(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-05
(45)【発行日】2025-06-13
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージングを用いた粒子治療
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20250606BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016716
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2018545646の分割
【原出願日】2017-02-28
【審査請求日】2022-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-25
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524219500
【氏名又は名称】ビューレイ システムズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・エフ・デンプシー
(72)【発明者】
【氏名】シュマリュ・エム・シュヴァルツマン
(72)【発明者】
【氏名】イワン・カブリコフ
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】麻川 倫広
【審判官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533362(JP,A)
【文献】特開2013-146610(JP,A)
【文献】特開2013-150876(JP,A)
【文献】特表2009-502264(JP,A)
【文献】特開2014-23741(JP,A)
【文献】特開2010-20503(JP,A)
【文献】実開昭58-110900(JP,U)
【文献】特表2012-522557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビームを介して患者に
粒子放射線療法を送達するための粒子
放射線療法送達システムと、
前記粒子放射線療法
の送達中に患者の磁気共鳴イメージング(MRI)データを取得するように構成された磁気共鳴イメージングシステムと、
患者に対する
前記粒子放射線療法をモニタするための線量測定システムと、
前記線量測定システムの少なくとも一部を取り囲
み、前記磁気共鳴イメージングシステムによって生成される磁場を遮蔽するように構成された、磁気遮蔽構造と
、
コントローラであって、
前記粒子放射線療法の送達中に粒子放射線療法ビーム情報を受信し、
前記粒子放射線療法の送達中に患者の磁気共鳴イメージング(MRI)データを受信し、
粒子ビームが通過する軟部組織の相互作用特性を考慮に入れて、前記患者のMRIデータ及び前記粒子放射線療法ビーム情報を利用して、粒子ビームの線量堆積位置のリアルタイム計算を実行するように構成された、コントローラと、
を備
え、
前記コントローラはさらに、前記患者のMRIデータ及び前記粒子放射線療法ビーム情報を利用して、前記粒子放射線療法の送達中の前記患者への線量堆積を計算するように構成された、粒子放射線療法システム。
【請求項2】
前記磁気遮蔽構造は、複数のシェルを備える
、請求項1に記載の
粒子放射線療法システム。
【請求項3】
前記コントローラはさらに、前記計算された線量堆積に基づいて前記
粒子放射線療法を再最適化するように構成され
た、請求項
1に記載の
粒子放射線療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願.
本出願は、2016年3月2日に出願された米国仮特許出願第62/302,761号
の利益を主張し、当該出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野.
本明細書に記載の要旨は、粒子放射線療法の治療計画及び投与のための装置、システム
及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粒子療法は、典型的には癌などの増殖性組織障害を治療するために細胞を殺すために粒
子ビームを使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粒子療法は、例えば、肉眼で観察可能な腫瘍、顕微鏡的疾患を含む解剖学的領域、又は
潜在的な疾患の広がり、動き及び/又は送達の不確実性のためのマージンを含む領域に対
する、治癒効果のために電離放射線の線量を必要とする患者の標的を治療するために使用
することができる。粒子治療ビームによって供給される電離放射線は、DNA及び疾患細
胞の他の重要な成分を破壊し、細胞の複製を妨げる。
【0005】
典型的な粒子療法は、標的に所定の放射線量をどのように送達するかを決定する治療計
画を含むとともに、致命的又は衰弱性の副作用を防ぐために線量を許容可能なしきい値以
下に制限することで近傍の健康な組織を守る。治療計画はしばしば、X線コンピュータ断
層撮影(CT)データを使用して、粒子治療計画の策定と併せて患者の体の組成を決定す
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、命令を格納する非一時的なコンピュータプログラム製品が提供される。非
一時的なコンピュータプログラム製品は、
少なくとも1つのコンピューティングシステムの一部を形成する少なくとも1つのプロ
グラマブルプロセッサによって実行されるとき、少なくとも1つのプログラム可能なプロ
セッサに対して、
患者の放射線療法治療情報を受信するステップと、
患者の磁気共鳴イメージング(MRI)データを受信するステップと、
患者の放射線療法治療情報を利用し、患者MRIデータを利用して、粒子ビームが通過
する軟部組織の相互作用特性を考慮して、粒子ビームで使用するための放射線療法の治療
計画を決定するステップとを含む動作を実行させる。
患者磁気共鳴イメージングデータは、粒子線治療システムと一体化した磁気共鳴イメー
ジング装置から受信することができる。
【0007】
いくつかの変形例では、MRIシステムによって生成された磁場の粒子ビームへの影響
を説明することができる。
【0008】
放射線療法の治療計画を決定することは、粒子ビームによって軟部組織に送達される線
量の生物学的有効性の決定を含むことができる。この決定は、患者の磁気共鳴イメージン
グデータを利用して行うことができる。
【0009】
X線コンピュータ断層撮影データを受信することができる。放射線療法の治療計画を決
定することはX線コンピュータ断層撮影データを利用することができる。
【0010】
前記動作は、
患者の放射線療法治療のための放射線療法ビーム情報を受信するステップと、
粒子線を利用して、放射線療法治療中に患者の磁気共鳴イメージング(MRI)データ
を受信するステップと、
前記患者のMRIデータを利用して、粒子ビームが通過する軟部組織の相互作用特性を
考慮に入れて、前記粒子ビームの線量堆積位置のリアルタイム計算を実行するステップと
を含むことができる。
MRIシステムによって生成される磁場の粒子ビームに対する影響は、線量堆積位置の
リアルタイム計算を実行する際に考慮に入れることができる。この動作は、線量堆積位置
のリアルタイム計算が、線量堆積が標的外れで行われていることを示す場合に、粒子ビー
ムを中断することを含むことができる。動作は、線量堆積位置のリアルタイム計算が、線
量堆積が標的外れで行われていることを示す場合に、粒子ビームのエネルギーを調整する
ことを含むことができる。
【0011】
患者MRIデータ及び線量堆積位置のリアルタイム計算を利用して、標的を追跡するた
めに粒子ビームの方向を修正することができる。いくつかの変形例においては、偏向磁石
を介して粒子ビームの方向を変更することができる。いくつかの変形例では、患者MRI
データ及び放射線療法ビーム情報を利用して、放射線療法治療中の患者への蓄積された線
量の蓄積を計算することができる。
【0012】
線量堆積位置のリアルタイム計算は、患者の磁気共鳴イメージングデータを利用して、
粒子ビームによって検出される軟部組織に送達される線量の生物学的有効性の決定を含む
ことができる。放射線療法治療は、計算された線量堆積に基づいて再最適化することがで
きる。
【0013】
一態様では、放射線療法システムが記載される。当該放射線療法システムは、粒子ビー
ムを介して患者に放射線療法を送達するための粒子療法送達システムを含むことができる
。放射線療法システムは、放射線療法の間に患者の磁気共鳴画像(MRI)データを得る
ように構成された磁気共鳴イメージングシステムを含むことができる。放射線療法システ
ムは、放射線療法中に患者MRIデータを受信し、患者MRIデータを利用して、粒子ビ
ームが通過する軟部組織の相互作用特性を考慮に入れて、粒子ビームの線量堆積位置のリ
アルタイム計算を実行するように構成されたコントローラを含むことができる。
【0014】
コントローラは、線量堆積位置のリアルタイム計算が、堆積が標的外れで行われている
ことを示す場合に、粒子ビームを中断するように構成することができる。コントローラは
、線量堆積位置の計算における粒子ビームに対する磁気共鳴イメージングシステムの磁場
の影響を決定するように構成することができる。コントローラは、患者磁気共鳴イメージ
ングデータの利用を通じて、粒子ビームによって軟部組織に送達される線量の生物学的有
効性を決定するように構成することができる。
【0015】
コントローラは、線量堆積位置のリアルタイム計算が、線量堆積が標的外れで行われて
いることを示す場合、粒子ビームを中断するように構成することができる。コントローラ
は、線量堆積位置のリアルタイム計算が、線量堆積が標的外れで行われていることを示す
場合に、粒子ビームのエネルギーを調整するように構成することができる。コントローラ
は、標的を追跡するために、患者MRIデータ及び線量堆積位置のリアルタイム計算を利
用して、粒子線の方向を変更するように構成することができる。
【0016】
放射線療法システムは、偏向磁石を備えることができる。偏向磁石を用いて粒子ビーム
の方向の修正を行うことができる。
【0017】
いくつかの変形例では、コントローラは、患者MRIデータ及び粒子ビーム情報を利用
して、放射線療法中の患者への線量の蓄積を計算するように構成することができる。コン
トローラは、計算された線量堆積に基づいて放射線療法を再最適化するように構成するこ
とができる。
【0018】
放射線療法システムは、線量測定システムを備えることができる。線量測定システムは
、患者に対する放射線療法をモニタするために使用することができる。放射線療法システ
ムは、線量測定システムの少なくとも一部を取り囲む磁気遮蔽構造を備えることができる
。磁気遮蔽構造は、複数のシェルを備えることができる。複数のシェルは、環状ディスク
によって分離することができる。
【0019】
いくつかの変形例では、放射線療法システムはガントリを備えることができる。ガント
リは、患者の周りの異なる角度からの粒子ビームの送達を可能にするように構成すること
ができる。
【0020】
いくつかの変形例では、磁気共鳴イメージングシステムは、2つの分割主磁石を備える
ことができる。放射線療法システムはアイソセンタ(治療中心)を含むことができる。2
つの分割主磁石は、2つの分割主磁石の外側の境界よりも、アイソセンタから離れた場所
に位置する複数のバットレスによって分離することができる。
【0021】
本明細書に記載された要旨の1つ又はそれ以上の変形の詳細は、添付の図面及び以下の
説明に記載される。本明細書に記載される要旨の他の特徴及び利点は、説明及び図面、な
らびに請求項から明らかになるであろう。現在開示される要旨の特定の特徴は、説明目的
のために記載されるが、それは容易に理解されるべきであり、そのような特徴は限定的な
ものではないことを理解されたい。この開示に続く請求項は、保護される要旨の範囲を定
義することを意図している。
【0022】
添付の図面は本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本明細書に開示さ
れる要旨の特定の態様を示し、説明とともに、開示された実装に関連するいくつかの原理
を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ヒト組織への様々な例示的な形態の放射線療法の浸透深度を示すグラフである。
【0024】
【
図2】粒子線治療のための放射線療法の治療計画の方法のフローチャートであり、ソフトウェアによって実現可能なMRIデータを利用する。
【0025】
【
図3】本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する放射線療法システムの図である。
【0026】
【
図4】本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する放射線療法システムの図である。
【0027】
【
図5A】本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する、例えば粒子治療システムの線量測定システムの一部を遮蔽するための磁気遮蔽システムを示す。
【0028】
【
図5B】本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する、例えば粒子治療システムの線量測定システムの一部を遮蔽するための磁気遮蔽システムを示す。
【0029】
【
図6】本開示にかかる1つ又はそれ以上の要素を有する粒子線治療方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
粒子療法は、例えば癌などの疾患の治療のための強力な粒子ビームを使用する放射線療
法の一形態である。粒子ビームは、患者内の標的を標的とすることができ、標的細胞のD
NA及び他の重要な細胞成分を損傷させる可能性があり、最終的には細胞の死を引き起こ
す。癌性細胞は、非癌性細胞よりも放射線損傷を修復する能力が低いため、特に粒子療法
の影響を受けやすい。状況に応じて、「粒子療法」は、例えば陽子、中性子、反陽子、中
間子などの、ハドロンでの治療を指すために使用されることがある。また、それはまた、
例えば、リチウムイオン、ヘリウムイオン、炭素イオンなどの、イオン又は核を利用する
療法を指してもよい。しばしば、例えば炭素イオンなどのイオンによる治療は「重イオン
療法」と言われているが、「軽イオン」と「重イオン」との間の線は正確に定義されてい
ない。本明細書で使用される用語「粒子療法」、「粒子放射線療法」、「粒子線」などは
、ハドロン及び核(又はイオン)を利用する療法を指す。この用語は、具体的には、光子
療法又は電子線治療などの治療を除外している。
【0031】
図1は、ヒト組織への様々な形態の放射線療法の浸透深さを示すグラフ100である。
与えられたエネルギーに対して、電子ビームは、他の放射線療法形態と比較して(トレー
ス102によって示されるように)ヒト組織への浸透深さが低い。X線ビームは、人間の
組織に電子よりも深くまで浸透するが、組織によって吸収された線量は、トレース104
によって示されるように、X線の浸透深さとともに低下する。粒子治療ビームは、軌跡1
08によって示されるように、その範囲の終わりに患者の組織に特定の深度でより多くの
エネルギーを蓄積する。その範囲の終わり付近のこの深さは、108として示されるブラ
ッグピークと呼ばれることがある。粒子療法によってもたらされる利点は、標的の外側の
健康な組織に蓄積されるエネルギーが少なくなり、健康な組織への損傷の可能性が減少す
ることである。さらに、ブラッグピークを越えて、X線ビームと比較して堆積される線量
は非常に少ない。
【0032】
粒子放射線療法が行われる前に、治療計画が生成されなければならない。本開示は、治
療計画を生成する際の特定の様式での磁気共鳴イメージング(MRI)データの使用を企
図しており、これは、患者に送達される実際の線量と密接に一致し、所望の線量に密接に
一致する予測線量堆積を有する。また、X線コンピュータ断層撮影(CT)画像データを
用いて、例えば肺、大気、及び骨などの低密度及び高密度の組織又は領域を含む患者の組
織及び患者の領域の質量密度を決定することができる。解析は、すべての粒子ビーム経路
に対して実行できる。
【0033】
磁気共鳴イメージングシステムを使用して、MRIデータを得ることができ、分析され
たときに、標的への及び標的を通るビーム経路に沿った軟部組織のタイプをより正確に決
定することができる。次いで、MRIデータから粒子相互作用特性を決定することができ
、患者の組織及び標的に送達される線量のより正確な決定が可能になる。加えて、MRI
データは、粒子線治療の生物学的有効性のより正確な決定を可能にすることができる。
【0034】
本開示は、MRIデータをX線CTデータと組み合わせることができることを企図して
おり(例えば、変形可能な画像登録を使用することによって)化学組成及び質量密度測定
の精度を向上させ、従って、粒子療法線量の決定を改善する。X線CTデータが利用可能
でない場合には、骨を含む領域は超短波エコー時間(TE)MR画像によって決定され、
肺及び空気は、陽子密度加重MR画像から決定され得る。
【0035】
X線CTは人体に電子密度のマップを作成するのに適しており、光子線照射療法によっ
て送達される線量を決定するのに有用であり、これは光子の支配的な相互作用確率は電子
密度に比例するからである。電子密度はまた、人間の組織では、原子番号が低いという事
実のために、質量密度とよく相関しており、ここで、核は中性子対陽子の比がかなり一定
である。CTハウンズフィールド数は、人間の組織のX線に対する減衰係数を反映してい
る。従って、ハウンズフィールド数は、元素組成、元素重量及び質量密度の様々な組み合
わせについて同一であってもよく、測定されたハウンズフィールド数が、イメージ・ビー
ム硬化効果及び他のアーチファクトのために不正確であることは言うまでもない。X線C
T及びハウンズフィールド数を用いて組織を定義するときに導入された元素組成の不確実
性は、決定された粒子線の範囲が著しく誤ってしまう可能性がある。この誤差は、例えば
、エネルギー粒子の経路に沿って線量堆積を正確にモデル化するために粒子停止パワーが
必要とされるため、線量計算エラーに直接つながる可能性がある。これは粒子がその範囲
の終わりに達する場所であるからである。パワーを停止する際の不確実性は、
図1に示す
ように、ブラッグピーク108の位置における不確実性に直接的に変換され、大量の線量
領域を標的及び腫瘍から遠ざけることができ、治療標的に効果的な線量を送達することが
できず、高線量の線量を遮蔽するべき健康な組織に粒子線治療線量を送達する。
【0036】
軟部組織は、X線CT上でMRIシステムにより撮像された場合において、より良いコ
ントラストと定義を有する。上述したように、X線CTは、密度が非常に異なる組織の質
量密度及び空気又は皮質骨を含む領域の定義を決定する際に優れており、これはコントラ
ストが低くコントラストが低く、ハウンズフィールド数が低いか高いためである。しかし
、多くの軟部組織は非常に似た密度を持ち、元素組成が非常に異なっている。例えば、組
織は、脂肪様(又は脂肪様の)性質又は水様(又は筋肉様の)性質を有することができ、
非常に似た質量密度を有するが、従ってそのようなX線CTデータと区別することは困難
である。X線CTデータの画像ノイズ、アーチファクト、及び低コントラストは、現行の
方法で組織タイプを誤って識別することがしばしばある。パワーを止めるという意味では
、脂肪依存組織(CH2)又は水様組織(OH2)間の停止するときのパワーの差は、OとCの間の原子番号の差によって支配される。粒子療法に使用される数十MeV/核子以
上のエネルギーの場合、停止するときのパワーの比は重要である。
【0037】
水のみ又は脂肪のみに感受性のあるパルスシーケンスでMRIデータを取得することに
より、例えばDixon法又はサンドイッチエコーを介して組織の水対脂肪比を決定する
ことが可能になる。次に、軟部組織の元素組成の知識を改善するために、治療標的の近傍
の決定された水対脂肪比を使用することができる。MRIは、励起された陽子の信号を異
なる時間及び/又は異なる方法で読み取ることによって(シグナルは、水素がどのタイプ
の分子に結合しているかによって異なって減衰する)異なる「コントラスト」を得ること
ができる。従って、MRIを利用して異なる組織タイプをより良好に区別し、化学組成を
推測することが可能である。
【0038】
粒子ビームが通過する組織と粒子ビームとの相互作用(周波数及びタイプの相互作用)
は、ビーム粒子タイプ、粒子エネルギー、及び組織の質量密度及び化学組成を含む多くの
要因に依存する。少なくとも荷電粒子の場合、粒子相互作用は、クーロン相互作用(すな
わち、電磁的相互作用)を含む。クーロン相互作用は、ほとんど常に入射粒子の小さなエ
ネルギー損失及び/又は方向の小さな偏向をもたらす。ビームを広げさせる偏向は、クー
ロン散乱と呼ばれる。単位長さ当たりのエネルギー損失量は、停止するときのパワーと呼
ばれることがある。クーロン相互作用において粒子が経験する小さなエネルギー損失は、
組織の原子及び分子のイオン化及び励起によるものである。このような相互作用の頻度は
、粒子の経路に沿ったイオン化密度を決定する。イオン化密度が高いほど、細胞損傷の可
能性が高くなる。これは、しばしば、線形エネルギー移動(LET)と呼ばれる量で測定
される。
【0039】
粒子相互作用にはまた核相互作用であり、これはクーロン相互作用よりも頻度は低いが
、はるかに壊滅的である。それらは、核が断片に崩壊した結果となる傾向がある(例えば
、個々の陽子と中性子、重陽子、トリトン、リチウム、アルファなど)。このような断片
のタイプ及び数は、入射粒子のタイプ及びエネルギー、及びヒットした核に依存する。核
の相互作用はまた、放射性核を残し、これは崩壊して追加線量を堆積する。
【0040】
核相互作用及びクーロン散乱は核の原子番号に大きく依存する。それらは両方ともブラ
ッグピークの広がりをもたらす。イオンの場合、核相互作用はまた、ブラッグピークを超
えて堆積した線量の尾部の原因となる。ビーム経路に異質性がある場合(例えば、空洞、
骨)、クーロン散乱は、異種性の背後に複雑な線量堆積構造をもたらす。
【0041】
相互作用特性という用語が本明細書で利用される場合、例えば前記のクーロン相互作用
及び核相互作用などの相互作用特性の任意の組み合わせを意味する。例えば放射線療法の
治療計画又はリアルタイムMRI誘導のための、本開示の好ましい実施形態は、患者の組
織における投与量の位置及び量を決定するのに必要な数の相互作用特性を利用する。
【0042】
例えば炭素イオンのような「重イオン」は陽子よりはるかに壊滅的な影響を細胞に与え
る傾向がある。それらの核相互作用断片は高いLETを有し、そのエネルギーを相互作用
部位の周囲に局所的に沈着させる傾向がある。これは、陽子よりもはるかに高い「生物学
的有効性」を有する炭素イオンの主なメカニズムである。このことは、光子、電子及びさ
らには陽子と比較して、イオンのための組織内に堆積された単位エネルギーあたりに、よ
り多くの細胞が殺される(又は損傷する)ことにつながる。組織内に析出するエネルギー
は、グレー(Gy)で測定した吸収線量と呼ばれる。炭素イオンビームからの1Gyの吸
収線量は、光子又は電子線からの吸収線量の1Gyよりも3~12倍多くの細胞を殺し、
これは生物学的有効性の違いによるものである。
【0043】
粒子線治療では、生物学的有効性の決定は有益であり、適切な治療のために必要でさえ
ある。生物学的効果を決定するには、いくつかの異なる方法がある。例えば、生物学的に
有効な線量(BED)の決定は、例えば治療のタイプ、分画当たりの線量、線量率などの
ような他の要因などの多数の要因を考慮して、特定の放射線療法の生物学的効果を定量的
に示すことを目的とする。加えて、相対生物学的有効性(RBE)は、特定の療法様式の
吸収線量と光子療法のための吸収線量とを比較する比であり、ここで、各線量は同じ生物
学的効果をもたらす。
【0044】
陽子については、RBEは約1.1で一定であると長年仮定されてきたが、これは、幾
人かの研究者は最適ではない計画結果につながると主張している。陽子のRBEは1.0
に非常に近いため、このような生物学的有効性の計算を怠ることは、治療にあまり効果が
ないが、中性子、イオン、中間子などについては、RBEははるかに高く、考慮されてい
なければ治療に非常に大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0045】
生物学的有効性を決定するためには、ビームが通過する材料又は組織の相互作用特性と
ともに、入射ビームのエネルギースペクトルを知る必要がある。従って、生物学的有効性
の正確な決定には、組織の化学組成の正確な知識が不可欠である。また、入射粒子線がそ
のエネルギーの大部分(すなわち、ブラッグピーク)を失っている場所を決定することが
重要である。加えて、核反応、組織の活性化、時間線量分画及び細胞損傷対回復による線
量分布への寄与を生物学的有効性の決定に組み込むことができる。これらの理由から、患
者MRIデータは、線量計算及び治療計画におけるその重要性と同様に、生物学的有効性
測定の決定において重要である。
【0046】
MRIデータを同様に使用して、送達前の送達計画の質の評価のための組織要素組成及
び正確な線量計算の評価を可能にすることができる。送達されるべき線量の質が不十分で
ある場合、セットアップ時に収集されたデータを使用して、送達前に粒子療法治療計画を
再最適化することができる。これは、治療の送達の直前に行うことができ、患者が治療室
にいる間、又は実際の治療のために患者が到着する前に行われる。
【0047】
図2は、ソフトウェアにより実現可能なMRIデータを利用して、粒子線治療のための
放射線療法の治療計画の方法200のフローチャートであり、この方法は、本開示かかる
1つ又はそれ以上の特徴を有する。ソフトウェアは、システムコントローラの一部であっ
てもよい1つ又はそれ以上のデータプロセッサを使用して実装することができる。ソフト
ウェアは、1つ又はそれ以上のデータプロセッサによって実行される複数の機械可読命令
を含むことができ、1つ又はそれ以上のデータプロセッサに1つ又はそれ以上の動作を実
行させることができる。
【0048】
図2の202において、患者の放射線療法の治療情報を受け取ることができる。患者の
放射線療法治療情報は、例えば、標的腫瘍に必要とされる最小線量、関心のある臓器に許
容される最大線量などのようなデータを含んでもよい。本明細書に記載される患者の放射
線療法治療情報は、限定することを意図するものではない。放射線療法の治療計画システ
ムで受信される患者放射線療法治療情報は、放射線療法の治療計画に典型的な治療情報を
含むことができる。
【0049】
204において、患者のMRIデータを受信することができる。いくつかの変形例では
、患者MRIデータは、粒子治療システムと一体化した磁気共鳴イメージング装置から受
信することができる。患者MRIデータは、治療のための関心領域を包含することができ
、当該関心領域は、放射線量をモニタリングすべきである、例えば、放射線療法ビームが
通過することができる患者及び周辺組織の標的治療領域である。MRIデータは、治療そ
のものとは異なる場所で治療する前に撮影してもよいし、又はMRIデータを治療テーブ
ル上で取得することができ、ここで、MRIは粒子線治療システムと統合される。
【0050】
206において、粒子ビームと共に使用するための放射線療法の治療計画を決定するこ
とができる。放射線療法の治療計画は、患者の放射線療法治療情報を利用し、粒子ビーム
が通過する患者の軟部組織の相互作用特性を考慮するための患者MRIデータを利用する
。放射線療法の治療計画は、例えば、利用されるビームの数、放射される1つ又は複数の
ビーム方向、ビームのエネルギー、コリメータ構成などを含む。
【0051】
放射線療法の治療計画の決定はまた、粒子ビームに対するMRIの磁場の影響を説明す
ることができる。これは、患者に電離放射線を投与する線量の輸送にMRIの強い磁場の
影響を含めることを含む。相互作用の断面は、熱的効果と競合するのであるピンの分極に
強く影響されない(例えば、体温では約4ppmのスピンしか1テスラ磁場内に整列しな
い)、しかし、磁界は移動する荷電粒子に外部ローレンツ力を及ぼし、より正確な線量計
算を行うために考慮することができる。
【0052】
放射線療法の治療計画の決定はまた、患者の磁気共鳴映像データを利用して、粒子ビー
ムによって患者の軟部組織に送達される線量の生物学的有効性の決定を含むことができる
。
【0053】
図3は、本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する粒子治療システム300の図
である。粒子にエネルギーを与えるために、粒子はまず粒子加速器302によって加速さ
れる。粒子加速器は、シンクロトロン、サイクロトロン、線形加速器などであってもよい
。シンクロトロンは、低エネルギーサイクロトロン又は低エネルギー線形加速器のいずれ
かによって供給されてもよい。任意の下流調整の前の粒子ビーム304のエネルギーは、
患者306への励起粒子の浸透深さを決定する。粒子加速器は、通常、規定されたエネル
ギーを有する励起粒子線を生成する。いくつかの変形例では、例えば、ビームを、減衰媒
体に通過させることにより、粒子のエネルギーを低減することができる。患者への不要な
線量を増加させることができる二次中性子のために、患者から遠ざけることが好ましい。
減衰媒体は、エネルギーを増加又は減少させるために回転させることができるホイール又
はリニアドライブ上の材料の楔であってもよい。最大エネルギーは、ビーム内に減衰材料
を適用しないことによって得られる。最小値は、ビーム内に最も厚い量の減衰材料を適用
することによって得られる。既知の材料については、システムを停止させることなくビー
ムを停止又は中断するために、全ての励起粒子が患者に到達するのを止める厚さを決定す
ることができる。
【0054】
シンクロトロンは、シンクロトロンリング内の加速要素を通過する回数を増加又は減少
させることによって、ビームエネルギーを制御するように構成することもできる。原理的
には、線形加速器は、限定された範囲にわたって、加速ユニットの数をいくつかの固定エ
ネルギーに変更することもできる。適切な機器を使用すると、パルスからパルスへのエネ
ルギー変更が可能である。
【0055】
いくつかの変形例では、粒子治療ガントリ312を使用して、励起された粒子ビーム3
04を患者306に向けることができる。患者306は、粒子治療ガントリ312の中心
内の寝台314上に配置することができる。粒子治療ガントリ312は、線量測定システ
ム318を介してビームを患者306に向けるように構成されたガントリ電磁石316を
含むことができる。
【0056】
粒子治療ガントリ312は、異なる角度で粒子療法の送達を容易にするように回転する
ように構成することができる。いくつかの変形例では、粒子治療ガントリ312は、36
0度回転するように構成することができる。1つ又はそれ以上のスリップリングを使用し
て、粒子治療ガントリ312上に配置された電磁石へのパワーの供給を容易にすることが
できる。いくつかの変形例では、粒子治療ガントリ312は、約360度の回転フィール
ドで回転するように構成することができる。このような変形例では、粒子治療ガントリ3
12は、それが行く限り一方向に回転し、次に他の方向に回転して戻すことができる。粒
子治療ガントリ312を患者306の周りに回転させることにより、健康な組織の節約及
び治療計画の質を改善する異なる角度で標的へのエネルギー付与粒子ビーム304の送達
を容易にすることができる。
【0057】
粒子治療ガントリ312は、走査ビーム磁石320を含むことができる。走査ビーム磁
石320は、例えば、一対の電磁石を含むことができる。一対の電磁石は、互いに直交す
る平面内に磁場を有するように配置することができる。走査ビーム磁石320は、付勢さ
れた粒子ビーム304の方向を動作するように構成することができる。いくつかの変形例
では、走査ビーム磁石320は、励起された粒子ビームを患者の治療標的を横切って前後
に走査するように構成することができる。
【0058】
いくつかの変形例では、システムは、固定されたビームライン322を含むことができ
る。固定されたビームライン322は、ガントリなしで、線量測定システム318を介し
て患者に直接、付勢された粒子を送達するように構成することができる。システムはまた
、固定線ビームの付勢された粒子の方向を修正するように構成された1つ又はそれ以上の
走査ビーム電磁石320を含むことができる。
【0059】
粒子治療システムはまた、散乱体を含むことができる。散乱体は、励起粒子線304を
外側に散乱させるように構成することができる。システムはまた、ビームを広げるための
ビームウォブラー又はラスター走査機構を含むことができる。システムは、コリメータを
含むこともできる。コリメータは、複数の薄い金属ブレードを含むマルチリーフコリメー
タであってもよい。薄い金属ブレードは、可動であってもよく、その位置はコンピュータ
によって制御することができる。薄い金属ブレードは、エネルギー粒子を吸収するように
構成することができる。薄い金属ブレードは、コントローラによって、例えば、それらが
形成するアパーチャの形状が患者内の標的に対して相補的であるように配置される。この
ように、コリメータは、標的を取り囲む健康な組織の遮蔽を容易にする一方で、励起され
た粒子を標的に浸透させることができる。いくつかの変形例では、恒久的な形状に彫刻さ
れたコリメータを使用することができる。同様に、ボーラスは、付勢された粒子ビーム3
04の経路に配置することができ、通電された粒子に対して半透過性の材料から形成され
てもよく、腫瘍の形状を補うために彫刻されていてもよい。
【0060】
図4は、本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する放射線療法送達システム40
0の図である。粒子療法送達システム400は、
図3に示すシステム300の要素と同様
の1つ又はそれ以上の要素を有することができる。本開示による放射線療法システム40
0は、粒子ビームを介して患者に放射線療法を送達するための粒子療法送達システムと、
放射線療法中に患者の磁気共鳴イメージング(MRI)データを取得するように構成され
た磁気共鳴イメージングシステム402と、放射線療法中に患者のMRIデータを受信し
、患者MRIデータを利用して、粒子ビームが通過する患者の軟部組織の相互作用特性を
考慮に入れて粒子ビーム(単数又は複数)の線量堆積位置のリアルタイム計算を実行する
ように構成されたコントローラ424とを含んでもよい。
【0061】
粒子療法送達システム400は、分割磁石MRI402を有してもよい。分割磁石MR
I402は、2つの分割主磁石404及び406を含むことができる。放射線療法システ
ムは、アイソセンタ407を含むことができる。2つの分割主磁石404及び406は、
複数のバットレス408によって分離することができる。複数のバットレス408は、2
つの分割主磁石404及び406の外側境界よりアイソセンタ407から離れて配置する
ことができる。2つの分割主磁石404,406はそれぞれ1つの磁石と呼ばれるが、こ
の用語は限定的なものではありません。2つの分割主磁石404,406は、患者のMR
Iデータを得る目的で、それぞれ複数の磁石を含むことができる。
【0062】
分割MRIシステムは、説明の目的でのみ
図4に示される。使用されるMRIシステム
は、任意のタイプのMRIシステムであり得る。例えば、主磁石は、垂直の開放磁石、短
いボア磁石、ポータル又は薄い部分を有する磁石などを含むことができる。
【0063】
寝台410は、分割MRIシステム402内に配置することができる。分割MRIシス
テム402は、2つの分割主磁石404及び406の内部開口を介して、寝台410上の
患者412を受け取るように構成することができる。
【0064】
分割磁石MRIシステム402、寝台410及び患者412はすべて、例えば
図3に示
されたガントリ312のような、粒子療法ガントリ内に配置することができる。粒子治療
ガントリは、患者412の周りを回転して、粒子治療を多数の角度から患者に送達するよう
に構成することができる。
【0065】
複数のバットレス408は、2つの主なMRI磁石404及び406の間に配置するこ
とができ、MRIシステムの全体の直径をさらに大きくしないように、2つの主なMRI
磁石404及び406の外周内に配置される。システムは、一例として、2つの主なMR
I磁石404及び406の周りに等しい角度で間隔を置かれた3つのバットレス408を
含むことができる。このシステムは、粒子ビームが分割磁石の間で患者の方に向けられる
ように動作することができ。バットレス408のいずれかを通って移動しないようなやり
方で配置される。
【0066】
このシステムは、エネルギーを得て付勢された粒子が2つの主なMRI磁石404と4
06との間のギャップ419に向けられるように、患者に付勢された粒子の送達を容易に
するように構成することができる。
【0067】
粒子療法送達システム400は、患者への放射線療法をモニタするための線量測定シス
テム416を含むことができる。線量測定システム416はまた、例えばコントローラに
フィードバックを提供することによって、患者への粒子療法の送達を容易にするための1
つ又はそれ以上の構成要素を含むことができる。
【0068】
粒子治療送達システム400は、例えば、線量測定システムの少なくとも一部を取り囲
むことができる1つ又はそれ以上の磁気遮蔽構造420を含んでもよい。磁気遮蔽構造4
20は、メインMRI磁石404及び406によって生成される磁場によって悪影響を受
ける可能性がある電子機器を収容するように構成することができる。
【0069】
図5A~
図5Bは、本開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する、粒子療法送達シ
ステムの線量測定システム502の少なくとも一部を遮蔽するための例示的な磁気遮蔽構
造500を示す。磁気遮蔽構造500は、複数のシェルを含むことができる。複数のシェ
ルは、
図4に示す分割磁石MRIシステム402によって生成される磁場を遮蔽するよう
に構成された一連の同心シールドから形成することができる。同心シールドは、線量測定
システム502の少なくとも一部を取り囲むように構成することができる。
【0070】
磁気遮蔽構造500は、第1のシールド容器504を含むことができる。第1のシール
ド容器504は、円筒形本体部分506と、円筒状本体部分の一端を横切って配置された
環状ディスク508とを備えることができる。環状ディスク508は、粒子が妨げられず
に通過することを可能にする開口部510を含むことができる。いくつかの変形例では、
第1のシールド容器504は、約17インチの直径を有することができる。第1のシール
ド容器504の直径は、線量測定システム502の構成要素の少なくとも一部を十分に収
容するように選択することができる。
【0071】
磁気遮蔽構造500は、複数のシェルを備えることができる。例えば、
図5Bの504
,512及び514などである。複数のシェル504,512,514は、一緒にネスト
化することができる。複数のシェルのうちの少なくとも1つは、好ましくは、環状ディス
ク516,518などを含む。
【0072】
磁気遮蔽構造500は、分割磁石MRIシステム402に対して固定された位置に配置
されてもよく、もしくは、
図3に示されたガントリ312のように、又はガントリと共に
回転するように構成されてもよい。1つ又はそれ以上の構造体は、分割磁石MRIシステ
ム402の反対側又はその周りに配置することができ、磁気遮蔽構造500の磁気特性を
模倣するように構成される。これはMRIの磁場の均一性への干渉を最小限に抑えるため
である。
【0073】
図4に示す粒子治療送達システム400は、コントローラ424を含むことができる。
コントローラ424は、
図3に示すように、粒子療法送達システム300と電子的に通信
するように構成することができ、また、
図4に示すように、システム400からデータを
受信し、システム400を制御することができる。コントローラ424は、分割磁石MR
Iシステム402から患者MRIデータを受信するように構成することもでき、分割磁石
MRIシステム402を制御することができる。
【0074】
コントローラ424は、患者MRIデータ及び粒子ビーム情報を利用し、放射線療法中
の患者への線量の蓄積を計算するように構成してもよい。患者のMRIデータは、粒子ビ
ームに関する情報と共に、どこで、どの程度まで、線量は、時間の経過とともに患者の組
織に蓄積されるかを計算するために用いられる。実際の線量曝露は、特定の割合の治療後
に総線量が分かるように蓄積することができる。この情報は、その後の治療の一部の前に
治療計画を再最適化するために使用することができる。
【0075】
さらに、計算されたリアルタイムの線量曝露情報を利用して、治療提供中に放射線療法
の治療計画を改善又は再最適化することができる。コントローラ424は、ソフトウェア
を利用して、線量堆積位置のリアルタイム計算を実行するように構成することができる。
ソフトウェアは、複数の機械可読命令を含むことができる。コントローラ424は、機械
可読命令を実行するように構成された1つ又はそれ以上のデータプロセッサを含むことが
できる。データプロセッサによる複数の機械可読命令の実行は、例えば、本開示において
説明される1つ又はそれ以上の動作のように、データプロセッサに1つ又はそれ以上の動
作を実行させることができる。
【0076】
コントローラ424は、受信したMRIデータを利用して、治療標的の位置に対する粒
子ビームのブラッグピークを計算するように構成することができる。コントローラ424
は、さらに、患者の治療ビームを変更するように構成することができ、ここで、ビームの
ブラッグピークが治療標的に対して適切に位置していないと判定される。
【0077】
治療計画に関して論じたように、リアルタイムMRIデータを使用して、患者の体内の
脂肪様組織及び水様組織の位置を、MRIの両者を区別する能力により決定することがで
きる。患者を通るビーム経路の水組織対脂肪組織比を決定して、患者は治療中に、患者の
組織の相互作用特性をリアルタイムで決定することができる。
【0078】
粒子相互作用特性マップを実時間で生成して、線量及び範囲の計算の精度を高めること
ができる。リアルタイムで精力的な粒子と患者の組織の相互作用特性の決定は、患者が治
療されるにつれて、粒子療法の送達においてより高い精度及び有効性を促進することがで
きる。治療標的に対するブラッグピーク位置のより正確な画像を有することにより、ブラ
ッグピークの位置決めをより正確に行うことができる。このことは、周囲の健康な組織を
放射するリスクが増加することなしに、標的への放射線療法の投与量を増加させるのに役
立つ。
【0079】
コントローラ424はまた、粒子ビームに対する磁気共鳴イメージングシステムの磁場
の影響を決定するように構成されてもよい。上述したように、線量析出の位置を計算する
際に重要である。
【0080】
コントローラ424はさらに、患者の磁気共鳴イメージングデータを利用して粒子ビー
ムによって軟部組織に送達される線量の生物学的有効性を決定するように構成されてもよ
い。
【0081】
リアルタイムで提供されるMRIデータはまた、組織軌道の予測に加えて、組織の正確
な位置及び/又は速度の決定を容易にすることができる。この情報は、治療標的がどこに
あるのか、予測を提供するために使用することもでき、その結果、コントローラ424は
、システム400に粒子ビームをその場所に供給させることができる。
【0082】
コントローラ424は、線量堆積位置のリアルタイム計算が、線量堆積が標的外れで行
われていることを示す場合に、粒子ビームを中断するように構成されてもよい。治療標的
の位置は、治療の計画段階の間に得られたMRIデータから決定することができる。治療
中に、患者の解剖学的構造の変化により標的の位置が変化した可能性がある。例えば、体
重減少、完全な胃、ガスなどは、患者の画像化と患者への治療との間で治療標的の位置の
相対的な変化を引き起こす可能性がある。これは、治療が効果的ではないというリスクを
増加させ、照射されていない治療標的の少なくとも一部及び/又は健康な組織が粒子ビー
ムによって損傷されるためである。さらに、例えばモゾモゾ動くこと、呼吸、ガスの動き
などの、患者の自発的又は不随意的な動きにより、患者への粒子療法の送達中に治療領域
の位置が移動することがある。線量堆積位置のリアルタイム計算を使用して、コントロー
ラ424に線量がその意図された目標に堆積されるかどうかを判定させることができ、も
しくは、又は線量が標的外であるかどうかを決定することができる。線量が目標外である
場合、コントローラ424は粒子ビームを遮断して健康な組織への放射線量を回避するこ
とができる。コントローラ424は、計算された線量堆積位置が目標と再び一致するまで
、ビーム中断を維持することができる。
【0083】
コントローラ424は、線量堆積位置のリアルタイム計算が、堆積が標的外れで行われ
ていることを示す場合、粒子ビームのエネルギーを調整するように構成されてもよい。線
量曝露の位置のリアルタイム計算が、線量が目標外れであることを示す場合、特に、線量
が標的の短さに単に沈着している場合、又は標的を超えて沈着している場合、コントロー
ラは、粒子ビームのエネルギーを増加又は減少させるように構成されてもよい。その結果
、ドーズ量の堆積の位置が再び目標と一致する。粒子ビームのエネルギーは、ソースで、
又はソースから下流で修正することができる。
【0084】
コントローラ424は、患者MRIデータ及び線量堆積位置のリアルタイム計算を利用
して、標的を追跡するために粒子ビームの方向を変更するように構成することができる。
線量堆積位置のリアルタイム計算が、線量が目標を外れていることを示す場合、特に、ビ
ームの目標が(深さではなく)横方向に目標を外れている場合、コントローラは、線量堆
積位置が目標と再び一致するように、粒子ビームの方向を修正するように構成されてもよ
い。例えば、放射線療法システム400は、偏向磁石又は走査ビーム磁石と呼ばれること
もある偏向磁石426を含むことができる。粒子ビームの方向は、磁力を用いてビームの
軌道を偏向させるために偏向磁石を介して変更することができる。偏向磁石は、典型的に
は電磁石であり、ここで、電磁石に発生する磁力の強さは、電磁石間に変化する量の電流
を加えることによって修正することができる。
【0085】
図6は、MRIデータを利用した粒子線治療のための放射線療法治療の方法600のフ
ローチャートであり、これは、ソフトウェアによって実装されてもよく、この方法は、本
開示にかかる1つ又はそれ以上の特徴を有する。ソフトウェアは、1つ又はそれ以上のデ
ータプロセッサを使用して実装することができる。ソフトウェアは複数の機械可読命令を
含み、1つ又はそれ以上のデータプロセッサによって実行されると、1つ又はそれ以上の
データプロセッサに1つ又はそれ以上の動作を実行させることができる。方法600は、
本明細書で論じられるように、コントローラ424によって実行され得る動作の例である
。
【0086】
602において、粒子ビームを利用する患者の放射線療法治療のための放射線療法ビー
ム情報を受け取ることができる。放射線療法ビーム情報は、粒子ビームの1つ又はそれ以
上の特性を含むことができる。1つ又はそれ以上の特性は、粒子ビームの浸透能力、粒子
ビームの広がり特性、粒子ビームの数などの表示を含むことができる。
【0087】
604において、患者磁気共鳴イメージング(MRI)データは、放射線療法治療中に
受け取ることができる。
【0088】
606において、患者MRIデータを利用して、患者の軟部組織の相互作用特性を考慮
に入れて、ここで議論されるように、粒子ビームが通過する粒子ビームの線量堆積位置の
リアルタイム計算を実行することができる。MRIシステムによって生成される磁場の粒
子ビームへの影響も考慮に入れることができる。上述したように、線量堆積位置のリアル
タイム計算を実行するためのものである。そして、患者磁気共鳴イメージングデータの利
用を通じて、粒子ビームによって軟部組織に送達される線量の生物学的有効性の決定は、
リアルタイム線量計算と併せて行うこともできる。
【0089】
608において、線量堆積位置のリアルタイム計算が、堆積が標的外れで行われている
ことを示す場合、粒子ビームを中断することができる。
【0090】
いくつかの変形例では、線量堆積位置のリアルタイム計算が、堆積が標的外れで行われ
ていることを示す場合、粒子ビームのエネルギーを調整することができる。他の変形例で
は、患者のMRIデータを利用して、標的を追跡するために粒子線の方向を変更するため
の線量堆積位置のリアルタイム計算を行うことができる。
【0091】
構成要素は、本明細書で個々の機能、能力で説明されるが、個々に記載された構成要素
の機能性は、1つ又はそれ以上の他の構成要素に起因することができ、又は別々の構成要
素に分割され得ることが容易に理解されるであろう。この開示は、本明細書に記載された
正確な変形例に限定されるものではなく、現在説明される要旨のすべての実装形態を包含
するように意図される。
【0092】
前記及び請求項の記載において、「少なくとも1つ」又は「1つ又はそれ以上の」など
のフレーズは後続の要素又は機能の結び付いたリストが続くことがある。「及び/又は」
という用語は、2つ以上の要素又はフィーチャのリスト内に存在してもよい。明示的又は
黙示的に内容と矛盾しない限り、そのような語句は、列挙された要素又は特徴のいずれか
を個々に又は列挙された要素又は特徴のいずれかを意味するように意図される。他の列挙
された要素又は特徴のいずれかと組み合わせて使用される。例えば、「A及びBの少なく
とも1つ」、「A及びBの1つ又は複数」、及び「A及び/又はB」はそれぞれ、「A単
独、B単独、又は「A及びBを一緒に」を意味する。3つ以上の項目を含むリストについ
ても、同様の解釈が意図されている。例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「
A、B、及びCの1つ又は複数」及び「A、B及び/又はC」という語句はそれぞれ、「
A単独、B単独」、Cのみ、「AとBを一緒に」、「AとCを一緒に」、「BとCを一緒
に」、又は「AとBとCを一緒に」を意味する。前記に基づく及び請求項において「基づ
いて」という用語の使用は、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図して
おり、言及されていない特徴又は要素も許容される。
【0093】
本明細書に記載される要旨は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、及び/又
は物品に具体化することができる。前述の説明に記載された実施形態は、本明細書に記載
された要旨と一致する全ての実施形態を表すものではない。代わりに、それらは、記載さ
れた要旨に関連する態様と一致する単なる例に過ぎない。以上のいくつかの変形例を詳述
してきたが、他の変更又は追加が可能である。特に、本明細書に記載されたものに加えて
、さらなる特徴及び/又は変形を提供することができる。例えば、前記の実施形態は、開
示された特徴の様々な組み合わせ及びサブコンビネーション、及び/又はその組み合わせ
、及び前記で開示したいくつかのさらなる特徴のサブコンビネーションを含むものを対象
とすることができる。加えて、添付の図面に示され、及び/又は本明細書に記載された論
理フローは、必ずしも示された特定の順序又は連続した順序を必要とせず、望ましい結果
を達成する。他の実施形態は、以下の請求項の範囲内にあり得る。