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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20250605BHJP
   A61B 5/153 20060101ALI20250605BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20250605BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20250605BHJP
   A61M 39/08 20060101ALI20250605BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61B5/153 200
A61B5/153 300
A61M25/00 510
A61M25/14 512
A61M39/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019005266
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020110485
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大迫 久晃
(72)【発明者】
【氏名】上坂 須美子
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】小河 了一
【審判官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505756(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0208154(US,A1)
【文献】特表2018-507747(JP,A)
【文献】特開昭58-81043(JP,A)
【文献】特開昭60-108050(JP,A)
【文献】特表2010-528703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M,A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの体液の採取、およびポンプから供給されたインスリンを前記被検体に注入する1つのカニューレと、
採取された前記体液中の被対象物質を計測するセンサと、
前記センサによる前記被対象物質の計測結果に基づいて、前記ポンプを制御して、前記カニューレに供給される前記インスリンの量を調整する制御部と、を備える薬液投与装置であって、
前記カニューレは、前記被検体から前記体液を採取するための第1の開口部と、前記被検体に前記インスリンを注入するための第2の開口部と、を有し、
前記第1の開口部は、前記被検体から採取された前記体液が通過する第1の中空部と接続し、
前記第2の開口部は、前記ポンプから供給された前記インスリンが通過する第2の中空部と接続し、
前記センサは、前記第1の中空部内に設けられ、
前記カニューレが前記被検体の皮下に留置されるときに前記カニューレの根本から前記第1の開口部までの長さは、前記カニューレの根本から前記第2の開口部までの長さよりも長く、
前記制御部は、
前記センサによる前記被対象物質の計測結果が第1の閾値以下である場合に、前記カニューレにブドウ糖を含む薬液を供給し、
前記センサによる前記被対象物質の計測結果と、前記カニューレに供給される前記インスリンの量と、前記カニューレに供給される前記ブドウ糖を含む薬液の量とを、電子カルテ装置を含む外部装置に送信する、
薬液投与装置。
【請求項2】
前記センサによる前記被対象物質の計測結果、または前記センサによる前記被対象物質の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートを表示する表示部、をさらに備える、
請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項3】
前記センサによる前記被対象物質の計測結果、または前記センサによる前記被対象物質の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートを音または音声で出力する音声出力部、をさらに備える、
請求項1または2に記載の薬液投与装置。
【請求項4】
前記センサによる前記被対象物質の計測結果、前記インスリンの注入量、または前記センサによる前記被対象物質の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートを、外部装置に送信する通信部、をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の薬液投与装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被検体を認証した場合に、前記ポンプを制御して、前記カニューレに前記インスリンを供給する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の薬液投与装置。
【請求項6】
前記体液は血液であり、
前記被対象物質はグルコースであり、
前記センサは、採取された前記血液中のグルコースの濃度を計測する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に装着してインスリン等の薬液を継続的に投与するインスリンポンプが知られている。また、被検体の血糖値等を計測するセンサによる計測結果に基づいて、インスリンポンプによるインスリンの投与量を制御する技術についても開示されている。
【0003】
このような従来技術においては、血糖値等を計測するために血液を採取するカニューレと、被検体にインスリンを注入するカニューレとがそれぞれ別個に設けられていた。このため、このような従来技術に基づく装置を使用する被検体は、複数のカニューレを身体に挿入することになり、被検体に負担がかかる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-113111号公報
【文献】特開2005-267364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、被検体にかかる負担を低減する薬液投与装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る薬液投与装置は、1つのカニューレと、センサと、制御部とを備える。カニューレは、被検体からの体液の採取、およびポンプから供給されたインスリンを被検体に注入する。センサは、採取された体液中の被対象物質を計測する。制御部は、センサによる被対象物質の計測結果に基づいて、ポンプを制御して、カニューレに供給されるインスリンの量を調整する。カニューレは、被検体から体液を採取するための第1の開口部と、被検体にインスリンを注入するための第2の開口部と、を有する。第1の開口部は、被検体から採取された体液が通過する第1の中空部と接続する。第2の開口部は、ポンプから供給されたインスリンが通過する第2の中空部と接続する。センサは、第1の中空部内に設けられる。カニューレが被検体の皮下に留置されるときにカニューレの根本から第1の開口部までの長さは、カニューレの根本から第2の開口部までの長さよりも長い。制御部は、センサによる被対象物質の計測結果が第1の閾値以下である場合に、カニューレにブドウ糖を含む薬液を供給し、センサによる被対象物質の計測結果と、カニューレに供給されるインスリンの量と、カニューレに供給されるブドウ糖を含む薬液の量とを、電子カルテ装置を含む外部装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態にかかる薬液投与装置の外観の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる薬液投与装置の被検体への装着例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる装着部の被検体への装着例の詳細を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態にかかるカニューレの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態にかかる薬液投与装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施形態にかかるインスリン投与基準データベースの一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態にかかる薬液投与装置の、外部装置との通信の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態にかかる薬液投与装置で実行される血糖値の計測およびインスリン投与の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第1の実施形態にかかる薬液投与装置で実行される投与量判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施形態にかかる薬液投与装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、第2の実施形態にかかる薬液投与装置で実行される血糖値の計測およびインスリン投与の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12図12は、変形例1にかかるカニューレの一例を示す図である。
図13図13は、変形例2にかかるカニューレの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置及び医用画像診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる薬液投与装置1の外観の一例を示す図である。図1に示すように、薬液投与装置1は、本体部10と、装着部20と、本体部10と装着部20とを接続するケーブル30とを備える。
【0010】
本体部10は、ディスプレイ12と、入力装置11とを備える。また、本体部10は、装着部20に内蔵された血糖値センサで計測された血糖値に基づいて、装着部20に対してインスリンを供給するインスリンポンプの機能を備える。本体部10の構成の詳細については後述する。
【0011】
装着部20は、被検体の皮膚に装着される装置である。装着部20は、被検体からの血液の採取、および被検体へのインスリンの注入をする1つのカニューレ22を備える。カニューレ22には、後述する本体部10のポンプから、インスリンが供給される。また、装着部20は、後述する血糖値センサを内蔵する。
【0012】
インスリンは、本実施形態における薬液の一例である。また、血液は、本実施形態における体液の一例である。血糖値センサは、本実施形態におけるセンサの一例である。また、本実施形態における被対象物質の一例はグルコース(ブドウ糖)であり、血糖値センサは、血液1dL中のグルコース量、つまり血液中のグルコース濃度(血糖値)を計測する。
【0013】
ケーブル30は、本体部10から装着部20のカニューレ22にインスリンを供給するチューブと、本体部10と装着部20内の血糖値センサとを接続する伝送路とを内包するケーブルである。伝送路は、例えば、USB(Universal Serial Bus)等の規格に準拠したデータ伝送可能な伝送路であるものとする。血糖値センサは、血糖値の計測結果を、当該伝送路を介して本体部10に送信する。
【0014】
図2は、本実施形態にかかる薬液投与装置1の被検体Pへの装着例を示す図である。図2に示すように、装着部20は被検体Pの表皮に装着(固定)される。
【0015】
また、本実施形態の薬液投与装置1は、本体部10および装着部20が共に被検体Pの身体または衣服900等に取り付け可能な携帯型の薬液投与装置である。本体部10は、一例として、背面に不図示のクリップ等の把持部を備えるものとする。本体部10は、当該クリップ等によって被検体Pの衣服900等を把持することにより、被検体Pに装着(固定)可能であるものとする。あるいは、本体部10は、被検体Pに固定可能なベルト等を備えるものとしても良い。また、本体部10は、被検体Pの衣服900のポケット等に収納されるものとしても良い。
【0016】
図3は、本実施形態にかかる装着部20の被検体Pへの装着例の詳細を示す図である。図3に示すように、装着部20は、被検体Pに接する面に粘着層201を備えており、粘着層201を被検体Pの表皮に当接させることで、被検体Pの表皮に固定されるものとする。
【0017】
また、装着部20が被検体Pの表皮に装着される場合、図3に示すように、カニューレ22は、被検体Pの皮下組織に挿入および留置された状態となる。カニューレ22は、可撓性を有する素材で構成された筒状部材である。あるいは、金属等で構成された針をカニューレ22として採用しても良い。
【0018】
装着部20に内包された血糖値センサ21は、カニューレ22によって採取された被検体Pの血液中のグルコース濃度、つまり血糖値を計測する。例えば、血糖値センサ21は、採取された血液に電圧を印加し、発生した電流値に基づいて血糖値を計測するものとする。血糖値の計測の手法はこれに限定されるものではなく、公知の手法を採用することができる。血糖値センサ21は、ケーブル30に内包された伝送路を介して、本体部10に血糖値の計測結果を送信する。
【0019】
次に、本実施形態におけるカニューレ22の構造の詳細について説明する。図4は、本実施形態にかかるカニューレ22の一例を示す断面図である。図4に示す例では、カニューレ22は、被検体Pの皮下に留置されている。
【0020】
図4に示すように、カニューレ22は、被検体Pから血液を採取するための第1の開口部221と、被検体Pにインスリンを注入するための第2の開口部222とを備える。
【0021】
また、カニューレ22は、採取された血液が通過する第1の中空部223と、ケーブル30内のチューブを介して本体部10から供給されたインスリンが通過する第2の中空部224とを備える。第1の開口部221は第1の中空部223と接続し、第2の開口部222は第2の中空部224と接続する。
【0022】
本実施形態においては、カニューレ22は、例えば、毛細管現象によって被検体Pの血液を第1の開口部221から吸引するものとする。第1の開口部221から吸引された血液は、毛細管現象によって第1の中空部223内を上昇して血糖値センサ21に到達する。また、第1の中空部223内に血糖値を計測するセンサ素子を設けても良い。また、血液の摂取の手法はこれに限定されるものではない。
【0023】
第1の開口部221と、第2の開口部222とは、異なる方向を向いて設けられる。例えば、本実施形態においては、第1の開口部221は、カニューレ22が被検体Pの皮下に留置された場合に、被検体Pの皮膚に対して垂直となる方向を向いて設けられる。また、第2の開口部222は、カニューレ22が被検体Pの皮下に留置された場合に、被検体Pの皮膚に平行となる方向を向いて設けられる。
【0024】
また、第1の中空部223の長さと、第2の中空部224の長さとは異なるものとする。また、第1の開口部221は第1の中空部223の端部であり、第2の開口部222は第2の中空部224の端部であるため、カニューレ22の根本(装着部20側の端部)から第1の開口部221までの長さと、カニューレ22の根本から第2の開口部222までの長さとは異なるものとなる。
【0025】
本実施形態においては、第1の中空部223の長さは、第2の中空部224の長さよりも長いものとする。このため、本実施形態においては、第1の中空部223の端部である第1の開口部221は、第2の中空部224の端部である第2の開口部222よりもカニューレ22の先端に近い位置に設けられる。この場合、カニューレ22が被検体Pに挿入された場合に、第1の開口部221は、第2の開口部222によってインスリンが注入される位置よりも深い位置から血液を採取する。
【0026】
次に、薬液投与装置1の構成の詳細について説明する。図5は、本実施形態にかかる薬液投与装置1の構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、薬液投与装置1は、装着部20と本体部10とを備える。装着部20は、血糖値センサ21と、カニューレ22とを備える。また、本体部10は、入力装置11と、ディスプレイ12と、音声出力装置13と、インタフェース(I/F)回路14と、処理回路15と、記憶回路16と、ポンプ17とを備える。
【0027】
入力装置11は、ボタン、またはパネルスイッチ等を有し、操作者からの各種の操作を受け付け、受け付けた各種の操作を処理回路15に出力する。例えば、入力装置11は、操作者からの設定操作、および処理の開始または終了の操作等を受け付ける。
【0028】
ディスプレイ12は、処理回路15による制御の下、血糖値センサ21による血糖値の計測結果、または各種のアラートを表示する。ディスプレイ12は、本実施形態における表示部の一例である。
【0029】
音声出力装置13は、血糖値センサ21による血糖値の計測結果、または各種のアラートを音または音声で出力する。音声出力装置13は、本実施形態における音声出力部の一例である。
【0030】
ディスプレイ12および音声出力装置13が表示または出力するアラートは、一例として、血糖値センサ21による血糖値の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートである。当該アラートの詳細については、後述する。
【0031】
インタフェース回路14は、処理回路15に接続されており、インターネット等のネットワークを介した外部装置との間の無線通信を制御する。インタフェース回路14は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。また、インタフェース回路14は、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、またはRFID(Radio Frequency Identification)等の近距離無線通信によって外部装置との間で通信を行うものであっても良い。インタフェース回路14は、本実施形態における通信部の一例である。
【0032】
ポンプ17は、シリンジ173と、モータ172と、アクチュエータ171とを備える。シリンジ173には、インスリンが予め貯蔵されているものとする。また、シリンジ173は、ケーブル30内のチューブと接続している。シリンジ173は、不図示のプランジャ(押し子)を備える。
【0033】
モータ172の回転によりプランジャに荷重が印加されることにより、シリンジ173からインスリンが排出される。シリンジ173から排出されたインスリンは、ケーブル30内のチューブを介してカニューレ22に供給され、第2の中空部224を経由して第2の開口部222から被検体Pに投与(注入)される。
【0034】
アクチュエータ171は、処理回路15による制御の下、モータ172の回転を制御することにより、シリンジ173から排出されるインスリンの量を制御する。なお、ポンプ17の構成はこれに限定されるものではなく、公知のインスリンポンプの技術を適用することができる。
【0035】
処理回路15は、本実施形態における制御部の一例であり、血糖値センサ21による血糖値の計測結果に基づいて、ポンプ17を制御して、カニューレ22に供給されるインスリンの量を調整する。
【0036】
より詳細には、処理回路15は、取得機能151と、判定機能152と、ポンプ制御機能153と、出力機能154と、送信機能155とを備える。
【0037】
取得機能151は、所定の時間ごとに、血糖値センサ21から血糖値の計測結果を取得する。所定の時間は、例えば5分間とする。取得機能151は、取得した血糖値の計測結果を、計測時刻と対応付けて、記憶回路16に保存する。本実施形態においては、血糖値の計測結果と計測時刻とを対応付けた情報を、血糖値の計測結果の履歴という。また、取得機能151は、取得した血糖値の計測結果を、判定機能152と、出力機能154と、送信機能155とに送出する。
【0038】
判定機能152は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果に基づいて、被検体Pに投与するインスリンの量を判定する。また、判定機能152は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果に基づいて、アラートの出力要否および出力するアラートの内容を判定する。判定機能152によって実行される当該判定の処理を、投与量判定処理という。
【0039】
より詳細には、判定機能152は、血糖値の計測結果と、記憶回路16に予め保存されたインスリン投与基準データベースに登録された血糖値の閾値とを比較した結果に基づいて、インスリンの投与量、またはアラートの内容を判定する。
【0040】
図6は、本実施形態にかかるインスリン投与基準データベース161の一例を示す図である。図6に示すように、インスリン投与基準データベース161には、血糖値と、インスリンの投与量と、出力されるアラートの内容とが対応付けられて保存される。なお、インスリンの投与量は、“1単位=0.01mL”を基準として、単位数で表される。
【0041】
本実施形態においては、血糖値の値を第1から第6の範囲に分けて定義し、第1から第6の範囲のそれぞれにインスリンの投与量と、出力されるアラートの内容とが対応付けられるものとする。図6に示す例では、第1の範囲を“79mg/dL以下”、第2の範囲を“80mg/dL以上、かつ159mg/dL以下”、第3の範囲を“160mg/dL以上、かつ199mg/dL以下”、第4の範囲を“200mg/dL以上、かつ249mg/dL以下”、第5の範囲を“250mg/dL以上、かつ350mg/dL以下”、第6の範囲を“351mg/dL以上”とする。
【0042】
また、第1の範囲の上限値である“79mg/dL以下”は、本実施形態における第1の閾値の一例である。また、第6の範囲の下限値である“351mg/dL以下”は、本実施形態における第2の閾値の一例である。
【0043】
例えば、計測された血糖値が第1の閾値(“79mg/dL”)以下の場合は、被検体Pが低血糖となる可能性があるため、判定機能152は、「ブドウ糖5gの摂取の指示」のアラートを出力する、と判定する。
【0044】
また、計測された血糖値が第2の閾値(“351mg/dL”)以上の場合は、被検体Pが高血糖状態となっているため、判定機能152は、被検体Pが高血糖となっていることを示す「高血糖アラート」を出力する、と判定する。本実施形態においては、「ブドウ糖5gの摂取の指示」のアラートを第1のアラート、「高血糖アラート」を第2のアラートとする。
【0045】
また、計測された血糖値が第2の範囲に該当する場合は、判定機能152は、インスリン投与およびアラートの出力をしない、と判定する。また、計測された血糖値第3から第5の範囲に該当する場合は、判定機能152は、各範囲に対応付けられたインスリンの投与量を被検体Pに投与する、と判定する。図6に示す血糖値の値、インスリンの投与量、およびアラートの内容は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0046】
判定機能152は、インスリンを投与すると判定した場合に、判定したインスリンの投与量を、判定時刻、つまりインスリンが投与された時刻と対応付けて記憶回路16に保存する。本実施形態においては、インスリンの投与量と、インスリンが投与される時刻とを対応付けた情報を、インスリンの投与量の履歴という。また、判定機能152は、判定したインスリンの投与量をポンプ制御機能153および送信機能155に送出する。また、判定機能152は、アラートを出力すると判定した場合に、出力するアラートの内容を、出力機能154および送信機能155に送出する。
【0047】
図5に戻り、ポンプ制御機能153は、アクチュエータ171に制御信号を送信して、判定機能152によって判定された量のインスリンをシリンジ173から排出するようにポンプ17を制御する。
【0048】
出力機能154は、ディスプレイ12および音声出力装置13を制御する。より詳細には、出力機能154は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果を、ディスプレイ12に表示させる。また、出力機能154は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果を、音声出力装置13から音声で出力させる。
【0049】
また、出力機能154は、判定機能152がアラートを出力すると判定した場合に、出力対象として判定されたアラートをディスプレイ12または音声出力装置13から出力する。
【0050】
例えば、出力機能154は、判定機能152が「ブドウ糖5gの摂取の指示」のアラートを出力する、と判定した場合に、「ブドウ糖5gを摂取してください」という文字メッセージをディスプレイ12に表示する。また、出力機能154は、「ブドウ糖5gを摂取してください」という音声を音声出力装置13から出力しても良い。出力機能154は、判定機能152が「高血糖アラート」を出力する、と判定した場合に、警告音を音声出力装置13から出力しても良い。
【0051】
なお、出力機能154は、ディスプレイ12または音声出力装置13の一方から血糖値の計測結果またはアラートを出力させるものとしても良いし、ディスプレイ12および音声出力装置13の両方に血糖値の計測結果またはアラートを出力させるものとしても良い。
【0052】
送信機能155は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果、判定機能152が判定したインスリンの投与量、および判定機能152によって出力すると判定された各種のアラートを、インタフェース回路14を介して外部装置に送信する。送信機能155が送信するアラートは、一例として、血糖値センサ21による血糖値の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートである。
【0053】
図7は、本実施形態にかかる薬液投与装置1の、外部装置との通信の一例を示す図である。図7に示すスマートフォン4等の携帯端末、電子カルテ装置5、および記録用サーバ装置6は、薬液投与装置1の通信対象となる外部装置の一例である。電子カルテ装置5は、例えば薬液投与装置1が装着された被検体Pのかかりつけの病院の電子カルテ装置であるものとする。また、記録用サーバ装置6は、被検体Pの血糖値の計測結果およびインスリンの投与量の履歴を保存ずるデータベースを備えるものとする。
【0054】
送信機能155は、血糖値の計測結果、判定機能152が判定したインスリンの投与量、および判定機能152によって出力すると判定された各種のアラートを、ネットワーク7を介してこれらの外部装置に送信する。ネットワーク7は、インターネットまたはローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)等である。
【0055】
例えば、薬液投与装置1が装着された被検体Pが小児である場合、送信機能155は、判定機能152によって出力すると判定された各種のアラートを、被検体Pの親のスマートフォン4に送信することで、被検体Pの状態を通知しても良い。また、インタフェース回路14がWiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、またはRFID等の近距離無線通信機能を備える場合、送信機能155は、近距離無線通信によってスマートフォン4等に各種のアラートを送信しても良い。
【0056】
薬液投与装置1の通信対象となる外部装置は図7に示す例に限定されるものではなく、薬液投与装置1は、各種のウェアラブル端末、またはPC(Personal Computer)等と通信しても良い。
【0057】
図5に戻り、記憶回路16は、処理回路15で使用される各種の情報を予め記憶する。一例として、記憶回路16は、インスリン投与基準データベース161を記憶する。また、記憶回路16は、血糖値の計測結果の履歴と、インスリンの投与量の履歴とを記憶する。
【0058】
記憶回路16は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。記憶回路16は、本実施形態における記憶部の一例である。
【0059】
ここで、例えば、処理回路15の構成要素である取得機能151と、判定機能152と、ポンプ制御機能153と、出力機能154と、送信機能155とは、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路16に記憶されている。処理回路15は、各プログラムを記憶回路16から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、図5の処理回路15内に示された各機能を有することとなる。なお、図5においては、単一の処理回路15にて、取得機能151、判定機能152、ポンプ制御機能153、出力機能154、および送信機能155の各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路15を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても良い。
【0060】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central preprocess unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路16にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0061】
次に、本実施形態にかかる薬液投与装置1で実行される処理の流れについて説明する。図8は、本実施形態にかかる薬液投与装置1で実行される血糖値の計測およびインスリン投与の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、取得機能151は、血糖値センサ21から血糖値の計測結果を取得する(S1)。そして、取得機能151は、取得した血糖値の計測結果を、計測時刻と対応付けて記憶回路16に保存する(S2)。また、取得機能151は、取得した血糖値の計測結果を、判定機能152と、出力機能154と、送信機能155とに送出する。
【0063】
そして、出力機能154は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果を、ディスプレイ12に表示させる。また、出力機能154は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果を、音声出力装置13から音声で出力させる(S3)。
【0064】
そして、送信機能155は、取得機能151が取得した血糖値の計測結果を、インタフェース回路14を介して外部装置に送信する(S4)。
【0065】
次に、判定機能152は、投与量判定処理を実行する(S5)。投与量判定処理の詳細については、図9を用いて説明する。
【0066】
図9は、本実施形態にかかる薬液投与装置1で実行される投与量判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
判定機能152は、血糖値の計測結果と、記憶回路16に予め保存されたインスリン投与基準データベース161に登録された血糖値の閾値とを比較する。まず、判定機能152は、被検体Pの血糖値が、“0~79(mg/dL)”、つまり第1の範囲に該当するか否かを判定する(S501)。被検体Pの血糖値が、第1の範囲に該当する場合は、被検体Pの血糖値が第1の閾値以下となる。
【0068】
判定機能152は、被検体Pの血糖値が、第1の範囲に該当すると判定した場合(S501“Yes”)、第1のアラート、つまり「ブドウ糖5gの摂取の指示」のアラートを出力する、と判定する(S502)。この場合、判定機能152は、第1のアラートを出力することを、出力機能154および送信機能155に送出する。そして、出力機能154は、第1のアラートをディスプレイ12または音声出力装置13から出力する。また、送信機能155は、第1のアラートを外部装置に送信する。
【0069】
また、判定機能152は、被検体Pの血糖値が第1の範囲に該当しないと判定した場合(S501“No”)、被検体Pの血糖値が“80~159(mg/dL)”、つまり第2の範囲に該当するか否かを判定する(S503)。
【0070】
判定機能152は、被検体Pの血糖値が、第2の範囲に該当すると判定した場合(S503“Yes”)、インスリンの投与をしないと判定する(S504)。また、この場合、判定機能152は、アラートの出力もしないと判定する。
【0071】
また、判定機能152は、被検体Pの血糖値が第2の範囲に該当しないと判定した場合(S503“No”)、被検体Pの血糖値が“160~199(mg/dL)”、つまり第3の範囲に該当するか否かを判定する(S505)。
【0072】
判定機能152は、被検体Pの血糖値が、第3の範囲に該当すると判定した場合(S505“Yes”)、インスリンの投与量を“2単位”と判定する(S506)。この場合、判定機能152は、ポンプ制御機能153に、判定したインスリンの投与量をポンプ制御機能153および送信機能155に送出する。
【0073】
そして、ポンプ制御機能153は、判定機能152によって判定されたインスリンの投与量に応じてポンプ17を制御し、判定された投与量(この場合は“2単位”)分のインスリンを被検体Pに投与する(S507)。
【0074】
また、判定機能152は、判定したインスリンの投与量を、インスリンが投与された時刻と対応付けて記憶回路16に保存する(S508)。なお、ポンプ制御機能153が、判定したインスリンの投与量を、インスリンが投与された時刻と対応付けて記憶回路16に保存するものとしても良い。
【0075】
そして、送信機能155は、判定機能152が判定したインスリンの投与量を、外部装置に送信する(S509)。
【0076】
また、判定機能152は、被検体Pの血糖値が第3の範囲に該当しないと判定した場合(S505“No”)、被検体Pの血糖値が“200~249(mg/dL)”、つまり第4の範囲に該当するか否かを判定する(S510)。
【0077】
判定機能152は、被検体Pの血糖値が、第4の範囲に該当すると判定した場合(S510“Yes”)、インスリンの投与量を“4単位”と判定する(S511)。この場合、判定機能152は、ポンプ制御機能153に、判定したインスリンの投与量をポンプ制御機能153および送信機能155に送出する。S511の処理の後、ポンプ制御機能153、判定機能152、および送信機能155は、S507~S509の処理を実行する。
【0078】
また、判定機能152は、被検体Pの血糖値が第4の範囲に該当しないと判定した場合(S510“No”)、被検体Pの血糖値が“250~350(mg/dL)”、つまり第5の範囲に該当するか否かを判定する(S512)。
【0079】
判定機能152は、被検体Pの血糖値が、第5の範囲に該当すると判定した場合(S512“Yes”)、インスリンの投与量を“6単位”と判定する(S513)。この場合、判定機能152は、ポンプ制御機能153に、判定したインスリンの投与量をポンプ制御機能153および送信機能155に送出する。S513の処理の後、ポンプ制御機能153、判定機能152、および送信機能155は、S507~S509の処理を実行する。
【0080】
また、判定機能152は、被検体Pの血糖値が第5の範囲に該当しないと判定した場合(S512“No”)、被検体Pの血糖値が“250(mg/dL)”以上、つまり第6の範囲に該当すると判定する。この場合、被検体Pの血糖値が第2の閾値以上となるため、判定機能152は、第2のアラート、つまり「高血糖アラート」を出力する、と判定する(S514)。この場合、判定機能152は、第2のアラートを出力することを、出力機能154および送信機能155に送出する。そして、出力機能154は、第2のアラートをディスプレイ12または音声出力装置13から出力する。また、送信機能155は、第2のアラートを外部装置に送信する。ここで、このフローチャートの処理は終了し、図8に戻る。
【0081】
図8のフローチャートでは、S5の投与量判定処理の後は、取得機能151は、処理を終了するか否かを判断する(S6)。例えば、取得機能151は、入力装置11から血糖値の測定およびインスリンの投与の処理の終了操作が入力された場合に、処理を終了すると判断する(S6“Yes”)。この場合は、このフローチャートの処理は終了する。
【0082】
また、取得機能151は、入力装置11から処理の終了操作が入力されていない場合は、処理を終了しないと判断する(S6“No”)。この場合、取得機能151は、前回の血糖値の計測から所定の時間が経過したか否かを判断する(S7)。取得機能151は、前回の血糖値の計測から所定の時間が経過していないと判断した場合は(S7“No”)、S6の処理に戻る。また、取得機能151は、前回の血糖値の計測から所定の時間が経過したと判断した場合は(S7“Yes”)、S1の処理に戻る。
【0083】
このように、本実施形態の薬液投与装置1によれば、1つのカニューレ22によって被検体Pからの血液の採取、およびポンプ17から供給されたインスリンの被検体Pへの注入をするため、被検体Pの負担を低減することができる。
【0084】
例えば、血糖値の計測用の血液採取用のカニューレと、インスリンの投与用のカニューレとをそれぞれ別に備える装置の場合は、被検体の身体の2箇所にカニューレを挿入することとなる。被検体の身体の複数個所にカニューレを継続的に装着することにより、被検体に負担がかかる場合がある。
【0085】
これに対して、本実施形態の薬液投与装置1では、1つのカニューレ22によって被検体Pからの血液の採取、および被検体Pへのインスリンの注入をするため、被検体Pに挿入するカニューレ22を1つにすることができ、被検体Pにかかる負担を低減することができる。
【0086】
また、例えば、患者(被検体)が手動で血糖値を計測し、その結果に基づいてインスリンの投与量を手動で設定する場合は、血糖値の測定結果の読み間違いや、インスリンの投与量の誤設定が生じる場合がある。この場合、誤った量のインスリンが被検体に投与される可能性がある。特に、I型糖尿病では、被検体が小児である場合も多いため、血糖値の測定およびインスリンの投与量の調整を被検体自らが行うことが容易ではない場合がある。
【0087】
これに対して、本実施形態の薬液投与装置1では、血糖値センサ21による血糖値の計測結果に基づいてポンプ17を制御して、カニューレ22に供給されるインスリンの量を調整するため、被検体が手動で投与量を設定することによって誤った量のインスリンを投与してしまうことを回避することができる。このため、本実施形態の薬液投与装置1によれば、インスリンの誤投与の発生を低減することができる。
【0088】
また、例えば、糖尿病患者以外の人や、血糖値が正常な人に対して、インスリンが投与されると低血糖を引き起こす場合がある。これに対して、本実施形態の薬液投与装置1では、血糖値センサ21による血糖値の計測結果に基づいて、自動的にインスリンの量が調整されるため、インスリンの投与が不要な人に対してインスリンが誤投与されることを回避することができる。
【0089】
さらに、本実施形態の薬液投与装置1のカニューレ22によれば、血液を採取するための第1の開口部221とインスリンを注入するための第2の開口部222とが異なる方向を向いているため、インスリンの投与をする場所とは異なる場所から、血液の採取をすることができる。このため、本実施形態の薬液投与装置1によれば、1つのカニューレ22で血液の採取とインスリンの投与をする場合でも、高精度に血糖値を計測することができる。
【0090】
さらに、本実施形態の薬液投与装置1のカニューレ22によれば、カニューレ22の根本から第1の開口部221までの長さと、カニューレ22の根本から第2の開口部222までの長さとは異なるため、インスリンの投与をする場所からより遠い位置の血液の採取をすることにより、さらに高精度に血糖値を計測することができる。
【0091】
また、本実施形態の薬液投与装置1によれば、血糖値センサ21による血糖値の計測結果、または血糖の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートをディスプレイ12に表示するため、被検体Pが低血糖または高血糖であることを、被検体Pに迅速に把握させることができる。
【0092】
また、本実施形態の薬液投与装置1によれば、血糖値センサ21による血糖値の計測結果、または血糖の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートを音または音声で出力するため、被検体Pが低血糖または高血糖であることを、被検体Pまたは被検体Pの周囲の人に迅速に把握させることができる。例えば、被検体Pが盲目の場合、薬液投与装置1が音声で血糖値の計測結果やアラートを出力することよって、血糖値の状態を被検体Pが容易に把握することができる。
【0093】
また、本実施形態の薬液投与装置1によれば、血糖値センサ21による血糖値の計測結果、インスリンの投与量(注入量)、または血糖の計測結果が第1の閾値以下または第2の閾値以上であることを通知するアラートを、外部装置に送信するため、電子カルテ装置5等で被検体Pの血糖値の状態を記録および管理することができる。これにより、医師は、被検体Pを診察する際に、血糖値のコントロール状況等を把握した上で診断をすることができる。また、本実施形態の薬液投与装置1によれば、アラートを被検体Pの親のスマートフォン4に送信することにより、被検体Pが小児である場合に、被検体Pの親等が被検体Pの状態を迅速に把握することができる。例えば、被検体Pの親等は、血糖の計測結果が第1の閾値以下であることを通知するアラートをスマートフォン4で受信した場合に、被検体Pにブドウ糖等を摂取させるなどの迅速な対応をすることができる。
【0094】
なお、本実施形態においては、処理回路15を制御部の一例としたが、ポンプ制御機能153を制御部の一例としても良い。また、本実施形態においては、インタフェース回路14を通信部の一例としたが、送信機能155を通信部の一例としても良いし、インタフェース回路14と送信機能155とを併せて通信部の一例としても良い。
【0095】
また、本実施形態においては、送信機能155は、取得機能151が血糖値の計測結果を取得する度、または判定機能152がインスリンの投与量を判定する度に外部装置に送信していたが、送信タイミングはこれに限定されるものではない。例えば、送信機能155は、記憶回路16に保存された血糖値の計測結果の履歴およびインスリンの投与量の履歴を、定期的に外部装置に送信するものとしても良い。
【0096】
また、本実施形態のディスプレイ12または音声出力装置13が表示または出力するアラートの内容は、上述の例に限定されるものではない。例えば、ディスプレイ12または音声出力装置13は、直接的に「ブドウ糖5gを摂取してください」と表示または出力する代わりに、「クッキーを食べてください」「ジュースを飲んでください」等の糖分を含む飲食物を摂取するように指示するメッセージを表示または出力しても良い。また、薬液投与装置1はさらに本体部10を振動させるバイブレーション機能を備えても良く、出力機能154は、判定機能152がアラートを出力すると判定した場合に、出力対象のアラートの内容に応じて本体部10を振動させても良い。
【0097】
また、薬液投与装置1の本体部10のポンプ17は、糖分を含む薬液をカニューレ22に供給する構成を採用しても良い。当該構成を採用する場合、判定機能152が血糖の計測結果が第1の閾値以下であると判定した場合に、ポンプ制御機能153は、カニューレ22に糖分を含む薬液を供給することにより、被検体Pに糖分を含む薬液を投与する。
【0098】
また、本実施形態においては、ケーブル30がチューブと伝送路とを内包するものとしたが、チューブと伝送路とはそれぞれ別のケーブルとして設けられても良い。また、本実施形態の血糖値センサ21は、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、またはRFID等の近距離無線通信の機能を備えても良い。この場合、血糖値センサ21は、計測した血糖値を、近距離無線通信によって本体部10に送信する。
【0099】
また、本実施形態においては、カニューレ22は被検体Pに留置された状態であるものとしたが、カニューレ22は、可動式であっても良い。例えば、装着部20は、カニューレ22を挿入および抜出する可動部を備え、当該可動部は処理回路15の制御の下、血液の採取またはインスリンの投与の際に被検体Pに挿入され、採取または投与の終了後に被検体Pから抜き出されるものとしても良い。
【0100】
また、本実施形態においては、血糖値センサ21は血液中のグルコース量を計測するものとしたが、血糖値センサ21は、被検体Pの皮下間質液中のグルコース量を計測しても良い。この場合、皮下間質液が、体液の一例となる。また、薬液投与装置1は、血糖以外の被対象物質を計測するセンサを備えても良い。例えば、薬液投与装置1は、被検体Pの血液から、HbA1c(ヘモグロビンA1c)を計測するセンサを備えても良い。また、本実施形態においては、インスリンを薬液の一例としたが、薬液投与装置1は、インスリン以外の糖尿病治療薬等の薬液を被検体Pに投与するものとしても良い。
【0101】
(第2の実施形態)
この第2の実施形態では、第1の実施形態に加えて、薬液投与装置1はインスリンを投与する前に、被検体Pの認証を実行する。
【0102】
図10は、本実施形態にかかる薬液投与装置1の構成の一例を示すブロック図である。第1の実施形態と同様に、装着部20と本体部10とを備える。
【0103】
本実施形態の装着部20は、血糖値センサ21と、カニューレ22と、処理回路23と、記憶回路24とを備える。血糖値センサ21と、カニューレ22とは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0104】
記憶回路24は、被検体Pの認証情報を予め記憶する。本実施形態においては、被検体Pの認証情報は、被検体Pのゲノム情報である。記憶回路24は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0105】
処理回路23は、認証機能231を備える。認証機能231は、カニューレ22によって採取された血液をゲノム解析し、解析した結果が記憶回路24に保存された被検体Pのゲノム情報と一致する場合に、被検体Pを認証する。処理回路23は、被検体Pの認証結果を本体部10に送出する。認証機能231は、認証部の一例である。認証機能231は、ケーブル30に内包された伝送路または無線通信機能によって、本体部10に認証結果を送信する。
【0106】
処理回路23の構成要素である認証機能231は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路24に記憶されている。処理回路23は、各プログラムを記憶回路16から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路23は、図10の処理回路23内に示された認証機能231を有することとなる。なお、図10においては、単一の処理回路23にて、認証機能231が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路23を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより認証機能231を実現するものとしても良い。
【0107】
本体部10は、第1の実施形態と同様に、入力装置11と、ディスプレイ12と、音声出力装置13と、インタフェース回路14と、処理回路15と、記憶回路16と、ポンプ17とを備える。入力装置11と、ディスプレイ12と、音声出力装置13と、インタフェース回路14と、記憶回路16と、ポンプ17とは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0108】
本実施形態の処理回路15は、取得機能1151と、判定機能152と、ポンプ制御機能153と、出力機能154と、送信機能155とを備える。判定機能152と、ポンプ制御機能153と、出力機能154と、送信機能155とは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0109】
本実施形態の取得機能1151は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、装着部20から、被検体Pの認証結果を取得する。取得機能1151は、被検体Pが認証された場合に、血糖値の計測結果を取得する。また、取得機能1151は、被検体Pが認証されない場合は、血糖値の計測結果を取得以降の処理を実行しない。この場合、判定機能152による判定処理、およびポンプ制御機能153によるインスリンの投与等は実行されない。
【0110】
図11は、本実施形態にかかる薬液投与装置1で実行される血糖値の計測およびインスリン投与の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0111】
まず、取得機能1151は、装着部20から、被検体Pの認証結果を取得する(S21)。そして、取得機能1151は、装着部20の認証機能231において、被検体Pが認証されたか否かを判断する(S22)。取得機能1151は、装着部20の認証機能231において、被検体Pが認証されたと判断した場合(S22“Yes”)、S1の血糖値の計測結果の取得処理に進む。
【0112】
この場合、第1の実施形態と同様に、S1~S7の処理が実行される。つまり、本実施形態においては、被検体Pが認証された場合に、ポンプ制御機能153がポンプ17を制御して、カニューレ22にインスリンを供給する。
【0113】
また、取得機能1151は、装着部20の認証機能231において、被検体Pが認証されていないと判断した場合(S22“Yes”)、S21処理を繰り返す。この場合、S1~S7の処理は実行されない。
【0114】
このように、本実施形態の薬液投与装置1によれば、被検体Pを認証した場合に、ポンプ17を制御して、カニューレ22にインスリンを供給するため、予め登録された被検体P以外の人にインスリンが投与されることを回避することができる。このため、本実施形態の薬液投与装置1によれば、インスリンの誤投与の発生をさらに低減することができる。
【0115】
なお、本実施形態においては、被検体Pの血液のゲノム解析結果に基づいて被検体Pを認証するとしたが、認証の手法はこれに限定されるものではない。例えば、薬液投与装置1は、被検体Pに装着されたウェアラブル端末や、スマートフォン等と通信することにより、被検体Pを認証しても良い。また、認証の手法として、ゲノム解析以外の生体認証を採用しても良い。
【0116】
また、装着部20の処理回路15ではなく、本体部10の処理回路15が認証機能231を備える構成を採用しても良い。当該構成を採用する場合、本体部10の記憶回路16が被検体Pの認証情報を予め記憶するものとする。
【0117】
(変形例1)
薬液投与装置1が備えるカニューレ22の形態は、第1の実施形態で説明した形態に限定されるものではない。
【0118】
図12は、本変形例にかかるカニューレ22の一例を示す図である。図12に示すように、カニューレ22は、複数の第2の開口部222a,222bを備えても良い。図12は、第2の開口部222の数は1つまたは2つに限定されるものではなく、カニューレ22は、さらに多くの第2の開口部222を備えても良い。
【0119】
(変形例2)
また、図13は、本変形例にかかるカニューレ22の一例を示す図である。カニューレ22は、図13に示すように先端が細くなる形状であっても良い。また、第1の開口部221は、カニューレ22の細くなった先端の中央に位置されても良い。
【0120】
なお、上述の各実施形態においては、カニューレ22は、第1の開口部221から被検体Pの血液を採取し、第2の開口部222から被検体Pにインスリンを注入するとしたが、第1の開口部221および第2の開口部222の用途はこれに限定されるものではない。例えば、カニューレ22は、第1の開口部221から被検体Pにインスリンを注入し、第2の開口部222から被検体Pの皮下間質液を採取するものとしても良い。
【0121】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体Pにかかる負担を低減することができる。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0123】
1 薬液投与装置
10 本体部
11 入力装置
12 ディスプレイ
13 音声出力装置
14 インタフェース回路
15 処理回路
16 記憶回路
17 ポンプ
20 装着部
21 血糖値センサ
22 カニューレ
23 処理回路
24 記憶回路
30 ケーブル
151,1151 取得機能
152 判定機能
153 ポンプ制御機能
154 出力機能
155 送信機能
161 インスリン投与基準データベース
221 第1の開口部
222,222a,222b 第2の開口部
223 第1の中空部
224 第2の中空部
231 認証機能
P 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13