(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】非対称に傾斜したゲート構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/87 20250101AFI20250604BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250604BHJP
H10D 30/47 20250101ALI20250604BHJP
H10D 64/20 20250101ALI20250604BHJP
【FI】
H10D30/87 F
H10D30/01 401
H10D30/47 201
H10D64/20 F
(21)【出願番号】P 2023542849
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022012682
(87)【国際公開番号】W WO2022159354
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-14
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
【住所又は居所原語表記】1100 Wilson Blvd Arlington, Virginia 22209 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】デジャール,マシュー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベットンコート,ジョン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】モルダワー,アダム ライル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ケニース エイ.
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-060820(JP,A)
【文献】特開平06-260509(JP,A)
【文献】特開平09-283621(JP,A)
【文献】特開2013-258368(JP,A)
【文献】特開平05-160019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0334647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057272(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00801418(EP,A2)
【文献】韓国登録特許第10-0239994(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/87
H10D 30/47
H10D 64/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタであって、
基板と、
前記基板上のソースと、
前記ソースから離間して配置された前記基板上のドレインと、
前記ソースと前記ドレインとの間にあるゲートと、
を備え、
前記ゲートは、前記基板に接触するステムを有し、前記ステムは、ソース側表面と、ドレイン側表面とを有し、
ソース側角度は、前記ソース側表面と前記基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、前記ドレイン側表面と前記基板の前記上部平面との間で画定され、
前記ソース側角度と前記ドレイン側角度とは非対称であ
り、
前記ソース側表面は、前記ソースに向かって完全に凹状であるように、前記基板の前記上部平面との接点から延在し、前記ドレイン側表面は、前記ドレインに向かって完全に凹状であるように、前記基板の前記上部平面との接点から延在する、
トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース側表面及び前記ドレイン側表面は、フィールドプレートにより画定される、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記ソース側角度は、前記ドレイン側角度よりも大きい、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記ソース側角度は25°~90°であり、前記ドレイン側角度は前記ソース側角度よりも小さい、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記ソース側角度は、45°~90°である、請求項
4に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ソース側角度は、70°~90°である、請求項
4に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記ドレイン側角度は、25°~70°である、請求項
4に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記ドレイン側角度は、25°~50°である、請求項
4に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記ゲートは、金、白金、ニッケル、ならびにこれらの組み合わせ及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上の金属で形成された金属構造である、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項10】
トランジスタの製造方法であって、
ソース及びドレインを画定するオーミック材料で被覆された基板に、フォトレジストの層を塗布するステップと、
第1のフォトレジストストリップと第2のフォトレジストストリップとの間に中央空間を画定するように、前記フォトレジストの部分を除去するステップであって、前記第1のフォトレジストストリップと前記第2のフォトレジストストリップとは異なる幅を有する、前記除去するステップと、
前記中央空間の両側にリフロー角度を形成するように、前記フォトレジストをリフローさせるステップ
であり、リフローされた前記第1のフォトレジストストリップ及び前記第2のフォトレジストストリップの夫々は、前記基板の上部平面から、前記中央空間から離れる方向に曲面状に延在し、前記リフロー角度は、前記基板の前記上部平面と前記第1のフォトレジストストリップ及び前記第2のフォトレジストストリップの各々の曲面との間で画定される、前記リフローさせるステップと、
前記中央空間にゲート金属を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記方法は、さらに、
前記リフローさせるステップの後に、前記フォトレジストの層の上にさらなるフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記中央空間を露出させるように、前記さらなるフォトレジスト層の一部を除去するステップと、
前記さらなるフォトレジスト層及び前記中央空間に、ゲート金属を適用するステップと、
前記ソース及び前記ドレインを有する基板と、ゲートとを作成するように、前記フォトレジストの層及び前記さらなるフォトレジスト層を除去するステップであって、前記ゲートは、前記基板と接触するステムと、ソース側フィールドプレートと、ドレイン側フィールドプレートとを有する、前記除去するステップと、
を含み、
前記ソース側フィールドプレート及び前記ドレイン側フィールドプレートは、非線形面により画定され、
ソース側角度は、前記ソース側フィールドプレートと前記基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、前記ドレイン側フィールドプレートと前記基板の前記上部平面との間で画定され、
前記ソース側角度と前記ドレイン側角度とは非対称である、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記除去するステップは、
前記中央空間を画定するように、前記フォトレジストの層の中央部分を除去することと、
第1の幅を有するソース側フォトレジストストリップを画定するように、前記フォトレジストの層のソース側部分を除去することと、
第2の幅を有するドレイン側フォトレジストストリップを画定するように、前記フォトレジストの層のドレイン側部分を除去することと、
を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記フォトレジストは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フェノールホルムアルデヒド樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された材料である、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記リフローさせるステップは、前記フォトレジストの層を100℃~200℃の温度に1分~10分の期間さらすことを含み、前記フォトレジストは溶融して流れ、前記フォトレジストの表面張力に従った形を成す、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
トランジスタの製造方法であって、
ソース及びドレインを画定するオーミック材料で被覆され、かつ誘電体層で被覆された基板に、フォトレジストの層を塗布するステップと、
第1のフォトレジストストリップと第2のフォトレジストストリップとの間に中央空間を画定するように、前記フォトレジストの部分を除去するステップであって、前記第1のフォトレジストストリップと前記第2のフォトレジストストリップとは異なる幅を有する、前記除去するステップと、
前記中央空間の両側にリフロー角度を形成するように、前記フォトレジストをリフローさせるステップ
であり、リフローされた前記第1のフォトレジストストリップ及び前記第2のフォトレジストストリップの夫々は、前記誘電体層の上部平面から、前記中央空間から離れる方向に曲面状に延在し、前記リフロー角度は、前記誘電体層の前記上部平面と前記第1のフォトレジストストリップ及び前記第2のフォトレジストストリップの各々の曲面との間で画定される、前記リフローさせるステップと、
前記リフロー角度により画定された角度を成す側面を有する誘電体中央空間を画定するように、前記中央空間を通して前記誘電体層をエッチングするステップと、
前記誘電体中央空間にゲート金属を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記リフローさせるステップの後に、前記フォトレジストの層の上にさらなるフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記中央空間を露出させるように、前記さらなるフォトレジスト層の一部を除去するステップと、
をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、さらに、
前記エッチングするステップの後に、前記誘電体層から前記さらなるフォトレジスト層及び前記フォトレジスト
の層を剥離するステップと、
前記誘電体層及び前記誘電体中央空間の上に追加フォトレジスト層を塗布するステップと、
前記誘電体中央空間を露出させるように、前記追加フォトレジスト層の一部を除去するステップと、
前記追加フォトレジスト層及び前記誘電体中央空間に追加層ゲート金属を適用するステップと、
前記ソース及び前記ドレインを有する基板と、ゲートとを作成するように、前記追加フォトレジスト層上の前記追加層ゲート金属を除去するステップであって、前記ゲートは、前記基板と接触するステムと、前記ステムのソース側表面と、前記ステムのドレイン側表面とを有する、前記除去するステップと、
を含み、
ソース側角度は、前記ソース側表面と前記基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、前記ドレイン側表面と前記基板の前記上部平面との間で画定され、
前記ソース側角度と前記ドレイン側角度とは非対称である、
請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記除去するステップは、
前記中央空間を画定するように、前記フォトレジストの層の中央部分を除去することと、
第1の幅を有するソース側フォトレジストストリップを画定するように、前記フォトレジストの層のソース側部分を除去することと、
第2の幅を有するドレイン側フォトレジストストリップを画定するように、前記フォトレジストの層のドレイン側部分を除去することと、
を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
トランジスタの製造方法であって、
ソース及びドレインを画定するオーミック材料で被覆され、かつ誘電体層で被覆された基板に、フォトレジストの層を塗布するステップと、
第1のフォトレジストストリップと第2のフォトレジストストリップとの間に中央空間を画定するように、前記フォトレジストの部分を除去するステップであって、前記第1のフォトレジストストリップと前記第2のフォトレジストストリップとは異なる幅を有する、前記除去するステップと、
前記中央空間の両側にリフロー角度を形成するように、前記フォトレジストをリフローさせるステップと、
前記リフロー角度により画定された角度を成す側面を有する誘電体中央空間を画定するように、前記中央空間を通して前記誘電体層をエッチングするステップと、
前記誘電体中央空間にゲート金属を適用するステップと、
を含み、
前記方法は、さらに、
前記リフローさせるステップの後に、前記フォトレジストの層の上にさらなるフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記中央空間を露出させるように、前記さらなるフォトレジスト層の一部を除去するステップと、
前記エッチングするステップの後に、前記誘電体層から前記さらなるフォトレジスト層及び前記フォトレジストの層を剥離するステップと、
前記誘電体層及び前記誘電体中央空間の上に追加フォトレジスト層を塗布するステップと、
前記誘電体中央空間を露出させるように、前記追加フォトレジスト層の一部を除去するステップと、
前記追加フォトレジスト層及び前記誘電体中央空間に追加層ゲート金属を適用するステップと、
前記ソース及び前記ドレインを有する基板と、ゲートとを作成するように、前記追加フォトレジスト層上の前記追加層ゲート金属を除去するステップであって、前記ゲートは、前記基板と接触するステムと、前記ステムのソース側表面と、前記ステムのドレイン側表面とを有する、前記除去するステップと、
を含み、
ソース側角度は、前記ソース側表面と前記基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、前記ドレイン側表面と前記基板の前記上部平面との間で画定され、
前記ソース側角度と前記ドレイン側角度とは非対称である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)及び擬似格子整合型高電子移動度トランジスタ(PHEMT)、ならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HEMTは、ヘテロ構造FET(HFET)または変調ドープFET(MODFET)としても知られ、異なるバンドギャップを有する2つの材料間の接合が組み込まれた電界効果トランジスタである。一般的に使用される材料の組み合わせは、GaAsとAlGaAsであるが、デバイスの用途に応じて他の様々な材料が使用されてもよい。HEMTは、例えばミリ波周波数までの高周波で作動し、携帯電話、衛星テレビ受信機、電圧変換器、及びレーダー機器などの高周波デバイスで使用され、衛星受信機、低電力増幅器、及び防衛産業においても応用されている。
【0003】
HEMT及びPHEMTの設計の一態様は、ゲート形状であり、ゲートは通常、ソースとドレインとの間に配置されたT字形構造またはV字形構造のいずれかの形態である。特定の用途に基づいて静電容量及びゲート抵抗を最適化するために、ゲートプロファイルを定義する際には特別な注意が払われる。半導体に対するゲートの接触をできるだけ小さくし、半導体表面に隣接するゲートステム側壁の領域を垂直にすることにより、静電容量を最小限に抑えることができる。
【0004】
ゲートの上部は、抵抗に影響を与える寸法、幅及び高さを有する。しかし、完全に垂直なTゲートでは、ゲートエッジで電界に大きなスパイクが発生することがあり、デバイスに壊滅的な影響を与える可能性がある。
【0005】
導電性金属プレートがステムに実装され得、これにより、静電容量の増加という代償を払って、電界が平滑化され得る。これらの導電性金属プレートは、フィールドプレートとして知られており、ゲートステムに直接組み込んでもよく、または完全に別の層として組み込んでもよい。
【0006】
傾斜したフィールドプレートをゲートステムに直接組み込む試みがなされてきた。しかし、既知のフォトレジストパターンの性質上、両側面の傾斜は対称である。これは、ドレイン側でフィールドプレート効果を実現するために、ソース側の静電容量を悪しくも増加させ得る。
【0007】
本開示は、これらの懸念に対処する。
【発明の概要】
【0008】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)が開示され、HEMTは、基板と、基板上のソースと、ソースから離間して配置された基板上のドレインと、ソースとドレインとの間にあるゲートと、を備え、ゲートは、基板に接触するステムを有し、ステムは、ソース側表面と、ドレイン側表面とを有し、ソース側角度は、ソース側表面と基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、ドレイン側表面と基板の上部平面との間で画定され、ソース側角度とドレイン側角度とは非対称である。
【0009】
非限定的な一構成では、ソース側表面及びドレイン側表面は、非線形面である。
【0010】
別の非限定的な構成では、非線形面は、基板の上部平面との接点から非線形である。
【0011】
さらに別の非限定的な構成では、ソース側表面及びドレイン側表面は、フィールドプレートにより画定される。
【0012】
さらなる非限定的な構成では、ソース側角度はドレイン側角度よりも大きい。
【0013】
またさらなる非限定的な構成では、ソース側角度は25°~90°であり、ドレイン側角度はソース側角度よりも小さい。
【0014】
別の非限定的な構成では、ソース側角度は45°~90°である。
【0015】
またさらなる非限定的な構成では、ソース側角度は70°~90°である。
【0016】
さらなる非限定的な構成では、ドレイン側角度は25°~70°である。
【0017】
またさらなる非限定的な構成では、ドレイン側角度は25°~50°である。
【0018】
別の非限定的な構成では、ゲートは、金、白金、ニッケル、ならびにこれらの組み合わせ及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上の金属で形成された金属構造である。
【0019】
別の非限定的な構成では、トランジスタの製造方法が提供され、方法は、ソース及びドレインを画定するオーミック材料で被覆された基板に、フォトレジスト層を塗布するステップと、第1のフォトレジストストリップと第2のフォトレジストストリップとの間に中央空間を画定するように、フォトレジストの部分を除去するステップであって、第1のストリップと第2のストリップとは異なる幅を有する、当該除去するステップと、中央空間の両側にリフロー角度を形成するように、フォトレジストをリフローさせるステップと、中央空間にゲート金属を適用するステップと、を含む。
【0020】
非限定的な構成では、方法はさらに、リフローさせるステップの後に、フォトレジスト層の上にさらなるフォトレジスト層を塗布するステップと、中央空間を露出させるように、さらなる層の一部を除去するステップと、さらなる層及び中央空間に、ゲート金属を適用するステップと、ソース及びドレインを有する基板と、ゲートとを作成するように、フォトレジスト層及びさらなるフォトレジスト層を除去するステップであって、ゲートは、基板と接触するステムと、ソース側フィールドプレートと、ドレイン側フィールドプレートとを有する、当該除去するステップと、を含み、ソース側フィールドプレート及びドレイン側フィールドプレートは、非線形面により画定され、ソース側角度は、ソース側フィールドプレートと基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、ドレイン側フィールドプレートと基板の上部平面との間で画定され、ソース側角度とドレイン側角度とは非対称である。
【0021】
別の非限定的な構成では、除去するステップは、中央空間を画定するように、フォトレジスト層の中央部分を除去することと、第1の幅を有するソース側フォトレジストストリップを画定するように、フォトレジスト層のソース側部分を除去することと、第2の幅を有するドレイン側フォトレジストストリップを画定するように、フォトレジスト層のドレイン側部分を除去することと、を含む。
【0022】
さらに別の非限定的な構成では、フォトレジストは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フェノールホルムアルデヒド樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された材料である。
【0023】
さらなる非限定的な構成では、リフローさせるステップは、フォトレジスト層を100℃~200℃の温度に1分~10分の期間さらすことを含み、これにより、フォトレジストは溶融して流れ、フォトレジストの表面張力に従った形を成す。
【0024】
またさらなる非限定的な構成では、トランジスタの製造方法が提供され、方法は、ソース及びドレインを画定するオーミック材料で被覆され、かつ誘電体層で被覆された基板に、フォトレジスト層を塗布するステップと、第1のフォトレジストストリップと第2のフォトレジストストリップとの間に中央空間を画定するように、フォトレジストの部分を除去するステップであって、第1のストリップと第2のストリップとは異なる幅を有する、当該除去するステップと、中央空間の両側にリフロー角度を形成するように、フォトレジストをリフローさせるステップと、リフロー角度により画定された角度を成す側面を有する誘電体中央空間を画定するように、中央空間を通して誘電体層をエッチングするステップと、誘電体中央空間にゲート金属を適用するステップと、を含む。
【0025】
別の非限定的な構成では、方法はさらに、リフローさせるステップの後に、フォトレジスト層の上にさらなるフォトレジスト層を塗布するステップと、中央空間を露出させるように、さらなる層の一部を除去するステップと、を含む。
【0026】
さらに別の非限定的な構成では、方法はさらに、エッチングするステップの後に、誘電体層から、さらなるフォトレジスト層及びフォトレジスト層を剥離するステップと、誘電体層及び誘電体中央空間の上に追加フォトレジスト層を塗布するステップと、誘電体中央空間を露出させるように、追加フォトレジスト層の一部を除去するステップと、追加層及び誘電体中央空間にゲート金属を適用するステップと、ソース及びドレインを有する基板と、ゲートとを作成するように、追加層上の追加層ゲート金属を除去するステップであって、ゲートは、基板と接触するステムと、ステムのソース側表面と、ステムのドレイン側表面とを有する、当該除去するステップと、を含み、ソース側角度は、ソース側表面と基板の上部平面との間で画定され、ドレイン側角度は、ドレイン側表面と基板の上部平面との間で画定され、ソース側角度とドレイン側角度とは非対称である。
【0027】
さらなる非限定的な構成では、除去するステップは、中央空間を画定するように、フォトレジスト層の中央部分を除去することと、第1の幅を有するソース側フォトレジストストリップを画定するように、フォトレジスト層のソース側部分を除去することと、第2の幅を有するドレイン側フォトレジストストリップを画定するように、フォトレジスト層のドレイン側部分を除去することと、を含む。
【0028】
添付図面を参照して、本開示の1つ以上の実施形態の詳細な説明が下記に記される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】非対称に傾斜したゲート構造を有するPHEMTの非限定的な構成を示す。
【
図3】本開示の特定の態様をより詳細に示す、
図2の一部の拡大図である。
【
図11】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図12】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図13】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図14】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図15】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図16】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図17】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図18】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図19】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図20】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【
図21】HEMTの製造方法のさらなる非限定的な構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
様々な図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
【0031】
本開示は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)及び擬似格子整合型高電子移動度トランジスタ(PHEMT)、ならびにこれらの製造方法に関する。
【0032】
図1は、基板12と、ソース14と、ドレイン16とを含むPHEMT構造10を概略的に示す。当技術分野ではよく知られ理解されているように、ソース14とドレイン16との間にゲート18は配置される。基板12は、通常、異なるバンドギャップを有する2つの材料間の接合が組み込まれた多層構造である。基板12に適した材料の非限定的な一例として、ガリウムアンチモン、すなわちGaAs材料が挙げられる。この材料は、材料間の接合に望ましい性能を生み出すために、例えばアルミニウムとの組み合わせ(AlGaAs)、またはインジウムとの組み合わせ(InGaAs)など、様々な形態で利用することができる。本構造は、ヘテロ材料層が自身の結晶格子構造を維持できないほど薄いため、擬似格子整合型と称される。むしろ、これらの材料層は、周囲材料の構造を想定している。本明細書に記載の開示は、HEMT構造及びPHEMT構造の両方に適用可能である。さらに、他の関連のある理由または追加の理由で、多数の追加層を基板12に組み込むことができ、このような複数の追加層構造はすべて、本明細書で使用される用語「基板」に含まれるものとみなされる。
【0033】
ソース14は、オーミック金属層である。適切なオーミック金属の非限定的な例として、金、白金、ニッケル、タンタル、タンタル窒化物、タングステン、アルミニウム、及びこれらの関連合金が挙げられる。
【0034】
ドレイン16も、オーミック金属層であり、例えばソースに適した金属と同じ種類の金属であり得る。よって、適切なオーミック金属の非限定的な例として、金、白金、ニッケル、タンタル、タンタル窒化物、タングステン、アルミニウム、及びこれらの関連合金が挙げられる。金属は、ソース及びドレインの両方で同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
従来のT字形であるゲート18が
図1に示され、幅の狭いステム20と、幅の広い上部22とを有する。
図1のステム20は、等しく反対に傾斜した直線的側面24、26を有する。基板表面に対する側面24、26の位置、及び側面24、26の相対位置は、ゲートエッジにおける電界の大きなスパイクの可能性、ならびにゲートにわたる静電容量にも影響を与える。
【0036】
図示されるように、ゲート18は上部22を有し、上部22の横方向寸法すなわち幅は、ステムの幅よりも大きく、垂直方向寸法すなわち高さは、幅よりも小さい。上部22の幅及び高さは、全体の構成における抵抗に影響を与える。
【0037】
ステム20の底面と基板12の上面との接点28は、通常、可能な限り小さいことが好ましい。さらに、基板12との接点における側面24、26は、通常、可能な限り垂直に近い状態に保たれる。しかし、前述されたように、完全に垂直なT字形ゲートでは、ゲートエッジで電界に大きなスパイクが発生することがあり、この大きなスパイクは、デバイスに壊滅的な影響を与える可能性がある。
【0038】
図2及び
図3は、本開示によるPHEMT100の一部の非限定的な構成を示す。基板104上にゲート102が示されており、ソース対向側面106と、ドレイン対向側面108とを有する。側面106、108は非線形である。
図2及び
図3で示される構成では、側面106、108は、円弧に沿って湾曲している。
【0039】
側面106、108は、基板104に対して非対称に配置される。この事例では、ソース対向側面106は、ドレイン対向側面108よりも垂直に近い角度を有する。これにより、側面106がソース側で垂直に近い角度を有することが可能となり、静電容量が減少し、同時に側面108がドレイン側でより浅い角度を有するため、同様に所望通りに、平滑化フィールドプレート効果が生じる。従来の製造方法を利用してこの構成を達成することは、困難であり、その理由は、ゲートの空間またはギャップを画定するのに使用されるレジスト材料及びフォトレジスト材料では、
図1に示されるような対照的な傾斜が生じるためである。
【0040】
図2及び
図3は、フォトレジストストリップ110、112を有するゲート102を示し、下記でさらに説明される方法に従ってゲート102を形成するために、フォトレジストストリップ110、112が使用されることを、理解されたい。さらに、ゲート102の形成後に、フォトレジスト110、112は除去され得ることを理解されたい。
【0041】
図3は、
図2の一部の拡大図であり、本開示によるゲートの一構成における側面106、108の構成、形状、及び角度の具体的な詳細をさらに示す。この構成における側面106は、非線形であり、具体的には全体的にソースに対向する凹形の曲面である。全体的に湾曲した面106は、基板104に対して、具体的には基板104の上部平面114に対して、角度をなしている、すなわち傾斜している。この実施形態における側面106、108は、隣接するフォトレジストの曲面の周りに形成されることから、側面106、108の角度は、側面の形状を画定するフォトレジストの接触角を測定することが最良であり得る。よって、表面114との接触角が80°であるフォトレジスト上への堆積により側面106が形成される場合、基板104に対する側面106の角度Aは、80°であるとみなされる。同様に、側面108は、非線形であり、この構成では、全体的にドレインに対向する凹形の曲面である。側面108も、基板104の表面114との接触角を有するフォトレジスト上への堆積により、形成される。よって、側面108の角度Bは、側面108が堆積したフォトレジストの接触角であるとみなされる。例えば、このフォトレジストが40°の接触角を有する/有した場合では、本明細書で言及される側面108の角度Bは、40°であるとみなされる。
図3の実施形態における接触角A、Bは、線X、Y及び面114に関して示される。
【0042】
非限定的な一構成では、ソース側角度Aは、ドレイン側角度Bよりも大きい。角度Aは、25°~90°であり得る。さらなる非限定的な構成では、角度Aは、45°~90°であり得、さらには70°~90°であり得る。角度Bも、広義的には25°~90°であり得るが、一構成では25°~70°であり得、さらには25°~50°であり得る。これらの範囲内では、やはり、角度Aは角度Bよりも大きい。前述のように、これは、望ましい低静電容量をもたらしながら、依然としてドレイン側ではフィールドプレート効果を達成するのに役立つ。
【0043】
この実施形態で言及される角度は接触角であるが、他の構成では側面106、108は直線であってもよく、この場合、角度は単に、基板の上面に対する直線側面の角度であることを、理解されたい。このような構成については、さらに下記で論述される。これらの構成のうちのいずれにおいても、ドレイン側角度Bは、90°未満であることが有利である。
【0044】
図4~
図10は、
図2及び
図3で示されるゲート構造を形成することができる方法の非限定的な一例を示す。
図4は、ソース14及びドレイン16となるものを形成するためのオーミック金属で予め被覆された基板すなわちウェハ104を示す。既知の技術に従って、レジストまたはフォトレジストの層116が、基板104の表面114上に塗布または回転塗布され、ソース14及びドレイン16上にも塗布され得る。
【0045】
次に、ステムチャネル118すなわち中央空間、及び少なくとも2つの外部チャネル120、122を作成するように、層116が露光されて造成される。チャネルのこの組み合わせにより、異なる幅を有するフォトレジストストリップ110、112が作成される。これらのストリップは、補助形体と称され、この構成は
図5に示される。このステップは、レジスト材料またはフォトレジスト材料と、これらを除去する方法またはエッチングする方法との任意の既知の組み合わせを利用して、達成され得る。例えば、フォトレジストに適した材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フェノールホルムアルデヒド樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0046】
図6を参照すると、
図5の構造は、例えばフォトレジストベーキングステップで熱にさらされて、フォトレジスト材料がリフローし、これにより
図6に示されるようにチャネル間にストリップ110、112の形状が生成され得る。リフローしたフォトレジストで得られる形状は、材料の表面張力、またフォトレジストストリップの開始幅に依存する。この理由から、外側チャネル120、122は、ステムチャネル118の一方側に、他方側のフォトレジストストリップとは異なる幅を有するフォトレジストストリップを生成する外部補助形体として、形成される。フォトレジストストリップの幅がより狭いと、ステムチャネルに形成されるゲートステムの接触角はより急勾配になり、フォトレジストストリップの幅がより広いと、この方法で形成されるゲートステムの接触角はより浅くなる。よって、ドレイン側のフォトレジストストリップ112は、ソース側のフォトレジストストリップ110よりも幅を広く構成することが、有利であり得る。
【0047】
図7を参照すると、第1の層116の上部の上、及びチャネル118、120、122内に、第2のフォトレジスト層124が塗布または回転塗布され得る。第2の層124は、同じフォトレジスト材料から生成することができるが、第1の材料よりもエッチング力により敏感なフォトレジストから生成することが有利であり得る。これにより、下にある第1のフォトレジスト層116を除去することなく、第2の層124の一部すなわちチャネルを、望ましくあり得る程度まで除去すなわちエッチング除去することが可能となる。
図8に示されるように、下にあるステムチャネル118と、ステムチャネル118を取り囲み画定する層116のフォトレジストストリップの部分とを露出する位置で、層124にチャネル126が形成すなわちエッチングされる。
【0048】
次いで、フォトレジスト層124上及びステムチャネル118内、ならびにチャネル126内で露出したフォトレジスト層116の表面上を含む構造全体上に、ゲート金属層128が堆積され得る。あるいは、ゲート金属は、ステムチャネル118の位置にのみ堆積させることもできる。このゲート金属は、例えば、蒸着すなわち蒸発を使用して、または他の既知の技術を使用して、堆積され得る。最終的に、
図10に示されるように、層116及び層124の余分な金属及びフォトレジストが、例えばウェハすなわち基板104から剥離されることにより除去され、図示のように非対称に傾斜した側面を有するゲート102が残る。
図4~
図10の例示では、ゲート102のより急な角度が右向きに示されているが、これは、より狭いフォトレジストストリップが補助形体として右側で利用されたためであることを、理解されたい。よって、この構成では、この構造は、右側にソース、及び左側にドレインを有する。
【0049】
ステムのソース側角度及びドレイン側角度のいずれの組み合わせも、この方法に従って、ステムチャネルの両側の補助ストリップにおいて適切な幅の組み合わせを選択することにより、作成できることを理解されたい。
【0050】
図11~
図21は、非対称に傾斜した側面を有するHEMT用ゲートの別の製造方法を示す。
【0051】
図11を参照すると、基板104は、ソース14及びドレイン16のためのオーミック材料が設けられ、次に、例えば炭化ケイ素または高誘電率材料などのゲート誘電体材料層128で被覆され得る。次に、第1のフォトレジスト層130が、誘電体層128の上に堆積され得る。
【0052】
図12は、ステムチャネル132、及びステムチャネル132の両側に離間して配置された2つの外部チャネル134、136を形成するように、フォトレジスト層130を露光させた後の構造を示す。
図4~
図10の実施形態と同様に、2つのフォトレジストストリップ138、140がステムチャネル132の両側に配置され、2つのストリップ138、140が異なる幅を有するように、チャネル134、136は、ステムチャネル132から異なる間隔で配置される。
【0053】
図13は、ストリップ138、140がガラス転移温度に達し、リフローして材料の表面張力及び他の特性により生じる丸い形状をとるように、フォトレジストをベーキングした、あるいはリフローさせた後の構造を示す。示されるように、幅のより広いストリップは、幅のより狭いストリップよりも接触角がより小さい、すなわち接触角がより浅いリフロー形状を生成する。
【0054】
図14は、リフローした第1の層130の上に第2のフォトレジスト層142が塗布された後の構造を示す。次に、
図15に示されるようにステムチャネル132を露出させるために、この第2の層142は、露光除去またはエッチング除去され得る。
【0055】
この段階で、誘電体層128内に中央チャネル144を形成するように、誘電体層128は、ステムチャネル132を通してエッチングされ得る。このエッチングは、ストリップ138、140の異なる角度の壁の間に画定された空間を通して達成されるため、中央チャネル144は、基板104に対して異なる角度の側面146、148を有する。これは、
図16に示される。
【0056】
図17は、フォトレジスト層116、124が除去された後、中央チャネル144を有する誘電体が残った構造を示す。次に、
図18に示されるように、誘電体層128及び中央チャネル144の上に、第3のフォトレジスト層146が配置または堆積され得、次に、この第3の層146は、中央チャネル144上に開口部148を形成するように、エッチングまたは露光され得る。この露光またはエッチングは、マスク技術または任意の他の技術を使用して行われ得、中央チャネル144よりも広い開口部148が得られる。さらに、開口部148は、誘電体層128に近づくにつれて間隔が広がる壁150、152により、画定され得る(
図19を参照)。次に、
図20に示されるように、構造の上に、ならびに開口部148及び中央チャネル144内に、ゲート金属150が堆積され得る。結果、期待の形状を有するゲート152が形成されることが示される。最終的に、
図21に示されるように、第3のフォトレジスト層146ならびに余分なゲート金属150が除去されて、HEMT構造100が残り得る。図から分かるように、ゲート152は、ステム154と、ステム154よりも広い上部156を有する。
図2及び
図3の構造と同様に、ステム154は、基板104に対して異なる角度をなす側面158、160により画定される。これらの側面の異なる角度は、前述の角度A及び角度Bの範囲内であることが有利であり得る。ただし、この構成では、側面158、160は略線形である。さらに、この事例では、ゲート152は、基板内に画定されるのではなく、そのステムの両側が誘電体層128に接触するように形成される。
【0057】
本開示の1つ以上の実施形態について説明が行われた。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよいことが、理解されよう。例えば、異なる材料及び構成が利用されてもよく、異なる形状または構成を有するトランジスタ構造も本開示の恩恵を受け得る。したがって、他の実施形態は、下記の特許請求の範囲内である。