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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】固体電池及び固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20250605BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20250605BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250605BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250605BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0525
H01M10/0562
H01M10/0565
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021087701
(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公開番号】P2022180935
(43)【公開日】2022-12-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】圷 重光
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真二
(72)【発明者】
【氏名】鋤柄 宜
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-109666(JP,A)
【文献】特開2011-100623(JP,A)
【文献】特開2019-212632(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164642(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110133(WO,A1)
【文献】特開2012-089421(JP,A)
【文献】特開2008-027661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62,10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、複数のバイポーラ電極板と、負極板とを積層させてなる積層体を含む固体電池であり、
前記バイポーラ電極板の積層面には、固体電解質層が形成され
前記バイポーラ電極板の積層面側から見た端面には、固体電解質層が形成される凹部と、固体電解質層が形成されない凸部と、が交互に形成され、
隣接して配置される前記バイポーラ電極板の形状は、互いに鏡像関係にあり、
隣接する前記バイポーラ電極板間において、前記凹部と前記凸部とは互い違いに配置される、固体電池。
【請求項2】
前記正極板又は前記負極板に隣接して配置される前記バイポーラ電極板において、前記凹部は、前記正極板又は前記負極板から延出する電極タブに対応する位置に配置され、かつ前記電極タブの幅よりも広い、請求項に記載の固体電池。
【請求項3】
前記正極板及び前記負極板の積層面には、固体電解質層が形成される、請求項1又は2に記載の固体電池。
【請求項4】
前記バイポーラ電極板の製造工程を含む、請求項1に記載の固体電池の製造方法であって、
前記バイポーラ電極板の製造工程は、
集電板の一方の面に正極材を塗工し、他方の面に負極材を塗工する極材塗工工程と、
電極材が塗工された前記集電板の一部に孔部を形成する穴あけ工程と、
電極材が塗工された前記集電板に固体電解質を塗工する固体電解質塗工工程と、
電極材が塗工された前記集電板を、前記孔部を含む切断線で切断することで、前記集電板の端縁に前記凹部が形成されるように前記集電板を切断する切断工程と、をこの順に備える、固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記バイポーラ電極板の製造工程において、前記穴あけ工程は、隣接する一列の前記孔部同士が互い違いになるように、前記孔部を形成する工程であり、互いに鏡像関係にある2種類の形状の前記バイポーラ電極板が製造される、請求項に記載の固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池及び固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。リチウムイオン二次電池は、正極と負極との間にセパレータを存在させ、液体の電解質を充填した構造を有する。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電解液は、通常、可燃性の有機溶媒であるため、特に、熱に対する安全性が問題となる場合があった。そこで、有機系の液体の電解質に代えて、無機系の固体電解質を用いた固体電池が提案されている。例えば、正極層、負極層、並びに、正極層及び負極層の間に配置される固体電解質層を有する積層体を備える固体電池に関する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
バイポーラ電極板を用いた固体電池においても、バイポーラ電極板間に固体電解質層が積層された構成がとられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-205479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された固体電池は、各電極層の間に加圧成型されたシート状の固体電解質層が配置される。シート状の固体電解質層は強度を要するため、数十μm程度の厚みが必要となる。このため、固体電解質の積層占積率が高くなる点、及び電極間の距離増大により抵抗率が増大する点から改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、固体電解質の積層占積率を低減でき、かつ抵抗率を低減できる、バイポーラ電極板を備える固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、正極板と、1つ又は複数のバイポーラ電極板と、負極板とを積層させてなる積層体を含む固体電池であり、前記バイポーラ電極板の積層面には、固体電解質層が形成される、固体電池に関する。
【0009】
(1)の発明によれば、固体電解質の積層占積率を低減でき、かつ抵抗率を低減できる、バイポーラ電極板を備える固体電池を提供できる。
【0010】
(2) 前記バイポーラ電極板の端面の少なくとも一部には、固体電解質層が形成される、(1)に記載の固体電池。
【0011】
(2)の発明によれば、バイポーラ電極板の端面同士の絶縁を確保できる。
【0012】
(3) 前記バイポーラ電極板は複数のバイポーラ電極板であり、前記バイポーラ電極板の端面には、固体電解質層が形成される凹部と、固体電解質層が形成されない凸部と、が形成され、隣接する前記バイポーラ電極板間において、前記凹部と前記凸部とは互い違いに配置される、(1)又は(2)に記載の固体電池。
【0013】
(3)の発明によれば、シート状の固体電解質層に代えて、電極板上に薄い固体電解質層を形成した場合においても、電極板間の絶縁を確保できる。
【0014】
(4) 前記正極板又は前記負極板に隣接して配置される前記バイポーラ電極板において、前記凹部は、前記正極板又は前記負極板から延出する電極タブに対応する位置に配置され、かつ前記電極タブの幅よりも広い、(3)に記載の固体電池。
【0015】
(4)の発明によれば、バイポーラ電極板の端面と、正極板又は前記負極板から延出する電極タブとの間の絶縁を確保できると共に、正極板及び負極板上に固体電解質層を形成せずに積層体を構成できるため、固体電池の製造工程を簡略化できる。
【0016】
(5) 前記正極板及び前記負極板の積層面には、固体電解質層が形成される、(1)~(4)のいずれかに記載の固体電池。
【0017】
(5)の発明によれば、正極板及び負極板と、バイポーラ電極板の端面との間の絶縁を確保できる積層体を構成できる。
【0018】
(6) 前記バイポーラ電極板は複数のバイポーラ電極板であり、隣接して配置される前記バイポーラ電極板の形状は、互いに鏡像関係にある、(1)~(5)のいずれかに記載の固体電池。
【0019】
(6)の発明によれば、バイポーラ電極板の形状を、バイポーラ電極板の端面同士の絶縁の確保に適した形状とすることができる。
【0020】
(7) また、本発明は、バイポーラ電極板の製造工程を含む固体電池の製造方法であって、前記バイポーラ電極板の製造工程は、集電板の一方の面に正極材を塗工し、他方の面に負極材を塗工する極材塗工工程と、電極材が塗工された前記集電板の一部に孔部を形成する穴あけ工程と、電極材が塗工された前記集電板に固体電解質を塗工する固体電解質塗工工程と、電極材が塗工された前記集電板を、前記孔部を含む切断線で切断することで、前記集電板の端縁に凹部が形成されるように前記集電板を切断する切断工程と、をこの順に備える、固体電池の製造方法に関する。
【0021】
(7)の発明によれば、端面の少なくとも一部に固体電解質層が形成されるバイポーラ電極板を効率よく製造でき、固体電池の製造コストを低減できる。
【0022】
(8) 前記バイポーラ電極板の製造工程において、前記穴あけ工程は、隣接する一列の前記孔部同士が互い違いになるように、前記孔部を形成する工程であり、互いに鏡像関係にある2種類の形状の前記バイポーラ電極板が製造される、(7)に記載の固体電池の製造方法。
【0023】
(8)の発明によれば、互いに鏡像関係にある2種類の形状の前記バイポーラ電極板を1枚のシート状集電板から製造できるため、固体電池の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る積層体の概要を示す図である。
図2A図1のA-A線断面図である。
図2B図1のB-B線断面図である。
図2C図1のC-C線断面図である。
図2D図1のD-D線断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバイポーラ電極板の概要を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るバイポーラ電極板の概要を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る積層体の概要を示す図である。
図6A図5のA-A線断面図である。
図6B図5のB-B線断面図である。
図6C図5のC-C線断面図である。
図6D図5のD-D線断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るバイポーラ電極板の概要を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るバイポーラ電極板の概要を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態に係るバイポーラ電極板の製造工程を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る固体電池用電極の製造工程を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るバイポーラ電極板の製造工程を示す図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る固体電池の製造工程を示すフロー図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る固体電池の製造工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《第1実施形態》
<固体電池>
本実施形態に係る固体電池は、正極板と、バイポーラ電極板と、負極板とを積層させてなる積層体を含む。積層体は外装体に収容され、正極板及び負極板は、それぞれ正極及び負極に対して電気的に接続される。
【0026】
[積層体]
本実施形態に係る積層体1は、図1及び図2A図2Dに示すように、積層両端部に正極板20と、負極板30とが配置され、正極板20と負極板30との間に、2種類のバイポーラ電極板50a及び50bが交互に積層された構成を有する。
【0027】
(正極板)
正極板20は、図2A図2Dに示すように、正極集電板21と、正極集電板21上に形成された正極活物質を含む正極活物質層22と、正極活物質層22上に形成された固体電解質を含む固体電解質層40と、正極集電板21が延出して形成される正極タブ211と、を有する。
【0028】
正極集電板21は、特に限定されるものではなく、固体電池の正極に用いうる公知の集電物質により構成される。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル、鉄、チタン等により構成される。
【0029】
正極活物質層22を構成する正極活物質としては、特に限定されず、リチウムイオン等の電荷移動媒体を吸蔵及び放出することができる公知の材料を適宜選択して用いることができる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、異種元素置換Li-Mnスピネル、リン酸金属リチウム、硫化リチウム、硫黄等が挙げられる。具体的には、LiCoO、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等が挙げられる。正極活物質層22には、正極活物質以外に、任意に、導電助剤や結着剤等が含まれていてもよい。
【0030】
(負極板)
負極板30は、図2A図2Dに示すように、負極集電板31と、負極集電板上に形成された負極活物質を含む負極活物質層32と、負極活物質層32上に形成された固体電解質を含む固体電解質層40と、負極集電板31が延出して形成される負極タブ311と、を有する。
【0031】
負極活物質層32を構成する負極活物質としては、特に限定されず、リチウムイオン等の電荷移動媒体を吸蔵及び放出することができる公知の材料を適宜選択して用いることができる。例えば、チタン酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物、TiO、Nb及びWO等の遷移金属酸化物、Si、SiO、金属硫化物、金属窒化物、並びに人工黒鉛、天然黒鉛、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボン等の炭素材料、並びに金属リチウム、金属インジウム及びリチウム合金等が挙げられる。負極活物質層32には、負極活物質以外に、任意に、導電助剤や結着剤等が含まれていてもよい。
【0032】
(バイポーラ電極板)
バイポーラ電極板50a及び50bは、図2A図2Dに示すように、集電板51の一方の面に分極性電極の正極となる正極活物質層22が形成され、他方の面に分極性電極の負極となる負極活物質層32が形成されてなる電極板である。正極活物質層22及び負極活物質層32の構成は上記と同様の構成を採用できる。正極活物質層22上及び負極活物質層32上には固体電解質を含む固体電解質層40が形成される。集電板51としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼箔等が挙げられる。
【0033】
固体電解質層40は、正極板20、負極板30、並びにバイポーラ電極板50a及び50bの正極活物質層22及び負極活物質層32上に形成される数μm程度の厚みを有する層であり、固体又はゲル状の電解質である固体電解質材料を少なくとも含む層である。上記固体電解質材料を介して、正極活物質及び負極活物質の間の電荷移動を行うことができる。固体電解質層40に含まれる固体電解質材料としては、特に限定されないが、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質材料等を用いることができる。
【0034】
正極活物質層22及び負極活物質層32上に固体電解質層40が形成されることで、固体電解質層40の厚みを数μm程度とすることができるため、固体電解質の積層占積率を低減でき、かつ抵抗率を低減できる。また、以下に説明するバイポーラ電極の構成により、本実施形態に係る固体電池は薄層の固体電解質層を有しながら、電極間の絶縁を確保でき、更に製造工程や構造を簡略化できる利点を有する。
【0035】
バイポーラ電極板50a及び50bの構成を、それぞれ図3図4に示す。図3図4は、正極活物質層22が形成された積層面側から、それぞれバイポーラ電極板50a及び50bを視た図である。バイポーラ電極板50a及び50bの形状は、端面に凸部51a及び凹部52aが交互に形成された、互いに鏡像関係にある形状である。凸部51a端面には、固体電解質層40は形成されず、凹部52a端面には、固体電解質層40が形成される。積層体1においてバイポーラ電極板50a及び50bは、図2A図2Dに示すように交互に積層される。バイポーラ電極板50a及び50bの積層数は、特に限定されず、バイポーラ電極板50a及び50bが交互に積層されていればよい。バイポーラ電極板を単に積層する場合、端面同士の絶縁の確保が問題となるが、上記構成を有するバイポーラ電極板50a及び50bが交互に積層されることにより、バイポーラ電極板50aと50bとの間の絶縁を確保できる。
【0036】
バイポーラ電極板50a及び50bの凸部51a及び凹部52aは、図1に示すように、積層方向から視て互い違いになるように配置されている。また、凹部52aの幅は、凸部51aよりも広い。これにより、図1図2A、及び図2Dに示すように、バイポーラ電極板50a及び50bの凸部51a同士の間に、積層方向から視て絶縁距離L1aを確保でき、積層断面から視て絶縁距離L1bを確保できる。凹部52aの幅は、特に限定されないが、例えば正極タブ211、負極タブ311の幅T1よりも広くすることができ、凸部51aの幅は、例えば幅T1よりも狭くすることができる。
【0037】
バイポーラ電極板50a及び50bの端面には、凸部51a又は凹部52aが形成される。これにより、凹部52aと、正極板20及び負極板30の端面との間は絶縁が確保される。また、図2A図2C、及び図2Dに示すように、正極板20及び負極板30における正極タブ211及び負極タブ311が配置されない端面と、凸部51aとの間には、積層断面から視て絶縁距離L2a及びL2bを確保できる。絶縁距離L2aは、凸部51aを、正極板20及び負極板30の端面よりも外周側に配置することにより確保される。
【0038】
本実施形態において、正極板20及び負極板30に隣接してバイポーラ電極板50aが設けられる。正極タブ211及び負極タブ311には、図2A及び図2Cに示すように、積層面に、タブ延出方向に一定の長さを有する固体電解質層40が形成される。これにより、図1に示すように、正極タブ211及び負極タブ311と、バイポーラ電極板50aの凸部51aとの間に、積層方向から視て絶縁距離L3aを確保できる。更に、図2Aに示すように、正極タブ211と、バイポーラ電極板50bの凸部51aとの間に、積層断面から視て絶縁距離L3bを確保できる。同様に、図2Cに示すように、負極タブ311と、バイポーラ電極板50aの凸部51aとの間に、積層断面から視て絶縁距離L3cを確保できる。
【0039】
<固体電池の製造方法>
本実施形態に係る固体電池の製造方法は、図12に示すように、正極板製造工程S1と、バイポーラ電極板製造工程S2と、負極板製造工程S3と、積層工程S4と、加圧工程S5と、を有する。
【0040】
正極板製造工程S1は、図12に示すように、極材塗工工程S11と、乾燥工程S12と、固体電解質塗工工程S13と、乾燥工程S14と、切断工程15と、をこの順に有する。
【0041】
極材塗工工程S11は、図10に示すように、シート状の正極集電板21の両面に正極活物質層22を形成する工程である。正極活物質層22を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、正極活物質を含む正極合材を調製し、正極合材を正極集電体上に塗布する方法が挙げられる。塗布する方法についても特に限定されるものではなく、例えば、ドクターブレード法、スプレー塗布、スクリーン印刷等が挙げられる。乾燥工程S12は塗布された正極合材を乾燥させる工程であり、乾燥方法としては特に限定されない。
【0042】
固体電解質塗工工程S13は、図10に示すように、両面に正極活物質層22が形成されたシート状の正極集電板21の両面に固体電解質層40を形成する工程である。固体電解質層40を形成する方法は特に限定されず、極材塗工工程S11と同様、ドクターブレード法、スプレー塗布、スクリーン印刷等により固体電解質を塗工する方法が挙げられる。乾燥工程S14は塗布された固体電解質層40を乾燥させる工程であり、乾燥方法としては特に限定されない。
【0043】
切断工程S15は、シート状の正極集電板21を所定の大きさに切断することで、正極タブ211を形成する工程である。
【0044】
バイポーラ電極板製造工程S2は、図12に示すように、極材塗工工程S21と、乾燥工程S22と、穴あけ工程S23と、固体電解質塗工工程S24と、乾燥工程S25と、切断工程26と、をこの順に有する。
【0045】
極材塗工工程S21は、図9に示すように、シート状の集電板51の一方の面に正極活物質層22を形成し、他方の面に負極活物質層32を形成する工程である。具体的な方法としては、極材塗工工程S11及び極材塗工工程S31と同様の工程を採用できる。乾燥工程S22は塗布された正極合材及び負極合材を乾燥させる工程であり、乾燥方法としては特に限定されない。
【0046】
穴あけ工程S23は、両面にそれぞれ正極活物質層22及び負極活物質層32が形成されたシート状の集電板51に孔部を形成する工程である。孔部を形成する方法としては特に限定されず、パンチング金型により穴あけ加工を行う方法、レーザー処理による方法等、従来公知の方法を用いることができる。穴あけ工程S23は、図9に示すように、隣接する一列の孔部同士が互い違いになるように、孔部を形成する工程であることが好ましい。これにより、1枚のシート状の集電板51から、鏡像関係にある2種類の形状を有するバイポーラ電極板50a及び50bを製造することができる。
【0047】
固体電解質塗工工程S24は、図9に示すように、両面にそれぞれ正極活物質層22及び負極活物質層32が形成され、孔部が形成されたシート状の集電板51の両面に固体電解質層40を形成する工程である。固体電解質層40を形成する方法は特に限定されず、極材塗工工程S11等と同様、ドクターブレード法、スプレー塗布、スクリーン印刷等により固体電解質を塗工する方法が挙げられる。孔部が形成された集電板51に対し、固体電解質を塗工することで、孔部の端面に固体電解質が回り込み、孔部の端面に対しても固体電解質層40を形成できる。乾燥工程S25は塗布された固体電解質層40を乾燥させる工程であり、乾燥方法としては特に限定されない。
【0048】
切断工程S26は、シート状の集電板51を、穴あけ工程S23により形成された孔部を含む切断線で切断することで、端面に凸部51a及び凹部52aが形成されたバイポーラ電極板50a及び50bを形成する工程である。
【0049】
上記工程を有するバイポーラ電極板製造工程S2によれば、端面に凸部51a及び凹部52aが形成され、凹部52aの端面に固体電解質層40が形成されたバイポーラ電極板50a及び50bを製造することができる。即ち、シート状の集電板51を切断する前に、孔部の端面に固体電解質を塗工して端面の少なくとも一部に固体電解質層40が形成されたバイポーラ電極板50a及び50bを製造することができるため、バイポーラ電極板50a及び50bの生産効率の観点から好ましい。
【0050】
負極板製造工程S3は、図12に示すように、極材塗工工程S31と、乾燥工程S32と、固体電解質塗工工程S33と、乾燥工程S34と、切断工程35と、をこの順に有する。負極板製造工程S3は、極材塗工工程S31においてシート状の負極集電板31の両面に負極活物質層32を形成する工程であること以外は、正極板製造工程S1と同様の工程である。
【0051】
積層工程S4は、正極板製造工程S1により製造された正極板20と、バイポーラ電極板製造工程S2により製造されたバイポーラ電極板50a及び50bと、負極板製造工程S3により製造された負極板30とを積層する工程である。積層工程S4において、バイポーラ電極板50a及び50bは交互に積層され、積層両端部に正極板20及び負極板30が配置される。
【0052】
加圧工程S5は、積層された正極板20、バイポーラ電極板50a及び50b、並びに負極板30をプレス機等で挟んで加圧することで一体化させる工程である。
【0053】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。上記で説明した構成と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
【0054】
《第2実施形態》
[積層体]
図5は、第2実施形態に係る固体電池の積層体1aの概要を示す図である。積層体1aは、図5及び図6A図6Dに示すように、積層両端部に正極板20aと、負極板30aとが配置され、正極板20aと負極板30aとの間に、2種類のバイポーラ電極板50c及び50dが交互に積層された構成を有する。
【0055】
本実施形態において、図6A図6Dに示すように、正極板20a及び負極板30aの積層面には固体電解質層40が形成されない。従って、正極タブ211及び負極タブ311の表面にも固体電解質層は形成されていない。このため、積層体1aの製造工程を簡略化できる。一方で、積層体1aにおいては、正極タブ211及び負極タブ311と、隣接するバイポーラ電極板との間の絶縁を確保する必要がある。
【0056】
バイポーラ電極板50c及び50dの構成を、それぞれ図7図8に示す。図7図8は、正極活物質層22が形成された積層面側から、それぞれバイポーラ電極板50c及び50dを視た図である。バイポーラ電極板50c及び50dの形状は、端面に凸部51b及び凹部52bが交互に形成された、互いに鏡像関係にある形状である。凸部51bには、固体電解質層40は形成されず、凹部52bには、固体電解質層40が形成される。積層体1aにおいてバイポーラ電極板50c及び50dは、図6A図6Dに示すように交互に積層される。
【0057】
本実施形態において、正極板20aに隣接して配置されるバイポーラ電極板は、バイポーラ電極板50cであり、負極板30aに隣接して配置されるバイポーラ電極板は、バイポーラ電極板50dである。このため、本実施形態におけるバイポーラ電極板の積層数は偶数である。
【0058】
バイポーラ電極板50cの端面に形成される凹部52bは、図5及び図7に示すように、幅T1を有する正極タブ211に対応する位置に配置される。同様に、バイポーラ電極板50dの端面に形成される凹部52bは、図5及び図7に示すように、幅T1を有する負極タブ311に対応する位置に配置される。凹部52bは、正極タブ211及び負極タブ311の幅よりも広い凹部であり、端面に固体電解質層40が形成される。これにより、正極タブ211と隣接するバイポーラ電極板50cとの間の絶縁、及び負極タブ311と隣接するバイポーラ電極板50dとの間の絶縁を確保できる。
【0059】
図5図6A、及び図6Dに示すように、バイポーラ電極板50c及び50dの凸部51a同士の間に、積層方向から視て絶縁距離L1cを確保でき、積層断面から視て絶縁距離L1bを確保できる。
【0060】
図5A、及び図5Dに示すように、正極板20及び負極板30における正極タブ211及び負極タブ311が配置されない端面と、凸部51aとの間には、積層断面から視て絶縁距離L2a及びL2bを確保できる。
【0061】
図5に示すように、正極タブ211と、バイポーラ電極板50cの凸部51aとの間に、積層方向から視て絶縁距離L3dを確保できる。負極タブ311と、バイポーラ電極板50dの凸部51aと、についても同様である。更に、図6Aに示すように、正極タブ211と、バイポーラ電極板50dの凸部51aとの間に、積層断面から視て絶縁距離L3bを確保できる。同様に、図6Cに示すように、負極タブ311と、バイポーラ電極板50cの凸部51aとの間に、積層断面から視て絶縁距離L3cを確保できる。即ち、正極板20a及び負極板30aと隣接するバイポーラ電極板の正極タブ211及び負極タブ311に対応する位置には、端面に固体電解質層40が形成された凹部52bが設けられている。これにより、正極板20a及び負極板30aが固体電解質層40を有していなくても、各バイポーラ電極板の凸部51aとの間に絶縁距離L3b、L3c、及びL3dを確保できる。
【0062】
<固体電池の製造方法>
本実施形態に係る固体電池の製造方法は、図13に示すように、正極板製造工程S1aと、バイポーラ電極板製造工程S2aと、負極板製造工程S3aと、積層工程S4と、加圧工程S5と、を有する。
【0063】
正極板製造工程S1a及び負極板製造工程S3aは、固体電解質塗工工程S13及びS33と、乾燥工程S14及びS34と、を有していないこと以外は、正極板製造工程S1及び負極板製造工程S3と同様の工程である。
【0064】
バイポーラ電極板製造工程S2aは、図13に示すように、極材塗工工程S21と、乾燥工程S22と、穴あけ工程S23aと、固体電解質塗工工程S24と、乾燥工程S25と、切断工程26と、をこの順に有する。バイポーラ電極板製造工程S2aの各工程は、穴あけ工程S23aが異なる点以外はバイポーラ電極板製造工程S2と同様の工程である。
【0065】
穴あけ工程S23aは、図11に示すように、両面にそれぞれ正極活物質層22及び負極活物質層32が形成されたシート状の集電板51に孔部を形成する工程である。孔部を形成する方法としては、第1実施形態と同様の方法を採用できる。穴あけ工程S23aは、穴あけ工程S23と同様に、図11に示すように、隣接する一列の孔部同士が互い違いになるように、孔部を形成する工程であることが好ましい。これにより、1枚のシート状の集電板51から、鏡像関係にある2種類の形状を有するバイポーラ電極板50c及び50dを製造することができる。
【0066】
穴あけ工程S23aは、1枚のシート状の集電板51から、シートの流れ方向に沿って2列のバイポーラ電極板を製造できるように、集電板51に孔部を形成する。2列のバイポーラ電極板は、隣り合うバイポーラ電極板同士が互いに鏡像関係にある形状となるように製造される。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、適宜変更を加えたものも本発明の範囲に含まれる。第1実施形態の固体電池の製造方法に係る、バイポーラ電極板製造工程S2の穴あけ工程S23を、図9を用いて説明し、第2実施形態の固体電池の製造方法に係る、バイポーラ電極板製造工程S2aの穴あけ工程S23aを、図11を用いて説明した。上記に限定されない。図9に示す穴あけ工程、及び図11に示す穴あけ工程は、それぞれ穴あけ工程S23、穴あけ工程S23aのいずれにも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1、1a、1b 積層体
20、20a、20b 正極板
211 正極タブ(電極タブ)
30、30a、30b 負極板
311 負極タブ(電極タブ)
40 固体電解質層
50a、50b、50c、50d バイポーラ電極板
51a、51b 凸部
52a、52b 凹部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13