(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】成形型用クリーニングブラシの製造方法および樹脂成形装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/72 20060101AFI20250604BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20250604BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20250604BHJP
B29C 45/17 20060101ALN20250604BHJP
【FI】
B29C33/72
B29C45/26
H01L21/56 R
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2022102650
(22)【出願日】2022-06-27
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 武彦
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-154(JP,A)
【文献】特開平7-148746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0001819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/72
B29C 45/26
H01L 21/56
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形装置に備えられる成形型を清掃するための成形型用クリーニングブラシの製造方法であって、
毛材がチャンネル部材に固定されることで形成されたチャンネルブラシを準備する工程と、
軸方向に延びるシャフト部材の周囲に前記チャンネルブラシを螺旋状に巻き付けて固定する工程と、
前記チャンネルブラシが前記シャフト部材に巻き付けられた状態で、一部または全部の前記毛材の先端を切断する工程と、を備え、
一部または全部の前記毛材の先端を切断することにより、前記シャフト部材上の前記チャンネルブラシには、第1の長さを有する前記毛材を含む短毛領域と、前記第1の長さよりも長い第2の長さを有する前記毛材を含む長毛領域とが形成される、
成形型用クリーニングブラシの製造方法。
【請求項2】
前記短毛領域と前記長毛領域とは、前記シャフト部材を中心とする周方向に交互に並んで配置されている、
請求項1に記載の成形型用クリーニングブラシの製造方法。
【請求項3】
前記短毛領域が設けられている前記シャフト部材を中心とする周方向の角度範囲は、60°以上90°以下であり、
前記長毛領域が設けられている前記シャフト部材を中心とする周方向の角度範囲は、60°以上90°以下である、
請求項1または2に記載の成形型用クリーニングブラシの製造方法。
【請求項4】
前記第1の長さと前記第2の長さとの差は、1.0mm以上である、
請求項1
または2に記載の成形型用クリーニングブラシの製造方法。
【請求項5】
成形型を備えた樹脂成形装置の製造方法であって、
請求項1
または2に記載の成形型用クリーニングブラシの製造方法によって成形型用クリーニングブラシを作製する工程を備え、
前記成形型用クリーニングブラシの前記短毛領域は、前記成形型の凸部に接触可能なように配置され、
前記成形型用クリーニングブラシの前記長毛領域は、前記成形型の凹部に接触するように配置される、
樹脂成形装置の製造方法。
【請求項6】
前記成形型の凹部は、前記成形型のキャビティの底面、および、前記キャビティに接続する樹脂通路の底面のうちの少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の樹脂成形装置の製造方法。
【請求項7】
前記成形型の凸部は、前記成形型のパーティング面、および、前記成形型のキャビティに設けられたダム部の表面うちの少なくとも1つを含む、
請求項
5に記載の樹脂成形装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、成形型用クリーニングブラシの製造方法および樹脂成形装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形装置においては、IC(Integrated Circuit)、トランジスタ、コンデンサ等の電子素子が接続された基板が、成形対象物として準備される。トランスファモールド法、圧縮成形法(コンプレッションモールド法)および射出成形法(インジェクションモールド法)等を使用して樹脂成形を行なうことにより、基板上の電子素子が樹脂封止される。
【0003】
樹脂成形装置の成形型には、樹脂成形の実施に伴って発生した樹脂(樹脂片または樹脂カスともいう)等が残存し得る。実開平02-137217号公報(特許文献1)に開示されているように、成形型は、成形型用クリーニングブラシを利用して清掃される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実開平02-137217号公報(特許文献1)に開示された成形型用クリーニングブラシにおいては、ブラシの植毛部の先端形状を成形型の形状に合うように定めている。特許文献1は、このようなブラシによれば、植毛部が、成形面の表面部に達して当該表面部の清掃をすることができるだけでなく、植毛部が、キャビティの底部にも達して当該底部の清掃をすることができると述べている。
【0006】
上記のようなブラシの製造方法では、複数の毛材束をシャフト部材の外周に固定することによって、シャフト部材の外周に複数の植毛部が構成される。毛材束をシャフト部材に固定する作業を行なうためのスペースが、毛材束を植毛する部分の周囲に必要である。スペースを確保する必要があるため、隣り合う毛材束の間の間隔を小さくすることが難しく、高い密度を有する毛材をシャフト部材の周面に構成することは難しい。
【0007】
本明細書は、従来技術に比べてより高い密度を有する毛材をシャフト部材の周囲に構成することが可能な、成形型用クリーニングブラシの製造方法、および、樹脂成形装置の製造方法を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面において、樹脂成形装置に備えられる成形型を清掃するための成形型用クリーニングブラシの製造方法は、毛材がチャンネル部材に固定されることで形成されたチャンネルブラシを準備する工程と、軸方向に延びるシャフト部材の周囲に前記チャンネルブラシを螺旋状に巻き付けて固定する工程と、前記チャンネルブラシが前記シャフト部材に巻き付けられた状態で、一部または全部の前記毛材の先端を切断する工程と、を備え、一部または全部の前記毛材の先端を切断することにより、前記シャフト部材上の前記チャンネルブラシには、第1の長さを有する前記毛材を含む短毛領域と、前記第1の長さよりも長い第2の長さを有する前記毛材を含む長毛領域とが形成される。
【0009】
本開示の別の局面において、樹脂成形装置の製造方法は、成形型を備えた樹脂成形装置の製造方法であって、本開示のある局面における上記の成形型用クリーニングブラシの製造方法によって成形型用クリーニングブラシを作製する工程を備え、前記成形型用クリーニングブラシの前記短毛領域は、前記成形型の凸部に接触可能なように配置され、前記成形型用クリーニングブラシの前記長毛領域は、前記成形型の凹部に接触するように配置される。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を備えた成形型用クリーニングブラシの製造方法、および、樹脂成形装置の製造方法によれば、従来技術に比べてより高い密度を有する毛材をシャフト部材の周囲に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】樹脂成形装置の一例の機能ブロック図を示す。
【
図2】樹脂成形装置の内部の要部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図2に示すIII-III線に沿った矢視要部断面図である。
【
図4】樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシの外観構造を模式的に示す図である。
【
図5】樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシの長毛領域が下型の底面に接触している様子を示す断面図である。
【
図6】樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシの短毛領域および長毛領域が下型の表面に接触している様子を示す断面図である。
【
図7】成形型用クリーニングブラシの製造方法の準備工程を示す斜視図である。
【
図8】成形型用クリーニングブラシの製造方法の固定工程を示す斜視図である。
【
図9】成形型用クリーニングブラシの製造方法の切断工程を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態の第1変形例において、下型の成形型用クリーニングブラシが下型に対して清掃を行っている様子を示す平面図である。
【
図11】実施の形態の第1変形例において、上型用の成形型用クリーニングブラシを示す平面図である。
【
図12】実施の形態の第2変形例において、下型の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本開示にとって必ずしも必須のものではない。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0013】
(樹脂成形装置100)
図1は、実施の形態における樹脂成形装置100の一例の機能ブロック図を示している。樹脂成形装置100は、制御部2、供給モジュール1、樹脂成形モジュール4、および成形品搬出モジュール5を備えている。制御部2は、供給モジュール1、樹脂成形モジュール4、および成形品搬出モジュール5を制御可能に構成されている。
【0014】
供給モジュール1は、成形前の成形対象物および樹脂材料を、樹脂成形モジュール4に供給可能なように構成される。樹脂成形モジュール4は、成形型を型締めして成形対象物を樹脂成形することによって、樹脂成形品を製造可能なように構成される。成形品搬出モジュール5は、成形後の成形対象物の不要樹脂部分を除去した後、樹脂成形品を搬出可能に構成される。供給モジュール1と、樹脂成形モジュール4と、成形品搬出モジュール5とは、互いに着脱可能であるとともに交換可能でもある。また、樹脂成形モジュール4の個数についても増減可能である。
【0015】
図2は、樹脂成形装置100の内部の要部構造を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示すIII-III線に沿った矢視要部断面図である。
図2に主として示すように、樹脂成形装置100は、供給部10、成形型用クリーニングブラシ30、成形部40、搬出機構50、および排出部60を備える。
【0016】
図1~
図3を参照して、供給モジュール1は、主として供給部10を含んでいる。供給部10には、成形前の成形対象物が配置される。成形対象物は一般的には半導体チップ等の電子素子が接続された基板である。基板として、たとえばリードフレーム、プリント配線板、金属製基板、樹脂製基板、半導体基板、およびセラミック製基板が用いられる。
【0017】
樹脂成形装置100は不図示の搬送機構をさらに備えており、この搬送機構は、供給モジュール1と樹脂成形モジュール4との間を移動可能に構成されている。搬送機構の退避位置は、供給モジュール1にある。搬送機構により、基板が、樹脂材料とともに供給部10から成形部40に搬入される。樹脂材料としては、たとえば粉末状の熱硬化性樹脂を押し固めることで形成されたタブレット状樹脂が用いられる。
【0018】
樹脂成形モジュール4は、主として成形部40を含んでいる。成形部40は、成形型としての下型41および上型42(
図3)と、成形型を型締めする不図示の型締め機構とを含んでいる。成形部40において、下型41および上型42が型締め機構によって型締めされることにより成形対象物が樹脂成形される。
【0019】
成形品搬出モジュール5は、主に排出部60を含んでいる。成形後の成形対象物は搬出機構50によって成形部40から排出部60に搬出され、排出部60においてディゲート処理が行なわれ、アウトマガジン部に最終的に格納される。
【0020】
搬出機構50は、樹脂成形モジュール4と成形品搬出モジュール5との間を移動可能に構成されている。搬出機構50は、成形型用クリーニングブラシ30を有している。ここでは、搬出機構50は、第1本体部51および第2本体部52を含む。第1本体部51の矢印A1方向の移動と、第2本体部52の矢印A2方向の移動とによって、成形後の成形対象物が排出される。第2本体部52が矢印A2方向に移動する際に、成形型の清掃が行なわれる。
【0021】
ここで、搬出機構50の第2本体部52における成形部40に近い側の部分に、成形型用クリーニングブラシ30が設けられている。成形型としての下型41および上型42を用いて成形対象物を樹脂成形し、成形型用クリーニングブラシ30を使用して、成形型から樹脂を除去することによって清掃を行なう。
【0022】
樹脂成形装置100の成形型を清掃するために、樹脂成形装置100の搬出機構50に1つ以上の成形型用クリーニングブラシ30(以下に詳述する)が設けられる。
図3に示すように2つが設けられる場合には、一方の成形型用クリーニングブラシ30は下型41から樹脂を除去し、他方の成形型用クリーニングブラシ30は上型42(
図3)から樹脂を除去し、これらにより成形部40の成形型に対して清掃が行われる。
【0023】
(成形型用クリーニングブラシ30およびその製造方法)
図4は、成形型用クリーニングブラシ30の外観構造を模式的に示す図である。
図5は、成形型用クリーニングブラシ30の長毛領域32Rが下型41のキャビティ(凹部)の底面41bに接触している様子を示す断面図である。
図6は、成形型用クリーニングブラシ30の短毛領域31Rおよび長毛領域32Rが下型41の表面(表面41aおよび凹部の底面41b)に接触している様子を示す断面図である。
【0024】
図3~
図6に示すように、成形型用クリーニングブラシ30はいわゆるロールブラシの形態を有する。成形型用クリーニングブラシ30は、軸心38c(
図3)を中心として回転するシャフト部材38と、シャフト部材38に固定されたチャンネル部材35(
図3、
図7も参照)と、チャンネル部材35に固定された毛材33と、を備えている。シャフト部材38は、一方側の端部から他方側の端部に向かって軸心38cに沿って延びる円柱状の形状を有している。
【0025】
成形型用クリーニングブラシ30の製造方法としては、チャンネル部材35(
図7)に毛材33が固定されることでチャンネルブラシ36(
図7)が形成される。このようなチャンネルブラシ36を準備した後に、シャフト部材38(
図3、
図4、
図8)の周囲にチャンネルブラシ36を螺旋状に巻き付けて固定する(
図8参照)。この際、チャンネル部材35の長手方向における端部35T(
図8)を、シャフト部材38の表面上に溶接などで固定するとよい。その後、チャンネルブラシ36がシャフト部材38に巻き付けられた状態で、一部または全部の毛材33の先端をグラインダーなどで切断する(
図9参照)。
【0026】
これにより、シャフト部材38上のチャンネルブラシ36には、第1の長さL1(
図5)を有する毛材33(31)を含む短毛領域31Rと、第1の長さL1よりも長い第2の長さL2(
図5)を有する毛材33(32)を含む長毛領域32Rとが形成される。
【0027】
図3、
図5、
図6に示すように、本実施の形態の成形型用クリーニングブラシ30においては、複数の短毛領域31Rと複数の長毛領域32Rとが、シャフト部材38を中心とする周方向に交互に並んで配置されている。ここでは、シャフト部材38の周囲に2つの短毛領域31Rと2つの長毛領域32Rとが交互に設けられている。
図4に示すように、成形型用クリーニングブラシ30においては、ある特定の位置の断面形状を見た場合には、複数の短毛領域31Rと複数の長毛領域32Rとが軸方向において交互に配置されている(
図9も参照)。
【0028】
短毛領域31Rに含まれる毛材33(31)は、その根元側からその先端側に向かうにつれて、シャフト部材38の径方向に沿ってチャンネル部材35から径方向外側に向かって突出するように延びている。長毛領域32Rに含まれる毛材33(32)も、その根元側からその先端側に向かうにつれて、シャフト部材38の径方向に沿ってチャンネル部材35から径方向外側に向かって突出するように延びている。
【0029】
短毛領域31Rが設けられているシャフト部材38を中心とする周方向の角度範囲は、たとえば、60°以上90°以下に設定可能であり、長毛領域32Rが設けられているシャフト部材38を中心とする周方向の角度範囲も、たとえば、60°以上90°以下に設定可能である。
【0030】
短毛領域31Rについては、ここでいう周方向の角度範囲とは、短毛領域31Rのうちの回転方向の最も前方側に位置する毛材33(31)の根元部分と、短毛領域31Rのうちの回転方向の最も後方側に位置する毛材33(31)の根元部分とを特定し、軸心38cに対して垂直であり且つこれら2つの根元部分を含む2次元平面内において、これら2つの根元部分と軸心38cとがなす角度のことである。
【0031】
長毛領域32Rについては、ここでいう周方向の角度範囲とは、長毛領域32Rのうちの回転方向の最も前方側に位置する毛材33(32)の根元部分と、長毛領域32Rのうちの回転方向の最も後方側に位置する毛材33(32)の根元部分とを特定し、軸心38cに対して垂直であり且つこれら2つの根元部分を含む2次元平面内において、これら2つの根元部分と軸心38cとがなす角度のことである。
【0032】
たとえば、60°の角度範囲で設けられた3つの短毛領域31Rと、60°の角度範囲で設けられた3つの長毛領域32Rとを、シャフト部材38の周囲に交互に配置可能である。短毛領域31Rおよび長毛領域32Rは、それぞれ90°の角度範囲で2つ設けてもよいし、これらを50°および70°といった異なる角度範囲で設けて交互に配置してもよい。
【0033】
図5に示すように、短毛領域31Rを構成している毛材33(31)は、チャンネル部材35から長さL1を有して、シャフト部材38の径方向に沿って延びている。長毛領域32Rを構成している毛材33(32)は、チャンネル部材35から長さL2を有して、シャフト部材38の径方向に沿って延びている。
【0034】
シャフト部材38の軸心38cから毛材33(32)の先端までの距離は、たとえば20mm~30mmである。本実施の形態においては、長毛領域32Rを構成している毛材33(32)の長さL2は、短毛領域31Rを構成している毛材33(31)の長さL1よりも長い。
【0035】
長さL2と長さL1との差は、たとえば、下型41に形成されているキャビティの最大深さ、すなわち、下型41の表面41a(キャビティが形成されていない下型41における凸部の表面41a)からキャビティの凹部の底面41bまでの深さ寸法L3と同一の値にすることができる。長さL2と長さL1との差は、深さ寸法L3より大きくてもよい。換言すると、(L3+L1)≦L2の関係が成立していてもよい。仕様にもよるが、長さL2と長さL1との差は、たとえば1.0mm以上、2.0mm以下、または3.0mm以下である。深さ寸法L3は、1.0mm以下であったり、3.0mm以下であったりする。深さ寸法L3に合わせて長さL1,L2が最適化される。
【0036】
図4~
図6に示すように、成形型用クリーニングブラシ30を用いて下型41の清掃を行う際には、長毛領域32Rを構成している毛材33(32)の先端部が下型41の凹部の底面41bに接触し、短毛領域31Rを構成している毛材33(31)の先端部が下型41の凸部の表面41aに接触するように、成形型用クリーニングブラシ30が下型41に接近する方向に移動させられる。
【0037】
一例として、チャンネル部材35から下型41の凹部の底面41bまでの距離L5(
図5)は、長毛領域32Rを構成している毛材33(32)の長さL2と同じ値に設定でき、シャフト部材38の外周面から表面41aまでの距離L4は、短毛領域31Rを構成している毛材33(31)の長さL1と同じ値に設定できる。
【0038】
以上のような成形型用クリーニングブラシ30を備えた樹脂成形装置100においては、成形型用クリーニングブラシ30を用いて成形型の清掃を行う際に、長毛領域32Rを構成している毛材33(32)は、下型41の凸部の表面41aおよびキャビティの内表面である側面や凹部の底面41bに到達することができ、シャフト部材38が回転することに伴い、毛材33(32)は凹部の底面41bなどに付着した樹脂などを除去することができる。短毛領域31Rを構成している毛材33(31)は、下型41の凸部の表面41aに到達することができ、シャフト部材38が回転することに伴い、毛材33(31)は下型41の凸部の表面41aなどに付着した樹脂などを除去することができる。
【0039】
(作用および効果)
冒頭で述べたように、従来のブラシの製造方法においては、複数の毛材束をシャフト部材の外周に固定することによって、シャフト部材の外周に複数の植毛部が構成される。毛材束をシャフト部材に固定する作業を行なうためのスペースが、毛材束を植毛する部分の周囲に必要である。スペースを確保する必要があるため、隣り合う毛材束の間の間隔を小さくすることが難しく、高い密度を有する毛材をシャフト部材の周面に構成することは難しい。また、従来のブラシの製造方法においては、植毛部を構成するための複数の毛材束を用意し、複数の毛材束の各々をシャフト部材に順次固定してくという作業が必要になる。このような手法では、複数の毛材束の各々をシャフト部材に固定するという多数回の作業が必要になる。
【0040】
これに対して本実施の形態の成形型用クリーニングブラシ30の製造方法によれば、チャンネル部材35(
図7)に毛材33が固定されることでチャンネルブラシ36(
図7)が形成される。このようなチャンネルブラシ36を準備した後、シャフト部材38(
図3、
図4、
図8)の周囲にチャンネルブラシ36を螺旋状に巻き付けて固定する(
図8参照)。この際、チャンネル部材35の長手方向における両端部を、シャフト部材38の表面上に溶接などで固定するとよい。その後、チャンネルブラシ36がシャフト部材38に巻き付けられた状態で、一部または全部の毛材33の先端をグラインダーなどで切断する(
図9参照)。
【0041】
上記の製造方法によれば、チャンネルブラシ36を螺旋状に巻き付けて固定する際に、シャフト部材38に1回前に(1周前に)巻いたチャンネルブラシ36の部分に隣接するように、チャンネルブラシ36の次なる部分をシャフト部材38に巻いていくことが可能であり、毛材をシャフト部材に植え込んでいく場合に比べて、毛材33を高い密度で、シャフト部材38上に効率的に配置することが可能であり、ひいては成形型用クリーニングブラシ30によるより高い清掃効果を企図することが可能である。
【0042】
(実施の形態の第1変形例)
図10は、実施の形態の第1変形例において、下型41用の成形型用クリーニングブラシ30が下型41に対して清掃を行っている様子を示す平面図である。この下型41は、下型41の凸部であるパーティング面43の内側に、凹部44として、キャビティ46および樹脂通路45が形成されており、キャビティ46は複数の樹脂通路45を介してカル部48に接続している。
【0043】
このような下型41を清掃するための成形型用クリーニングブラシ30としては、たとえば、下型41における凹部および凸部の形状に対応して、軸方向における中央に長毛領域32Rが横長の形状で設けられ、その両側に短毛領域31Rが設けられている。長毛領域32Rは、
図10の左側に位置するキャビティ46の全部を覆うとともに、右側に位置するキャビティ46の全部を覆うような幅を有している。長毛領域32Rにより、下型41の凹部として、キャビティ46および樹脂通路45が清掃される。
【0044】
上記の下型41に対応する上型を清掃するための成形型用クリーニングブラシ30としては、たとえば、
図11に示すようなものを用いることができる。
図11に示す成形型用クリーニングブラシ30は、上型における凹部および凸部の形状に対応して、中央に短毛領域31Rが設けられ、その両側に長毛領域32Rが設けられ、そのさらに外側に短毛領域31Rが設けられている。短毛領域31Rによって、上型のキャビティの凹部の底面が清掃可能である。
【0045】
図10に示す下型の構成が、上型に採用されてもよい。すなわち、上型に樹脂通路45やカル部48が設けられてもよい。その場合にも、上型の凹部および凸部の構成に合わせて成形型用クリーニングブラシ30の短毛領域31Rおよび長毛領域32Rが、
図10に示す場合と同様に適切に配置される。
【0046】
(実施の形態の第2変形例)
図12は、実施の形態の第2変形例において、成形型用クリーニングブラシ30によって清掃可能な下型41の別の例を示した平面図である。この下型41においては、下型41の凸部としてのパーティング面43の一部がキャビティ46側にはみ出るように延出しており、当該延出した部分がダム部43Dを構成している。すなわち、下型41における凸部としては、パーティング面43、および、ダム部43Dの表面のうちの少なくとも一つを含んでいる。このような形状を有する下型41についても、たとえば
図10に示すような成形型用クリーニングブラシ30を用いて清掃をするとよい。
【0047】
図12に示す下型の構成が、上型に採用されてもよい。すなわち、上型に樹脂通路45やカル部48だけでなく、ダム部43Dが設けられてもよい。その場合にも、上型の凹部および凸部の構成に合わせて成形型用クリーニングブラシ30の短毛領域31Rおよび長毛領域32Rが、
図10などに示す場合と同様に適切に配置される。
【0048】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 供給モジュール、2 制御部、4 樹脂成形モジュール、5 成形品搬出モジュール、10 供給部、30 成形型用クリーニングブラシ、31R 短毛領域、32R 長毛領域、33 毛材、35 チャンネル部材、35T 端部、36 チャンネルブラシ、38 シャフト部材、38c 軸心、40 成形部、41 下型、41a 表面、41b 底面、42 上型、43 パーティング面、43D ダム部、44 凹部、45 樹脂通路、46 キャビティ、48 カル部、50 搬出機構、51 第1本体部、52 第2本体部、60 排出部、100 樹脂成形装置、L1 長さ(第1の長さ)、L2 長さ(第2の長さ)、L3 寸法、L4,L5 距離。