(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-05
(45)【発行日】2025-06-13
(54)【発明の名称】電子装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250606BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20250606BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20250606BHJP
G06F 1/28 20060101ALI20250606BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H02J7/10 N
H02J7/04 A
H02J7/04 H
G06F1/28
(21)【出願番号】P 2023536679
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2022026752
(87)【国際公開番号】W WO2023002845
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021120373
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】増田 義晴
(72)【発明者】
【氏名】西住 友里
(72)【発明者】
【氏名】松本 和之
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-130798(JP,A)
【文献】特開2005-165545(JP,A)
【文献】特開2011-257219(JP,A)
【文献】特開2006-129588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/10
H02J 7/04
G06F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池に充電する充電回路と、
前記蓄電池の電力により動作する負荷装置と、
前記蓄電池の充電電圧及び放電電圧を検出する電圧センサと、
前記蓄電池の充電電流及び放電電流を検出する電流センサと、
制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記充電電圧及び前記充電電流に基づいて前記蓄電池の内部抵抗を計算し、
前記放電電圧と、前記放電電流と、前記内部抵抗とに基づいて、前記負荷装置が前記蓄電池から取得可能な最大電力を示す許容電力を計算し、
前記負荷装置が前記許容電力以下の電力で動作するように前記負荷装置に制御信号を送り、
前記蓄電池の充電時において、
前記蓄電池の充電を一時的に停止するように前記充電回路を制御し、
前記蓄電池の充電を停止する直前における前記充電電圧である第1の電圧を検出し、
前記蓄電池の充電を停止してから1秒以下の予め決められた待機時間の経過後における前記蓄電池の第2の電圧を検出し、
前記蓄電池の充電を停止する直前における前記充電電流である第1の電流を検出し、
前記第1及び第2の電圧の電位差を前記第1の電流により除算することで前記内部抵抗を計算し、
前記第2の電圧の検出後、前記蓄電池の充電を再開するように前記充電回路を制御する、
電子装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記充電電圧に基づいて前記蓄電池の充電率を計算し、
前記充電率がしきい値に到達したか否かを判断し、
前記充電率が前記しきい値に到達したと判断したとき、前記蓄電池の充電を一時的に停止するように前記充電回路を制御する、請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記蓄電池の充電の一時的な停止、前記内部抵抗の計算、及び前記蓄電池の充電の再開を繰り返すことで、複数の内部抵抗を取得し、
前記放電電圧と、前記放電電流と、前記複数の内部抵抗の平均とに基づいて、前記許容電力を計算する、請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記充電電圧に基づいて前記蓄電池の充電率を計算し、
前記充電率が前記繰り返しの回数に応じたしきい値に到達したか否かを判断し、
前記充電率が前記繰り返しの回数に応じたしきい値に到達したと判断したとき、前記蓄電池の充電を一時的に停止するように前記充電回路を制御する、請求項3記載の電子装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
以前に計算された内部抵抗と、計算された前記内部抵抗との移動平均を計算し、
前記放電電圧と、前記放電電流と、前記移動平均とに基づいて、前記許容電力を計算する、請求項1~4のうちの1つに記載の電子装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
以前に計算された内部抵抗と、前記以前に計算された内部抵抗の重みと、計算された前記内部抵抗と、計算された前記内部抵抗の重みとを用いて、加重移動平均を計算し、
前記放電電圧と、前記放電電流と、前記加重移動平均とに基づいて、前記許容電力を計算する、請求項1~4のうちの1つに記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子装置は、前記蓄電池の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御回路は、前記蓄電池の温度に基づいて前記内部抵抗及び前記許容電力を補正する、請求項1~4のうちの1つに記載の電子装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記放電電圧が予め決められたしきい値より小さくなった場合、
1より大きい予め決められた補正係数により前記内部抵抗を増大させるように前記内部抵抗を補正し、
前記放電電圧と、前記放電電流と、前記補正された内部抵抗とに基づいて、前記許容電力を計算する、請求項1~4のうちの1つに記載の電子装置。
【請求項9】
前記負荷装置は演算回路を含む、請求項1~4のうちの1つに記載の電子装置。
【請求項10】
前記演算回路は、
互いに異なる電力でそれぞれ動作する複数のパフォーマンス状態を有し、
前記制御信号に従って、前記演算回路が前記許容電力以下の電力で動作するように、前記複数のパフォーマンス状態のうちの1つで選択的に動作する、請求項9記載の電子装置。
【請求項11】
蓄電池と、蓄電池の電力により動作する負荷装置とを備えた電子装置の制御方法であって、
前記蓄電池の充電電圧及び充電電流に基づいて前記蓄電池の内部抵抗を計算ステップと、
前記蓄電池の放電電圧及び放電電流と、前記内部抵抗とに基づいて、前記負荷装置が前記蓄電池から取得可能な最大電力を示す許容電力を計算するステップと、
前記負荷装置が前記許容電力以下の電力で動作するように前記負荷装置を制御するステップとを含み、
前記蓄電池の充電時において、
前記蓄電池の充電を一時的に停止するステップと、
前記蓄電池の充電を停止する直前における前記充電電圧である第1の電圧を検出するステップと、
前記蓄電池の充電を停止してから1秒以下の予め決められた待機時間の経過後における前記蓄電池の第2の電圧を検出するステップと、
前記蓄電池の充電を停止する直前における前記充電電流である第1の電流を検出するステップと、
前記第1及び第2の電圧の電位差を前記第1の電流により除算することで前記内部抵抗を計算するステップと、
前記第2の電圧の検出後、前記蓄電池の充電を再開するステップと、をさらに含む、電子装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型のパーソナルコンピュータなどの電子装置は、装着又は接続された蓄電池によって供給される電力により動作する。このような電子装置は、蓄電池によって供給可能な電力の範囲内で動作するように、その電力消費を制御することが求められる。
【0003】
特許文献1は、マスタデバイスとして動作する複数のプロセッサとスレーブデバイスとして動作する複数のデバイスを備える電子装置において、そのピーク電力を制御する技術を開示している。特許文献1の電子装置は、バッテリー装置により供給される電力により動作する場合、デバイスの全消費電力がバッテリー残量から計算される所定値以下であるとき、デバイスを利用することをプロセッサに許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
蓄電池は、使用し続けることにより劣化し、その結果、供給可能な電力及び電力量が減少する。従って、蓄電池の設計値のみに基づいて蓄電池のエネルギー残量を計算する場合、蓄電池が劣化すると、蓄電池によって供給可能な電力を正確に計算することができなくなる。
【0006】
本開示は、従来よりも高精度に電力消費を制御することができる電子装置及びその制御方法を提供する。
【0007】
本開示の一態様に係る電子装置は、
蓄電池と、
前記蓄電池に充電する充電回路と、
前記蓄電池の電力により動作する負荷装置と、
前記蓄電池の充電電圧及び放電電圧を検出する電圧センサと、
前記蓄電池の充電電流及び放電電流を検出する電流センサと、
制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記充電電圧及び前記充電電流に基づいて前記蓄電池の内部抵抗を計算し、
前記放電電圧と、前記放電電流と、前記内部抵抗とに基づいて、前記負荷装置が前記蓄電池から取得可能な最大電力を示す許容電力を計算し、
前記負荷装置が前記許容電力以下の電力で動作するように前記負荷装置に制御信号を送る。
【0008】
本開示の一態様に係る電子装置によれば、従来よりも高精度に電力消費を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電子装置1の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の充電回路11の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の制御回路14によって実行される充電制御処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3のステップS1~S11を繰り返し実行することによる内部抵抗Ra(1)~Ra(6)の計算を説明するグラフである。
【
図5】
図3のステップS3~S8を実行することによる内部抵抗Ra(i)の計算を説明するグラフである。
【
図6】
図3のステップS8において使用される、バッテリーセル12aの温度Tempに関する補正係数を示すテーブルである。
【
図7】
図1の制御回路14によって実行される放電制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のステップS24において充電率範囲Cdを計算するために使用されるテーブルである。
【
図9】
図7のステップS25においてバッテリーパック12から出力可能な最大電力W1を決定するために使用されるテーブルである。
【
図10】
図1の制御回路14によって実行される割り込み処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
[実施形態]
[実施形態の構成]
図1は、実施形態に係る電子装置1の構成を示すブロック図である。電子装置1は、バッテリーパック12を備え、バッテリーパック12によって供給される電力により動作可能である。電子装置1は、例えば、携帯型のパーソナルコンピュータ(例えば、ノートブック型コンピュータ、タブレット型コンピュータ)、携帯電話機などであってもよい。電子装置1は、AC/DC変換器3を介して交流電源2に接続される。AC/DC変換器3は、交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換して電子装置1に供給し、電子装置1は、AC/DC変換器3から供給された電力により動作し、また、内部のバッテリーパック12に充電する。
【0013】
電子装置1は、充電回路11、バッテリーパック12、DC/DC変換器13、制御回路14、スイッチSW、及び負荷装置20を備える。
【0014】
図1において、太線は電力線を示し、細線は信号線を示す。
【0015】
充電回路11は、AC/DC変換器3から供給された電力により、バッテリーパック12に充電する。充電回路11は、バッテリーパック12の充電率に応じて可変な電圧及び可変な電流で、例えば、定電流モード、定電圧モード、及び定電力モードのいずれかで、バッテリーパック12に電力を供給する。
【0016】
バッテリーパック12は、複数のバッテリーセル12a、電流センサ12b、電圧センサ12c、温度センサ12d、及び不揮発性メモリ12eを備える。各バッテリーセル12aは、充放電可能な二次電池である。複数のバッテリーセル12aは、互いに直列及び/又は並列に接続され、それらの全体として所定の内部抵抗Rdを有する。バッテリーパック12の内部抵抗Rdは、後述するように制御回路14によって計算される。電流センサ12bは、充電回路11からバッテリーパック12に供給される電流(以下、バッテリーパック12の「充電電流Ib」ともいう)を検出して充電回路11及び制御回路14に通知する。また、電流センサ12bは、バッテリーパック12からDC/DC変換器13を介して負荷装置20に供給される電流(以下、バッテリーパック12の「放電電流Id」ともいう)を検出して制御回路14に通知する。電圧センサ12cは、バッテリーパック12の正極及び負極にわたる電圧を検出して充電回路11及び制御回路14に通知する。以下、充電時及び放電時におけるバッテリーパック12の電圧をそれぞれ、バッテリーパック12の「充電電圧Vb」及び「放電電圧Vd」ともいう。温度センサ12dは、各バッテリーセル12aの温度を検出して制御回路14に通知する。不揮発性メモリ12eは、制御回路14によって計算されたバッテリーパック12の内部抵抗Rdを格納する。
【0017】
バッテリーパック12は、電子装置1に対して着脱可能であるように構成されてもよく、電子装置1に内蔵されてもよい。
【0018】
バッテリーパック12は、蓄電池の一例である。
【0019】
スイッチSWは、AC/DC変換器3から供給された電力と、バッテリーパック12から放電された電力とのうちの一方を、制御回路14の制御下で選択的に、DC/DC変換器13に供給する。
【0020】
DC/DC変換器13は、AC/DC変換器3から供給された電力又はバッテリーパック12から放電された電力により、1つの直流電圧又は互いに異なる複数の直流電圧を発生し、発生した直流電圧を負荷装置20に供給する。
【0021】
制御回路14は、充電回路11、スイッチSW、及び負荷装置20の中央処理装置(CPU)21の動作を制御する。制御回路14は、例えば、コンピュータのためのEC(Embedded Controller)と呼ばれるタイプのマイクロコントローラであってもよい。
【0022】
負荷装置20は、中央処理装置(CPU)21、メモリ22、記憶装置23、表示装置24、入力装置25、及び通信インターフェース(I/F)26を備える。CPU21は、記憶装置23に格納されたプログラムを実行し、負荷装置20の他の構成要素22~26の動作を制御する。メモリ22は、電子装置1の動作に必要なプログラム及びデータを一時的に記憶する。記憶装置23は、電子装置1の動作に必要なプログラム及びデータを格納する。記憶装置23は、例えば、ソリッドステートドライブ又はハードディスクドライブを含んでもよい。表示装置24は、CPU21によって実行されたプログラムの結果を表示する。入力装置25は、電子装置1の動作を制御するユーザ入力を受ける。入力装置25は、例えば、キーボード及びポインティングデバイスを含む。通信インターフェース26は、有線回線及び/又は無線回線を介して外部装置に通信可能に接続される。通信インターフェース26は、USB(Universal Serial Bus)など、周辺機器に接続するためのインターフェースを含んでもよい。
【0023】
CPU21は、互いに異なる電力でそれぞれ動作する複数のパフォーマンス状態を有する。これらのパフォーマンス状態は、例えば、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)仕様書によって定義される、Pxパフォーマンス状態(x=0,1,…,n)であってもよい。ここで、「n」は、CPU21に依存する予め決められた最大値である。P0パフォーマンス状態において、CPU21は、その最大性能で動作し、最大の電力を消費する。P1パフォーマンス状態において、CPU21は、P0パフォーマンス状態の場合よりも低い性能で動作し、P0パフォーマンス状態の場合よりも小さな電力で動作する。以後、「Px」の数字が増大するにつれてCPU21の性能及び消費電力が低下し、Pnパフォーマンス状態において、CPU21は、アクティブ状態を維持しながら、その最低性能で動作し、最小の電力を消費する。
【0024】
CPU21は、演算回路の一例である。
【0025】
図2は、
図1の充電回路11の構成を示すブロック図である。充電回路11は、DC/DC変換器31、充電制御回路32、基準電圧源33、及び比較器34を備える。DC/DC変換器31は、例えば、複数のスイッチング素子、インダクタ、及びパルス幅変調回路などを備える、昇降圧型の電力変換器である。充電制御回路32は、電圧センサ12cによって検出された充電電圧Vb及び電流センサ12bによって検出された充電電流Ibに基づいて、DC/DC変換器31の動作を制御する。具体的には、充電制御回路32は、充電電圧Vb及び充電電流Ibに基づいてバッテリーパック12の充電率を計算し、充電率に応じて所望電圧及び所望電流を発生するように、DC/DC変換器31の各スイッチング素子のスイッチング周波数及びデューティ比を制御する。また、充電制御回路32は、制御回路14からの制御信号に従って、バッテリーパック12の充電を一時停止及び再開する。基準電圧源33は、所定のしきい値電圧Vminを表す基準電圧を発生する。しきい値電圧Vminは、電子装置1の瞬断が発生するおそれがある低い電圧を示す。比較器34は、電圧センサ12cによって検出された放電電圧Vdがしきい値電圧Vminよりも小さくなったとき、割り込み信号を発生して制御回路14及びCPU21に送る。
【0026】
再び
図1を参照すると、制御回路14は、バッテリーパック12の充電電圧Vb及び充電電流Ibに基づいて、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを計算する。制御回路14は、バッテリーパック12の放電電圧Vd、放電電流Id、及び内部抵抗Rdに基づいて、CPU21がバッテリーパック12から取得可能な最大電力を示す許容電力Wを計算する。制御回路14は、CPU21が許容電力W以下の電力で動作するようにCPU21に制御信号を送る。
【0027】
また、制御回路14は、バッテリーパック12の放電電圧Vdが低下して電子装置1の瞬断が発生するおそれがあるとき、内部抵抗Rdを補正して許容電力Wを再計算する。
【0028】
CPU21は、制御回路14からの制御信号に従って、CPU21が許容電力以下の電力で動作するように、複数のパフォーマンス状態のうちの1つで選択的に動作する。
【0029】
制御回路14は、CPU21の熱管理の目的で、CPU21に対して何らかのしきい値電力を設定してもよい。例えば、インテル コーポレーションのintel(登録商標) coreプロセッサによって使用されるPL4(Power Limit 4)のしきい値電力を設定し、PL4を超える電力スパイクを防ぐようにCPU21の動作周波数を制限してもよい。
【0030】
[実施形態の動作]
制御回路14は、以下に説明する充電制御処理、放電制御処理、及び割り込み処理を実行することにより、電子装置1の動作を制御する。
【0031】
[充電制御処理]
図3は、
図1の制御回路14によって実行される充電制御処理を示すフローチャートである。バッテリーパック12は、使用し続けることにより劣化して内部抵抗Rdが増大し、その結果、供給可能な電力及び電力量が減少する。充電制御処理において、制御回路14は、バッテリーパック12に充電しながら、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを測定する。
【0032】
ステップS1において、制御回路14は、パラメータiを1に設定する。本実施形態では、バッテリーパック12の内部抵抗を測定するために、制御回路14は、バッテリーパック12の充電中に内部抵抗を複数N回にわたって測定し、複数個の内部抵抗の平均を計算する。パラメータiは、内部抵抗の測定回数を表すパラメータである。
【0033】
ステップS2において、制御回路14は、バッテリーパック12の充電率のしきい値Th(i)を設定する。本実施形態では、制御回路14は、バッテリーパック12の充電率が予め決められた複数のしきい値Th(i)のいずれかに到達するごとに、バッテリーパック12の内部抵抗Ra(i)を測定する。
【0034】
図4は、
図3のステップS1~S11を繰り返し実行することによる内部抵抗Ra(1)~Ra(6)の計算を説明するグラフである。
図4の例では、バッテリーパック12の充電率について、6個のしきい値Th(1)=65%、Th(2)=70%、Th(3)=75%、Th(4)=80%、Th(5)=85%、及びTh(6)=90%を使用する。すなわち、複数のしきい値Th(i)は、ステップS1~S11の繰り返しの回数(パラメータi:内部抵抗の測定回数)に応じた値である。ここでは、パラメータiが大きくなるほど、複数のしきい値Th(i)は大きくなっている。
図4の例では、制御回路14は、バッテリーパック12の充電率がしきい値Th(1)~Th(6)に到達するごとに、対応するバッテリーパック12の内部抵抗Ra(1)~Ra(6)をそれぞれ測定する。
【0035】
再び
図3を参照すると、ステップS3において、制御回路14は、電圧センサ12cを用いてバッテリーパック12の充電電圧Vbを測定し、電流センサ12bを用いてバッテリーパック12の充電電流Ibを測定する。制御回路14は、例えば数十ミリ秒~数百ミリ秒の頻度で、充電電圧Vb及び充電電流Ibを周期的に測定してもよい。ステップS3においてさらに、制御回路14は、バッテリーパック12の充電電圧Vbに基づいて、バッテリーパック12の充電率を計算する。基本的に、蓄電池の電圧と充電率とには一定の関係があるので、電圧から充電率を概算することができる。
【0036】
ステップS4において、制御回路14は、バッテリーパック12の充電率がしきい値Th(i)に到達したか否かを判断し、YESのときはステップS5に進み、NOのときはステップS3に戻る。
【0037】
ステップS5において、制御回路14は、バッテリーパック12の充電を一時的に停止するように充電回路11を制御する。
【0038】
ステップS6において、制御回路14は、バッテリーパック12の充電を停止してから1秒以下の予め決められた待機時間の経過後、電圧センサ12cを用いてバッテリーパック12の電圧Vaを検出する。
【0039】
ステップS7において、制御回路14は、温度センサ12dを用いて各バッテリーセル12aの温度Tempを測定する。
【0040】
ステップS8において、制御回路14は、バッテリーパック12の電圧Va,Vb、電流Ib、及び温度Tempに基づいて、バッテリーパック12の内部抵抗Ra(i)を計算する。
【0041】
図5は、
図3のステップS3~S8を実行することによる内部抵抗Ra(i)の計算を説明するグラフである。
図5の上段は、電圧センサ12cによって検出されるバッテリーパック12の電圧を示し、
図5の下段は、電流センサ12bによって検出されるバッテリーパック12の電流を示す。
図5の例では、バッテリーパック12の電圧が電圧Vbに到達したとき、バッテリーパック12の充電率がしきい値Th(i)に到達する。このため、時刻t1において、バッテリーパック12の充電が一時的に停止され、バッテリーパック12の電流はゼロになる。制御回路14は、バッテリーパック12の充電を停止する直前における電圧Vb及び電流Ibを取得する。その後、制御回路14は、バッテリーパック12の充電を停止してから1秒間の待機時間の経過後、時刻t2において、バッテリーパック12の電圧Vaを取得する。制御回路14は、次式のように電圧Vb,Vaの電位差を電流Ibにより除算することで、内部抵抗Ra(i)を計算する。一例において、バッテリーパック12の充電を停止する「直前」とは、時刻t1から1秒以内の時刻を意味する。
Ra(i)=(Vb-Va)/Ib
バッテリーパック12の内部抵抗は、複素インピーダンスZ=R+jXで表され、抵抗成分R及びリアクタンス成分Xに分解することができる。内部抵抗の計算におけるリアクタンス成分Xの寄与分が大きいと、内部抵抗の計算値が過大になり、バッテリーパック12によって供給可能な電力を小さく見積もってしまうことになる。従って、内部抵抗の計算におけるリアクタンス成分Xの寄与分を低減し、専ら抵抗成分Rに基づいて内部抵抗を計算することが求められる。本発明者らは、バッテリーパック12の充電を停止する直前の電圧Vbと、バッテリーパック12の充電を停止してから1秒以下の待機時間の経過後の電圧Vaとの電位差に基づいて内部抵抗Ra(i)を計算することにより、リアクタンス成分Xの寄与分を低減し、専ら抵抗成分Rを抽出できることを実験的に確認した。
【0042】
図6は、
図3のステップS8において使用される、バッテリーセル12aの温度Tempに関する補正係数を示すテーブルである。各バッテリーセル12aの温度Tempが変動すると、バッテリーパック12によって供給可能な電力もまた変動する。従って、制御回路14は、バッテリーセル12aの温度Tempに基づいて内部抵抗Ra(i)を補正する。具体的には、制御回路14は、内部抵抗Ra(i)を測定したときの各バッテリーセル12aの温度Tempに応じて、内部抵抗Ra(i)に補正係数kを乗算する。
図6の例では、温度Tempは、T1<25度<T2<T3の順で次第に増大する。補正係数kは、各温度T1,T2,T3で測定された内部抵抗を、25℃の常温で測定された内部抵抗に換算するように設定される。
【0043】
再び
図3を参照すると、ステップS9において、制御回路14は、電圧Vaの検出後、バッテリーパック12の充電を再開するように充電回路11を制御する(
図5の時刻t3を参照)。制御回路14は、例えばバッテリーパック12の充電を停止してから60秒後に、バッテリーパック12の充電を再開してもよい。
【0044】
ステップS10において、制御回路14は、パラメータiが予め決められた最大値N(
図4の例では、N=6)に到達したか否かを判断し、YESのときはステップS12に進み、NOのときはステップS11に進む。言いかえると、ステップS10において、制御回路14は、予め決められたすべてのしきい値Th(i)に対応するすべての内部抵抗Ra(i)を計算したか否かを判断する。
【0045】
ステップS11において、制御回路14は、パラメータiを1だけインクリメントして、ステップS2に戻る。制御回路14は、バッテリーパック12の充電の一時的な停止(ステップS5)、内部抵抗Ra(i)の計算(ステップS8)、及びバッテリーパック12の充電の再開(ステップS9)を繰り返すことで、複数の内部抵抗Ra(1)~Ra(N)を取得する。
【0046】
ステップS12において、制御回路14は、内部抵抗Ra(1)~Ra(N)の平均により内部抵抗Rmを計算する。例えば、
図4に示すように、バッテリーパック12の充電中に内部抵抗Ra(i)を6回測定する場合には、平均の内部抵抗Rmは次式により計算される。
Rm=[Ra(1)+Ra(2)+…+Ra(6)]/6
制御回路14は、平均の内部抵抗Rmを計算する前に、取得された内部抵抗Ra(1)~Ra(N)が外れ値であるか否かを判断してもよい。この場合、制御回路14は、外れ値である内部抵抗Ra(i)を除外し、残りの内部抵抗Ra(j)(1≦j≦N,i≠j)の平均により内部抵抗Rmを計算する。
【0047】
また、制御回路14は、許容される内部抵抗の下限値Rmin及び上限値Rmaxを予め設定し、計算された内部抵抗Rmが下限値Rminよりも小さい又は上限値Rmaxよりも大きい場合、内部抵抗Rmの値を丸めてもよい。例えば、Rm>Rmaxである場合、測定結果Rm=Rmaxとして処理してもよい。
【0048】
ステップS13において、制御回路14は、不揮発性メモリ12eから、以前に計算された内部抵抗Rdを内部抵抗Rd(old)として読み出す。
【0049】
ステップS14において、制御回路14は、以前に計算された内部抵抗Rd(old)と、新たに計算された内部抵抗Rmとの移動平均により、更新された内部抵抗Rd(new)を計算する。例えば、以前に計算された内部抵抗Rd(old)に対して3/4の重み付けを与える場合、更新された内部抵抗Rd(new)は次式により計算される。
Rd(new)=Rd(old)×3/4+Rm×1/4
以上のように、制御回路14は、以前に計算された内部抵抗Rd(old)と、内部抵抗Rd(old)の重み(3/4)と、新たに計算された内部抵抗Rmと、内部抵抗Rmの重み(1/4)とを用いて、更新された内部抵抗Rd(new)としての加重移動平均を計算している。ステップS15において、制御回路14は、更新された内部抵抗Rd(new)を内部抵抗Rdとして不揮発性メモリ12eに格納し、処理を終了する。
【0050】
図3の充電制御処理によれば、バッテリーパック12に充電しながら、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを測定することができる。
【0051】
図3の充電制御処理によれば、バッテリーパック12の充電を停止する直前の電圧Vbと、バッテリーパック12の充電を停止してから1秒以下の待機時間の経過後の電圧Vaとの電位差に基づいて内部抵抗Ra(i)を計算することにより、リアクタンス成分Xの寄与分を低減し、専ら抵抗成分Rを抽出することができる。従って、
図3の充電制御処理によれば、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを高精度に測定することができる。
【0052】
図3の充電制御処理では、バッテリーパック12の充電を停止してから電圧Vaを測定するまでの待機時間は、内部抵抗Rdの抵抗成分Rが、電解液移動抵抗、リード抵抗、及び電荷移動抵抗などに起因する高周波成分を含むように設定される。待機時間の下限は、制御時に発生する負荷の継続時間以上に設定される。待機時間の上限は任意であるが、待機時間を増大させると、前述したように、内部抵抗の計算におけるリアクタンス成分Xの寄与分が大きくなって内部抵抗の計算値が過大になり、バッテリーパック12によって供給可能な電力を小さく見積もってしまうことになる。
【0053】
電子装置1がAC/DC変換器3を介して交流電源2に接続されているのであれば、電子装置1の電源がオフされているときであっても、制御回路14は
図3の充電制御処理を実行してもよい。これにより、電子装置1の電源がオフされているときであっても、バッテリーパック12に充電し、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを測定することができる。
【0054】
[放電制御処理]
図7は、
図1の制御回路14によって実行される放電制御処理を示すフローチャートである。放電制御処理は、外部の交流電源2及びAC/DC変換器3から電子装置1への電力供給が停止したとき、バッテリーパック12から負荷装置20に電力を供給するために実行される。
【0055】
ステップS21において、制御回路14は、外部の交流電源2及びAC/DC変換器3から電子装置1への電力供給が停止したとき、バッテリーパック12からの放電を開始するようにスイッチSWを制御する。それに代わって、制御回路14は、電子装置1が交流電源2及びAC/DC変換器3に接続されていない状態で電子装置1の電源がオンされたとき、バッテリーパック12からの放電を開始してもよい。
【0056】
ステップS22において、制御回路14は、不揮発性メモリ12eから内部抵抗Rdを読み出す。
【0057】
ステップS23において、制御回路14は、電圧センサ12cを用いてバッテリーパック12の放電電圧Vdを測定し、電流センサ12bを用いてバッテリーパック12の放電電流Idを測定し、温度センサ12dを用いてバッテリーパック12の温度Tempを測定する。
【0058】
ステップS24において、制御回路14は、バッテリーパック12の放電電圧Vd及び放電電流Idに基づいて、充電率が複数の充電率範囲Cdのうちのいずれに含まれるかを決定する。
【0059】
図8は、
図7のステップS24において充電率範囲Cdを計算するために使用されるテーブルである。
図8の例では、Cd0は、0~49%の充電率を表し、Cd50は、50~79%の充電率を表し、Cd80は、80~100%の充電率を表す。制御回路14は、放電電圧Vd及び放電電流Idに基づいて、充電率が充電率範囲Cd0、Cd50、及びCd80のうちのいずれに含まれるかを決定する。
【0060】
前述したように、基本的に、蓄電池の電圧と充電率とには一定の関係があり、無負荷であれば、電圧から充電率を概算することができる。しかしながら、負荷がある場合、すなわち、放電電流(又は充電電流)が流れている場合には、流れた電流の大きさに応じて電圧が変位するので、充電率範囲Cdを決定するために電流の大きさも参照する。
【0061】
再び
図7を参照すると、ステップS25において、制御回路14は、バッテリーパック12の充電率範囲Cd及び温度Tempに基づいて、バッテリーパック12から出力可能な最大電力W1を決定する。最大電力W1は、バッテリーパック12の内部抵抗Rdが最大値Rmaxに等しい場合にバッテリーパック12から出力可能な最大の電力を示す。
【0062】
図9は、
図7のステップS25においてバッテリーパック12から出力可能な最大電力W1を決定するために使用されるテーブルである。制御回路14は、充電率範囲Cd及び温度Tempに基づいて、最大電力W1が10W、20W、30W、40W、及び45Wのうちのいずれであるかを決定する。
【0063】
再び
図7を参照すると、ステップS26において、制御回路14は、バッテリーパック12から出力可能な最大電力W1と、バッテリーパック12の内部抵抗Rdとに基づいて、次式を用いて、CPU21がバッテリーパック12から取得可能な最大電力を示す許容電力Wを計算する。
W=(W1-W2)×((Rmax+Re)/(Rd+Re))+W2
ここで、W2は、電子装置1のCPU21以外の構成要素によって消費される電力などを含む、バッテリーパック12から出力しなければならない最小電力を示す。また、Reは、バッテリーパック12の内部抵抗Rd以外の電子装置1の回路抵抗を示す。
【0064】
前述したように、バッテリーパック12から出力可能な最大電力W1は、バッテリーパック12の充電率範囲Cdに基づいて決定され、充電率範囲Cdは、バッテリーパック12の放電電圧Vd及び放電電流Idに基づいて決定される。従って、等価的に、許容電力Wは、バッテリーパック12の放電電圧Vd、放電電流Id、及び内部抵抗Cdに基づいて決定される。また、バッテリーパック12から出力可能な最大電力W1は、バッテリーパック12の温度Tempに基づいて決定されているので、等価的に、許容電力Wは、温度Tempによって補正されている。
【0065】
ステップS27において、制御回路14は、許容電力WをCPU21に設定する。これにより、CPU21は、許容電力W以下の電力のみをバッテリーパック12から取得するように、複数のパフォーマンス状態のうちの1つに設定される。
【0066】
ステップS28において、制御回路14は、電圧センサ12cを用いてバッテリーパック12の放電電圧Vdを測定し、電流センサ12bを用いてバッテリーパック12の放電電流Idを測定し、温度センサ12dを用いてバッテリーパック12の温度Tempを測定する。
【0067】
ステップS29において、制御回路14は、ステップS28において測定された放電電圧Vd、放電電流Id、及び温度Tempのいずれかが、以前に測定された対応する値から有意に変動したか否かを判断し、YESのときはステップS24に戻り、NOのときはステップS28に戻る。ここで、「有意に変動する」とは、
図8のテーブルにおいて充電率範囲Cdの変更が必要になるほど放電電圧Vdもしくは放電電流Idが変化すること、又は、
図9のテーブルにおいて最大電力W1の変更が必要になるほど充電率範囲Cd又は温度Tempが変化することを意味する。
【0068】
図7の放電制御処理によれば、
図3の充電制御処理を行うことによって測定されたバッテリーパック12の内部抵抗Rdに基づいてCPU21の許容電力を設定することができる。これにより、正確な内部抵抗Rdに基づいて、CPU21の電力消費を従来よりも高精度に制御することができる。
【0069】
[割り込み処理]
図10は、
図1の制御回路14によって実行される割り込み処理を示すフローチャートである。割り込み処理は、電子装置1がバッテリーパック12から放電された電力により動作している場合(すなわち、
図7の放電制御処理の実行中)、バッテリーパック12の放電電圧が低下して電子装置1の瞬断が発生するおそれがあるときに実行される。
【0070】
前述したように、充電回路11は、電圧センサ12cによって検出された放電電圧Vdがしきい値電圧Vminよりも小さくなったとき、割り込み信号を発生して制御回路14及びCPU21に送る。
【0071】
割り込み信号は、例えば、インテル コーポレーションのintel coreプロセッサによって使用されるprochot信号であってもよい。prochot信号は、プロセッサが高温であるときにアサートされ、プロセッサをPnパフォーマンス状態に遷移させる。prochot信号を用いることにより、CPU21は、アクティブ状態を維持しながら、その最低性能で動作し、最小の電力を消費する状態に遷移させるので、電子装置1の瞬断が回避される。
【0072】
ステップS31において、制御回路14は、充電回路11から割り込み信号を受信する。
【0073】
ステップS32において、制御回路14は、不揮発性メモリ12eから内部抵抗Rdを読み出す。
【0074】
ステップS33において、制御回路14は、1より大きい予め決められた補正係数、例えば1.05により、内部抵抗Rdを増大させるように内部抵抗Rdを補正する。
【0075】
ステップS34において、制御回路14は、補正された内部抵抗Rdを不揮発性メモリ12eに格納する。
【0076】
ステップS35において、制御回路14は、電圧センサ12cを用いてバッテリーパック12の放電電圧Vdを測定し、電流センサ12bを用いてバッテリーパック12の放電電流Idを測定し、温度センサ12dを用いてバッテリーパック12の温度Tempを測定する。
【0077】
ステップS36において、制御回路14は、
図7のステップS24と同様に、バッテリーパック12の放電電圧Vd及び放電電流Idに基づいて、充電率が複数の充電率範囲Cdのうちのいずれに含まれるかを決定する。
【0078】
ステップS37において、制御回路14は、
図7のステップS25と同様に、バッテリーパック12の充電率範囲Cd及び温度Tempに基づいて、バッテリーパック12から出力可能な最大電力W1を決定する。
【0079】
ステップS38において、制御回路14は、
図7のステップS26と同様に、バッテリーパック12から出力可能な最大電力W1と、バッテリーパック12の内部抵抗Rdとに基づいて、CPU21がバッテリーパック12から取得可能な最大電力を示す許容電力Wを計算する。
【0080】
ステップS39において、制御回路14は、許容電力WをCPU21に設定する。これにより、CPU21は、prochot信号に応じて開始されたPnパフォーマンス状態を終了し、許容電力W以下の電力のみをバッテリーパック12から取得するように、複数のパフォーマンス状態のうちの1つに設定される。
【0081】
ステップS39の実行後、制御回路14は、
図7の放電制御処理に戻る。
【0082】
内部抵抗Rdを実際より小さく計算してしまった場合、実際の許容電力Wより大きな値がCPU21に設定されてしまう。
図10の割り込み処理によれば、バッテリーパック12の放電電圧が低下して電子装置1の瞬断が発生するおそれがあるとき、内部抵抗Rdを補正して許容電力Wを再計算することにより、電子装置1の瞬断を回避しながら、CPU21の電力消費を高精度に制御することができる。
【0083】
[実施形態の効果等]
本開示の一態様に係る電子装置1は、バッテリーパック12と、バッテリーパック12に充電する充電回路11と、バッテリーパック12の電力により動作する負荷装置20と、バッテリーパック12の充電電圧及び放電電圧を検出する電圧センサ12cと、バッテリーパック12の充電電流及び放電電流を検出する電流センサ12bと、制御回路14とを備える。制御回路14は、充電電圧及び充電電流に基づいてバッテリーパック12の内部抵抗を計算し、放電電圧と、放電電流と、内部抵抗とに基づいて、負荷装置20がバッテリーパック12から取得可能な最大電力を示す許容電力を計算し、負荷装置20が許容電力以下の電力で動作するように負荷装置20に制御信号を送る。
【0084】
このように、測定されたバッテリーパック12の内部抵抗Rdに基づいて負荷装置20の許容電力を設定することにより、従来よりも高精度に電力消費を制御することができる。
【0085】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、制御回路14は、バッテリーパック12の充電時において、バッテリーパック12の充電を一時的に停止するように充電回路11を制御してもよい。この場合、制御回路14は、バッテリーパック12の充電を停止する直前におけるバッテリーパック12の充電電圧(第1の電圧)を検出する。また、制御回路14は、バッテリーパック12の充電を停止してから1秒以下の予め決められた待機時間の経過後におけるバッテリーパック12の第2の電圧を検出する。また、制御回路14は、バッテリーパック12の充電を停止する直前における充電電流である第1の電流を検出する。また、制御回路14は、第1及び第2の電圧の電位差を第1の電流により除算することで内部抵抗を計算する。また、制御回路14は、第2の電圧の検出後、バッテリーパック12の充電を再開するように充電回路11を制御する。
【0086】
このように、バッテリーパック12の充電を停止する直前の電圧Vbと、バッテリーパック12の充電を停止してから1秒以下の待機時間の経過後の電圧Vaとの電位差に基づいて内部抵抗Ra(i)を計算することにより、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを高精度に測定することができる。
【0087】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、制御回路14は、バッテリーパック12の充電の一時的な停止、内部抵抗の計算、及びバッテリーパック12の充電の再開を繰り返すことで、複数の内部抵抗を取得してもよい。この場合、制御回路14は、放電電圧と、放電電流と、複数の内部抵抗の平均とに基づいて、許容電力を計算する。
【0088】
このように、複数の内部抵抗の平均を計算することにより、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを高精度に測定することができる。
【0089】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、制御回路14は、以前に計算された内部抵抗と、新たに計算された内部抵抗との移動平均を計算してもよい。この場合、制御回路14は、放電電圧と、放電電流と、内部抵抗の移動平均とに基づいて、許容電力を計算する。
【0090】
このように、内部抵抗の移動平均を計算することにより、バッテリーパック12の内部抵抗Rdを高精度に測定することができる。
【0091】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、電子装置1は、バッテリーパック12の温度を検出する温度センサ12dをさらに備えてもよい。この場合、制御回路14は、バッテリーパック12の温度に基づいて内部抵抗及び許容電力を補正する。
【0092】
このように、バッテリーパック12の温度に基づいて内部抵抗及び許容電力を補正することにより、高精度に電力消費を制御することができる。
【0093】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、制御回路14は、放電電圧が予め決められたしきい値より小さくなった場合、1より大きい予め決められた補正係数により内部抵抗を増大させるように内部抵抗を補正してもよい。この場合、制御回路14は、放電電圧と、放電電流と、補正された内部抵抗とに基づいて、許容電力を計算する。
【0094】
このように、内部抵抗Rdを補正して許容電力Wを再計算することにより、電子装置1の瞬断を回避しながら、負荷装置20の電力消費を高精度に制御することができる。
【0095】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、負荷装置20は演算回路を含んでもよい。
【0096】
これにより、CPU21などの演算回路の電力消費を従来よりも高精度に制御することができる。
【0097】
本開示の一態様に係る電子装置1によれば、演算回路は、互いに異なる電力でそれぞれ動作する複数のパフォーマンス状態を有してもよい。この場合、制御回路14は、制御信号に従って、演算回路が許容電力以下の電力で動作するように、複数のパフォーマンス状態のうちの1つで選択的に動作する。
【0098】
これにより、CPU21などの演算回路の電力消費を従来よりも高精度に制御することができる。
【0099】
本開示の一態様に係る電子装置1の制御方法は、バッテリーパック12と、バッテリーパック12の電力により動作する負荷装置とを備えた電子装置を制御する。本方法は、バッテリーパック12の充電電圧及び充電電流に基づいてバッテリーパック12の内部抵抗を計算するステップを含む。本方法は、バッテリーパック12の放電電圧及び放電電流と、内部抵抗とに基づいて、負荷装置がバッテリーパック12から取得可能な最大電力を示す許容電力を計算するステップを含む。本方法は、負荷装置が許容電力以下の電力で動作するように負荷装置を制御するステップを含む。
【0100】
このように、測定されたバッテリーパック12の内部抵抗Rdに基づいて負荷装置20の許容電力を設定することにより、従来よりも高精度に電力消費を制御することができる。
【0101】
[他の実施形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0102】
そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0103】
制御回路14は、CPU21に限らず、互いに異なる電力でそれぞれ動作する複数のパフォーマンス状態を有する任意の演算回路を制御してもよい。演算回路は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などであってもよい。
【0104】
図1の例では、放電電圧Vdがしきい値電圧Vminよりも小さくなったとき、充電回路11が割り込み信号を発生して制御回路14及びCPU21に送っている。それに代わって、制御回路14が、しきい値電圧Vminを表す基準電圧を発生する基準電圧源を備え、放電電圧Vdがしきい値電圧Vminよりも小さくなったとき、制御回路14が割り込み信号を発生してCPU21に送ってもよい。
【0105】
各バッテリーセル12aの仕様に応じて、
図6に示すものとは異なる温度Temp及び補正係数kが使用されてもよい。また、各バッテリーセル12aの仕様に応じて、
図8に示すものとは異なる他の充電率範囲Cdが使用されてもよい。また、各バッテリーセル12aの仕様に応じて、
図9に示すものとは異なる範囲及び個数を有する他の最大電力W1が使用されてもよい。
【0106】
図6の例では、温度Temp及び補正係数kのテーブルを用いてバッテリーパック12の内部抵抗Ra(i)を補正したが、制御回路14は、テーブルに代えて何らかの計算式を用いて内部抵抗Ra(i)を補正してもよい。また、
図8の例では、放電電圧Vd及び放電電流Idのテーブルを用いて充電率範囲Cdを決定したが、制御回路14は、テーブルに代えて何らかの計算式を用いて充電率範囲Cdを計算してもよい。また、
図9の例では、充電率範囲Cd及び温度Tempのテーブルを用いて最大電力W1を決定したが、制御回路14は、テーブルに代えて何らかの計算式を用いて最大電力W1を計算してもよい。
【0107】
電流センサ12b及び電圧センサ12cは、バッテリーパック12の外部に設けられてもよい。
【0108】
バッテリーパック12が着脱可能ではなく電子装置1に内蔵される場合、バッテリーパック12の内部抵抗は、制御回路14の内部の不揮発性メモリに格納されてもよい。
【0109】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0110】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0111】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本開示の一態様に係る電子装置によれば、従来よりも高精度に電力消費を制御することができ、電子装置のユーザビリティを向上することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 電子装置
2 交流電源
3 AC/DC変換器
11 充電回路
12 バッテリーパック
12a バッテリーセル
12b 電流センサ
12c 電圧センサ
12d 温度センサ
12e 不揮発性メモリ
13 DC/DC変換器
14 制御回路
20 負荷装置
21 中央処理装置(CPU)
22 メモリ
23 記憶装置
24 表示装置
25 入力装置
26 通信インターフェース(I/F)
31 DC/DC変換器
32 充電制御回路
33 基準電圧源
34 比較器
SW スイッチ