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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-05
(45)【発行日】2025-06-13
(54)【発明の名称】介護用衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20250606BHJP
【FI】
A41D13/12 145
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2025016351
(22)【出願日】2025-02-03
【審査請求日】2025-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508142664
【氏名又は名称】橋本 由喜江
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】橋本 由喜江
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3168019(JP,U)
【文献】特開2023-12712(JP,A)
【文献】米国特許第10555568(US,B1)
【文献】中国実用新案第207574572(CN,U)
【文献】特開2006-97139(JP,A)
【文献】特開2020-111870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/12
A41D11/00
A41D10/00
A41D1/00-1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者が着用するための介護用衣服であって、
前記被介護者の胴体の左前面を覆う左前身頃と、
前記被介護者の前記胴体の右前面を覆い、前端部が前記左前身頃の前端部と重ね合わされる右前身頃と、
前記左前身頃の後端部と前記右前身頃の後端部との間に接続され、前記被介護者の前記胴体の背面を覆う後身頃と、
前記左前身頃の前記前端部に配置された第1の係合面と、
前記右前身頃の前記前端部に配置され、前記第1の係合面と着脱可能に係合される第2の係合面と、を備え、
前記第1の係合面は、
前記左前身頃の前記前端部の上下方向に沿って間隔を置いて配置された一対の第1の幅広部と、
前記一対の第1の幅広部の間に配置され、前記一対の第1の幅広部の各々の横幅よりも狭い横幅の第1の幅狭部と、を有し、
前記第2の係合面は、
前記右前身頃の前記前端部の上下方向に沿って間隔を置いて配置され、前記一対の第1の幅広部とそれぞれ重ね合わされる一対の第2の幅広部と、
前記一対の第2の幅広部の間に配置された第2の幅狭部であって、前記第1の幅狭部と重ね合わされ、前記一対の第2の幅広部の各々の横幅よりも狭い横幅の第2の幅狭部と、を有する
介護用衣服。
【請求項2】
前記一対の第1の幅広部の各々の横幅は、前記第1の幅狭部に近付くにつれて漸増した後に漸減し、
前記一対の第2の幅広部の各々の横幅は、前記第2の幅狭部に近付くにつれて漸増した後に漸減する
請求項1に記載の介護用衣服。
【請求項3】
前記介護用衣服は、さらに、
前記後身頃の下端部から延在し、前端部が前記左前身頃の下端部及び前記右前身頃の下端部と重ね合わされることにより、前記被介護者の股間部を覆う股覆い部と、
前記左前身頃の前記下端部に配置された第3の係合面と、
前記右前身頃の前記下端部に配置された第4の係合面と、
前記股覆い部の前記前端部に配置され、前記第3の係合面及び前記第4の係合面の各々と着脱可能に係合される第5の係合面と、を備える
請求項1又は2に記載の介護用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者が着用するための介護用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば寝たきりの高齢者等の被介護者が着用するための介護用衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の介護用衣服は、前身頃と、後身頃とを備えている。前身頃は、襟ぐりから裾にかけて延在するオープンファスナにより、前開き可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3233336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の介護用衣服では、例えば被介護者が胃ろうの処置を受けている場合、被介護者の腹部から外部に延びる胃ろう用のカテーテル(チューブ)を通すために、前身頃のオープンファスナを開ける必要がある。この時、被介護者の胸元や腹部がはだけてしまい、被介護者が不快感を覚えるおそれがあるという課題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、被介護者の胸元や腹部がはだけるのを抑制しながら、胃ろう用のカテーテル等を通すための通し口を容易に形成することができる介護用衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る介護用衣服は、被介護者が着用するための介護用衣服であって、前記被介護者の胴体の左前面を覆う左前身頃と、前記被介護者の前記胴体の右前面を覆い、前端部が前記左前身頃の前端部と重ね合わされる右前身頃と、前記左前身頃の後端部と前記右前身頃の後端部との間に接続され、前記被介護者の前記胴体の背面を覆う後身頃と、前記左前身頃の前記前端部に配置された第1の係合面と、前記右前身頃の前記前端部に配置され、前記第1の係合面と着脱可能に係合される第2の係合面と、を備え、前記第1の係合面は、前記左前身頃の前記前端部の上下方向に沿って間隔を置いて配置された一対の第1の幅広部と、前記一対の第1の幅広部の間に配置され、前記一対の第1の幅広部の各々の横幅よりも狭い横幅の第1の幅狭部と、を有し、前記第2の係合面は、前記右前身頃の前記前端部の上下方向に沿って間隔を置いて配置され、前記一対の第1の幅広部とそれぞれ重ね合わされる一対の第2の幅広部と、前記一対の第2の幅広部の間に配置された第2の幅狭部であって、前記第1の幅狭部と重ね合わされ、前記一対の第2の幅広部の各々の横幅よりも狭い横幅の第2の幅狭部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る介護用衣服によれば、被介護者の胸元や腹部がはだけるのを抑制しながら、胃ろう用のカテーテル等を通すための通し口を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る介護用衣服の正面側を示す図である。
図2】実施の形態1に係る介護用衣服の背面側を示す図である。
図3図1に示す状態から股覆い部を展開した状態での、実施の形態1に係る介護用衣服の正面側を示す図である。
図4図3に示す状態からさらに左前身頃を展開した状態での、実施の形態1に係る介護用衣服の正面側を示す図である。
図5】実施の形態1に係る介護用衣服の使用例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る介護用衣服を示す正面図である。
図7】実施の形態1に係る介護用衣服を示す背面図である。
図8】実施の形態1に係る介護用衣服を示す右側面図である。
図9】実施の形態1に係る介護用衣服を示す左側面図である。
図10】実施の形態1に係る介護用衣服を示す平面図である。
図11】実施の形態1に係る介護用衣服を示す底面図である。
図12】実施の形態1に係る介護用衣服の使用状態を示す参考図1である。
図13】実施の形態1に係る介護用衣服の使用状態を示す参考図2である。
図14】実施の形態1に係る介護用衣服の使用状態を示す参考図3である。
図15】実施の形態2に係る介護用衣服の正面側を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(技術1)
被介護者が着用するための介護用衣服であって、前記被介護者の胴体の左前面を覆う左前身頃と、前記被介護者の前記胴体の右前面を覆い、前端部が前記左前身頃の前端部と重ね合わされる右前身頃と、前記左前身頃の後端部と前記右前身頃の後端部との間に接続され、前記被介護者の前記胴体の背面を覆う後身頃と、前記左前身頃の前記前端部に配置された第1の係合面と、前記右前身頃の前記前端部に配置され、前記第1の係合面と着脱可能に係合される第2の係合面と、を備え、前記第1の係合面は、前記左前身頃の前記前端部の上下方向に沿って間隔を置いて配置された一対の第1の幅広部と、前記一対の第1の幅広部の間に配置され、前記一対の第1の幅広部の各々の横幅よりも狭い横幅の第1の幅狭部と、を有し、前記第2の係合面は、前記右前身頃の前記前端部の上下方向に沿って間隔を置いて配置され、前記一対の第1の幅広部とそれぞれ重ね合わされる一対の第2の幅広部と、前記一対の第2の幅広部の間に配置された第2の幅狭部であって、前記第1の幅狭部と重ね合わされ、前記一対の第2の幅広部の各々の横幅よりも狭い横幅の第2の幅狭部と、を有する、介護用衣服。
【0010】
技術1によれば、第1の係合面は、一対の第1の幅広部と第1の幅狭部とを有し、第2の係合面は、一対の第2の幅広部と第2の幅狭部とを有している。例えば被介護者が胃ろうの処置を受けている場合に、第1の係合面と第2の係合面とが互いに係合された状態から、介護者が第1の係合面の第1の幅狭部と第2の係合面の第2の幅狭部とを引き剥がす。これにより、第1の幅狭部と第2の幅狭部との間に形成された隙間を、胃ろう用のカテーテル等を通すための通し口として用いることができる。この時、第1の係合面の一対の第1の幅広部と、第2の係合面の一対の第2の幅広部とはそれぞれ係合されたままであるので、被介護者の胸元や腹部がはだけるのを抑制しながら、胃ろう用のカテーテル等を通すための通し口を容易に形成することができる。
【0011】
(技術2)
前記一対の第1の幅広部の各々の横幅は、前記第1の幅狭部に近付くにつれて漸増した後に漸減し、前記一対の第2の幅広部の各々の横幅は、前記第2の幅狭部に近付くにつれて漸増した後に漸減する、技術1に記載の介護用衣服。
【0012】
技術2によれば、互いに係合している第1の幅広部及び第2の幅広部の横幅は、身頃の襟ぐりに近付くにつれて漸減するので、例えば介護者が被介護者の胸部に対して処置を施す場合に、第1の幅広部及び第2の幅広部を襟ぐりの方から互いにスムーズに引き剥がすことができる。また、互いに係合している第1の幅広部及び第2の幅広部の横幅は、身頃の裾に近付くにつれて漸減するので、例えば介護者が被介護者の腹部に対して処置を施す場合に、第1の幅広部及び第2の幅広部を裾の方から互いにスムーズに引き剥がすことができる。
【0013】
(技術3)
前記介護用衣服は、さらに、前記後身頃の下端部から延在し、前端部が前記左前身頃の下端部及び前記右前身頃の下端部と重ね合わされることにより、前記被介護者の股間部を覆う股覆い部と、前記左前身頃の前記下端部に配置された第3の係合面と、前記右前身頃の前記下端部に配置された第4の係合面と、前記股覆い部の前記前端部に配置され、前記第3の係合面及び前記第4の係合面の各々と着脱可能に係合される第5の係合面と、を備える、技術1又は2に記載の介護用衣服。
【0014】
技術3によれば、介護者が被介護者のおむつを交換する際には、第5の係合面を第3の係合面及び第4の係合面から引き剥がし、股覆い部を展開する。この時、第1の係合面と第2の係合面とを互いに係合したままにすることができる。これにより、身頃が被介護者の上半身に着用された状態で、被介護者のおむつが露出されるので、介護者は、介護用衣服を完全に脱がせることなく、おむつを容易に交換することができる。
【0015】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、特許請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0018】
(実施の形態1)
[1.介護用衣服の構成]
図1図4を参照しながら、実施の形態1に係る介護用衣服2の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る介護用衣服2の正面側を示す図である。図2は、実施の形態1に係る介護用衣服2の背面側を示す図である。図3は、図1に示す状態から股覆い部48を展開した状態での、実施の形態1に係る介護用衣服2の正面側を示す図である。図4は、図3に示す状態からさらに左前身頃14を展開した状態での、実施の形態1に係る介護用衣服2の正面側を示す図である。
【0019】
なお、図1図4において、X軸のプラス側を「左」、X軸のマイナス側を「右」、Y軸のプラス側を「前」、Y軸のマイナス側を「後」、Z軸のプラス側を「上」、Z軸のマイナス側を「下」とする。
【0020】
また、以下の説明において、「左」とは、介護用衣服2を着用した被介護者4から見て左側を意味し、「右」とは、介護用衣服2を着用した被介護者4から見て右側を意味する。また、「前」とは、介護用衣服2を着用した被介護者4から見て前側を意味し、「後」とは、介護用衣服2を着用した被介護者4から見て後側を意味する。また、「上」とは、介護用衣服2を着用した被介護者4から見て頭部側を意味し、「下」とは、介護用衣服2を着用した被介護者4から見て足元側を意味する。
【0021】
介護用衣服2は、前開き可能なボディスーツ型の衣服であり、おむつを使用する被介護者4(後述する図5参照)により着用される。被介護者4は、例えば寝たきりの高齢者や認知症患者、身体障害者等の介護を要する人である。なお、被介護者4は、介護施設や障害者支援施設、一般家庭等で介護を受ける人に限定されず、例えば病院等で治療とともに介護を受ける人であってもよい。
【0022】
図1図4に示すように、介護用衣服2は、被介護者4の上半身に着用される上衣部6(身頃)と、被介護者4の下半身に着用される下衣部8とを備えている。下衣部8は上衣部6の下端部に接続されており、上衣部6と下衣部8とは一続きに構成されている。なお、介護用衣服2は、例えば綿やポリエステル等の生地で形成されている。
【0023】
上衣部6は、前開き可能に構成されている。上衣部6の上端部には、被介護者4の首を通すための襟ぐり10が形成されている。また、上衣部6の下端部には、被介護者4の腰部を通すための裾12が形成されている。
【0024】
上衣部6は、左前身頃14と、右前身頃16と、後身頃18と、第1の係合面20と、第2の係合面22と、第3の係合面24と、第4の係合面26とを有している。
【0025】
左前身頃14は、被介護者4の胴体の左前面を覆う部位である。左前身頃14の前端部28は、上衣部6の襟ぐり10から裾12にかけて延在している。なお、左前身頃14の前端部28の側縁は、なだらかな略W字状に形成されている。
【0026】
右前身頃16は、被介護者4の胴体の右前面を覆う部位である。右前身頃16の前端部30は、上衣部6の襟ぐり10から裾12にかけて延在している。なお、右前身頃16の前端部30の側縁は、なだらかな略W字状に形成されている。左前身頃14の前端部28の内面(被介護者4の胴体に対向する側の面)は、右前身頃16の前端部30の外面(被介護者4の胴体と反対側の面)と重ね合わされる。
【0027】
なお、本実施の形態では、介護用衣服2は、左前身頃14の前端部28の内面が右前身頃16の前端部30の外面と重ね合わされる、いわゆる右前合わせとしたが、これに限定されない。介護用衣服2は、例えば、右前身頃16の前端部30の内面が左前身頃14の前端部28の外面と重ね合わされる、いわゆる左前合わせとしてもよい。
【0028】
後身頃18は、被介護者4の胴体の背面を覆う部位であり、左前身頃14の後端部32(前端部28と反対側の端部)と右前身頃16の後端部34(前端部30と反対側の端部)との間に接続される。
【0029】
図4に示すように、第1の係合面20は、左前身頃14の前端部28の内面に配置されている。第1の係合面20は、一対の第1の幅広部36a,36bと、第1の幅狭部38とを有している。図4では、第1の係合面20を網点で表している。
【0030】
一対の第1の幅広部36a,36bは、左前身頃14の前端部28の上下方向(すなわち、襟ぐり10から裾12に向けて延在するZ軸方向)に沿って間隔を置いて配置されている。第1の幅広部36aは襟ぐり10側、第1の幅広部36bは裾12側に配置されている。
【0031】
第1の幅狭部38は、一対の第1の幅広部36a,36bの間に配置されている。また、第1の幅狭部38は、左前身頃14の前端部28の上下方向における略中央部(被介護者4の胴体のみぞおち付近)に配置されている。なお、第1の幅広部36a、第1の幅狭部38及び第1の幅広部36bは、襟ぐり10から裾12にかけて連続的に並んで配置されている。
【0032】
第1の幅狭部38の横幅D1は、第1の幅広部36aの横幅D2及び第1の幅広部36bの横幅D3よりも狭い。なお、本明細書において、第1の係合面20の「横幅」とは、左前身頃14の前端部28の上下方向に対して垂直方向における大きさを意味する。
【0033】
第1の係合面20は、全体としてひょうたん形状を有している。すなわち、第1の幅広部36aの横幅D2は、襟ぐり10から第1の幅狭部38に近付くにつれて漸増した後に漸減している。また、第1の幅広部36bの横幅D3は、裾12から第1の幅狭部38に近付くにつれて漸増した後に漸減している。
【0034】
なお、第1の幅狭部38の横幅D1は、例えば1.0cm以上1.5cm未満である。また、第1の幅広部36aの横幅D2及び第1の幅広部36bの横幅D3は、例えば1.5cm以上6.5cm以下である。
【0035】
図4に示すように、第2の係合面22は、右前身頃16の前端部30の外面に配置されている。第2の係合面22は、一対の第2の幅広部40a,40bと、第2の幅狭部42とを有している。図4では、第2の係合面22を網点で表している。なお、第2の係合面22の形状は、第1の係合面20の形状とほぼ同じである。
【0036】
一対の第2の幅広部40a,40bは、右前身頃16の前端部30の上下方向(すなわち、襟ぐり10から裾12に向けて延在するZ軸方向)に沿って間隔を置いて配置されている。第2の幅広部40aは襟ぐり10側、第2の幅広部40bは裾12側に配置されている。
【0037】
第2の幅狭部42は、一対の第2の幅広部40a,40bの間に配置されている。また、第2の幅狭部42は、右前身頃16の前端部30の上下方向における略中央部(被介護者4の胴体のみぞおち付近)に配置されている。なお、第2の幅広部40a、第2の幅狭部42及び第2の幅広部40bは、襟ぐり10から裾12にかけて連続的に並んで配置されている。
【0038】
第2の幅狭部42の横幅D4は、第2の幅広部40aの横幅D5及び第2の幅広部40bの横幅D6よりも狭い。なお、本明細書において、第2の係合面22の「横幅」とは、右前身頃16の前端部30の上下方向に対して垂直方向における大きさを意味する。
【0039】
第2の係合面22は、全体としてひょうたん形状を有している。すなわち、第2の幅広部40aの横幅D5は、襟ぐり10から第2の幅狭部42に近付くにつれて漸増した後に漸減している。また、第2の幅広部40bの横幅D6は、裾12から第2の幅狭部42に近付くにつれて漸増した後に漸減している。
【0040】
なお、第2の幅狭部42の横幅D4は、例えば1.0cm以上1.5cm未満である。また、第2の幅広部40aの横幅D5及び第2の幅広部40bの横幅D6は、例えば1.5cm以上6.5cm以下である。
【0041】
左前身頃14の前端部28の内面が右前身頃16の前端部30の外面と重ね合わされることにより、第1の係合面20が第2の係合面22と着脱可能に係合される。このとき、一対の第1の幅広部36a,36bはそれぞれ一対の第2の幅広部40a,40bと重ね合わされて互いに係合され、且つ、第1の幅狭部38は第2の幅狭部42と重ね合わされて互いに係合される。
【0042】
なお、本実施の形態では、第1の係合面20を左前身頃14の前端部28の内面に配置し、第2の係合面22を右前身頃16の前端部30の外面に配置したが、これとは反対に、第1の係合面20を左前身頃14の前端部28の外面に配置し、第2の係合面22を右前身頃16の前端部30の内面に配置してもよい。
【0043】
図3に示すように、第3の係合面24は、左前身頃14の下端部44の外面に配置されており、略扇形状に形成されている。図3では、第3の係合面24を網点で表している。
【0044】
図3及び図4に示すように、第4の係合面26は、右前身頃16の下端部46の外面に配置されており、略扇形状に形成されている。図3及び図4では、第4の係合面26を網点で表している。
【0045】
下衣部8は、股覆い部48と、第5の係合面50とを有している。
【0046】
股覆い部48は、被介護者4の臀部から股間部を経て下腹部まで(すなわち、被介護者4が着用しているおむつ全体)を覆う部位であり、後身頃18の下端部52から延在している。股覆い部48の前端部54は、上方に折り返されることにより、左前身頃14の下端部44及び右前身頃16の下端部46と重ね合わされる。この時、股覆い部48の左端部及び右端部にはそれぞれ、被介護者4の左脚及び右脚を通すための一対の開口部が形成される。
【0047】
図3及び図4に示すように、第5の係合面50は、股覆い部48の前端部54(後身頃18の下端部52と反対側の端部)の内面に配置されている。図3及び図4では、第5の係合面50を網点で表している。股覆い部48の前端部54が左前身頃14の下端部44及び右前身頃16の下端部46と重ね合わされることにより、第5の係合面50が第3の係合面24及び第4の係合面26の各々と着脱可能に係合される。
【0048】
なお、上述した第1の係合面20、第2の係合面22、第3の係合面24、第4の係合面26及び第5の係合面50は、例えば、ポリエステル製のニット生地からなり且つ互いに着脱可能に係合されるA面ベロア及びB面パイルからなる面ファスナ(三和繊維株式会社製、商品名:エコフィット)で形成されてもよいし、マジックテープ(登録商標)で形成されてもよい。本実施の形態では、左前身頃14の前端部28と右前身頃16の前端部30とを、面で係合する素材(第1の係合面20及び第2の係合面22)で開閉できるようにしたので、例えばボタンやホックで開閉するタイプの介護用衣服と比べて開閉が容易となり、更衣時の介護労力が軽減される。同様に、股覆い部48の前端部54と左前身頃14の下端部44及び右前身頃16の下端部46とを、面で係合する素材(第3の係合面24、第4の係合面26及び第5の係合面50)で開閉できるようにしたので、例えばボタンやホックで開閉するタイプの介護用衣服と比べて開閉が容易となり、更衣時の介護労力が軽減される。
【0049】
[2.介護用衣服の使用方法及び効果]
次に、図3図5を参照しながら、実施の形態1に係る介護用衣服2の使用方法及び効果について説明する。図5は、実施の形態1に係る介護用衣服2の使用例を示す図である。
【0050】
介護者(図示せず)が被介護者4のおむつを交換する際には、図3に示すように、介護者は、第5の係合面50を第3の係合面24及び第4の係合面26から引き剥がし、股覆い部48を展開する。この時、第1の係合面20と第2の係合面22とは互いに係合されたままにすることができる。これにより、上衣部6が被介護者4の上半身に着用された状態で、被介護者4のおむつが露出されるので、介護者は、介護用衣服2を完全に脱がせることなく、おむつを容易に交換することができる。
【0051】
また、介護者が介護用衣服2を脱がせる際には、図4に示すように、介護者は、第5の係合面50を第3の係合面24及び第4の係合面26から引き剥がした後に、第1の係合面20を第2の係合面22から引き剥がせばよい。
【0052】
また、上述したように、実施の形態1に係る介護用衣服2では、第1の係合面20は、一対の第1の幅広部36a,36bと、第1の幅狭部38とを有している。また、第2の係合面22は、一対の第2の幅広部40a,40bと、第2の幅狭部42とを有している。
【0053】
これにより、例えば被介護者4が胃ろうの処置を受けている場合には、図5に示すように、被介護者4の腹部に空けた穴には胃ろう用のカテーテル56が挿入されるようになる。この時、第1の係合面20と第2の係合面22とが互いに係合された状態から、介護者が第1の係合面20の第1の幅狭部38と第2の係合面22の第2の幅狭部42とを引き剥がす。これにより、第1の幅狭部38と第2の幅狭部42との間に形成された隙間を、カテーテル56等を通すための通し口として用いることができる。この時、第1の係合面20の一対の第1の幅広部36a,36bと、第2の係合面22の一対の第2の幅広部40a,40bとはそれぞれ係合されたままであるので、被介護者4の胸元や腹部がはだけるのを抑制しながら、カテーテル56等を通すための通し口を容易に形成することができる。
【0054】
[3.介護用衣服の意匠]
実施の形態1に係る介護用衣服では、図6図14において実線で示した部分が意匠として優れている部分である。図6は、実施の形態1に係る介護用衣服を示す正面図である。図7は、実施の形態1に係る介護用衣服を示す背面図である。図8は、実施の形態1に係る介護用衣服を示す右側面図である。図9は、実施の形態1に係る介護用衣服を示す左側面図である。図10は、実施の形態1に係る介護用衣服を示す平面図である。図11は、実施の形態1に係る介護用衣服を示す底面図である。図12は、実施の形態1に係る介護用衣服の使用状態を示す参考図1である。図13は、実施の形態1に係る介護用衣服の使用状態を示す参考図2である。図14は、実施の形態1に係る介護用衣服の使用状態を示す参考図3である。
【0055】
本物品は、おむつを使用する被介護者が着用するための介護用衣服である。この介護用衣服は、上衣部と、上衣部と一続きに接続された下衣部とから構成されている。図12に示すように、下衣部の股覆い部を開放させることによって、被介護者の着用するおむつを交換することができる。また、図13に示すように、下衣部の股覆い部を開放させるとともに、上衣部の前開き部を開放させることによって、被介護者が着用している介護用衣服を脱がせることができる。また、図13に示すように、上衣部の前開き部には、例えば面ファスナ等のひょうたん形状の係合面が形成されている。図14に示すように、係合面の長手方向における略中央部の幅狭部を通して、例えば胃ろう用のカテーテル等を通すことができる。
【0056】
なお、図6図12及び図13において表れる網点(薄墨部)は、係合面を表している。また、各図において、破線は縫い目を表している。
【0057】
(実施の形態2)
図15を参照しながら、実施の形態2に係る介護用衣服2Aの構成について説明する。図15は、実施の形態2に係る介護用衣服2Aの正面側を示す図である。本実施の形態において、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
図15に示すように、実施の形態2に係る介護用衣服2Aは、上衣部6のみを備えており、上記実施の形態1で説明した下衣部8を備えていない。これにより、介護用衣服2Aを、おむつの着用を必要としない被介護者に着用させることができる。
【0059】
(他の変形例等)
以上、本発明の1つ又は複数の態様に係る介護用衣服について、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記各実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0060】
上記各実施の形態では、第1の幅狭部38と第2の幅狭部42との間に形成された隙間を、胃ろう用のカテーテル56を通すための通し口として用いたが、これに限定されず、例えば点滴用のチューブや心電図用のケーブル等を通すための通し口として用いてもよい。
【0061】
また、上記各実施の形態では、第1の係合面20は、一対の第1の幅広部36a,36bと第1の幅狭部38とを有するようにしたが、これに限定されず、3個の第1の幅広部と2個の第1の幅狭部とを有するようにしてもよい。この場合、第1の幅広部、第1の幅狭部、第1の幅広部、第1の幅狭部及び第1の幅広部が、襟ぐり10から裾12にかけて連続的に並んで配置されるようになる。
【0062】
同様に、上記各実施の形態では、第2の係合面22は、一対の第2の幅広部40a,40bと第2の幅狭部42とを有するようにしたが、これに限定されず、3個の第2の幅広部と2個の第2の幅狭部とを有するようにしてもよい。この場合、第2の幅広部、第2の幅狭部、第2の幅広部、第2の幅狭部及び第2の幅広部が、襟ぐり10から裾12にかけて連続的に並んで配置されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば寝たきりの高齢者等の被介護者が着用するための介護用衣服等に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
2,2A 介護用衣服
4 被介護者
6 上衣部
8 下衣部
10 襟ぐり
12 裾
14 左前身頃
16 右前身頃
18 後身頃
20 第1の係合面
22 第2の係合面
24 第3の係合面
26 第4の係合面
28,30,54 前端部
32,34 後端部
36a,36b 第1の幅広部
38 第1の幅狭部
40a,40b 第2の幅広部
42 第2の幅狭部
44,46,52 下端部
48 股覆い部
50 第5の係合面
56 カテーテル
【要約】
【課題】被介護者の胸元や腹部がはだけるのを抑制しながら、胃ろう用のカテーテル等を通すための通し口を容易に形成することができる介護用衣服を提供する。
【解決手段】介護用衣服2は、左前身頃14と、右前身頃16と、後身頃18と、左前身頃14の前端部28に配置された第1の係合面20と、右前身頃16の前端部30に配置された第2の係合面22とを備える。第1の係合面20は、一対の第1の幅広部36a,36bと、一対の第1の幅広部36a,36bの間に配置された第1の幅狭部38とを有する。第2の係合面22は、一対の第1の幅広部36a,36bとそれぞれ重ね合わされる一対の第2の幅広部40a,40bと、一対の第2の幅広部40a,40bの間に配置され、第1の幅狭部38と重ね合わされる第2の幅狭部42とを有する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
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図15