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特許7693102電動機の回転子、電動機、圧縮機、及び冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】電動機の回転子、電動機、圧縮機、及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20250609BHJP
   H02K 7/04 20060101ALI20250609BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K7/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024515994
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2022018375
(87)【国際公開番号】W WO2023203709
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 一弥
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敏充
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-128115(JP,A)
【文献】特開2005-269695(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に締結される第1内径部と、前記回転軸の軸方向に延設され、周方向に間隔を空けて配置された第1リベット挿入穴と、前記軸方向に延設された磁石挿入穴とを有し、前記軸方向に複数積層されて配置された、円環状の第1回転子鉄心用電磁鋼板と、
前記磁石挿入穴に挿入された磁石と、
前記回転軸に締結される第2内径部と、前記軸方向に延設され、周方向に間隔を空けて配置された第2リベット挿入穴と、を有し、前記軸方向に複数積層されて配置された、円環状の第2回転子鉄心用電磁鋼板と、
前記軸方向における前記第1回転子鉄心用電磁鋼板と前記第2回転子鉄心用電磁鋼板との間に配置され、前記回転軸に締結される第3内径部と、前記第1リベット挿入穴よりも径方向内方側に位置する第3外径部と、を有する、円環状の第3回転子鉄心用電磁鋼板と、
前記第3外径部の外周に配置され、非磁性体材料から構成され、前記磁石挿入穴の前記軸方向の一端に配置され、円環状の形状を有すると共に、前記軸方向に延設され、前記円環状の半円環部分の周方向に間隔を空けて配置された第1端板リベット挿入穴と、前記第1端板リベット挿入穴に対応させて前記円環状の残りの半円環部分の周方向に間隔を空けて配置され、前記軸方向に延設された第2端板リベット挿入穴と、を有する、第1端板部と、
非磁性体材料から構成され、前記磁石挿入穴の前記軸方向の他端に配置され、円環状の形状を有すると共に、前記軸方向に延設され、周方向に間隔を空けて配置された端板リベット挿入穴を有する、第2端板部と、
前記第1リベット挿入穴と、前記第2リベット挿入穴と、前記第1端板リベット挿入穴または前記第2端板リベット挿入穴と、前記端板リベット挿入穴と、に連通して挿入された、複数のリベットと、
を備え、
前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の外周を形成する第1外径部は、前記第2回転子鉄心用電磁鋼板の外周を形成する第2外径部よりも径方向外方側に位置し、
前記第2外径部は、前記磁石挿入穴よりも径方向内方側かつ前記第1リベット挿入穴よりも径方向外方側に位置している、
電動機の回転子。
【請求項2】
前記第2回転子鉄心用電磁鋼板及び前記第3回転子鉄心用電磁鋼板は、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の第1端および第2端のうち少なくともいずれか一方側に配置されている、
請求項1に記載の電動機の回転子。
【請求項3】
前記第1端板部は、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の前記第1端側に配置され、
前記第1端板部は、
前記第1端板リベット挿入穴と、前記第3回転子鉄心用電磁鋼板の前記第3外径部に当接する第1端板内径部と、前記磁石挿入穴よりも径方向外方側に位置する円弧状の第1端板外径部と、を有する半円環状の第1非磁性体端板と、
前記第2端板リベット挿入穴と、前記第3回転子鉄心用電磁鋼板の前記第3外径部に当接する第2端板内径部と、前記磁石挿入穴よりも径方向外方側に位置する円弧状の第2端板外径部と、を有する半円環状の第2非磁性体端板と、
から構成され、
前記第1非磁性体端板と前記第2非磁性体端板とは、互いに対向して配置されることで前記円環状の形状となる、
請求項2に記載の電動機の回転子。
【請求項4】
前記第2端板部は、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の前記第2端側に配置され、
前記第2回転子鉄心用電磁鋼板及び前記第3回転子鉄心用電磁鋼板が、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の前記第2端側に配置されている場合に、
前記第2端板部は、前記第3外径部の外周に配置され、
前記第2端板部は、
前記端板リベット挿入穴としての前記第1端板リベット挿入穴と、前記第3回転子鉄心用電磁鋼板の前記第3外径部に当接する第1端板内径部と、前記磁石挿入穴よりも径方向外方側に位置する円弧状の第1端板外径部と、を有する半円環状の第1非磁性体端板と、
前記端板リベット挿入穴としての前記第2端板リベット挿入穴と、前記第3回転子鉄心用電磁鋼板の前記第3外径部に当接する第2端板内径部と、前記磁石挿入穴よりも径方向外方側に位置する円弧状の第2端板外径部と、を有する半円環状の第2非磁性体端板と、
から構成され、
前記第1非磁性体端板と前記第2非磁性体端板とは、互いに対向して配置されることで前記円環状の形状となる、
請求項2に記載の電動機の回転子。
【請求項5】
前記第2端板部は、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の前記第2端側に配置され、
前記第2回転子鉄心用電磁鋼板及び前記第3回転子鉄心用電磁鋼板が、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の前記第2端側に配置されていない場合に、
前記第2端板部は、
前記回転軸を挿通する第3端板内径部と、前記端板リベット挿入穴としての第3端板リベット挿入穴と、前記磁石挿入穴よりも径方向外方側に位置する第3端板外径部と、を有する、円環状の第3非磁性体端板
から構成されている、
請求項2に記載の電動機の回転子。
【請求項6】
半円環状の周方向に間隔を空けて配置され、前記回転軸の軸方向に延設されて前記リベットが挿入される第3リベット挿入穴と、前記回転軸に締結される第4内径部と、を有し、前記軸方向に複数積層されて配置された、半円環状の第4回転子鉄心用電磁鋼板
を備え、
前記第4回転子鉄心用電磁鋼板は、前記第2回転子鉄心用電磁鋼板の前記軸方向の両端部のうち、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板が配置されている側と反対の側の端部に配置されている、
請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項7】
前記第1回転子鉄心用電磁鋼板は、さらに、第1積層用カシメ部を有し、
前記回転軸の軸心から径方向外方へ向かう距離が、
前記第1内径部<前記第1積層用カシメ部<前記第1リベット挿入穴<前記磁石挿入穴<前記第1外径部
の関係となる、
請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項8】
前記第2回転子鉄心用電磁鋼板は、さらに、第2積層用カシメ部を有し、
前記回転軸の軸心から径方向外方へ向かう距離が、
前記第2内径部<前記第2積層用カシメ部<前記第2リベット挿入穴<前記第2外径部
の関係となる、
請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項9】
前記第3回転子鉄心用電磁鋼板は、さらに、第3積層用カシメ部を有し、
前記回転軸の軸心から径方向外方へ向かう距離が、
前記第3内径部<前記第3積層用カシメ部<前記第3外径部
の関係となる、
請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項10】
前記第1回転子鉄心用電磁鋼板は、さらに、第1積層用カシメ部を有し、
前記第2回転子鉄心用電磁鋼板は、さらに、第2積層用カシメ部を有し、
前記第3回転子鉄心用電磁鋼板は、さらに、第3積層用カシメ部を有し、
前記第1積層用カシメ部、前記第2積層用カシメ部、及び、前記第3積層用カシメ部の前記回転軸の径方向の位置は、一致しており、
前記第1回転子鉄心用電磁鋼板、前記第2回転子鉄心用電磁鋼板、前記第3回転子鉄心用電磁鋼板は、前記第1積層用カシメ部、前記第2積層用カシメ部、及び、前記第3積層用カシメ部により位置決めされて締結されている、
請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項11】
前記第3回転子鉄心用電磁鋼板は、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板と前記第2回転子鉄心用電磁鋼板とを連結している、
請求項1または2に記載の電動機の回転子。
【請求項12】
請求項1または2に記載の電動機の回転子と、
前記回転子の外周に設けられ、磁気作用によって前記回転子を回転させる固定子と、
を備えた、電動機。
【請求項13】
請求項12に記載の電動機と、
前記電動機により駆動され、外部から吸入した流体を圧縮する圧縮機構部と、
前記電動機及び前記圧縮機構部を収容する密閉容器と、
を備えた、圧縮機。
【請求項14】
請求項13に記載の圧縮機と、
室外側熱交換器と、
減圧器と、
室内側熱交換器と、
を備えた、冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機の回転子、電動機、圧縮機、及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧縮機用の回転子として、複数枚の円板状の軸心抜板を積層して構成された鉄心積層体と、鉄心積層体に装着された永久磁石と、永久磁石の軸方向両端部を覆う円板状の鉄板で形成された端板と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の回転子は、さらに、鉄心積層体と端板とをかしめ固定するリベットと、一方の端板の鉄心積層体側とは反対側に設けられてリベットで併せて固定されるバランサと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-131026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載の回転子では、圧縮機の回転軸に鉄心積層体を焼嵌することで、圧縮機運転中の負荷トルクに対する信頼性、及び、圧縮機全体の自重に対する信頼性を確保している。
【0006】
一方、近年では、電動機の高性能化が進んでいる。そこで、電動機の高性能化で生まれた余剰を「原価低減」に振り向けた場合、例えば、鉄心積層体の積厚を少なくするか、あるいは、圧縮機のメカロス低減のために回転軸の外径を小さくすることが、挙げられる。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の回転子において、鉄心積層体の積厚を少なくした場合、あるいは、回転軸の外径を小さくした場合には、必然的に、鉄心積層体と回転軸との間の焼嵌による信頼性が低下する可能性がある。
【0008】
これに対して、磁石の大きさは変えずに、鉄心積層体の積厚のみを増加させることで、鉄心積層体と回転軸との間の焼嵌部分を増加させることが考えられる。しかしながら、磁石の軸方向の長さと鉄心積層体の軸方向の長さとに差がある場合、漏れ磁束が発生して磁力が低下するという問題点があった。
【0009】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、磁力を低下させることなく、回転子と回転軸との間の焼嵌による信頼性を確保することが可能な、電動機の回転子、電動機、圧縮機、及び冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る電動機の回転子は、回転軸に締結される第1内径部と、前記回転軸の軸方向に延設され、周方向に間隔を空けて配置された第1リベット挿入穴と、前記軸方向に延設された磁石挿入穴とを有し、前記軸方向に複数積層されて配置された、円環状の第1回転子鉄心用電磁鋼板と、前記磁石挿入穴に挿入された磁石と、前記回転軸に締結される第2内径部と、前記軸方向に延設され、周方向に間隔を空けて配置された第2リベット挿入穴と、を有し、前記軸方向に複数積層されて配置された、円環状の第2回転子鉄心用電磁鋼板と、前記軸方向における前記第1回転子鉄心用電磁鋼板と前記第2回転子鉄心用電磁鋼板との間に配置され、前記回転軸に締結される第3内径部と、前記第1リベット挿入穴よりも径方向内方側に位置する第3外径部と、を有する、円環状の第3回転子鉄心用電磁鋼板と、前記第3外径部の外周に配置され、非磁性体材料から構成され、前記磁石挿入穴の前記軸方向の一端に配置され、円環状の形状を有すると共に、前記軸方向に延設され、前記円環状の半円環部分の周方向に間隔を空けて配置された第1端板リベット挿入穴と、前記第1端板リベット挿入穴に対応させて前記円環状の残りの半円環部分の周方向に間隔を空けて配置され、前記軸方向に延設された第2端板リベット挿入穴と、を有する、第1端板部と、非磁性体材料から構成され、前記磁石挿入穴の前記軸方向の他端に配置され、円環状の形状を有すると共に、前記軸方向に延設され、周方向に間隔を空けて配置された端板リベット挿入穴を有する、第2端板部と、前記第1リベット挿入穴と、前記第2リベット挿入穴と、前記第1端板リベット挿入穴または前記第2端板リベット挿入穴と、前記端板リベット挿入穴と、に連通して挿入された、複数のリベットと、を備え、前記第1回転子鉄心用電磁鋼板の外周を形成する第1外径部は、前記第2回転子鉄心用電磁鋼板の外周を形成する第2外径部よりも径方向外方側に位置し、前記第2外径部は、前記磁石挿入穴よりも径方向内方側かつ前記第1リベット挿入穴よりも径方向外方側に位置しているものである。
【0011】
本開示に係る電動機は、上記の電動機の回転子と、前記回転子の外周に設けられ、磁気作用によって前記回転子を回転させる固定子と、を備えたものである。
【0012】
本開示に係る圧縮機は、上記の電動機と、前記電動機により駆動され、外部から吸入した流体を圧縮する圧縮機構部と、前記電動機及び前記圧縮機構部を収容する密閉容器と、
を備えたものである。
【0013】
本開示に係る冷凍サイクル装置は、上記の圧縮機と、室外側熱交換器と、減圧器と、室内側熱交換器と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る電動機の回転子、電動機、圧縮機、及び冷凍サイクル装置は、第1~第3回転子鉄心用電磁鋼板を回転軸に締結させることにより、回転子と回転軸との間の焼嵌による信頼性を確保し、且つ、第1回転子鉄心用電磁鋼板の磁石挿入穴に挿入された磁石の軸方向の両端を非磁性体材料から構成された第1及び第2端板部で覆うことにより、漏れ磁束の発生を抑えて、磁力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る密閉型圧縮機130の構成を示す断面図である。
図2】実施の形態1に係る密閉型圧縮機130が搭載される冷凍サイクル装置200の構成を示す概略構成図である。
図3】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。
図4】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第1回転子鉄心用電磁鋼板301の構成を示す平面図である。
図5】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第2回転子鉄心用電磁鋼板302の構成を示す平面図である。
図6】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第3回転子鉄心用電磁鋼板303の構成を示す平面図である。
図7】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第4回転子鉄心用電磁鋼板304の構成を示す平面図である。
図8】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第1非磁性体端板305の構成を示す平面図である。
図9】実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第2非磁性体端板306の構成を示す平面図である。
図10】実施の形態2に係る電動機103の回転子5Bの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。
図11】実施の形態3に係る電動機103の回転子5Cの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。
図12】実施の形態3に係る電動機103の回転子5Cに設けられた第3非磁性体端板307の構成を示す平面図である。
図13】実施の形態4に係る電動機103の回転子5Dの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る電動機の回転子、電動機、圧縮機、及び冷凍サイクル装置の実施の形態について図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の実施の形態およびその変形例に示す構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0017】
実施の形態1.
<密閉型圧縮機130>
まず、図1を用いて、実施の形態1に係る密閉型圧縮機130の全体構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る密閉型圧縮機130の構成を示す断面図である。実施の形態1では、密閉型圧縮機130として、1シリンダ型ロータリ圧縮機を一例に挙げて説明する。
【0018】
密閉型圧縮機130は、低温且つ低圧の冷媒を内部に吸入し、吸入した冷媒を圧縮して、高温且つ高圧の冷媒を外部に吐出する流体機械である。図1に示すように、密閉型圧縮機130は、外郭を形成する密閉容器101と、固定子1及び回転子5Aを有する電動機103と、電動機103の駆動力を伝達する回転軸104と、回転軸104から伝達される駆動力によって冷媒を圧縮する圧縮機構部102と、を備えている。回転軸104は、クランクシャフトと呼ばれることがある。
【0019】
密閉容器101は、上部容器101aと、下部容器101bと、で構成されている。上部容器101aは、下面部が開口した有底筒状形状または変形したドーム形状を有している。下部容器101bは、上面部が開口した有底筒状形状を有している。上部容器101aは、下部容器101bの開口した上面部に配置され、当該上面部を密閉している。なお、密閉容器101は、上部容器101aと下部容器101bとの2つの構成部材から形成されるものに限定されず、3つ以上の構成部材で形成してもよい。
【0020】
密閉容器101の内部には、電動機103、回転軸104、及び圧縮機構部102が収容されている。電動機103は、密閉容器101の内部の上方に収容されている。圧縮機構部102は、密閉容器101の内部の下方に収容されている。圧縮機構部102と電動機103とは、回転軸104を介して連結されている。
【0021】
回転軸104は、電動機103の回転子5Aに固定された主軸部104aと、圧縮機構部102を挟んで主軸部104aの反対側に設けられた副軸部104bと、主軸部104aと副軸部104bとの間に設けられた偏心軸部104cと、を有している。回転軸104は、軸方向において、密閉容器101の上方から下方に向かって、主軸部104a、偏心軸部104c、副軸部104bの順に形成されている。主軸部104aは、電動機103の回転子5Aの中心部に嵌め込まれ、焼嵌されて固定されている。偏心軸部104cの中心軸は、主軸部104a及び副軸部104bの中心軸に対して偏心している。
【0022】
圧縮機構部102は、電動機103から供給された回転駆動力により、吸入連結管128から密閉容器101の低圧空間に吸入された低圧のガス冷媒を高圧のガス冷媒に圧縮するものである。圧縮機構部102によって圧縮された高圧のガス冷媒は、圧縮機構部102の上方から密閉容器101の内部に吐出される。圧縮機構部102は、図1に示すように、シリンダ105と、主軸受け106と、副軸受け107と、ローリングピストン109と、を備えている。
【0023】
シリンダ105は、ボルト等によって外周部が密閉容器101に固定されている。シリンダ105は、中空円筒形状を有し、中空内部がシリンダ室105aを構成している。シリンダ室105aは、図1に示すように、回転軸104の軸方向の両端が開口しており、シリンダ105の上面に設けられた主軸受け106と、シリンダ105の下面に設けられた副軸受け107とによって、閉塞されている。つまり、シリンダ室105aは、シリンダ105の内周面と、主軸受け106の内壁面と、副軸受け107の内壁面とによって囲まれた空間である。
【0024】
また、シリンダ105には、シリンダ室105aに連通し、回転軸104を中心とした径方向に延びるベーン溝(図示せず)が形成されている。ベーン溝には、シリンダ室105aを吸入室と圧縮室とに仕切るベーン(図示せず)が、摺動可能に嵌入されて設けられている。吸入室は、低圧空間であり、吸入連結管128と連通している。圧縮室は高圧空間であり、シリンダ室105aの外部に冷媒を吐出する吐出ポート(図示せず)と連通している。このように、圧縮機構部102においては、シリンダ105に設けられたベーン溝の内部を径方向に往復運動するベーンの一端が、ローリングピストン109の外周に当接しながら、シリンダ室105aの圧縮室を形成する。
【0025】
ローリングピストン109は、中空円筒状に形成されており、中空内部に回転軸104の偏心軸部104cが摺動可能に嵌合されている。ローリングピストン109は、偏心軸部104cと共にシリンダ室105a内に収容されている。ローリングピストン109は、電動機103の駆動によって回転軸104が回転すると、シリンダ室105aの内周面に沿って回転して冷媒を圧縮する。
【0026】
副軸受け107は、図1に示すように、側面視で略T字形状に形成されている。副軸受け107は、電動機103が配置されている側とは反対側のシリンダ105の他端面に設けられ、シリンダ室105aの軸方向の下側の開口部を閉塞している。また、副軸受け107は、回転軸104の副軸部104bに嵌合され、副軸部104bを回転可能に支持している。
【0027】
次に、電動機103について説明する。電動機103は、固定子1と、回転子5Aと、を備えている。電動機103としては、例えば、ブラシレスDCモータが用いられる。電動機103は、外部電源から供給される電力を用いて、回転軸104に回転駆動力を発生させ、回転軸104を介して回転駆動力を圧縮機構部102に伝達する。
【0028】
固定子1は、円筒形状を有している。固定子1は、平面視で、ドーナツ形状を有している。固定子1は、密閉容器101の下部容器101bの内壁面に固定されている。固定子1の外径は、下部容器101bの内径より大きい。固定子1は、下部容器101b内に焼嵌されて固定されている。固定子1は、薄板電磁鋼板を打抜き形成される固定子鉄心用電磁鋼板を複数積層して構成されている。固定子鉄心用電磁鋼板は、固定子鉄心シートと呼ばれることがある。
【0029】
固定子1のティースには、図1に示すように、巻線から構成されたコイル4が巻き回されている。また、コイル4には、コイル4を外部から絶縁する為の絶縁部材3が設けられている。また、固定子1には、密閉容器101の外部から電力を供給する為に、リード線9が設けられている。固定子1のリード線9は、上部容器101aに設けられたガラス端子119に接続されている。ガラス端子119は、密閉容器101の上部容器101aの上部に配置されている。固定子1の外径は、下部容器101bの内径より大きい。固定子1は、下部容器101b内に焼嵌めされて固定されている。
【0030】
回転子5Aは、固定子1の内側に配置される。回転子5Aは、固定子1の内側面に対向して回転可能に設けられ、磁気作用によって回転する。回転子5Aは、円筒形状を有している。回転子5Aの中心部には、回転軸104が嵌入されている。回転子5Aは、固定子1と同様に、薄板電磁鋼板を打抜き形成される回転子鉄心用電磁鋼板を複数積層して構成されている。回転子鉄心用電磁鋼板は、回転子鉄心シートと呼ばれることがある。回転子5Aは、回転子鉄心21と、バランスウェイト25と、リベット26と、を備えている。
【0031】
回転子鉄心21は、回転軸104に取り付けられている。電動機103が回転軸104を回転駆動することによって、回転子5Aの回転子鉄心21が回転する。回転子鉄心21の内径は回転軸104の外径より小さく、回転子鉄心21は回転軸104の主軸部104aに焼嵌め固定されている。回転子鉄心21は、永久磁石が挿入される磁石挿入穴22と、リベット26が挿入されるリベット穴23と、を有している。
【0032】
バランスウェイト25は、上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bを有している。上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bは、回転子鉄心21の軸方向の両端部にそれぞれ配置されている。上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bは、密閉型圧縮機130の振動を低減するバランサとして機能する。また、上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bは、磁石24の飛散を防止する役割を兼ねている。上バランスウェイト25aは、密閉型圧縮機130において、回転子鉄心21の上端部に配置されている。下バランスウェイト25bは、密閉型圧縮機130において、回転子鉄心21の下端部に配置されている。磁石24は、例えば、永久磁石である。
【0033】
リベット26は、上バランスウェイト25a、下バランスウェイト25b、及び回転子鉄心21を固定する。リベット26は、回転子鉄心21に設けられたリベット穴23に挿入される。リベット26は、棒状部材であり、例えば、円柱形状を有している。
【0034】
なお、図1では図示していないが、回転子鉄心21の軸方向の両端部に、磁石24の飛散を防止する端板が設けられている。後述する図3では、第1非磁性体端板305と第2非磁性体端板306とが「端板」を構成している。なお、バランスウェイト25と「端板」とは、同一部品として構成してもよく、あるいは、別部品として構成してもよい。後述する図3では、第4群311が、バランスウェイト25を構成している。そのため、後述する図3では、なお、バランスウェイト25と「端板」とが、別部品として構成されている場合を示している。
【0035】
密閉容器101に隣接して、液冷媒を貯留するアキュムレータ(図示せず)と、冷媒音を消音する役割を有する吸入マフラ127と、が設けられている。密閉容器101は、図1に示すように、吸入連結管128を介して吸入マフラ127と接続されており、吸入マフラ127からガス冷媒が内部に取り込まれる。吸入マフラ127は、溶接等により密閉容器101の外側面に固定されている。吸入マフラ127は、吸入連結管128を介して、圧縮機構部102のシリンダ105に連結される。吸入マフラ127は、冷凍回路から送られてくる低温且つ低圧の冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、液冷媒がなるべく圧縮機構部102に吸入されないようにすると共に、分離した液冷媒を貯留するために設けられている。密閉型圧縮機130は、圧縮機構部102に液冷媒が流入して圧縮されてしまうと、圧縮機構部102の故障の原因となるからである。また、吸入マフラ127は、流入する冷媒により発生する騒音を低減または除去する消音器としての機能も有する。
【0036】
密閉容器101の上部容器101aの上部には、図1に示すように、吐出管129が接続されている。吐出管129は、高圧のガス冷媒を密閉容器101の外部に吐出させる冷媒配管である。吐出管129は、上部容器101aを貫通した状態で、例えばロウ付けまたは抵抗溶接等によって上部容器101aに接合されている。シリンダ105で圧縮された冷媒ガスは、密閉容器101内に吐出され、電動機103を通り、吐出管129から後述する冷凍サイクル装置200の四方切換弁133へ送り出される。
【0037】
ここでは、密閉型圧縮機130の一例として、シングルロータリ型圧縮機を示したが、これに限定されない。密閉型圧縮機130は、例えば、シリンダ105を2つ有するツインロータリ型圧縮機等、複数のシリンダ105を有するロータリ型圧縮機でもよいし、他の構造でもよい。すなわち、密閉型圧縮機130は、スクロール型圧縮機、レシプロ型圧縮機等、電動機103が密閉容器101内に配置される密閉型圧縮機であれば、いずれの圧縮機でも良く、その圧縮構造は問わないものである。
【0038】
<冷凍サイクル装置200>
図2は、実施の形態1に係る密閉型圧縮機130が搭載される冷凍サイクル装置200の構成を示す概略構成図である。冷凍サイクル装置200は、例えば空気調和装置等である。冷凍サイクル装置200は、図2に示すように、密閉型圧縮機130と、四方切換弁133と、室外側熱交換器134と、減圧器135と、室内側熱交換器136と、を備え、配管を介して順次接続して冷媒回路を形成することで、構成されている。吸入マフラ127は、密閉型圧縮機130の吸入側に接続されている。また、四方切換弁133は、密閉型圧縮機130の吐出側に接続され、密閉型圧縮機130から吐出された冷媒の流れを切換える。なお、一般的に、空気調和装置では、室内側熱交換器136は屋内の装置に搭載され、密閉型圧縮機130、四方切換弁133、室外側熱交換器134、及び減圧器135は、屋外の装置に搭載されている。なお、室外側熱交換器134及び室内側熱交換器136は、例えば、フィンと伝熱管とを備えたフィンアンドチューブ型熱交換器である。また、減圧器135は、電子膨張弁などの膨張弁、または、キャピラリチューブである。
【0039】
以下では、冷凍サイクル装置200が空気調和装置の場合を例に挙げて、冷凍サイクル装置200の動作について説明する。
【0040】
空気調和装置が暖房運転の場合には、四方切換弁133は、図3の実線側に接続される。密閉型圧縮機130で圧縮された高温高圧の冷媒は、室内側熱交換器136に流れる。室内側熱交換器136で、当該冷媒は凝縮されて液化する。その後、液化された冷媒は、減圧器135に流入される。流入された冷媒は、減圧器135で絞られて、低温低圧の気液二相状態となり、室外側熱交換器134へ流入する。室外側熱交換器134では、当該冷媒は蒸発してガス化する。ガス化した冷媒は、四方切換弁133及び吸入マフラ127を通って、再び、密閉型圧縮機130に戻る。すなわち、図3の実線矢印に示すように冷媒は循環する。この循環によって、蒸発器である室外側熱交換器134では外気と熱交換して、室外側熱交換器134に送られてきた冷媒が吸熱し、吸熱した冷媒は凝縮器である室内側熱交換器136に送られ、室内の空気と熱交換を行い、室内の空気を温める。
【0041】
空気調和装置が冷房運転の場合には、四方切換弁133は、図3の破線側に接続される。密閉型圧縮機130で圧縮された高温高圧の冷媒は、室外側熱交換器134に流れる。室外側熱交換器134で、当該冷媒は凝縮されて液化する。その後、液化された冷媒は、減圧器135に流入される。流入された冷媒は、減圧器135で絞られて、低温低圧の気液二相状態となり、室内側熱交換器136へ流入する。室内側熱交換器136では、当該冷媒は蒸発してガス化する。ガス化した冷媒は、四方切換弁133及び吸入マフラ127を通って、再び、密閉型圧縮機130に戻る。すなわち、暖房運転から冷房運転に変わると、室内側熱交換器136が凝縮器から蒸発器に変わり、室外側熱交換器134が蒸発器から凝縮器に変わる。よって、図3の破線矢印に示すように冷媒は循環する。この循環によって、蒸発器である室内側熱交換器136では室内の空気と熱交換を行い、室内の空気から吸熱すなわち室内の空気を冷却し、吸熱した冷媒は凝縮器である室外側熱交換器134に送られ、外気と熱交換を行い、外気に放熱する。
【0042】
このとき、冷媒は、一般的に、R407C冷媒、R410A冷媒、あるいは、R32冷媒などが使われる。
【0043】
<電動機103の回転子5A>
次に、図3を用いて、図1に示した実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aの構成の詳細について説明する。図3は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。図3(b)においては、図3(a)のA-A断面図を示している。図1では、図の簡略化のため、回転子5Aを模式的に記載しているが、実際には、回転子5Aは、図3に示す構成を有している。
【0044】
一般的な圧縮機用モータ回転子は、回転軸の主軸部との間に作用する焼嵌による把持力によって、圧縮機運転時の回転運動および自重に対する信頼性を確保しているが、焼嵌による把持力は焼嵌部の接触面積と比例関係を持つ。回転子鉄心の積厚を少なくする場合、あるいは、回転軸の外径を小さくしていく場合、回転子と回転軸との間の焼嵌による信頼性が低下する可能性がある。これに対して、磁石の形状及び大きさは変更せずに、鉄心積層体の積厚のみを増加させ、焼嵌部分を増加させることが考えられる。しかしながら、磁石の軸方向の長さと、鉄心積層体の磁石挿入穴の積厚方向長さと、に差がある場合、上述したように、漏れ磁束が発生し、磁力が低下するという問題があった。
【0045】
そこで、実施の形態1では、漏れ磁束の発生を抑え、磁力を低下させることなく、回転子5Aと回転軸104との間の焼嵌応力を向上させることが可能な、回転子5Aについて説明する。
【0046】
図3に示すように、回転子5Aは、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、第4群311、及び、リベット26(図1参照)と、を備えている。回転子5Aにおいては、回転軸104の軸方向に、上から順に、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、第4群311の順で配置されている。
【0047】
<第1群308>
図3に示す第1群308は、図4に示す第1回転子鉄心用電磁鋼板301を、軸方向に複数積層して構成されている。図4は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第1回転子鉄心用電磁鋼板301の構成を示す平面図である。図4においては、第1回転子鉄心用電磁鋼板301を上から見た状態を示している。
【0048】
図4に示すように、第1回転子鉄心用電磁鋼板301は、平面視で円環状の形状を有した板状部材である。第1回転子鉄心用電磁鋼板301は、回転軸104と焼嵌により締結可能な第1内径部3011と、第1積層用カシメ部3012と、第1リベット挿入穴3013と、磁石挿入穴3014と、第1外径部3015と、を有している。
【0049】
第1内径部3011は、回転軸104が嵌合される貫通穴である。第1内径部3011は、平面視で、円形形状を有している。第1内径部3011は、第1回転子鉄心用電磁鋼板301の中心部に配置されている。第1内径部3011の中心は、回転軸104の軸心と一致する。第1内径部3011は、回転軸104が挿入され締結される。
【0050】
第1積層用カシメ部3012は、第1内径部3011の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。第1積層用カシメ部3012は、第1内径部3011より径方向外方側に位置している。第1積層用カシメ部3012は、平面視で、例えば、例えば矩形形状を有している。複数の第1回転子鉄心用電磁鋼板301は、第1積層用カシメ部3012により締結され、位置決めされる。
【0051】
第1リベット挿入穴3013は、リベット26が挿入される貫通穴である。第1リベット挿入穴3013は、平面視で、円形形状を有している。第1リベット挿入穴3013は、第1内径部3011の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。第1リベット挿入穴3013は、第1積層用カシメ部3012より径方向外方側に位置している。また、第1リベット挿入穴3013は、周方向において、隣り合って配置された2つの第1積層用カシメ部3012の間に配置されている。
【0052】
磁石挿入穴3014は、磁石24が挿入される貫通穴である。磁石挿入穴3014は、平面視で、例えば、矩形形状を有している。磁石挿入穴3014は、第1外径部3015の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。磁石挿入穴3014は、第1リベット挿入穴3013より径方向外方側に位置し、且つ、第1外径部3015より径方向内方側に位置している。磁石挿入穴3014の長手方向の辺は、第1回転子鉄心用電磁鋼板301の径方向に交差する方向に延びている。
【0053】
第1回転子鉄心用電磁鋼板301は、回転軸104の軸心から径方向外方へ向かう距離が、「第1内径部3011<第1積層用カシメ部3012<第1リベット挿入穴3013<磁石挿入穴3014<第1外径部3015」の関係になるように構成されている。
【0054】
なお、ここで、「回転軸104の軸心から径方向外方へ向かう距離」とは、各部位の回転軸104の軸心から最も近い位置と、回転軸104の軸心と、の間の距離である。従って、第1リベット挿入穴3013の場合は、第1リベット挿入穴3013の回転軸104の軸心から最も近い外径部の位置と、回転軸104の軸心と、の間の距離L1となる。また、磁石挿入穴3014の場合は、磁石挿入穴3014の回転軸104の軸心から最も近い1辺の位置と、回転軸104の軸心と、の間の距離L2となる。
【0055】
<第2群309>
図6図8、及び、図9を用いて、図3に示す第2群309の構成について説明する。図6は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第3回転子鉄心用電磁鋼板303の構成を示す平面図である。図6においては、第3回転子鉄心用電磁鋼板303を上から見た状態を示している。図8は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第1非磁性体端板305の構成を示す平面図である。図8においては、第1非磁性体端板305を上から見た状態を示している。図9は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第2非磁性体端板306の構成を示す平面図である。図9においては、第2非磁性体端板306を上から見た状態を示している。
【0056】
図3に示す第2群309は、図8に示す第1非磁性体端板305と、図9に示す第2非磁性体端板306と、図6に示す第3回転子鉄心用電磁鋼板303と、から構成されている。
【0057】
図6に示すように、第3回転子鉄心用電磁鋼板303は、平面視で円環状の形状を有した板状部材である。第3回転子鉄心用電磁鋼板303は、回転軸104と焼嵌により締結可能な第3内径部3031と、第3積層用カシメ部3032と、第3外径部3035と、を有している。第3内径部3031は、回転軸104が挿入され締結される。第3外径部3035は、第1リベット挿入穴3013(図4参照)の位置よりも径方向内方側、かつ、第1積層用カシメ部3012(図4参照)よりも径方向外方側に位置している。第3積層用カシメ部3032は、第3内径部3031の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。第3積層用カシメ部3032は、平面視で、例えば矩形形状を有している。第3積層用カシメ部3032は、第3内径部3031より径方向外方側に位置している。第3積層用カシメ部3032の位置は、第1積層用カシメ部3012の位置と一致している。
【0058】
第3回転子鉄心用電磁鋼板303は、回転軸104の軸心から径方向外方へ向かう距離が、「第3内径部3031<第3積層用カシメ部3032<第3外径部3035」の関係になるように構成されている。
【0059】
図8に示すように、第1非磁性体端板305は、平面視で半円環状の形状を有した板状部材である。第1非磁性体端板305は、非磁性体材料で構成されている。非磁性体とは、磁界の影響を受けず、磁化されない物質のことである。第1非磁性体端板305は、第3回転子鉄心用電磁鋼板303の第3外径部3035と当接する円弧状の第1端板内径部3051と、第1端板リベット挿入穴3053と、円弧状の第1端板外径部3055と、直線状の連結部3056と、を有している。第1端板リベット挿入穴3053は、リベット26が挿入される円形形状の貫通穴である。第1端板リベット挿入穴3053は、半円環状の第1非磁性体端板305の第1端板内径部3051に沿って、周方向に間隔を空けて、複数個配置されている。第1端板リベット挿入穴3053は、第1端板内径部3051よりも径方向外方側に位置している。第1端板リベット挿入穴3053の位置は、第1リベット挿入穴3013の位置と一致している。第1端板外径部3055は、磁石挿入穴3014(図4参照)よりも径方向外方側に位置している。連結部3056は、第1端板内径部3051と第1端板外径部3055とに隣接して配置され、第1端板内径部3051と第1端板外径部3055とを連結している。
【0060】
図9に示すように、第2非磁性体端板306は、平面視で半円環状の形状を有した板状部材である。第2非磁性体端板306は、非磁性体材料で構成されている。第2非磁性体端板306は、第3回転子鉄心用電磁鋼板303の第3外径部3035と当接する円弧状の第2端板内径部3061と、第2端板リベット挿入穴3063と、円弧状の第2端板外径部3065と、を有している。第2端板リベット挿入穴3063は、リベット26が挿入される円形形状の貫通穴である。第2端板リベット挿入穴3063は、半円環状の第2非磁性体端板306の第2端板内径部3061に沿って、周方向に間隔を空けて、複数個配置されている。第2端板リベット挿入穴3063は、第2端板内径部3061よりも径方向外方側に位置している。第2端板リベット挿入穴3063の位置は、第1リベット挿入穴3013(図4参照)の位置と一致している。第2端板外径部3065は、磁石挿入穴3014(図4参照)よりも径方向外方側に位置している。連結部3066は、第2端板内径部3061と第2端板外径部3065とに隣接して配置され、第2端板内径部3061と第2端板外径部3065とを連結している。
【0061】
第1非磁性体端板305と第2非磁性体端板306とは、連結部3056と連結部3066とが当接するように、互いに対向させて配置することで、円環状になるように構成されている。第1非磁性体端板305と第2非磁性体端板306とを互いに対向させて配置した場合に、第1端板内径部3051と第2端板内径部3061とは、円形形状の内径部を形成する。第3回転子鉄心用電磁鋼板303は、当該内径部の内側に配置される。このとき、第3回転子鉄心用電磁鋼板303の第3外径部3035は、第1端板内径部3051及び第2端板内径部3061に当接する。また、第2端板リベット挿入穴3063は、第1端板リベット挿入穴3053の位置に対応させて、周方向に間隔を空けて配置されている。そのため、第1非磁性体端板305と第2非磁性体端板306とを互いに対向させて配置した場合に、第2端板リベット挿入穴3063と第1端板リベット挿入穴3053とは、連結部3056及び連結部3066を対称軸とする線対称の位置に配置される。
【0062】
図3に示すように、磁石24は、第1群308の第1回転子鉄心用電磁鋼板301に設けられた磁石挿入穴3014に挿入されている。第1回転子鉄心用電磁鋼板301は、軸方向に積層されているため、第1群308全体で見た場合、磁石挿入穴3014は、図3に示すように、軸方向に延びている。第1非磁性体端板305は、軸方向に延びた磁石挿入穴3014の上端と下端とに配置されている。同様に、第2非磁性体端板306は、軸方向に延びた磁石挿入穴3014の上端と下端とに配置されている。以下では、第1群308の軸方向の上端を「第1端308a」と呼び、第1群308の軸方向の下端を「第2端308b」と呼ぶこととする。第1非磁性体端板305および第2非磁性体端板306は、第1群308の第1端308a側と第2端308b側との両方に設けられている。また、図3に示すように、第1端板外径部3055及び第2端板外径部3065は、第1外径部3015と径方向の位置が一致している。
【0063】
また、第1群308の「第1端308a」側に配置された第1非磁性体端板305および第2非磁性体端板306は、「第1端板部401」と呼ばれることがある。すなわち、第1端板部401は、第3回転子鉄心用電磁鋼板303の第3外径部3035の外周に配置されている。また、第1群308の「第2端308b」側に配置された第1非磁性体端板305および第2非磁性体端板306は、「第2端板部402」と呼ばれることがある。すなわち、第2端板部402は、第3回転子鉄心用電磁鋼板303の第3外径部3035の外周に配置されている。磁石24の軸方向の上端と下端とに、それぞれ、「第1端板部401」と「第2端板部402」とを配置したことにより、漏れ磁束の発生を抑制することができる。
【0064】
なお、第1非磁性体端板305は、1枚でもよく、複数積層されていてもよい。また、第2非磁性体端板306は、1枚でもよく、複数積層されていてもよい。さらに、第3回転子鉄心用電磁鋼板303は、1枚でもよく、複数積層されていてもよい。但し、第1非磁性体端板305の積厚、第2非磁性体端板306の積厚、および、第3回転子鉄心用電磁鋼板303の積厚は、図3に示すように、すべて同じである。
【0065】
<第3群310>
図3に示す第3群310は、図5に示す第2回転子鉄心用電磁鋼板302を複数積層して構成されている。図5は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第2回転子鉄心用電磁鋼板302の構成を示す平面図である。図5においては、第2回転子鉄心用電磁鋼板302を上から見た状態を示している。
【0066】
図5に示すように、第2回転子鉄心用電磁鋼板302は、平面視で円環状の形状を有した板状部材である。第2回転子鉄心用電磁鋼板302は、回転軸104と焼嵌により締結可能な第2内径部3021と、第2積層用カシメ部3022と、第2リベット挿入穴3023と、第2外径部3025と、を有している。第2外径部3025は、磁石挿入穴3014(図4参照)よりも径方向内方側、かつ、第1リベット挿入穴3013(図4参照)よりも径方向外方側に位置している。そのため、図3に示すように、磁石24の軸方向の上方及び下方には、第2回転子鉄心用電磁鋼板302が設けられていない。このように、実施の形態1では、磁石24の近傍に、第1群308以外の電磁鋼板が設けられていない。そのため、さらに、漏れ磁石の発生を抑えることができる。
【0067】
第2内径部3021は、回転軸104が嵌合される貫通穴である。第2内径部3021は、平面視で、円形形状を有している。第2内径部3021は、第2回転子鉄心用電磁鋼板302の中心部に配置されている。第2内径部3021の中心は、回転軸104の軸心と一致する。第2内径部3021は、回転軸104が挿入され締結される。
【0068】
第2積層用カシメ部3022は、第2内径部3021の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。第2積層用カシメ部3022は、平面視で、例えば、矩形形状を有している。第2積層用カシメ部3022は、第2内径部3021より径方向外方側に位置している。
【0069】
第2リベット挿入穴3023は、リベット26が挿入される貫通穴である。第2リベット挿入穴3023は、平面視で、円形形状を有している。第2リベット挿入穴3023は、第2内径部3021の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。但し、第2リベット挿入穴3023は、第2積層用カシメ部3022より径方向外方側に位置している。また、第2リベット挿入穴3023は、周方向に隣り合って配置された2つの第2積層用カシメ部3022の間に配置されている。第2リベット挿入穴3023の位置は、第1リベット挿入穴3013(図4参照)の位置と一致している。第2積層用カシメ部3022の位置は、第1積層用カシメ部3012(図4参照)の位置と一致している。
【0070】
第2回転子鉄心用電磁鋼板302は、回転軸104の軸心から径方向外方へ向かう距離が、「第2内径部3021<第2積層用カシメ部3022<第2リベット挿入穴3023<第2外径部3025」の関係になるように構成されている。
【0071】
<第4群311>
図3に示す第4群311は、図7に示す第4回転子鉄心用電磁鋼板304を複数積層して構成されている。図7は、実施の形態1に係る電動機103の回転子5Aに設けられた第4回転子鉄心用電磁鋼板304の構成を示す平面図である。図7においては、第4回転子鉄心用電磁鋼板304を上から見た状態を示している。
【0072】
図7に示すように、第4回転子鉄心用電磁鋼板304は、平面視で、半円環状の形状を有している。第4回転子鉄心用電磁鋼板304は、円弧状の第4内径部3041と、第4積層用カシメ部3042と、第3リベット挿入穴3043と、円弧状の第4外径部3045と、直線部3047と、を有している。
【0073】
第4内径部3041は、回転軸104が当接される。第4内径部3041は、回転軸104が締結される。
【0074】
第3リベット挿入穴3043は、リベット26が挿入される円形形状の貫通穴である。第3リベット挿入穴3043は、第4内径部3041に沿って、周方向に間隔を空けて、複数個配置されている。第3リベット挿入穴3043は、第4内径部3041よりも径方向外方側に位置している。第3リベット挿入穴3043の位置は、第1リベット挿入穴3013(図4参照)の位置と一致している。
【0075】
第4外径部3045は、磁石挿入穴3014(図4参照)よりも径方向内方側、かつ、第1リベット挿入穴3013(図4参照)よりも径方向外方側に位置している。第4外径部3045の径方向の位置は、図3に示すように、第2外径部3025と一致している。また、直線部3047は、第4内径部3041と第4外径部3045とに隣接して配置され、第4内径部3041と第4外径部3045とを連結している。
【0076】
第4積層用カシメ部3042は、第4内径部3041の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。第4積層用カシメ部3042は、平面視で、例えば、矩形形状を有している。第4積層用カシメ部3042は、第4内径部3041より径方向外方側に位置している。第4積層用カシメ部3042の位置は、第1積層用カシメ部3012(図4参照)の位置と一致している。
【0077】
第4回転子鉄心用電磁鋼板304は、回転軸104の軸心から径方向外方へ向かう距離が、「第4内径部3041<第4積層用カシメ部3042<第3リベット挿入穴3043<第4外径部3045」の関係になるように構成されている。
【0078】
図3に示すように、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、及び、第4群311は、リベット26で固定されている。すなわち、リベット26が、第3リベット挿入穴3043、第2リベット挿入穴3023、第1端板リベット挿入穴3053または第2端板リベット挿入穴3063、第1リベット挿入穴3013、第1端板リベット挿入穴3053または第2端板リベット挿入穴3063、第2リベット挿入穴3023、及び、第3リベット挿入穴3043に、順に連通して挿入されている。これにより、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、及び、第4群311が、固定される。
【0079】
さらに、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、及び、第4群311は、積層用カシメ部で固定されている。すなわち、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、及び、第4群311は、第1積層用カシメ部3012、第2積層用カシメ部3022、第3積層用カシメ部3032、第4積層用カシメ部3042で、互いに、位置決めされ、締結されている。第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、及び、第4群311は、例えば、同一の鉄心プレス金型によりプレスされ、積層用カシメ部により位置決めされて締結される。そのため、第4群311、第3群310、第2群309、及び、第1群308の内径寸法及び外径寸法は、製品として必要な高い精度が、それぞれ容易に確保される。
【0080】
図3に示すように、第1群308の磁石挿入穴3014に、磁石24が挿入される。第1群308の磁石挿入穴3014は、軸方向に延びている。磁石24は、平面視で矩形形状を有している。磁石24は、平板形状を有している。図3の左側に配置された磁石24の軸方向の両端には、第1非磁性体端板305が配置されている。また、図3の右側に配置された磁石24の軸方向の両端には、第2非磁性体端板306が配置されている。このように、磁石24の軸方向の両端には、非磁性体から構成された端板を配置されている。そのため、第1群308内の磁石24の近傍には、磁性体である電磁鋼板が配置されていない。その結果、磁石24による磁束は、第2群309及び第3群310による漏れ磁束を発生させずに、固定子1へ流れ、従来に対して磁力低下を抑制することが可能である。
【0081】
また、図3に示すように、第1回転子鉄心用電磁鋼板301から構成された第1群308の軸方向の両端に、すなわち、上下端に、第2回転子鉄心用電磁鋼板302から構成された第3群310を配置している。さらに、第1回転子鉄心用電磁鋼板301と第2回転子鉄心用電磁鋼板302との間には、第3回転子鉄心用電磁鋼板303が配置されている。第3回転子鉄心用電磁鋼板303は、第1回転子鉄心用電磁鋼板301と第2回転子鉄心用電磁鋼板302とを連結している。図3においては、分かり易くするために、第2群309と第3群310との間に隙間があるように図示されているが、実際には、第2群309と第3群310との間に隙間は無く、第2群309と第3群310とは互いに接触している。
【0082】
実施の形態1では、このように、第1回転子鉄心用電磁鋼板301、第2群309の第3回転子鉄心用電磁鋼板303、及び、第3群310の第2回転子鉄心用電磁鋼板302を配置することにより、回転子5A全体としての内径部面積が増加する。回転子5Aは、回転軸104との間に作用する焼嵌による把持力によって、密閉型圧縮機130の運転時の回転運動及び自重に対する信頼性を確保している。焼嵌による把持力は、回転子5A全体としての内径部面積と比例関係を持つ。実施の形態1では、回転子5A全体としての内径部面積を増加させることにより、焼嵌時の把持力を向上させることが可能である。また、第1~第3回転子鉄心用電磁鋼板301、302、303は、同一の鉄心プレス金型によりプレスし、第1~第3積層用カシメ部3012、3022、3032により締結して位置決めされているため、内外径寸法の必要な精度を確保可能である。
【0083】
従来の一般的な回転子では、実施の形態1の第1群308に相当する部分のみで回転子鉄心が構成されている。そのため、回転子と回転軸とは、実施の形態1の第1群308に相当する部分のみで締結されている。そのため、従来の一般的な回転子の内径部面積は、実施の形態1の内径部面積より小さい。焼嵌による把持力は、内径部面積と比例関係を持つため、従来の一般的な回転子は、実施の形態1に比べて、焼嵌による把持力が小さい。実施の形態1では、第1群308に対して、第2群309、第3群310、第4群311を追加している。そして、実施の形態1では、第1群308、第2群309、第3群310、及び、第4群311を、回転軸104に締結させている。そのため、従来の一般的な回転子に比べて、回転子の内径部面積が大幅に増加している。その結果、焼嵌による把持力を大幅に向上させることができる。
【0084】
また、実施の形態1では、図3に示すように、磁石24の上下端を、「第1端板部401」および「第2端板部402」を覆っている。「第1端板部401」および「第2端板部402」は、非磁性体材料から構成されている。そのため、漏れ磁束の発生を抑えることができる。さらに、実施の形態1では、図3に示すように、第3群310および第4群311の外径を、第1群308及び第2群309の外径より小さくしている。これにより、磁石24の上下方向には、電磁鋼板から構成された第3群310および第4群311が設けられていない。そのため、さらに、漏れ磁束の発生を抑えることができる。
【0085】
以上のように、実施の形態1の回転子5Aによれば、磁石24の軸方向の両端に、非磁性体材料から構成された「第1端板部401」と「第2端板部402」とを配置させることで、磁石24の近傍に電磁鋼板を配置していない。そのため、漏れ磁束によるFLUX低下(すなわち、流動低下)を抑制する事が可能である。また、第1群308の第1回転子鉄心用電磁鋼板301、第2群309の第3回転子鉄心用電磁鋼板303、第3群310の第2回転子鉄心用電磁鋼板302、及び、第4群311の第4回転子鉄心用電磁鋼板304を、回転軸104に焼嵌により締結させている。その結果、第1群308のみを設ける場合に比べて、回転子5A全体として、回転軸104と焼嵌により把持させる内径部面積を増加させることが可能である。そのため、実施の形態1においては、回転子5Aと回転軸104との間の焼嵌による把持力を向上させることができ、焼嵌応力の低下を抑制することができる。
【0086】
以上のことから、実施の形態1では、漏れ磁束の発生による磁力の低下を抑制し、かつ、回転子5Aと回転軸104との間の把持力を向上させることができる。その結果、密閉型圧縮機130の運転中の負荷トルク及び自重に対する信頼性を高めることができる。
【0087】
また、実施の形態1では、第3群310の第1群308が配置されている側と反対の側に、第4群311を配置している。具体的には、第1群308の「第1端308a」側に配置された第3群310に対しては、第3群310の上方に第4群311が配置され、第1群308の「第2端308b」側に配置された第3群310に対しては、第3群310の下方に第4群311が配置されている。また、「第1端308a」側に配置された第4群311は、図3の紙面の右側に配置され、「第2端308b」側に配置された第4群311は、図3の紙面の左側に配置されている。このように、第4群311は、「第1端308a」側と「第2端308b」側とで、左右に分かれて配置されている。その結果、第4群311がバランサとして機能するため、密閉型圧縮機130の振動を低減することが可能である。第4群311は、図1に示したバランスウェイト25を構成している。
【0088】
実施の形態2.
<電動機103の回転子5B>
図10を用いて、実施の形態2に係る電動機103の回転子5Bの構成について説明する。図10は、実施の形態2に係る電動機103の回転子5Bの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。図10(b)においては、図10(a)のB-B断面図を示している。
【0089】
図10図3とを比較すると分かるように、実施の形態2においては、図3に示す実施の形態1の構成に対して、第4群311の設置を省略している。すなわち、実施の形態2に係る回転子5Bにおいては、第4群311が設けられていない。従って、図10に示すように、実施の形態2に係る回転子5Bは、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、磁石24、及び、リベット26を備えている。他の構成は、実施の形態1と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは、その説明を省略する。
【0090】
また、実施の形態2においては、図10に示すように、上から順に、第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310、の順で配置されている。
【0091】
第3群310、第2群309、第1群308、第2群309、第3群310は、第3リベット挿入穴3043、第2リベット挿入穴3023、第1端板リベット挿入穴3053または第2端板リベット挿入穴3063、第1リベット挿入穴3013、第1端板リベット挿入穴3053または第2端板リベット挿入穴3063、第2リベット挿入穴3023、第3リベット挿入穴3043に、連通して挿入されたリベット26で固定されている。
【0092】
以上のように、実施の形態2の回転子5Bによれば、磁石24の軸方向の両端に、非磁性体材料から構成された「第1端板部401」と「第2端板部402」とを配置させることで、磁石24の近傍に電磁鋼板を配置していない。そのため、漏れ磁束によるFLUX低下(すなわち、流動低下)を抑制する事が可能である。また、第1群308の第1回転子鉄心用電磁鋼板301、第2群309の第3回転子鉄心用電磁鋼板303、及び、第3群310の第2回転子鉄心用電磁鋼板302を、回転軸104に焼嵌により締結させている。その結果、第1群308のみを設ける場合に比べて、回転子5B全体として、回転軸104と焼嵌により把持させる内径部面積を増加させることが可能である。そのため、実施の形態2においては、回転子5Bと回転軸104との間の焼嵌による把持力を向上させることができ、焼嵌応力の低下を抑制することができる。
【0093】
以上のことから、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、漏れ磁束の発生による磁力の低下を抑制し、かつ、回転子5Bと回転軸104との間の把持力を向上させることができる。その結果、密閉型圧縮機130の運転中の負荷トルク及び自重に対する信頼性を高めることができる。また、第4群311を設けていない分、電動機103の製造工程の工程数が減って、製造工程が容易になると共に、電動機103の製造コストの低減が図れる。
【0094】
実施の形態3.
<電動機103の回転子5C>
図11及び図12を用いて、実施の形態3に係る電動機103の回転子5Cの構成について説明する。図11は、実施の形態3に係る電動機103の回転子5Cの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。図11(b)においては、図11(a)のC-C断面図を示している。図12は、実施の形態3に係る電動機103の回転子5Cに設けられた第3非磁性体端板307の構成を示す平面図である。図12においては、第3非磁性体端板307を上から見た状態を示している。
【0095】
上記の実施の形態1では、図3に示すように、第1群308の「第1端308a」側と「第2端308b」側との両方に、第2群309と第3群310とが配置されている。しかしながら、これに限定せず、第2群309と第3群310とは、第1群308の「第1端308a」側と「第2端308b」側との少なくともいずれか一方側に設けるようにしてもよい。
【0096】
実施の形態3では、図10に示すように、実施の形態1における回転子5Aの「第2端308b」側に設けられていた第2群309と第3群310との代わりに、第3非磁性体端板307が設けられている。また、実施の形態3では、実施の形態1における回転子5Aの「第2端308b」側に設けられていた第4群311が、設置されていない。
【0097】
すなわち、図11に示すように、実施の形態3の回転子5Cは、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第3非磁性体端板307、磁石24、及び、リベット26を備えている。第3非磁性体端板307は、非磁性体材料から構成されている。
【0098】
上記の実施の形態1では、第2群309の第1非磁性体端板305と第2非磁性体端板306とが「第2端板部402」を構成している。これに対して、実施の形態3では、第3非磁性体端板307が、「第2端板部402」を構成している。
【0099】
実施の形態3の他の構成は、実施の形態1と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは、その説明を省略する。
【0100】
第3非磁性体端板307は、図12に示すように、平面視で、円環形状を有している。第3非磁性体端板307は、回転軸104を挿通する第3端板内径部3071、第3端板リベット挿入穴3073、及び、第3端板外径部3075を有している。第3端板外径部3075は、磁石挿入穴3014(図4参照)よりも径方向外方側に位置する。
【0101】
第3端板内径部3071は、回転軸104が嵌合される貫通穴である。第3端板内径部3071は、平面視で、円形形状を有している。第3端板内径部3071は、第3非磁性体端板307の中心部に配置されている。第3端板内径部3071の中心は、回転軸104の軸心と一致する。第3端板内径部3071は、回転軸104が締結される。
【0102】
第3端板リベット挿入穴3073は、リベット26が挿入される貫通穴である。第3端板リベット挿入穴3073は、平面視で、円形形状を有している。第3端板リベット挿入穴3073は、第3端板内径部3071の外周に沿って、周方向に、互いに間隔を空けて、複数個配置されている。第3端板リベット挿入穴3073の位置は、第1リベット挿入穴3013(図4参照)の位置と一致している。
【0103】
第3端板内径部3071は、回転軸104の軸心から径方向外方へ向かう距離が、「第3端板内径部3071<第3端板リベット挿入穴3073<第3端板外径部3075」の関係になるように構成されている。
【0104】
回転子5Cは、図11に示すように、上から順に、第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第3非磁性体端板307、の順で配置されている。なお、第3非磁性体端板307は、1枚で「第2端板部402」を構成してもよいが、第3非磁性体端板307を複数積層して「第2端板部402」を構成してもよい。
【0105】
第4群311、第3群310、第2群309、第1群308、第3非磁性体端板307は、第3リベット挿入穴3043、第2リベット挿入穴3023、第1端板リベット挿入穴3053または第2端板リベット挿入穴3063、第1リベット挿入穴3013、第3端板リベット挿入穴3073に、連通して挿入されたリベット26で固定されている。
【0106】
以上のように、実施の形態3の回転子5Cによれば、磁石24の軸方向の両端に、非磁性体材料から構成された「第1端板部401」と「第2端板部402」とを配置させることで、磁石24の近傍に電磁鋼板を配置していない。そのため、漏れ磁束によるFLUX低下(すなわち、流動低下)を抑制する事が可能である。また、第1群308の第1回転子鉄心用電磁鋼板301、第2群309の第3回転子鉄心用電磁鋼板303、第3群310の第2回転子鉄心用電磁鋼板302、及び、第4群311の第4回転子鉄心用電磁鋼板304を、回転軸104に焼嵌により締結させている。その結果、第1群308のみを設ける場合に比べて、回転子5C全体として、回転軸104と焼嵌により把持させる内径部面積を増加させることが可能である。そのため、実施の形態3においては、回転子5Cと回転軸104との間の焼嵌による把持力を向上させることができ、焼嵌応力の低下を抑制することができる。
【0107】
以上のことから、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、漏れ磁束の発生による磁力の低下を抑制し、かつ、回転子5Cと回転軸104との間の把持力を向上させることができる。その結果、密閉型圧縮機130の運転中の負荷トルク及び自重に対する信頼性を高めることができる。
【0108】
実施の形態4.
<電動機103の回転子5D>
図13を用いて、実施の形態4に係る電動機103の回転子5Dの構成について説明する。図13は、実施の形態4に係る電動機103の回転子5Dの構成を示す、(a)上から見た平面図、(b)縦断面図、(c)下から見た平面図である。図13(b)においては、図13(a)のD-D断面図を示している。
【0109】
上記の実施の形態2では、図10に示すように、第1群308の「第1端308a」側と「第2端308b」側との両方に、第2群309と第3群310とが配置されている。しかしながら、これに限定せず、第2群309と第3群310とは、第1群308の「第1端308a」側と「第2端308b」側との少なくともいずれか一方側に設けるようにしてもよい。
【0110】
実施の形態4では、図13に示すように、実施の形態2における回転子5Bの「第2端308b」側に設けられていた第2群309と第3群310との代わりに、第3非磁性体端板307が設けられている。
【0111】
実施の形態4の他の構成は、実施の形態2と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは、その説明を省略する。
【0112】
すなわち、図13に示すように、実施の形態4の回転子5Dは、第3群310、第2群309、第1群308、第3非磁性体端板307、磁石24、及び、リベット26を備えている。第3非磁性体端板307は、実施の形態3で説明したように、非磁性体材料から構成されている。第3非磁性体端板307は、1枚で「第2端板部402」を構成してもよいが、第3非磁性体端板307を複数積層して「第2端板部402」を構成してもよい。
【0113】
上記の実施の形態2では、第2群309の第1非磁性体端板305と第2非磁性体端板306とが「第2端板部402」を構成している。これに対して、実施の形態4では、第3非磁性体端板307が、「第2端板部402」を構成している。
【0114】
第3非磁性体端板307の構成については、実施の形態3で図12を用いて説明したため、ここでは、その説明を省略する。
【0115】
回転子5Dは、図13に示すように、上から順に、第3群310、第2群309、第1群308、第3非磁性体端板307、の順で配置されている。
【0116】
第3群310、第2群309、第1群308、第3非磁性体端板307は、第2リベット挿入穴3023、第1端板リベット挿入穴3053または第2端板リベット挿入穴3063、第1リベット挿入穴3013、第3端板リベット挿入穴3073に、連通して挿入されたリベット26で固定されている。
【0117】
以上のように、実施の形態4の回転子5Dによれば、磁石24の軸方向の両端に、非磁性体材料から構成された「第1端板部401」と「第2端板部402」とを配置させることで、磁石24の近傍に電磁鋼板を配置しないため、漏れ磁束によるFLUX低下(すなわち、流動低下)を抑制する事が可能である。また、第1群308の第1回転子鉄心用電磁鋼板301、第2群309の第3回転子鉄心用電磁鋼板303、及び、第3群310の第2回転子鉄心用電磁鋼板302を、回転軸104に焼嵌により締結させている。その結果、第1群308のみを設ける場合に比べて、回転子5C全体として、回転軸104と焼嵌により把持させる内径部面積を増加させることが可能である。そのため、実施の形態4においては、回転子5Cと回転軸104との間の焼嵌による把持力を向上させることができ、焼嵌応力の低下を抑制することができる。
【0118】
なお、上記の実施の形態1~4においては、第1群308、第2群309、第3群310などが、リベット26によって固定されている例について説明した。しかしながら、リベット16に限らず、例えばボルト及びナットなどの他の締結具により、第1群308、第2群309、第3群310などを固定するようにしてもよい。
【0119】
また、上記の実施の形態1~4においては、第1リベット挿入穴3013の個数、及び、第2リベット挿入穴3023の個数が、共に、6個の場合を例に挙げて説明したが、その場合に限定されない。第1リベット挿入穴3013の個数、及び、第2リベット挿入穴3023の個数は、共に、2以上の任意の個数であればよい。同様に、上記の実施の形態1~4においては、第1端板リベット挿入穴3053、第2端板リベット挿入穴3063、及び、第3リベット挿入穴3043が、共に、3個の場合を例に挙げて説明したが、その場合に限定されない。第1端板リベット挿入穴3053、第2端板リベット挿入穴3063、及び、第3リベット挿入穴3043は、共に、1以上の任意の個数であればよい。但し、2以上の各リベット挿入穴は、平面視で線対称の位置になるように互いに対応させて配置されていることが望ましい。当該線対称の対称軸は、第1回転子鉄心用電磁鋼板301の第1外径部3015の直径に相当する直線であれば任意の線でよい。
【符号の説明】
【0120】
1 固定子、3 絶縁部材、4 コイル、5A 回転子、5B 回転子、5C 回転子、5D 回転子、9 リード線、21 回転子鉄心、22 磁石挿入穴、23 リベット穴、24 磁石、25 バランスウェイト、25a 上バランスウェイト、25b 下バランスウェイト、26 リベット、101 密閉容器、101a 上部容器、101b 下部容器、102 圧縮機構部、103 電動機、104 回転軸、104a 主軸部、104b 副軸部、104c 偏心軸部、105 シリンダ、105a シリンダ室、106 主軸受け、107 副軸受け、109 ローリングピストン、119 ガラス端子、127 吸入マフラ、128 吸入連結管、129 吐出管、130 密閉型圧縮機、133 四方切換弁、134 室外側熱交換器、135 減圧器、136 室内側熱交換器、200 冷凍サイクル装置、301 第1回転子鉄心用電磁鋼板、302 第2回転子鉄心用電磁鋼板、303 第3回転子鉄心用電磁鋼板、304 第4回転子鉄心用電磁鋼板、305 第1非磁性体端板、306 第2非磁性体端板、307 第3非磁性体端板、308 第1群、308a 第1端、308b 第2端、309 第2群、310 第3群、311 第4群、401 第1端板部、402 第2端板部、3011 第1内径部、3012 第1積層用カシメ部、3013 第1リベット挿入穴、3014 磁石挿入穴、3015 第1外径部、3021 第2内径部、3022 第2積層用カシメ部、3023 第2リベット挿入穴、3025 第2外径部、3031 第3内径部、3032 第3積層用カシメ部、3035 第3外径部、3041 第4内径部、3042 第4積層用カシメ部、3043 第3リベット挿入穴、3045 第4外径部、3047 直線部、3051 第1端板内径部、3053 第1端板リベット挿入穴、3055 第1端板外径部、3056 連結部、3061 第2端板内径部、3063 第2端板リベット挿入穴、3065 第2端板外径部、3066 連結部、3071 第3端板内径部、3073 第3端板リベット挿入穴、3075 第3端板外径部、L1 距離、L2 距離。
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