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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20250605BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020041269
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021145418
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2024-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】武富 正喜
(72)【発明者】
【氏名】中野 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 実
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】緑川 隆
【審判官】打出 義尚
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527860(JP,A)
【文献】特開2015-104200(JP,A)
【文献】特開2008-86145(JP,A)
【文献】特開2017-22937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の永久磁石を配列させた可動子と、複数の磁極歯それぞれにコイルを巻回させた固定子と、前記可動子の位置を検出するためのリニアエンコーダと、前記コイルに電流を流す駆動回路と、前記駆動回路の制御ゲインを設定して前記駆動回路を制御する制御器とを備えており、前記可動子の可動領域は、第1領域と、該第1領域まで前記可動子が移動する第2領域とを有しているリニアモータであって、
前記第2領域に対応する前記コイルの巻き数を、前記第1領域に対応する前記コイルの巻き数よりも少なくしてあるとともに、前記可動子の位置に応じて、前記可動子が前記第2領域に位置している場合の前記制御ゲインを、前記可動子が前記第1領域に位置している場合の前記制御ゲインよりも大きく設定するようにしてあることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
加工対象物の移動に使用されるリニアモータであって、前記第1領域は、前記加工対象物への加工が行われるための作業領域であり、前記第2領域は、前記加工対象物を前記作業領域まで搬送するための搬送領域であることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記第2領域に対応する前記コイルの巻き数が、前記第1領域に対応する前記コイルの巻き数の1/5~1/3であることを特徴とする請求項1または2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
7個の前記永久磁石と6個の前記磁極歯及びコイルとを有する7極6スロット構成を基本の単位とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子と固定子とを組み合わせて、直線運動出力を取り出すリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、液晶ディスプレイ基板製造設備などにあっては、重力方向に対して垂直な平面内で加工対象物を低振動で精度よく搬送させる機構が必要である。直交配置されたリニアガイド上を独立して移動できるアクチュエータにより、加工対象物を載置したテーブルが移動される。このテーブルの移動には、精度の高さと振動の無さとが要求されるため、一般の加工装置に用いられているような回転機の力をボールねじにより平行移動に変えるような方式は利用されず、直接平行移動が可能なリニアモータが駆動源として利用されている。
【0003】
このようなリニアモータとして、磁性が交互に変わるように複数の永久磁石を配列させた可動子と、複数の磁極歯それぞれに同じ巻き数のコイルを巻回させた固定子とを、所定の距離だけ隔てて対応配置させた構成を有する可動磁石形リニアモータが知られている。極性と大きさとが可動子の界磁周期に対する移動距離に同期した交流電流を固定子のコイルに流すことにより、永久磁石との吸引反発力によって移動方向に推力を発生させて、可動子を固定子に対して直線運動させる。このような構成をなすリニアモータとして、種々のものが提案されている(特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-012963号公報
【文献】特開2015-130754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動磁石形リニアモータにあって、可動子の有効ストローク(可動域の長さ)は、固定子の全長から可動子の全長を引いた値以下である。よって、有効ストロークを長くするためには、可動子の長さを短くする対応、または、固定子の長さを長くする対応が必要となる。前者の対応では、得られる推力が低下するため、所望の大きな推力を提供できず、現実的でない。
【0006】
一方、後者の対応では、固定子を長くするに従って設けるコイルの個数も増加する。結果として、固定子のインダクタンスが増加するため、ストロークが長くなればなるほど、可動子の速度が速くなった場合の推力が低下するという問題がある。
【0007】
ところで、例えばワイヤボンディング処理、フリップチップボンディング処理などを行う加工装置にリニアモータを適用する場合には、リニアモータのストローク全域にわたって均一の大きな推力が必ずしも必要でなく、加工対象物にボンディング処理を施す作業領域では大きな推力を必要とするが、加工対象物を作業領域まで搬送する搬送領域では比較的小さな推力でも十分である。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、作業領域にあって速い速度でも大きな推力を維持できるリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るリニアモータは、複数の永久磁石を配列させた可動子と、複数の磁極歯それぞれにコイルを巻回させた固定子とを備えており、前記可動子の可動領域は、第1領域と、該第1領域まで前記可動子が移動する第2領域とを有しているリニアモータにおいて、前記第2領域に対応する前記コイルの巻き数を、前記第1領域に対応する前記コイルの巻き数よりも少なくしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るリニアモータは、加工対象物の移動に使用されるリニアモータであって、前記第1領域は、前記加工対象物への加工が行われるための作業領域であり、前記第2領域は、前記加工対象物を前記作業領域まで搬送するための搬送領域であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るリニアモータは、前記第2領域に対応する前記コイルの巻き数が、前記第1領域に対応する前記コイルの巻き数の1/5~1/3であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るリニアモータは、7個の前記永久磁石と6個の前記磁極歯及びコイルとを有する7極6スロット構成を基本の単位とすることを特徴とする。
【0013】
本発明のリニアモータにあっては、可動子の可動領域が、第1領域(加工対象物への加工が行われる作業領域)と、第1領域まで可動子が移動する第2領域(加工対象物を作業領域まで搬送するための搬送領域)とを有しており、第2領域(搬送領域)に対応する固定子のコイルの巻き数を、第1領域(作業領域)に対応する固定子のコイルの巻き数よりも少なくしている。言い換えると、有効ストロークの中で、あまり大きな推力を必要としない搬送領域に対応するコイルの巻き数を、大きな推力を必要とする作業領域に対応するコイルの巻き数より少なくしている。有効ストロークの長さが同じである(コイルの個数が同じである)場合に、コイルの巻き数が全域にわたって均一である従前のリニアモータに比べて、本発明のリニアモータでは、固定子のインダクタンスが小さくなるため、速い速度でも大きな推力を維持することが可能である。なお、コイルの巻き数を少なくすることにより推力の低下が懸念されるが、巻き数を少なくしている部分は、小さな推力でも十分である搬送領域に対応させているので、作業領域ではコイルの巻き数低下の影響を受けずに所望の大きな推力を提供することができる。
【0014】
本発明のリニアモータにあっては、第2領域(搬送領域)に対応するコイルの巻き数を、第1領域(作業領域)に対応するコイルの巻き数の1/5~1/3としている。よって、第1領域(作業領域)及び第2領域(搬送領域)それぞれにおいて必要である所望の推力を提供しながら、第1領域(作業領域)にあって速い速度でも大きな推力を維持できる。
【0015】
本発明のリニアモータにあっては、7個の永久磁石と6個のコイルとを有する7極6スロット構成を基本の単位としている。よって、軽量な可動子で高い推力が得られて、高速応答を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリニアモータによれば、あまり大きな推力を必要としない領域に対応するコイルの巻き数を、大きな推力を必要とする領域に対応するコイルの巻き数より少なくするようにしたので、両領域における所望の推力を提供しながら、大きな推力を必要とする領域に関して速い速度でも大きな推力を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のリニアモータの構成を示す斜視図である。
図2】本発明のリニアモータの構成を示す側面図である。
図3】本発明のリニアモータにおける基本ユニットの構成を示す側面図である。
図4】比較例としてのリニアモータの構成を示す側面図である。
図5図2に示すような構成を有するリニアモータと、図4に示すような構成を有するリニアモータとの特性を示すグラフである。
図6】本発明の他の実施の形態によるリニアモータの構成を示す側面図である。
図7】本発明の更に他の実施の形態によるリニアモータの構成を示す側面図である。
図8】本発明の更に他の実施の形態によるリニアモータの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1及び図2は、本発明のリニアモータ1の構成を示す斜視図及び側面図であり、図3は、リニアモータ1における基本ユニットの構成を示す側面図である。本発明のリニアモータ1は、所定距離だけ隔てて対向させた可動子2と固定子3とを有している。
【0020】
まず、図3を参照して、リニアモータ1の基本ユニットの構成について説明する。可動子2の基本ユニットは、7個の矩形状の永久磁石21を、等ピッチで薄板状のバックヨーク22に支持固定して可動方向(図3の左右方向)に並置させて構成される。各永久磁石21は厚さ方向(図3の上下方向)に磁化されており、隣り合う永久磁石21,21同士でその磁化方向は逆向きである。即ち、可動子2側から固定子3側に向かう方向(図3の上から下に向かう方向)に磁化された永久磁石21と、固定子3側から可動子2側に向かう方向(図3の下から上に向かう方向)に磁化された永久磁石21とが交互に配置されている。なお、複数の永久磁石21は、可動方向に対して3度程度傾けたスキュー配置としていても良い。例えば、永久磁石21は、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石などからなり、バックヨーク22は、珪素鋼材などの軟磁性金属で形成される。
【0021】
一方、固定子3の基本ユニットは、薄板状のコア31に可動方向に等ピッチにて6個の矩形状の磁極歯32を一体的に設け、各磁極歯32にコイル33を巻いて構成される。例えば、コア31及び磁極歯32は珪素鋼板を積層して一体的に構成され、コイル33はエナメル被覆導線である。図3におけるU、V、Wは夫々3相交流電源のU相、V相、W相を示し、3相平行通電を行うために、正逆2スロット3対を1セットとした6スロットを基本単位としている。
【0022】
以上のように、本発明のリニアモータ1は、7個の永久磁石21と6個の磁極歯32及びコイル33とを有する7極6スロット構成を基本ユニット(基本の単位)としている。そして、このような構成をなす7極6スロットの基本ユニットを複数繋ぎ合わせて、リニアモータ1が構成される。7極6スロットを基本構成としているので、軽量な可動子で高い推力が得られて、高速応答を実現できる。
【0023】
図2に示す実施の形態では、可動子2の基本ユニット2つ分と固定子3の基本ユニット5つ分とを組み合わせて、リニアモータ1が構成されている。よって、この実施の形態では、可動子2が14個の永久磁石21を有し、固定子3が30個の磁極歯32及びコイル33を有している。そして、リニアモータ1における可動子2の有効ストローク(可動域の長さ)は、固定子3の全長から可動子2の全長を引いた長さであるため、図2に示すリニアモータ1の有効ストロークは、基本ユニット3つ分である。
【0024】
本発明のリニアモータ1は、加工対象物にワイヤボンディング処理を施すワイヤボンダーに適用できる。リニアモータ1の駆動にて加工対象物を作業領域まで搬送させ、その後、作業領域にてリニアモータ1を駆動しながら加工対象物にワイヤボンディング処理を施す。よって、リニアモータ1には、加工対象物を作業領域まで搬送させる搬送領域と、加工対象物に実際にワイヤボンディング処理を施す作業領域とが存在する。具体的には、図2に示すように、基本ユニット2つ分の搬送領域と基本ユニット3つ分の作業領域とが存在する。
【0025】
固定子3のコイル33に3相交流を通電して磁極歯32に磁界を発生させると、この磁界に可動子2の永久磁石21が順次磁気吸引反発することによって可動子2に推力が発生して、可動子2は固定子3に対して直線運動を行う。この推力による直線運動を利用して、作業領域までの加工対象物の搬送と作業領域でのワイヤボンディング処理における加工対象物の移動とが行われる。
【0026】
本発明のリニアモータ1の固定子3にあっては、各磁極歯32に巻かれるコイル33の巻き数を全域にわたって等しくするのではなく、搬送領域に対応するコイル33の巻き数を、作業領域に対応するコイル33の巻き数よりも少なくしている。具体的には、搬送領域(図2の右側の第4ユニット及び第5ユニット)では各コイル33の巻き数を7ターンとし、作業領域(図2の左側の第1ユニット、第2ユニット及び第3ユニット)では各コイル33の巻き数を28ターンとしている。
【0027】
図4は、比較例としてのリニアモータ10の構成を示す側面図である。図4にあって、図2と同一または対応する部分には同じ符号を付している。図4のリニアモータ10は、図2に示す実施の形態と同様に、可動子2の基本ユニット2つ分と固定子3の基本ユニット5つ分とを組み合わせたものである。また、リニアモータ10における可動子2の構成は、リニアモータ1における可動子2の構成と同一である。
【0028】
但し、リニアモータ10とリニアモータ1とでは、固定子3の構成が異なっている。リニアモータ1では、作業領域と搬送領域とで対応するコイル33の巻き数が異なっている(28ターンと7ターン)のに対して、リニアモータ10では、全域にわたってコイル33の巻き数が均一の28ターンである。
【0029】
リニアモータ1がワイヤボンダーに適用される場合、加工対象物を作業領域まで搬送させる搬送領域ではあまり大きな推力を必要とせず、加工対象物にボンディング処理を施す作業領域では所望の大きな推力が必要である。そこで、本発明では比較的小さな推力でも問題がない搬送領域に対応するコイル33の巻き数を、大きな推力が必要である作業領域に対応するコイル33の巻き数より少なくしている。
【0030】
このような構成にすることにより、図4に示すようなコイル33の巻き数を均一とした比較例のリニアモータ10と比べて、固定子3のインダクタンスが小さくなる。この結果、本発明のリニアモータ1では、作業領域にあって、より速い速度でも大きな推力を維持することが可能である。これは、固定子3のインダクタンスが小さくなるため、磁気飽和に達するまでの電流を大きくできるからである。
【0031】
ところで、本発明のリニアモータ1では、コイル33の巻き数を少なくしているので、推力の低下が懸念される。しかしながら、巻き数を少なくしている部分は、小さな推力でも十分である搬送領域だけに対応させているので、作業領域ではコイル33の巻き数低下の影響を受けずに所望の大きな推力を提供することができる。
【0032】
図2に示すような構成を有するリニアモータ1(以下、単に本発明例ともいう)と、図4に示すような構成を有するリニアモータ10(以下、単に比較例ともいう)との特性の比較に関して説明する。
【0033】
図5は、本発明例と比較例との特性を示すグラフである。図5にあって、横軸は速度(m/s)を表し、縦軸は最大推力(N)を表しており、a、bはそれぞれ本発明例の特性、比較例の特性を示している。本発明例及び比較例は何れも最大推力1000Nを提供できる。但し、比較例にあっては最大推力1000Nを最大速度1.4m/sまでしか維持できていないのに対して、本発明例では最大速度1.8m/sまでも最大推力1000Nを維持できている。
【0034】
本発明のリニアモータ1では、搬送領域に対応するコイル33の巻き数を作業領域に対応するコイル33の巻き数の1/4としているので、搬送領域における推力定数は、リニアモータの特性上、作業領域の1/4に減少する。よって、リニアモータ1の駆動回路の制御定数(ゲイン)を全領域にわたって一定とした場合には、不安定な動作を生じることになる。そこで、本実施の形態では、可動子2の現在位置を検出するためのリニアエンコーダを設けて、このリニアエンコーダから得られる可動子2の位置情報に基づき、上位の制御器から駆動回路の制御定数を変更して、安定動作を確保するようにしている。例えば、可動子2が搬送領域に位置している場合には大きな制御定数に設定し、可動子2が作業領域に位置している場合には小さな制御定数に設定し、可動子2が搬送領域及び作業領域を跨いで位置している場合には中間の制御定数に設定するようにして、安定的な等速運動の実現を図る。
【0035】
以下、本発明の他の実施の形態について説明する。図6は、本発明の他の実施の形態によるリニアモータ1の構成を示す側面図である。図6にあって、図2と同一または対応する部分には同じ符号を付している。
【0036】
図6に示す実施の形態では、可動子2の基本ユニット2つ分と固定子3の基本ユニット6つ分とを組み合わせて、リニアモータ1が構成されている。よって、この実施の形態では、可動子2が14個の永久磁石21を有し、固定子3が36個の磁極歯32及びコイル33を有している。そして、図6に示すリニアモータ1の有効ストロークは、基本ユニット4つ分であり、図6に示すように、基本ユニット3つ分の搬送領域と基本ユニット3つ分の作業領域とが存在する。そして、作業領域(左側の第1ユニット、第2ユニット及び第3ユニット)に対応する各コイル33の巻き数を28ターンとしているのに対して、搬送領域(右側の第4ユニット、第5ユニット及び第6ユニット)に対応する各コイル33の巻き数を7ターンと少なくしている。このリニアモータ1でも、前述した本発明例と同様に、最大推力が1000Nであり、最大速度1.8m/sまでこの最大推力を維持できる。
【0037】
図7は、本発明の更に他の実施の形態によるリニアモータ1の構成を示す側面図である。図7にあって、図2と同一または対応する部分には同じ符号を付している。
【0038】
図7に示す実施の形態では、可動子2の基本ユニット2つ分と固定子3の基本ユニット4つ分とを組み合わせて、リニアモータ1が構成されている。よって、この実施の形態では、可動子2が14個の永久磁石21を有し、固定子3が24個の磁極歯32及びコイル33を有している。そして、図7に示すリニアモータ1の有効ストロークは、基本ユニット2つ分であり、図7に示すように、基本ユニット1つ分の搬送領域と基本ユニット3つ分の作業領域とが存在する。そして、作業領域(左側の第1ユニット、第2ユニット及び第3ユニット)に対応する各コイル33の巻き数を28ターンとしているのに対して、搬送領域(右側の第4ユニット)に対応する各コイル33の巻き数を7ターンと少なくしている。全領域にわたってコイルの巻き数を均一とした同様の構成のリニアモータでは最大速度2.2m/sまでしか最大推力1000Nを維持できないのに対して、この図7に示すリニアモータ1では、最大速度2.7m/sまでこの最大推力1000Nを維持できる。
【0039】
図8は、本発明の更に他の実施の形態によるリニアモータ1の構成を示す側面図である。図8にあって、図2と同一または対応する部分には同じ符号を付している。
【0040】
図8に示す実施の形態では、可動子2の基本ユニット1つ分と固定子3の基本ユニット4つ分とを組み合わせて、リニアモータ1が構成されている。よって、この実施の形態では、可動子2が7個の永久磁石21を有し、固定子3が24個の磁極歯32及びコイル33を有している。そして、図8に示すリニアモータ1の有効ストロークは、基本ユニット3つ分であり、図8に示すように、基本ユニット2つ分の搬送領域と基本ユニット2つ分の作業領域とが存在する。そして、作業領域(左側の第1ユニット及び第2ユニット)に対応する各コイル33の巻き数を28ターンとしているのに対して、搬送領域(右側の第3ユニット及び第4ユニット)に対応する各コイル33の巻き数を7ターンと少なくしている。この図8に示すリニアモータ1では、基本ユニット1つ分にて可動子2が構成されているため、最大推力は500Nである。全領域にわたってコイルの巻き数を均一とした同様の構成では最大速度2.9m/sまでしかこの最大推力500Nを維持できないのに対して、本発明のリニアモータ1では、最大速度3.2m/sまでこの最大推力500Nを維持できる。
【0041】
いくつかの実施の形態について説明したが、リニアモータ1は任意の7m極6nスロット構成(m、nは自然数、m<n)を採用でき、作業領域及び搬送領域それぞれを何個の基本ユニットにて構成するかは、適用される加工対象物(半導体ウェハなど)のサイズに応じて決めれば良い。
【0042】
なお、上述した実施の形態では、作業領域に対応するコイル33の巻き数を28ターン、搬送領域に対応するコイル33の巻き数を7ターンとし、前者に対する後者の割合が1/4であることとしたが、これは一例であり、夫々の領域に対応するコイル33の巻き数はこれらに限定されない。搬送領域に対応するコイル33の巻き数は作業領域に対応するコイル33の巻き数の1/5~1/3であることが好ましい。コイル33の巻き数の割合をこのような数値範囲とすることにより、作業領域及び搬送領域それぞれにおいて必要である所望の推力を提供しながら、作業領域にあって速い速度でも大きな推力を維持できる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、ワイヤボンダーに適用する場合について説明したが、ワイヤボンダーと同様に、あまり大きな推力を必要としない加工対象物の搬送処理と大きな推力を必要とする加工対象物への作業処理とを一連に行うフリップチップボンダーなどの他の加工装置にも本発明のリニアモータを適用できる。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、基本構成が7極6スロットである例について説明したが、これに限らず、基本ユニットが8個の永久磁石と9個の磁極歯及びコイルとを有する8極9スロット構成、基本ユニットが10個の永久磁石と9個の磁極歯及びコイルとを有する10極9スロット構成などの他の基本構成をなすリニアモータについても本発明を適用できる。
【0045】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 リニアモータ
2 可動子
3 固定子
21 永久磁石
22 バックヨーク
31 コア
32 磁極歯
33 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8