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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】脱アルキル化ポリフェノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/22 20060101AFI20250605BHJP
【FI】
C12P7/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021050833
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148944
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱川 匡史
(72)【発明者】
【氏名】林 素子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彬
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩明
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-532558(JP,A)
【文献】特開2020-115858(JP,A)
【文献】Biotechnology Letters,1997年,Vol.19, No.12,p.1165-1168
【文献】Applied and Environmental Microbiology,1992年,Vol.58, No.3,p.925-931
【文献】Applied Microbiology and Biotechnology,1990年,Vol.33, No.2,p.233-238
【文献】Arch. Microbiol.,1995年,Vol.163,p.29-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00 - 41/00
C12N 1/00 - 7/08
C12N 15/00 - 15/90
C12N 9/00 - 9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む、8-プレニルナリンゲニンの製造方法。
程:イソキサントフモールを含有する溶液において、イソキサントフモールから8-プレニルナリンゲニンを生成する能力を有するアセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)に属する微生物に、イソキサントフモールから8-プレニルナリンゲニンを生成させる工程
【請求項2】
下記工程を含む、6-ヒドロキシダイゼインの製造方法。
工程:グリシテインを含有する溶液において、グリシテインから6-ヒドロキシダイゼインを生成する能力を有するアセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)に属する微生物に、グリシテインから6-ヒドロキシダイゼインを生成させる工程
【請求項3】
前記アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)に属する微生物が、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)DSM 8239株である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱アルキル化ポリフェノールの製造方法に関する。詳細には、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールから前記アルコキシ基のアルキル基が脱離した脱アルキル化ポリフェノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物中には多様なポリフェノールが存在する。これらをヒトが摂取することにより、抗酸化、抗糖化、抗炎症、抗糖尿病、抗高脂血症、ホルモン代替のほか、抗健忘症などの脳機能改善など、多様な機能が発揮されることが明らかとなってきており、ポリフェノールは、5大栄養素、食物繊維に次いで、第7の栄養素とも言われている(非特許文献1)。
ポリフェノールには、クルクミン、セサミン、SECOなどのリグナン;フェルラ酸などのフェノール酸;カプサイシン、マンゴスチンなどのキサントン;並びに、アントシアニジン(ペツニジンなど)、フラバノン(へスペレチン、ノビレチン、イソキサントフモールなど)、カルコン(キサントフモールなど)、及びイソフラボン(グリシテイン、ビオカニンなど)などのフラボノイド等が含まれる。
そして、ポリフェノールには、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基を有するものが存在し、これらが脱アルコキシ化することにより、水への溶解性の向上、生体への吸収率向上、機能性の増大などが期待される。
【0003】
例えば、イソキサントフモール(フラバノンの一種である。)が脱メチル化した8-プレニルナリンゲニンは、エストロゲン様活性や廃用性筋萎縮抑制活性を有することが知られている(特許文献1)。
また、グリシテイン(イソフラボンの一種である。)が脱メチル化した6-ヒドロキシダイゼインは、エストロゲン様活性を有するエクオールの原料になり得る(特許文献2)。エクオールは女性ホルモン様の生理作用が強いため、更年期症状や骨粗鬆症の予防や改善(特許文献3)、皮膚の老化及びシワの予防や治療(特許文献4)、アレルギー症状の緩和(特許文献5)等への利用が提案されている。
これらの背景から、植物中に含まれる、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールを原料として、該ポリフェノールから該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する工業的な製造方法の開発が求められている。
【0004】
そのような製造方法としては、微生物を利用した製造方法が開発されている。
例えば、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)MRG-PMF1株が、ポリメトキシフラボ
ンを脱メチル化することが報告されている(非特許文献2)。
また、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)ATCC 8486株、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)ATCC 27340株(旧ペプトストレプトコッカス・プロダクタス(Peptostreptococcus productus)ATCC 27340株)が、イソキサントフモールを脱メチル化して8-プレニルナリンゲニンを生成することが報告されている(特許文献6、特許文献7)。
また、ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)JCM 1395株、ブラウティア
・シンキ(Blautia schinkii)DSM 10518株、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium
limosum)に属する微生物が、グリシテインを脱メチル化して6-ヒドロキシダイゼインを生成することが報告されている(特許文献2、特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-35811号公報
【文献】特開2020-058319号公報
【文献】特表2001-523258号公報
【文献】特表2002-511860号公報
【文献】特許4479505号明細書
【文献】特表2008-532558号公報
【文献】特開2020-115858号公報
【文献】特開2010-104241号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】化学と生物, 53, 442-448 (2015)
【文献】S. Burapan, et al., Journal of Agric. Food Chem., 65, 1620-1629 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の課題は、少なくとも、脱アルキル化ポリフェノールを製造する技術の提供である。好ましくは、脱アルキル化フラボノイドを製造する技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>下記工程(a1)を含む、脱アルキル化フラボノイドの製造方法。
工程(a1):側鎖にアルコキシ基を有するフラボノイドを含有する溶液において、前記側鎖にアルコキシ基を有するフラボノイドの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化フラボノイドを生成する能力を有するアセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する微生物に、側鎖にアルコキシ基を有するフラボノイドから該アルコキシ基のアルキル基が脱離した脱アルキル化フラボノイドを生成させる工程
<2>前記アルコキシ基がメトキシ基であり、前記アルキル基がメチル基である、<1>に記載の製造方法。
<3>前記フラボノイドがフラバノンであり、かつ、前記脱アルキル化フラボノイドが脱アルキル化フラバノンである、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4>前記フラボノイドがイソフラボンであり、かつ、前記脱アルキル化フラボノイドが脱アルキル化イソフラボンである、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<5>前記フラバノンがイソキサントフモールであり、前記脱アルキル化フラバノンが8-プレニルナリンゲニンであり、前記アルコキシ基がメトキシ基であり、前記アルキル基がメチル基である、<3>に記載の製造方法。
<6>前記イソフラボンがグリシテインであり、前記脱アルキル化イソフラボンが6-ヒドロキシダイゼインであり、前記アルコキシ基がメトキシ基であり、前記アルキル基がメチル基である、<4>に記載の製造方法。
<7>前記アセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する微生物が、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)に属する微生物である、<1>~<6>のいずれかに記載の製造方法。
<8>前記アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)に属する微生物が、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)DSM 8239株である、<7>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、少なくとも、脱アルキル化ポリフェノールを製造する技術の提供という効果を奏し得、そのための有用な微生物を提供するという効果を奏しうる。好ましくは、脱アルキル化フラボノイドを製造する技術の提供という効果を奏し得る。該技術は微生物による変換反応(発酵)を利用したものである。該技術を用いることで、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールから脱アルキル化ポリフェノールを効率的に製造することができ
る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0011】
本開示において、JCM番号が付与された微生物は、Japan Collection of Microorganisms(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室、郵便番号
:305-0074、住所:茨城県つくば市高野台3-1-1)に保存されている微生物であり、同機
関から入手することができる微生物である。
また、DSM番号が付与された微生物は、DSMZ (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen
und Zellkulturen GmbH、住所:Inhoffenstraβe 7B, 38124 Braunschweig, Germany)に保存されている微生物であり、同機関から入手することができる微生物である。
【0012】
<脱アルキル化ポリフェノールの製造方法>
本開示の一態様は、下記工程(a1)を含む、脱アルキル化ポリフェノールの製造方法である。
工程(a1):側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールを含有する溶液において、前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有するアセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する微生物に、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールから該アルコキシ基のアルキル基が脱離した脱アルキル化ポリフェノールを生成させる工程
【0013】
(側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノール)
前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールは、一のアルコキシ基を有するものであってもよいし、複数のアルコキシ基を有するものであってもよい。いずれも、その原料は特に制限されない。
【0014】
前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールにおける前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。好ましくは、メトキシ基である。
【0015】
前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェールとしては、例えば、側鎖にアルコキシ基を有するフェノール酸、側鎖にアルコキシ基を有するリグナン、側鎖にアルコキシ基を有するクロマン、側鎖にアルコキシ基を有するクマリン、側鎖にアルコキシ基を有するフラボノイド、側鎖にアルコキシ基を有するキサントン、側鎖にアルコキシ基を有する単純フェノール類等が挙げられる。
【0016】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフェノール酸としては、例えば、フェルラ酸(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、アニス酸(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、バニリン酸(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、シリンガ酸(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0017】
前記側鎖にアルコキシ基を有するリグナンとしては、例えば、ピノレシノール(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)、セコイソラリシレシノール(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0018】
前記側鎖にアルコキシ基を有するクロマンとしては、例えば、6-メトキシクロマン(
前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、2-メトキシクロマン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、5-メトキシクロマン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0019】
前記側鎖にアルコキシ基を有するクマリンとしては、例えば、スコパロン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)、スコポレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、イソスコポレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0020】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフラボノイドとしては、例えば、側鎖にアルコキシ基を有するアントシアニジン、側鎖にアルコキシ基を有するフラバン、側鎖にアルコキシ基を有するフラバノール(「側鎖にアルコキシ基を有するカテキン」と称されることもある。)、側鎖にアルコキシ基を有するフラボン、側鎖にアルコキシ基を有するフラボノール、側鎖にアルコキシ基を有するフラバノン、側鎖にアルコキシ基を有するイソフラボン、側鎖にアルコキシ基を有するカルコン等が挙げられる。
【0021】
前記側鎖にアルコキシ基を有するアントシアニジンとしては、例えば、マルビジン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)、ペオニジン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0022】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフラバンとしては、例えば、4’-メトキシフラバン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、3’-メトキシフラバン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、7-メトキシフラバン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0023】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフラバノールとしては、例えば、3’-O-メチルカテキン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、4’-O-メチルエピカテキン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、4’-O-メチルエピガロカテキン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0024】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフラボンとしては、例えば、ノビレチン(前記アルコキシ基が、6個のメトキシ基である。)、シネンセチン(前記アルコキシ基が、5個のメトキシ基である。)、タンゲレチン(前記アルコキシ基が、5個のメトキシ基である。)、オウゴニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0025】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフラボノールとしては、例えば、パツレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、タマリキセチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、シリンゲチン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)、イザルピニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0026】
前記側鎖にアルコキシ基を有するフラバノンとしては、例えば、イソキサントフモール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、ヘスペレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0027】
前記側鎖にアルコキシ基を有するイソフラボンとしては、例えば、グリシテイン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、ビオカニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、ホルモノネチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、テクトリゲニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0028】
前記側鎖にアルコキシ基を有するカルコンとしては、例えば、キサントフモール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0029】
前記側鎖にアルコキシ基を有するキサントンとしては、例えば、α-マンゴスチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、β-マンゴスチン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0030】
側鎖にアルコキシ基を有する単純フェノール類としては、例えば、パエオノール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)、アニソール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)等が挙げられる。
【0031】
(脱アルキル化ポリフェノール)
本開示では、前記工程(a1)により、「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノール」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成したポリフェノールを「脱アルキル化ポリフェノール」と称することがある。
このとき、アルコキシ基と該アルコキシ基から脱離するアルキル基は、アルコキシ基がメトキシ基の場合にはアルキル基はメチル基であり、アルコキシ基がエトキシ基の場合にはアルキル基はエチル基であり、アルコキシ基がプロポキシ基の場合にはアルキル基はプロピル基であり、アルコキシ基がブトキシ基の場合にはアルキル基はブチル基である。好ましくは、アルコキシ基がメトキシ基であり、アルキル基がメチル基である。
【0032】
尚、本開示において、脱アルキル化ポリフェノールは、側鎖に一のアルコキシ基を有するポリフェールから生成する場合には、該一のアルコキシ基のアルキル基が脱離して生成したものであり、また、側鎖に複数のアルコキシ基を有するポリフェールから生成する場合には、該複数のアルコキシ基のうち一のアルコキシ基のアルキル基が脱離して生成したものでもよいし、該複数のアルコキシ基のうち一部のアルコキシ基(一のアルコキシ基でなく、全部のアルコキシ基でもない。)のアルキル基が脱離して生成したものでもよいし、該複数のアルコキシ基のうち全部のアルコキシ基のアルキル基が脱離して生成したものでもよい。
また、側鎖に複数のアルコキシ基を有するポリフェールは、該複数のアルコキシ基がすべて同一のアルコキシ基であってもよいし、異なるアルコキシ基であってもよい。
また、複数のアルコキシ基を有するポリフェールから複数のアルコキシ基(一のアルコキシ基でなく、全部のアルコキシ基でもない。)のアルキル基が脱離した場合、生成した脱アルキル化ポリフェノールにはアルコキシ基が残存しているため、該生成した脱アルキル化ポリフェノールは、前記「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノール」として使用することができる。例えば、3個のアルコキシ基を有するポリフェールから1個のアルコキシ基のアルキル基が脱離した場合、生成した脱アルキル化ポリフェノールには2個のアルコキシ基が残存しているため、該生成した脱アルキル化ポリフェノールは、前記「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノール」として使用することができる。
【0033】
また、上述した、「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノール」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成したポリフェノールを「脱アルキル化ポリフェノール」と称することがあることは、「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノール」の具体例についても同様である。
例えば、「側鎖にアルコキシ基を有するフェノール酸」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フェノール酸」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するリグナン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化リグナン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するクロマン」から該アルコキシ基のアルキル基が
脱離して生成した生成物を「脱アルキル化クロマン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するクマリン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化クマリン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するフラボノイド」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フラボノイド」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するアントシアニジン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化アントシアニジン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するフラバン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フラバン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するフラバノール」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フラバノール」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するフラボン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フラボン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するフラボノール」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フラボノール」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するフラバノン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化フラバノン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するイソフラボン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化イソフラボン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するカルコン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化カルコン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有するキサントン」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化キサントン」と称することがある。
同様に、「側鎖にアルコキシ基を有する単純フェノール類」から該アルコキシ基のアルキル基が脱離して生成した生成物を「脱アルキル化単純フェノール類」と称することがある。
【0034】
前記脱アルキル化フェノール酸としては、例えば、
フェルラ酸(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したカフェ酸、
アニス酸(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したサリチル酸、
バニリン酸(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したプロトカテク酸、
シリンガ酸(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した3-O-メチルガリック酸、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したガリック酸等が挙げられる。
【0035】
前記脱アルキル化リグナンとしては、例えば、
ピノレシノール(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した1,2-ベンゼネディオール、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した3,3’-ビスデメチルピノレシノール、
セコイソラリシレシノール(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したO-デメチルセコイソラリシレシノール、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したジヒドロキシエンテロヂオール等が挙げられる。
【0036】
前記脱アルキル化クロマンとしては、例えば、
6-メトキシクロマン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメ
トキシ基のメチル基が脱離して生成した6-ヒドロキシクロマン、
2-メトキシクロマン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した2-ヒドロキシクロマン、
5-メトキシクロマン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した5-ヒドロキシクロマン等が挙げられる。
【0037】
前記脱アルキル化クマリンとしては、例えば、
スコパロン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)のうち1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したスコポレチン、イソスコポレチン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したエスクレチン、
スコポレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したエスクレチン、
イソスコポレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したエスクレチン等が挙げられる。
【0038】
前記脱アルキル化アントシアニジンとしては、例えば、
マルビジン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)のうち1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したペツニジン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したデルフィニジン、
ペオニジン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したデルフィニジン等が挙げられる。
【0039】
前記脱アルキル化フラバンとしては、例えば、
4’-メトキシフラバン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した4’-ヒドロキシフラバン、
3’-メトキシフラバン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した3’-ヒドロキシフラバン、
7-メトキシフラバン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した7-ヒドロキシフラバン等が挙げられる。
【0040】
前記脱アルキル化フラバノールとしては、例えば、
3’-O-メチルカテキン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したカテキン、
4’-O-メチルエピカテキン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したエピカテキン、
4’-O-メチルエピガロカテキン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したエピガロカテキン等が挙げられる。
【0041】
前記脱アルキル化フラボンとしては、例えば、
ノビレチン(前記アルコキシ基が、6個のメトキシ基である。)のうち、1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した4’-デメチルノビレチン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した3’,4’-ジメチルノビレチン、3個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したシデリトフラボン、4個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したロイカントゲニン、5個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-5,6,8-トリヒドロキシ-7-メトキシ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン、6個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したビタルゲニン、
シネンセチン(前記アルコキシ基が、5個のメトキシ基である。)のうち、1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した4’-デスメチルシネンセチン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した3’,4’-ジヒドロキシ-5,6,7-トリメトキシフラボン、3個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した3’,4’,7’-トリヒドロ
キシ-5,6-ジメチルキシフラボン、4個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したカラジュフラボン、5個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した6-ヒドロキシルテオリン、
タンゲレチン(前記アルコキシ基が、5個のメトキシ基である。)のうち、1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した4’-ヒドロキシ-5,6,7,8-テトラメトキシフラボン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したキサントミクロール、3個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したイソチルムシン、4個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した5,7,8-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-6-メトキシ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン、5個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したノルタンゲレチン、
オウゴニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したノルオウゴニン等が挙げられる。
【0042】
前記脱アルキル化フラボノールとしては、例えば、
パツレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したケルセタゲチン、
タマリキセチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したケルセチン、
シリンゲチン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)のうち1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したラリシトリン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したミリセチン、
イザルピニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したガランギン等が挙げられる。
【0043】
前記脱アルキル化フラバノンとしては、例えば、
イソキサントフモール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した8-プレニルナリンゲニン、
ヘスペレチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したエリオジクチオール等が挙げられる。
【0044】
前記脱アルキル化イソフラボンとしては、例えば、
グリシテイン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した6-ヒドロキシダイゼイン、
ビオカニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したゲニステイン、
ホルモノネチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したダイゼイン、
テクトリゲニン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した6-ヒドロキシゲニステイン等が挙げられる。
【0045】
前記脱アルキル化カルコンとしては、例えば、
キサントフモール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したデメチルキサントフモール等が挙げられる。
【0046】
前記脱アルキル化キサントンとしては、例えば、
α-マンゴスチン(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したγ-マンゴスチン、
β-マンゴスチン(前記アルコキシ基が、2個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したα-マンゴスチン、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したγ-マンゴスチン等が挙げられる。
【0047】
前記脱アルキル化単純フェノール類としては、
例えば、パエオノール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成した4-アセチルレソルシノール、
アニソール(前記アルコキシ基が、1個のメトキシ基である。)の1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したフェノール等が挙げられる。
【0048】
(側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物)
本態様で用いられる、前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物は、前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有するアセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する微生物であれば特に制限されない。
【0049】
前記微生物は、種、株にかかわらず、その一を用いてもよいし二以上を用いてもよい。
尚、前記アセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する微生物は、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する細菌と読み替えることができる。
【0050】
前記アセトバクテリウム(Acetobacterium)属に属する微生物としては、例えば、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)に属する微生物(例えば、DSM 8239株等)、アセトバクテリウム・デハロゲナンス(Acetobacterium dehalogenans)に属する微
生物(例えば、DSM 11527株等)、アセトバクテリウム・ウィエリンゲ(Acetobacterium wieringae)に属する微生物(例えば、DSM 1911株等)、アセトバクテリウム・ウーディ
(Acetobacterium woodii)に属する微生物(例えば、DSM 1030株等)等が挙げられる。
【0051】
アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)DSM 8239株を例にして説明すると、本態様では、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)DSM 8239株は、同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、既出の他の寄託菌株についても同様に適用される。
【0052】
(側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物の静止体)
本態様における、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物は、その静止体を含む。
静止体とは、培養した微生物から遠心分離等の操作により培地成分を取り除き、塩溶液や緩衝液で洗浄し、該洗浄液と同一の液に懸濁した微生物体であって、増殖しない状態の微生物体を指し、本態様においては、少なくとも、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成できる代謝系を有している微生物体をいう。該微生物が、側鎖にアルコキシ基を有するポリフ
ェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する細菌である場合には、前記静止体は静止菌体である。
塩溶液の例としては、生理食塩水等が挙げられる。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、トリス-塩酸緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MOPS緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液等が挙げられる。いずれも、pHや濃度は、常法に従い適宜調製できる。本開示の微生物はいずれも静止体を含む。
【0053】
(側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールを含有する溶液)
本態様における、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールを含有する溶液とは、該溶液において、前記微生物に、側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成させることができるものであれば特に制限されない。好ましくは培地であり、より好ましくは後述する「培地、及び培養による脱アルキル化ポリフェノールの生成」欄に記載した培地である。また、前記微生物が静止体である場合には、前述した塩溶液や緩衝液が好ましい。
尚、本開示における「培地」とは、いずれも、最少培地を含む、微生物が増殖できる溶液をいい、微生物が増殖できない溶液、例えば、前述した塩溶液や緩衝液などを含まないものとする。
【0054】
前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールを該溶液へ添加する場合には、脱アルキル化ポリフェノールの生成前に添加しても、その途中で添加してもよく、また、一括添加、逐次添加、連続添加でもよい。
前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの溶液中の含有量は、通常0.001g/L、好ましくは0.01g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上、さらに好ましくは1g/L以上である。一方、通常100g/L以下、好ましくは20g/L以下、より好ましくは10g/L以下である。
【0055】
(培地、及び培養による脱アルキル化ポリフェノールの生成)
前記工程(a1)では、前記溶液が培地であることが好ましい。該培地は特に限定されないが、例えば、Oxoid社製のANAEROBE BASAL BROTH(ABB培地)、Oxoid社製のWilkins-Chalgren Anaerobe Broth (CM0643)、日水製薬株式会社製のGAM培地、変法GAM培地、ブレ
インハートインヒュージョン培地等を使用することができる。
【0056】
また、培地に水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができる。すなわち、グルコース、アラビノース、ソルビトール、フラクトース、マンノース、スクロース、トレハロース、キシロースなどの糖類;グリセロールなどのアルコール類;吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸、フマル酸などの有機酸類などを挙げることが出来る。
【0057】
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1~10wt/vol%の範囲から添加量を選択することができる。
【0058】
前記の炭素源に加えて、培地に窒素源を加えることができる。窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。
好ましい無機窒素源として、アンモニウム塩、硝酸塩などを、より好ましくは、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダなどを挙げることが出来る。
また、有機窒素源としては、アミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンN、大豆ペプトンなど)、肉エキス(例えばエールリッヒカツオエキス、ラブ-レムコ末、ブイヨンなど)、魚介類エキス、肝臓エキス、消化血清末、魚油などを挙げることが
出来る。
【0059】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、例えば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、脂肪酸など、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
【0060】
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム ビタミンK
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
酢酸ナトリウム三水和物
硫酸マグネシウム七水和物
硫酸マンガン四水和物
【0061】
また、培地中に、システイン、シスチン、硫化ナトリウム、亜硫酸塩、アスコルビン酸、グルタチオン、チオグリコール酸、ルチンなどの還元剤や、カタラーゼ、スーパーオキシドムターゼなどの活性酸素種を分解する酵素を添加することにより生育が良好になることがあるため、その場合には好ましい。
【0062】
培養中の気相、水相としては、空気もしくは酸素を含まないことが好ましく、例えば、窒素及び/又は水素を任意の比率で含むことや、窒素及び/又は二酸化炭素を任意の比率で含むことが挙げられ、水素を含む気相や水相であることが好ましい。気相における水素の割合は、脱アルキル化ポリフェノールの生成が促進されることから、通常0.5 vol%以
上、好ましくは1.0 vol%以上、より好ましくは2.0 vol%以上であり、一方、通常100 vol%以下、好ましくは20 vol%以下、より好ましくは10 vol%以下である。
【0063】
培養中の気相や水相をこのような環境にする方法は特に制限されないが、例えば、培養前に前記ガスで気相を置換する方法、これに加えて、培養中も培養器の底部から供給する及び/又は培養器の気相部に供給する方法、培養前に前記ガスで水相をバブリングするなどの方法をとることが出来る。前記水素は、水素ガスをそのまま用いてもよい。また、培地にギ酸及び/又はその塩などの水素の原料を添加し、微生物の作用により培養中に水素を生成してもよい。
【0064】
通気量としては、好ましくは0.005~2vvmであり、0.05~0.5vvmがより好ましい。また、混合ガスはナノバブルとして供給することもできる。
培養温度は、好ましくは20℃~45℃、より好ましくは25℃~40℃、さらに好ま
しくは30℃~37℃である。
培養器の加圧条件は、生育できる条件であれば特に限定されるものではないが、好ましくは0.001~1MPaの範囲、より好ましくは0.01~0.5MPaである。
培養時間としては、好ましくは8~340時間、より好ましくは12~170時間、さらに好ましくは16~120時間である。
【0065】
また、培養液に界面活性剤、吸着剤、包摂化合物などを添加することにより、脱アルキル化ポリフェノールの生成を促進できることがあるため、その場合には好ましい。
界面活性剤としては、例えば、Tween 80等が挙げられ、0.001g/L以上10g/L以下程度添加することが出来る。
吸着剤としては、例えば、セルロース及びその誘導体;デキストリン;三菱化学株式会社製の疎水吸着剤であるダイアイオンHPシリーズやセパビーズシリーズ;オルガノ株式会社製のアンバーライトXADシリーズなどを挙げることができる。
【0066】
包摂化合物としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、クラスターデキストリン(高度分岐環状デキストリン)のほか、これらの類縁体でもよく、例えば、メチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどを挙げることができる。この中で、γ-シクロデキストリンが最も効果的であることがあるため、その場合には好ましい。また、2種以上の包摂化合物を共存させることにより、脱アルキル化ポリフェノールの生成を更に促進できることがあるため、その場合には好ましい。
添加量としては、前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの総量を1としたときのモル比の総量で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、一方、通常5.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。
【0067】
(静止体による脱アルキル化ポリフェノールの生成)
前記微生物が静止体である場合の溶液は、前記培地の代わりに、前記「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物の静止体」欄に記載した塩溶液や緩衝液が好ましい。
その他の条件については、前記「培地、及び培養による脱アルキル化ポリフェノールの生成」欄の説明と同様である。
【0068】
(その他の工程)
本態様は、例えば、得られた脱アルキル化ポリフェノールを定量する工程を含んでもよい。その方法は常法に従うことができる。たとえば、培養液の一部を採取して適宜希釈し、よく撹拌した後、ポリテロラフルオロエチレン(PTFE)膜などの膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィーで定量することなどが挙げられる。
【0069】
また、本態様は、得られた脱アルキル化ポリフェノールを回収する工程を含んでもよい。当該回収工程は、精製工程や濃縮工程等を含む。精製工程における精製処理としては、熱などによる微生物の殺菌;精密濾過(MF)、限外濾過(UF)などによる除菌;固形物、高分子物質の除去;有機溶媒やイオン性液体などによる抽出;疎水性吸着剤、イオン交換樹脂、活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮工程における濃縮処理としては、エバポレーター、逆浸透膜等による濃縮が挙げられる。
さらに、得られた脱アルキル化ポリフェノールを含む溶液は、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより粉末化することができる。粉末化において、ラクトース、デキストリン、コーンス
ターチ等の賦形剤を添加することもできる。
【0070】
<エクオールの製造方法>
本開示の他の態様は、同一の系で行われる前記工程(a1)及び下記工程(a2)を含み、前記工程(a1)における、前記側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールがグリシテインであって、前記脱アルキル化ポリフェノールが6-ヒドロキシダイゼインである、エクオールの製造方法である。
工程(a2):前記工程(a1)で生成した6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液において、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物に、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成させる工程
【0071】
(6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物)
前記6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液において、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物としては、6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液において、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物であれば特に制限されない。
前記微生物は、通常のスクリーニング方法によって取得することができる。例えば、6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液において微生物を通常の培養方法に従って培養したときに6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成できる微生物を選択すればよい。前記微生物としては、好ましくは細菌である。前記細菌としては、例えば、腸内細菌が挙げられる。
【0072】
前記腸内細菌としては、例えば、アドレクラウチア(Adlercreutzia)属に属する微生
物、ラクトコッカス(Lactoccocus)属に属する微生物、エガセラ(Eggerthella)属に属する微生物、アサッカロバクター(Asaccharobacter)属に属する微生物等が挙げられる

前記微生物は、種、株にかかわらず、その一を用いてもよいし二以上を用いてもよい。
尚、前記アドレクラウチア(Adlercreutzia)属に属する微生物は、アドレクラウチア
(Adlercreutzia)属に属する細菌と、前記ラクトコッカス(Lactoccocus)属に属する微生物は、ラクトコッカス(Lactoccocus)属に属する細菌と、前記エガセラ(Eggerthella)属に属する微生物は、エガセラ(Eggerthella)属に属する細菌と、前記アサッカロバ
クター(Asaccharobacter)属に属する微生物は、アサッカロバクター(Asaccharobacter)属に属する細菌と読み替えることができる。
【0073】
前記アドレクラウチア(Adlercreutzia)属に属する微生物としては、例えば、アドレ
クラウチア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)に属する微生物(
例えば、DSM 19450株等)等が挙げられる。
【0074】
前記ラクトコッカス(Lactoccocus)属に属する微生物としては、例えば、ラクトコッ
カス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)に属する微生物等が挙げられる。
【0075】
前記エガセラ(Eggerthella)属に属する微生物としては、例えば、エガセラ・エスピ
ー(Eggerthella sp)YY 7918株等が挙げられる。
【0076】
前記アサッカロバクター(Asaccharobacter)属に属する微生物としては、例えば、ア
サッカロバクター・セラツス(Asaccharobater celatus)に属する微生物(例えば、DSM 18785株等)等が挙げられる。
【0077】
前記微生物の詳細は既述の通りであるが、アドレクラウチア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)DSM 19450株を例にして説明すると、本態様では、アドレ
クラウチア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)DSM 19450株は、同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、既出の他の寄託菌株についても同様に適用される。
【0078】
(6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する微生物の静止体)
6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する微生物は、その静止体を含む。当該静止体については、前記「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物の静止体」欄の説明と同様である。
【0079】
(6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液)
6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液とは、前記工程(a1)で生成した、前記脱アルキル化ポリフェノールである6-ヒドロキシダイゼインを含有する溶液である。
【0080】
前記工程(a1)で生成した6-ヒドロキシダイゼインとは別に、該溶液に、さらに6-ヒドロキシダイゼインを添加する場合には、エクオールの生成前に添加しても、その途中で添加してもよく、また、一括添加、逐次添加、連続添加でもよい。
溶液中の6-ヒドロキシダイゼインの含有量は、通常0.01g/L以上、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは1g/L以上である。一方、通常100g/L以下、好ましくは20g/L以下、より好ましくは10g/L以下である。
【0081】
(培地、及び培養によるエクオールの生成)
本態様に係るエクオールの製造方法では、前記工程(a1)及び工程(a2)が同一の系で行われる。そのため、工程(a2)における培地条件、及び培養によるエクオールの生成条件は、前記「培地、及び培養による脱アルキル化ポリフェノールの生成」欄の説明と同様である。
【0082】
(静止体によるエクオールの生成)
本態様に係るエクオールの製造方法では、前記工程(a1)及び工程(a2)が同一の系で行われる。そのため、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する微生物が静止体である場合の溶液も、前記「側鎖にアルコキシ基を有するポリフェノールの該アルコキシ基のアルキル基を脱離して脱アルキル化ポリフェノールを生成する能力を有する微生物の静止体」欄に記載した塩溶液や緩衝液であることが好ましい。
その他の条件については、前記「培地、及び培養による脱アルキル化ポリフェノールの生成」欄の説明と同様である。
【0083】
(同一の系)
工程(a1)及び(a2)が同一の系で行われるとは、工程(a1)において6-ヒドロキシダイゼインが生成されてから、該生成した6-ヒドロキシダイゼインが工程(a2)の6-ヒドロキシダイゼインとしてそのまま用いられて、工程(a2)においてエクオールが生成されるまでの一連の流れが、同一の系で連続して行われることをいう。すなわち、工程(a1)と工程(a2)の間に、例えば、工程(a1)で生成した6-ヒドロキ
シダイゼインを分離及び/又は精製する工程などを含まないことをいう。
【0084】
具体例としては、グリシテインから6-ヒドロキシダイゼインを生成する能力を有する微生物と、6-ヒドロキシダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物とを同じ培地に植菌し、培養することにより、エクオールを生成することなどが挙げられる。
【0085】
(その他の工程)
本態様は、例えば、得られたエクオールを定量する工程や、得られたエクオールを回収する工程を含んでもよい。
その詳細は、前記「脱アルキル化ポリフェノールの製造方法」における「その他の工程」欄の説明と同様である。
さらに、エクオールを含む溶液は、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより粉末化することができる。粉末化において、ラクトース、デキストリン、コーンスターチ等の賦形剤を添加することもできる。
【0086】
以下に実施例を記載するが、いずれの実施例も、限定的な意味として解釈される実施例ではない。
【0087】
[実施例1]
ABB培地(Oxoid社製)に、イソキサントフモール(ナカライテスク社製)を添加した後、加熱滅菌し、気相をN:CO:H(80%/10%/10%)ガスで置換したものを基本培地とした。最終濃度5mg/Lのイソキサントフモールを含む培地に、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)DSM 8239株を植菌し、37℃で嫌気的に培養した。培養終了後、培養液5mLに対して等量の酢酸エチル(1.5%ギ酸)でプレニルフラボノイド類を抽出し、得られた酢酸エチル相を回収後、乾固させた。このようにして得た乾固物をメタノール0.5mLに再溶解し、HPLCによりプレニルフラボノイド類の定量分析を行った。
HPLCは以下に記載の条件で行った。LKT Laboratories社製のプレニルフラボノイド類を標品として用い、DMSOに溶解して用いた。
【0088】
<HPLC条件>
カラム:InertsilODS-3(250×4.6mm)(GLScience社製)
溶離液:A液(水/ギ酸=99/1)、B液(アセトニトリル/ギ酸=99/1)、およびB液20%~70%のグラジェント
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:290nm
【0089】
結果を表1に示す。1週間の培養により、基質であるイソキサントフモールの1.35%が8-プレニルナリンゲニンに変換された。
【0090】
【表1】
【0091】
[実施例2]
日水製薬株式会社製変法GAM培地を試験管に5mL分注した。その後、窒素ガスでガス置換し、滅菌した。これを前培養培地とした。
変法GAM培地にグリシテインを54mg/Lとなるように添加し、試験管に10mL分注した。その後、窒素ガスでガス置換し、滅菌した。これを本培養培地とした。
前培養培地に、アセトバクテリウム・バキ(Acetobacterium bakii)DSM 8239株を植菌した後、窒素ガスでガス置換し、37℃、200 spmで1日間培養(前培養)した。
上記前培養した菌株を本培養培地に植菌した後、窒素ガスでガス置換し、37℃、200 spmで7日間培養(本培養)した。
【0092】
培養後の本培養培地から20μLをサンプリングし、希釈液(エタノール:ミリQ水=70:30(v/v))で50倍希釈した。これを0.45μmフィルターでろ過した後に、上清を下記HPLC条件で分析した。
【0093】
<HPLC条件>
カラム:Phenomenex SYNERGI 4μm POLAR-R 150mm×4.6mm
溶離液:蒸留水/メタノール=55/45(v/v)
温度:40℃
検出:280nm
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
時間:30min
【0094】
結果を表2に示す。7日間の培養により、基質であるグリシテインの37.6%が6-ヒドロキシダイゼインに変換された。
【0095】
【表2】
【0096】
[参考例1]
日水製薬株式会社製変法GAM培地を試験管に5mL分注した。その後、窒素ガスでガス置換し、滅菌した。これを前培養培地とした。
変法GAM培地に6-ヒドロキシダイゼインを50mg/Lとなるように添加し、試験管に10mL分注した。その後、窒素ガスでガス置換し、滅菌した。これを本培養培地とした。
前培養培地に、アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobater celatus)DSM 18785
株を植菌した後、窒素ガスでガス置換し、37℃、200 spmで1日間培養(前培養)した

上記前培養した菌株を本培養培地に植菌した後、窒素ガスでガス置換し、37℃、200 spmで3日間培養(本培養)した。
培養後の本培養培地から20μLをサンプリングし、希釈液(エタノール:ミリQ水=70:30(v/v))で50倍希釈した。これを0.45μmフィルターでろ過した後に、上清を下記HPLC条件で分析した。
【0097】
<HPLC条件>
カラム:Phenomenex SYNERGI 4μm POLAR-R 150mm×4.6mm
溶離液:蒸留水/メタノール=55/45(v/v)
温度:40℃
検出:280nm
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
時間:30min
【0098】
結果を表3に示す。3日間の培養により、基質である6-ヒドロキシダイゼインの48.8%がエクオールに変換された。
【0099】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示の一態様に係る製造方法により製造される脱アルキル化ポリフェノールは、化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品、飲食品(サプリメントを含む。)等の原料や素材として有用である。