(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-05
(45)【発行日】2025-06-13
(54)【発明の名称】経路設定方法、経路設定システムおよび経路設定プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250606BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2021079467
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】高橋 葵
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211733(JP,A)
【文献】特開2020-119595(JP,A)
【文献】特開2019-115267(JP,A)
【文献】特開2020-103087(JP,A)
【文献】特開2019-154393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両が自律走行を行う走行領域を設定することと、
前記作業車両の進行方向に対して右または左にオフセットされて前記作業車両に装着される作業機のオフセット量を設定することと、
前記走行領域の内部に、前記作業車両が第1方向に平行に移動する内部作業領域を設定することと、
前記走行領域のうちの前記内部作業領域以外の領域として、前記内部作業領域の周囲に配置される外周作業領域を設定することと、
前記作業車両が前記内部作業領域と前記外周作業領域とで前記自律走行を行いながら前記作業機で作業するための走行経路を生成することと、
前記作業車両が前記走行経路に沿って走行するときに前記作業機が前記走行領域の外に出るか否かを判定することと、
前記判定の結果を表す報知情報を出力することと
を含む
経路設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の経路設定方法において、
前記外周作業領域と前記内部作業領域とを分ける境界線群のうち、前記作業機が前記走行領域の外に出た状態で前記作業車両が走行する経路に最も近い第1境界線を前記内部作業領域の中心に向けて移動させることによって、前記外周作業領域のうち、前記第1境界線と、前記走行領域の外周を規定する枠線群のうちの前記第1境界線と向かい合う第1枠線との間の第1部分領域を拡大するように、前記外周作業領域の前記設定を更新することと、
更新された前記外周作業領域の前記設定に基づいて前記走行経路を再度生成することと
をさらに含む
経路設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の経路設定方法において、
前記外周作業領域の前記設定を更新することは、
前記境界線群のうちの前記第1境界線に隣接する第2境界線を、前記内部作業領域の中心に向けて移動させることによって、前記外周作業領域のうち、前記第2境界線と、前記枠線群のうちの前記第2境界線と向かい合う第2枠線との間の第2部分領域を拡大するように、前記外周作業領域の前記設定を更新すること
を含む
経路設定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の経路設定方法において、
前記外周作業領域の前記設定を更新することは、
前記外周作業領域のうちの前記第1部分領域に第1の追加の外周経路を生成するように前記外周作業領域の前記設定を更新することと、
前記外周作業領域のうちの前記第2部分領域に第2の追加の外周経路を生成するように前記外周作業領域の前記設定を更新することと、
前記走行経路が前記内部作業領域に入る内部経路開始位置と、前記走行経路が前記内部作業領域から出る内部経路終了位置と、前記走行経路が前記外周作業領域に入る外周経路開始位置と、前記走行経路が前記外周作業領域から出る外周経路終了位置とのうちの少なくとも1つを、前記第1部分領域または前記第2部分領域に移動するように、前記外周作業領域の前記設定を更新することと
をさらに含む
経路設定方法。
【請求項5】
請求項2に記載の経路設定方法において、
前記外周作業領域の前記設定を更新することは、
前記境界線群のうちの前記第1境界線と向かい合う第2境界線を、前記内部作業領域の中心に向けて移動させることによって、前記外周作業領域のうち、前記第2境界線と、
前記枠線群のうちの前記第2境界線と向かい合う第2枠線との間の第2部分領域を拡大するように、前記外周作業領域の前記設定を更新すること
を含む
経路設定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の経路設定方法において、
前記外周作業領域の前記設定を更新することは、
前記外周作業領域のうちの前記第1部分領域に第1の追加の外周経路を生成するように前記外周作業領域の前記設定を更新することと、
前記外周作業領域のうちの前記第2部分領域に第2の追加の外周経路を生成するように前記外周作業領域の前記設定を更新することと、
前記第1の追加の外周経路と前記第2の追加の外周経
路とを接続するダミーラン経路を、前記走行経路を再度生成する前から配置されていた外周経路の
一部に重ねて生成するように、前記外周作業領域の前記設定を更新することと
を含む
経路設定方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の経路設定方法において、
前記外周作業領域の前記設定を更新することは、
前記走行経路が前記内部作業領域に入る内部経路開始位置と、前記走行経路が前記内部作業領域から出る内部経路終了位置と、前記走行経路が前記外周作業領域に入る外周経路開始位置と、前記走行経路が前記外周作業領域から出る外周経路終了位置とのうちの少なくとも1つを、前記第1部分領域または前記第2部分領域に移動するように、前記外周作業領域の前記設定を更新すること
をさらに含む
経路設定方法。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に記載の経路設定方法において、
前記報知情報を出力することの後に、
前記外周作業領域の拡大を容認することについて、第1指示を受け付けること
をさらに含み、
前記第1指示を受け付けたときに、前記外周作業領域の前記設定を更新することと、前記走行経路を再度生成することとを実行すること
をさらに含む
経路設定方法。
【請求項9】
請求項1に記載の経路設定方法において、
前記走行経路は、
前記作業車両が前記内部作業領域で前記第1方向に平行に移動する内部経路と、
前記作業車両が前記外周作業領域で前記走行領域を規定する枠線群に沿って周回して移動する外周経路と、
前記作業車両が前記走行領域に入る位置である作業開始位置または前記作業車両が前記走行領域から出る位置である作業終了位置のいずれかと、前記内部経路または前記外周経路のいずれかとを接続する第1接続経路と、
前記内部経路と前記外周経路とを接続する第2接続経路と
を含み、
前記第1接続経路と前記第2接続経路において前記作業車両が旋回するときに前記作業機が前記旋回の内側に向かってオフセットされた状態で前記作業車両が走行するように、
前記外周作業領域の前記設定を更新することと
をさらに含む
経路設定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の経路設定方法において、
前記内部経路は、
互いに平行でそれぞれが直線の形状を有する複数の直線経路
を含み、
前記走行経路は、
前記複数の直線経路を接続する旋回経路
をさらに含み、
前記外周作業領域の前記設定を更新することは、
前記旋回経路において前記作業車両が旋回するときに前記作業機が前記旋回の内側に向かってオフセットされた状態で前記作業車両が走行するように、前記外周作業領域の前記設定を更新すること
を含む
経路設定方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の経路設定方法において、
前記報知情報を出力することの後に、
前記外周作業領域を維持することについて、第2指示を受け付けること
をさらに含み、
前記第2指示を受け付けたときに、前記外周作業領域の前記設定を更新することと、前記走行経路を再度生成することとを実行すること
をさらに含む
経路設定方法。
【請求項12】
作業車両が自律走行を行う走行領域を設定する走行領域設定部と、
前記作業車両の進行方向に対して右または左にオフセットされて前記作業車両に装着される作業機のオフセット量を設定する作業機設定部と、
前記走行領域の内部に、前記作業車両が第1方向に平行に移動する内部作業領域を設定する内部作業領域設定部と、
前記走行領域のうちの前記内部作業領域以外の領域として、前記内部作業領域の周囲に配置される外周作業領域を設定する外周作業領域設定部と、
前記作業車両が前記内部作業領域と前記外周作業領域とで前記自律走行を行いながら前記作業機で作業するための走行経路を生成する走行経路生成部と、
前記作業車両が前記走行経路に沿って走行するときに前記作業機が前記走行領域の外に出るか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果を表す報知情報を出力する報知部と
を備える
経路設定システム。
【請求項13】
実行することによって所定の処理を実現するための経路設定プログラムであって、
前記処理は、
作業車両が自律走行を行う走行領域を設定することと、
前記作業車両の進行方向に対して右または左にオフセットされて前記作業車両に装着される作業機のオフセット量を設定することと、
前記走行領域の内部に、前記作業車両が第1方向に平行に移動する内部作業領域を設定することと、
前記走行領域のうちの前記内部作業領域以外の領域として、前記内部作業領域の周囲に配置される外周作業領域を設定することと、
前記作業車両が前記内部作業領域と前記外周作業領域とで前記自律走行を行いながら前記作業機で作業するための走行経路を生成することと、
前記作業車両が前記走行経路に沿って走行するときに前記作業機が前記走行領域の外に出るか否かを判定することと、
前記判定の結果を表す報知情報を出力することと
を含む
経路設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経路設定方法、経路設定システムおよび経路設定プログラムに関し、例えば、自律走行する作業車両の走行経路を設定するための経路設定方法、経路設定システムおよび経路設定プログラムに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
トラクターなどの作業車両に適切な作業機を装着して圃場内で草刈などの作業を行うとき、作業車両は所定の走行経路を走行しながら作業を行う。作業車両が自律走行を行う機能を備えているとき、この走行経路を事前に設定しておくことで、作業車両はこの走行経路に沿って自律走行をしながら作業を自動的に行うことができる。
【0003】
走行経路は、圃場の位置や形状に基づいて自動的に生成されてもよい。走行経路を自動的に生成するときに必要な判断基準として、以下のことが知られている。まず、安全性の観点から、作業車両が移動するときに作業機が圃場のどこを移動するかを事前に把握することが好ましい。次に、作業効率を高める観点から、走行経路の全長は短い方が好ましい。また、同じく作業効率を高める観点から、圃場のうち、作業効率が比較的高い内部作業領域をなるべく広く保つことが好ましく、反対に作業効率が比較的低い外周作業領域をなるべく狭く保つことが好ましい。さらに、やはり作業効率を高める観点から、一度走行して作業を行った走行経路は再度走行しないことが好ましい。
【0004】
上記に関連して、特許文献1(特開2017-211733号公報)には、自律走行経路生成システムが開示されている。この自律走行経路生成システムは、予め定められた走行領域において、車体部と車体部に装着される作業機を備える作業車両を自律走行させるための走行経路を生成する。この自律走行経路生成システムは、オフセット設定部と、経路生成部とを備える。ここで、オフセット設定部は、車体部の基準点に対する作業機の基準点のオフセット方向及びオフセット距離を設定可能である。また、経路生成部は、作業機の基準点に基づいて走行領域内における走行経路を生成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安全性を確保する観点からは、作業車両からオフセットしている作業機が、走行領域の外に出ないように、外周作業領域を十分に広く設定することが好ましい。その一方で、外周作業領域が広ければ広いほど、外周作業領域よりも作業効率が良い内部作業領域が狭くなるため、圃場全体としての作業効率が低下する。
【0007】
より安全に作業を行うための経路設定を支援するための経路設定方法、経路設定システムおよび経路設定プログラムを提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
一実施の形態によれば、経路設定方法は、作業車両(4)が自律走行を行う走行領域(9)を設定すること(S01)と、作業車両(4)の進行方向に対して右または左にオフセットされて作業車両(4)に装着される作業機(5)のオフセット量を設定すること(S02)とを含む。経路設定方法は、走行領域(9)の内部に、作業車両(4)が第1方向に平行に移動する内部作業領域(91)を設定すること(S03)と、走行領域(9)のうちの内部作業領域(91)以外の領域として、内部作業領域(91)の周囲に配置される外周作業領域(92)を設定すること(S03)とをさらに含む。経路設定方法は、作業車両(4)が内部作業領域(91)と外周作業領域(92)とで自律走行を行いながら作業機(5)で作業するための走行経路を生成すること(S04)と、作業車両(4)が走行経路に沿って走行するときに作業機(5)が走行領域(9)の外に出るか否かを判定すること(S05)と、判定の結果を表す報知情報を出力すること(S07)とをさらに含む。
【0010】
一実施の形態によれば、経路設定システム(2)は、走行領域設定部(311)と、作業機設定部(312)と、内部作業領域設定部(313)と、外周作業領域設定部(314)と、走行経路生成部(315)と、判定部(316)と、報知部(317)とを備える。走行領域設定部(311)は、作業車両(4)が自律走行を行う走行領域(9)を設定する。作業機設定部(312)は、作業車両(4)の進行方向に対して右または左にオフセットされて作業車両(4)に装着される作業機(5)のオフセット量を設定する。内部作業領域設定部(313)は、走行領域(9)の内部に、作業車両(4)が第1方向に平行に移動する内部作業領域(91)を設定する。外周作業領域設定部(314)は、走行領域(9)のうちの内部作業領域(91)以外の領域として、内部作業領域(91)の周囲に配置される外周作業領域(92)を設定する。走行経路生成部(315)は、作業車両(4)が内部作業領域(91)と外周作業領域(92)とで自律走行を行いながら作業機(5)で作業するための走行経路を生成する。判定部(316)は、作業車両(4)が走行経路に沿って走行するときに作業機(5)が走行領域(9)の外に出るか否かを判定する。報知部(317)は、判定の結果を表す報知情報を出力する。
【0011】
一実施の形態によれば、経路設定プログラム(321)は、実行することによって所定の処理を実現するためのものである。この処理は、作業車両(4)が自律走行を行う走行領域(9)を設定すること(S01)と、作業車両(4)の進行方向に対して右または左にオフセットされて作業車両(4)に装着される作業機(5)のオフセット量を設定すること(S02)とを含む。この処理は、走行領域(9)の内部に、作業車両(4)が第1方向に平行に移動する内部作業領域(91)を設定すること(S03)と、走行領域(9)のうちの内部作業領域(91)以外の領域として、内部作業領域(91)の周囲に配置される外周作業領域(92)を設定すること(S03)とをさらに含む。この処理は、作業車両(4)が内部作業領域(91)と外周作業領域(92)とで自律走行を行いながら作業機(5)で作業するための走行経路を生成すること(S04)と、作業車両(4)が走行経路に沿って走行するときに作業機(5)が走行領域(9)の外に出るか否かを判定すること(S05)と、判定の結果を表す報知情報を出力すること(S07)とをさらに含む。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、安全性を確保しつつ効率よく作業を行う自律走行のための経路設定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施の形態による自律作業システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による端末の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態によるサーバの一構成例を示すブロック回路図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による作業車両の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図5A】
図5Aは、一実施の形態による経路決定方法の一構成例を示すフローチャートの前半部分である。
【
図5B】
図5Bは、一実施の形態による経路決定方法の一構成例を示すフローチャートの後半部分である。
【
図6】
図6は、一実施の形態によって生成された経路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施の形態によって更新された経路の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態によって更新された経路の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、一実施の形態によって更新された経路の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、一実施の形態によって生成された経路の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、一実施の形態によって更新された経路の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、一実施の形態によって更新された経路の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、一実施の形態による経路決定方法の一構成例を示すフローチャートの後半部分である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明による経路設定方法、経路設定システムおよび経路設定プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による自律作業システム1は、作業車両4と、経路設定システム2とを少なくとも備える。作業車両4には、着脱可能な作業機5が装着されている。作業車両4は、経路設定システム2から受信した経路情報20に基づいて自律走行を実行しながら、作業機5を用いて作業を行う。一例として、作業車両4はトラクターであり、作業機5は草刈り機である。
【0016】
一実施の形態による経路設定システム2は、少なくとも端末3を備える。一実施の形態による経路設定システム2は、サーバ7をさらに備えていてもよい。このとき、端末3と、サーバ7とは、所定のネットワーク8を介して無線通信および/または有線通信を行ってもよい。
【0017】
一実施の形態による経路設定システム2は、作業車両4が自律走行するための経路を設定する。経路の設定は、端末3が単独で行ってもよいし、サーバ7が単独で行ってもよいし、端末3とサーバ7が協働して行ってもよい。一例として、端末3は作業車両4から比較的近い位置にいる利用者が所有していてもよいし、サーバ7は作業車両4から比較的遠い位置に配置されていてもよい。端末3が単独で経路の設定を行う場合は、サーバ7は省略可能である。
【0018】
図2、
図3および
図4を参照して、一実施の形態による端末3、サーバ7および作業車両4の一構成例について説明する。その後、
図5Aおよび
図5Bを参照して、一実施の形態による経路設定システム2の一動作例、すなわち一実施の形態による経路設定方法の一構成例について説明する。なお、一実施の形態による経路設定方法の一構成例は、一実施の形態による経路設定プログラム321、721の一構成例でもある。
【0019】
図2に示すように、一実施の形態による端末3は、いわゆるタブレット型の端末であり、いわゆるコンピュータを含んでいてもよい。端末3は、バス30と、演算装置31と、記憶装置32と、インタフェース装置33と、通信装置34とを備える。演算装置31、記憶装置32、インタフェース装置33および通信装置34は、バス30を介して互いに通信可能に接続されている。
【0020】
演算装置31は、記憶装置32に格納されている経路設定プログラム321を実行することによって、端末3が有する機能を実現する。経路設定プログラム321は、記録媒体320から読み出されて記憶装置32に格納されてもよいし、通信装置34を介して外部から受信されて記憶装置32に格納されてもよい。記録媒体320は、非一時的かつ有形であってもよい。
【0021】
走行領域設定部311は、演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって実現される、走行領域のパラメータを設定する機能を、仮想的に図示した機能ブロックである。同様に、作業機設定部312は、作業機5のパラメータを設定する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。内部作業領域設定部313は、内部作業領域のパラメータを設定する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。外周作業領域設定部314は、外周作業領域のパラメータを設定する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。走行経路生成部315は、走行経路のパラメータを生成する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。判定部316は、所定の判定を行う機能を仮想的に図示した機能ブロックである。報知部317は、所定の情報を外部に報知する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。それぞれの機能ブロックの詳細については、後述する。
【0022】
インタフェース装置33は、利用者による操作を受け付ける入力装置と、情報を外部に出力するための出力装置とを備える。一例として、インタフェース装置33は、情報を光学的に出力し、かつ、利用者によるタッチ操作を受け付けることのできるタッチパネルディスプレイを備える。
【0023】
通信装置34は、作業車両4との間で無線通信を行う。通信装置34は、さらに、ネットワーク8を介してサーバ7と通信を行ってもよい。
【0024】
図3に示すように、一実施の形態によるサーバ7は、いわゆるコンピュータを含んでいてもよい。サーバ7は、バス70と、演算装置71と、記憶装置72と、インタフェース装置73と、通信装置74とを備える。演算装置71、記憶装置72、インタフェース装置73および通信装置74は、バス70を介して互いに通信可能に接続されている。
【0025】
演算装置71は、記憶装置72に格納されている経路設定プログラム721を実行することによって、サーバ7が有する機能を実現する。経路設定プログラム721は、記録媒体720から読み出されて記憶装置72に格納されてもよいし、通信装置74を介して外部から受信されて記憶装置72に格納されてもよい。記録媒体720は、非一時的かつ有形であってもよい。
【0026】
サーバ7の演算装置71は、端末3の演算装置31と同様の機能ブロックを有していてもよい。走行領域設定部711は、演算装置71が経路設定プログラム721を実行することによって実現される、走行領域のパラメータを設定する機能を、仮想的に図示した機能ブロックである。同様に、作業機設定部712は、作業機5のパラメータを設定する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。内部作業領域設定部713は、内部作業領域のパラメータを設定する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。外周作業領域設定部714は、外周作業領域のパラメータを設定する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。走行経路生成部715は、走行経路のパラメータを生成する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。判定部716は、所定の判定を行う機能を仮想的に図示した機能ブロックである。報知部717は、所定の情報を外部に報知する機能を仮想的に図示した機能ブロックである。それぞれの機能ブロックの詳細については、後述する。なお、端末3とサーバ7とが協働して経路の設定を行う場合は、演算装置31と演算装置71との少なくとも一方が、同じ機能を有する機能ブロックを有していればよい。例えば、端末3の演算装置31が走行領域設定部311を備えるとき、サーバ7の演算装置71の走行領域設定部711は省略可能である。反対に、サーバ7の演算装置71が走行領域設定部711を備えるとき、端末3の演算装置31の走行領域設定部311は省略可能である。
【0027】
インタフェース装置73は、利用者による操作を受け付ける入力装置と、情報を外部に出力するための出力装置とを備える。通信装置74は、ネットワーク8を介して端末3などとの間で通信を行ってもよい。
【0028】
図4に示すように、一実施の形態による作業車両4は、作業機5を装着された自律走行可能なトラクターであり、自律走行を実現するための自律走行システムを備えている。自律走行システムは、プログラムを格納する記憶装置と、プログラムを実行することによって種々の機能を実現する演算装置とを含んでいてもよく、言い換えればいわゆるコンピュータを含んでいてもよい。作業車両4の自律走行システムは、第1のバス41と、CAN-WiFiルーター411と、受信BOX412と、自律走行ECU413とを備えている。ここで、「CAN」は「コントローラー・エリア・ネットワーク」を意味する。「WiFi」は無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)に関係する登録商標である。「BOX」は「箱」を意味する。「ECU」は「電子制御ユニット」を意味する。作業車両4の自律走行システムは、さらに、第2のバス42と、ステアリングコントローラー421と、エンジンコントローラー422と、HMTコントローラー423と、UFOコントローラー424と、TECU425と、メータパネル426とを備える。ここで、「HMT」は「油圧機械式トランスミッション」を意味する。「UFO」は「自動水平制御装置」を意味する。「TECU」は「トラクター電子制御ユニット」を意味する。作業車両4の自律走行システムは、さらに、第3のバス43と、作業機ECU431とを備えている。これらの構成要素の一部または全ては、演算装置がプログラムを実行することによって実現する機能を有する仮想的な機能ブロックとして構成されていてもよい。
【0029】
CAN-WiFiルーター411は、一方ではアンテナ400を介して端末3と無線通信を行い、他方では第1のバス41に接続されている。受信BOX412は、一方では所定のリモコンと無線通信を行い、他方では第1のバス41に接続されている。自律走行ECU413は、一方では第1のバス41に接続されており、他方では第2のバス42に接続されている。ステアリングコントローラー421と、エンジンコントローラー422と、HMTコントローラー423と、UFOコントローラー424と、メータパネル426とは、それぞれ、第2のバス42に接続されている。TECU425は、一方では第2のバス42に接続されており、他方では第3のバス43に接続されている。作業機ECU431は、第3のバス43に接続されている。
【0030】
CAN-WiFiルーター411は、端末3から受信した情報を自律走行ECU413に伝達する。受信BOX412は、リモコンから受信した制御信号を自律走行ECU413に伝達する。自律走行ECU413は、伝達された情報および制御信号に基づいて、自律走行を行うための各種の制御信号を生成して、ステアリングコントローラー421と、エンジンコントローラー422と、HMTコントローラー423と、UFOコントローラー424と、TECU425と、メータパネル426とに送信する。
【0031】
ステアリングコントローラー421は、作業車両4のステアリングハンドルに接続されており、自律走行ECU413の制御下でステアリングハンドルの回動角度を制御する。エンジンコントローラー422は、作業車両4のエンジンに接続されており、自律走行ECU413の制御下でエンジンの回転数などを制御する。HMTコントローラー423は、作業車両4の油圧機械式トランスミッションに接続されており、自律走行ECU413の制御下で油圧機械式トランスミッションの変速比を変更して作業車両4の車速を制御する。UFOコントローラー424は、作業車両4の自動水平制御装置に接続されており、自律走行ECU413の制御下で、作業車両4の姿勢を調整するための自動水平制御を行う。メータパネル426は、計器やディスプレイなどを備えており、自律走行ECU413の制御下で作業車両4の状態を表す各種のパラメータを視認可能に表示する。TECU425は、自律走行ECU413の制御下で、作業機ECU431の動作を制御するための制御信号を生成する。作業機ECU431は、作業車両4に装着された作業機5に接続されており、TECU425の制御下で作業機5の昇降などを制御する。
【0032】
図5Aおよび
図5Bのフローチャートを参照して、一実施の形態による経路設定方法の一構成例について説明する。ここでは、端末3が単独で経路設定方法を実現する場合について説明する。サーバ7が経路設定方法の一部または全体を実現する場合については、以下の説明において、端末3が実現する機能ブロックをサーバ7が実現する機能ブロックに適宜に読み替えればよい。
【0033】
一例として、経路設定方法は、利用者が端末3のインタフェース装置33を操作することによって開始する。経路設定方法を開始すると、ステップS01が実行される。ステップS01において、端末3の演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって、走行領域設定部311の機能が実現される。走行領域設定部311は、走行領域を設定する。より具体的には、走行領域設定部311は、作業車両4が自律走行を行う走行領域を定義するパラメータを設定する。このパラメータは、走行領域の外周を規定する枠線群を表す情報を含んでいてもよいし、この情報は枠線群に含まれるそれぞれの枠線を規定する複数の地点の座標を含んでいてもよい。一例として、利用者が端末3を操作して作業対象となる圃場を走行領域として入力してもよいし、サーバ7の記憶装置72に予め格納されている圃場の座標を端末3が読み出して走行領域として定義してもよい。
【0034】
図6の例では、走行領域9は矩形の圃場として定義される。走行領域9を定義するパラメータは、例えば、この矩形の各頂点の位置を表す座標を含んでもよい。
図6に示した複数の作業車両4の位置および進行方向は、走行経路に沿って走行する同一の作業車両4が異なる時刻に存在するする複数の位置および進行方向をそれぞれ示している。
【0035】
ステップS01の後、ステップS02が実行される。ステップS02において、端末3の演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって、作業機設定部312の機能が実現される。作業機設定部312は、作業機5を設定する。より具体的には、作業機設定部312は、作業車両4に装着される作業機5の機種、形状、寸法などを定義するパラメータを設定する。
【0036】
図6の例では、作業車両4に装着される作業機5は、作業車両4の進行方向に対して右にオフセットされている。この状態において、作業車両4が時計回りに右旋回するとき、作業機5は作業車両4が走行する経路の内側に向かってオフセットされており、作業車両4の側面より内側を通る。反対に、作業車両4が反時計回りに左旋回するとき、作業機5は経路の外側に向いている。作業機5を定義するパラメータは、例えば、作業車両4の進行方向に対するオフセットの方向、作業車両4の所定の基準点から作業機5のオフセット方向の端部までのオフセット量、などを含んでいてもよい。
【0037】
ステップS02の後、ステップS03が実行される。ステップS03において、端末3の演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって、内部作業領域設定部313の機能と、外周作業領域設定部314の機能とが実現される。内部作業領域設定部313は、内部作業領域91を設定する。より具体的には、内部作業領域設定部313は、内部作業領域91を定義するパラメータを設定する。内部作業領域91を定義するパラメータは、内部作業領域91の外周を規定する境界線群を表す情報を含んでいてもよいし、この情報は境界線群に含まれるそれぞれの境界線を規定する複数の地点の座標を含んでいてもよい。また、外周作業領域設定部314は、外周作業領域92を設定する。より具体的には、外周作業領域92を定義するパラメータを設定する。一例として、内部作業領域91は、走行領域9のうち、作業車両4が所定の方向に平行に移動しながら作業機5で作業を行う領域である。また、外周作業領域92は、走行領域9のうち、内部作業領域91の周囲に配置された、内部作業領域91以外の部分であってもよい。このとき、境界線群は、内部作業領域91と外周作業領域92とを分ける。したがって、外周作業領域92を定義するパラメータは、走行領域9を定義するパラメータと、内部作業領域91を定義するパラメータとを含んでいてもよい。
【0038】
図6の例では、内部作業領域91は走行領域9の内部に配置された矩形の領域として定義される。区別しやすいように、走行領域9のうち、内部作業領域91だけをハッチングで示している。内部作業領域91を定義するパラメータは、例えば、この矩形の各頂点の位置を表す座標を含んでもよい。また、外周作業領域92は走行領域9のうち、内部作業領域91を除いた、内部作業領域91の周囲に配置された領域として定義される。言い換えれば、内部作業領域設定部313と外周作業領域設定部314とは、走行領域9を、走行領域9の中央部分に配置される内部作業領域91と、走行領域9の外周部分に配置される外周作業領域92とに、分割する。したがって、外周作業領域92を定義するパラメータは、例えば、走行領域9を定義するパラメータと、内部作業領域91を定義するパラメータとを含んでもよい。
【0039】
ステップS03の後、ステップS04が実行される。ステップS04において、端末3の演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって、走行経路生成部315の機能が実現される。走行経路生成部315は、走行領域9の内部に、作業車両4が作業機5で作業を行うために走行する走行経路を生成する。より具体的には、走行経路生成部315は走行経路を定義するパラメータを設定する。
【0040】
図6の例では、走行経路は、接続経路111、112と、内部経路911と、旋回経路912と、外周経路921とを含む。区別しやすいように、走行経路のうち、内部経路911だけを実線で示し、残りを破線で示している。内部経路911は、作業車両4が内部作業領域91の内側および/または端部で移動する経路である。旋回経路912は、複数の内部経路911を接続する経路である。外周経路921は、作業機5が外周作業領域92で作業するように作業車両4が走行領域9の外周に沿って移動する経路である。接続経路111は、作業開始位置101と、外周経路921と接続する経路である。接続経路112は、外周経路921と、内部経路911とを接続する経路である。この意味において、接続経路111、112は、外周経路921に含まれてもよい。ただし、接続経路111は、作業開始位置101または作業終了位置102のいずれかと、内部経路911または外周経路921のいずれかとを接続する経路であってもよい。また、接続経路112は、内部経路911と外周経路921とを接続する経路であってもよい。走行経路は、作業開始位置101から始まり、接続経路111と、内部経路911および旋回経路912と、接続経路112と、外周経路921とを順番に通って作業終了位置102で終わる、一本の経路である。
【0041】
走行経路のそれぞれの構成要素を作業車両4が走行する順番について説明する。
図6の例では、作業車両4は外周経路921を走行した後に内部経路911を走行するが、一実施の形態はこの例に限定されない。例えば、作業車両4が作業として草刈作業を行うときなど、未作業領域に作業車両4が侵入する範囲を少なくしたいときには、外周作業領域92での作業を終えた後に内部作業領域91での作業を始めることが好ましい。反対に、内部作業領域91での作業を終えた後に外周作業領域92での作業を始める場合は、作業車両4が内部経路911を走行した後に外周経路921を走行するように走行経路を生成してもよい。
【0042】
内部作業領域91について説明する。
図6の例に示すように、内部作業領域91は、走行領域9のうち、作業車両4が所定の方向に平行に移動しながら作業機5で作業を行う領域である。言い換えれば、内部経路911は、上方から見て互いに平行でそれぞれが直線の形状を有する複数の直線経路を含んでいる。内部経路911の方向は、例えば、内部作業領域91の長手方向である。内部経路911に含まれる複数の直線経路は、旋回経路912によって接続されている。旋回経路912の一部または全ては、外周作業領域92に配置されていてもよい。言い換えれば、外周作業領域92は、内部作業領域91の周囲の枕地を含んでいてもよい。ここで、内部経路911の方向が内部作業領域91の長手方向であれば、その他の方向である場合と比較して、作業車両4が内部作業領域91で作業するときに旋回する回数を少なくすることができる。内部経路911の方向を第1方向と呼ぶとき、作業車両4は、内部作業領域91において、第1方向に平行に移動する。
【0043】
外周作業領域92について説明する。外周作業領域92は、走行領域9のうち、作業車両4が走行領域9を規定する枠線群に沿って内部作業領域91の周囲を周回して移動しながら作業機5で作業を行う領域である。言い換えれば、外周経路921は、上方から見て内部作業領域91の境界線のいずれかに平行な複数の直線を含んでいる。なお、外周経路921の一部は、
図6の例に示すように、内部作業領域91の内側に含まれていてもよい。これは、作業車両4が、進行方向に対して右にオフセットされている作業機5を用いて、外周作業領域92のうち、内部作業領域91になるべく近い部分の作業を行えるためである。また、外周経路921は、走行領域9の外周に沿い、かつ、走行領域9内を移動する経路を含んでもよい。
【0044】
作業車両4の旋回方向について説明する。
図6の例では、内部経路911と旋回経路912は、作業車両4が内部作業領域91において時計回りに右旋回するように生成されている。これは、作業車両4の進行方向に対して右にオフセットされている作業機5が、作業車両4が旋回するときに走行領域9の外に出ることを抑制するためである。反対に、外周経路921は、作業車両4が外周作業領域92において反時計回りに左旋回するように生成されている。これは、作業車両4が、進行方向に対して右にオフセットされている作業機5を用いて、走行領域9のなるべく端まで作業を行えるためである。
【0045】
ステップS04の後に、
図5BのステップS05が実行される。ステップS05において、端末3の演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって、判定部316の機能が実現される。判定部316は、作業車両4が生成された走行経路に沿って走行するときに作業機5が通る場所を算出し、作業機5が走行領域9の外に出るか否かを判定する。この判定は、走行領域9を定義するパラメータと、作業機5を定義するパラメータと、走行経路を定義するパラメータとに基づいて行われてもよい。
【0046】
作業機5が走行領域9の外に出ないと判定された場合(No)は、処理はステップS06に進む。反対に、作業機5が走行領域9の外に出ると判定された場合(Yes)は、処理はステップS07に進む。
【0047】
ステップS06において、端末3の演算装置31は、生成された走行経路を確定する。演算装置31は、確定された走行経路を表す経路情報20を生成し、経路情報20を作業車両4に送信する。演算装置31は、経路情報20を端末3のタッチパネルディスプレイに表示して、経路情報20が生成されて作業車両4に送信されたことと、経路情報20の具体的な内容とを利用者に報知してもよい。この報知は、後述する報知部317の機能として実現されてもよい。ステップS06の後、
図5Aと
図5Bとに示したフローチャートは終了し、一実施の形態による経路設定方法は終了する。
【0048】
ステップS07において、端末3の演算装置31が経路設定プログラム321を実行することによって、報知部317の機能が実現される。報知部317は、判定の結果を表す報知情報を出力する。より具体的には、ステップS06で行った判定の結果を端末3の利用者が認識できるように、タッチパネルディスプレイに適宜な画像を表示するなどして報知する。この画像は、例えば、走行領域9を含む地域の地図と、走行経路を表す矢印が含まれる。走行経路を表す矢印は、複数の矢印に分割されていてもよい。分割された矢印のそれぞれは、接続経路111、112、内部経路911、旋回経路912、外周経路921またはこれらの一部を表してもよい。また、ステップS05で作業機5が走行領域9の外に出ると判定された場合は、作業機5が走行領域9の枠線群のどの位置から外に出るのかを地図上に表示してもよい。
【0049】
ステップS07の後、ステップS08が実行される。ステップS08において、報知部317は、外周作業領域92の拡大を容認するか、または外周作業領域92を維持するかについて、利用者からの指示を受け付ける。この指示は、例えば、端末3のタッチパネルディスプレイへのタッチ操作として入力されてもよいし、この指示を受け付けるためのダイアログ画像を予めタッチパネルディスプレイに表示してもよい。
【0050】
外周作業領域92を拡大する主な目的は、この拡大に伴って走行経路を設定する自由度を高めて、この自由度の範囲を変更することによって、作業機5が走行領域9の外に出ることを抑制することである。ただし、走行領域9を変更しないまま外周作業領域92を拡大することは、内部作業領域91を縮小することを意味する。そして、外周作業領域92を拡大することによって、作業の効率が低下する可能性がある。そのため、一実施の形態では、外周作業領域92を拡大するかどうかの判断を利用者に求める。
【0051】
利用者が外周作業領域92の拡大を容認する場合(Yes)は、処理はステップS09に進む。反対に、利用者が外周作業領域92の拡大を容認しない場合(No)は、処理はステップS12に進む。
【0052】
ステップS09において、外周作業領域設定部314は、ステップS03で設定された外周作業領域92の設定を、外周作業領域92を拡大するように更新する。この時、同時に、ステップS03で設定された内部作業領域91の設定は、内部作業領域91を縮小するように更新される。その後、処理は
図5AのステップS04へ戻るが、その詳細については後述する。
【0053】
一例として、
図7に示すように、内部作業領域91は
図6と比較して縮小されており、外周作業領域92は内部作業領域91が縮小された分だけ拡大されている。
図6の例では、作業車両4が外周経路921の終わりから内部経路911の始まりまで移動するときに作業機5が走行領域9の外に出た状態になった。しかし、
図7に示すように、外周作業領域92を拡大することによって、作業車両4が外周経路921の終わりから内部経路911の始まりまで移動するときに作業機5が走行領域9の外に出ない状態が得られた。
【0054】
図6の走行経路を
図7のように修正した例では、外周作業領域92を拡大したことによって、内部作業領域91がその4辺の全てにおいて縮小された。言い換えれば、内部作業領域91が有する全ての境界線を、内部作業領域91の中心へ向けて移動することで、内部作業領域91を縮小し、内部作業領域91が縮小した分だけ外周作業領域92を拡大することができる。
【0055】
別の一例として、内部作業領域91を、その4辺のうち、隣り合った2辺だけにおいて縮小する場合について説明する。まず、ステップS04において、
図6に示したような形状を有する走行経路が生成される。次に、この例では、
図8に示すように、内部作業領域91は
図6より縮小されており、外周作業領域92は内部作業領域91が縮小された分だけ拡大されている。
図8の例では、
図6と比較して、内部作業領域91の4辺のうち、作業開始位置101に面した第1辺(
図8に向かって右側の辺)と、第1辺の隣の第2辺(
図8に向かって上側の辺)とだけにおいて、内部作業領域91が縮小され、外周作業領域92が拡大されている。言い換えれば、内部作業領域91が有する境界線群のうち、第1辺としての第1境界線と、第1辺に隣接する第2辺としての第2境界線とを、それぞれ、内部作業領域91の中心に向けて移動することで、内部作業領域91が縮小し、内部作業領域91が縮小した分だけ外周作業領域92が拡大している。ここで、第1境界線または第2境界線は、境界線群のうちの、作業機5が走行領域9の外に出た状態で作業車両4が走行した経路から最も近い境界線であってもよい。また、外周作業領域92のうち拡大した部分は、第1境界線と、枠線群のうちの第1境界線と向かい合う第1枠線との間の第1部分領域と、第2境界線と、枠線群のうちの第2境界線と向かい合う第2枠線との間の第2部分領域とである。このとき、第1部分領域と第2部分領域とには、追加の外周経路921が生成される。その結果として、走行経路が内部作業領域91に入る内部経路開始位置と、走行経路が内部作業領域91から出る内部経路終了位置と、走行経路が外周作業領域92に入る外周経路開始位置と、走行経路が外周作業領域92から出る外周経路終了位置とのうちの少なくとも1つが、第1部分領域または第2部分領域に移動する。このように、
図8の例では、
図7の例と比較して、内部作業領域91の面積をより大きく確保することができ、したがって、走行領域9の全体における作業の効率をより高く保つことができる。
【0056】
図6の走行経路を
図7のように修正した場合も、
図6の走行経路を
図8のように修正した場合も、外周作業領域92のうち、作業機5が走行領域9の外に出るときに作業車両4が走行する接続経路112が配置されている部分領域を拡大する。この部分領域は、
図6、
図7および
図8のそれぞれにおいて、外周作業領域92のうち、内部作業領域91の第1辺に面する第1部分領域と、内部作業領域91の第2辺に面する第2部分領域との両方に属する角部である。言い換えれば、内部作業領域91の外周作業領域92との境界線群のうち、作業車両4が走行経路を走行するときに作業機5が走行領域9の外に出た位置から最も近い境界線を、内部作業領域91の中心に向けて移動して、境界線が移動した分だけ外周作業領域92を拡大する。このとき、作業機5が走行領域9の外に出たときに作業車両4が走行した走行経路も内部作業領域91の中心に移動されて、すなわち走行領域9の枠線群から離れるように移動される。その結果、移動された走行経路を作業車両4が走行するときに作業機5は走行領域9の外に出なくなる。
【0057】
ステップS09の後、ステップS11が実行される。ステップS11において、内部作業領域設定部313および/または外周作業領域設定部314は、内部経路911の開始位置および終了位置と、外周経路921の開始位置および終了位置との設定を更新する。より具体的には、
図7および
図8に示すように、縮小された内部作業領域91に合わせて、この後に改めて実行されるステップS04において内部経路911と旋回経路912との配置を適宜に変更できるように、内部経路911の開始位置および終了位置と、外周経路921の開始位置および終了位置との設定を適宜に更新する。内部経路911の開始位置および終了位置と、外周経路921の開始位置および終了位置との設定は、内部経路911の開始位置および終了位置と、外周経路921の開始位置および終了位置との位置を表す座標を含んでいてもよい。
【0058】
なお、内部経路911の開始位置は、言い換えれば、作業車両4が内部作業領域91に入って内部経路911が始まる内部経路開始位置である。内部経路911の終了位置は、言い換えれば、作業車両4が内部作業領域91から出て内部経路911が終わる内部経路終了位置である。外周経路921の開始位置は、言い換えれば、作業車両4が外周作業領域92に入って外周経路921が始まる外周経路開始位置である。外周経路921の終了位置は、言い換えれば、作業車両4が外周作業領域92から出て外周経路921が終わる外周経路終了位置である。
【0059】
ステップS11の後、
図5AのステップS04が再度実行される。その後、
図5BのステップS05が再度実行され、判定部316が、再度生成された走行経路に沿って作業車両4が走行するときに作業機5が走行領域9の外に出るか否かを判定する。作業機5が走行領域9の外に出ると判定された場合は、ステップS07が再度実行され、報知部317が判定の結果を表す報知情報を出力し、その後、ステップS08が再度実行され、報知部317が利用者からの指示を受け付ける。
【0060】
図5BのステップS08で外周作業領域92の拡大が容認されなかった場合に実行されるステップS12について説明する。ステップS12において、内部作業領域設定部313および/または外周作業領域設定部314は、ステップS04で生成された走行経路を生成する条件を、外周作業領域92を拡大せずに更新する。より具体的には、走行経路を生成する条件となるパラメータを適宜に更新する。
【0061】
一例として、接続経路111の設定を更新する場合について説明する。
図6に示した走行経路のうちの接続経路111は、作業車両4が主に反時計回りの左旋回をするように構成されている。そこで、
図9に示したように、作業車両4が時計回りの右旋回だけで作業開始位置101から外周経路921の開始位置まで走行できるように、接続経路111の設定を更新する。その結果、
図9の例では、作業機5が走行領域9の外に出ない。ただし、この場合は、接続経路111が走行領域9の外周部分をほぼ一周することになるという観点から、走行領域9の全体としての作業効率が低下する可能性がある。そこで、このような設定の更新を許容するかどうかについて、ステップS08の時点で利用者に指示を求めてもよい。
【0062】
別の一例として、旋回経路912の設定を更新する場合について説明する。
図10に示すように、内部作業領域91の内部経路911が隣接耕法で設定されているとき、旋回経路912はフィッシュテールターン動作を含む場合がある。ここで、フィッシュテールターン動作には、作業車両4が反時計回りの左旋回をする動作が含まれている場合がある。そこで、
図11に示したように、作業車両4が内部経路911と旋回経路912とを走行するときに時計回りの右旋回だけを行うように、内部経路911と旋回経路912との設定を更新する。その結果、
図10と
図11との例では、作業機5が走行領域9の外に出ることを抑制できる。
【0063】
なお、
図6~
図9では、作業車両4が外周経路921を走行した後に内部経路911を走行する走行経路を生成する場合について説明したが、一実施の形態はこの例に限定されない。
図10および
図11に示すように、作業車両4が内部経路911を走行した後に外周経路921を走行する走行経路を生成してもよい。
【0064】
ステップS12の後、ステップS04が再度実行される。
【0065】
以上に説明したように、一実施の形態によれば、作業機5が走行領域9の外に出ることを抑制することによって安全性を確保しながら、内部作業領域91の縮小をなるべく抑制することによって効率よく作業を行う自律走行のための経路設定が可能となる。
【0066】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態では、
図5BのステップS08において内部作業領域91が有する境界線のうちの隣接する2つの辺としての境界線を移動して外周作業領域92を拡大することによって、作業機5が走行領域9の外に出ることを抑制する走行経路を生成できることについて説明した。本実施の形態では、第1の実施の形態の変形例として、作業車両4が作業を行わずに走行する経路を外周作業領域92に設定することを容認した場合に、作業機5が走行領域9の外に出ることを抑制する、第1の実施の形態とは異なる走行経路を生成できることについて説明する。
【0067】
図12は、一実施の形態による更新された走行経路の一例を示す図である。
図12の走行経路は、
図6に示した更新前の走行経路と比較して、内部作業領域91が、その4辺のうちの向かい合う2辺において縮小されている。すなわち、内部作業領域91の4辺のうち、作業開始位置101に面した第1辺(
図12に向かって右側の辺)と、第1辺に平行な第3辺(
図12に向かって左側の辺)とだけにおいて内部作業領域91が縮小され、外周作業領域92が拡大されている。言い換えれば、内部作業領域91が有する境界線群のうち、第1辺としての第1境界線と、第1辺と向かい合う第2辺としての第2境界線とを、それぞれ、内部作業領域91の中心に向けて移動することで、内部作業領域91が縮小し、内部作業領域91が縮小した分だけ外周作業領域92が拡大している。ここで、第1境界線または第2境界線は、境界線群のうちの、作業機5が走行領域9の外に出た状態で作業車両4が走行した経路から最も近い境界線であってもよい。また、外周作業領域92のうち拡大した部分は、第1境界線と、枠線群のうちの第1境界線と向かい合う第1枠線との間の第1部分領域と、第2境界線と、枠線群のうちの第2境界線と向かい合う第2枠線との間の第2部分領域とである。このとき、第1部分領域と第2部分領域とには、追加の外周経路921が生成される。その結果として、走行経路が内部作業領域91に入る内部経路開始位置と、走行経路が内部作業領域91から出る内部経路終了位置と、走行経路が外周作業領域92に入る外周経路開始位置と、走行経路が外周作業領域92から出る外周経路終了位置とのうちの少なくとも1つが、第1部分領域または第2部分領域に移動する。このように、
図12の例でも、
図7の例と比較して、内部作業領域91の面積をより大きく確保することができ、したがって、走行領域9の全体における作業の効率をより高く保つことができる。
【0068】
図12の場合は、外周作業領域92のうち、作業機5が走行領域9の外に出た状態で作業車両4が走行する接続経路112を含む部分領域を拡大する。この部分領域は、
図6および
図12のそれぞれにおいて、外周作業領域92のうち、内部作業領域91の第1辺に面する部分に属する角部である。言い換えれば、
図8の場合同様に、内部作業領域91の外周作業領域92とを分ける境界線群のうち、作業車両4が走行経路を走行するときに作業機5が走行領域9の外に出た位置から最も近い境界線を、内部作業領域91の中心に向けて移動して、境界線が移動した分だけ外周作業領域92を拡大する。このとき、作業機5が走行領域9の外に出たときに作業車両4が走行した走行経路も内部作業領域91の中心に移動されて、すなわち走行領域9の枠線群から離れるように移動される。その結果、移動された走行経路を作業車両4が走行するときに作業機5は走行領域9の外に出なくなる。
【0069】
図5Aおよび
図13を参照して、一実施の形態による経路設定方法について説明する。
図13は、一実施の形態による経路設定方法の構成を示すフローチャートの後半部分である。このフローチャートの前半部分は、
図5Aに示した第1の実施の形態による経路設定方法の構成を示すフローチャートの前半部分と同じである。本実施の形態では、
図5AのステップS04の後、
図13のステップS05が実行される。
図13のステップS05~ステップS09、ステップS11およびステップS12は、第1の実施の形態で説明した、
図5AのステップS05~ステップS09、ステップS11およびステップS12とそれぞれ同じである。
【0070】
図13のフローチャートでは、ステップS09の後、ステップS10が実行される。ステップS10において、外周作業領域設定部314は、作業車両4が作業を行わずに走行する経路を外周作業領域92に設定する。より具体的には、外周作業領域設定部314は、外周経路921のうち、作業車両4が作業を行わずに走行する部分経路を定義するパラメータを設定する。
【0071】
作業車両4が作業を行わずに走行する部分経路とは、例えば、
図12に示したダミーラン経路922である。すなわち、ダミーラン経路922は、外周経路921のうち、作業車両4が一度走行した後に再度走行する部分経路である。作業車両4は、この部分経路を最初に走行するときに作業機5で作業を行い、再度走行するときには作業を行わずに走行する。ただし、
図12では、区別しやすいように、ダミーラン経路922を、その前に走行した外周経路921の同じ部分からずらして示している。
【0072】
こうすることで、外周作業領域92のうち、ダミーラン経路922が設定された部分領域を拡大することなく、外周作業領域92のうちのその他の部分領域だけを拡大することによって、走行領域9の全体としての作業効率をより高く保つことができる。ただし、草刈作業のように、一度走行して作業を完了した外周経路921を再度走行することは、その後に行われる別の作業(刈った草の回収など)の効率を低くする可能性がある。そこで、作業車両4が作業を行わずに走行する経路を外周作業領域92に設定することを許容するかどうかについて、ステップS08の時点で利用者に指示を求めてもよい。
【0073】
図13のフローチャートでは、ステップS10の後、ステップS11が実行される。
図13のステップS11は、
図5BのステップS11と同じである。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態によれば、作業車両4が作業を行わずに走行する経路を外周作業領域92に設定することを容認することで、第1の実施の形態とは異なる走行経路を生成できる。本実施の形態と、第1の実施の形態とを適宜に組み合わせることによって、走行経路の更新における自由度が増える。
【0075】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0076】
上記において、一実施の形態では作業機5が作業車両4の進行方向に対して右にオフセットされている場合について説明したが、一実施形態はこの例に限定されない。作業機5は作業車両4の進行方向に対して左にオフセットされていてもよいし、その場合は上記の説明のうち、左右を逆に読み替え、時計回りと反時計回りを逆に読み替えればよい。
【0077】
上記の説明において、一実施の形態ではステップS01の後にステップS02を実行したが、一変形例として、ステップS02はステップS01の前に実行してもよいし、ステップS02の一部または全てをステップS01と同時に実行してもよい。
【0078】
上記の説明において、一実施の形態ではステップS08で外周作業領域92の拡大を容認するかどうかの指示を利用者から受け付けた後に、ステップS09~S12の処理を行ったが、一実施形態はこの例に限定されない。一実施形態の変形例として、先にステップS09~S12の処理を行った後で、外周作業領域92の拡大を容認するかどうかの指示を利用者から受け付けてもよい。この場合は、ステップS09~S12で更新または変更した複数の設定の中からこの指示に適合する設定を抽出し、その後に実行されるステップS04では抽出した設定を用いた走行経路を生成してもよい。
【0079】
上記の説明において、一実施の形態ではステップS09、ステップS10およびステップS11をこの順番に実行したが、これらのステップは別の順番で実行されてもよいし、これらのステップの一部または全てが並列に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 自律作業システム
2 経路設定システム
20 経路情報
3 端末
30 バス
31 演算装置
311 走行領域設定部
312 作業機設定部
313 内部作業領域設定部
314 外周作業領域設定部
315 走行経路生成部
316 判定部
317 報知部
32 記憶装置
320 記録媒体
321 経路設定プログラム
33 インタフェース装置
34 通信装置
4 作業車両
400 アンテナ
41 第1のバス
411 CAN-WiFiルーター
412 受信BOX
413 自律走行ECU
42 第2のバス
421 ステアリングコントローラー
422 エンジンコントローラー
423 HMTコントローラー
424 UFOコントローラー
425 TECU
426 メータパネル
43 第3のバス
431 作業機ECU
5 作業機
7 サーバ
70 バス
71 演算装置
711 走行領域設定部
712 作業機設定部
713 内部作業領域設定部
714 外周作業領域設定部
715 走行経路生成部
716 判定部
717 報知部
72 記憶装置
720 記録媒体
721 経路設定プログラム
73 インタフェース装置
74 通信装置
8 ネットワーク
9 走行領域
91 内部作業領域
911 内部経路
912 旋回経路
92 外周作業領域
921 外周経路
922 ダミーラン経路
101 作業開始位置
102 作業終了位置
111 接続経路
112 接続経路