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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/10 20200101AFI20250609BHJP
   B62J 11/00 20200101ALI20250609BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20250609BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20250609BHJP
【FI】
B62J17/10
B62J11/00
B62J23/00 A
B62J50/21
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023169135
(22)【出願日】2023-09-29
(65)【公開番号】P2025059207
(43)【公開日】2025-04-10
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】浦澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 卓
(72)【発明者】
【氏名】阿部 覚
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-92831(JP,A)
【文献】特開2014-113994(JP,A)
【文献】特開2009-107545(JP,A)
【文献】特開平10-45078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 17/10
B62J 11/00
B62J 23/00
B62J 50/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(11)の前方に配置され車体前部を覆うフロントカウル(40)と、
前記フロントカウル(40)の後方に配置されるメータパネル(50)と、を備え、
前記フロントカウル(40)は、走行風を導く流路(60)を形成する段差部(61)を備え、
前記メータパネル(50)の上縁(53)は、前記フロントカウル(40)の後部と当接又は近接しており、
前記メータパネル(50)の縁部(52)の一部に、切欠き(54)が形成され、
前記切欠き(54)の少なくとも一部は、前記流路(60)に通じる開口部(55)を含み、
前記フロントカウル(40)は、車両前方から見て、前記メータパネル(50)を覆うように前記メータパネル(50)と重なり、
前記開口部(55)の少なくとも一部は、前記フロントカウル(40)と前記メータパネル(50)とが重なる位置に形成される、
鞍乗型車両。
【請求項2】
前記フロントカウル(40)は、
車両前方に臨むとともに車幅方向中央に配置される車幅中央面(40a)と、
車両前後方向に対して斜め外方に傾斜するとともに前記車幅中央面(40a)よりも車幅方向外方に配置される車幅外側面(40b)と、を備え、
前記段差部(61)は、前記車幅中央面(40a)と前記車幅外側面(40b)との接続部(40c)に形成される、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記メータパネル(50)の縁部(52)は、前記段差部(61)を通り且つ車両上下方向及び車両前後方向を含む断面視で、延長線が前記フロントカウル(40)に対して交差するように延びる第1延在部(52a)と、前記第1延在部(52a)の先端部から屈曲して前記フロントカウル(40)と当接又は近接する位置まで延びる第2延在部(52b)と、を備え、
前記切欠き(54)の少なくとも一部は、前記第2延在部(52b)の外面に臨む位置に形成される、
請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
ヘッドライト(70)を更に備え、
前記フロントカウル(40)の下縁と前記ヘッドライト(70)の上縁(53)との間に、隙間(71)が形成され、
前記隙間(71)の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、前記開口部(55)の車幅方向の範囲内に形成される、
請求項1から3の何れか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記フロントカウル(40)の後方に 前記隙間(71)と前記開口部(55)とを通じさせる空間(72)が形成される、
請求項4に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
車両前後方向から見て、前記開口部(55)の車幅方向の長さ(W1)は、前記流路(60)の車幅方向の長さ(W2)と略同じである、
請求項1から3の何れか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行時に車両前方から受ける走行風をフロントカウル内部に取り込み、メータパネルに設けられた開口から排出する技術がある。特にフロントカウルが大きい車両はより多くの走行風を排出する必要があり、メータパネルに設けられる開口の面積を大きくする必要がある。この場合、開口からフロントカウル内部の配線が露出して意匠性が低下したり、ヘッドライトの光漏れが発生したりする課題がある。そのため、フロントカウル内部に流入した走行風を効率的に排出するとともに、開口を設けることによって起因する課題を改善することが要求される。例えば、特許文献1には、走行風を後上方へ流す上面部を備えたフロントカウルと、運転者に向けて車両情報を表示するメータパネルと、メータパネルの前上方を覆うウインドスクリーンと、を備えた鞍乗型車両が開示されている。フロントカウルの上面部は、ウインドスクリーンに覆われる位置に、裏面まで貫通する連通口が形成されている。連通口は、メータパネルの下方に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5913277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントカウルの上面部においてウインドスクリーンに覆われる位置に連通口が形成される場合、車両前方からは連通口が見えやすいため、外観性が低下するという課題がある。そのため、外観性の低下を抑制しつつ操安性を向上させ且つ排風の効率を向上させることができることが望まれている。
【0005】
本願は上記課題の解決のため、外観性の低下を抑制しつつ操安性を向上させ且つ排風の効率を向上させることを目的としたものである。そして、ひいては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る鞍乗型車両(1)は、ヘッドパイプ(11)の前方に配置され車体前部を覆うフロントカウル(40)と、前記フロントカウル(40)の後方に配置されるメータパネル(50)と、を備え、前記フロントカウル(40)は、走行風を導く流路(60)を形成する段差部(61)を備え、前記メータパネル(50)の上縁(53)は、前記フロントカウル(40)の後部と当接又は近接しており、前記メータパネル(50)の縁部(52)の一部に、切欠き(54)が形成され、前記切欠き(54)の少なくとも一部は、前記流路(60)に通じる開口部(55)を含み、前記フロントカウル(40)は、車両前方から見て、前記メータパネル(50)を覆うように前記メータパネル(50)と重なり、前記開口部(55)の少なくとも一部は、前記フロントカウル(40)と前記メータパネル(50)とが重なる位置に形成される。
【0007】
(2)上記(1)に記載の鞍乗型車両(1)では、前記フロントカウル(40)は、車両前方に臨むとともに車幅方向中央に配置される車幅中央面(40a)と、車両前後方向に対して斜め外方に傾斜するとともに前記車幅中央面(40a)よりも車幅方向外方に配置される車幅外側面(40b)と、を備え、前記段差部(61)は、前記車幅中央面(40a)と前記車幅外側面(40b)との接続部(40c)に形成されてもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の鞍乗型車両(1)では、前記メータパネル(50)の縁部(52)は、前記段差部(61)を通り且つ車両上下方向及び車両前後方向を含む断面視で、延長線が前記フロントカウル(40)に対して交差するように延びる第1延在部(52a)と、前記第1延在部(52a)の先端部から屈曲して前記フロントカウル(40)と当接又は近接する位置まで延びる第2延在部(52b)と、を備え、前記切欠き(54)の少なくとも一部は、前記第2延在部(52b)の外面に臨む位置に形成されてもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)の何れかに記載の鞍乗型車両(1)では、ヘッドライト(70)を更に備え、前記フロントカウル(40)の下縁と前記ヘッドライト(70)の上縁(53)との間に、隙間(71)が形成され、前記隙間(71)の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、前記開口部(55)の車幅方向の範囲内に形成されてもよい。
【0010】
(5)上記(4)に記載の鞍乗型車両(1)では、前記フロントカウル(40)の後方に 前記隙間(71)と前記開口部(55)とを通じさせる空間(72)が形成されてもよい。
【0011】
(6)上記(1)から(5)の何れかに記載の鞍乗型車両(1)では、車両前後方向から見て、前記開口部(55)の車幅方向の長さ(W1)は、前記流路(60)の車幅方向の長さ(W2)と略同じであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記(1)に記載の鞍乗型車両によれば、ヘッドパイプの前方に配置され車体前部を覆うフロントカウルと、フロントカウルの後方に配置されるメータパネルと、を備え、フロントカウルは、走行風を導く流路を形成する段差部を備え、メータパネルの上縁は、フロントカウルの後部と当接又は近接しており、メータパネルの縁部の一部に、切欠きが形成され、切欠きの少なくとも一部は、流路に通じる開口部を含み、フロントカウルは、車両前方から見て、メータパネルを覆うようにメータパネルと重なり、開口部の少なくとも一部は、フロントカウルとメータパネルとが重なる位置に形成されることで、以下の効果を奏する。
フロントカウルとメータパネルとが重なる位置に開口部の少なくとも一部が形成されることで、開口部は運転者からは見えにくくなるため、外観性の低下を抑制することができる。加えて、メータパネルの縁部に形成された切欠き(開口部を含む)の面積を大きくすることで、空気抜きの開口面積を大きくすることができ、操安性を向上させることができる。加えて、流路に導かれた走行風により、開口部を通じてフロントカウル内部の空気を車両後方へ排出することができ、排風の効率を向上させることができる。したがって、外観性の低下を抑制しつつ操安性を向上させ且つ排風の効率を向上させることができる。そして、ひいては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与する。
【0013】
本発明の上記(2)に記載の鞍乗型車両によれば、フロントカウルは、車両前方に臨むとともに車幅方向中央に配置される車幅中央面と、車両前後方向に対して斜め外方に傾斜するとともに車幅中央面よりも車幅方向外方に配置される車幅外側面と、を備え、段差部は、車幅中央面と車幅外側面との接続部に形成されることで、以下の効果を奏する。
車両の直進時又はバンク時に、走行風が段差に集まって後方に導かれるため、排風の効率をより向上させることができる。
【0014】
本発明の上記(3)に記載の鞍乗型車両によれば、メータパネルの縁部は、段差部を通り且つ車両上下方向及び車両前後方向を含む断面視で、延長線がフロントカウルに対して交差するように延びる第1延在部と、第1延在部の先端部から屈曲してフロントカウルと当接又は近接する位置まで延びる第2延在部と、を備え、切欠きの少なくとも一部は、第2延在部の外面に臨む位置に形成されることで、以下の効果を奏する。
メータパネル部の縁部を構成する第2延在部がフロントカウルの前方側に入り込むようにしてフロントカウルと当接又は近接し、第2延在部の外面に臨む位置に切欠きの少なくとも一部(開口部を含む)が形成されるため、開口部は運転者からはより見えにくくなる。したがって、外観性の低下をより抑制することができる。
【0015】
本発明の上記(4)に記載の鞍乗型車両によれば、ヘッドライトを更に備え、フロントカウルの下縁とヘッドライトの上縁との間に、隙間が形成され、隙間の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、開口部の車幅方向の範囲内に形成されることで、以下の効果を奏する。
フロントカウルの下縁とヘッドライトの上縁との間に形成された隙間を通じて走行風を取り込み、開口部へ流すことができるため、排風の効率をより向上させることができる。
【0016】
本発明の上記(5)に記載の鞍乗型車両によれば、フロントカウルの後方に 隙間と開口部とを通じさせる空間が形成されることで、以下の効果を奏する。
隙間から流入した走行風をフロントカウルの後方に形成された空間を通じて開口部へ流すことができるため、排風の効率を更に向上させることができる。
【0017】
本発明の上記(6)に記載の鞍乗型車両によれば、車両前後方向から見て、開口部の車幅方向の長さは、流路の車幅方向の長さと略同じであることで、以下の効果を奏する。
流路から導かれる走行風によって、開口部からフロントカウル内部の空気を効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図2】実施形態に係る自動二輪車の前面図である。
図3図2の上部拡大図である。
図4】実施形態に係るメータパネルを後上方から見た図である。
図5図4においてフロントカウルを外した状態の図である。
図6】実施形態に係るフロントロアカウルの右側面図である。
図7】実施形態に係る段差部を右上方から見た斜視図である。
図8図3のVIII-VIII断面を含む図である。
図9図4のIX-IX断面を含む図である。
図10図4のX-X断面を含む図である。
図11図1のXI-XI断面を含む図である。
図12図1のXII-XII断面を含む図である。
図13図1のXIII-XIII断面を含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、鞍乗型車両の一例として自動二輪車を挙げて説明する。以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中心位置を示す車体左右中心線CLが示されている。
【0020】
<自動二輪車>
図1は、実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。図2は、実施形態に係る自動二輪車1の前面図である。
図1及び図2を併せて参照し、自動二輪車1は、前輪2および後輪3と、前輪2を支持するフロントフォーク4と、後輪3を支持するスイングアーム5と、フロントフォーク4およびスイングアーム5を支持する車体フレーム6と、車体フレーム6に支持されるエンジン7(内燃機関、原動機)と、車体カバー8と、を備える。
【0021】
左右一対のフロントフォーク4の上部は、ステアリングステム10を介して車体フレーム6のヘッドパイプ11に操舵可能に支持されている。ステアリングステム10のトップブリッジ上には、バータイプのハンドル12が取り付けられている。左右フロントフォーク4の間には、フロントフェンダ20が設けられている。
【0022】
車体フレーム6は、ヘッドパイプ11と、左右一対のメインフレーム15と、左右一対のピボットフレーム16と、左右一対のダウンフレーム17と、シートフレーム18と、を備える。
【0023】
ヘッドパイプ11は、車両側面視において、ヘッドパイプ11の上端がヘッドパイプ11の下端よりも車両後方に位置するように傾斜している。
メインフレーム15は、車両側面視において、ヘッドパイプ11の後上部から後下がりに傾斜している。メインフレーム15の後端部は、車体前後中間部においてピボットフレーム16の上端部に連なっている。
【0024】
ピボットフレーム16は、車両側面視において、メインフレーム15の後端部から下方へ延びている。
ダウンフレーム17は、車両側面視において、ヘッドパイプ11の後下部からメインフレーム15よりも急傾斜で後下がりに傾斜して延びた後、後下方に向かって屈曲して延びている。
シートフレーム18は、メインフレーム15の後部に接続されている。シートフレーム18は、車両側面視において、メインフレーム15の後部から後上がりに傾斜している。
【0025】
ピボットフレーム16の上下中央部には、スイングアーム5の前端部が上下揺動可能に支持されている。スイングアーム5の後端部には、後輪3が支持されている。
【0026】
エンジン7は、車体フレーム6の内側部に搭載されている。例えば、エンジン7は、車幅方向(車両左右方向)に平行なクランク軸を有する。
エンジン7の上方であって左右メインフレーム15の間には、燃料タンク30が設けられている。燃料タンク30の後方であってシートフレーム18上には、シート31が設けられている。
【0027】
車体カバー8は、自動二輪車1の構成部品(例えば、車体フレーム6及びエンジン7等)を外側から覆うように設けられている。車体カバー8は、ヘッドパイプ11の前方に配置され車体前部を覆うフロントカウル40と、車体前部を車幅方向外側から覆うミドルカウル41と、車体下部を覆うアンダカウル42と、車体後上部を覆うリヤカウル43と、を備える。
【0028】
フロントカウル40の下方には、フロントロアカウル45が設けられている。フロントロアカウル45は、ヘッドライト70の上部及び下部の各々に配置される部分が一体に形成されている。フロントロアカウル45は、メータパネル50、ヘッドライト70及びミドルカウル41の各々と係合されている。
【0029】
ミドルカウル41には、ウイングレット46が設けられている。ミドルカウル41の車幅方向内方には、インナカバー47が設けられている。
【0030】
図3は、図2の上部拡大図である。図4は、実施形態に係るメータパネル50を後上方から見た図である。図5は、図4においてフロントカウル40を外した状態の図である。
図3から図5を併せて参照し、自動二輪車1は、フロントカウル40の後方に配置されるメータパネル50を備える。メータパネル50の車幅方向中央には、運転者に向けて車両情報を表示するメータ本体51が設けられている。メータパネル50の車幅方向外側部には、左右一対のウインカ35が設けられている。フロントカウル40の上部(メータ本体51近傍の部分)には、左右一対のミラー36が設けられている。メータパネル50の縁部52は、後面視で、メータ本体51に近接する部分から車幅方向外方かつ上方に向かって延びた後、車幅方向外方かつ下方に向かって湾曲しつつ延びている(図5参照)。
【0031】
フロントカウル40は、走行風を導く流路60を形成する段差部61を備える。メータパネル50の上縁53は、フロントカウル40の後部と当接又は近接している。メータパネル50の縁部52の一部に、切欠き54が形成される。切欠き54の少なくとも一部は、流路60に通じる開口部55を含む。フロントカウル40は、車両前方から見て、メータパネル50を覆うようにメータパネル50と重なる。開口部55の少なくとも一部は、フロントカウル40とメータパネル50とが重なる位置に形成される(図4参照)。
【0032】
切欠き54は、後面視で、ステアリングステム10のトップブリッジの車幅方向外端とバーハンドル12のグリップ部13の車幅方向内端との間に配置されている。メータパネル50において切欠き54が開放する端部に、フロントカウル40の内面が当接又は近接することによって、開口部55が形成されている。フロントカウル40は、開口部55を前方から覆うようにメータパネル50と重なっている。
【0033】
図6は、実施形態に係るフロントロアカウル45の右側面図である。図7は、実施形態に係る段差部61を右上方から見た斜視図である。
図6及び図7を併せて参照し、フロントカウル40は、車両前方に臨むとともに車幅方向中央に配置される車幅中央面40aと、車両前後方向に対して斜め外方に傾斜するとともに車幅中央面40aよりも車幅方向外方に配置される車幅外側面40bと、を備える。段差部61は、車幅中央面40aと車幅外側面40bとの接続部40cに形成される。
【0034】
図3を併せて参照し、フロントカウル40の上部には、ウインドスクリーン48が設けられている。車幅中央面40aの車幅方向内縁は、前面視でウインドスクリーン48の下縁に沿うように延びている。車幅中央面40aの車幅方向内縁は、前面視でV字状に形成されている。車幅中央面40aの車幅方向への傾斜角は、車幅外側面40bの車幅方向への傾斜角よりも小さい。車幅中央面40aの車幅方向への傾斜角は、車幅中央面40aの接線と車両上下方向に沿う直線とのなす鋭角に相当する。車幅外側面40bの車幅方向への傾斜角は、車幅外側面40bの接線と車両上下方向に沿う直線とのなす鋭角に相当する。
【0035】
車幅外側面40bは、車幅中央面40aの車幅方向両外端につながっている。段差部61は、車両後方に向かうに従って、車幅方向及び上下方向に大きくなっている。段差部61の車幅方向への傾斜角は、車幅外側面40bの車幅方向への傾斜角よりも大きい。段差部61の車幅方向への傾斜角は、段差部61において流路60を形成する面の接線と車両上下方向に沿う直線とのなす鋭角に相当する。段差部61において流路60を形成する面の少なくとも一部は、フロントカウル40の外面に対して車幅方向内方かつ下方に凹む凹形状である。
【0036】
図8は、図3のVIII-VIII断面を含む図である。図9は、図4のIX-IX断面を含む図である。図10は、図4のX-X断面を含む図である。
図8から図10を併せて参照し、メータパネル50の縁部52は、段差部61を通り且つ車両上下方向及び車両前後方向を含む断面視で、延長線がフロントカウル40に対して交差するように延びる第1延在部52aと、第1延在部52aの先端部から屈曲してフロントカウル40と当接又は近接する位置まで延びる第2延在部52bと、を備える。切欠き54の少なくとも一部は、第2延在部52bの外面に臨む位置に形成される。
【0037】
第1延在部52aの外面の延長線L1は、図9の断面視で、フロントカウル40の内面と鋭角に交差するように延びている。第2延在部52bの外面の延長線L2は、図9の断面視で、フロントカウル40の内面と更に小さい鋭角(第1延在部52aの外面の延長線L1とフロントカウル40の内面とがなす鋭角よりも小さい鋭角)に交差するように傾斜して延びている。第2延在部52bの外面とフロントカウル40の内面との間隔は、第2延在部52bがフロントカウル40と当接又は近接する位置に向かうに従って小さくなっている(図9参照)。
【0038】
例えば、切欠き54は、第2延在部52bの外面の高さ全体(上下方向の範囲全体)にわたって形成されている。なお、切欠き54は、上記に限定されず、第2延在部52bの外面の少なくとも一部に形成されていればよい。例えば、切欠き54の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0039】
図3及び図4を併せて参照し、自動二輪車1は、ヘッドライト70を更に備える。フロントカウル40の下縁とヘッドライト70の上縁との間に、隙間71が形成される。隙間71の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、開口部55の車幅方向の範囲内に形成される。
【0040】
ヘッドライト70は、左右一対設けられている。フロントカウル40の下縁は、前面視で、車幅方向中央部から車幅方向外方かつ上方に向かって延びた後に上方に屈曲して車幅方向外方かつ上方に向かって延び、その後、車幅方向外方かつ下方に向かって屈曲して延びている。ヘッドライト70の上縁は、前面視で、車幅方向内端から車幅方向外方かつ上方に向かって延びた後、車幅方向外端側で更に上方に向かって湾曲して延びている(図3参照)。
【0041】
隙間71は、ヘッドライト70のレンズとフロントカウル40との合わせ面に間隔を持たせて形成されている。隙間71は、ヘッドライト70の上部かつ車幅方向外側部に臨む位置に形成されている。隙間71は、ヘッドライト70のレンズの上部外側と外側部にかけて形成されている。ヘッドライト70のレンズとフロントカウル40とは、隙間71が形成された部分以外の面で互いに当接している。なお、ヘッドライト70は、単眼でもよいし、複眼でもよい。
【0042】
図8を併せて参照し、フロントカウル40の後方に 隙間71と開口部55とを通じさせる空間72が形成される。図中矢印は、空間72を流れる走行風の一例を示す。
【0043】
空間72は、隙間71から流入した走行風が開口部55に流れるように形成される。隙間71から流入した走行風は、ヘッドライト70とフロントロアカウル45との間を通って開口部55に流れる。隙間71から開口部55に至るまで、走行風の流れの妨げとなるものは配置されていない。フロントカウル40を支持する支持部材(例えば、カウルステー)は、開口部55よりも車幅方向内側に設けられている。
【0044】
図4を併せて参照し、車両前後方向から見て、開口部55の車幅方向の長さW1は、流路60の車幅方向の長さW2と略同じである。開口部55の車幅方向の長さW1は、図4の後面視で切欠き54においてフロントカウル40の縁部とメータパネル50の上縁53とに囲まれる部分の車幅方向の最大長さに相当する。流路60の車幅方向の長さW2は、図4の後面視で段差部61の湾曲面(段差部61において流路60を形成する面の一部)の車幅方向の最大長さに相当する。
【0045】
例えば、車両前後方向から見て、開口部55は、流路60の車幅方向の範囲内に形成されていてもよい。例えば、開口部55の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0046】
図10を併せて参照し、フロントカウル40の後縁部は、フロントカウル40の内側に向かって折り込まれるように伸びる延伸部40eを備える。メータパネル50の縁部52は、図10の断面視で、延伸部40eの延伸方向に対して前後に重なるように設けられる。
【0047】
図11は、図1のXI-XI断面を含む図である。図12は、図1のXII-XII断面を含む図である。図13は、図1のXIII-XIII断面を含む図である。
図11から図13を併せて参照し、フロントカウル40の外面は、車両上方かつ車幅方向外方に向かって湾曲している。
【0048】
図11の断面視で、フロントカウル40の外面は、車両上方かつ車幅方向外方に向かって湾曲する車幅中央面40aの外端から屈曲して車幅方向外方かつ下方に向かって延びた後、ヘッドライト70の上部に向かって屈曲して延びている。
図12の断面視で、フロントカウル40の外面は、車両上方かつ車幅方向外方に向かって湾曲する車幅中央面40aの外端(下端)と、車幅方向外方かつ下方に向かって延びる車幅外側面40bの内端(上端)との間に、段差部61の前端を有する。
図13の断面視で、フロントカウル40の外面は、車幅中央面40aと車幅外側面40bとの間に、車幅方向内方かつ下方に向かって湾曲する段差部61の湾曲面を有する。
【0049】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の自動二輪車1は、ヘッドパイプ11の前方に配置され車体前部を覆うフロントカウル40と、フロントカウル40の後方に配置されるメータパネル50と、を備える。フロントカウル40は、走行風を導く流路60を形成する段差部61を備える。メータパネル50の上縁53は、フロントカウル40の後部と当接又は近接している。メータパネル50の縁部52の一部に、切欠き54が形成される。切欠き54の少なくとも一部は、流路60に通じる開口部55を含む。フロントカウル40は、車両前方から見て、メータパネル50を覆うようにメータパネル50と重なる。開口部55の少なくとも一部は、フロントカウル40とメータパネル50とが重なる位置に形成される。
この構成によれば、フロントカウル40とメータパネル50とが重なる位置に開口部55の少なくとも一部が形成されることで、開口部55は運転者からは見えにくくなるため、外観性の低下を抑制することができる。加えて、メータパネル50の縁部52に形成された切欠き54(開口部55を含む)の面積を大きくすることで、空気抜きの開口面積を大きくすることができ、操安性を向上させることができる。加えて、流路60に導かれた走行風により、開口部55を通じてフロントカウル40内部の空気を車両後方へ排出することができ、排風の効率を向上させることができる。したがって、外観性の低下を抑制しつつ操安性を向上させ且つ排風の効率を向上させることができる。そして、ひいては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与する。
【0050】
上記実施形態では、フロントカウル40は、車両前方に臨むとともに車幅方向中央に配置される車幅中央面40aと、車両前後方向に対して斜め外方に傾斜するとともに車幅中央面40aよりも車幅方向外方に配置される車幅外側面40bと、を備える。段差部61は、車幅中央面40aと車幅外側面40bとの接続部40cに形成される。
この構成によれば、車両の直進時又はバンク時に、走行風が段差に集まって後方に導かれるため、排風の効率をより向上させることができる。
【0051】
上記実施形態では、メータパネル50の縁部52は、段差部61を通り且つ車両上下方向及び車両前後方向を含む断面視で、延長線がフロントカウル40に対して交差するように延びる第1延在部52aと、第1延在部52aの先端部から屈曲してフロントカウル40と当接又は近接する位置まで延びる第2延在部52bと、を備える。切欠き54の少なくとも一部は、第2延在部52bの外面に臨む位置に形成される。
この構成によれば、メータパネル50部の縁部52を構成する第2延在部52bがフロントカウル40の前方側に入り込むようにしてフロントカウル40と当接又は近接し、第2延在部52bの外面に臨む位置に切欠き54の少なくとも一部(開口部55を含む)が形成されるため、開口部55は運転者からはより見えにくくなる。したがって、外観性の低下をより抑制することができる。
【0052】
上記実施形態では、自動二輪車は、ヘッドライト70を更に備える。フロントカウル40の下縁とヘッドライト70の上縁53との間に、隙間71が形成される。隙間71の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、開口部55の車幅方向の範囲内に形成される。
この構成によれば、フロントカウル40の下縁とヘッドライト70の上縁53との間に形成された隙間71を通じて走行風を取り込み、開口部55へ流すことができるため、排風の効率をより向上させることができる。
【0053】
上記実施形態では、フロントカウル40の後方に 隙間71と開口部55とを通じさせる空間72が形成される。
この構成によれば、隙間71から流入した走行風をフロントカウル40の後方に形成された空間72を通じて開口部55へ流すことができるため、排風の効率を更に向上させることができる。
【0054】
上記実施形態では、車両前後方向から見て、開口部55の車幅方向の長さは、流路60の車幅方向の長さと略同じである。
この構成によれば、流路60から導かれる走行風によって、開口部55からフロントカウル40内部の空気を効率よく排出することができる。
【0055】
<変形例>
上記実施形態では、フロントカウルは、車両前方に臨むとともに車幅方向中央に配置される車幅中央面と、車両前後方向に対して斜め外方に傾斜するとともに車幅中央面よりも車幅方向外方に配置される車幅外側面と、を備え、段差部は、車幅中央面と車幅外側面との接続部に形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、段差部は、車幅中央面と車幅外側面との接続部以外の部分に形成されてもよい。例えば、段差部は、車幅中央面又は車幅外側面の一部(接続部以外の部分)に形成されてもよい。例えば、段差部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0056】
上記実施形態では、メータパネルの縁部は、段差部を通り且つ車両上下方向及び車両前後方向を含む断面視で、延長線がフロントカウルに対して交差するように延びる第1延在部と、第1延在部の先端部から屈曲してフロントカウルと当接又は近接する位置まで延びる第2延在部と、を備え、切欠きの少なくとも一部は、第2延在部の外面に臨む位置に形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、切欠きの全部は、第2延在部の外面に臨む位置以外に形成されてもよい。例えば、切欠きは、第1延在部の外面に臨む位置に形成されてもよい。例えば、切欠きの形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0057】
上記実施形態では、自動二輪車は、ヘッドライトを更に備え、フロントカウルの下縁とヘッドライトの上縁との間に、隙間が形成され、隙間の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、開口部の車幅方向の範囲内に形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、隙間の全部は、車両前後方向から見て、開口部の車幅方向の範囲外に形成されてもよい。例えば、隙間の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0058】
上記実施形態では、フロントカウルの後方に 隙間と開口部とを通じさせる空間が形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、フロントカウルの後方以外の部分に 隙間と開口部とを通じさせる空間が形成されてもよい。例えば、隙間と開口部とを通じさせる空間の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0059】
上記実施形態では、車両前後方向から見て、開口部の車幅方向の長さは、流路の車幅方向の長さと略同じである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車両前後方向から見て、開口部の車幅方向の長さは、流路の車幅方向の長さと異なっていてもよい。例えば、開口部の車幅方向の長さは、設計仕様に応じて変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、鞍乗型車両の一例としての自動二輪車を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、本発明は、自動二輪車以外の鞍乗型車両に適用してもよい。例えば、鞍乗型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪且つ後二輪の他に、前二輪且つ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。また、本発明は、自動二輪車のみならず、自動車等の四輪(四輪バギー等)の車両にも適用可能である。
また、本発明は、原動機に電気モータを含む鞍乗型車両に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
11 ヘッドパイプ
40 フロントカウル
40a 車幅中央面
40b 車幅外側面
40c 接続部
50 メータパネル
52 縁部
53 上縁
54 切欠き
55 開口部
60 流路
61 段差部
70 ヘッドライト
71 隙間
72 空間
W1 開口部の車幅方向の長さ
W2 流路の車幅方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13