例えば重畳してプラズマ負荷40に供給するシステムである。
【0015】
本実施形態では、ソース電源10から出力する高周波電圧の基本周波数(基本波の周波数)(出力周波数ともいう)が40.68MHzであり、バイアス電源20から出力する高周波電圧の基本周波数が400kHzであるとして説明するが、ソース電源10の基本周波数は40.68MHzに限定されるものではなく、例えば13.56MHz、27.12MHz等の工業用のRF帯(RF:Radio Frequency)の周波数であってもよい。また、バイアス電源20の基本周波数は400kHzに限定されるものではなく、他の周波数であってもよい。
また、ソース電源10の基本周波数をHF周波数とし、バイアス電源20の基本周波数をLF周波数としている。また、ソース電源10の基本周期(基本波の周期:1/基本周波数)をHF周期とし、バイアス電源20の基本周期(1/基本周波数)をLF周期としている。
【0016】
整合器30は、ソース電源10に対応する第1整合器310と、バイアス電源20に対応する第2整合器320とを含む。第1整合器310は、ソース電源10とプラズマ負荷40との間に配置されており、ソース電源10側とプラズマ負荷40側とのインピーダンス整合を取る。第2整合器320は、バイアス電源20とプラズマ負荷40との間に配置されており、バイアス電源20側とプラズマ負荷40側とのインピーダンス整合を取る。
【0017】
第1整合器310は、進行波(電力)Pfおよび反射波(電力)Prを検出し、進行波電圧(成分)Vfおよび反射波電圧(成分)Vrを出力する検出部311と、進行波電圧(成分)Vfおよび反射波電圧(成分)Vrを検出部311から取得してインピーダンス値を演算し、インピーダンス軌跡を生成して出力すると共に、インピーダンス値を出力するインピーダンス情報出力部312と、インピーダンス値をインピーダンス情報出力部312から取得し、ソース電源10側とプラズマ負荷40側とのインピーダンス整合を取る整合部313と、を備える。
第2整合器320は、検出部311と、インピーダンス情報出力部312と、整合部313と、を備える。これらは、対応する周波数等が異なるが、第1整合器310と同様の構成なので、説明を省略する。
【0018】
<インピーダンス情報出力部312の内部構成例>
図2は、本実施形態によるインピーダンス情報出力部312の内部構成例を示す図である。インピーダンス情報出力部312は、ソース電源10(HF電源)の基本周波数f(例えば、40.68MHz)で信号(cos成分およびsin成分)を生成(発振)し出力するDDS(Direct Digital Synthesizer)3021と、乗算器3022から3025と、平均化処理部3026と、インピーダンス算出部3027と、インピーダンス軌跡出力部3028と、を備えている。
【0019】
乗算器3022は、検出部311からの進行波電圧VfとDDS3021の発振出力(cos(2πf・ts・k))とを乗算し、乗算器3023は、検出部311からの進行波電圧VfとDDS3021の発振出力(sin(2πf・ts・k))とを乗算する。乗算器3024は、検出部311からの反射波電圧VrとDDS3021の発振出力(cos(2πf・ts・k))とを乗算し、乗算器3025は、検出部311からの反射波電圧VrとDDS3021の発振出力(sin(2πf・ts・k))とを乗算する。これらDDS3021、および乗算器3022から3025によって、検出部311の検出値(進行波電圧Vfと反射波電圧Vr)を複素化している。ここで、f(Hz)はHF周波数、tsはサンプル周期(ソース電源10側のDDS3021の動作周期)、kはサンプル数を表している。
【0020】
平均化処理部3026は、上記複素化された進行波電圧および反射波電圧の値を、ソース電源10の基本周波数fの周期で平均化し、平均化出力Vf・sinθ、Vf・cosθ、Vr・sinθ、およびVr・cosθを出力する。ここで、θ=2πf・ts・kである。
【0021】
インピーダンス算出部3027は、平均化出力Vf・sinθ、Vf・cosθ、Vr・sinθ、およびVr・cosθから、インピーダンスを算出し、これを反射係数(ベクトル成分U,V)に変換して整合部313およびインピーダンス軌跡出力部3028にそれぞれ供給する。より具体的には、インピーダンス算出部3027は、Vf・sinθとVf・cosθからVfを求め、Vr・sinθとVr・cosθからVrを求め、Vr/Vfからインピーダンス値を算出する。
【0022】
インピーダンス軌跡出力部3028は、インピーダンス算出部3027から取得した反射係数(ベクトル成分U,V)に基づいてインピーダンス軌跡を求め、出力する。出力されたインピーダンス軌跡は、例えば、図示しない管理コンピュータの表示画面上に表示される。
【0023】
<インピーダンス情報出力部312における処理>
図3は、インピーダンス情報出力部312の動作(進行波電圧Vfおよび反射波電圧Vrを取得してからインピーダンス軌跡を出力するまでの処理)を説明するためのフローチャートである。
【0024】
(i)ステップ301
インピーダンス情報出力部312は、検出部311から進行波電力Pfの電圧成分Vf(進行波電圧)および反射波電力Prの電圧成分Vr(反射波電圧)を取得する。例えば、検出部311からインピーダンス情報出力部312に入力される進行波電圧Vfおよび反射波電圧Vrは、
図4に示されるような波形である。
【0025】
(ii)ステップ302
インピーダンス情報出力部312は、DDS3021からHF周波数f(例えば、40.68MHz)で信号(cos成分およびsin成分)を生成(発振)し出力する。そして、乗算器3022は、検出部311からの進行波電圧VfとDDS3021の発振出力(cos(2πf・ts・k))とを乗算し、乗算器3023は、検出部311からの進行波電圧VfとDDS3021の発振出力(sin(2πf・ts・k))とを乗算する。乗算器3024は、検出部311からの反射波電圧VrとDDS3021の発振出力(cos(2πf・ts・k))とを乗算し、乗算器3025は、検出部311からの反射波電圧VrとDDS3021の発振出力(sin(2πf・ts・k))とを乗算する。これらDDS3021、および乗算器3022から3025によって、検出部311の検出値(進行波電圧Vfと反射波電圧Vr)が複素化される。つまり、DDS3021および乗算器3022から3025は、複素フィルタを構成している。複素フィルタによって、VfおよびVrは、Vf=Vf{cos(2πf・ts・k)-j・sin(2πf・ts・k)}、Vr=Vr{cos(2πf・ts・k)-j・sin(2πf・ts・k)}となる。
【0026】
(iii)ステップ303
インピーダンス情報出力部312の平均化処理部3026は、各乗算器3022~3025の出力である複素化した進行波電圧および反射波電圧を取得し、これらをHF周期で平均化する。具体的には、平均化処理部3026は、DDS動作周期(1/DDS動作周波数(例えば100MHz))毎に複素化されたVfおよびVrをそれぞれHF周期で平均化する。
【0027】
(iv)ステップ304
インピーダンス情報出力部312のインピーダンス算出部3027は、平均化された進行波電圧(Vf・cosθおよびVf・sinθ)と平均化された反射波電圧(Vr・cosθおよびVr・sinθ)を用いてインピーダンス値を算出する。具体的には、インピーダンス算出部3027は、平均化処理部3026においてHF周期で平均化して得られた電圧値を用いて反射係数のベクトル(Vr/Vf)を求めている。当該演算により、HF周期毎のインピーダンス値を算出したことになる。
【0028】
(v)ステップ305
インピーダンス情報出力部312のインピーダンス軌跡出力部3028は、LF周期(1/400kHz)をHF周期(1/40.68MHz)で分割した反射係数のベクトル(ベクトル(U,V))を取得し、出力する。具体的には、((1/400kHz)÷(1/40.68MHz))個分の反射係数(ベクトル)を取得し、LF周波数の一周期間のインピーダンス軌跡を生成し、出力する。
【0029】
<インピーダンス軌跡>
図5は、従来の検出方法(基本波のみの検出)で整合を取った場合のLF周期一周期分のインピーダンス軌跡を示す図である。整合状態(反射係数(u、v)=(0、0))であるので、従来検出でのインピーダンスはスミスチャートの中心付近となっているが、インピーダンス軌跡は、反射係数の絶対値が最大0.8付近まで広がっており、反射電力が発生している。
また、インピーダンス軌跡の各データ(反射係数(u、v))をLF周期一周期分でベクトル平均すると、整合状態(反射係数(u、v)=(0、0))付近となるので、従来検出方法と同等の平均インピーダンスを算出できる。
【0030】
<周波数制御時のインピーダンス>
従来の検出方法では、狭帯域のバンドパスフィルタを通して検出しているため、周波数制御を行うと、正しくインピーダンス計算できない構成となっている。インピーダンス軌跡を求める方法では、バンドパスフィルタが無いため、一定の範囲内であれば周波数が基本波以外でもインピーダンス軌跡を算出できる。また、このインピーダンス軌跡をベクトル平均することで、周波数制御時の平均インピーダンスを算出することができる。
【0031】
以上のようにしてインピーダンス軌跡を生成して出力(提示)することによって、オペレータ(ユーザ)は、周波数制御を実行した時のインピーダンス整合に用いることが可能となる。
【0032】
<まとめ>
(i)本実施形態によれば、整合器30(第1整合器310)におけるインピーダンス情報出力部312において、進行波電圧および反射波電圧をそれぞれ複素化してインピーダンス値を算出し、当該インピーダンス値を用いて、インピーダンス軌跡を生成する。具体的には、インピーダンス算出部3027は、複素化された進行波電圧および反射波電圧を、HF周期(ソース電源10の基本周期)で平均化し、当該平均化され、複素化された進行波電圧および反射波電圧を用いてインピーダンス値を算出する。そして、当該インピーダンス値に対応する反射係数ベクトルをLF周期(1/400kHz)÷HF周期(1/40.68MHz)個分取得するので、LF周波数の一周期間のインピーダンス軌跡を生成することができる。
これにより、IMD(反射波成分)を考慮したインピーダンスの変化(インピーダンス軌跡)を求めることができる。オペレータは、このようなインピーダンス軌跡を、周波数制御を実行した時のインピーダンス整合に用いることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態によるインピーダンス情報出力部312は、進行波電力が周波数制御されているか否かに関係なく、IMDを考慮してインピーダンス軌跡を生成し、出力するが、進行波電力が高周波電源(ソース電源10)において周波数制御されている場合には、周波数制御された電力の電圧成分(進行波電圧および反射波電圧)に対応する反射波電圧からインピーダンスを算出する。これにより、周波数制御前後のインピーダンス軌跡を取得し、比較することによって、最適にインピーダンス整合が行われているか判断することができ、周波数制御の効果を確認することができる。
【0034】
(ii)本実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現することができる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0035】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0036】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0037】
ここで述べたプロセスおよび技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはない。また、汎用目的の多様なタイプのデバイスが本開示の記述に従って使用することができる。なお、本開示の技術を実行する上で、専用の装置を構築するのが有益である場合があるかもしれない。
【0038】
本実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示の技術は、具体例な実施形態に関連して記述したが、これらは、本開示の技術を限定するためではなく、説明のためである。本分野にスキルのある者であれば、本開示の技術を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、およびファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0039】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 電源供給システム(高周波電源システム)
10 ソース(HF)電源
20 バイアス電源
30 整合器
40 プラズマ負荷
311 検出部
312 インピーダンス情報出力部
313 整合部
3021 DDS
3022から3025 乗算器
3026 平均化処理部
3027 インピーダンス算出部
3028 インピーダンス軌跡出力部