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特許7692799溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20250609BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021179374
(22)【出願日】2021-11-02
(65)【公開番号】P2023068352
(43)【公開日】2023-05-17
【審査請求日】2024-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雅和
(72)【発明者】
【氏名】中尾 貴行
(72)【発明者】
【氏名】矢部 実透
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳也
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0210158(US,A1)
【文献】特開2017-120185(JP,A)
【文献】特開2017-215237(JP,A)
【文献】特開2005-158699(JP,A)
【文献】特開2009-158168(JP,A)
【文献】特開2011-066394(JP,A)
【文献】特開2004-071371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を照射するスポット照明と、カメラと、複数の端子が溶接された溶接端子を配置する撮像ステージとを用いて前記溶接端子を撮像し、前記撮像された画像を解析して前記溶接端子の溶接状態を検査する溶接端子の検査方法であって、
前記撮像ステージの固定部に前記溶接端子を固定し、
暗室内において、前記固定部の前記カメラから見て背後に立設された前記撮像ステージの板に、前記スポット照明の光束を、前記溶接端子を直接照らさないように前記板に照射し、前記板の前記光束による照射範囲を背景として前記溶接端子を前記カメラで撮像し、撮像した画像を解析する溶接端子の検査方法。
【請求項2】
前記スポット照明は、前記カメラよりも上方から、前記板を照射する請求項1に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項3】
前記スポット照明は、前記固定部と、前記板の下端部と前記スポット照明とを結ぶ線が成す角度が、45度以上となる位置に配置されている請求項2に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項4】
前記スポット照明は、凸レンズを備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項5】
前記スポット照明は、前記スポット照明の前記光束の断面形状を規制する開口部が設けられたアパーチャを備える請求項4に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項6】
前記スポット照明は、LED照明を使用する請求項4又は請求項5に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項7】
前記スポット照明は、前記LED照明と、前記凸レンズとの間の距離を調整可能である請求項6に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項8】
前記スポット照明は、レーザ光照明を使用する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接端子の検査方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溶接端子の検査方法を利用して、前記端子としての信号端子、電源端子、中継端子間の前記溶接端子を検査する回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接された対象物をカメラなどにより撮像して、得られた画像データを用いて溶接部の外観検査を行う検査装置が一般的に知られている。このような外観検査装置は、銅、鉄などの金属端子同士を溶接し、溶接後の溶接部を外観検査するために用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の外観検査装置は、溶接後の金属端子を撮像するカメラと、そのカメラの撮像範囲に上から光を照射するリング照明と、斜め上から照射するスポット照明を備えている。また、カメラから得られた画像データを処理する制御回路を備えている。制御回路は、カメラにより撮像された画像データに基づき、溶接後の金属端子の高さ、大きさ等を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-120185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検査装置、検査手法では、検査対象に対して、第1照明と第1照明から照射される光の色とは異なる色の光の第2照明を配線に照射する。切替部は、第1照明が点灯し第2照明が消灯する第1撮像状態と、第1照明および第2照明の両方が点灯する第2撮像状態とを切り替える。
【0006】
また、検出部は、第1撮像状態のときに検査対象を撮像して得られた第1データに基づき複数の配線の位置を検出し、第2撮像状態のときに検査対象を撮像して得られた第2データに基づき、複数の配線の位置に対応した溶接部の寸法を検出することが可能である。しかしながら、異なる色の照明を2つ用意しなければならないこと、また、第1撮像状態、第2撮像状態があることから、照明費用の増大、検査のためのタクトタイムの悪化が予想され、検査対象製品のコストの増大が懸念されるという課題があった。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、安価かつ簡便に検査対象の検査ができる溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される溶接端子の検査方法は、
平行光を照射するスポット照明と、カメラと、複数の端子が溶接された溶接端子を配置する撮像ステージとを用いて前記溶接端子を撮像し、前記撮像された画像を解析して前記溶接端子の溶接状態を検査する溶接端子の検査方法であって、
前記撮像ステージの固定部に前記溶接端子を固定し、
暗室内において、前記固定部の背後に立設された前記撮像ステージの板に、前記スポット照明の光束を、前記溶接端子を直接照らさないように前記板に照射し、前記板の前記光束による照射範囲を背景として前記溶接端子を前記カメラで撮像し、撮像した画像を解析するものである。
また、本願に開示される回転電機の製造方法は、前記溶接端子の検査方法を利用して、前記端子としての信号端子、電源端子、中継端子間の前記溶接端子を検査するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法によれば、安価かつ簡便に検査対象の検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1による溶接端子の検査方法によって検査する対象である溶接端子を有する電動パワーステアリング装置の断面図である。
図2】実施の形態1によるスポット照明の断面図である。
図3図3Aは、アパーチャの斜視図である。図3Bは、アパーチャの正面図である。
図4】実施の形態1による第2鏡筒の斜視図である。
図5図5A図5Bは、第1鏡筒51の斜視図である。図5Aは、LED照明側から斜めに見た図であり、図5Bは、凸レンズを取り付ける側から斜めに見た図である。
図6】実施の形態1によるスポット照明と、カメラと、溶接端子と、撮像ステージの配置を示す側面模式図である。
図7】実施の形態1によるスポット照明と、カメラと、溶接球と、撮像ステージの配置を示す平面模式図である。
図8】実施の形態1によるスポット照明の固定治具の分解図である。
図9】実施の形態1によるカメラで撮像した、溶接端子と背景の画像を示す図である。
図10】実施の形態2によるスポット照明の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、実施の形態1による溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法を、図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1による溶接端子の検査方法によって検査する対象である溶接端子12を有する電動パワーステアリング装置10の断面図である。電動パワーステリング装置は、回転電機15を主部品とする装置である。溶接端子12は、電動パワーステアリング装置10の回転電機15の外部電源端子11と電気コントロールユニットから突出した中継端子13とをTig(Tungsten Inert Gas)溶接した部分である。その他、信号端子と中継端子間も同様に溶接端子12である。
【0012】
図2は、実施の形態1によるスポット照明100の断面図である。スポット照明100をその光軸LCを含む平面で切断した図である。スポット照明100は、LED照明20(本体部)と、アパーチャ30と、凸レンズ55を有する光束調整部50を備える。LED照明20は、発光体としてLEDを備え、光を照射する。アパーチャ30は、LED照明20の光の照射部21に固定され、LED(Lite emitting diode)照明20の光軸LCに垂直な形状が長方形に切り抜かれた開口部31が設けられている。アパーチャ30は、LED照明20の光束LBを、光軸LCに対して垂直な断面が長方形となるように規制する。
【0013】
光束調整部50は、アパーチャ30を通過した光を平行光に屈折させる凸レンズ55および、この凸レンズ55が固定された筒状の第1鏡筒51と、第1鏡筒51の内周面が、上記光の光軸LC方向にスライド可能に嵌め込まれた筒状の第2鏡筒52とを備える。第2鏡筒52は、アパーチャ30の外周面に固定されており、第1鏡筒51を第2鏡筒52に対して光軸LC方向にスライドさせることによって、LED照明20と凸レンズ55との間の距離Lが、凸レンズ55の焦点距離となるように調節可能となっている。
【0014】
LED照明20は、直径が5mm~30mm程度であり、長さは20mm~100mm程度である。なお、LED照明20は、蛍光ランプなどLED以外の照明でもよい。LED照明の方が安価で光度も大きく寿命が長いので、可能であればLED照明が望ましい。
【0015】
図3Aは、アパーチャ30の斜視図であり、LED照明20側から斜めに見た図である
図3Bは、アパーチャ30の正面図であり凸レンズ55側から見た図である。
アパーチャ30の材質としては、樹脂または金属を用いるのが望ましく、どちらでもよい。アパーチャ30は、LED照明20側が開放された有底の円筒状になっており、LED照明20の外周面に被せるように装着されている。そして、凸レンズ55側の円形状の端板32には、縦が1mm~3mm程度、横が5mm~20mm程度の長方形に切り抜かれた開口部31が設けられている。開口部31は、長方形でなくてもよく、半径2.5mm~10mm程度の半円でもよい。
【0016】
ただし開口部31の形状は、スポット照明100による光の照射対象である溶接端子12が立っている撮像ステージが平面であるため、長方形、半円に関わらず、長辺の一辺は、直線部であることが望ましい。なお、アパーチャ30の内径は、LED照明20の照射部21の直径に合うように5mm~30mm程度であり、嵌め合い公差は0.5mm~1mm程度が望ましい。なお、アパーチャ30は、LED照明20の照射部21に接着剤等で接合できるように紙などであってもよい。その場合、円筒状である必要はなく、円形に切り抜いた紙でもよい。
【0017】
図4は、第2鏡筒52の斜視図である。
第2鏡筒52は、中空の円筒状をしており、アパーチャ30の直径よりも0.5mm~1mm程度大きい。すなわち、アパーチャ30との嵌め合い公差は、0.5mm~1mm程度が望ましい。第2鏡筒52の長さは5mm~100mm程度であり、厚みは2mm~3mm程度である。材質は、金属が望ましいが、厚み2~3mmの場合、重量が大きくなることが予想されるため樹脂でもよい。
【0018】
また、第2鏡筒52は、LED照明20に被される側の端部から3mm程度の位置に、アパーチャ30と第2鏡筒52とをネジ固定するために、周方向Yに120°毎に3か所のタップ穴52Tが開けられている。タップ穴52Tは、周方向Yに90°毎に4か所でもよい。
【0019】
図5A図5Bは、第1鏡筒51の斜視図である。
図5Aは、LED照明20側から斜めに見た図であり、図5Bは、凸レンズ55を取り付ける側から斜めに見た図である。
【0020】
第1鏡筒51は、第2鏡筒52の直径よりも0.5mm~1mm程度大きく、嵌め合い公差は、0.5mm~1mm程度が望ましい。長さは、5mm~100mm程度であり、厚みは、2~5mm程度である。材質は、金属が望ましいが、厚み2mm~5mmの場合、重量が大きくなることが予想されるため樹脂でもよい。
【0021】
また、第2鏡筒側の端部から3mm程度の位置に、周方向Yに120°毎に3か所のタップ穴51Tが開けられている。タップ穴51Tは、周方向Yに90°毎に4か所でもよい。
【0022】
第1鏡筒51は、凸レンズ55を嵌め込むために、第1鏡筒51の外径より1mm~2mm程度小さい直径のザグリ穴51hが、凸レンズ55を取り付ける側の端部から、光軸LC方向に深さ3mm~5mm程度彫られている。凸レンズ55は、直径20mm~40mm程度であり、LED照明20の直径より大きいことが望ましい。凸レンズ55の焦点距離は、20mm~70mm程度であり、厚みは3mm~10mmである。
【0023】
第1鏡筒51のザグリ穴51hの加工部には、凸レンズ55を固定する接着剤を塗布するために用いる長方形または正方形の切込み51Kが、周方向Yに90°毎に4箇所設けられている。切り込み51Kの光軸LC方向の深さは、2mm~3mm程度に加工されている。切込み51Kを設けることによって、凸レンズ55の両面に接着剤等を塗布する必要が無く、凸レンズ55の外周面に接着剤等を塗布することができるので、接着剤によって光の通過を妨害することを防ぐことができる。
【0024】
次に、スポット照明100の組み立て工程を説明する。
まず、LED照明20の照射部21に、アパーチャ30を被せる。この時、アパーチャ30の凸レンズ55側の円形状の端板32の内面32INは、照射部21の凸レンズ55側の端面に可能な限り近づけることが望ましい。
【0025】
LED照明20にアパーチャ30を取り付けた後、第2鏡筒52をアパーチャ30の上から更に嵌め込むように被せる。被せ代は5mm~10mm程度でよい。その後、アパーチャ30と第2鏡筒52とを、タップ穴52Tを用いてネジで固定する。
【0026】
なお、アパーチャ30に代えて円形状の紙を用いる場合は、LED照明20の照射部21にアパーチャを接着剤等で貼り付けて固定する。この場合は、LED照明20に第2鏡筒52をタップ穴52Tを用いて、ネジで固定する。
【0027】
次に、第1鏡筒51を第2鏡筒52の上から嵌め込むように被せる。被せ代は5mm~10mm程度でよい。この時、凸レンズ55の焦点距離に合わせるようにアパーチャ30と凸レンズ55間の距離Lを調節してタップ穴51Tを用いてネジで固定する。このために、第1鏡筒51と、第2鏡筒52の2つの鏡筒を使用する必要がある。
【0028】
第1鏡筒51と、第2鏡筒52の双方をネジで固定した後、ザグリ穴51hに凸レンズ55を嵌め込み、ザグリ穴51hの周囲に90°毎に4箇所設けた長方形または正方形の切込み51Kに接着剤等を塗り凸レンズ55を固定する。このようにして各部品を組み立ててスポット照明100が完成する。なお、上記のスポット照明100の組み立て手順は順序を問わない。
【0029】
次に、スポット照明100およびカメラを用いて、検査対象である溶接端子12の溶接部である溶接球12Bを撮像する方法について説明する。
図6は、スポット照明100と、カメラ60と、溶接端子12と、撮像ステージ70の配置を示す側面模式図である。
図7は、スポット照明100と、カメラ60と、溶接球12Bと、撮像ステージ70の配置を示す平面模式図である。図6を上方から見た模式図である。各図において、カメラ60の撮像範囲CAを図示している。
溶接端子12は、例えば、電動パワーステアリングの外部電源端子11と電気コントロールユニットから突出した中継端子13とをTig溶接した部分である。複数本の溶接端子12が全てカメラ60の撮像範囲CAに入るようにカメラ60を配置する。
【0030】
図6図7に示すように、撮像ステージ70は、水平な溶接端子固定部71(固定部)と、カメラ60から見てその背後に立ち上がる板72とを備える。溶接端子固定部71は、検査対象の溶接端子12を板72の前に配置するために使用する。板72は、スポット照明100の光束LBを受ける部分である。板72の高さは、溶接端子12よりも高い。板72は、金属でも樹脂でもよいが、白色の反射率が大きいもの、乱反射する素材が望ましい。また、板72の位置は、溶接端子12から2mm~20mm程度、後方に設置することが望ましい。20mm以上後方に板72を設置すると、スポット照明100からの距離が大きくなり光源像の光度が小さくなる恐れがある。
【0031】
カメラ60は、板72のスポット照明100による照射範囲LBRを背景として溶接端子12の溶接球12Bを撮像できるように配置する。カメラ60の撮像方向は、水平方向である。図6では、カメラ60と溶接端子12の水平距離は100mm~200mm程度である。
【0032】
板72の下端部72Lから上方の予め定められた照射範囲LBRを照射する2つのスポット照明100が、カメラ60の両脇の上方に配置されている。また、スポット照明100は、図6に示す方向に撮像ステージ70とスポット照明100とを見たときに、溶接端子固定部71と、板72の下端部72Lとスポット照明100とを結ぶ線が成す角度θが、45度以上となる位置に配置されている。そして、光束LBが板72を照射する照射範囲LBRの上端LBUの位置は、溶接端子12の上端よりも高い。
【0033】
図6に示すように、溶接端子12は、光束LBよりも下方に配置される。光束LBが板72を照射する照射範囲LBRの下端LBLは、板72の下端部72Lの位置であり、当該光束LBよりも下方に溶接端子12の溶接球12Bの上端がくるように溶接端子12を配置することで、溶接端子12には、スポット照明100の光は、直接当たらない。したがって、溶接端子12が、直接光を受けて発生する“てかり”が、カメラ60によって撮像されることを防止できる。
【0034】
図8は、スポット照明100の固定治具90の分解図である。
固定治具90は、第1鏡筒51の外径よりも0.5mm~1mm程度大きく、嵌め合い公差が0.5mm~1mm程度の直径の穴91h1が開けられている治具本体91と、シャフト92付きのスタンド93とから構成されている。スポット照明100の第1鏡筒51の先端を穴91h1に嵌め込んで、治具本体91を上下に貫通するネジN1を締め込むことによって、第1鏡筒51を挟み込んで固定する。
【0035】
治具本体91は、シャフト92に、ネジN2で固定されている。シャフト92および治具本体91には、それぞれネジ穴92h、ネジ穴91h2が開けられており、ネジ穴92hに通したネジN2を治具本体91のネジ穴91h2に締め付けて固定する。このとき、スポット照明100の照射角度を調整して締め付けるとよい。
【0036】
上述したスポット照明100、カメラ60、溶接端子12の位置関係でスポット照明100を点灯し、カメラ60によって溶接端子12を撮像する。
【0037】
図9は、カメラ60で撮像した、溶接端子12と背景の画像を示す図である。
アパーチャ30の開口部31を通った光束LBは、板72によって乱反射する。板72は白色に塗装されている。このとき、上述したように、スポット照明100の光束LBは、直接、溶接端子12に照射されないようにそれぞれの位置が決められているので、板72上の光源像は、アパーチャ30の開口部31の形状によって、長方形または半円の形状となっているが、板72の下側の一辺が直線部状となるようにスポット照明100を固定することが望まれる。
【0038】
暗室内において、周囲を暗くしてカメラ60によって溶接端子12を撮像すると、溶接端子12が、板72からの白色反射光を遮って、溶接端子12のシルエットのみを撮像することができる。
【0039】
実施の形態1による溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法によれば、上記の位置関係でスポット照明100を点灯し、溶接端子12の背景となる板72の照射範囲LBRを照らすことによって溶接端子12のシルエットのみをカメラ60で映し出すことが可能となる。溶接端子12の背景を白色化することで、カメラ60の画像処理機能を用い、溶接球12Bのてかりを拾うことなく、溶接端子12の高さ12H、溶接球12Bの大きさ12BWを正確に解析、測定することが可能となり、万一、不良がある場合は、確実に検出できる。
また、前記スポット照明は、前記カメラよりも上方から、前記板を照射することによって、光束が、直接溶接球に当たることを防止できる。
また、前記スポット照明は、前記固定部と、前記板の下端部と前記スポット照明とを結ぶ線が成す角度が、45度以上となる位置に配置することによって、光束が、直接溶接球に当たらない範囲を十分に確保できる。
また、前記スポット照明は、凸レンズを備えるので、平行光を利用できる。
また、前記スポット照明は、前記スポット照明の前記光束の断面形状を規制する開口部が設けられたアパーチャを備えるので、背景として必要な範囲だけに光束を照射できる。
また、前記スポット照明は、LED照明を使用するので、安価に長寿命に検査装置を構成できる。
また、前記スポット照明は、前記LED照明と、前記凸レンズとの間の距離を調整可能であるので、平行光を容易に利用できる。
また、前記スポット照明は、レーザ光照明を使用するので、平行光を容易に利用できる。
また、溶接端子の検査方法を利用して、前記端子としての信号端子、電源端子、中継端子間の前記溶接端子を検査する回転電機の製造方法によれば、安価かつ簡便に検査対象の検査ができるので、信頼性の高い回転電機を安価に製造できる。
【0040】
実施の形態2.
以下、実施の形態2による溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法を、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図10は、実施の形態2によるスポット照明200の断面図である。
実施の形態1では、LED照明20にアパーチャ30、第1鏡筒51、第2鏡筒52、凸レンズ55を組み付けていた。そして凸レンズ55によって分散光を平行な光束LBにして利用していた。本実施の形態2では、光源として平行光を照射するレーザ照明220を利用する。
【0041】
鏡筒としては、1つの第1鏡筒251のみを使用する。そして指向性のあるレーザ光照明を利用するので凸レンズ55も不要である。
【0042】
レーザ照明220から照射されるレーザ光は、板72に照射した時の光源像の形状が長方形または、半径2.5mm~10mm程度の半円でなければならないが、光束の断面形状がアパーチャ30によって調整されるのは実施の形態1と同じである。
【0043】
光束は、実施の形態1と同様に、溶接端子12の背後に設けた板72に照射される。本実施の形態2では、鏡筒が1つ、かつ凸レンズが必要ないので、スポット照明200を小型化することが可能となる。また、鏡筒が1つなので軽量化でき、設備内にも導入しやすくなる。
【0044】
レーザ照明220を治具で固定し、レーザ照明220、カメラ60、溶接端子12を、実施の形態1と同様の位置関係で配置してレーザ光を照射する。
板72の高さは、溶接端子12より高い。板72は、金属でも樹脂でもよいが、白色の反射率が大きいもの、乱反射する素材が望ましい。また、板72の位置は、溶接端子12から2mm~20mm程度、後方に設置することが望ましい。20mm以上後方に板72を設置すると、スポット照明200からの距離が大きくなり光源像の光度が小さくなる恐れがある。
【0045】
実施の形態1と同様の位置関係でスポット照明を照射させ、溶接端子の背景を照らすことで溶接端子のシルエットのみをカメラで映し出すことが可能となる。
【0046】
実施の形態2による溶接端子の検査方法および回転電機の製造方法によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、スポット照明200の部品点数を減らすことによって、装置の軽量化およびコストの低減が可能となる。
【0047】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0048】
10 電動パワーステアリング装置、100,200 スポット照明、
11 外部電源端子、12 溶接端子、12B 溶接球、12H 高さ、
13 中継端子、20 LED照明、21 照射部、220 レーザ照明、
30 アパーチャ、31 開口部、32 端板、32IN 内面、50 光束調整部、
51,251 第1鏡筒、51h ザグリ穴、51K 切込み、
51T,52T タップ穴、52 第2鏡筒、55 凸レンズ、60 カメラ、
70 撮像ステージ、71 溶接端子固定部、72 板、72L 下端部、
90 固定治具、91 治具本体、91h1 穴、91h2,92h ネジ穴、
92 シャフト、93 スタンド、CA 撮像範囲、L 距離、LB 光束、
LBR 照射範囲、LBU 上端、LBL 下端、LC 光軸、N1,N2 ネジ、
Y 周方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10