(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】モータ及び送風装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/14 20060101AFI20250604BHJP
F04D 29/32 20060101ALI20250604BHJP
F04D 29/64 20060101ALI20250604BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20250604BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
H02K7/14 A
F04D29/32 D
F04D29/32 K
F04D29/64 D
F04D29/00 B
F04D25/08 303
(21)【出願番号】P 2021574100
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021002998
(87)【国際公開番号】W WO2021153661
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020011963
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】大村 祐司
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033614(JP,A)
【文献】特開2014-234841(JP,A)
【文献】特開2001-317547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
F04D 29/32
F04D 29/64
F04D 29/00
F04D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの一端に固定され、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がる
天板部を有するカップ部と、
前記シャフトに固定された軸受と、
前記軸受を収容する筒状のスリーブと、
前記スリーブの外周部に固定されるステータと、
前記ステータを取り囲むロータと、
を備え、
前記
カップ部と前記ロータとが固定されており、
前記
カップ部には、前記シャフトの軸方向において、前記スリーブの前記天板部側の端部に向けて開口する
第1の孔部
と第2の孔部が設けられて
おり、
前記第2の孔部は、前記ロータの回転によって、前記天板部の内側に空気流を生じさせ、
前記スリーブが、前記天板部側の端部に、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がるフランジ部を有し、
前記第1の孔部が、前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部に向けて開口している、
モータ。
【請求項2】
前記
カップ部と前記ロータとが一体化してハブを構成している、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記スリーブが、前記ステータの前記天板部側で、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に張り出して、前記ステータと係合する凸部を有する、請求項1
または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受は、少なくとも、前記シャフトにおける、前記天板部が固定された一端側寄りに位置する第一軸受と、前記一端側とは反対側の他端側寄りに位置する第二軸受と、を有し、
少なくとも、前記スリーブ、前記第一軸受及び前記第二軸受で、1つのカートリッジ部材を構成している、請求項1から
3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
他の構成部材の全部または一部を内部に収容するケースを備え、
前記ケースの内面には、内部方向に立設する第1の筒状部を有し、
前記第1の筒状部に、前記スリーブの前記天板部とは逆側の端部が嵌入して固定されることで、前記スリーブが前記ケースに固定されている、請求項1から
4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記天板部の中心には、前記スリーブ側に立設する第2の筒状部を有し、
前記第2の筒状部に、前記シャフトの一端が嵌入して固定されることで、前記天板部が前記シャフトに固定されている、請求項1から
5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記天板部の中心には、前記スリーブ側に立設する第2の筒状部を有し、
前記第2の筒状部に、前記シャフトの一端が嵌入して固定されることで、前記天板部が前記シャフトに固定されており、
前記第1の筒状部と、前記スリーブの前記天板部とは逆側の端部、及び、前記第2の筒状部と、前記シャフトの一端、のいずれか一方もしくは双方が、圧入もしくは圧入を含む固定方法による固定である、請求項
5に記載のモータ。
【請求項8】
シャフトと、
前記シャフトの一端に固定され、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がる天板部
を有するカップ部と、
前記シャフトに固定された軸受と、
前記軸受を収容する筒状のスリーブと、
前記スリーブの外周に固定されるステータと、
前記ステータを取り囲むロータと、
他の構成部材の全部または一部を内部に収容するケースと、
を備え、
前記
カップ部と前記ロータとが固定されており、
前記ケースの内面には、内部方向に立設する第1の筒状部を有し、
前記天板部の中心には、前記スリーブ側に立設する第2の筒状部を有し、
前記第1の筒状部と、前記スリーブの前記天板部とは逆側の端部、及び、前記第2の筒状部と、前記シャフトの一端、がいずれも圧入もしくは圧入を含む固定方法により固定されて
おり、
前記カップ部には、前記シャフトの軸方向において、前記スリーブの前記天板部側の端部に向けて開口する第1の孔部と第2の孔部が設けられており、
前記第2の孔部は、前記ロータの回転によって、前記天板部の内側に空気流を生じさせ、
前記スリーブが、前記天板部側の端部に、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がるフランジ部を有し、
前記第1の孔部が、前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部に向けて開口している、モータ。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載のモータと
前記天板部に固定されたインペラと、
を有する、送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトと、当該シャフトに固定された軸受と、当該軸受を収容する筒状のスリーブと、当該スリーブの外周部に固定されるステータと、当該ステータを取り囲むロータを含みシャフトの一端に固定されたロータハブと、これらを収容するケースからなる、いわゆるアウタロータタイプのモータや、ロータハブにインペラが固定された送風装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなモータや送風装置では、組み立ての際、スリーブとケースとは接着剤等により固定をしているが、接着剤による固定の場合には、シャフト(回転軸)の垂直度を確保するために、両者の固定箇所の隙間ができないようにすることが求められ、高い取り付け精度が求められたり、取り付け作業の煩雑化を招いたりする懸念があった。
【0005】
したがって、本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながらシャフト(回転軸)の垂直度を高めることが容易なモータ及び送風装置を提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明のモータの一態様としては、シャフトと、
前記シャフトの一端に固定され、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がる天板部と、
前記シャフトに固定された軸受と、
前記軸受を収容する筒状のスリーブと、
前記スリーブの外周部に固定されるステータと、
前記ステータを取り囲むロータと、
を備え、
前記天板部と前記ロータとが固定されており、
前記天板部には、前記シャフトの軸方向において、前記スリーブの前記天板部側の端部に向けて開口する孔部が設けられている。
【0007】
本発明のモータにおいて、前記天板部と前記ロータとが一体化してハブを構成していることが好ましい。
前記スリーブが、前記天板部側の端部に、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がるフランジ部を有し、
前記孔部が、前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部に向けて開口しているものとすることができる。
【0008】
本発明のモータにおいて、前記スリーブが、前記ステータの前記天板部側で、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に張り出して、前記ステータと係合する凸部を有するものとすることができる。
前記軸受は、少なくとも、前記シャフトにおける、前記天板部が固定された一端側寄りに位置する第一軸受と、前記一端側とは反対側の他端側寄りに位置する第二軸受と、を有し、
少なくとも、前記スリーブ、前記第一軸受及び前記第二軸受で、1つのカートリッジ部材を構成していることが好ましい。
【0009】
本発明のモータにおいて、他の構成部材の全部または一部を内部に収容するケースを備え、
前記ケースの内面には、内部方向に立設する第1の筒状部を有し、
前記第1の筒状部に、前記スリーブの前記天板部とは逆側の端部が嵌入して固定されることで、前記スリーブが前記ケースに固定されているものとすることができる。
【0010】
本発明のモータにおいて、前記天板部の中心には、前記スリーブ側に立設する第2の筒状部を有し、
前記第2の筒状部に、前記シャフトの一端が嵌入して固定されることで、前記天板部が前記シャフトに固定されているものとすることができる。
【0011】
本発明のモータにおいて、前記天板部の中心には、前記スリーブ側に立設する第2の筒状部を有し、
前記第2の筒状部に、前記シャフトの一端が嵌入して固定されることで、前記天板部が前記シャフトに固定されており、
前記第1の筒状部と、前記スリーブの前記天板部とは逆側の端部、及び、前記第2の筒状部と、前記シャフトの一端、のいずれか一方もしくは双方が、圧入もしくは圧入を含む固定方法による固定であるものとすることができる。
【0012】
本発明のモータの一態様としては、シャフトと、
前記シャフトの一端に固定され、前記シャフトの軸方向に対して垂直方向に広がる天板部と、
前記シャフトに固定された軸受と、
前記軸受を収容する筒状のスリーブと、
前記スリーブの外周に固定されるステータと、
前記ステータを取り囲むロータと、
他の構成部材の全部または一部を内部に収容するケースと、
を備え、
前記天板部と前記ロータとが固定されており、
前記ケースの内面には、内部方向に立設する第1の筒状部を有し、
前記天板部の中心には、前記スリーブ側に立設する第2の筒状部を有し、
前記第1の筒状部と、前記スリーブの前記天板部とは逆側の端部、及び、前記第2の筒状部と、前記シャフトの一端、がいずれも圧入もしくは圧入を含む固定方法により固定されている。
【0013】
本発明の送風装置の一態様としては、前記モータと、
前記天板部に固定されたインペラと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成でありながらシャフト(回転軸)の垂直度を高めることが容易なモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかるモータが適用された送風装置の斜視図である。
【
図4】シャフトをハブに固定する操作について説明するための断面図である。
【
図5】
図4に示す状態のものをケースに固定する操作について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態にかかるモータ及び送風装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態にかかるモータ100が適用された送風装置101の斜視図であり、
図2は、
図1におけるA-A断面図である。
【0017】
なお、本実施形態の説明において、上方乃至下方と云う時は、
図2における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。また、本実施形態の説明において、左乃至右と云う時は、
図2における左右関係を意味する。これらは、
図2以外の全ての図面においても同様である。
【0018】
以下の説明では、本実施形態にかかるモータ100を、インペラ22を回転させることにより吸い込んだ空気を排出する送風装置101に適用した例で説明する。
送風装置101のモータ100は、シャフト1と、シャフト1の一端に固定されたハブ2と、シャフト1に固定された軸受4と、軸受4を収容する筒状のスリーブ5と、スリーブ5の外周部に固定されるステータ6と、これらの構成部材を内部に収容するケース7と、を有して構成されている。
【0019】
シャフト1は、モータ100の上方から見た中心に位置して、上下方向に延在している。シャフト1は、軽量化のために、例えばアルミニウムで形成されている。シャフト1の一端(
図2における上端)には、ハブ2が固定されている。
シャフト1とハブ2は、ハブ2の一部を構成するシャフト取付部材23により固定されている。なお、本実施形態において、「周方向」と云うときは、シャフト1の回転軸線Xを中心とする円の周方向を意味する。
【0020】
ハブ2は、全体としてカップ形状をした樹脂製のカップ部21と、カップ部21のカップ内にはめ込まれたカップ形状のヨーク31と、ヨーク31の内周面に、ステータ6を取り囲む状態で取り付けられたマグネット32と、カップ部21の外周面に固定されたインペラ22と、を有して構成されている。なお、この内のヨーク31とマグネット32とで、ロータ3が構成されている。
【0021】
また、ハブ2は、その形状面から、シャフト1の一端に固定され、シャフト1の軸方向(回転軸線X方向)に対して垂直方向に広がる天板部2Aと、回転軸線方向Xと同軸上の円筒体である円筒部2Bと、天板部2Aの外周と円筒部2Bの上端とを連結する円錐台形状の円錐台部2Cとに分けられる。天板部2A、円筒部2B及び円錐台部2Cは、いずれも、基本的にカップ部21とヨーク31とを含む2層構成以上の積層構造となっている。
【0022】
カップ部21における天板部2Aには、内部側から上方側へ凹んだ凹部21aが設けられている。
この凹部21aには、後述するシャフト1の取付部材(以下、「シャフト取付部材」と称する。)の一部が収容されている。
【0023】
天板部2Aには、回転軸線X方向において、スリーブ5の天板部2A側の端部(後述するフランジ部51)に向けて開口する円管状の孔部20aが複数(本実施形態では、3個。)設けられている。
孔部20aは、回転軸線Xに対して平行に設けられており、送風装置101の外部の空間とハブ2の内部の空間とを連通している。
【0024】
また、天板部2Aは、ハブ2の内周面の一部がヨーク31に形成された孔部30aに挿通されてヨーク31の内壁部31dに溶着された溶着部20bを有している。この溶着部20bにより、天板部2Aとヨーク31を含むロータ3とが固定されて一体化してハブ2を構成している。
【0025】
円錐台部2Cには、送風装置101の外部の空間とハブ2の内部の空間とを連通する孔部20cが複数設けられている。
孔部20cは、インペラ22の回転によって、ハブ2の内部に空気流を生じさせるようになっている。
【0026】
ヨーク31は、天板部2Aの中心に円形開口部31aが形成されており、この円形開口部31aに、後述するシャフト取付部材23が嵌め込まれて固定されている。ヨーク31は、磁性体により形成されるが、特性上問題がなければ、アルミニウム等の非磁性体で形成しても構わない。
【0027】
一方、マグネット32は、円筒部2Bにおいて、ヨーク31の内周面に、ステータ6と対向するように取り付けられている。マグネット32は環状を有しており、N極に着磁された領域と、S極に着磁された領域とが、周方向に沿って一定の周期で交互に設けられている。
【0028】
シャフト取付部材23は、筒状の第2の筒状部(以下、第2の筒状部を「取付部材筒状部」と称する。)23aと、環状の環状部23b,23cと、からなる。
取付部材筒状部23aは、内部にシャフト1の一端(上端)が圧入により固定されている。
【0029】
環状部23b及び環状部23cは、取付部材筒状部23aの外周面における回転軸線X方向に互いに離れた位置で、回転軸線Xから遠ざかる方向へ突出して設けられている。
環状部23bと環状部23cとの間には、ヨーク31の円形開口部31aの淵が挟み込まれている。即ち、環状部23bと環状部23cとは、ヨーク31の厚さと略同じ長さ分だけ離れている。
【0030】
取付部材筒状部23aの天板部2A側、及び、環状部23bは、天板部2Aの凹部21aに収容されている。
一方、環状部23b、及び、取付部材筒状部23aの下方(軸受4)側は、ヨーク31の内部に収容されている。
【0031】
シャフト1は、軸受4に嵌入された状態で固定されている。軸受4は、第一軸受41と第二軸受42の2つが一定の間隔を置いてシャフト1に取り付けられている。第一軸受41は、シャフト1における、天板部2Aが固定された上方側(一端側)寄りに位置する。また、第二軸受42は、下方側(一端側とは反対側の他端側)寄りに位置する。
【0032】
軸受41,42は、外輪41a,42aと、内輪41b,42bと、外輪41a,42a及び内輪41b,42b間に介在するボール(ベアリングボール)41c,42cと、からなる、いわゆるボールベアリングである。ボール41cが外輪41aと内輪41bとの間で転がることにより、外輪41aに対する内輪41bの回転抵抗が大幅に少なくなるようになっている。軸受41は、その機能から、例えば、鉄等の硬質の金属やセラミックスの部材で形成されている。シャフト1は、内輪41b,42bに固定されており、外輪41a,42aに対して回転自在になっている。
【0033】
軸受41,42は、スリーブ5に収容されている。スリーブ5は、筒状(特に円筒状)の形状を有する部材であり、例えば、プラスチックあるいは金属で形成されている。
スリーブ5は、天板部2A側の端部に設けられたフランジ部51と、外周面5cに設けた凸部52と、を有している。
【0034】
フランジ部51は、スリーブ5の天板部2A側の端部から回転軸線X方向に対して垂直な方向に広がっている。
フランジ部51の上方(天板部2A)側には孔部20aが位置する。即ち、孔部20aを構成する管の延在する軸上にフランジ部51が位置するように、フランジ部51がスリーブ5の上端から延出している。
【0035】
凸部52は、スリーブ5の外周面5cから回転軸線X方向に対して垂直な方向に張り出しており、後述するステータ6のステータコア61の天板部2A側(上方側)と接触している。
スリーブ5の内周面には、回転軸線Lにおける中央部が回転軸線Lに向けて突出した突出部(小径の内周部)53、回転軸線Lにおける両側が回転軸線Lから遠ざかる方向へ凹んだ凹部(大径の内周部)54となっている。以下、突出部53を小内径部53と呼称し、凹部54を大内径部54と呼称する。
【0036】
なお、スリーブ5は、小内径部53と大内径部54とを有する形状となるように公知の手法によって一体成型で形成してもよいが、例えば、大内径部54の内径及び外径を有する大径の円管(以下、「大径円管」と称する。)の内部に、小内径部53の内径と同径の内径と、大内径部54の内径と同径の外径と、を有する小径の円管(以下、「小径円管」と称する。)を挿し込んで、回転軸線L方向において大径円管の略中央に小径円管が位置するようにして、スリーブ5を2つ以上の複数の部材で形成してもよい。この際、小径円管は、大径円管と異なる部材で形成してもよく、例えば、螺旋状のスプリングのような弾性部材を用いることができる。
【0037】
2つの軸受41,42の外輪41a,42aは、スリーブ5の2つの大内径部54にそれぞれ嵌め込まれるとともに固定されて、スリーブ5に支持されている。一方、シャフト1は2つの軸受41,42の内輪41b,42bに嵌め込まれるとともに固定されて、2つの軸受41,42に支持されている。したがって、シャフト1は、スリーブ5に対して回転自在となるように支持されている。
【0038】
本実施形態において、スリーブ5、第一軸受41及び第二軸受42で、1つのカートリッジ部材を構成している。予め、スリーブ5に、第一軸受41及び第二軸受42を組み付けた状態のカートリッジ部材を1つの部品とすることで、製造する際には、組み立て作業が容易になる。また、例えば、軸受4が破損した場合には、カートリッジ部材ごと交換すればよいので、交換作業が容易であり、容易な作業で修理をすることができ、低コスト化にも繋がる。
【0039】
また、部品点数が少ない段階であるカートリッジ部材の状態で回転バランスを調整するのは、比較的容易である。そのため、カートリッジ部材の状態で回転バランスを調整しておくことで、モータを製造または修理する際、あるいは、製造または修理した後の回転バランスの作業を省略することができるか、あるいは、簡単な作業で済ますことができ、製造または修理の作業を簡略化できる。したがって、この点でも、低コスト化に繋がる可能性がある。
【0040】
カートリッジ部材としては、少なくとも、スリーブ5、第一軸受41及び第二軸受42の3つの部品で構成することができるが、さらに、シャフト1を軸受4内に嵌挿させて固定した状態で、1つのカートリッジ部材を構成してもよい。前記3つの部品にシャフト1を組み込んだ状態のカートリッジ部材とすることで、カートリッジ部材の状態での回転バランスの調整をより精度よく実施することができ、また、製造乃至修理の作業もより容易にすることができる。
【0041】
スリーブ5は、天板部2Aとは逆側(下方側)の端部が、後に詳述するケース7の筒状部に嵌入して固定されることで、スリーブ5がケース7に固定されている。スリーブ5に支持されたシャフト1は、ケース7に対して回転自在となるように支持されており、モータ100の回転力が取り出せるようになっている。
【0042】
スリーブ5を取り囲むステータ6は、ステータコア61と、コイル62と、インシュレータ63と、を有している。ステータ6は、内周側がスリーブ5の凸部52に係合することによりスリーブ5に固定されている。
ステータコア61は、シャフト1と同軸上に配された円環状の珪素鋼板等の積層体となっている。
【0043】
コイル62は、ステータコア61の周囲に巻回されている。ステータコア61とコイル62とは、絶縁体で形成されたインシュレータ63によって絶縁されている。なお、インシュレータ63に代えて、ステータコア61の表面に絶縁膜を塗装してコイル62と絶縁しても構わない。
インシュレータ63の天板部2Aとは逆側(下方側)の端部63bには、基板8が固定されている。
【0044】
ケース7は、ハブ2を取り囲む側壁部71と、側壁部71の一方(下方)の開口の一部に位置する底壁部72と、を有している。ケース7は、例えば、樹脂材料や金属材料により成形される。当該ケース7の内部空間には、ロータ3及びステータ6は勿論、その他ハブ2等のモータ100及び送風装置101の構成要素のほとんど(固定されているものは全て)が収容されている。
【0045】
ケース7は、その内面から内部方向に立設する筒状の第1の筒状部(以下、第1の筒状部を「ケース筒状部」と称する。)73を有している。ケース筒状部73は、底壁部72から天板部2A側へ立設しており、金属製の円筒状の形状をしたスリーブ部材をケース7にインサート成形することによって、底壁部72と一体的に形成されている。ケース7の上方には、円形に開口した吹出口74が設けられている。なお、ケース筒状部73を金属製にすることによって、スリーブ5を圧入する際、ケース7の強度を向上させ、より安定して圧入を行うことが可能となるが、金属製に限らず、樹脂やセラミックス等で成形した別部材を一体に形成してもよく、また、ケース7と一体に成形してもよい。その場合、軽量化や工数の低減が可能となる。
ケース筒状部73の内部には、スリーブ5の天板部2Aとは逆側(下方側)の端部が圧入により固定されている。スリーブ5の端部がケース筒状部73に固定されることで、スリーブ5がケース7に固定されている。
【0046】
ケース筒状部73の外周面において、天板部2A側の端部(上端部)から底壁部72側方向への一定領域に外径が狭くなるように外周から凹んだ凹部(切り欠かれた切欠部)73aが成形されている。
切欠部73aには、インシュレータ63の端部63b及び基板8の内周面が位置する。
【0047】
底壁部72には、ケース7の内部の空間と、ケース7の外部の空間と、を連通し、ケース7内に空気を吸い込む不図示の吸気口が設けられている。なお、底壁部72の吸気口は、ケース7の内部の空間と、ケース7の外部の空間と、を連通する孔であってもよく、メッシュ状等の材料で形成したりすることもできる。
【0048】
上記のモータ100を有する送風装置101に不図示の外部電源から所定の電圧が印加されると、基板8を介してコイル62に制御された電流が供給される。
そして、ステータ6が生じる磁力と、マグネット32との間の作用によってインペラ22が回転軸線Xを中心に例えば時計回りに回転する。インペラ22が回転することにより、底壁部72の吸気口周辺の空気が吸気口を通ってケース7内に吸い込まれる。そして、上方の吹出口74から空気が吹き出される。
【0049】
次に、本実施形態のモータ100及びこれが適用された送風装置101の組み立て方法について説明する。
図3は、
図2に示す送風装置101の分解断面図である。
図4は、シャフト1をハブ2に固定する操作について説明するための断面図である。
図5は、
図4に示す状態のものをケース7に固定する操作について説明するための断面図である。
【0050】
送風装置101の組み立ては、はじめに、
図3に示すように、スリーブ5の内部に軸受4を固定する。軸受4のスリーブ5への固定は、軸受41,42の外輪41a,42aを大内径部54にそれぞれ嵌め込むことにより固定する。
スリーブ5の内部に軸受4を固定した後、この軸受4にシャフト1を嵌入することにより、スリーブ5の内部にシャフト1を固定してカートリッジ部材Cを組み立てる。なお、このカートリッジ部材Cを予め別の場所で組み立てておいてもよい。
【0051】
次に、このカートリッジ部材Cをステータ6の内部に固定する。
ステータ6へのカートリッジ部材Cの固定は、スリーブ5の外周面5cに接着剤を塗布し、ステータコア61の内部にスリーブ5を矢印D1方向に挿入することによりなされる。
【0052】
また、ステータ6へのスリーブ5の挿入は、スリーブ5の凸部52がステータ6のステータコア61の天板部2A側(上方側)と接触するまで挿入する。このとき、ステータ6はインシュレータ63を保持し、カートリッジ部材Cを挿入する。そして、フランジ部51を矢印D1方向に押圧することでスリーブ5の外周にステータ6が固定される。
【0053】
次に、
図4に示すように、シャフト1をハブ2の天板部2Aに固定する。天板部2Aへのシャフト1の固定は、シャフト1の上端をシャフト取付部材23の取付部材筒状部23aの内部に矢印D2方向に圧入することにより行う。このとき、ハブ2側を保持した状態で、シャフト1の下端部を矢印D2方向に押圧することでカートリッジ部材Cを挿入する。なお、天板部2Aへのシャフト1の固定は、取付部材筒状部23aの内部に接着剤を塗布しておき、圧入と接着剤の両方により行っても構わない。また、接着剤による固定のほか、圧入に加え、強度を増すために溶接等による固定を併用してもよい。シャフト1がハブ2の天板部2Aに固定されると、フランジ部51の天板部2A側には孔部20aが位置する状態になっている。
【0054】
そして、
図5に示すように、スリーブ5における天板部2Aとは逆側(下方側)の端部をケース筒状部73の内部に圧入することによりスリーブ5の端部をケース筒状部73に固定する。
スリーブ5のケース筒状部73への圧入は、天板部2Aの孔部20aに上方から下方へ不図示の棒状の治具を挿入し、スリーブ5のフランジ部51を矢印D4方向へ押圧することにより行う。ケース筒状部73へのスリーブ5の固定は、ケース筒状部73の内部に接着剤を塗布しておき、圧入と接着剤との両方により行っても構わない。また、接着剤による固定のほか、圧入に加え、強度を増すために溶接等による固定を併用してもよい。なお、不図示の治具は、3つの孔部20aから棒状体を同時に挿入して、フランジ部51を同時に押圧できるような3本の棒状体を有する櫛刃状のものである。
【0055】
ケース筒状部73へスリーブ5が押圧されると、インシュレータ63の端部63b及び基板8の内周部がケース筒状部73の切欠部73aに位置した状態になる。
このようにして、本実施形態の送風装置101は、シャフト取付部材23の取付部材筒状部23aとシャフト1の上端、及び、ケース筒状部73とスリーブ5の下方側の端部のいずれもが圧入により固定されている。
【0056】
本実施形態においては、天板部2Aには、シャフト1の回転軸線X方向において、スリーブ5の天板部2A側の端部に向けて開口する孔部20aが設けられている。このため、孔部20aに治具を挿入してスリーブ5を下方側へ押圧することにより、スリーブ5の下方側の端部をケース筒状部73へ圧入により固定することができる。このように、圧入によりスリーブ5の下方側の端部を固定することができるため、スリーブ5とケース筒状部73との隙間が生じにくくなりシャフト1の垂直度を高めることができる。即ち、圧入によらない接着等の固定方法では、製品のばらつきや、加工条件、組立条件等による影響でシャフト1に傾きが生じてしまう懸念がある。しかし、本実施形態では圧入による固定のため、垂直度を高めることが容易である。
【0057】
また、本実施形態においては、スリーブ5が、天板部2A側の端部に、シャフト1の回転軸線X方向に対して垂直方向に広がるフランジ部51を有し、孔部20aが、シャフトの回転軸線X方向において、フランジ部51に向けて開口している。このため、孔部20aに治具を挿入し、スリーブ5を下方側へ押圧する際、フランジ部51に治具を突き当ててスリーブ5を下方側へ押圧することによりスリーブ5をケース筒状部73へ容易に圧入することができる。
【0058】
さらに、本実施形態においては、スリーブ5が、ステータ6の天板部2A側で、シャフト1の回転軸線X方向に対して垂直方向に張り出して、ステータ6と接触する凸部52を有する。このため、コイル62の天板部2A側(上方側)が凸部52と接触するまでステータ6を挿入することによりスリーブ5に対してステータ6を位置決めすることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、スリーブ5、第一軸受41及び第二軸受42で、1つのカートリッジ部材Cを構成している。このため、製造する際の組み立て作業が容易になる。また、例えば、軸受4が破損した場合には、カートリッジ部材Cごと交換すればよいので、交換作業が容易であり、容易な作業で修理をすることができ、低コスト化にも繋がる。
【0060】
さらに、本実施形態においては、ケース7の内面には、内部方向に立設する第1の筒状部(ケース筒状部73)を有し、ケース筒状部73に、スリーブ5の天板部2Aとは逆側の端部が嵌入して固定されることで、スリーブ5がケース7に固定されている。そして、スリーブ5をケース筒状部73に固定する際、孔部20aに治具を挿入し、スリーブ5を下方側へ押圧することにより、スリーブ5をケース筒状部73に容易に圧入することができ、スリーブ5をケース筒状部73にしっかりと固定することができる。
【0061】
本実施形態においては、天板部2Aの中心には、スリーブ5側に立設する第2の筒状部(取付部材筒状部23a)を有し、取付部材筒状部23aに、シャフト1の一端が嵌入して固定されることで、天板部2Aがシャフト1に固定されている。このため、天板部2Aがシャフト1に固定された状態にもかかわらず、孔部20aに治具を挿入してスリーブ5を下方側へ押圧することにより、スリーブ5をケース筒状部73に固定することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、第1の筒状部(ケース筒状部73)とスリーブ5の天板部2Aとは逆側の端部、及び、第2の筒状部(シャフト取付部材23)とシャフトの一端(上端)の双方が圧入による固定である。このため、モータ100を組み立てる際、双方を接着剤により固定する場合と比較して取付作業が容易になる。また、圧入による固定であるため、ケース筒状部73とスリーブ5、シャフト取付部材23とシャフト1、の間に隙間が生じにくく、シャフト1の垂直度を高めることができる。
【0063】
以上、本発明のモータ及び送風装置について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のモータは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態のモータ100及び送風装置101においては、スリーブ5は、フランジ部51を有する場合について説明したが、フランジ部51がない構成であってもよい。フランジ部51がない場合、孔部20aをスリーブ5の上端部に向けて開口するように構成し、孔部20aに治具を挿入してスリーブ5の上端部に接触させて押圧することにより、スリーブ5をケース筒状部73へ圧入することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、天板部2Aには、スリーブ5のフランジ部51に向けて開口する孔部20a、円錐台部2Cには、送風装置101の外部の空間とハブ2の内部の空間とを連通する孔部20c、がそれぞれ設けられている場合について説明したが、例えば孔部20aのみを設け、孔部20cのない構成であってもよい。即ち、孔部20aに、治具を挿入する機能と、空気流を生じさせる機能と、の両方の機能を併せ持つようにしてもよい。
【0065】
さらに、天板部2Aは、孔部20aのない構成であってもよい。
図5の状態から説明すると、シャフト1の上端を取付部材筒状部23aへ圧入して固定した後、例えば、ケース7の底壁部72の開口(吸気口)から、先端に鉤部を有する治具を挿入し、鉤部をスリーブ5のフランジ部51に引っ掛けてハブ2を下方へ引っ張り下げることにより、スリーブ5の下方側をケース筒状部73に圧入することができる。この方法によっても、シャフト取付部材23の取付部材筒状部23aとシャフト1の上端、及び、ケース筒状部73とスリーブ5の下方側の端部のいずれも圧入することができる。
【0066】
さらに、上記実施形態では、天板部2Aは、カップ部21とヨーク31とを含む構成である場合について説明したが、ヨーク31がカップ状ではなく筒状であり、天板部2Aがカップ部21のみで構成されていても構わない。また、カップ部21がカップ形状ではなく筒状であり、カップ状のヨーク31のみで天板部2Aが構成されていても構わない。
【0067】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…シャフト、2…ハブ、2A…天板部、2B…円筒部、2C…円錐台部、2b…底部、3…ロータ、4…軸受、5…スリーブ、5c…外周面、5d…内周面、6…ステータ、7…ケース、8…基板、20a…孔部、20b…溶着部、20c…孔部、21…カップ部、21a…凹部、22…インペラ、23…シャフト取付部材、23a…取付部材筒状部、23b…環状部、23c…環状部、30a…孔部、31…ヨーク、31a…円形開口部、31d…内壁部、32…マグネット、41…軸受、41…第一軸受、41a…外輪、41b…内輪、41c…ボール、42…軸受、42…第二軸受、42a…外輪、42b…内輪、42c…ボール、51…フランジ部、52…凸部、53…小内径部、54…大内径部、61…ステータコア、62…コイル、63…インシュレータ、63b…端部、71…側壁部、72…底壁部、73…ケース筒状部、73a…切欠部、74…吹出口、100…モータ、101…送風装置