(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20250609BHJP
【FI】
B65G1/04 561
B65G1/04 521
(21)【出願番号】P 2021045340
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 温希
(72)【発明者】
【氏名】秋山 朝子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0065258(US,A1)
【文献】特開2009-146322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00- 1/133
B65G 1/14- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設けられ、開状態で上階と下階とを貫通し、閉状態で前記床面となる複数の開閉部と、
前記開閉部を開閉駆動させる駆動部と、
搬送物の大きさおよび数量に関する情報を取得する搬送物情報取得部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記搬送物情報取得部によって取得された情報に基づいて、前記搬送物の大きさおよび数量を判定し、前記駆動部を制御して隣接した複数の前記開閉部を開状態にすることにより、判定した大きさおよび数量の前記搬送物が階を跨いで移動可能な大きさの開口を前記床面に形成する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記搬送物を載せることが可能な自走台車を、階を跨いで移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
連結された複数台の前記自走台車を、階を跨いで移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場または倉庫の棚に収められた物品を自動で搬送する技術が普及しつつある。
例えば、特許文献1には、アイテムの搬送に使用可能なロボット駆動ユニットを、階を跨いで自動で移動させるリフト機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実環境における物品の搬送は、様々な大きさの物品または複数の物品を一度に搬送することもあり得る。しかしながら、特許文献1に記載されたリフト機構では、一つのリフト台からはみ出る大きさの物品あるいは一つのリフト台に一度に載せることが可能な数量を超える物品を搬送できないという課題があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するものであり、一つの荷台からはみ出る大きさの物品または一つの荷台に載せることが可能な数量を超える物品を、階を跨いで搬送することができる搬送システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る搬送システムは、床面に設けられ、開状態で上階と下階とを貫通し、閉状態で床面となる複数の開閉部と、開閉部を開閉駆動させる駆動部と、搬送物の大きさおよび数量に関する情報を取得する搬送物情報取得部と、駆動部を制御する制御部を備え、制御部は、搬送物情報取得部によって取得された情報に基づいて、搬送物の大きさおよび数量を判定し、駆動部を制御して隣接した複数の前記開閉部を開状態にすることにより、判定した大きさおよび数量の搬送物が階を跨いで移動可能な大きさの開口を床面に形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、床面に設けられ、開状態で上階と下階とを貫通し、閉状態で床面となる複数の開閉部と、開閉部を開閉駆動させる駆動部と、駆動部を制御する制御部を備え、制御部が、階を跨いで移動させる搬送物の大きさまたは数量の少なくとも一方に応じて駆動部を制御することで、隣接した複数の開閉部を開状態にする。これにより、本開示に係る搬送システムは、一つの荷台からはみ出る大きさの物品または一つの荷台に載せることが可能な数量を超える物品を、階を跨いで搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、実施の形態1に係る搬送システムによって床面を荷台一つ分開口させて一つの搬送物を搬送する場合を示す説明図であり、
図1Bは、実施の形態1に係る搬送システムによって床面を荷台二つ分開口させて一つの搬送物を搬送する場合を示す説明図であり、
図1Cは、実施の形態1に係る搬送システムによって床面を荷台二つ分開口させて複数の搬送物を搬送する場合を示す説明図である。
【
図2】実施の形態1における自走台車を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る搬送システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4Aは、結合前の2台の自走台車を示す上面図であり、
図4Bは、結合後の2台の自走台車を示す上面図である。
【
図5】
図5Aは、開状態の開閉部を示す上面図であり、
図5Bは、開状態になる途中の開閉部を示す上面図であり、
図5Cは、開閉部を、
図5BのA-A線で切った断面を示す断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1Aは、実施の形態1に係る搬送システム1によって床面3を荷台一つ分開口させて一つの搬送物Aを搬送する場合を示す説明図であり、
図1Bは、搬送システム1によって床面3を荷台二つ分開口させて一つの搬送物Bを搬送する場合を示す説明図であり、
図1Cは、搬送システム1によって床面3を荷台二つ分開口させて複数の搬送物を搬送する場合を示す説明図である。
図1Aに示すように、搬送システム1は、床面3に設けられた開閉部3Aを駆動させることにより、一台分の自走台車2が階を跨いで移動可能な開口4Aを形成することができる。
【0010】
例えば、搬送システム1は、階下のフロアカメラによって撮影された撮影画像に基づいて、搬送物Aの大きさおよび数量を判定する。ここでは、搬送物Aが、一台の自走台車2に載せることができ、数量が1つであることが判定される。搬送システム1は、搬送物Aが一台の自走台車2によって搬送可能な大きさおよび数量であると判定すると、搬送物Aを載せた自走台車2を上階に移動させるために、開閉部3Aのみを開状態にさせる。開閉部3Aが設けられた床面3の部分には、階下にレール5が設けられている。レール5は、自走台車2が装着されると、当該自走台車2を上下方向に移動させる。
【0011】
自走台車2をレール5に装着する機構としては、例えば、レール5に沿って昇降可能な支持棒を、自走台車2に設けられた孔部に挿入して装着する機構が考えられる。この機構において、支持棒を昇降させる機構としては、例えば、自走台車2の駆動力を伝える伝達機構を設けてもよいし、油圧などを利用した駆動機構を設けてもよい。
【0012】
図1Bに示すように、搬送システム1は、隣り合った2つの開閉部3Aを駆動させることにより、連結された二台の自走台車2が階を跨いで移動可能な開口4Bを形成することができる。例えば、搬送システム1は、階下のフロアカメラによって撮影された撮影画像に基づいて、搬送物Bの大きさおよび数量を判定し、さらに、判定した大きさおよび数量の搬送物を搬送可能な自走台車の台数を判定する。ここでは、搬送物Bが、一台の自走台車2に載せることができない大きさであり、数量が1つであることが判定される。また、搬送物Bを載せることができる自走台車2の台数は、二台であると判定される。
【0013】
搬送システム1は、搬送物Bの搬送に二台の自走台車2が必要であると判定した場合、連結して搬送物Bを載せた二台の自走台車2を上階に移動させるため、隣り合った2つの開閉部3Aを開状態にさせる。個々の開閉部3Aが設けられた床面3の部分には、
図1Bに示すように、階下にレール5が設けられている。レール5は、自走台車2が装着されると、連結して搬送物Bを載せた二台の自走台車2を上下方向に移動させる。
なお、搬送システム1において搬送物の大きさおよび数量を判定したが、搬送物の数量が予め決まっている場合には、搬送物の大きさのみを判定してもよい。また、搬送物の大きさが予め決まっている場合には、搬送物の数量のみを判定してもよい。
【0014】
図1Cに示すように、連結された二台の自走台車2が階を跨いで移動可能な開口4Bを形成することにより、一台の自走台車2では載せられない数量の搬送物C1~C4の搬送が可能である。例えば、搬送システム1は、階下のフロアカメラによって撮影された撮影画像に基づいて、搬送物C1~C4の大きさおよび数量を判定し、判定した大きさおよび数量の搬送物を搬送可能な自走台車の台数を判定する。ここでは、搬送物C1~C4が、一台分の自走台車2に2つまで載せることができ、数量が4つであると判定される。
【0015】
搬送システム1は、4つの搬送物C1~C4の搬送に二台の自走台車2が必要であると判定した場合、連結して搬送物C1~C4を載せた二台の自走台車2を上階に移動させるため、隣り合った2つの開閉部3Aを開状態にさせる。個々の開閉部3Aが設けられた床面3の部分には、
図1Cに示すように、階下にレール5が設けられている。レール5は、自走台車2が装着されると、連結して搬送物C1~C4を載せた二台の自走台車2を上下方向に移動させる。
【0016】
図2は、自走台車2を示す斜視図である。
図2に示すように、自走台車2は、例えば、板状の外観を有した、自律走行搬送ロボット(Autonomous Mobile Robot;AMR)である。また、自走台車2は、搬送物Dを載せる荷台部2Bを有し、床面上を移動するための車輪2Aを有し、2台の自走台車2を結合するための結合部2Cを有する。自走台車2は、結合部2Cを介して複数台接続することができる。
【0017】
図3は、搬送システム1の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、搬送システム1は、フロアカメラ31、台車センサ32、棚センサ33、搬送物情報取得部34、制御部35および開閉駆動部36を備えている。フロアカメラ31は、各階のフロアに設けられたカメラである。例えば、フロアカメラ31は、フロアの撮影画像データを、搬送物情報取得部34に出力する。
【0018】
台車センサ32は、自走台車2が備えるセンサである。例えば、台車センサ32は、荷台部2Bに載せられた搬送物の大きさおよび数量を検出し、検出情報を搬送物情報取得部34に出力する。棚センサ33は、階下に設けられた棚が備えるセンサである。棚センサ33は、例えば、棚内に配置された搬送物の大きさおよび数量を検出し、検出情報を搬送物情報取得部34に出力する。
【0019】
搬送物情報取得部34は、フロアカメラ31、台車センサ32および棚センサ33から搬送物情報を取得する。搬送物情報は、フロアの撮影画像データ、または、搬送物の大きさおよび数量が検出された検出情報である。搬送物情報取得部34は、例えば、フロアの撮影画像データに対してパターンマッチングなどの画像解析を行う。これにより、搬送物情報取得部34は、搬送物情報として、撮影画像における搬送物の画像情報を算出する。制御部35は、
図1A、
図1Bおよび
図1Cに示した自走台車2、開閉部3Aおよび昇降機構を制御する。制御部35は、搬送口制御部35A、台車制御部35Bおよび昇降制御部35Cを備える。
【0020】
搬送口制御部35Aは、開閉駆動部36を制御する。開閉駆動部36は、搬送口制御部35Aの制御により、開閉部3Aを開閉駆動させる駆動部である。台車制御部35Bは、例えば、無線により、制御信号を自走台車2に送信する。自走台車2は、台車制御部35Bの制御信号に従って車輪2Aを駆動させて移動する。なお、自走台車2は、周辺の障害物を検出するセンサを備え、当該センサによって検出された障害物を回避するために移動経路を自動で変更する自律走行を行う。昇降制御部35Cは、レール5に沿って自走台車2を昇降させる昇降機構を制御する。
【0021】
図4Aは、結合前の2台の自走台車2を示す上面図である。また、
図4Bは、結合後の2台の自走台車2を示す上面図である。
図4Aに示すように、2台の自走台車2は、結合部2Cが設けられた側面を対向させた状態で、矢印が指す方向に移動させることにより、
図4Bに示すように、結合部2Cを介して接続される。連結された自走台車2のそれぞれの荷台部2Bは、作業台としても利用可能である。
【0022】
開閉部3Aの開閉構造は、例えば、以下の通りである。
図5Aは、閉状態の開閉部3Aを示す上面図である。
図5Bは、開状態になる途中の開閉部3Aを示す上面図であり、
図5Cは、開閉部3Aを、
図5BのA-A線で切った断面を示す断面矢視図である。閉状態の開閉部3Aは、
図5Aに示すように、床面の一部になっている。例えば、閉状態の開閉部3Aは、床面の他の部分との間に段差がなく、床面として同様に利用することが可能である。
【0023】
開閉部3Aを開く場合、例えば
図5Bおよび
図5Cに示すように、開閉駆動部36は、開閉部3Aを一旦下降させてから、その後、上階と下階との階間において、
図5Cで矢印が指す方向にスライドさせる。これにより、開閉部3Aが開状態となり、床面に搬送口が形成される。また、隣り合った複数の開閉部3Aを開状態にすることにより、より大きな搬送口を形成することが可能である。
【0024】
なお、
図5A、
図5Bおよび
図5Cには、開閉部3Aをスライドさせて開く場合を示したが、これに限定されるものではない。実施の形態1における開閉部3Aを開く構造は、床面上に突出しないように開閉部3Aが収納された状態で搬送口を形成することができればよい。
【0025】
また、搬送物を載せた自走台車2をレール5に沿って昇降させる場合を示したが、搬送物を載せる部材は、自走台車2でなくてもよい。例えば、自走機能の無い荷台であってもよい。
【0026】
以上のように、実施の形態1に係る搬送システム1は、床面3に設けられ、開状態で上階と下階とを貫通し、閉状態で床面3となる開閉部3Aと、開閉部3Aを開閉駆動させる開閉駆動部36と、開閉駆動部36を制御する制御部35を備える。制御部35は、階を跨いで移動させる搬送物の大きさまたは数量の少なくとも一方に応じて開閉駆動部36を制御することにより、隣接した複数の開閉部3Aを開状態にする。この構成を有することにより、搬送システム1は、一つの荷台からはみ出る大きさの物品または一つの荷台に載せることが可能な数量を超える物品を、階を跨いで搬送することができる。
【0027】
実施の形態1に係る搬送システム1は、搬送物の大きさおよび数量に関する情報を取得する搬送物情報取得部34を備える。制御部35は、搬送物情報取得部34によって取得された情報に基づいて、搬送物の大きさおよび数量を判定し、開閉駆動部36を制御することにより、判定した大きさおよび数量の搬送物が階を跨いで移動可能な大きさの開口を床面3に形成する。これにより、搬送システム1は、一つの荷台からはみ出る大きさの物品または一つの荷台に載せることが可能な数量を超える物品を、階を跨いで搬送することができる。
【0028】
実施の形態1に係る搬送システム1において、搬送物を載せることが可能な自走台車2を、階を跨いで移動させる。自走台車2に載せられた搬送物を、階を跨いで搬送することができる。
【0029】
実施の形態1に係る搬送システム1において、搬送物が載せられた、連結された複数台の自走台車2を、階を跨いで移動させる。一台の自走台車2に載せられない大きさまたは数量の搬送物を、階を跨いで搬送することができる。
【0030】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 搬送システム、2 自走台車、2A 車輪、2B 荷台部、2C 結合部、3 床面、3A 開閉部、4A,4B 開口、5 レール、31 フロアカメラ、32 台車センサ、33 棚センサ、34 搬送物情報取得部、35 制御部、35A 搬送口制御部、35B 台車制御部、35C 昇降制御部、36 開閉駆動部。