(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0456 20170101AFI20250609BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20250609BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20250609BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20250609BHJP
【FI】
H04B7/0456 100
H04B7/06 960
H04B7/08 810
H04W16/28
(21)【出願番号】P 2021025410
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2024-02-01
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 健
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185953(JP,A)
【文献】特開2010-028581(JP,A)
【文献】特表2018-518855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0456
H04B 7/06
H04B 7/08
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームの角度間隔が均等であるビームパターンに相当する複数のアンテナウェイトベクタの組で構成される標準ビームテーブルを記憶する記憶部と、
通信相手の無線通信装置の存在する方向を最適化対象方向として決定し、前記最適化対象方向に対して前記標準ビームテーブルの前記ビームの角度間隔を密にするように変更することで最適化したビームテーブルを生成し、前記最適化したビームテーブルを用いて前記通信相手の無線通信装置と通信を行わせる制御部と、
を備え、
前記記憶部は、複数の前記アンテナウェイトベクタの組を記憶し、
前記制御部は、
前記最適化対象方向のビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択し、選択した前記アンテナウェイトベクタの組を配置し、
前記最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、
前記最適化対象方向及びその近傍を除く非最適化領域に設定するビームを決定し、前記非最適化領域に設定するビームの前記ビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択して配置する、
ことで前記最適化したビームテーブルを生成する、無線通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する場合、
前記最適化対象方向のビームに隣接する2本の第1隣接ビームを、それぞれ前記最適化対象方向のビームとの問の角度間隔を第1の角度間隔に決定し、決定した前記第1の角度間隔に対応したビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、
前記第1の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔の1/2以下である、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する場合、
前記第1隣接ビームのそれぞれに隣接する2本の第2隣接ビームをそれぞれ前記第1隣接ビームとの間の角度間隔を第2の角度間隔に決定し、決定した前記第2の角度間隔に対応したビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、
前記第2の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔より小さく、かつ前記第1の角度間隔より大きい、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第1の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔の1/4以下であり、かつ前記第2の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔の1/2以下である、
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記最適化対象方向及び前記最適化対象方向の近傍を除く前記非最適化領域に設定するビームを決定し、決定した前記非最適化領域に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する場合、
前記非最適化領域に設定するビームと当該ビームに隣接するビームとの谷間の利得の劣化を抑制するようにビーム配置を調整する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記非最適化領域において前記ビーム配置を調整する場合、
各々の前記非最適化領域において前記ビームの角度間隔を不均一に調整し、複数の前記非最適化領域の間のビーム本数のバランスを調整する、
請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ビーム本数のバランスを調整する場合、
全ての非最適化領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差を抑制するように調整する、
請求項6に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の大容量化を図るために、使用する周波数帯域の広帯域化及び高周波化によって、ミリ波帯を使用する無線通信装置の開発が進んでいる。例えば60GHz帯は、モバイル通信網と連携したスモールセルやワイヤレスインターネットサービスプロバイダの無線アクセス網などにおいて、あるいは、無線基地局、無線中継局、又は公衆無線LAN通信アクセスポイントなどに用いられる無線バックホールリンクとしての利用が検討されている。
【0003】
伝搬損失の大きいミリ波帯では、一般に高利得で鋭い指向性を有するビームアンテナを用いる。IEEE802.llad規格では、通信相手が移動することや、複数の通信相手とPoint-to-multipoint(P2MP)通信することを考慮し、ビーム方向を制御部からの電気的な制御によって可変可能なビームフォーミングアンテナを利用する。また、IEEE802.llad規格では、通信を開始する時に、また、通信中に逐次自局と相手局との問で最適なビーム方向を探索する。
【0004】
IEEE802.llad規格に従った無線通信装置では、例えば特許文献1に記載のように、Sector-level sweep(SLS)及びBeam Refinement Protocol(BRP) phaseというビームフォーミングプロセスにより、好適なビーム方向の探索が実施される。特許文献1に記載の技術では、通常、第1に準無指向ビームパターンを実現するAWVの組を少なくとも一つ用い、また、第2にビームの角度間隔が均一になっている標準のビームテーブルを一つ用いていた。そして、特許文献1に記載の技術では、一連のビームパターンを含む標準のビームテーブルを用いて一定の角度範囲について複数のビームパターンを順次切り替えてスキャンするにあたり、設計する各ビームパターンの放射方向は角度間隔が均等になるようにしていた。
【0005】
また、近年、WISP(無線インターネットサービスプロバイダ)による無線アクセス網を利用したインターネット接続サービスやFixed Wireless Access(FWA)と呼ばれる無線通信キャリアによる無線アクセス網の接続サービスの提供が普及しつつある。これらのサービスでは、利用者のアンテナの設置場所は固定であり、原則として移動することは無い。このため、固定された利用者のロケーションに対して優れたサービスを提供することが求められている。
【0006】
一般に広帯域無線通信技術では、電波の品質に応じてModulation and Coding Scheme(MCS)を切り替え、電波の品質が良い状況では高速な通信を実施し、品質が劣化した環境では、低速な通信とすることにより接続を担保する。電波品質のわずかな差で、MCSが切り替わることがある。この結果、ちょうどビームの方位に位置した利用者は電波品質が良好であり、ビームとビームの谷間に位置した利用者は電波品質が劣化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載の背景技術では、各ビームパターンの放射方向は均等な角度間隔に配置している。このため、ビームのピークの方向の利用者とビームの谷間の方向の利用者との間でデータレートに差が発生する場合がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、利用者間の電波品質の差を抑えることができる無線通信装置、及び無線通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る無線通信装置は、ビームの角度間隔が均等であるビームパターンに相当する複数のアンテナウェイトベクタの組で構成される標準ビームテーブルを記憶する記憶部と、通信相手の無線通信装置の存在する方向を最適化対象方向として決定し、前記最適化対象方向に対して前記標準ビームテーブルの前記ビームの角度間隔を密にするように変更することで最適化したビームテーブルを生成し、前記最適化したビームテーブルを用いて前記通信相手の無線通信装置と通信を行わせる制御部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様によれば、通信相手の無線通信装置が存在する方向にビームが密に配置される。
この結果、本発明の一態様によれば、通信相手の無線通信装置それぞれが良好な通信品質で速度の速いMCSで安定した通信を行うことが可能となるので、利用者間の電波品質の差を抑えることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記記憶部は、複数の前記アンテナウェイトベクタの組を記憶し、前記制御部は、前記最適化対象方向のビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択し、選択した前記アンテナウェイトベクタの組を配置し、前記最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、前記最適化対象方向及びその近傍を除く非最適化領域に設定するビームを決定し、前記非最適化領域に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する、ことで前記最適化したビームテーブルを生成するようにしてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記制御部は、前記最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する場合、前記最適化対象方向のビームに隣接する2本の第1隣接ビームを、それぞれ前記最適化対象方向のビームとの問の角度間隔を第1の角度間隔に決定し、決定した前記第1隣接ビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、前記第1の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔の1/2以下であるようにしてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記制御部は、前記最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する場合、前記第1隣接ビームのそれぞれに隣接する2本の第2隣接ビームをそれぞれ前記第1隣接ビームとの間の角度間隔を第2の角度間隔に決定し、決定した前記第2隣接ビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、前記第2の角度間隔は、標準ビームテーブルのビームの角度間隔より小さく、かつ前記第1の角度間隔より大きいようにしてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記第1の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔の1/4以下であり、かつ前記第2の角度間隔は、前記標準ビームテーブルのビームの角度間隔の1/2以下であるようにしてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記制御部は、前記最適化対象方向及び前記最適化対象方向の近傍を除く前記非最適化領域に設定するビームを決定し、決定した前記非最適化領域に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置する場合、前記非最適化領域に設定するビームと当該ビームに隣接するビームとの谷間の利得の劣化を抑制するようにビーム配置を調整するようにしてもよい。
【0017】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記制御部は、前記非最適化領域において前記ビーム配置を調整する場合、各々の前記非最適化領域において前記ビームの角度間隔を不均一に調整し、複数の前記非最適化領域の間のビーム本数のバランスを調整するようにしてもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る無線通信装置において、前記制御部は、前記ビーム本数のバランスを調整する場合、全ての非最適化領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差を抑制するように調整するようにしてもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る無線通信方法は、標準ビームテーブルを記憶する記憶部を備える無線通信装置であって、通信相手の無線通信装置の存在する方向を最適化対象方向として決定し、前記最適化対象方向に対して前記標準ビームテーブルの前記ビームの角度間隔を密にするように変更することで最適化したビームテーブルを生成し、前記最適化したビームテーブルを用いて前記通信相手の無線通信装置と通信を行わせる。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明の一態様によれば、利用者間の電波品質の差を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る無線通信装置を用いた無線通信システムの一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係るストレージが記憶する標準ビームテーブルにおいて角度30度から150度までの120度の角度範囲に4度おきに存在する31本のビームそれぞれのアレイファクタを極座標で示した図である。
【
図4】第1実施形態に係るストレージが記憶する標準ビームテーブルにおいて各方向について利得が一番大きいビームのみを選択して描写した図である。
【
図5】第1実施形態に係る無線通信装置が動的に最適化ビームテーブルを構成する処理手順のフローチャートである。
【
図6】通信相手が70度方向と110度方向の2方位に存在する場合、ビームを再配置した後の最適化ビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図7】第1実施例における最適化ビームテーブルを最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のアレイファクタを示す図である。
【
図8】第1実施例における最適化ビームテーブルを最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のアレイファクタの極座標表示の図である。
【
図9】第2実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図10】第2実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図11】第2実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
【
図12】第3実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図13】第3実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図14】第3実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
【
図15】第4実施例における標準ビームテーブルを示す図である。
【
図16】第4実施例の標準ビームテーブルにおけるアレイファクタを極座標で示した図である。
【
図17】第4実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図18】第4実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図19】第4実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
【
図20】第5実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図21】第5実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
【
図22】第5実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
(無線通信システムの構成例)
図1は、実施形態に係る無線通信装置を用いた無線通信システムの一例を示す図である。
図1のように、無線通信システム1は、第1の無線通信装置2(以下、単に無線通信装置2ともいう)、第2の無線通信装置3-1、第2の無線通信装置3-2、第2の無線通信装置3-3、第2の無線通信装置3-4、第2の無線通信装置3-5、及び第2の無線通信装置3-6を備える。以下の説明において、第2の無線通信装置3-n(nは1から6の整数)のうちの1つを特定しない場合は、第2の無線通信装置3という。
【0024】
第1の無線通信装置2は、光ファイバ回線または他の通信回線を介してプロバイダ網などの上位ネットワークに接続され、これによりインターネット等のネットワークに接続されている。また、第1の無線通信装置2は、例えばWISPや無線通信キャリアなどサービス提供事業者が設置する無線通信装置である。
【0025】
第2の無線通信装置3は、例えば、WISPや無線通信キャリアなどサービス提供事業者が提供するサービスを利用する利用者宅に設置されている。なお、第2の無線通信装置3の数は6つに限らず、1つ以上であればよい。
【0026】
第1の無線通信装置2と第2の無線通信装置3-1~3-6のうち少なくとも1つが、ビームフォーミングアンテナを備え、その装置内部にビームフォーミングを実行する制御部を備える。第1の無線通信装置2と第2の無線通信装置3は、ビームフォーミングを実施する過程において相互に存在を認識し、適切なビームの選択をし、電波の品質に応じたMCS(Modulation and Coding Scheme)をして無線通信を行う。なお、以下の説明では、第1の無線通信装置2がビームフォーミングアンテナを備え、その装置内部にビームフォーミングを実行する制御部を備える例を説明する。
【0027】
なお、第1の無線通信装置2と第2の無線通信装置3は、サービス提供者とそのサービス利用者とに限定されるものではなく、企業や公的機関など、組織が内部ネットワークとしてその両方を敷設するものであってもよい。
【0028】
(実施形態で用いる用語の説明)
ここで、ビームフォーミングアンテナを用いて通信を行う無線通信装置の概略と、実施形態で用いる用語の説明をする。
ビームフォーミングアンテナの基本的な構成は、整列させた各アンテナ要素に位相をずらして給電することにより、所望の方角に対して位相が揃った電波が放射され、鋭い指向性をもったビームが放射される。
【0029】
所望の方角に電波を放射するビームのビームパターンの設計では、アンテナアレイの各アンテナエレメントの配列、アンテナエレメント間の距離、放射する電波の波長などを元にして、各アンテナエレメントから放射された電波が所望の方向で干渉し強め合うように位相条件を計算し、各アンテナエレメントに給電する位相及び電力を決定する。
【0030】
ビームフォーミングアンテナを備えた無線通信装置は、複数のAntenna Weight Vector(AWV)により構成されるビームテーブルを備えている。ここで、AWVとは、各アンテナエレメントに対応する振幅調整器の利得及び可変移相器の移相量を表すベクトルのことを指す。ビームフォーミングアンテナがn個のアンテナエレメントにより構成されている場合、n個のAWVの組が一つのビームパターンを示す。
【0031】
AWVのみを元にしてアレイアンテナ全体としての放射指向性を計算したものをアレイファクタと言う。アンテナエレメントが無指向性アンテナである場合は、アレイファクタがそのままアレイアンテナ全体の放射パターンである。アンテナエレメントが指向性を有する場合は、アレイファクタとアンテナエレメントの放射パターンとの積がアレイアンテナ全体の放射パターンとなる。
【0032】
(無線通信装置の構成例)
図2は、実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
図2のように、無線通信装置2は、アンテナ21、及び制御部22を備える。
制御部22は、BBIC221、RFIC222、コントロールシステム223、NI(Network Interface)224、及びPS(Power Supply)225を備える。
RFIC222は、LUT2221、及びビームフォーマ2222を備える。
コントロールシステム223は、ストレージ2231を備える。
【0033】
アンテナ21は、複数のエレメントが配置され、複数のエレメントをAWV(Antenna Weight Vector)の設定値により電気的に制御することが可能なデジタルフェーズドアレイ方式のビームフォーミングアンテナである。
【0034】
BBIC221は、例えばBaseband Integrated Circuitである。BBIC221は、Baseband信号を処理する回路部であり、また場合によりコントロールシステム223からのRFIC222に対する制御を仲介する。
【0035】
RFIC222は、例えばRadio Frequency Integrated Circuitであり、高周波信号の処理を担当し、ミリ波信号の送受信を行うとともに、ビームフォーミングを実施する。RFIC222は、LUT2221に数値を設定することでAWVを設定する。
【0036】
LUT2221は、Look Up Tableであり、ビームパターンテーブルとして複数のAWVの組を収容している。個々のAWVの組は、1つのビームパターンに対応し、アンテナエレメントの個数に対応したAWVから構成されている。また、LUT2221は、後述するようにコントロールシステム223によって最適化された最適化ビームテーブルを記憶する。
【0037】
ビームフォーマ2222は、AWVの設定値に基づきアンテナエレメントへの給電を制御する。
【0038】
コントロールシステム223は、NI224を介して無線通信装置2に接続されたインターネット等の上流側ネットワークに接続されている。コントロールシステム223は、BBIC221及びRFIC222を制御することによって、NI224を介した第1のネットワークと、アンテナ21を介して通信回線で接続されている第2のネットワークとの間の通信を媒介する。コントロールシステム223は、BBIC221及びRFIC222の制御を、例えばプログラムに従って、各種データベースを参照することにより実行する。なお、コントロールシステム223は、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含むものであってもよい。
【0039】
ストレージ2231は、予め設計された複数のAWVの組や、複数のAWVの組を所定のビーム本数分組み合わせた複数のビームテーブルを記憶している。ストレージ2231は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記録媒体である。または、ストレージ2231は、ASICやSoC等が内部に有する不揮発性記憶領域であってもよい。AWVの組としては、第1に準無指向(quasi-omni)ビームパターンを実現するAWVの組が少なくとも一つあり、第2にビームの角度間隔が均一になっている標準のビームテーブルが少なくとも一つある。標準のビームテーブルは、一定の角度範囲をカバーする一連のビームであり、各ビームは各方向のビームパターンに対応する一連のAWVの組からなる。ストレージ2231は、さらに最適化されたビームテーブルを記憶する。また、ストレージ2231は、最適化ビームテーブルを構成するための選択元となる一群のAWVの組を記憶する。
【0040】
NI224は、ネットワークインタフェースであり、無線通信装置2を上流側ネットワークに接続するためのインタフェースである。
PS225は、電源ユニットであり、外部から供給された電力を無線通信装置2の各部に供給する。
【0041】
ここで、ストレージ2231が記憶する情報例を説明する。
図3は、本実施形態に係るストレージ2231が記憶する標準ビームテーブルにおいて角度30度から150度までの120度の角度範囲に4度おきに存在する31本のビームそれぞれのアレイファクタを極座標で示した図である。なお、ビーム角度間隔は4度である。
【0042】
図4は、本実施形態に係るストレージ2231が記憶する標準ビームテーブルにおいて各方向について利得が一番大きいビームのみを選択して描写した図である。
図4において、横軸は方向[度]であり、縦軸はアレイファクタ[dB]である。
【0043】
図5は、本実施形態に係る無線通信装置2が動的に最適化ビームテーブルを構成する処理手順のフローチャートである。
【0044】
(ステップS1)コントロールシステム223は、最適化のターゲット方向を決定する。
(ステップS2)コントロールシステム223は、最適化のターゲット方向のビームにAWVを選択する。
【0045】
(ステップS3)コントロールシステム223は、第1近接ビームのAWVを選択する。
(ステップS4)コントロールシステム223は、第2近接ビームのAWVを選択する。
【0046】
(ステップS5)コントロールシステム223は、最適化されていない領域のビームのAWVを、角度間隔が略均一になるように選択する。
(ステップS6)コントロールシステム223は、最適化されていない領域のビームの角度間隔を不均一に変更する。
【0047】
(ステップS7)コントロールシステム223は、最適化されていない領域間のビーム数のバランスを変更する。
(ステップS8)コントロールシステム223は、谷での利得の不均衡が最小化されたか否かを判別する。コントロールシステム223は、谷での利得の不均衡が最小化されたと判別した場合(ステップS8;Yes)、処理を終了する。コントロールシステム223は、谷での利得の不均衡が最小化されていないと判別した場合(ステップS8;No)、ステップS6からの処理を繰り返す。
【0048】
このように、本実施形態では、最適化対象方向のビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択し、選択した前記アンテナウェイトベクタの組を配置し、最適化対象方向の近傍に設定するビームを決定し、決定した前記近傍に設定するビームの前記ビームパターンに相当する前記アンテナウェイトベクタの組を選択して配置し、最適化対象方向及びその近傍を除く非最適化領域に設定するビームのビームパターンに相当するアンテナウェイトベクタの組を選択して配置することで最適化したビームテーブルを生成する。
【0049】
(第1実施例)
第1実施例では、2つの方向(70度、110度)に対して無線通信装置2が動的に最適化ビームテーブルを構成する処理手順例を、
図5を参照して説明する。
具体例として、準無指向ビームパターンと標準ビームテーブルとを用いて第1の無線通信装置2が第2の無線通信装置3と通信を開始した結果、通信相手が70度方向と110度方向の2方向に存在していると判明した場合について説明する。
【0050】
この場合、コントロールシステム223は、70度方向と110度方向の2方向に最適化した最適化ビームテーブルを生成することを決定する(ステップS1)。
【0051】
ここで、ストレージ2231には、最適化ビームテーブルを構成するビームの選択元となる複数のビーム、すなわちAWVの組が記憶されている。以下の例では、0.1度間隔で120度の角度範囲をカバーする1201本のビームについてAWVをあらかじめ計算し準備してある。
【0052】
次に、コントロールシステム223は、所望の方向すなわち70度と110度及びその近傍に、密にビームを配置する(ステップS2~S4)。
【0053】
ここで、ステップS2~S4の処理を行う理由を説明する。標準ビームテーブルは、角度間隔が4度である。標準ビームテーブルにおいて最適なビームとして70度のものが選択されても、実際の利用者の装置の方向が68度または72度に近い場合には、ビームの谷間に相当し、利得が劣化し、より通信速度の遅いMCSが選択される可能性がある。そこで、コントロールシステム223は、選択元となる1201本のビーム、すなわち1201組のAWVの中から70.0度のものを選択して最適化ビームテーブル中に配置する。コントロールシステム223は、同様に、110度に対しても、1201組のAWVの中から110.0度のものを選択して最適化ビームテーブル中に配置する(ステップS2)。
【0054】
次に、コントロールシステム223は、70.0度のビームを挟むように第2及び第3のビームを第1隣接ビーム(69.0度のビーム、71.0度のビーム)として配置する。同様に、コントロールシステム223は、110.0度のビームを挟むように第2及び第3のビームを第1隣接ビーム(109.0度のビーム、111.0度のビーム)として配置する(ステップS3)。なお、実施形態では、第2及び第3の2本のビームを第1隣接ビームと呼ぶ。
【0055】
コントロールシステム223は、3本のビーム(70.0度のビーム、69.0度のビーム、71.0度のビーム)を挟むように第4及び第5のビームを第2隣接ビーム(67.0度のビーム、73.0度のビーム)として配置する。同様に、コントロールシステム223は、3本のビーム(110.0度のビーム、109.0度のビーム、111.0度のビーム)を挟むように第4及び第5のビームを第2隣接ビーム(107.0度のビーム、113.0度のビーム)として配置する(ステップS4)。実施形態では、第4及び第5の2本のビームを第2隣接ビームと呼ぶ。
ステップS2~S4の処理によって、コントロールシステム223は、70度方向近傍及び110度方向近傍それぞれのビームの角度間隔を密にする。
【0056】
なお、本実施形態では、第2の第1隣接ビームと最適化方向のビームとの間の角度間隔、及び最適化方向のビームと第3の第1隣接ビームとの間の角度間隔の2つを第1の角度間隔とし、これを標準ビームテーブルにおける角度間隔よりも狭いものとする。
【0057】
また、本実施形態では、第2の第1隣接ビームに隣接する第4の第2隣接ビームと第2の第1隣接ビームとの間の角度間隔、及び第3の第1隣接ビームに隣接する第5の第2隣接ビームと第3の第1隣接ビームとの間の角度間隔の2つを第2の角度間隔とする。そして、本実施形態では、第2の角度間隔を標準ビームテーブルにおける角度間隔よりも狭く、第1の角度間隔よりも広いものとする。
【0058】
本実施形態では、例えば、第1の角度間隔を標準ビームテーブルの角度間隔である4度の1/4の1度とする。また、本実施形態では、第2の角度間隔を4度よりも狭く、第1の角度間隔の1度よりも広い2度とする。
【0059】
なお、第1の角度間隔は、標準ビームテーブルの角度間隔の半分以下であることが好ましく、さらに1/4以下であることが好ましい。第2の角度間隔は、標準ビームテーブルの3/4以下であることが好ましく、さらに1/2以下であることが好ましい。このようなビームを選択可能とするためには、選択元となるAWVの組が標準ビームテーブルのビームの本数の略4倍保有されていることが好ましい。
標準ビームテーブルのビームの本数をNとした場合は、少なくとも(N-1)×4+1組のAWVの組があらかじめ用意されていることが好ましい。
【0060】
次に、コントロールシステム223は、起点方向である30度から第1の最適化方向である70.0度のビームに近接する第4の第2隣接ビームの方向である67.0度までの第1の非最適化領域、第1の最適化方向のビームに近接する第5の第2隣接ビームの方向である73.0度から第2の最適化方向である110.0度のビームに近接する第4の第2隣接ビームの方向である107.0度までの第2の非最適化領域、第2の最適化方向のビームに近接する第5の第2隣接ビームの方向である113.0度から終点方向である150度までの第3の非最適化領域について、それぞれの領域にビームを配置する本数を決定し、ビームを配置する(ステップS5)。
【0061】
具体的には、まず、コントロールシステム223は、各非最適化領域の角度範囲の比率に従ってビーム本数を分配する。本実施形態では、コントロールシステム223は、第1の非最適化領域に7本、第2の非最適化領域に6本、第3の非最適化領域に8本のビームを配置する。次に、コントロールシステム223は、それぞれの非最適化領域において略均等な角度分布でビームを配置する。
【0062】
この段階における最適化ビームテーブルの例を
図6に示す。
図6は、通信相手が70度方向と110度方向の2方向に存在する場合、ビームを再配置した後の最適化ビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図6において、横軸と縦軸は
図4と同一である。
図6のように、70度方向及び110度方向においては近傍も含めビームが密に配置され利得の谷間が浅い配置となっており、いずれの利用者が使用する第2の無線通信装置3も良好な通信品質で速度の速いMCSで安定した通信を行うことが可能となる。
【0063】
第1実施例では、さらに利得の最適化を実施する。
図6のビームテーブルでは、最適化方向近傍については改善されているが、他の方向においては利得の谷間が深い方向が見られる。例えば、90度方向や94.8度方向のアレイファクタ[dB]は11.21[dB]である。本実施形態では、これについて、利得の谷間の平準化を行って、利得の劣化を抑制する。
【0064】
ここで、最適化の具体例を説明する。
まず、コントロールシステム223は、各々の非最適化領域の中において、利得の谷間が深い方向についてはビーム間隔が狭くなるように、また、利得の谷間が浅い方向についてはビーム間隔が広くなるように、ビーム方向を調整して、選択するAWVの組の差し替えを行う(ステップS6)。
【0065】
図6の第1の非最適化領域の場合、64.4度方向にある第7の谷間は11.23dBであり、32.7度方向にある第1の谷間は11.77dBであり、当該領域における利得の谷間の最大と最小の差は0.54dBである。
【0066】
コントロールシステム223は、第7の谷間が形成される第7のビームと第8のビームの間隔を0.1度減らし、第1の谷間が形成される第1のビームと第2のビームの間隔を0.1度増やして、第1のビームから第7のビームを再配置して、アレイファクタの計算をやり直す。再配置後の当該領域における利得の谷間の最大と最小の差は、0.54dBから0.50dBに改善する。
【0067】
コントロールシステム223は、これらの処理を繰り返し、当該領域における利得の谷間の最大と最小の差が例えば0.02dBとなった段階で、再配置しても再配置前に対して改善しなくなった場合、0.02dBの時の配置を採用とし、最適化の操作を完了する。コントロールシステム223は、これらの処理を、それぞれの非最適化領域に対して実行する。
【0068】
次に、コントロールシステム223は、上記の処理終了後、各非最適化領域の一番深い利得の谷間について比較し、利得の谷間が浅い非最適化領域のビームを1本減らし、利得の谷間が深い非最適化領域のビームを1本増やす操作を行う(ステップS7)。
第1実施例では、一番深い利得の谷間は各々、第1の非最適化領域で11.50dB、第2の非最適化領域で11.21dB、第3の非最適化領域で11.63dBでる。コントロールシステム223は、第3の非最適化領域のビーム本数を8本から7本に減らし、第2の非最適化領域を6本から7本に増やす。
【0069】
コントロールシステム223は、増減したビーム本数によって、再度、それぞれの非最適化領域の角度範囲において略均等な角度分布でビームを配置する。
【0070】
コントロールシステム223は、ステップS6~S7を繰り返し、全ての非最適領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差が最小となった時の配置を採用し、非最適化領域の再配置を完了する。この処理を完了し最終的に求められた最適化ビームテーブルを、
図7及び
図8に示す。
【0071】
図7は、第1実施例における最適化ビームテーブルを最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のアレイファクタを示す図である。
図7の横軸と縦軸は
図4と同一である。
図8は、第1実施例における最適化ビームテーブルを最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のアレイファクタの極座標表示の図である。
図8の座標は
図3と同一である。
【0072】
最適化後の再配置前の
図6の段階では、第1の非最適化領域のビーム本数が7本、第2の非最適化領域のビーム本数が6本、第3の非最適化領域のビーム本数が8本で、一番深い利得の谷間が90.0度方向の11.21dBであり、一番浅い利得の谷間が147.6度方向の11.83dBであり、差は0.62dBであった。最配置後、3つの非最適化領域のビーム本数が7本、7本、7本に調整され、また間隔も不均等に調整され、一番深い利得の谷間が87.9度方向及び92.1度方向の11.41dBであり、一番浅い利得の谷間が51.0度及び129.0度方向の11.53dBであり、差は0.12dBとなり、最配置前と比較して改善が見られた。
【0073】
第1実施例における無線通信装置2は、このようにして生成した最適化ビームテーブルをLUT2221に設定し、次回のビーム方向の探索に用いる。次回以降のビーム探索の結果、通信相手の無線通信装置が増減したり、あるいは従来存在した方向に相手側の無線通信装置が無くなり、他の方向の無線通信装置との通信を開始することとなった場合、コントロールシステム223は、最適化ビームテーブルの生成をやり直す。このような場合、コントロールシステム223は、標準ビームテーブルを用いた探索からやり直してもよい。
【0074】
(比較例)
ここで、比較例を説明する。
IEEE802.llad規格では、Directional multi-gigabit(DMG)と称される60GHzミリ波帯通信についてMCSとReceiver sensitivity(受信感度)との関係が示されている。
例えば、MCS10に要求される感度は-55dBmであり、MCS11に要求される感度は-54dBmであり、MCS12に要求される感度は-53dBmであって、電波品質のわずかな差でMCSが切り替わる。
【0075】
このため、ちょうどビームの方向位置に無線通信装置を設置した利用者は電波品質が良好であり、ビームとビームの谷間の位置に無線通信装置を設置した利用者は電波品質が劣化することとなる。従来技術の場合は、ちょうどビームの方向に位置した利用者は、例えばMCS12が利用可能であるが、ビームの谷間に位置した別の利用者はMCS11しか利用出来ないといったことが発生する場合がある。ここで、IEEE802.llad規格の場合、それぞれのMCSにおけるデータレートは、MCS10で3,080Mbpsであり、MCS11で3,850Mbpsであり、MCS12で4,620Mbpsである。例えばMCS11が利用できずにMCS10を利用する場合は、MCS11と比べて20%の性能低下となる。また、MCS12が利用出来ずMCS11となる場合は、MCS12と比べて17%の性能低下となる。
【0076】
これに対して、第1実施例によれば、2つの方向に対して上述したように最適化ビームテーブルの最適化を行ったため、例えば
図4に対して
図7のように、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置とすることができる。この結果、第1実施例によれば、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置としたので、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して通信速度が遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。また、第1実施例によれば、最適化ビームテーブルを最適化後に再配置を行ったため、例えば
図6に対して
図7のように、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにすることができる。この結果、第1実施例によれば、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにしたので、最適化方向の決定以後に通信相手の無線通信装置が増加するなど、他の方向の無線通信装置との通信を開始することとなった場合であっても、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して通信速度が遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。
【0077】
(第2実施例)
第2実施例では、3つの方向(70度、110度、130度)に対して無線通信装置2が動的に最適化ビームテーブルを構成する処理手順例を、
図5を参照して説明する。
【0078】
この場合、コントロールシステム223は、70度方向と110度方向と130度方向との3方向に最適化した最適化ビームテーブルを生成することを決定する(ステップS1)。
次に、コントロールシステム223は、所望の方向すなわち70度と110度と130度及びその近傍に、密にビームを配置する(ステップS2~S4)。
【0079】
本実施例では、コントロールシステム223は、70度、110度及び130度に対して、選択元となるAWVの中から70.0度、110.0度、130.0度のものを選択して配置する(ステップS2)。次に、コントロールシステム223は、70.0度、110.0度、130.0度のビームのそれぞれを挟むように第2及び第3の第1隣接ビームを配置する(ステップS3)。
コントロールシステム223は、70.0度、110.0度及び130.0度それぞれに対して、第2の第1隣接ビームと第3の第1隣接ビームを含む3本のビームを挟むように第4及び第5の第2隣接ビームを配置する(ステップS4)。
【0080】
ステップS2~S4の処理によって、コントロールシステム223は、70度方向近傍、110度方向近傍及び130度方向近傍それぞれのビームの角度間隔を密にする。
次に、コントロールシステム223は、それぞれの非最適化領域にビームを配置する本数を決定し、ビームを配置する(ステップS5)。
この段階における最適化ビームテーブルの例を
図9に示す。
図9は、第2実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図9の横軸と縦軸は
図4と同一である。
【0081】
次に、コントロールシステム223は、各々の非最適化領域の中において、利得の谷間が深い方向についてはビーム間隔が狭くなるように、また、利得の谷間が浅い方向についてはビーム間隔が広くなるように、ビーム方向を調整して、選択するAWVの組の差し替えを行う。
コントロールシステム223は、当該非最適化領域における利得の谷間の最大と最小の差を指標とし、差し替えをしても改善しなくなった時点でその非最適化領域の調整を終了する(ステップS6)。
【0082】
次に、コントロールシステム223は、上記の処理終了後、各非最適化領域の一番深い利得の谷間について比較し、利得の谷間が浅い非最適化領域のビームを1本減らし、利得の谷間が深い非最適化領域のビームを1本増やす操作を行う(ステップS7)。
【0083】
コントロールシステム223は、増減したビーム本数によって、再度、それぞれの非最適化領域の角度範囲において略均等な角度分布でビームを配置する。
【0084】
コントロールシステム223は、ステップS6~S7を繰り返し、全ての非最適領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差が最小となった時の配置を採用し、非最適化領域の再配置を完了する。この処理を完了し最終的に求められた最適化ビームテーブルを、
図10及び
図11に示す。
【0085】
図10は、第2実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図10の横軸と縦軸は
図4と同一である。
図11は、第2実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
図11の座標は
図3と同一である。
【0086】
図10と
図11のように、第2実施例によれば、所望の3方向の近傍において、ビームが密に配置され利得の劣化はわずかであり、また非最適化領域についても平準化調整の結果深い利得の谷間を改善できた。
【0087】
第2実施例によれば、3つの方向に対して上述したように最適化ビームテーブルの最適化を行ったため、例えば
図10のように、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置とすることができる。この結果、第2実施例によれば、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置としたので、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。また、第2実施例によれば、最適化ビームテーブルを最適化後に再配置を行ったため、例えば
図9に対して
図10のように、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにすることができる。この結果、第2実施例によれば、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにしたので、最適化方向の決定以後に通信相手の無線通信装置が増加するなど、他の方向の無線通信装置との通信を開始することとなった場合であっても、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して通信速度が遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。
【0088】
(第3実施例)
第3実施例では、4つの方向(52度、70度、110度、130度)に対して無線通信装置2が動的に最適化ビームテーブルを構成する処理手順例を、
図5を参照して説明する。
【0089】
この場合、コントロールシステム223は、52度方向と70度方向と110度方向と130度方向との4方向に最適化した最適化ビームテーブルを生成することを決定する(ステップS1)。
次に、コントロールシステム223は、所望の方向すなわち52度と70度と110度と130度及びその近傍に、密にビームを配置する(ステップS2~S4)。
【0090】
本実施例では、コントロールシステム223は、52度、70度、110度及び130度に対して、選択元となるAWVの中から52.0度、70.0度、110.0度、130.0度のものを選択して配置する(ステップS2)。次に、コントロールシステム223は、52.0度、70.0度、110.0度、130.0度のビームのそれぞれを挟むように第2及び第3の第1隣接ビームを配置する(ステップS3)。
コントロールシステム223は、52度、70度、110度及び130度それぞれに対して、第2の第1隣接ビームと第3の第1隣接ビームを含む3本のビームを挟むように第4及び第5の第2隣接ビームを配置する(ステップS4)。
【0091】
ステップS2~S4の処理によって、コントロールシステム223は、52度方向近傍、70度方向近傍、110度方向近傍及び130度方向近傍それぞれのビームの角度間隔を密にする。
次に、コントロールシステム223は、それぞれの非最適化領域にビームを配置する本数を決定し、ビームを配置する(ステップS5)。
この段階における最適化ビームテーブルの例を
図12に示す。
図12は、第3実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図12の横軸と縦軸は
図4と同一である。
【0092】
次に、コントロールシステム223は、各々の非最適化領域の中において、利得の谷間が深い方向についてはビーム間隔が狭くなるように、また、利得の谷間が浅い方向についてはビーム間隔が広くなるように、ビーム方向を調整して、選択するAWVの組の差し替えを行う。コントロールシステム223は、当該非最適化領域における利得の谷間の最大と最小の差を指標とし、差し替えをしても改善しなくなった時点でその非最適化領域の調整を終了する(ステップS6)。
【0093】
次に、コントロールシステム223は、上記の処理終了後、各非最適化領域の一番深い利得の谷間について比較し、利得の谷間が浅い非最適化領域のビームを1本減らし、利得の谷間が深い非最適化領域のビームを1本増やす操作を行う(ステップS7)。
【0094】
コントロールシステム223は、増減したビーム本数によって、再度、それぞれの非最適化領域の角度範囲において略均等な角度分布でビームを配置する。
【0095】
コントロールシステム223は、ステップS6~S7を繰り返し、全ての非最適領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差が最小となった時の配置を採用し、非最適化領域の再配置を完了する。この処理を完了し最終的に求められた最適化ビームテーブルを、
図13及び
図14に示す。
【0096】
図13は、第3実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図13の横軸と縦軸は
図4と同一である。
図14は、第3実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
図14の座標は
図3と同一である。
【0097】
図13と
図14のように、第3実施例によれば、所望の4方向の近傍において、ビームが密に配置され利得の劣化はわずかであり、また非最適化領域についても平準化調整の結果深い利得の谷間を改善できた。
【0098】
第3実施例によれば、4つの方向に対して上述したように最適化ビームテーブルの最適化を行ったため、例えば
図13のように、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置とすることができる。この結果、第3実施例によれば、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置としたので、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。また、第3実施例によれば、最適化ビームテーブルを最適化後に再配置を行ったため、例えば
図12に対して
図13のように、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにすることができる。この結果、第3実施例によれば、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにしたので、最適化方向の決定以後に通信相手の無線通信装置が増加するなど、他の方向の無線通信装置との通信を開始することとなった場合であっても、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して通信速度が遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。
【0099】
(第4実施例)
第4実施例では、標準ビームテーブルとして61本のビームを2度間隔で配置して、30度方向から150度方向までの120度の角度範囲をカバーし、これを36度、60度、90度、106度及び128度の5つの方向に対して最適化したビームテーブルを生成する例を、
図5を参照して説明する。
【0100】
図15は、第4実施例における標準ビームテーブルを示す図である。
図15において、横軸は方向[度]であり、縦軸はアレイファクタ[dB]である。
図16は、第4実施例の標準ビームテーブルにおけるアレイファクタを極座標で示した図である。
図15は、ビームが31本である第1実施例の
図4と比較して、谷間における利得の劣化は小さくなっている。しかしながら、
図15においてビーム方向と谷間とでは、利得に差があり、これによるMCSの劣化の発生の可能性がある。
【0101】
この場合、コントロールシステム223は、36度方向と60度方向と90度方向と106度方向と128度方向との5方向に最適化した最適化ビームテーブルを生成することを決定する(ステップS1)。
次に、コントロールシステム223は、所望の方向すなわち36度、60度、90度、106度及び128度及びその近傍に、密にビームを配置する(ステップS2~S4)。
【0102】
本実施例では、コントロールシステム223は、36度、60度、90度、106度及び128度に対して、選択元となるAWVの中から36.0度、60.0度、90.0度、106.0度、128.0度のものを選択して配置する(ステップS2)。次に、コントロールシステム223は、36.0度、60.0度、90.0度、106.0度、128.0度のビームのそれぞれを挟むように第2及び第3の2本の第1隣接ビームを配置する(ステップS3)。
コントロールシステム223は、36度、60度、90度、106度及び128度それぞれに対して、第2の第1隣接ビームと第3の第1隣接ビームを含む3本のビームを挟むように第4及び第5の第2隣接ビームを配置する(ステップS4)。
【0103】
ステップS2~S4の処理によって、コントロールシステム223は、36度方向近傍、60度方向近傍、90度方向近傍、106度方向近傍及び128度方向近傍それぞれのビームの角度間隔を密にする。
次に、コントロールシステム223は、それぞれの非最適化領域にビームを配置する本数を決定し、ビームを配置する(ステップS5)。
この段階における最適化ビームテーブルの例を
図17に示す。
図17は、第4実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図17の横軸と縦軸は
図15と同様である。なお、第4実施例では、例えば、第1の角度間隔を標準ビームテーブルの角度間隔である2度の1/4の0.5度とする。また、第4実施例では、第2の角度間隔を2度よりも狭く、第1の角度間隔の1度よりも広い1.0度とする。第2の第1隣接ビームと最適化方位方向のビームとの間の角度間隔、及び最適化方位方向のビームと第3の第1隣接ビームとの間の角度間隔の2つの角度間隔が、第1の角度間隔である。第2の第1隣接ビームに隣接する第4の第2隣接ビームと第2の第1隣接ビームとの間の角度間隔、及び第3の第1隣接ビームに隣接する第5の第2隣接ビームと第3の第1隣接ビームとの間の角度間隔の2つの角度間隔が、第2の角度間隔である。
【0104】
次に、コントロールシステム223は、各々の非最適化領域の中において、利得の谷間が深い方向についてはビーム間隔が狭くなるように、また、利得の谷間が浅い方向についてはビーム間隔が広くなるように、ビーム方向を調整して、選択するAWVの組の差し替えを行う。コントロールシステム223は、当該非最適化領域における利得の谷間の最大と最小の差を指標とし、差し替えをしても改善しなくなった時点でその非最適化領域の調整を終了する(ステップS6)。
【0105】
次に、コントロールシステム223は、上記の処理終了後、各非最適化領域の一番深い利得の谷間について比較し、利得の谷間が浅い非最適化領域のビームを1本減らし、利得の谷間が深い非最適化領域のビームを1本増やす操作を行う(ステップS7)。
【0106】
コントロールシステム223は、増減したビーム本数によって、再度、それぞれの非最適化領域の角度範囲において略均等な角度分布でビームを配置する。
【0107】
コントロールシステム223は、ステップS6~S7を繰り返し、全ての非最適領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差が最小となった時の配置を採用し、非最適化領域の再配置を完了する。この処理を完了し最終的に求められた最適化ビームテーブルを、
図18及び
図19に示す。
【0108】
図18は、第4実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図18の横軸と縦軸は
図15と同様である。
図19は、第4実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
図19の座標は
図16と同一である。
【0109】
図18と
図19のように、第4実施例によれば、所望の5方向の近傍において、ビームが密に配置され利得の劣化はほとんど見られず、また非最適化領域についても平準化調整の結果深い利得の谷間を改善することができた。
【0110】
第4実施例によれば、5つの方向に対して上述したように最適化ビームテーブルの最適化を行ったため、例えば
図18のように、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置とすることができる。この結果、第4実施例によれば、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置としたので、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。また、第4実施例によれば、最適化ビームテーブルを最適化後に再配置を行ったため、例えば
図17に対して
図18のように、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにすることができる。この結果、第4実施例によれば、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにしたので、最適化方向の決定以後に通信相手の無線通信装置が増加するなど、他の方向の無線通信装置との通信を開始することとなった場合であっても、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して通信速度が遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。
【0111】
(第5実施例)
第5実施例では、標準ビームテーブルとして61本のビームで、30度方向から150度方向までの120度の角度範囲をカバーし、これを36度、60度、90度、106度、128度、140度の6つの方向に対して最適化したビームテーブルを生成する例を、
図5を参照して説明する。
【0112】
この場合、コントロールシステム223は、36度方向と60度方向と90度方向と106度方向と128度方向と140度方向との6方向に最適化した最適化ビームテーブルを生成することを決定する(ステップS1)。
次に、コントロールシステム223は、所望の方向すなわち36度と60度と90度と106度と128度と140度及びその近傍に、密にビームを配置する(ステップS2~S4)。
【0113】
本実施例では、コントロールシステム223は、36度と60度と90度と106度と128度と140度に対して、選択元となるAWVの中から36.0度、60.0度、90.0度、106.0度、128.0度、140.0度のものを選択して配置する(ステップS2)。次に、コントロールシステム223は、36.0度、60.0度、90.0度、106.0度、128.0度、140.0度のビームのそれぞれを挟むように第2及び第3の2本の第1隣接ビームを配置する(ステップS3)。
コントロールシステム223は、36度と60度と90度と106度と128度と140度それぞれに対して、第2の第1隣接ビームと第3の第1隣接ビームを含む3本のビームを挟むように第4及び第5の第2隣接ビームを配置する(ステップS4)。
【0114】
ステップS2~S4の処理によって、コントロールシステム223は、36度方向近傍、60度方向近傍、90度方向近傍、106度方向近傍、128度方向近傍及び140度方向近傍それぞれのビームの角度間隔を密にする。
次に、コントロールシステム223は、それぞれの非最適化領域にビームを配置する本数を決定し、ビームを配置する(ステップS5)。
この段階における最適化ビームテーブルの例を
図20に示す。
図20は、第5実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行う前のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図20の横軸と縦軸は
図15と同様である。
【0115】
次に、コントロールシステム223は、各々の非最適化領域の中において、利得の谷間が深い方向についてはビーム間隔が狭くなるように、また、利得の谷間が浅い方向についてはビーム間隔が広くなるように、ビーム方向を調整して、選択するAWVの組の差し替えを行う。コントロールシステム223は、当該非最適化領域における利得の谷間の最大と最小の差を指標とし、差し替えをしても改善しなくなった時点でその領域の調整を終了する(ステップS6)。
【0116】
次に、コントロールシステム223は、上記の処理終了後、各非最適化領域の一番深い利得の谷間について比較し、利得の谷間が浅い非最適化領域のビームを1本減らし、利得の谷間が深い非最適化領域のビームを1本増やす操作を行う(ステップS7)。
【0117】
コントロールシステム223は、増減したビーム本数によって、再度、それぞれの非最適化領域の角度範囲において略均等な角度分布でビームを配置する。
【0118】
コントロールシステム223は、ステップS6~S7を繰り返し、全ての非最適領域において、一番浅い谷間の利得と一番深い谷間の利得との差が最小となった時の配置を採用し、非最適化領域の再配置を完了する。この処理を完了し最終的に求められた最適化ビームテーブルを、
図21及び
図22に示す。
【0119】
図21は、第5実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを示す図である。
図21の横軸と縦軸は
図15と同様である。
図22は、第5実施例における最適化後に非最適化領域のビームの再配置を行った後のビームテーブルのアレイファクタを極座標で示した図である。
図22の座標は
図16と同一である。
【0120】
図21と
図22のように、第5実施例によれば、所望の6方向の近傍において、ビームが密に配置され利得の劣化はほとんど見られず、また非最適化領域についても平準化調整の結果深い利得の谷間を改善できた。
【0121】
第5実施例によれば、6方向に対して上述したように最適化ビームテーブルの最適化を行ったため、例えば
図21のように、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置とすることができる。この結果、第5実施例によれば、最適化方向の近傍において利得の谷間が浅い配置としたので、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。
【0122】
以上のように、本実施形態では、ビームの角度間隔を均一にしたビームテーブルを用い、さらに特定の方向に最適化したビームテーブルを動的な手段によって追加で用意し、適宜これを適用するようにした。
また、本実施形態では、最適化ビームテーブルを構成するための選択元となる一群のAWVの組を保有する。
さらに、本実施形態では、最適化する対象方向を1方向に限定せず、利用者の数に応じて、2方向、3方向など複数の方向を対象としたビームテーブル等も用意するようにした。
【0123】
ここで、最適化対象方向を多方向とする場合は、最適化ビームテーブルをあらかじめ用意することとすると、膨大なデータ量となる。あるいは、限られたデータ量で対応しようとする場合には、用意出来る最適化ビームテーブルのパターンが限られたものとなる。
【0124】
このため、本実施形態では、最適化ビームテーブルを用意するにあたり、選択元となる一群のAWVの組をあらかじめ用意しておき、選択元となる一群のAWVの組から適切なAWVの組を選択して組み合わせることにより、最適化したビームテーブルをその場で生成するようにした。
【0125】
なお、上述した各実施例において、ビーム配置を再配置する場合は、非最適化領域の一番端のビームと最適化領域の一番端のビームとの谷間も検討対象としてもよい。
【0126】
上述したように各実施例によれば、通信相手の無線通信装置が存在する方向に最適化したビームテーブルを生成するようにしたので、通信相手の無線通信装置が存在する方向にビームが密に配置される。この結果、各実施例によれば、通信相手の無線通信装置それぞれが良好な通信品質で速度の速いMCSで安定した通信を行うことが可能となるので、利用者間の電波品質の差を抑えることができる。
また、第5実施例によれば、最適化ビームテーブルを最適化後に再配置を行ったため、例えば
図20に対して
図21のように、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにすることができる。この結果、第5実施例によれば、非最適化領域の利得の谷間の差を少なくなるようにしたので、最適化方向の決定以後に通信相手の無線通信装置が増加するなど、他の方向の無線通信装置との通信を開始することとなった場合であっても、ビームの谷間方向に無線通信装置を設置している利用者の通信品質が劣化して通信速度が遅いMCSが選択されることを防ぎ、利用者間の通信速度の差を少なくすることができる。
【0127】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0128】
1…無線通信システム 2…第1の無線通信装置(無線通信装置) 3-1~3-6、3…第2の無線通信装置 21…アンテナ 22…制御部 221…BBIC 222…RFIC 223…コントロールシステム 224…NI 225…PS 2221…LUT 2222…ビームフォーマ 2231…ストレージ