(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置および樹脂成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/36 20060101AFI20250604BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20250604BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
B29C45/36
B29C33/12
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2022090016
(22)【出願日】2022-06-02
【審査請求日】2024-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下多 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 元貴
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-144368(JP,A)
【文献】特開昭62-93879(JP,A)
【文献】米国特許第5609652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/36
B29C 33/12
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と前記本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた成形対象物を樹脂成形するための成形型であって、前記扁平面が延びる方向に直交する方向が前記成形型の型面と垂直になるように前記成形対象物を設置して樹脂成形を行うための成形型であって、
前記成形型は、上成形型と、下成形型とを備え、
前記上成形型または前記下成形型のいずれか一方の型は、
前記本体部を収容するためのキャビティが形成されたキャビティブロックと、前記端子を収容するための端子収容部とを備え、
前記端子収容部は、端子配置ブロックと、前記キャビティブロックと前記端子配置ブロックとの間の弾性樹脂とを備え、
前記端子収容部には、スリットが設けられている、成形型。
【請求項2】
前記弾性樹脂は、フッ素樹脂を含む、請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記いずれか一方の型は、前記下成形型である、請求項
1に記載の成形型。
【請求項4】
前記端子配置ブロックは、平面視で、前記弾性樹脂をコの字状に取り囲むように構成されている、請求項
1に記載の成形型。
【請求項5】
前記端子収容部は、前記弾性樹脂と前記端子配置ブロックとの間に押さえ板をさらに備え、
前記押さえ板は、前記スリットが延びる方向に移動可能とされており、前記押さえ板の移動によって前記弾性樹脂を押圧可能に構成されている、請求項4に記載の成形型。
【請求項6】
前記端子配置ブロックには前記スリットが延びる方向に前記端子配置ブロックを貫通する貫通孔が設けられており、
前記端子収容部は、前記貫通孔の内部を前記スリットが延びる方向に移動可能に構成されている押圧部材をさらに備え、
前記押圧部材は、前記スリットが延びる方向に前記押さえ板を押圧可能に構成されている、請求項5に記載の成形型。
【請求項7】
前記スリットは、さらに、前記キャビティブロックに設けられた第1のスリットを含み、前記弾性樹脂には、前記第1のスリットの幅よりも狭い第3のスリットが設けられている、請求項
1に記載の成形型。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の成形型を備えた、樹脂成形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂成形装置を備えた、樹脂成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形型、樹脂成形装置および樹脂成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、コイルのベースから延びる端子ピンを熱可塑性合成樹脂からなる底板の貫通孔に貫通させることによってコイルに底板を装着した状態で樹脂成形を行う樹脂成型コイルの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂成型コイルの製造方法において、コイルの端子ピンが扁平面を有する場合には、熱可塑性合成樹脂からなる底板が端子ピンに密着しにくくなり、端子ピンと底板との間から樹脂漏れして、端子ピンに樹脂が付着することがあった。特に、端子ピンの扁平面の延びる方向に直交する方向が成形型の型面と垂直になるようにコイルを成形型に設置した状態で樹脂成形を行った場合には樹脂漏れが発生しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示された実施形態によれば、本体部と本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた成形対象物を樹脂成形するための成形型であって、扁平面が延びる方向に直交する方向が成形型の型面と垂直になるように成形対象物を設置して樹脂成形を行うための成形型であって、成形型は、上成形型と、下成形型とを備え、上成形型または下成形型のいずれか一方の型は、本体部を収容するためのキャビティが形成されたキャビティブロックと、端子を収容するための端子収容部とを備え、端子収容部は、端子配置ブロックと、キャビティブロックと端子配置ブロックとの間の弾性樹脂とを備え、端子収容部には、スリットが設けられている。
【0006】
ここで開示された実施形態によれば、上記の成形型を備えた樹脂成形装置を提供することができる。
【0007】
ここで開示された実施形態によれば、上記の樹脂成形装置を備えた樹脂成形システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、成形対象物の本体部の一端から延びる扁平面を有する端子の扁平面の延びる方向に直交する方向が成形型の型面と垂直になるように成形対象物を成形型に設置した状態で樹脂成形を行った場合でも、樹脂漏れによる端子への樹脂の付着を抑制することが可能な成形型、樹脂成形装置および樹脂成形システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の樹脂成形装置を備えた樹脂成形システムの一例の模式的な平面図である。
【
図2】実施形態の樹脂成形装置で樹脂成形される成形対象物の一例であるコイルの一例の模式的な部分斜視図である。
【
図3】実施形態の樹脂成形装置の下成形型の一例の模式的な斜視図である。
【
図4】
図3に示す弾性樹脂の位置を固定する前の端子収容部を上方から見たときの一例の模式的な平面透視図である。
【
図5】
図3に示す弾性樹脂の位置を固定した状態の端子収容部を上方から見たときの一例の模式的な平面透視図である。
【
図6】実施形態の樹脂成形装置に用いられる上成形型の一例の模式的な斜視図である。
【
図7】上成形型と下成形型とを型締めした後に成形対象物を樹脂成形する工程の一例を図解する模式的な平面図である。
【
図8】実施形態の樹脂成形装置により製造された樹脂成形品の一例の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0011】
<樹脂成形システム>
図1は、実施形態の樹脂成形装置を備えた樹脂成形システムの一例の模式的な平面図である。樹脂成形システム100は、後述する上成形型と下成形型20bとからなる成形型を含む樹脂成形装置20を備えている。樹脂成形装置20は、成形型を用いて、成形対象物の一例であるコイル3の樹脂成形を可能とする。樹脂成形装置20は、ポット39から樹脂をキャビティに供給するプランジャを有するトランスファー機構と、型締機構48とを備えている。
【0012】
樹脂成形システム100は、樹脂成形装置20に加えて、中央制御装置としてのCPU1、制御プログラムや樹脂成形システム100の停止処理手順などの制御情報を記憶する記憶部8、後述の各部を駆動する駆動機構、および、使用者から動作指令や異常処理関連情報の入力を受け付け、かつ、樹脂成形システム100の各種出力情報の表示を行うタッチパネル9(入力部の一例)を備えている。CPU1は、記憶部8に記憶されたプログラムなどの実行により、樹脂成形システム100の各部の動作を制御する制御部10、駆動機構の異常を検知する異常検知部11、および経過時間をカウントする計時部12を実現している。
【0013】
樹脂成形システム100は、複数のコイル3を収容するためのインマガジン7等を有するインモジュールM1、樹脂成形装置20を有するモールドモジュールM2、および樹脂成形装置20によって製造される樹脂成形品31を収容するためのアウトマガジン72を有するアウトモジュールM3を連結して構成されている。インモジュールM1、モールドモジュールM2、およびアウトモジュールM3には、これらの各モジュールのそれぞれに亘り直線状に配設されたガイドGが設けられている。ガイドGは、後述するローダ40およびアンローダ44を走行させるレール状の部材である。なお、
図1に示す樹脂成形システム100は2つのモールドモジュールM2を備えているが、樹脂成形システム100はモールドモジュールM2を1つのみ備えていてもよく、3つ以上備えていてもよい。
【0014】
樹脂成形システム100の駆動機構は、たとえば、ローダ40、供給ユニット42、およびアンローダ44を含み得る。ローダ40は、成形対象物3を樹脂成形装置20に搬入するための搬送機構である。供給ユニット42は、インマガジン7からコイル3を押し出して整列機構70に搬送するための搬送機構である。アンローダ44は樹脂成形品31を樹脂成形装置20から搬出する搬送機構である。
【0015】
<成形対象物>
図2に、実施形態の樹脂成形装置20の樹脂成形に用いられる成形対象物の一例であるコイル3の模式的な部分斜視図を示す。
図2に示すように、成形対象物の一例であるコイル3は、本体部3aと、本体部3aの一端から一方向に延びる矩形状の扁平面3cを有する端子3bとを備えている。なお、本明細書において、「扁平面」は、たとえば
図2に示すように、端子3bが備える平面であって、端子3bが延びる方向に対して直交する(交差する)2つの平面のうちの1つを意味する。さらに詳しくは、「扁平面」は、これらの2つの平面のうち、端子3bが延びる方向に対して直交する方向における長さが長い平面を意味する。また、本明細書において、「端子の厚さ」は、端子3bを構成する面のうち最小面積を有する面の面積を規定する長さの最短の長さを意味する。
【0016】
端子3bの厚さtに対する端子3bの長さL1およびL2のうち長い方の長さの比((長さL1およびL2のうち長い方の長さ[mm])/(厚さt[mm]))は、たとえば2以上80以下とすることができる。たとえば、端子3bの厚さtは、1.4mm程度とすることができる。また、端子3bの長さL1は、たとえば50mm程度とすることができる。また、端子3bの長さL2は、たとえば16mm程度とすることができる。
【0017】
<下成形型>
図3に、実施形態の樹脂成形装置20の下成形型20bの一例の模式的な斜視図を示す。
図3に示す例においては、
図2に示すコイル3を設置した状態の樹脂成形装置20の下成形型20bが示されている。
図3に示すように、コイル3の端子3bの扁平面3cの延びる方向3eに直交する方向3fが、下成形型20bの型面22dと垂直になるように下成形型20bに設置されている。
【0018】
図3に示すように、下成形型20bは、コイル3の本体部3aを収容するための凹部であるキャビティが形成されたキャビティブロック21と、コイル3の端子3bを収容するための端子収容部200とを備えている。キャビティブロック21の端子収容部200側の部分(以下、「キャビティブロック部分21a」という)は、端子収容部200と同じ高さ(端子3bの扁平面に平行な方向の長さ)となっている。キャビティブロック部分21aには、後述のように第1のスリット22aが形成されている。なお、本実施形態では、第1のスリット22aが形成されているキャビティブロック部分21aとキャビティが形成されている部分のキャビティブロック21とは別体として構成されているが、一体として形成されていてもよい。また、端子収容部200は、弾性樹脂4と、端子配置ブロック23とを備えている。弾性樹脂4は、キャビティブロック21(またはキャビティブロック部分21a)と端子配置ブロック23との間に位置している。
【0019】
また、
図3に示すように、キャビティブロック21のうち端子収容部200と接するキャビティブロック部分21a、弾性樹脂4および端子配置ブロック23には、所定の方向に延びる(本実施形態においては、扁平面3cの延びる方向3eの一方向に直線状に延びる)スリット22が設けられている。スリット22は、キャビティブロック部分21aに設けられた第1のスリット22aと、端子配置ブロック23に設けられた第2のスリット22cと、弾性樹脂4に設けられた第3のスリット22bとを含んでいる。本実施形態においては、第1のスリット22a、第2のスリット22c、および第3のスリット22bは、それぞれ、キャビティが形成されているキャビティブロック21側からコイル3の端子3bの扁平面3cの延びる方向3eに直線状に延びている。
【0020】
コイル3の端子3bがスリット22内に収容可能であるように、スリット22の壁面(第1のスリット22a、第2のスリット22c、および第3のスリット22bのそれぞれの壁面を含む)は、コイル3の端子3bの扁平面3cと向かい合うように構成される。ここで、第1のスリット22aの壁面は、第1のスリット22aの延びる方向3eに沿ったキャビティブロック部分21aの互いに向かい合う面から構成される。第2のスリット22cの壁面は、第2のスリット22cの延びる方向3eに沿った端子配置ブロック23の互いに向かい合う面から構成される。第3のスリット22bの壁面は、第3のスリット22bの延びる方向3eに沿った弾性樹脂4の互いに向かい合う面から構成される。
【0021】
弾性樹脂4は、弾性変形する樹脂、たとえば、シリコーンゴムやフッ素を含む樹脂(フッ素樹脂)含むことができる。樹脂成形時の高温、高圧に耐え得るフッ素樹脂を含むことがより好ましい。フッ素樹脂として、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、およびフッ素原子を含むゴム(FKM、FPM、FEPM、FFKMなど)が挙げられる。キャビティブロック21および端子配置ブロック23は、たとえば、金属を含むことができる。
【0022】
図4に、
図3に示す弾性樹脂4の位置を固定する前の端子収容部200を上方から見たときの一例の模式的な平面透視図を示す。
図4に示す平面視において、端子配置ブロック23は、弾性樹脂4をコの字状に取り囲むように構成されている。すなわち、当該平面視において、矩形状の弾性樹脂4の3辺が端子配置ブロック23によって取り囲まれており、残りの1辺が矩形状のキャビティブロック部分21aと面している。
【0023】
また、
図4に示すように、端子収容部200は、弾性樹脂4と端子配置ブロック23との間に押さえ板24をさらに備えている。押さえ板24は、スリット22が延びる方向3eに移動可能に構成されており、押さえ板24の当該移動によって弾性樹脂4を押圧可能に構成されている。押さえ板24にも、スリット22が延びる方向3eに沿って、スリット(第4のスリット24a)が設けられている。第4のスリット24aの幅は、後述の第2のスリット22cの幅d3と等しく設定することができる。
【0024】
また、
図4に示すように、端子配置ブロック23には、スリット22が延びる方向3eに端子配置ブロック23を貫通する貫通孔26が設けられている。端子収容部200はスリット22が延びる方向3eに貫通孔26の内部を移動可能に構成されている押圧部材25をさらに備えている。押圧部材25は、スリット22が延びる方向3eに押さえ板24を押圧可能に構成されている。
【0025】
押圧部材25としては、たとえば雄ネジ等の締結部材を用いることができる。押圧部材25として雄ネジを用いた場合には、たとえば、貫通孔26の内面に雌ネジを切ることによって、貫通孔26に押圧部材25を嵌め込んで押圧部材25を回転させながら押さえ板24に向かってスリット22が延びる方向3eに移動させることが可能になる。そして、
図5の模式的平面図に示すように、押圧部材25の移動が進行し、押圧部材25の先端が貫通孔26の一端から露出して押さえ板24を点で押圧し、引き続いて押さえ板24が弾性樹脂4を面でキャビティブロック21に対して押圧することができる。これにより本実施形態においては、押さえ板24は、弾性樹脂4を平面的にできるだけ均等にキャビティブロック21に対して押圧することによって、弾性樹脂4の位置を固定することが可能となる。
【0026】
なお、樹脂成形が繰り返されることによって弾性樹脂4を交換する必要がある。その際は、上記とは逆に、たとえば
図4に示すように、押圧部材25を回転させながら押さえ板24から離れる方向に移動させることができる。これにより、押圧部材25による押さえ板24への押圧を解除することができ、ひいては押さえ板24による弾性樹脂4のキャビティブロック21に対する押圧も解除することができる。その後、弾性樹脂4を端子収容部200から取り出して、新たな弾性樹脂4を設置し、上述と同様の方法により、新たな弾性樹脂4の位置を固定することができる。このように、本実施形態においては、樹脂成形装置20に成形型を装着したまま、弾性樹脂4の交換が可能となる。
【0027】
図4および
図5に示す第3のスリット22bの幅d2は、第1のスリット22aの幅d1よりも狭くすることができる。第3のスリット22bの幅d2を第1のスリット22aの幅d1よりも狭くすることによって、成形対象物の樹脂成形中の樹脂漏れによる端子3bへの樹脂の付着をより有効に抑制することができる。また、第2のスリット22cの幅d3は、第3のスリット22bの幅d2と等しい、または第3のスリット22bの幅d2よりも広くすることができる。さらに、第2のスリット22cの幅d3を第1のスリット22aの幅d1よりも広くすることができる。第2のスリット22cの幅d3がより大きい場合、コイル3の端子3bを下成形型20bに配置する際に端子3bの先端が下成形型20bに接触することを防止することができ、下成形型20bに傷がつくことを防止することができる。なお、第1のスリット22aの幅d1、第2のスリット22cの幅d3、および第3のスリット22bの幅d2は、それぞれ、スリット22の延びる方向3eに垂直な方向であって、下成形型20bの型面22dに平行な方向の幅を意味する。
【0028】
<上成形型>
図6に、実施形態の樹脂成形装置20に用いられる上成形型の一例の模式的な斜視図を示す。
図6に示すように、上成形型20aは、コイル3の本体部3aを収容するためのキャビティが形成されているキャビティブロック33と、コイル3の端子3bを収容するためのスリット32とを備えている。ここで、上成形型20aのキャビティは、下成形型20bのキャビティに対応する位置に配置される。また、上成形型20aのスリット32は、下成形型20bのスリット22に対応する位置に配置される。上成形型20aのスリット32は、下成形型20bの第1のスリット22aに対応する位置に設けられた第1のスリット32aと、下成形型20bの第3のスリット22bに対応する位置に設けられた第3のスリット32bと、下成形型20bの第2のスリット22cに対応する位置に設けられた第2のスリット32cとを備えていてもよい。
【0029】
なお、本実施形態においては、下成形型20bが
図3~
図5に示す構成を有し、上成形型20aが
図6に示す構成を有する場合について説明したが、下成形型20bが
図6に示す構成を有し、上成形型20aが
図3~
図5に示す構成を有していてもよい。すなわち、上成形型20aまたは下成形型20bのいずれか一方が、
図3~
図5に示す構成を有し得る。
【0030】
また、本実施形態においては、下成形型20bがスリット22を有し、上成形型20aがスリット32を有する場合について説明した。この場合、コイル3の端子3bを収容するためのスリットが上下の成形型それぞれに分割して形成されているため、端子3bの長さL2(扁平面3cの幅)や端子3bの長さL1(扁平面3cの長さ)が長い場合、端子3bをスリットに挿入、配置しやすいという利点がある。しかし、上成形型20aのスリット32は必須ではなく、コイル3の端子3bを収容するためのスリットは下成形型20bにのみ形成されていてもよい。
【0031】
<樹脂成形>
その後、たとえば
図7の模式的平面図に示すように、上成形型20aと下成形型20bとを型締めした後にコイル3の樹脂成形が行われる。その後、上成形型20aと下成形型20bとを型開きすることによって、たとえば
図8の模式的斜視図に示すような樹脂成形品31を製造することができる。
【0032】
本実施形態においては、樹脂成形品31のコイル3の本体部3aについては樹脂被覆することができる一方で、本体部3aの一端から延びる扁平面3cを有する端子3bについては樹脂被覆しないようにすることができる。これは、本実施形態においては、弾性樹脂4のキャビティブロック部分21aへの押圧により、弾性樹脂4の弾性力を利用して弾性樹脂4とキャビティブロック部分21aとを密着させることができる。また、弾性樹脂4の弾性力を利用して弾性樹脂4と端子3bとを密着させることもできる。これにより、本実施形態においては、弾性樹脂4とキャビティブロック部分21aとが密着した状態、かつ弾性樹脂4と端子3bとが密着した状態でコイル3の本体部3aの樹脂成形を行うことができるため、キャビティブロック部分21aよりも外側(端子配置ブロック23側)への樹脂漏れの発生を抑制することができる。これにより、本実施形態においては、成形対象物の一例であるコイル3の本体部3aの一端から延びる扁平面3cを有する端子3bの扁平面3cの延びる方向3eに直交する方向3fが成形型の型面と垂直になるようにコイル3を成形型に設置した状態で樹脂成形を行った場合でも、樹脂漏れによる端子への樹脂の付着を抑制することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態においては、たとえば弾性樹脂4に上述したフッ素樹脂を用いた場合には、弾性樹脂4に設けられた第3のスリット22bに端子3bを円滑に挿入して配置することが可能となる。さらに、本実施形態においては、たとえば上述したように、樹脂成形装置20に成形型を装着したまま、弾性樹脂4を交換することも可能となる。
【0034】
<付記>
(開示1)
開示1の成形型は、本体部と前記本体部の一端から延びる扁平面を有する端子とを備えた成形対象物を樹脂成形するための成形型であって、前記扁平面が延びる方向に直交する方向が前記成形型の型面と垂直になるように前記成形対象物を設置して樹脂成形を行うための成形型であって、前記成形型は、上成形型と、下成形型とを備え、前記上成形型または前記下成形型のいずれか一方の型は、前記本体部を収容するためのキャビティが形成されたキャビティブロックと、前記端子を収容するための端子収容部とを備え、前記端子収容部は、端子配置ブロックと、前記キャビティブロックと前記端子配置ブロックとの間の弾性樹脂とを備え、前記端子収容部には、スリットが設けられている、成形型である。
【0035】
(開示2)
開示2の成形型は、前記弾性樹脂が、フッ素樹脂を含む、開示1の成形型である。
【0036】
(開示3)
開示3の成形型は、前記いずれか一方の型が、前記下成形型である、開示1または開示2の成形型である。
【0037】
(開示4)
開示4の成形型は、前記端子配置ブロックが、平面視で、前記弾性樹脂をコの字状に取り囲むように構成されている、開示1から開示3のいずれか1つの成形型である。
【0038】
(開示5)
開示5の成形型は、前記端子収容部が、前記弾性樹脂と前記端子配置ブロックとの間に押さえ板をさらに備え、前記押さえ板が、前記スリットが延びる方向に移動可能とされており、前記押さえ板の移動によって前記弾性樹脂を押圧可能に構成されている、開示4の成形型である。
【0039】
(開示6)
開示6の成形型は、前記端子配置ブロックには前記スリットが延びる方向に前記端子配置ブロックを貫通する貫通孔が設けられており、前記端子収容部は、前記貫通孔の内部を前記スリットが延びる方向に移動可能に構成されている押圧部材をさらに備え、前記押圧部材は、前記スリットが延びる方向に前記押さえ板を押圧可能に構成されている、開示5の成形型である。
【0040】
(開示7)
開示7の成形型は、前記押さえ板が前記弾性樹脂を面で押圧可能に構成されており、前記押圧部材が前記押さえ板を点で押圧可能に構成されている、開示6の成形型である。
【0041】
(開示8)
開示8の成形型は、前記貫通孔の内面には雌ネジが切られており、前記押圧部材は、雄ネジであって、前記押圧部材は、前記押圧部材を回転させることにより、前記貫通孔の内部を移動可能に構成されている、開示6または開示7の成形型である。
【0042】
(開示9)
開示9の成形型は、前記スリットが、前記キャビティブロックに設けられた第1のスリットと、前記端子配置ブロックに設けられた第2のスリットと、前記弾性樹脂に設けられた第3のスリットとを含む、開示1から開示8のいずれか1つの成形型である。
【0043】
(開示10)
開示10の成形型は、前記第3のスリットの幅が、前記第1のスリットの幅よりも狭い、開示9の成形型である。
【0044】
(開示11)
開示11の成形型は、前記第2のスリットの幅が、前記第1のスリットの幅および前記第3のスリットの幅のそれぞれよりも広い、開示9または開示10の成形型である。
【0045】
(開示12)
開示12の樹脂成形装置は、開示1から開示11のいずれか1つの成形型を備えた、樹脂成形装置である。
【0046】
(開示13)
開示13の樹脂成形システムは、開示12の樹脂成形装置を備えた、樹脂成形システムである。
【0047】
以上のように実施形態について説明を行ったが、上述の各実施形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0048】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 CPU、3 コイル、3a 本体部、3b 端子、3c 扁平面、4 弾性樹脂、7 インマガジン、8 記憶部、9 タッチパネル、10 制御部、11 異常検知部、12 計時部、20 樹脂成形装置、20a 上成形型、20b 下成形型、21,33 キャビティブロック、21a キャビティブロック部分、22,32 スリット、22a,32a 第1のスリット、22b,32b 第3のスリット、22c,32c 第2のスリット、22d 型面、23 端子配置ブロック、24 押さえ板、24a 第4のスリット、25 押圧部材、26貫通孔、31 樹脂成形品、39 ポット、40 ローダ、42 供給ユニット、44 アンローダ、48 型締機構、70 整列機構、72 アウトマガジン、100 樹脂成形システム、200 端子収容部。