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特許7692641船舶用発電機、船舶用発電機の取付方法及び船舶用発電機の輸送方法
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  • 特許-船舶用発電機、船舶用発電機の取付方法及び船舶用発電機の輸送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】船舶用発電機、船舶用発電機の取付方法及び船舶用発電機の輸送方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/18 20060101AFI20250609BHJP
【FI】
H02K7/18 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024062331
(22)【出願日】2024-04-08
【審査請求日】2024-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208123
【氏名又は名称】大洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 茂雄
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217900(WO,A1)
【文献】特開2015-204681(JP,A)
【文献】実開昭57-078268(JP,U)
【文献】特開2017-153294(JP,A)
【文献】特開平05-328675(JP,A)
【文献】特開昭62-193534(JP,A)
【文献】特開2015-220854(JP,A)
【文献】実公昭47-041685(JP,Y1)
【文献】特許第7225407(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機であって、
前記固定子が、
前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、
固定子コイルと
前記回転子が回転する回転軸の軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプと、
前記軸中心部を中心とする円環状を有する固定子コアと
を含み、
前記回転子が、
前記エンジンに取り付けられる底部と、
記軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、
前記枠部に取り付けられる永久磁石と
前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から離れるように前記径方向に延びるライナーと
を含み、
前記回転子が前記エンジンの回転に応じて回転することで発電し、
前記底部に、1以上の孔、及び、前記回転子を前記エンジンに取り付けるための取付孔が設けられ、
前記孔が、前記取付孔よりも外周側に設けられ
前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記クランプが前記固定子コアと接触する、又は、前記クランプが前記固定子コアを挟み込み、
前記径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記クランプと前記ライナーが、径方向において対向する、
船舶用発電機。
【請求項2】
固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機であって、
前記固定子が、
前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、
固定子コイルと、
前記回転子が回転する回転軸の軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプと
前記軸中心部を中心とする円環状を有する固定子コアと
を含み、
前記回転子が、
前記エンジンに取り付けられる底部と、
前記軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、
前記枠部に取り付けられる永久磁石と、
前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から離れるように前記径方向に延びるライナーと
を含み、
前記回転子が前記エンジンの回転に応じて回転することで発電し、
前記底部に、1以上の孔、及び、前記回転子を前記エンジンに取り付けるための取付孔が設けられ、
前記孔が、前記取付孔よりも外周側に設けられ、
前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記クランプの外周の形状が、前記固定子コアの外周の形状と略一致し、
前記径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記クランプと前記ライナーが、径方向において対向する、
船舶用発電機。
【請求項3】
前記孔の直径が、180mm~350mmである、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項4】
記軸中心部から、前記固定子コアの外周端部までの距離が700mm~2000mmである、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項5】
前記固定子が、
1以上の前記固定子コイルと電気的に接続するリング部
を含み、
前記固定子コイルと前記リング部とが、柔軟性及び電導性を有する接続部材によって接続される、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項6】
前記固定子が、
1以上の前記固定子コイルと電気的に接続するリング部と電気的に接続する導電部
を含み、
前記リング部と前記導電部とが、柔軟性及び電導性を有する接続部材によって接続される、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項7】
前記回転軸が延びる方向を前後方向とし、
前記ライナーが前記枠部の前端部、及び/又は、後端部に位置する、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項8】
前記ライナーが前記径方向に突出した形状を有する、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項9】
前記ライナーが前記枠部から前記径方向に延びる長さが、前記永久磁石が前記枠部から前記径方向に延びる長さよりも長い、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項10】
前記クランプと前記ライナーの間に挿入されるスペーサを備える、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項11】
固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機であって、
前記固定子が、
前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、
固定子コイルと
を含み、
前記回転子が、
前記エンジンに取り付けられる底部と、
前記回転子が回転する回転軸の軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、
前記枠部に取り付けられる永久磁石と
を含み、
前記回転子が前記エンジンの回転に応じて回転することで発電し、
前記底部に、1以上の孔、及び、前記回転子を前記エンジンに取り付けるための取付孔が設けられ、
前記孔が、前記取付孔よりも外周側に設けられ、
前記固定子が、前記回転子を固定するための回転子固定部を含み、
前記回転子が、前記固定子を固定するための固定子固定部を含む、船舶用発電機。
【請求項12】
前記固定子の上部に取り付けられ、気体を循環して冷却するクーラユニットと、
前記クーラユニットの上部に取り付けられ、気体の吸気、及び、冷却された気体を前記固定子及び前記回転子に排出を促進するためのモータと
を備える、請求項1又は2に記載の船舶用発電機。
【請求項13】
前記固定子が、外部から気体を吸気又は排気可能な開口が設けられた固定子カバー部と、該開口を覆うカバー部とを含み、
前記クーラユニットが、外部から気体を吸気又は排気可能な開口に設置されるクーラカバー部を含み、
前記カバー部と、前記クーラカバー部とが、取り外し可能である、請求項12に記載の船舶用発電機。
【請求項14】
固定子と回転子とを備える船舶用発電機をエンジンに取り付ける取付方法であって、
前記固定子が、
前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、
固定子コイルと、
前記回転子が回転する回転軸の軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプと
を含み、
前記回転子が、
前記エンジンに取り付けられる底部と、
記軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、
前記枠部に取り付けられる永久磁石と、
前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から離れるように前記径方向に延びるライナーと
を含み、
前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記固定子と前記回転子とを前記エンジンに仮固定した状態で、前記ライナーと前記クランプの間の距離を測定する測定ステップと、
測定ステップにおいて測定した結果をもとに、前記固定子と前記回転子とを前記エンジンに固定する固定ステップと
を有する取付方法。
【請求項15】
固定子と回転子とを備える船舶用発電機の輸送方法であって、
前記固定子が
ンジンに取り付けられる固定子取付部と、
固定子コイルと、
前記回転子が回転する回転軸の軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプと
を含み、
前記回転子が、
前記エンジンに取り付けられる底部と、
記軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、
前記枠部に取り付けられる永久磁石と、
前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から離れるように前記径方向に延びるライナーと
を含み、
前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、
前記ライナーと前記クランプの間にスペーサを挿入する挿入ステップと、
挿入ステップの後に、前記船舶用発電機を輸送する輸送ステップと
を有する輸送方法。
【請求項16】
前記固定子が、前記回転子を固定するための固定子固定部を含み、
前記回転子が、前記固定子を固定するための回転子固定部を含み、
前記固定子固定部と前記回転子固定部とを、固定部材を利用して連結する固定ステップと、
輸送ステップが、挿入ステップ及び固定ステップの後に、前記船舶用発電機を輸送する、
請求項15に記載の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用発電機、船舶用発電機の取付方法及び船舶用発電機の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶において、エンジンはシャフトに動力を提供し、シャフトの回転によって、プロペラが駆動される。プロペラを駆動するシャフトの回転を利用して、発電する発電機は軸発電装置と呼ばれている。例えば、エンジンとプロペラの間に設置される軸発電装置が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1の船舶の軸発電装置は、船舶のメインエンジンと船舶のプロペラの間の主軸に接続される。このような軸発電装置は、中間軸型の軸発電装置といわれている。
【0003】
特許文献1の軸発電装置のように、エンジンとプロペラの間の主軸に軸発電装置が設置される場合、エンジンとプロペラの間に軸発電装置を設置するためのスペースを確保する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-60396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の少なくとも1つの目的は、新規な船舶用発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、
[1]固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機であって、前記固定子が、前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、固定子コイルとを含み、前記回転子が、前記エンジンに取り付けられる底部と、前記回転子が回転する回転軸の軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、前記枠部に取り付けられる永久磁石とを含み、前記回転子が前記エンジンの回転に応じて回転することで発電する、船舶用発電機;
[2]前記固定子が、前記軸中心部を中心とする円環状を有する固定子コアを含み、前記軸中心部から、前記固定子コアの外周端部までの距離が700mm~2000mmである、前記[1]に記載の船舶用発電機;
[3]前記固定子が、1以上の前記固定子コイルと電気的に接続するリング部を含み、前記固定子コイルと前記リング部とが、柔軟性及び電導性を有する接続部材によって接続される、前記[1]又は[2]に記載の船舶用発電機;
[4]前記固定子が、1以上の前記固定子コイルと電気的に接続するリング部と電気的に接続する導電部を含み、前記リング部と前記導電部とが、柔軟性及び電導性を有する接続部材によって接続される、前記[1]~[3]のいずれかに記載の船舶用発電機;
[5]前記固定子が、前記軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプを含み、前記回転子が、前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から前記径方向に延びるライナーを含み、前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、前記軸中心部から径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の船舶用発電機;
[6]前記クランプと前記ライナーの間に挿入されるスペーサを備える、前記[5]に記載の船舶用発電機;
[7]前記底部に1以上の孔が設けられる、前記[1]~[6]のいずれかに記載の船舶用発電機;
[8]前記固定子が、前記回転子を固定するための回転子固定部を含み、前記回転子が、前記固定子を固定するための固定子固定部を含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の船舶用発電機;
[9]前記固定子の上部に取り付けられ、気体を循環して冷却するクーラユニットと、前記クーラユニットの上部に取り付けられ、気体の吸気、及び、冷却された気体を前記固定子及び前記回転子に排出を促進するためのモータとを備える、前記[1]~[8]のいずれかに記載の船舶用発電機;
[10]前記固定子が、外部から気体を吸気又は排気可能な開口が設けられた固定子カバー部と、該開口を覆うカバー部とを含み、前記クーラユニットが、外部から気体を吸気又は排気可能な開口に設置されるクーラカバー部を含み、前記カバー部と、前記クーラカバー部とが、取り外し可能である、前記[9]に記載の船舶用発電機;
[11]固定子と回転子とを備える船舶用発電機をエンジンに取り付ける取付方法であって、前記固定子が、前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、固定子コイルと、前記軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプとを含み、前記回転子が、前記エンジンに取り付けられる底部と、前記回転子が回転する回転軸の軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、前記枠部に取り付けられる永久磁石と、前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から前記径方向に延びるライナーとを含み、前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、前記固定子と前記回転子とを前記エンジンに仮固定した状態で、前記ライナーと前記クランプの間の距離を測定する測定ステップと、測定ステップにおいて測定した結果をもとに、前記固定子と前記回転子とを前記エンジンに固定する固定ステップとを有する取付方法;
[12]固定子と回転子とを備える船舶用発電機の輸送方法であって、前記固定子が、前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、固定子コイルと、前記軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプとを含み、前記回転子が、前記エンジンに取り付けられる底部と、前記回転子が回転する回転軸の軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、前記枠部に取り付けられる永久磁石と、前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から前記径方向に延びるライナーとを含み、前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、前記軸中心部から径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、前記ライナーと前記クランプの間にスペーサを挿入する挿入ステップと、挿入ステップの後に、前記船舶用発電機を輸送する輸送ステップとを有する輸送方法;
[13]前記固定子が、前記回転子を固定するための固定子固定部を含み、前記回転子が、前記固定子を固定するための回転子固定部を含み、前記固定子固定部と前記回転子固定部とを、固定部材を利用して連結する固定ステップと、輸送ステップが、挿入ステップ及び固定ステップの後に、前記船舶用発電機を輸送する、前記[12]に記載の輸送方法;
[14]固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機の前記固定子の製造方法であって、前記固定子が、前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、固定子コアと、少なくとも一部が、該固定子コアに設けられたスロットに収められる固定子コイルとを含み、前記固定子コイルを真空含浸するステップと、真空含浸した前記固定子コイルを、前記固定子コアに設けられた前記スロットに収めるステップとを有する、製造方法;
により解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な船舶用発電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る発電機の取付位置の概略図である。
図2A】本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の構成を一部省略して示す斜視図である。
図2B】本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の構成を一部省略して示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る固定子と回転子の構成を一部省略して示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る固定子と回転子の一部構成を拡大して示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る固定子と回転子の一部構成を示す断面概略図である。
図6】本発明の実施の形態に係る固定子の一部構成を拡大して示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の構成を一部省略して示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の取付位置の概略図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機1は、エンジン2に取り付けられる。エンジン2は、シャフト3を回転させることで、プロペラ4を駆動する。プロペラ4は、船舶を推進させるための推進器である。船舶用発電機1は、エンジン2に対して、プロペラ4を駆動するシャフト3とは反対側に取り付けられる。船舶用発電機1は、いわゆるオーバーハング型の軸発電装置である。エンジン2は、船舶用発電機1の各機構を回転させる。エンジン2は、例えば、ディーゼルエンジンやガスタービンエンジン等である。
【0011】
図1に示すように、船舶用発電機1は、固定子100と、回転子200とを備える。回転子200がエンジン2の回転に応じて回転することで、船舶用発電機1は発電する。なお、本実施の形態において、船舶用発電機1は、船舶に用いられる発電機である。船舶用発電機1は、例えば、三相交流発電機である。船舶は、特に限定されないが、例えば、大型船、中型船、及び、小型船のいずれであってもよい。また、船舶用発電機1は、船舶用に限られず、エンジン2に取り付けられて発電するものであれば、特に限定されない。例えば、船舶用発電機1は、車両や航空機に利用されてもよい。船舶用発電機1は、回転電機である。
【0012】
なお、以下では、回転子200の回転軸が延びる方向を前後方向と定義する。上下方向は、船舶用発電機1の上下方向を意味する。前後方向は、上下方向に直交している。前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。なお、左右方向及び前後方向は、説明の便宜上定義した方向である。従って、左右方向及び前後方向は、船舶用発電機1の使用時の左右方向及び前後方向と一致していなくてもよい。左方向と右方向とが入れ替わってもよく、前方向と後方向とが入れ替わってもよい。また、回転子200が回転する回転軸の中心部を軸中心部Axとし、回転子200が回転する方向を周方向Dcとする。前後方向から見た際に軸中心部Axから離れる方向を外周方向とし、前後方向から見た際に軸中心部Axに近づく方向を内周方向とする。また、前後方向と直交し、内周方向及び外周方向とに沿う方向を径方向Ddとする。また、径方向Ddにおいて、軸中心部Axに近い側を内周側とし、軸中心部Axから遠い側を外周側とする。
【0013】
また、本明細書において、部材が上方向に延びるとは、部材が上方向と平行である場合及び部材が上方向に対して傾いている場合も含む。この場合、部材と上方向とが形成する角度は、40度以下である。
【0014】
図2Aは、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の構成を一部省略して示す斜視図である。図2Bは、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の構成を一部省略して示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係る固定子と回転子の構成を一部省略して示す図である。図3は、クランプと回転子を前から後方向に目視した図である。なお、図3では、クランプの外周辺の外側には、固定子のフレームが存在するが省略する。
【0015】
図4は、本発明の実施の形態に係る固定子と回転子の一部構成を拡大して示す斜視図である。図4は、図2Bに示す領域Xを拡大した斜視図である。図4では、ライナー及び永久磁石の一部が省略されている。図5は、本発明の実施の形態に係る固定子と回転子の一部構成を拡大して示す断面図である。図5は、図3に示す斜視図におけるB-B断面図である。
【0016】
以下、船舶用発電機1の各構成について、説明する。
【0017】
[固定子]
固定子100は、固定子取付部110と、固定子コイル120と、固定子コア130と、リング部140と、導電部150と、クランプ160と、回転子固定部170と、固定子カバー部180と、カバー部184とを含む。
【0018】
固定子取付部110は、エンジン2に取り付けられる。固定子取付部110をエンジン2に取り付けることで、固定子100がエンジン2に取り付けられる。固定子取付部110には、複数の孔が設けられる。固定子取付部110に設けられた孔と、エンジン2に設けられた孔を利用して、固定子100をエンジン2に取り付ける。
【0019】
固定子コア130は、軸中心部Axを中心とする円環状を有する。固定子コア130は、軸中心部Axを中心とする円環状の電磁鋼板を前後方向に積層したものである。固定子コア130は、固定子コイル120を収めるためのスロットが設けられている(図2B図4参照)。スロットは、前後方向に延び、かつ、固定子コア130の内周端部から外周方向に延びる溝である。なお、図2Bには、円環状の固定子コア130の一部が表されている。
【0020】
軸中心部Axから、固定子コア130の外周端部までの距離をLaとすると、Laは700mm~2000mmであることが好ましく、800mm~1500mmであることがより好ましく、900mm~1100mmであることがさらに好ましい。つまり、Laは、700mm以上であることが好ましく、800mm以上であることがより好ましく、900mm以上であることがさらに好ましい。Laは、2000mm以下であることが好ましく、1500mm以下であることがより好ましく、1100mm以下であることがさらに好ましい。なお、図3に示すように、クランプ160の外周の形状と、固定子コア130の外周の形状は一致していている。
【0021】
図5に示すように、前後方向において、固定子コア130の間には、ダクトピース132が設置されている。ダクトピース132は、径方向Ddに対して傾斜する棒状部材である。ダクトピース132によって、冷却媒体が径方向Ddに流通され得る冷媒ダクトが形成される。
【0022】
クランプ160は、前後方向に積層された電磁鋼板である固定子コア130を固定する。クランプ160の材質は、特に限定されないが、精度良く加工が可能なものであることが好ましく、例えば、鉄、ステンレス等である。図5に示すように、固定子100は、クランプ160aとクランプ160bとを含む。クランプ160aは、固定子コア130の前面に設けられる。クランプ160bは、固定子コア130の後面に設けられる。クランプ160aとクランプ160bとで、固定子コア130を挟み込んでいる。なお、クランプ160aと、クランプ160bとは、同一の形状であるため、クランプ160aとクランプ160bとを区別せず、クランプ160と表す場合がある。
【0023】
クランプ160は、軸中心部Axに向かって径方向Ddに沿って延びる。クランプ160は、軸中心部Axを中心とする円環状を有する。クランプ160は、軸中心部Axを中心とする円環状の部材を前後方向に積層したものであってもよい。クランプ160の外周の形状と、固定子コア130の外周の形状は一致していてもよい。クランプ160は、固定子コイル120を収めるためのスロットが設けられている。前から後方向に見て、クランプ160のスロットの形状と、固定子コア130のスロットの形状は、同様な形状をしている(完全には一致していなくても良い)(図2B図4参照)。また、図3に示すように、前から後方向に見て、クランプ160の形状と、固定子コア130の形状は、同様な形状をしている(完全には一致していなくても良い)。
【0024】
クランプ160の前後方向の厚み(Lb)は、10mm~25mmであることが好ましく、15mm~20mmであることがより好ましい。つまり、Lbは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。Lbは、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。
【0025】
軸中心部Axに向かって延びたクランプ160の内周端部の形状が、軸中心部Axを中心とする円弧状を有する。また、径方向Ddにおいて、クランプ160の外周端部から内周端部までの距離は、固定子コア130の外周端部から内周端部までの距離と同じでもよく、該距離よりも長くてもよい。
【0026】
リング部140は、1以上の固定子コイル120と電気的に接続する。図6は、本発明の実施の形態に係る固定子の一部構成を拡大して示す斜視図である。図6は、図2Bに示す領域Yを拡大し、固定子100のフレームを透過した斜視図である。図6では、固定子コイル120、固定子コア130及びクランプ160が省略されている。
【0027】
リング部140は、固定子コイル120にて発生した電流を導電部150に流すための円環状の部材である。船舶用発電機1では、回転子200に含まれる永久磁石230が回転することで、固定子コイル120に電流が発生する。導電部150は、リング部140と電気的に接続する。固定子コイル120とリング部140とが、柔軟性及び電導性を有する接続部材400によって接続される。また、図6に示すように、リング部140と導電部150とは、柔軟性及び電導性を有する接続部材400によって接続される。
【0028】
接続部材400は、端子402、404と、接続部406とを含む。図6に示すように、端子402が導電部150に接続し、端子404がリング部140に接続する。また、端子402と端子404は、接続部406で連結されている。接続部406は、複数の細い金属線を編んで形成される導線であってもよく、例えば、細い銅線を平面状に編んだ平編銅線である。
【0029】
接続部材400が柔軟性を有するため、固定子100をエンジン2へ取り付ける際に、リング部140、固定子コイル120、及び/又は、導電部150の位置に応じて、接続部材400を接続することができる。
【0030】
回転子固定部170は、固定子100に対して、回転子200を固定する部位である。回転子固定部170は、固定子カバー部180に設けられている(図2A参照)。回転子固定部170は、後述の開口182よりも内周側に、周方向Dcに沿って8個設けられている。回転子固定部170には、孔が設けられてもよく、ナットが取り付けられてもよい。
【0031】
固定子カバー部180は、固定子100の前面に設けられている(図2A図7参照)。固定子カバー部180は、固定子100内部に設置された回転子200を覆っている。より具体的には、固定子カバー部180は、底部210の少なくとも一部と、枠部220と、を覆っている。固定子カバー部180は、円板状の前面と、前面から後方向に延びる円筒状の部材とを含む。円板状の前面の中心部には、孔が設けられていてもよい。
【0032】
また、固定子カバー部180には、外部から気体を吸気又は排気可能な開口182が設けられている。図2Aでは、開口182が周方向Dcに沿って、8個設けられている。図2Aに示すように、カバー部184は、開口182を覆っている。カバー部184は、例えば、ボルトとナットで固定子カバー部180に取り付けられている。カバー部184は、取り外し可能である。船舶用発電機1の通常運転時において、全ての開口182は、カバー部184で覆われている。
【0033】
[回転子]
回転子200は、底部210と、枠部220と、永久磁石230と、ライナー240と、固定子固定部260とを含む。
【0034】
底部210は、エンジン2に取り付けられる。底部210をエンジン2に取り付けることで、回転子200がエンジン2に取り付けられる。底部210には、回転子200をエンジン2に取り付けるための複数の孔212が設けられる。複数の孔212は、底部210の内周側に、周方向Dcに沿って、所定の間隔で設けられている。孔212と、エンジン2に設けられた孔を利用して、回転子200をエンジン2に取り付ける。
【0035】
底部210は、円環状を有する。また、底部210に1以上の孔250が設けられる。図3に示すように、底部210には、周方向Dcに沿って、所定の間隔で、孔250a~250hが設けられている。孔250a~250hは、孔212よりも外周側に位置している。
【0036】
孔250a~250hの直径(Lc)は、人の腕が通るサイズであれば特に限定されないが、例えば、180mm~350mmであることが好ましく、220mm~280mmであることがより好ましい。つまり、Lcは、180mm以上であることが好ましく、220mm以上であることがより好ましい。Lcは、350mm以下であることが好ましく、280mm以下であることがより好ましい。
【0037】
孔250a~250hの直径が、180mm以上であることで、人の腕を通すことができる、後述の回転子200のエンジン2への取り付けが容易となる。また、回転子200の重さを軽減し、船舶用発電機1の発電効率を上げることができる。また、孔250a~250hから気体を循環させることができるため、固定子100を効率よく冷却することができる。
【0038】
枠部220は、軸中心部Axを中心とする円環柱状を有する(図2B参照)。枠部220の後辺は、底部210の外周端部と接続している。
【0039】
永久磁石230は、枠部220に取り付けられる(図2B参照)。永久磁石230は、周方向Dcに沿って、枠部220の全周に所定の間隔で取り付けられている。周方向Dcに沿って並ぶ永久磁石230の磁極は、隣り合う永久磁石230同士で交互になるように設置される。なお、図2B図4には、永久磁石230の一部が表されている。
【0040】
また、図5に示すように、永久磁石230は、前後方向に複数設置される。前後方向に並ぶ永久磁石の磁極は、隣り合う永久磁石230同士で同じになるように設置される。永久磁石230は、プレート232の上に、固定されている。固定方法は特に限定されず、永久磁石230は、例えば、接着剤などで固定される。永久磁石230は、磁石カバー234で覆われている。プレート232及び磁石カバー234は、上から下方向に見て、長方形状を有している。
【0041】
ライナー240は、枠部220に取り付けられ、軸中心部Axから径方向Ddに延びる。ライナー240の材質は、特に限定されないが、精度良く加工が可能なものであることが好ましく、例えば、鉄、ステンレス等である。図5に示すように、回転子200は、ライナー240aとライナー240bとを含む。ライナー240aは、枠部220の前端部に設けられ、ライナー240bは、枠部220の後端部に設けられる。なお、ライナー240aと、ライナー240bとは、同一の形状であるため、ライナー240aとライナー240bとを区別せず、ライナー240と表す場合がある。
【0042】
ライナー240は、上部に突出した形状を有している(図3、4参照)。軸中心部Axから径方向Ddに延びたライナー240の端部の形状が、軸中心部Axを中心とする円弧状を有する。つまり、ライナー240の外周端部により形成される円弧の中心と、クランプ160の内周端部により形成される円弧の中心とは、同一である。また、径方向Ddにおいて、ライナー240の内周端部から外周端部までの距離は、永久磁石230の内周端部から外周端部までの距離、又は、プレート232の内周端部から磁石カバー234の外周端部からの距離よりも長い。
【0043】
ライナー240の前後方向の厚み(Ld)は、10mm~25mmであることが好ましく、15mm~20mmであることがより好ましい。つまり、Ldは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。Ldは、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。
【0044】
ライナー240は、前後方向に並ぶ磁石の磁極ごとに、設けられている。本実施の形態において、回転子200の前面には、ライナー240は、周方向Dcに沿って、枠部220に36個形成される。同様に、回転子200の後面には、ライナー240が、周方向Dcに沿って、枠部220に36個形成される。ライナー240は、それぞれ同じ形状を有する。
【0045】
径方向Ddにおける、ライナー240の上端部からクランプ160の下端部までの距離(Le)は、後述のスペーサ500を挿入することができる距離である。例えば、Leは、4mm~8mmであることが好ましい。つまり、Leは、4mm以上であることが好ましい。Leは、8mm以下であることが好ましい。
【0046】
図5に示すように、クランプ160a、ライナー240a及び枠部220の前面は同一面上に位置する。また、クランプ160b、ライナー240b及び枠部220の後面は同一面上に位置する。
【0047】
固定子固定部260は、回転子200に対して、固定子100を固定する部位である。固定子固定部260は、底部210に設けられている。固定子固定部260は、孔250よりも外周側に、周方向Dcに沿って8個設けられている。固定子固定部260は、回転子固定部170と対応するように設けられる。固定子固定部260には、孔が設けられてもよく、ナットが取り付けられてもよい。
【0048】
船舶用発電機1は、スペーサ500を備えてもよい。図5に示すように、スペーサ500は、クランプ160とライナー240の間に挿入される。スペーサ500の材質は、特に限定されないが、剛性を有するものであることが好ましく、例えば、ステンレス、鉄、銅等である。
【0049】
スペーサ500は、板形状を有する。スペーサ500の厚みは、クランプ160と、ライナー240の間の長さよりも短い。より具体的には、径方向Ddにおける、クランプ160の内側端部から、ライナー240の外側端部までの距離よりも、スペーサ500の厚みが短い。また、スペーサ500の前後方向の長さは、クランプ106aとクランプ106bの間の長さ又はライナー240aとライナー240bの間の長さよりも長い。
【0050】
なお、スペーサ500は、軸中心部Axを中心とする円環柱状を有していてもよい。スペーサ500は、円環柱状の部材を複数に分割したものであってもよい。
【0051】
[クーラユニット及びモータ]
図7は、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機の構成を一部省略して示す斜視断面図である。図7は、図2Aの斜視図におけるA-A斜視断面図である。図2A図2B、及び図7に示すように、船舶用発電機1は、クーラユニット300と、モータ320とを備える。クーラユニット300は、固定子100の上部に取り付けられる。
【0052】
クーラユニット300は、クーラ本体306と、フィン308と、クーラカバー部304a、304bとを含む。クーラ本体306には、冷却媒体である気体を冷却する水を入れることができる。クーラユニット300は、気体を循環して冷却する。クーラユニット300内の気体は、クーラ本体306の下部に設けられた第1領域310から吸気され、クーラ本体306を通過し、クーラ本体306の上部に設けられた第2領域312から排出され、固定子100及び回転子200内に流通される。具体的には、第1領域310から吸気された気体は、クーラ本体306の左部から上部を通過する。クーラ本体306の上部を通過することで冷却された気体は、第2領域312からフィン308を通過し、固定子100内部に流通される。固定子100内部を流通した気体は、第1領域310から吸気される。なお、クーラユニット300内の気体は、第2領域312から吸気され、クーラ本体306を通過し、第1領域310から排出され、固定子100及び回転子200内に流通されてもよい。
【0053】
クーラカバー部304aは、外部から気体を吸気又は排気可能な開口302aに設置される。同様に、クーラカバー部304bは、外部から気体を吸気又は排気可能な開口302bに設置される。クーラカバー部304a、304bは、クーラユニット300から取り外し可能である。船舶用発電機1の通常運転時において、開口302a、302bは、クーラカバー部304a、304bで覆われている。
【0054】
モータ320は、クーラユニット300の上部に取り付けられ、固定子100及び回転子200内に流通する気体の吸気及び排出を促進する。モータ320は、モータ本体322a、322bと、羽根車324とを含む。モータ320は、上下方向に平行な軸を中心に回転する。
【0055】
次に、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機1をエンジンに取り付ける方法について説明する。本発明の実施の形態に係る船舶用発電機1は、回転子200に永久磁石230を含むため、回転子200が固定子100に挿入された状態で取り付けが行われる。
【0056】
まず、技術者は、固定子100と回転子200とをエンジン2に仮固定した状態で、ライナー240とクランプ160の間の距離を測定する。ライナー240とクランプ160の間の距離を測定する方法は特に限定されないが、例えば、テーパ状のギャップゲージをライナー240とクランプ160の間に挿入することで、ライナー240とクランプ160の間の距離を測定してもよい。
【0057】
技術者は、測定した結果をもとに、固定子100と回転子200とをエンジン2に固定する。具体的には、技術者は、取り付けられた複数のライナー240において、ライナー240とクランプ160の間の距離の測定を繰り返す。技術者は、複数のライナー240において測定したライナー240とクランプ160の間の距離が、所定の距離の範囲内になるように、回転子200又は固定子100の左右方向又は上下方向の位置を調整する。ライナー240とクランプ160の間の距離が所定の距離の範囲内であることを確認し、固定子100と回転子200とをエンジン2に固定する。
【0058】
ここで、回転子200のエンジン2への取り付けは、例えば、以下のように実行できる。回転子200の底部210をエンジン2のフランジに接触させる。技術者は、底部210の前面から孔250に腕を通す。そして、エンジン2のフランジに設けられた孔から孔212に、ナットを取り付けたスタットボルトをフランジの裏面から差し込む。そして、孔212から突出するスタッドボルトにナットを取り付け、ボルトテンショナーでスタットボルトを引っ張っている間にナットを締めつける。孔212のそれぞれでボルトの固定を繰り返すことで、回転子200をエンジン2に取り付けることができる。
【0059】
次に、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機1を輸送する方法について説明する。本発明の実施の形態に係る船舶用発電機1は、回転子200に永久磁石230を含むため、回転子200と固定子100とを一体として輸送する。
【0060】
まず、技術者は、ライナー240とクランプ160の間にスペーサ500を挿入する。次に、技術者は、スペーサ500を挿入後、船舶用発電機1を輸送する。なお、スペーサ500は、船舶用発電機1を船内等の設置場所に輸送し、エンジン2に取り付けた後に、取り除かれる。
【0061】
また、船舶用発電機1を輸送する方法は、以下のように実行されてもよい。まず、技術者は、固定子固定部260と回転子固定部170とを、固定部材を利用して連結する。これにより、固定子100が回転子200に対して固定され、且つ、回転子200が固定子100に対して固定される。次に、技術者は、固定部材によって、固定子100と回転子200とを固定した後に、船舶用発電機1を輸送する。固定部材は、特に限定されないが、例えば、ボルトとナットである。
【0062】
なお、スペーサ500の挿入及び固定子固定部260と回転子固定部170との固定を実施した後に、船舶用発電機1を輸送してもよい。
【0063】
次に、本発明の実施の形態に係る船舶用発電機1の固定子100を製造する方法について説明する。まず、固定子コイル120が含浸樹脂内で真空含浸される。真空含浸することで、固定子コイル120が絶縁される。次に、技術者は、真空含浸した固定子コイル120を、図4に示すように、固定子コア130及びクランプ160に設けられたスロットに収める。なお、図4には、一部の固定子コイル120が表されている。
【0064】
これにより、固定子コイル120を固定子コア130のスロットに収めた状態で真空含浸する場合と比較して、真空含浸する対象物のサイズを小さくすることができる。そのため、船舶用発電機1のサイズを大型化することができる。
【0065】
なお、真空含浸された固定子コイル120は、乾燥させた後に固定子コア130のスロットに収められてもよく、固定子コア130のスロットに収められた後に乾燥されてもよい。
【0066】
なお、上記では、ライナー240は、回転子200の前面において、枠部220の全周に36個設けられていたが、ライナー240の数は特に限定されない。例えば、ライナー240は、枠部220において、軸中心部Axと対称となるように配置されればよい。
【0067】
なお、船舶用発電機1に設けられる回転子固定部170、開口182、孔212、孔250、及び/又は、固定子固定部260の数は、特に限定されず、船舶用発電機1の大きさや形状に応じて適宜設計可能である。
【0068】
このように、固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機であって、前記固定子が、前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、固定子コイルとを含み、前記回転子が、前記エンジンに取り付けられる底部と、前記回転子が回転する回転軸の軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、前記枠部に取り付けられる永久磁石とを含み、前記回転子が前記エンジンの回転に応じて回転することで発電することで、新規な船舶用発電機を提供することができる。また、回転子が永久磁石を含むため、発電する際に回転子に界磁電流を流すことを省略でき、発電に係るエネルギー消費を軽減することができる。また、船舶用発電機がエンジンに取り付けられるため、エンジンとプロペラの間に発電機を設けるスペースを確保する必要がなく、船舶の形状の設計の自由度を高めることができる。
【0069】
また、このように、前記固定子が、前記軸中心部を中心とする円環状を有する固定子コアを含み、前記軸中心部から、前記固定子コアの外周端部までの距離が700mm~2000mmであることで、船舶用発電機のサイズを大きくすることができる。
【0070】
また、このように、前記固定子が、1以上の前記固定子コイルと電気的に接続するリング部、又は、前記リング部と電気的に接続する導電部を含み、前記固定子コイルと前記リング部とが、又は、前記リング部と前記導電部とが、柔軟性及び電導性を有する接続部材によって接続されることで、固定子をエンジンに取り付ける際にリング部の取り付けが容易となる。
【0071】
また、このように、前記固定子が、前記軸中心部に向かって径方向に沿って延びるクランプを含み、前記回転子が、前記枠部に取り付けられ、前記軸中心部から前記径方向に延びるライナーを含み、前記軸中心部に向かって延びた前記クランプの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有し、前記軸中心部から径方向に延びた前記ライナーの端部の形状が、前記軸中心部を中心とする円弧状を有することで、固定子と回転子との間の距離が均等となるように、固定子と回転子とをエンジンに取り付けることができる。これにより、固定子に取り付けられた複数の固定子コイルにおいて、それぞれの固定子コイルで発生する電力を均等にすることができる。
【0072】
また、このように、前記クランプと前記ライナーの間に挿入されるスペーサを備えることで、船舶用発電機を輸送する際に、固定子と回転子とを固定することができる。さらに、固定子と回転子とを固定するために、前記固定子が、前記回転子を固定するための回転子固定部を含み、前記回転子が、前記固定子を固定するための固定子固定部を含むことが好ましい。これにより、輸送時の振動等により固定子と回転子が接触して、固定子や回転子が破損することを防ぐことができる。
【0073】
また、このように、前記底部に1以上の孔が設けられることで、回転子をエンジンに取り付けることが容易となる。
【0074】
また、このように、前記固定子の上部に取り付けられ、気体を循環して冷却するクーラユニットと、前記クーラユニットの上部に取り付けられ、気体の吸気、及び、冷却された気体を前記固定子及び前記回転子に排出を促進するためのモータとを備えることで、固定子及び回転子を冷却できる。
【0075】
船舶用発電機1の通常運転時において、全ての開口182は、カバー部184に覆われ、且つ、開口302a、302bは、クーラカバー部304a、304bで覆われている。そのため、船舶用発電機1の冷却には、固定子100内部の気体が利用される。船舶用発電機1が設置される機関室の空気は、炭素等の汚れを含むが、上記のように冷却することにより、永久磁石230に汚れが付着することを軽減できる。また、このように、前記固定子が、外部から気体を吸気又は排気可能な開口が設けられた固定子カバー部と、該開口を覆うカバー部とを含み、前記クーラユニットが、外部から気体を吸気又は排気可能な開口に設置されるクーラカバー部を含み、前記カバー部と、前記クーラカバー部とが、取り外し可能であることで、クーラユニットの部材が故障した場合においても、回転子及び固定子を冷却することができる。
【0076】
例えば、クーラ本体306が故障した場合、技術者は、カバー部184及びクーラカバー部304a、304bを取り外す。これにより、開口182から気体が吸気され、開口302a、302bから気体が排気される。或いは、開口302a、302bから気体が吸気され、開口182から気体が排気される。このように、故障時においても固定子100内部を冷却することができる。なお、モータ320は、開口182からの気体の吸気及び開口302a、302bからの気体の排出、又は、開口302a、302bからの気体の吸気及び開口182からの気体の排出を促進してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 船舶用発電機 2 エンジン 3 シャフト 4 プロペラ
100 固定子
110 固定子取付部 120 固定子コイル
130 固定子コア 132 ダクトピース
140 リング部 150 導電部 160 クランプ
170 回転子固定部 180 固定子カバー部 182 開口 184 カバー部
200 回転子
210 底部 212 孔 220 枠部
230 永久磁石 232 プレート 234 磁石カバー
240 ライナー 250a~250h 孔 260 固定子固定部
300 クーラユニット
302a、302b 開口 304a、304b クーラカバー部
306 クーラ本体 308 フィン
310 第1領域 312 第2領域
320 モータ 322a、322b モータ本体 324 羽根車
400 接続部材 402 端子 404 端子 406 接続部
500 スペーサ
【要約】
【課題】
新規な船舶用発電機を提供する。
【解決手段】
固定子と、回転子とを備え、エンジンに取り付けられる船舶用発電機である。前記固定子が、前記エンジンに取り付けられる固定子取付部と、固定子コイルとを含む。前記回転子が、前記エンジンに取り付けられる底部と、前記回転子が回転する回転軸の軸中心部を中心とする円環柱状を有する枠部と、前記枠部に取り付けられる永久磁石とを含む。前記回転子が前記エンジンの回転に応じて回転することで発電する。
【選択図】 図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7