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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-05
(45)【発行日】2025-06-13
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20250606BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20250606BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20250606BHJP
【FI】
A61F13/496
A61F13/49 310
A61F13/49 410
A61F13/514 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022041111
(22)【出願日】2022-03-16
(65)【公開番号】P2023135824
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2024-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕喜
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-67433(JP,A)
【文献】特開2009-28547(JP,A)
【文献】特開2004-261211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された胴周り部と、前身頃の前記胴周り部の下縁から股間部を経て後身頃の前記胴周り部の下縁まで続く中間部と、前記中間部の両側方に形成された脚開口と、前記胴周り部の上方に形成されたウエスト開口とを有し、
前記中間部の両側縁が前記脚開口の縁をなし、
前記中間部は、前記股間部に最も幅が狭い部分を有するとともに、そこから前記前身頃の前記胴周り部及び前記後身頃の前記胴周り部まで次第に幅が広くなる拡幅部を有し、
前記前身頃及び前記後身頃の少なくとも一方の前記拡幅部は、両側部に設けられたサイド非伸縮領域と、前記サイド非伸縮領域の幅方向の中央側に隣接する中間伸縮領域と、前記中間伸縮領域内に位置する第1部分及び前記サイド非伸縮領域内に位置する第2部分を有するように、幅方向に沿って延びた細長状の中間弾性部材と、前記中間弾性部材の表側を覆うように前記サイド非伸縮領域及び前記中間伸縮領域にわたり延びた第1シートと、前記中間弾性部材の裏側を覆うように前記サイド非伸縮領域及び前記中間伸縮領域にわたり延びた第2シートと、少なくとも前後方向に間隔を空けて設けられた、前記第1シート及び前記第2シートが接合された接合部と、を有し、
前記中間伸縮領域は、前記中間弾性部材とともに幅方向に伸縮するように、前記第1部分の少なくとも両端部と、前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方とを固定する固定部を有し、
前記第2部分は、前記第1シート及び前記第2シートに固定されずに自然長まで収縮しており、
前記拡幅部の側縁は、前記第1部分と前記第2部分との境界を中心とし前記第2部分の自然長に等しい半径の仮想円の外側に離れた位置を通る形状を有し、
前記拡幅部の側縁に平行で、前記拡幅部の側縁と前記仮想円との最短距離だけ離れた仮想線と、前記拡幅部の側縁との間の縁領域に、前記接合部を有している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記縁領域は、前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたとき、胴周り部側に15°の方向から反対側に90°の方向までの範囲に、前記接合部を少なくとも一つ有する、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記拡幅部には、前記中間弾性部材が前後方向に間隔を空けて複数本設けられており、
前記縁領域は、各中間弾性部材における前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたとき、0°から胴周り部側に15°の方向までの範囲、及び0°から胴周り部側と反対側に90°の方向までの範囲に各一つの前記接合部を有しており、
前記前後方向に隣り合う中間弾性部材のうち、胴周り部側の中間弾性部材における前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたときの、前記0°から胴周り部側と反対側に90°の方向までの範囲に位置する前記縁領域の前記接合部と、胴周り部側と反対側の中間弾性部材における前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたときの、前記0°から胴周り部側に15°の方向までの範囲に位置する前記縁領域の前記接合部とが、同じ接合部である、
請求項2記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記接合部は、前記第1部分の前後両側に密接する第1接合部の対と、前記サイド非伸縮領域に位置する第2接合部とを含み、
前記第1接合部の対は、幅方向に間隔を空けて繰り返し設けられ、
前記固定部は、前記第1シート及び前記第2シートのうち、前記第1接合部の対と、前記第1接合部の対の間に位置する部分とからなる筒状部分であり、
前記第2接合部は、前記サイド非伸縮領域内に、前後方向及び幅方向に間隔を空けて繰り返し設けられ、
前記サイド非伸縮領域は、前記第1部分を幅方向に沿って側方に延長した仮想延長部分から前側に前記仮想円の半径以下となる第1領域と、前記仮想延長部分から後側に前記仮想円の半径以下となる第2領域とを有し、
前記第1領域及び前記第2領域に前記第2接合部をそれぞれ有し、
前記第1領域に位置する前記第2接合部及び前記第2領域に位置する前記第2接合部の少なくとも一方が前記縁領域に位置し、
最も側方に位置する前記第1接合部の対と、その側方に隣り合う前記第2接合部との幅方向の間隔、及び幅方向に隣り合う前記第2接合部の間隔が等しく、かつ前記仮想円の半径以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項5】
個々の前記第2接合部の面積が、前記第1接合部の面積と同じか、又はより小さく、
前記サイド非伸縮領域に占める前記第2接合部の面積率が、前記中間伸縮領域に占める前記第1接合部の面積率より小さい、
請求項4記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記拡幅部の側縁は、曲率中心が内側に位置する曲線部分を、少なくとも一本の前記第1部分を幅方向に沿って側方に延長した仮想延長部分の前後両側にわたり有している、
請求項1~5のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツタイプ使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツタイプ使い捨ておむつや、パンツタイプ使い捨て生理用ナプキン、パンツタイプ使い捨ておむつカバー等のパンツタイプ使い捨て着用物品は、環状に形成された胴周り部と、前身頃の胴周り部から股間部を経て後身頃の胴周り部まで続く中間部とを有し、中間部の両側方に脚開口が形成され、胴周り部の上方にウエスト開口が形成されたものである。
【0003】
このようなパンツタイプ使い捨ておむつでは、着用者の身体表面へのフィット性を向上させるために、胴周り部や中間部を複数のシート層を有する積層構造とするとともに、そのシート層間に、幅方向に沿う細長状の弾性部材を前後方向に間隔を空けてそれぞれ幅方向に伸長した状態で取り付けて、伸縮可能とすることが行われている(例えば特許文献1~3参照)。
【0004】
また、臀部や鼠径部をより広範囲にカバーするために、中間部は、股間部に最も幅が狭い部分を有するとともに、そこから胴周り部まで次第に幅が広くなる拡幅部を有するものも知られている(例えば特許文献3参照)。この場合、中間部の両側縁が脚開口の縁となる。
【0005】
しかし、拡幅部に設けられる幅方向に沿う弾性部材が側縁又はその近傍まで固定されていると、拡幅部の側縁が波打った形状となり、装着感や見栄えに少なからず影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-23408号公報
【文献】特許6839102号公報
【文献】特開2016-067436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、拡幅部の装着感や見栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決したパンツタイプ使い捨て着用物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
環状に形成された胴周り部と、前身頃の前記胴周り部の下縁から股間部を経て後身頃の前記胴周り部の下縁まで続く中間部と、前記中間部の両側方に形成された脚開口と、前記胴周り部の上方に形成されたウエスト開口とを有し、
前記中間部の両側縁が前記脚開口の縁をなし、
前記中間部は、前記股間部に最も幅が狭い部分を有するとともに、そこから前記前身頃の前記胴周り部及び前記後身頃の前記胴周り部まで次第に幅が広くなる拡幅部を有し、
前記前身頃及び前記後身頃の少なくとも一方の前記拡幅部は、両側部に設けられたサイド非伸縮領域と、前記サイド非伸縮領域の幅方向の中央側に隣接する中間伸縮領域と、前記中間伸縮領域内に位置する第1部分及び前記サイド非伸縮領域内に位置する第2部分を有するように、幅方向に沿って延びた細長状の中間弾性部材と、前記中間弾性部材の表側を覆うように前記サイド非伸縮領域及び前記中間伸縮領域にわたり延びた第1シートと、前記中間弾性部材の裏側を覆うように前記サイド非伸縮領域及び前記中間伸縮領域にわたり延びた第2シートと、少なくとも前後方向に間隔を空けて設けられた、前記第1シート及び前記第2シートが接合された接合部と、を有し、
前記中間伸縮領域は、前記中間弾性部材とともに幅方向に伸縮するように、前記第1部分の少なくとも両端部と、前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方とを固定する固定部を有し、
前記第2部分は、前記第1シート及び前記第2シートに固定されずに自然長まで収縮しており、
前記拡幅部の側縁は、前記第1部分と前記第2部分との境界を中心とし前記第2部分の自然長に等しい半径の仮想円の外側に離れた位置を通る形状を有し、
前記拡幅部の側縁に平行で、前記拡幅部の側縁と前記仮想円との最短距離だけ離れた仮想線と、前記拡幅部の側縁との間の縁領域に、前記接合部を有している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0009】
(作用効果)
本パンツタイプ使い捨て着用物品では、拡幅部は、両側部にサイド非伸縮領域が設けられ、その幅方向の中央側に隣接して中間伸縮領域が設けられる。よって、中間伸縮領域によりフィット性を確保しつつ、拡幅部の側縁が波打った形状とならず、装着感や見栄えへの影響は少ないものとなる。そして、このようなサイド非伸縮領域を設けるには、中間弾性部材の第2部分を、第1シート及び第2シートに固定せずに自然長まで収縮させる必要があるが、その場合、拡幅部の側縁で第1シート及び第2シートが開いて、中間弾性部材の非固定の第2部分が突出し、装着感や見栄えを悪化させるおそれがある。しかし、本パンツタイプ使い捨て着用物品では、第2部分の付根から十分に離れた位置に第1シート及び第2シートの接合部を有しているため、拡幅部の側縁で第1シート及び第2シートが開きにくく、かつ多少開いたとしても、中間弾性部材の第2部分が突出しにくいものとなる。
【0010】
<第2の態様>
前記縁領域は、前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたとき、胴周り部側に15°の方向から反対側に90°の方向までの範囲に、前記接合部を少なくとも一つ有する、
第1の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0011】
(作用効果)
中間弾性部材の第2部分は使用前には側方を向いていることが多く、かつ着用時には股間側に移動しやすいため、本態様の範囲内に接合部を有すると、中間弾性部材の第2部分に近い位置で、拡幅部の側縁における第1シート及び第2シートが開きにくくなり、かつ接合部を有しない部分で第1シート及び第2シートが多少開いたとしても、そこに中間弾性部材の第2部分が露出しにくいものとなる。
【0012】
<第3の態様>
前記拡幅部には、前記中間弾性部材が前後方向に間隔を空けて複数本設けられており、
前記縁領域は、各中間弾性部材における前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたとき、0°から胴周り部側に15°の方向までの範囲、及び0°から胴周り部側と反対側に90°の方向までの範囲に各一つの前記接合部を有しており、
前記前後方向に隣り合う中間弾性部材のうち、胴周り部側の中間弾性部材における前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたときの、前記0°から胴周り部側と反対側に90°の方向までの範囲に位置する前記縁領域の前記接合部と、胴周り部側と反対側の中間弾性部材における前記仮想円の中心から見て幅方向の側方を0°としたときの、前記0°から胴周り部側に15°の方向までの範囲に位置する前記縁領域の前記接合部とが、同じ接合部である、
第2の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0013】
(作用効果)
拡幅部に中間弾性部材が複数本設けられている場合、本態様のように縁領域の接合部を配置することで、最小数の接合部で、拡幅部の側縁における第1シート及び第2シートが開きにくくなり、かつ接合部を有しない部分で第1シート及び第2シートが多少開いたとしても、そこに中間弾性部材の第2部分が露出しにくいものとなる。よって、縁領域に接合部を設けることによる柔軟性の低下を抑制することができる。
【0014】
<第4の態様>
前記接合部は、前記第1部分の前後両側に密接する第1接合部の対と、前記サイド非伸縮領域に位置する第2接合部とを含み、
前記第1接合部の対は、幅方向に間隔を空けて繰り返し設けられ、
前記固定部は、前記第1シート及び前記第2シートのうち、前記第1接合部の対と、前記第1接合部の対の間に位置する部分とからなる筒状部分であり、
前記第2接合部は、前記サイド非伸縮領域内に、前後方向及び幅方向に間隔を空けて繰り返し設けられ、
前記サイド非伸縮領域は、前記第1部分を幅方向に沿って側方に延長した仮想延長部分から前側に前記仮想円の半径以下となる第1領域と、前記仮想延長部分から後側に前記仮想円の半径以下となる第2領域とを有し、
前記第1領域及び前記第2領域に前記第2接合部をそれぞれ有し、
前記第1領域に位置する前記第2接合部及び前記第2領域に位置する前記第2接合部の少なくとも一方が前記縁領域に位置し、
最も側方に位置する前記第1接合部の対と、その側方に隣り合う前記第2接合部との幅方向の間隔、及び幅方向に隣り合う前記第2接合部の間隔が等しく、かつ前記仮想円の半径以下である、
第1~3のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0015】
(作用効果)
本態様では、サイド非伸縮領域と中間伸縮領域との見栄えの差が少なく、かつ中間伸縮領域の柔軟性にも優れるため好ましい。
【0016】
<第5の態様>
個々の前記第2接合部の面積が、前記第1接合部の面積と同じか、又はより小さく、
前記サイド非伸縮領域に占める前記第2接合部の面積率が、前記中間伸縮領域に占める前記第1接合部の面積率より小さい、
第4の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0017】
(作用効果)
本態様のように、第2接合部を第1接合部より小さく、疎らに設けることにより、拡幅部の縁に近いサイド非伸縮領域を柔軟にすることができるため好ましい。
【0018】
<第6の態様>
前記拡幅部の側縁は、曲率中心が内側に位置する曲線部分を、少なくとも一本の前記第1部分を幅方向に沿って側方に延長した仮想延長部分の前後両側にわたり有している、
第1~5のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0019】
(作用効果)
拡幅部の側縁が、本態様のような形状を有していると、縁領域を広く確保しやすいため好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、拡幅部の装着感や見栄えが向上する、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
図3】パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の斜視図である。
図4図1のC-C断面図である。
図5図1のA-A断面図である。
図6図1のB-B断面図である。
図7】展開状態の前身頃の拡幅部を拡大して示す平面図(外面側)である。
図8】展開状態の後身頃の拡幅部を拡大して示す平面図(外面側)である。
図9】展開状態の前身頃の拡幅部を拡大して示す平面図(外面側)である。
図10】展開状態の後身頃の拡幅部を拡大して示す平面図(外面側)である。
図11図7の要部を拡大して示す平面図(外面側)である。
図12】寸法の説明のための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、パンツタイプ使い捨て着用物品の一例として、パンツタイプ使い捨ておむつについて、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、図中の点模様部分はホットメルト接着剤等の接合手段を示している。
【0023】
図1図8はパンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。このパンツタイプ使い捨ておむつは、環状に形成された胴周り部Tと、前身頃Fの胴周り部Tの下縁から股間部を経て後身頃Bの胴周り部Tの下縁まで続く中間部Mと、中間部Mの両側方に形成された脚開口LOと、胴周り部Tの上方に形成されたウエスト開口WOとを有するものである。中間部Mは、股間部に最も幅が狭い部分を有するとともに、そこから前身頃Fの胴周り部T及び後身頃Bの胴周り部Tまで次第に幅が広くなる拡幅部Vを有し、中間部Mの両側縁は脚開口の縁29をなしている。
【0024】
パンツタイプ使い捨ておむつは、主に外装体20及び内装体10という2つのアセンブリにより形成されており、パンツタイプ使い捨ておむつの各部はこれら少なくとも一方のアセンブリにより形成される。内装体10は、前身頃Fの胴周り部Tから股間部を経て後身頃Bの胴周り部Tまで延びていると好ましい。前身頃Fの胴周り部T及び後身頃Bの胴周り部Tでは、外装体20が内装体10の両側縁よりも側方に延びており、前身頃Fの外装体20の両側縁と後身頃Bの外装体20の両側縁とが溶着又はホットメルト接着剤等の接合手段により接合されてサイドシール部21が形成されることにより、胴周り部T、ウエスト開口WO及び脚開口LOが形成されていると好ましい。また、拡幅部Vにおいては、外装体20が内装体10の両側縁よりも側方に延び出ており、拡幅部Vの側縁から内装体10の側縁までの部分が、外装体20のみにより形成されていると好ましい。さらに、外装体20は内装体10よりも前後両側に延びており、その前後端がウエスト開口WOの縁を形成していると好ましい。図示例では、外装体20は前身頃Fの胴周り部Tから後身頃Bの胴周り部Tにわたり前後方向LDに連続しているが、前身頃Fの胴周り部Tから前身頃Fの拡幅部Vまで延びた前外装体と、後身頃Bの胴周り部Tから後身頃Bの拡幅部Vまで延びた後外装体とを、前後方向LDに間隔を空けて別々に有していてもよい(図示略)。
【0025】
(内装体の構造例)
内装体10は、図4図6に示すように、液透過性のトップシート11と液不透過性シート12との間に吸収体18が介在された基本構造を有しており、トップシート11を透過した排泄液を吸収体18により吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、図示例のようにほぼ長方形とすることが一般的である。図示例の内装体10の両側縁は、股間部では外装体20の側縁より幅方向WDの外側に位置しているが、外装体20の側縁に一致していてもよいし、外装体20の側縁よりも幅方向WDの中央側に位置していてもよい。
【0026】
吸収体18は単層構造であっても多層構造であってもよい。吸収体18は、高吸収性ポリマー粒子を含む部材であると好ましく、パルプ繊維等の親水性短繊維及び高吸収性ポリマー粒子の混合集積物であるとより好ましい。吸収体18は、形状及びポリマー保持等のため、クレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装されたものとすることができる。
【0027】
高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0028】
高吸収性ポリマー粒子は、特に限定されるものではないが、吸水速度が35~60秒で、吸水量50~70g/gのものを好適に用いることができる。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを好適に用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、製品に要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、100~350g/m2とすることができる。
【0029】
吸収体18の形状は適宜定めることができ、それぞれ長方形状とすることもできるが、股間部にその前後両側よりも幅の狭い括れ部分13を有する形状とすることが好ましい。括れ部分13の寸法は適宜定めることができるが、その最も狭い部分の幅はこの吸収体18の全幅の40~60%程度とすることができる。
【0030】
吸収体18の表側(肌当接側)に配置されるトップシート11としては、有孔又は無孔の不織布や有孔プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになる。図示例では、トップシート11は、吸収体18の側縁部を巻き込んで吸収体18の裏側まで延在されている。
【0031】
吸収体18の裏側(非肌当接側)に配置される液不透過性シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に、炭酸カルシウム等の無機微粒子を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを好適に用いることができる。図示例では、液不透過性シート12は、トップシート11とともに吸収体18の幅方向WD両側で裏側に折り返されているが、このような構造に限定されず、公知の他の構造を採用することができる。
【0032】
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されている。この立体ギャザーBSは、図5及び図6に示されるように、内装体10の裏面の側部に固定された固定部と、この固定部から内装体の側方を経て内装体の表面の側部まで延在する本体部と、本体部の前後端部が倒伏状態で内装体の表面の側部に固定されて形成された倒伏部分と、この倒伏部分間が非固定とされて形成された自由部分とが、折り返しによって二重シートとした立体ギャザーシート15により形成されており、二重シートの間には、自由部分の先端部等に細長状のギャザー弾性部材16が配設されている。そしてこのような構造により、立体ギャザーBSは、ギャザー弾性部材16の収縮により吸収体側縁部より突出する自由部分が、製品状態において図5に二点鎖線で示すように立ち上がるようになっている。立体ギャザーシート15としては撥水性とされた不織布が好適に用いられる。
【0033】
ギャザー弾性部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、ポリオレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、伸長率は150~350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材16としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0034】
前述の立体ギャザーシート15を構成する素材繊維もトップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらに立体ギャザーシート15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0035】
(外装体の構造例)
外装体20は、図4図6にも示されるように、表側に配された第1シート20Aと、裏側に配された第2シート20Bと、これら第1シート20Aと第2シート20Bとの間、及び第2シート20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cの間に配された弾性部材とを有するものであり、自然長状態で弾性部材の収縮力により外装体20が収縮することにより、外装体20に伸縮性が付与されている。平面形状は、中間部の幅方向WDの両側が脚開口の縁29を形成するように、全体としてほぼ砂時計形状をなしている。第1シート20A及び第2シート20Bは、一枚のシートがウエスト開口WOの縁や脚開口の縁29で折り返されて重ね合わされた一方の層及び他方の層であってもよい。
【0036】
図示例の外装体20は、前身頃Fと後身頃Bとが接合されて形成された環状の胴周り部Tのうちウエスト部Wに配置されたウエスト弾性部材24と、胴周り部Tのうちウエスト部Wより股間側のウエスト下方部Uに配置されたウエスト下方弾性部材25と、中間部Mに配置された中間弾性部材26とを備えている。なお、図示例の外装体20では、脚開口の縁29に沿って前身頃Fのサイドシール部21から後身頃Bのサイドシール部21まで連続する、細長状の弾性部材は設けられていない。また、各サイドシール部21から脚開口の縁29に沿って股間部に至る細長状の弾性部材も有していない。
【0037】
ウエスト弾性部材24は、ウエスト部Wに前後方向LDに間隔を空けて複数本配置された幅方向WDに沿う細長状弾性部材であり、所定の伸長率で幅方向WDに伸長された状態で固定されたものである。このウエスト弾性部材24としては、糸ゴムの他、テープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示例のウエスト弾性部材24は、ウエスト部Wにおける第2シート20Bの折り返し部分20Cの不織布間に挟まれ、第2シート20Bに固定されているが、第1シート20Aと第2シート20Bとの間に挟まれ、第1シート20Aと第2シート20Bの少なくとも一方に固定されていても良い。一例として、ウエスト弾性部材24は、太さが620~1240dtex程度のスパンデックス糸ゴムを、3~8mm程度の間隔で、3~10本程度設けることができる。また、ウエスト部Wはウエスト弾性部材24とともに自然長の状態で幅方向WDに収縮しており、展開状態における幅方向WDの最大伸びが160~320%とされているのが好ましい。
【0038】
ウエスト下方弾性部材25は、ウエスト下方部Uにおける第1シート20Aと第2シート20Bの間に、前後方向LDに間隔を空けて複数本配置された幅方向WDに沿う細長状弾性部材であり、所定の伸長率で幅方向WDに伸長された状態で第1シート20Aと第2シート20Bの少なくとも一方に固定されたものである。一例として、ウエスト下方弾性部材25は、太さが310~1240dtex程度のスパンデックス糸ゴムを、5~20mm程度の間隔で、10~25本程度設けることができる。また、ウエスト下方部Uはウエスト下方弾性部材25とともに自然長の状態で幅方向WDに収縮しており、展開状態における幅方向WDの最大伸びが160~320%とされているのが好ましい。なお、ウエスト弾性部材24とウエスト下方弾性部材25との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、胴周り部Tに前後方向LDに間隔をおいて配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト弾性部材24として機能し、残りの弾性部材がウエスト下方弾性部材25として機能していればよい。
【0039】
中間弾性部材26は、中間部Mにおける第1シート20Aと第2シート20Bの間に1本又は前後方向LDに間隔を空けて複数本配置された幅方向WDに沿う細長状弾性部材であり、所定の伸長率で幅方向WDに伸長された状態で第1シート20Aと第2シート20Bの少なくとも一方に固定されたものである。一例として、中間弾性部材26は、太さが310~1240dtex程度のスパンデックス糸ゴムを、5~20mm程度の間隔で、1~10本程度設けることができる。また、中間部Mは中間弾性部材26とともに自然長の状態で幅方向WDに収縮しており、展開状態における幅方向WDの最大伸びが160~320%とされているのが好ましい。
【0040】
なお、図2に示すように、ウエスト下方弾性部材25及び中間弾性部材26は、製造時に外装体20に対して連続的に固定した後に、吸収体18と重なる部分の幅方向WDの中間を、所定の切断パターンで細かく切断する等により実質的に弾性部材25,26の収縮力が作用しない非伸縮領域とし、この非伸縮領域より側方に延在する部分を弾性部材25,26の収縮力が作用する伸縮領域(つまり、ウエスト下方弾性部材25及び中間弾性部材26とともに弾性伸縮する領域)とすることができる。これにより、内装体10(特に吸収体18)の幅方向WDの不必要な収縮を防止することができる。もちろん、図示しないが、ウエスト下方弾性部材25及び中間弾性部材26が内装体10を横切って連続していてもよい。
【0041】
図示例とは異なり、中間弾性部材26を、前身頃F又は後身頃Bにのみ設けるだけでも良い。
【0042】
図2図7及び図8に示すように、外装体20は、少なくとも前後方向LDに間隔を空けて設けられた、第1シート20A及び第2シート20Bが接合された接合部22,23を有する。接合部22,23はホットメルト接着剤により形成することもできるが、ヒートシールや超音波シール等の溶着手段により形成する(つまり第1シート20A及び第2シート20Bの溶着部とする)こともできる。この接合部22,23は、幅方向WDに連続していてもよいが、図示例のように幅方向WDにも間隔を空けて設けられていると、より柔軟性に富むようになる点では好ましい。
【0043】
接合部22,23は弾性部材24~26の前後両側に密接して又は離れて設けられていてもよい。このような接合部22,23は、弾性部材24~26を介さずに第1シート20A及び第2シート20Bが接合されるため溶着に適する。例えば、第1シート20A及び第2シート20Bに、弾性部材25,26の前後両側に密接する接合部22の対を幅方向WDに間隔を空けて繰り返し設け、第1シート20A及び第2シート20Bのうち、各接合部22の対とその間に位置する部分とからなる筒状の固定部27により弾性部材25,26を周囲から締め付けて固定する構造にすると好ましい(第1の構造)。これは、特許文献2記載のものと同様の構造であり、第1シート20A及び第2シート20Bの接合部22の形成により、第1シート20A及び第2シート20Bへの弾性部材25,26の固定も行うことができるという利点を有する。固定部27は、前後方向LDに間隔を空けて設けられている(つまり前後方向LDに隣り合う固定部27は離れている)と好ましい。固定部27の前後方向LDの間隔d1(図12参照)は適宜定めることができ、例えば前後方向LDに隣り合う弾性部材25,26の間隔d2(図12参照)の0.70~0.95倍とすることができる。図示例の伸縮領域では弾性部材25,26の前後に密接する接合部22の対しか設けられていないが、これとともに、図10に示すように、弾性部材25,26から前後方向LDに離れた位置(例えば隣り合う弾性部材25,26の間の領域のほぼ中央等)にも接合部23を設けることができる。
【0044】
図示しないが、第1の構造において、弾性部材25,26における接合部22の対の間に位置する部分の表面が、第1シート20A及び第2シート20Bと溶着していなくてもよいが、第1シート20A及び第2シート20Bの少なくとも一方と溶着していると、弾性部材25,26の固定がより強固となるため好ましい(第2の構造)。これに代えて、又はこれとともに、弾性部材25,26における接合部22の対の間や、伸縮領域の両端部等の適所において、弾性部材25,26の外周面にホットメルト接着剤を塗布して第1シート20A及び第2シート20Bに対する弾性部材25,26の固定を補強してもよい(第3の構造)。
【0045】
図示しないが、弾性部材24~26を介さずに第1シート20A及び第2シート20Bを溶着する接合部23を、弾性部材24~26から前後方向LDに離れた位置(例えば前後方向LDに隣り合う弾性部材24~26の間の領域のほぼ中央等)にのみ設け、弾性部材24~26をホットメルト接着剤により第1シート20A及び第2シート20Bの少なくとも一方に固定する固定部27を伸縮領域の両端部のみに設けることもできる(第4の構造)。図10に示す例で接合部22の対を省略したものがこの第4の構造に該当する。
【0046】
一方、図示しないが、接合部は弾性部材24~26と重なる位置に設けられていてもよい。このような接合部は弾性部材24~26を介して第1シート20A及び第2シート20Bが接合されるためホットメルト接着剤の使用に適している。より詳細には、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材24~26の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布して第1シート20A及び第2シート20B間に挟むことにより、当該弾性部材24~26の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、第1シート20A及び第2シート20Bへの弾性部材24~26の固定と、第1シート20A及び第2シート20Bの接合部の形成とを行うことができる(第5の構造)。この場合、接合部(ホットメルト接着剤の塗布部)は幅方向WDに間隔を空けて設けることもできるし、幅方向WDに連続的に設けることもできる。
【0047】
接合部22,23の寸法及び間隔は適宜定めることができるが、一例として接合部22の前後方向LDの寸法y1(図12参照)は0.5~3.0mmとすることができる。また、第1の構造における接合部22の対の前後方向LDの間隔d3(図12参照)は弾性部材25,26の自然長での前後方向LDの寸法より短く、例えば0.55~0.80倍程度とすることができ、それ以外の隣り合う接合部22,23の前後方向LDの間隔y2(図12参照)は0~19mmとすることができる。第1~第4の構造において、接合部22,23を幅方向WDに間隔を空けて配置する場合、接合部22,23の配列は特に限定されず、図示例のような行列状とする他、幅方向WDの位置がずれる配列(例えば千鳥状)とすることもできる。この場合における接合部22,23の幅方向WDの寸法w1(図12参照)は0.2~1.5mm、幅方向WDの間隔w2(図12参照)は3.5~8.0mmとすることができる。
【0048】
外装体20における第1シート20A及び第2シート20Bの接合構造及び弾性部材24~26の固定構造は、ウエスト部W、ウエスト下方部U、及び中間部Mのすべてで同じであってもよいし、一部のみ異なっていてもよい。例えば、ウエスト部Wは第5の構造を採用し、ウエスト下方部U及び中間部Mでは第1~第4のいずれか一つの構造を採用することができる。
【0049】
(拡幅部)
特徴的には、図7及び図8に示すように、前身頃F及び後身頃Bの拡幅部Vは、幅方向WDの全体にわたる第1シート20A及び第2シート20Bと、これらの間に挟まれた中間弾性部材26と、少なくとも前後方向LDに間隔を空けて設けられた、第1シート20A及び第2シート20Bが接合された接合部22,23を有する。これら拡幅部Vは、両側部に設けられたサイド非伸縮領域A1と、サイド非伸縮領域A1の幅方向WDの中央側に隣接する中間伸縮領域A2とを有している。サイド非伸縮領域A1と中間伸縮領域A2との境界Dは図中に二点鎖線で示されている。中間弾性部材26は、中間伸縮領域A2内に位置する第1部分26a及びサイド非伸縮領域A1内に位置する第2部分26bを有する。また、中間伸縮領域A2は、中間弾性部材26とともに幅方向WDに伸縮するように、第1部分26aの少なくとも両端部と、第1シート20A及び第2シート20Bの少なくとも一方とを固定する固定部27を有し、第2部分26bは、第1シート20A及び第2シート20Bに固定されずに自然長まで収縮している。つまり、第2部分26bは、第1シート20A及び第2シート20Bの間で自由に移動できる。さらに、拡幅部Vの側縁(図示例では脚開口の縁29に相当する)は、第1部分26aと第2部分26bとの境界を中心とし第2部分26bの自然長に等しい半径の仮想円VCの外側に離れた位置を通る形状を有し、拡幅部Vの側縁に平行で、拡幅部Vの側縁と仮想円VCとの最短距離(図示例のように仮想円VCが複数の場合、最も拡幅部Vに近い仮想円VCと拡幅部Vの側縁との最短距離を意味する)だけ離れた仮想線VLと、拡幅部Vの側縁との間の縁領域A3に、接合部23を有している。第2部分26bの長さは、第1部分26aと第2部分26bとの境界から拡幅部Vの側縁までの幅方向WDの寸法を、中間弾性部材26の取付け時の倍率で除した値にほぼ等しい。
【0050】
このように、拡幅部Vの両側部にサイド非伸縮領域A1が設けられ、その幅方向WDの中央側に隣接して中間伸縮領域A2が設けられると、中間伸縮領域A2によりフィット性を確保しつつ、拡幅部Vの側縁が波打った形状とならず、装着感や見栄えへの影響は少ないものとなる。そして、このようなサイド非伸縮領域A1を設けるには、中間弾性部材26の第2部分26bを、第1シート20A及び第2シート20Bに固定せずに自然長まで収縮させる必要があるが、その場合、拡幅部Vの側縁で第1シート20A及び第2シート20Bが開いて、中間弾性部材26の非固定の第2部分26bが突出し、装着感や見栄えを悪化させるおそれがある。しかし、図示例のように、第2部分26bの付根から十分に離れた位置に第1シート20A及び第2シート20Bの接合部23を有していると、拡幅部Vの側縁で第1シート20A及び第2シート20Bが開きにくく、かつ多少開いたとしても、中間弾性部材26の第2部分26bが突出しにくいものとなる。
【0051】
縁領域A3の接合部23の位置は適宜定めることができる。一つの好ましい例は、図11に拡大して示すように、仮想円VCの中心から見て幅方向WDの側方を0°としたとき、胴周り部T側に15°の方向から反対側に90°の方向までの範囲(より好ましくは、胴周り部T側に10°の方向から反対側に80°の方向までの範囲)の縁領域A3に、少なくとも一つの接合部23を有しているものである。中間弾性部材26の第2部分26bは使用前には側方を向いていることが多く、かつ着用時には股間側に移動しやすいため、本態様の範囲内に接合部23を有すると、中間弾性部材26の第2部分26bに近い位置で、拡幅部Vの側縁における第1シート20A及び第2シート20Bが開きにくくなり、かつ接合部23を有しない部分で第1シート20A及び第2シート20Bが多少開いたとしても、そこに中間弾性部材26の第2部分26bが露出しにくいものとなる。このため、縁領域A3には、仮想円VCの中心から見て幅方向WDの側方を0°としたとき、0°から胴周り部T側に15°の方向までの範囲、及び0°から胴周り部T側と反対側に90°の方向までの範囲に各一つの接合部23を有しているとより好ましい。特に、拡幅部Vに中間弾性部材26が前後方向LDに間隔を空けて複数本設けられている場合、前後方向LDに隣り合う中間弾性部材26のうち、胴周り部T側の中間弾性部材26における仮想円VCの中心から見て幅方向WDの側方を0°としたときの、0°から胴周り部T側と反対側に90°の方向までの範囲に位置する縁領域A3の接合部23と、反対側の中間弾性部材26における仮想円VCの中心から見て幅方向WDの側方を0°としたときの、0°から胴周り部T側に15°の方向までの範囲に位置する縁領域A3の接合部23とが、同じ接合部23であると、縁領域A3の接合部23の数が最小となり、縁領域A3に接合部23を設けることによる柔軟性の低下を抑制することができるため好ましい。
【0052】
拡幅部Vのうち縁領域A3を除いた領域に設けられる接合部22,23は前述の第1~第5の構造のいずれでもよいが、図示例のように前述の第1の構造や第2の構造であると柔軟性の点で好ましい。図示例について更に詳細に説明すると、拡幅部Vの接合部22,23は、第1部分26aの前後両側に密接する第1接合部22の対と、サイド非伸縮領域A1に位置する第2接合部23とを含んでいる。第1接合部22の対は、幅方向WDに間隔を空けて繰り返し設けられ、固定部27は、第1シート20A及び第2シート20Bのうち、第1接合部22の対と、第1接合部22の対の間に位置する部分とからなる筒状部分となっている。第2接合部23は、サイド非伸縮領域A1内に、前後方向LD及び幅方向WDに間隔を空けて繰り返し設けられる。また、サイド非伸縮領域A1のうち、第1部分26aを幅方向WDに沿って側方に延長した仮想延長部分から前側に仮想円VCの半径以下となる第1領域h1と、仮想延長部分から後側に仮想円VCの半径以下となる第2領域h2とに、第2接合部23をそれぞれ有しており、第1領域に位置する第2接合部23及び第2領域に位置する第2接合部23の少なくとも一方が縁領域A3に位置している。さらに、最も側方に位置する第1接合部22の対と、その側方に隣り合う第2接合部23との幅方向WDの間隔、及び幅方向WDに隣り合う第2接合部23の間隔が等しく、かつ仮想円VCの半径以下である。この結果、図示例では、サイド非伸縮領域A1と中間伸縮領域A2との見栄えの差が少なく、かつ中間伸縮領域A2の柔軟性にも優れる。
【0053】
特に、図示例のように、個々の第2接合部23の面積が、第1接合部22の面積と同じか、又はより小さく、サイド非伸縮領域A1に占める第2接合部23の面積率が、中間伸縮領域A2に占める第1接合部22の面積率より小さいと、拡幅部Vの縁に近いサイド非伸縮領域A1柔軟となるため好ましい。
【0054】
図7及び図8に示す例では、サイド非伸縮領域A1に位置する第2接合部23は、縁領域A3以外の部分にも設けられているが、図9に示すように縁領域A3のみに設けられていてもよい。
【0055】
他方、拡幅部Vの側縁は、図7に示す前身頃Fの拡幅部Vのように、曲率中心が側縁よりも外側にのみ位置する曲線となっていてもよいが、図8に示す後身頃Bの拡幅部Vのように、曲率中心が内側に位置する曲線部分を、少なくとも一本の第1部分26aを幅方向WDに沿って側方に延長した仮想延長部分の前後両側にわたり有していると、縁領域A3を広く確保しやすいため好ましい。つまり、前身頃Fの拡幅部Vにおいて、曲率中心が内側に位置する曲線部分を、少なくとも一本の第1部分26aを幅方向WDに沿って側方に延長した仮想延長部分の前後両側にわたり有していてもよいし、この場合に後身頃Bの拡幅部Vにおいて、曲率中心が側縁よりも外側にのみ位置する曲線となっていてもよい。
【0056】
図示例では、前身頃F及び後身頃Bの両方の拡幅部Vにサイド非伸縮領域A1を有しているが、いずれか一方(例えば前身頃F)はサイド非伸縮領域A1を有しないようになっていてもよい(つまり幅方向WDの全体が中間伸縮領域A2となる)。また、図示例では、前身頃F及び後身頃Bの両方に拡幅部V及び中間伸縮領域A2を有しているが、いずれか一方(例えば前身頃F)は拡幅部Vを有しなくてもよいし、拡幅部Vを有するものの中間伸縮領域A2を有しなくてもよい。
【0057】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0058】
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0059】
・「表面」とは、「表側」の面を意味し、「裏面」とは「裏側」の面を意味する。
【0060】
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば中間伸縮領域)における対象部分(例えば接合部)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。例えば、接合部の面積率は、例えばKEYENCE社の商品名VHX-1000を使用し、測定条件を20倍として、以下の手順で測定することができる。
(1)20倍のレンズにセットし、ピントを調節する。接合部が4×6入るように外装体の位置を調整する。
(2)接合部の領域の明るさを指定し、接合部の面積を計測する。
(3)「計測・コメント」の「面積計測」の色抽出をクリックする。接合部の部分をクリックする。
(4)「一括計測」をクリックし、「計測結果ウィンドを表示」にチェックを入れ、CSVデータで保存をする。
【0061】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0062】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から1平米あたり、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0063】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0064】
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0065】
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0066】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【0067】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ生理用ナプキン、パンツタイプ使い捨ておむつカバー等、パンツタイプ使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0069】
10…内装体、11…トップシート、12…液不透過性シート、13…括れ部分、14…包装シート、15…立体ギャザーシート、16…ギャザー弾性部材、18…吸収体、20…外装体、20A…第1シート、20B…第2シート、20C…折り返し部分、21…サイドシール部、22,23…接合部、22…第1接合部、23…第2接合部、24…ウエスト弾性部材、25…ウエスト下方弾性部材、26…中間弾性部材、26a…第1部分、26b…第2部分、27…固定部、29…脚開口の縁、A1…サイド非伸縮領域、A2…中間伸縮領域、A3…縁領域、B…後身頃、BS…立体ギャザー、F…前身頃、LD…前後方向、LO…脚開口、M…中間部、T…胴周り部、U…ウエスト下方部、V…拡幅部、VC…仮想円、VL…仮想線、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口、h1…第1領域、h2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12